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第6章 地球温暖化以外の環境問題

1 地球温暖化以外の地球環境問題

 (1) オゾン層の破壊
  ア 現状
    成層圏に到達したフロン類(炭化水素の水素をフッ素、塩素等で置換
   した化合物)が太陽紫外線によって壊されて塩素等が発生し、オゾン層
   を破壊する。その結果、有害紫外線の地上到達量が増大し、皮膚がん、
   免疫機能低下などの人体影響や、湖沼・森林の破壊などの生態系への
   影響が生ずる問題である。
    国際的な取組として、昭和62年(1987年)に「オゾン層を破壊する
   物質に関するモントリオール議定書」が採択されているが、平成7年
   (1995年)の同議定書の改正で、途上国を含め、現在あるオゾン層破壊
   物質の規制スケジュールが設定された。すべての同議定書締約国がそれ
   を遵守すれば、21世紀初等からオゾン層は回復に転ずる見込みである。
    我が国では、フロン類の生産は平成7年(1995年)末に全廃されており、
   現在は回収・再利用・破壊が進められている。
    しかし、フロンに代わる環境に優しい冷媒として開発されたハイド
   ロ・クロロフルオロカーボン(炭化水素の水素の一部をフッ素、塩素で
   置換した化合物)も、オゾン層に対して全く無害であるわけでは無く、
   オゾン層破壊の対策も一筋縄ではいかないことが予想される。
  イ 情報通信の活用
    情報通信の活用が期待される対策分野として、電波・光を用いた、
   中上層大気環境の地球規模での観測・計測が挙げられる。郵政省通信
   総合研究所では米国海洋大気庁・アラスカ大学と協力して、地球環境の
   ための高度電磁波利用技術に関する国際共同研究を進めており、アラ
   スカ州フェアバンクスに下層から上層までの風、気温、微量気体などの
   大気環境パラメータを総合的に観測するライダ、分光計、レーダなどの
   観測機器を設置し、オゾン層など大気環境の形成のメカニズムの解析と
   その変動のモニタリングを行うための技術開発を行っている。また、
   地上及びスペースステーションなどから超伝導技術を用いた短波長ミリ
   波・サブミリ波帯のサウンダを用いて、大気中の微量気体の立体構造を
   高感度で観測するための技術の開発を行っており、これらはフロン類に
   よるオゾン層破壊の状況などの正確な把握に資するものである。
    オゾン層破壊の問題では、フロンに代わる環境に優しい冷媒として
   開発されたハイドロ・クロロフルオロカーボン(炭化水素の水素の一部
   をフッ素、塩素で置換した化合物)なども、オゾン層に対して全く無害
   であるわけではなく、対策も一筋縄ではいかないことが予想され、さら
   に国際的な協調関係の持続が対策のための鍵となることから、情報の
   共有など情報通信が果たす役割が極めて大きい考えられる。

 (2) 酸性雨
  ア 現状
    酸性雨とは、主に化石燃料の燃焼により生じるSOx、NOxなどを
   原因とする酸性度の高い(pH5.6以下の)雨であり、生態系及び
   文化財等へ被害を与える。特にヨーロッパにおいては、森林の破壊や
   湖沼・河川の酸性化が確認されており、ノルウェー南部では湖沼の
   70%が酸性化し、魚の数が減少、さらには絶滅する被害も出ている。
    我が国では酸性雨による陸水、土壌・植生への影響は報告されてい
   ないが、欧米とほぼ同レベルの酸性雨が確認されている。また、中国
   大陸等東アジアでも酸性雨問題が深刻化するおそれがある。
    酸性雨は、従来先進国を中心とした問題とされていたが、近年では、
   経済発展が進んでいる途上国でも深刻な問題となってきており、国際
   協力による取組が求められている。
  イ 情報通信の活用
    酸性雨の発生メカニズムの解明を進めることと共に、今後深刻化が
   予想される東アジア地域の酸性雨に対し、その発生源のモニタリングを
   強化していくことが重要である。こうした発生源モニタリングの構築に
   は、情報通信ネットワークの活用が不可欠である。
    具体的な取組として、東アジア地域におけるモニタリングネットワー
   クの設立を目指した「東アジア酸性雨モニタリングネットワークに関す
   る専門家会合」が開かれており、我が国は積極的に支援している。同
   会合で採択された「東アジア酸性雨モニタリングネットワーク構想」
   では、平成12年(2000年)までの可能な限り早期にモニタリング・ネッ
   トワークを設置することなどが強調されている。
    また、酸性雨原因物質の一つであるNOxの排出メカニズムについて
   は、CO2排出のメカニズムと類似している点が多く、CO2排出削減に
   有効な情報通信の活用の仕方は、程度の差はあれNOxの排出削減、
   すなわち酸性雨原因物質排出抑制にも有効であると考えられる。

