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平成28年版
地方財政白書
(平成26年度決算)

第3部 最近の地方財政をめぐる諸課題への対応

1 地方財政の健全化に資する取組等

(1)地方行政サービス改革の推進

地方公共団体においては、人口減少・高齢化の進行、行政需要の多様化など社会経済情勢の変化に一層適切に対応することが求められており、国・地方を通じた厳しい財政状況下においても、質の高い行政サービスを引き続き効率的・効果的に提供する必要がある。

そのためには、地方公共団体においては、定型的業務を中心とした事務・事業の民間委託の推進、指定管理者制度等の活用、給与・旅費等に関する庶務業務の集約化、自治体情報システムのクラウド化、多様なPPP/PFIの活用を優先的に検討する仕組みの構築などPPP/PFIの推進等の積極的な業務改革の推進に努めることが必要である。

こうした観点から、「基本方針2015」等を踏まえ、「地方行政サービス改革の推進に関する留意事項について」(平成27年8月28日付け総務大臣通知)等により、各地方公共団体に対し、より積極的な業務改革の推進に努めるよう要請したところである。

今後は、業務改革を推進するため、民間委託やクラウド化等の各地方公共団体における取組状況・方針の見える化や比較可能な形での公表を実施することとしており、総務省においても、これらの推進状況について毎年度フォローアップし、その結果を広く公表することとしている。

(2)給与の適正化及び適正な定員管理の推進

地方公共団体においては、現下の厳しい財政状況において、計画的に行政改革を推進するとともに住民への説明責任を果たす見地から、目標の数値化やわかりやすい指標の活用を図りつつ、給与情報等公表システムにより給与及び定員の公表を行うなど、定員管理や給与の適正化などの取組を行っている。

給与については、地域民間給与のより的確な反映など国家公務員における「給与制度の総合的見直し(平成27年4月から実施)」を踏まえ、地方公共団体の83.4%(平成27年4月1日現在)が給料表の見直しを実施している。見直しの取組が遅れている全ての府県や政令指定都市においても、平成27年の人事委員会勧告で給与制度の総合的見直しの実施に関する勧告がなされている。また、平成27年4月1日時点のラスパイレス指数は、全地方公共団体平均で99.0となっており、平成24年、平成25年の国家公務員の給与減額支給措置の影響を除き、平成16年以降、12年連続で100を下回っている。

地方公共団体の総職員数については、第52表のとおり、平成22年4月1日から平成27年4月1日までの5年間で、都道府県1.6%減、政令指定都市3.7%減、政令指定都市を除く市区町村4.0%減となっており、全地方公共団体では2.7%の減少となった。

(3)地方公営企業等の改革

ア 地方公営企業の抜本改革の推進

地方公営企業が、将来にわたり本来の目的である公共サービスの供給を行っていくためには、経営環境の変化に適切に対応し、事業のあり方を絶えず見直していくことが求められている。総務省においては、地方公共団体財政健全化法が平成21年4月から全面施行されたこと等を踏まえ、平成21年度から平成25年度までの間に、公営企業の抜本改革についての全国的な取組を集中的に推進した。この結果、財政健全化指標の1つである資金不足比率において経営健全化基準以上である公営企業数が大幅に減少(平成25年度決算においては、平成20年度決算から70.5%減)するなど、一定の成果をあげたところである。

また、事業廃止(240事業(平成21年度から平成25年度まで。以下同じ。))、民営化・民間譲渡(118事業)、指定管理者制度の導入(172事業)等も進捗を見せている。

イ 平成26年度以降の経営健全化等についての考え方

公営企業は、料金収入をもって経営を行う独立採算制を基本原則としながら、住民生活に身近な社会資本を整備し、必要なサービスを提供する役割を果たしており、将来にわたりその本来の目的である公共の福祉を増進していくことが必要である。抜本改革が一定の成果をあげる一方、公営企業は、現在、サービスの提供に必要な施設等の老朽化による更新投資の増加、サービス需要の変化や人口減少に伴う料金収入の減少等により、経営環境が厳しさを増しつつある。