 (3) 熱帯林の減少
  ア 現状
    非伝統的な焼き畑移動耕作等により、途上国の熱帯林が急激に減少
   し、多くの野生生物種が絶滅に瀕する恐れがあることに加え、大量の
   CO2排出に繋がり地球温暖化を加速させることが懸念されている。
    昭和56年(1981年)から平成2年(1990年)の10年間で我が国の国土
   面積の4割の熱帯林が減少し続けていると推測されている。
   平成6年(1994年)に国際熱帯林木材協定(ITTA)により、平成
   12年(2000年)までに生産国の熱帯木材の輸出を持続可能に経営されて
   いる供給源からのものにする目標が設定された。我が国では二国間協力
   を通じて造成・保全、人材育成等を進めているほか、NGOによる植林
   活動、企業による技術協力が進められている。
  イ 情報通信の活用
    熱帯林の減少に対し的確かつ迅速な対策を講じるためには、熱帯
   雨林の状況を正確に把握することが必要であり、そのためには、人工
   衛星、航空機、気球等にセンサを搭載し、土壌水分等の遠隔計測(リ
   モートセンシング)を行うことが有効である。こうした計測に必要な
   マイクロ波センサ(合成開口レーダ(SAR)等)の技術開発や、それ
   を搭載した衛星(我が国のJERS−1(平成元年(1992年)打ち上げ)
   の活用が期待される。
    また、主要な対策になっている熱帯林を抱える途上国との二国間
   協力の中の、人材育成、技術協力において、情報通信を活用することが
   期待される。
    更に、熱帯林産外材の需要抑制に結びつく、木材リサイクルの分野
   でも、廃材の需給を取り持つリサイクル・ネットワークの形成などの、
   情報通信の活用の場がある。

 (4) 砂漠化
  ア 現状
    干ばつなどの自然現象、家畜の過放牧、過度の耕作、木材の過剰採取、
   不適切な灌漑(かんがい)による塩分の集積により、乾燥化のみでは
   なく、土壌の浸食や塩性化、自然植生の種類減少など土地が劣化する
   問題をいう。地球上の全陸地面積の約1/4で9億人が砂漠化の影響を
   受けている。
    国際的取組として、平成6年(1994年)に砂漠化防止条約が採択され、
   平成8年(1996年)に発効している。我が国では二国間、多国間援助を
   通じた関連プロジェクトの実施、研究等を行っている。また、民間では
   NGOを通じた砂漠化防止活動が行われている。
  イ 情報通信の活用
    熱帯林の減少の問題と同様に、砂漠化の問題についても、その進行
   の状況を正確に把握することが必要であり、リモートセンシングが有効
   であることから、マイクロ波センサの技術開発や、それを搭載した衛星
   の活用が期待される。

 (5) 途上国の公害問題
  ア 現状
    途上国では経済発展のための重工業化が進み、環境負荷の大きい産業
   にシフトしてきている。また、都市への人口集中に都市基盤整備が追い
   つかず、スラム化が進んでいる。これらのことにより、途上国では環境
   悪化、衛生環境の悪化が問題となっている。
    途上国では、資金、技術、人材などが不足し環境問題に十分な対処が
   できないものがあるため、先進国や国際機関により援助が必要とされる。
   我が国の取組としては、円借款、無償資金協力、専門家の派遣、研修員
   の受入れ、調査研修等を行ってきている。
  イ 情報通信の活用
    この問題に対する対策の中心は、途上国が自立して公害対策を実行
   できるように先進国が援助していくことにある。情報通信の活用の場は、
   このような援助の中の、人材育成や技術協力(例えば、大気汚染や水質
   汚濁のモニタリングに係るテレメータ・ネットワークの活用技術)の
   分野にあるものと考えられる。
    また、都市部の交通渋滞等により自動車から排出されるNOx、
   SPM(浮遊粒子状物質)等により生じる大気汚染の問題については、
   テレワークやITSの推進等、我が国におけるCO2排出削減対策と
   同様の対策が、途上国においても有効であると考えられる。
    このほか、途上国の公害問題の解決に当たっては、途上国の国民への
   教育啓発、情報提供が重要であり、このためのインターネットの活用等
   が有効である。