このため、各地方公共団体にあっては、平成26年度以降においても、自らの判断と責任に基づき、公営企業の経営健全化等に不断に取り組むことが必要である。

(ア)経営のあり方の検討

各地方公共団体が公営企業の経営健全化等に取り組むに当たっては、その前提として、公営企業が行っている事業そのものの意義、提供しているサービス自体の必要性について検証し、事業に意義、必要性がないと判断された場合には、速やかに、廃止等を行うことが求められる。

また、事業の継続、サービスの提供自体は必要と判断された場合であっても、採算性の判断を行い、完全民営化、民間企業への事業譲渡、指定管理者制度やPPP/PFI(公共施設等運営権方式(いわゆるコンセッション方式)を含む。)の導入等について検討を行うことが必要となる。

なお、民間資金・民間ノウハウの活用については、「基本方針2015」や「『日本再興戦略』改訂2015」においても示されているところである。

(イ)経営戦略の策定

経営のあり方について検討を行った結果、引き続き公営企業として事業を行うこととした場合には、自らの経営等について的確な現状把握を行った上で、中長期的な視野に基づく計画的な経営に取り組み、徹底した効率化、経営健全化を行うことが求められる。

このため、総務省においては、「公営企業の経営に当たっての留意事項について」(平成26年8月29日付け総務省自治財政局公営企業課長等通知)を発出し、各公営企業が将来にわたって安定的に事業を継続していくための中長期的な経営の基本計画である「経営戦略」の策定を要請した。また、「「経営戦略」の策定推進について」(平成28年1月26日付け総務省自治財政局公営企業課長等通知)において、平成28年度から平成30年度までの間に「経営戦略」策定を集中的に推進することとし、「経営戦略」の策定に当たっての実務上の指針として「経営戦略策定ガイドライン」を取りまとめるなど、各地方公共団体の取組に対する各種の支援を行っている。

各公営企業においては、「経営戦略」を策定し、それに基づく計画的かつ合理的な経営を行うことにより、経営基盤の強化と財政マネジメントの向上を実現していくことが強く求められる。

なお、公営企業の経営に関するこのような取組の考え方については、「基本方針2015」において、「公営企業については、計画期間内に廃止・民営化や広域的な連携等も含めた抜本的な改革の検討を更に進め、経営戦略の策定等を通じ、経営基盤強化と財政マネジメントの向上を図る。」として示されているところである。

ウ 地方公営企業会計制度等の見直し

地方公営企業の会計制度については、「地方公営企業会計制度等研究会」の報告書(平成21年12月)を踏まえ、昭和41年以来のほぼ半世紀ぶりとなる全面的な見直しを進めてきた。

(ア)資本制度の見直し

公営企業の経営の自由度を高めるとともに、住民等への情報開示や議会の関与を強め、地方公共団体が自らの責任において経営を行っていくことができるようにするため、資本制度の見直しを行った。

具体的には、「地域の自主性及び自立性を高めるための改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」(平成23年法律第37号。以下「第1次地方分権一括法」という。)による「地方公営企業法」の改正により、利益処分や資本の取扱い等に関する制約が廃止され、議会の議決又は条例のもとで、経営判断に基づく処分等が可能となった(平成24年4月施行)。

(イ)会計基準の見直し

地方公営企業の経営実態をより的確に把握できるようにするとともに、損益計算書及び貸借対照表を他の地方公営企業や他のセクター等と比較しやすく、住民等にも分かりやすいものとするため、会計基準の見直しを行った。

主な見直しの内容は、<1>借入資本金を負債に計上すること、<2>みなし償却制度を廃止すること、<3>退職給付引当金等の引当てを義務化すること等であり、地方公営企業の特性等を適切に勘案しながら、現行の企業会計原則の考え方を最大限取り入れたものとなっている。関係政省令の一部改正については、平成24年2月1日から施行され、新しい会計基準は平成26年度の予算及び決算から適用された。

各地方公営企業においては、どの程度の赤字・黒字の構造か、どの程度公的支援に依存しているかなどを検証するとともに、経費縮減や適切な料金水準の検討等の経営改革に活用していくことが重要である。

エ 公営企業会計の適用推進

会計基準の見直しにより、地方公営企業の経営実態をより的確に把握できるようになった。しかし、新会計基準が適用される地方公営企業は、「地方公営企業法」で当然適用とされた8事業(上水道、工業用水、バス、軌道、地下鉄、電気、ガス、病院)及び財務規定等を各公営企業が任意適用することとした事業であり、これを平成26年度末事業数でみると、全地方公営企業8,662事業のうち3,077事業となっており、全体のほぼ3分の1程度にとどまっている。

各公営企業が経営基盤の強化等により的確に取り組むためには、自らの経営・資産等を正確に把握することが必要であり、「地方公営企業法」を適用していない公営企業においては、同法の全部又は一部(財務規定等)を積極的に適用し公営企業会計を導入することが必要である。このため、総務省においては、平成27年1月、資産の規模が大きく、また、住民生活に密着したサービスを提供する下水道事業及び簡易水道事業を重点事業として、平成27年度から平成31年度までの集中取組期間内に、「地方公営企業法」の全部又は一部(財務規定等)を適用するよう各地方公共団体に対して「公営企業会計の適用の推進について」(平成27年1月27日付け総務大臣通知)等を発出し要請した。

また、財務規定等の適用を円滑かつ着実に推進するため、「地方公営企業法」の財務規定等の適用に関する実務的な取扱いの整理を行い、平成27年1月に「地方公営企業法の適用に関するマニュアル」をとりまとめるなど、各地方公共団体の取組に対する各種の支援を行っている。

オ 第三セクター等の抜本的改革を含む経営健全化の推進

(ア)第三セクター等の経営健全化の推進

公共性と企業性を併せ持つ第三セクター及び地方公社(以下「第三セクター等」という。)は地域において住民の暮らしを支える重要な役割を担っている。

平成27年度の「第三セクター等の状況に関する調査」によれば、第53表のとおり、平成27年3月31日時点の第三セクター等の数は7,484法人(前年度比150法人減)であり、地域・都市開発、農林水産、観光・レジャー、教育・文化など、多様な業務を行っているところである。

一方で、第三セクター等の経営状況が著しく悪化した場合には、地方公共団体の財政に深刻な影響を及ぼすことが懸念される。

このため、平成21年度から平成25年度までの間、地方公共団体が自らの決定と責任の下、「第三セクター等の抜本的改革」に取り組み、財政規律を強化することを集中的に推進した。これは、地方公共団体が損失補償・債務保証を行う第三セクター等の債務の減少(平成25年度決算においては、平成20年度決算から45.5%の減少)、地方公共団体から第三セクター等へ交付される補助金等の減少(同38.6%の減少)、債務超過の第三セクター等の減少(同31.1%の減少)をはじめとして、全国的には相当程度の成果をあげたところである。

平成26年度以降においても、地方公共団体は、自らの財政規律の強化を不断に図っていくことが重要であり、関係を有する第三セクター等について自らの判断と責任による効率化・経営健全化に取り組むことが必要となる。「基本方針2014」においても、地方財政改革の推進のために、「公営企業・第三セクター等の徹底した効率化・経営健全化を図る。」こととされた。

一方で、現下の社会経済情勢を踏まえれば、公共部門においても民間の資金やノウハウを活用することが重要である。第三セクター等は、健全な経営が行われる場合には、そのための有力な手法となるものであり、また、市町村の圏域を越えた活動が可能であること等の長所も有している。このため、第三セクター等を活用した経済再生・地域再生等について検討することも重要である。

これらのことを踏まえて、地方公共団体は、自らが関係する第三セクター等について、効率化・経営健全化と地域の元気を創造するための活用の両立に適切に取り組むことが必要である。総務省は「第三セクター等の経営健全化の推進等について」(平成26年8月5日付け総務大臣通知)によりこの旨を要請するとともに、第三セクター等の経営改革等に関する新たなガイドラインとして「第三セクター等の経営健全化等に関する指針」(平成26年8月5日付け総務省自治財政局長通知)を発出し、地方公共団体の第三セクター等への適切な関与、経営が悪化した第三セクター等の抜本的改革を含む経営健全化、さらに第三セクター等の活用等について、基本的な考え方や手順・留意点等を示したところである。