 (6) 野生生物種の減少
  ア 現状
    近年、人類の行動を起因として地球の歴史始まって以来のスピードで
   種の絶滅が進行しつつある。生息環境の悪化は熱帯林や珊瑚礁、湿地、
   島しょ部で進んでおり今後平成12年(2000年)までに絶滅する種は、
   全体で50〜100万種程度といわれている。我が国では、絶滅の危惧
   に瀕している「絶滅危惧種」が110種、近い将来絶滅に瀕する「危急
   種」が114種、生息条件の変化によって容易に上記2つの状態に移行
   する「希少種」が415種となっている。
    ワシントン条約や生物の多様性に関する条約が結ばれ、取組が進め
   られている。また、湿地帯の水鳥の保護のためラムサール条約が結ばれ
   ている。我が国では、生物多様性国家戦略が平成7年(1995年)に決定
   されたほか、アジア地域におけるレッドデータブックの作成や二国間、
   多国間プロジェクトを行っている。
  イ 情報通信の活用
    広範に存在する野生種のモニタリングが対策の基礎となるので、その
   分野で情報通信の活用が期待される。超小型発信器の野生動物への取付
   け、埋込みによる移動等の観測(移動体通信技術の応用)などでの活用
   が考えられる。
    また、この問題に取り組む人材は、世界的に少なく人材の育成が課題
   であり、その分野(教育、技術移転など)でも、空間と時間を超越する
   情報通信の特性を活用することが期待される。

 (7) 海洋汚染
  ア 現状
    海洋資源に対する依存性の増加や人間活動に伴う各種の汚染の拡大等
   に伴い、海洋汚染は重大な問題となっている。具体的には、プラスチッ
   ク廃棄物の漂流や、重金属、化学物質による汚染、タンカー等からの
   油の流出が挙げられる。
    国際的な取組として、陸上で発生した廃棄物の海洋投棄を規制する
   ロンドン条約等で海洋汚染の未然防止、事後対策の強化が図られている。
    我が国では、平成7年(1995年)に「海洋汚染及び海上災害の防止に
   関する法律」の改正を行う等の取組を進めている。
  イ 情報通信の活用
    熱帯林の減少の問題や砂漠化の問題と同様に、海洋汚染の問題に
   ついても、その進行の状況を正確に把握することが必要であり、リモー
   トセンシングが有効であることから、マイクロ波センサの技術開発や、
   それを搭載した衛星の活用が期待される。
    また、海洋汚染問題の中で特に重大な大型タンカーからの重油流失等
   では、迅速な対策が求められる。この対策の迅速性を担保する通報シス
   テムや、油の拡散の予測システムなどにおいて、情報通信の活用の場が
   ある。平成9年に日本海で起きたナホトカ号の沈没による大規模な油
   汚染事故においては、人工衛星からの画像解析により油拡散領域をほぼ
   リアルタイムに把握することができ、除染対策に威力を発揮した。
    更に、大型船舶の位置捕捉などの予防的モニタリングや、海洋情報の
   収集・提供などの分野についても情報通信の活用が期待される。

 (8) 有害廃棄物
  ア 現状
    有害廃棄物の越境移動は、自国における処理費の高騰、自国の法規制
   の強化等より行われてきた。廃棄された有害物質は、人体への健康被害
   及び生態系に影響を及ぼすことが懸念され、有害物質が広範囲に拡散
   すれば重大な環境汚染が惹起され、現状回復が困難となる。
    国際的な取組として、有害廃棄物の輸出に対する際の義務等を規定
   したバーゼル条約が採択され平成4年(1992年)に発効している。我が国
   では、対応する国内法が平成5年(1993年)から施行されている。
  イ 情報通信の活用
    問題の原因となる国内有害廃棄物の管理を厳重に行うことが肝要で
   あり、有害廃棄物の製造段階から廃棄に至る過程を追跡・監視するモニ
   タリングにおいて情報通信の活用が期待される。
    また、有害廃棄物に関する情報を広く国民に提供することも、有害
   廃棄物の違法な越境移動等の防止に有効である。米国では連邦政府が
   有毒排出物一覧のデータをインターネットを用いて地域住民や関係者に
   提供しており、有害廃棄物の越境移動対策のためには、各国において
   同様な、インターネット等の情報通信の積極的な活用が期待される。