今後も、同指針を踏まえた助言、情報提供等により、地方公共団体の取組を継続的に支援することとしている。

(イ)第三セクター等改革推進債の状況

地方公営企業、地方公社及び第三セクターの改革については、地方公共団体が地方公共団体財政健全化法の全面施行から5年間で抜本的改革を集中的に行うことができるように、平成21年度から平成25年度までの間の時限措置として、その整理又は再生のために特に必要となる一定の経費を議会の議決等の手続を経て地方債(第三セクター等改革推進債)の対象とできることとされた。

平成26年3月の「地方財政法」の改正により、平成25年度までに第三セクター等の抜本的改革を行うことを決定し、その旨を記載した計画を総務大臣に提出して、承認を受けた地方公共団体にあっては、平成28年度まで第三セクター等改革推進債の起債を可能とする経過措置が講じられた。

経過措置の要件となる計画については、18団体の20計画が平成26年7月18日付けで総務大臣の承認を受けており、平成26年度において第三セクター等改革推進債を起債した団体は6団体、許可額は616億円となっており、21年度から26年度までの累計の許可額は、1兆151億円となっている。

(4)地方公会計の整備促進

地方公会計は、現金主義会計による予算・決算制度を補完するものとして、現金主義会計では見えにくいコストやストックを把握することで中長期的な財政運営への活用の充実が期待できるため、各地方公共団体において、その整備を推進していくことは重要である。

特に、人口減少・少子高齢化が進展している中、財政のマネジメント強化のため、地方公会計を予算編成等に積極的に活用し、地方公共団体の限られた財源を「賢く使う」取組を行うことは極めて重要である。

近年の地方公会計の整備については、平成18年5月に地方公共団体が参考とすべき財務書類の作成方式として基準モデルと総務省方式改訂モデルが示されて財務書類の作成が推進されてきたところである。しかし、複数の方式が存在しており、比較可能性が十分に確保されていないほか、多くの地方公共団体において既存の決算統計データを活用した簡便な作成方式である総務省方式改訂モデルが採用され、本格的な複式簿記が導入されていない中、公共施設等のマネジメントにも資する固定資産台帳の整備が十分でないことから、事業別や施設別のセグメント分析が十分にできていないといった課題もあるところである。

このため、平成22年9月から「今後の新地方公会計の推進に関する研究会」を開催して議論を進め、平成26年4月に、固定資産台帳の整備と複式簿記の導入を前提とした財務書類の作成に関する統一的な基準を示したところである(第127図)。

第127図 統一的な基準による地方公会計の整備促進について

また、平成27年1月には、当該基準による財務書類の作成手順や資産の評価方法、固定資産台帳の整備手順、連結財務書類の作成手順、事業別・施設別のセグメント分析をはじめとする財務書類の活用方法等を示した具体的なマニュアルを公表したところである。さらに、「統一的な基準による地方公会計の整備促進について」(平成27年1月23日付け総務大臣通知)において、当該基準による財務書類等を、原則として平成27年度から平成29年度までの3年間で全ての地方公共団体において作成し、予算編成等に積極的に活用するよう要請したところであり、平成27年3月31日時点で全ての都道府県及び市区町村の98.2%にあたる1,755団体が平成29年度までに一般会計等財務書類の作成を完了する予定となっている(第54表)。

(5)決算情報等の「見える化」の推進

地方財政の「見える化」については、これまでも「地方財政白書」や「決算状況調」、「財政状況資料集」等により積極的な情報開示が行われてきたところであるが、「基本方針2015」において、「2018年度(平成30年度)までの集中改革期間に、地方公共団体の行政コストやインフラの保有・維持管理情報等の『見える化』を徹底して進め、誰もが活用できる形での情報開示を確実に実現する」とされたことを踏まえ、今後、決算情報等の更なる「見える化」を図っていくこととしている。

具体的な取組としては、まず、決算による行政コスト情報の「見える化」が挙げられる。これまで人件費、普通建設事業費及び公債費に限られていた住民一人当たり行政コストについて、平成27年度決算からその範囲を拡大し、性質別・目的別で網羅的に「見える化」を行うこととしている。これにより、新規整備・更新整備の内訳を含めた普通建設事業費や維持補修費といった性質別の住民一人当たり行政コスト、民生費、衛生費、教育費といった目的別の住民一人当たり行政コストが「見える化」されることになり、その経年比較や類似団体比較、それらを踏まえた各団体の分析コメントといった財政分析の内容が新たに「見える化」することとなる(第128図)。

第128図 地方財政の「見える化」1 〜決算情報の「見える化」の徹底〜

次に、地方公共団体のストック情報の「見える化」も挙げられる。地方公共団体において公共施設等の老朽化対策が効果的に講じられるよう、地方公会計に必要な固定資産台帳の整備に合わせて、新たな分析指標「資産老朽化比率」や将来負担比率との「組合せ分析」を導入し、土地情報や施設類型毎のストック情報についても平成27年度決算から順次、財政状況資料集に追加・公表していくこととしている。これにより、地方公共団体が保有する公共施設等の全体像や施設類型毎の資産老朽化比率や保有量、各団体が保有する未利用地や売却可能地をはじめとする土地情報等のストック情報も新たに「見える化」することとなる(第129図)。

第129図 地方財政の「見える化」2 〜新たな課題への積極的な対応〜

これらに加え、決算情報を掲載している総務省のホームページについても、e-Stat(政府統計の総合窓口)を活用することにより、決算情報の生データを公開するだけでなく、データ検索機能や分析のためのグラフ作成機能などを持たせるといった利用者目線からの大幅な改善を図り、ホームページの使いやすさの向上を順次目指すこととしている。

(6)公共施設等総合管理計画の策定促進

地方公共団体においては、高度経済成長期に大量の公共施設やインフラが建設されており、今後、それらの公共施設等が一斉に更新時期を迎えることが見込まれている。一方、地方財政は依然として厳しい状況にあり、所有している全ての公共施設等の維持補修・更新財源を確保していくことは、一層困難となる可能性がある。また、人口減少や少子高齢化等により、公共施設等の利用需要が変化していくことが見込まれるため、各地方公共団体は、地域における公共施設等の最適配置の実現に向けて取り組んでいく必要がある。

そのため、総務省においては、平成26年4月に総務大臣通知により、各地方公共団体に対し、平成28年度末までに公共施設等総合管理計画を策定するよう要請するとともに、平成27年8月には、集約化・複合化等に踏みこんだ計画となるよう努める旨も同じく要請した。各地方公共団体においては、財政状況や人口減少等の状況、施設更新等の経費見込み等も踏まえた同計画の策定を通じ、長期的な視点をもって、公共施設等の総合的かつ計画的な管理を行っていくことが求められている。

平成27年10月1日時点の調査によれば、都道府県及び政令指定都市では100%、市区町村でも99.2%の団体において、平成28年度末までに公共施設等総合管理計画の策定が完了する予定となっており(第55表)、今後、同計画に基づいて、具体的な公共施設等の最適化に係る取組を実行に移していくことが重要となってくる。

総務省においては、公共施設等総合管理計画に基づいて実施される既存の公共施設の集約化・複合化事業や転用事業を支援していくため、公共施設最適化事業債や転用事業に係る地域活性化事業債といった地方債措置を平成27年度から29年度まで講じているところである。今後は、これらの地方債措置を活用した先進的な団体の取組事例・ノウハウが横展開され、地方全体の取組につながっていくことが期待される。

(7)地方財政の健全化と地方債制度の見直し

地方公共団体財政健全化法の全面施行(平成21年)以来、地方公共団体の財政健全化指標は一定の改善が見られる。その一方で、現行制度では捉え切れていない地方公共団体の財政負担の存在、また公共施設等の老朽化対策を見越した財政分析など、新たな課題への対応も必要となっている。

また、地方債制度については、「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」(平成23年法律第105号。以下「第2次地方分権一括法」という。)の規定により、届出制の導入に係る規定の施行後3年を経過した場合において、地方公共団体の自主性・自立性を高める観点から、地方債の発行に関する国の関与のあり方について抜本的な見直しを行うこととされている。

このようなことから、総務省においては、平成26年11月から「地方財政の健全化及び地方債制度の見直しに関する研究会」を開催し、平成27年12月に同研究会報告書をとりまとめ公表したところであり、報告書の以下の提言を踏まえ、制度改正、運用改善に取り組んでいくこととしている。