2 その他の環境問題

 (1) 廃棄物・リサイクル
  ア 現状
    経済活動の拡大と高度化に伴い、環境が復元する能力を超えた資源
   採取による資源の減少と不用物の排出による環境汚染の問題が生じてき
   ている。特に、廃棄物の排出量の増大と質の多様化による環境影響や、
   化学物質による環境影響が問題となっている。
    我が国では、廃棄物は「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」に基づ
   き一般廃棄物と産業廃棄物に分けられ処理されている(資料22)。近
   年その増加は頭打ちとなっているが、環境基本法に掲げられる「持続可
   能な成長」のための循環型の経済社会システムの確立を目指すという観
   点から、対策が推進されている。
    我が国の家庭から出る廃棄物の容積の約6割は容器や包装であり、
   その削減とリサイクルの促進は、リサイクル推進の最も大きな柱のひと
   つと言える。このため、平成7年(1995年)6月、容器包装リサイクル法
   (資料23)が制定され、平成8年(1996年)4月からペットボトルと
   ガラスびんを対象に一部実施されるとともに、平成12年度(2000年度)
   からは、紙箱等の紙製容器包装、プラスチック製の容器包装が加わる
   ことになり、ジュースのびんから、コンビニの弁当箱、さらには段ボー
   ル箱まで身の回りのあらゆる容器包装がリサイクルの対象となることに
   なる。更に、再商品化(リサイクル)の義務対象事業者に中小企業も
   加わることとなり、現在同法が対象としている企業約700社が、一気
   に十数万社に広がると推定される。
    また、家電製品等のリサイクルについて、特定家庭用機器再商品化
   法案が国会で審議されているところである。法律案の概要は、廃棄物の
   減量と有用な部品・素材の再商品化を図り、循環型経済社会を実現して
   いくため、家電製品(テレビ、冷蔵庫、エアコン、洗濯機)の排出者
   (消費者)に費用の支払義務、小売業者に引取・引渡義務、製造業者に
   引取義務を新たに課すことにより、新しい再商品化の仕組みを構築する
   ことを目的とするものである(資料24)。
    海外においては、すべての廃棄物を循環経済の仕組みの中でリサイク
   ルすることを目標とする「循環経済廃棄物法」を制定したドイツを始め
   とする欧州諸国で、廃棄物・リサイクル対策が強化されている。
    また、化学物質による環境汚染を防ぐため、「環境汚染物質排出・
   移動登録制度(PRTR)」の導入が検討されている。この制度は、
   工場・事業所が使っている化学物質を調べ、大気、河川、海などに排出
   したり、廃棄物として処分場に移動した量を行政に報告、行政が公表
   する制度である。
  イ 情報通信の活用
    廃棄物問題への情報通信の活用としては、LANや電子メールを用い
   ることにより、紙を用いていたコミュニケーションを電子化することで、
   紙廃棄物の削減を図ることが考えられる。また、電子出版や電子新聞の
   普及も紙廃棄物の削減に繋がる。
    リサイクル対策においては、関係者(消費者、生産者、回収業者、
   行政)の間の情報交換を広い範囲で行うことが極めて重要である。情報
   通信はこうした情報交換をなすネットワーク、すなわちリサイクル情報
   ネットワークを形成し、リサイクル型廃棄物物流システムを構築する
   ために活用すべきである。また、現在形成されつつあるリサイクル情報
   ネットワークは、まだ単一の企業や、単一の地方公共団体の中で閉じて
   いる場合が多いが、これを地球レベルの広がりをもったものに統合、
   拡大していくことで、リサイクル品に対する需要が拡大し、リサイクル
   率が大きく向上することが期待される。例えば、前述の家電リサイクル
   の実施に当たっては、再商品化に係る費用や引取場所等の情報を情報
   通信ネットワークを使って、広く提供することが重要である。
    なお、リサイクル対策では、製造段階の配慮(部品の標準化やマーキ
   ングなど)やリサイクルに配慮した製品の使用を促進するための消費者
   への啓発が重要であるが、こうした分野でも、部品情報に関するネット
   ワーク形成、消費者への広報、啓発などで情報通信の積極的な活用が
   期待される。