ア 地方財政の健全化

(ア)第三セクター等が経営破綻した場合には、地方公共団体に対する返済が行われなくなるリスクが潜在しており、実質的に負担することが見込まれる額について、将来負担比率への反映を検討すべきである。

(イ)公有地信託の事業収支が悪化して資金不足が生じた場合、地方公共団体が費用補償を求められる可能性があるため、実質的に負担することが見込まれる額について、将来負担比率への反映を検討すべきである。

(ウ)「資産老朽化比率」や「将来負担比率と資産老朽化比率の組合せ分析」等の財政状況資料集への追加を検討すべきである。

イ 地方債制度

(ア)地方債(公的資金を充当するものを除く)の発行に係る協議不要基準については緩和し、現在協議対象である範囲を、原則協議不要(届出)対象とすべきである。

a 実質公債費比率については、協議対象である範囲を、協議不要(届出)対象化。

b 将来負担比率については、協議対象である範囲(早期健全化基準未満)を、協議不要(届出)対象化。

c 協議不要基準額については、廃止。

d 実質赤字比率、資金不足比率、連結実質赤字比率については、変更せず。

(イ)地方債の発行に係る許可基準については、変更すべきでない(「地方財政法」に基づく許可基準、地方公共団体財政健全化法に基づく許可基準いずれも)。

(ウ)公的資金を充当する地方債については、引き続き届出制度の対象外とすべき。ただし、特別転貸債及び国の予算等貸付金債については、新たに届出制度の対象とすべきである。

(8)公立大学法人制度の見直し

公立大学法人制度については、大学設置自治体等から、現行制度では認められていない出資、長期借入、余裕金の運用及び附属学校の設置について、国立大学法人と同様に可能とするよう制度改正の要望があった。

そのため、平成27年4月から開催された「地方独立行政法人制度の改革に関する研究会」において検討が行われ、地方創生の取組の中で人材育成や産業創出に公立大学法人がその役割を積極的に果たすことが求められていること、法人自らの努力を促し経営基盤の強化を図る必要があること、これらの要望事項に関する国立大学法人での運用実態等を踏まえ、基本的に、国立大学法人のスキームに即した形での制度改正を検討することが適当であるとする報告書が同年12月にとりまとめられた。同報告書の提言を踏まえ、必要な対応を行っていくこととしている。

(9)マイナンバー制度

平成25年5月に成立した番号関連4法(「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(平成25年法律第27号)、「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」(平成25年法律第28号)、「地方公共団体情報システム機構法」(平成25年法律第29号)及び「内閣法等の一部を改正する法律」(平成25年法律第22号))により、マイナンバー制度が導入され、平成27年10月5日に施行されたところである。

マイナンバー制度は、複数の機関に存在する個人の情報が同一人の情報であるということの確認を行うための基盤であり、社会保障・税制度の効率性・透明性を高め、国民にとって利便性の高い公平・公正な社会を実現するための基盤(インフラ)であり、<1>付番、<2>情報連携、<3>本人確認の3つの仕組みから成り立っているところである。なお、番号の利用分野については、社会保障分野、税分野、災害対策分野の3分野を対象としており、地方公共団体については、地域の実情を踏まえて実施しているこれらと類似の事務についても、対象としている(第130図第131図)。

第130図 マイナンバー制度の仕組み
第131図 マイナンバー制度の概要

マイナンバー制度導入、平成29年に開始予定の情報連携への対応及び情報セキュリティ対策の抜本的な強化のため、各地方公共団体においては新たなシステムの構築、住民基本台帳・税務システムをはじめとした既存の情報システムの改修・整備、自治体情報システムの強靱性の向上及び自治体情報セキュリティクラウドの構築等が必要となっているところであり、その経費や情報提供等の必要な支援を講じているところである。また、複数自治体によるクラウド技術の活用による情報システムの共同利用(いわゆる「自治体クラウド」)に同時に取り組むことにより、関係経費の節減やセキュリティの強化が図られることから、マイナンバー制度の導入に合わせた自治体クラウドの活用を推進していくこととしている。

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