 (2) 大気汚染
  ア 現状
    人為的に大気中に排出された人体に健康被害を与えるガス状物質に
   よる地域的環境問題である。工業化により途上国から先進国へ成長する
   過程の中で、工場等を発生源とする産業都市型大気汚染から自動車等を
   発生源とする都市型大気汚染に移行していく傾向にある。
    我が国では環境基本法に基づき、主要大気汚染物質に関する環境基準
   が整備されており、発生源対策、総量規制対策が行われている。更に、
   アスベスト、ダイオキシン等についても対策が進められている。主要
   先進国では各国共環境基準を整備し発生源対策を進めている。
    しかし、我が国では、主に都市域において自動車排気などを主因と
   するNOxやSPMによる大気汚染問題が未解決である(環境基準を
   達成していない地点を多く残している)。また、米国ロサンゼルス地域
   のように、都市型の大気汚染については、先進国でも深刻な汚染状況に
   ある地域が多く残されている。途上国では、先進国と比較して都市域で
   の大気汚染がより深刻な状況にある。
    大気汚染物質のうち、SOxやNOxは酸性雨の原因物質であり、
   NOxは温室効果ガスの前駆物質であることから、広域的にみれば、
   地球環境問題の原因となっている。そのため、これら物質の排出につい
   ては、地球環境問題の原因との側面から国際的な排出低減への取組が
   行われている。
    また、多くの大気汚染物質は化石燃料の燃焼に伴って排出されるので、
   その対策はCO2による地球温暖化対策と類似している。
  イ 情報通信の活用
    我が国の、自動車排気などを主因とするNOxやSPMの都市域の
   大気汚染問題について、NOxやSPMの排出メカニズムがCO2の
   排出メカニズムと類似していることから、テレワークやITSの推進等、
   CO2排出削減対策と同様の対策が、NOxやSPMの排出削減にも
   有効であると考えられる。同じことが、都市部の交通渋滞等により自動
   車から排出されるNOx、SPM等で大気汚染の被害が深刻な、途上国
   の都市域についてもいえる。
    また、我が国では地方公共団体において、テレメータ・ネットワーク
   を活用した大気汚染物質の環境濃度のモニタリングが一般化しており、
   大気汚染の状況把握に活用されている。今後は、広域汚染に対するシー
   ムレスな環境観測網の整備が望まれる。
    例えば、全国各地に点在する気象観測用のアメダスシステムの環境版
   と言える「環境アメダス」が考えられる。これは、雨量の測定に加えて
   大気汚染物質の測定装置をアメダス観測所に設置してネットワーク化
   し、広く各地の環境情報の取得に努め、環境施策への活用が図れるシス
   テムである。

 (3) 水質汚濁
  ア 現状
    人為的に水系に排出された人体に健康被害を与える物質や、水質を
   悪化させる物質により、上水道への悪影響や水域生態系の改変、食物
   連鎖を通じた人体への健康被害などを招き、また生活環境を悪化させる
   地域的環境問題である。
    地域水系の問題は、広域的な海洋汚染に連関しており、地球環境問題
   の原因の一つといえる。
    我が国では健康保護、生活環境保全のための環境基準を設定し、発生
   源規制が行われている。主要先進国は各国環境基準を整備し発生源対策
   を進めている。途上国では対策が立ち遅れている。
  イ 情報通信の活用
    情報通信は、主にモニタリングにおいて活用が期待される。大気汚染
   の場合と同様、我が国では地方公共団体や民間企業において、テレメー
   タ・ネットワーク等の情報通信を活用した水質のモニタリングが広く
   普及しており、水質汚濁の防止対策に活用されているが、途上国では
   そうした情報通信の活用が立ち遅れているため、整備を進める必要が
   ある。

 (4) 環境ホルモン
  ア 現状
    環境の中にあってホルモンの働きを乱す化学物質である環境ホルモン
   (外因性内分泌攪乱化学物質)が近年問題となっている。
    環境ホルモンとして指摘される物質の種類として、PCB(ポリ塩化
   ビフェニール)、ごみ焼却炉からの排出が問題となっているダイオキシ
   ン類、農薬、プラスチックの原料、船底塗料として使われる有機スズ、
   カドミウム、鉛等が環境ホルモンと考えられている。
    生物に対する影響として最も心配されているのは生殖機能への影響で
   ある。例えば、海産のメスの巻き貝にオスの生殖器官が発見された例が
   ある。原因は船底塗料のトリブチルスズと考えられている。
    人間についても、精液中の精子の減少、精子の運動能力の低下が指摘
   されている。

  イ 情報通信の活用
    我が国では、最近、環境ホルモンが社会的に問題とされるようになっ
   たところであり、データの収集や情報の提供に情報通信の活用が求めら
   れている。

 (5) 電磁環境
   電磁環境問題は、電磁障害問題と生体電磁波問題に分けられる。
   電磁障害問題は、合法無線局からの電波、不法電波、一般の機械・機器
  等から放射される電波による各種機器の誤動作等の影響の問題であり、
  生体電磁波問題は、静的な電磁界、極低周波電磁界(送配電線周辺等)、
  高周波電磁界(電波)による人体への影響に関する問題である。
   電磁障害問題対策に関しては、我が国では、電気通信技術審議会を中心
  に国際無線障害特別委員会(CISPR)の活動に対応した技術基準の
  検討を実施している。それを基に、電波法、電気用品取締法、民間規格の
  制定等で対応している。
   生体電磁波問題対策に関しては、電波の人体への安全性確保のために、
  電気通信技術審議会により、「電波利用における人体の防護指針(電波
  防護指針)」が答申されており、現在、民間のガイドラインとして活用
  されている。電波防護指針については、諸外国でもほぼ同様のものが定め
  られており、これまでの研究によれば、指針を満たせば健康への有害な
  影響はないとの考え方が国際的にも共通認識となっている。
   郵政省は、「生体電磁環境研究推進委員会」を開催し、関係省庁や大学
  等と連携して研究を推進中であるが、さらに一層の安全確保のため、今後
  も、電磁環境問題に対し積極的に取り組んで行くことが望まれる。

 (6) 宇宙環境問題
   宇宙環境問題とは、人類による宇宙の開発・利用に伴い、宇宙空間に
  残留する不要人工物体(=宇宙デブリ)の問題である。宇宙デブリは、
  人工衛星、ロケット、宇宙ステーション等との衝突により宇宙活動に悪影
  響を与える可能性があり、その対策が必要とされている。
   宇宙デブリは、宇宙活動の増大につれて増える傾向にあり、現在確認
  されているものが約8,000個あるが、未確認のものが多数存在すると
  考えられている。こうした状況は世界的にも深刻に受け止められており、
  国連宇宙空間平和利用委員会において対策が検討されているほか、宇宙
  開発に携わる各国においても、宇宙デブリ観測、宇宙デブリの発生を抑制
  するための衛星及びロケットの設計・運用規定の策定等の対策を実施して
  いる。
   我が国においても、関係研究機関による宇宙デブリの観測、軌道上
  検査・修理技術の研究開発、宇宙開発事業団による「スペースデブリ発生
  防止標準」の策定等の対策を講じている。我が国としては、今後も、こう
  した対策を着実にするなど、国際的な協調の下、宇宙環境問題に対し積極
  的に取り組んでいくことが望まれる。

 (7) 電波天文等をめぐる電波環境問題
   電波天文学では、宇宙天体等から発せられる電波を観測し、地球や惑星
  の大気、惑星間空間、太陽の外層(特にコロナ)、恒星間空間等、宇宙
  の重要な部分を構成している希薄プラズマを研究している。電波天文
  業務では、極めて微弱な信号を扱うため、無線局による電波の発射、
  人工雑音等により業務に支障をきたすおそれがあり、従来からの静止衛星
  軌道上の衛星による衛星通信システムに加えて、地球を周回する移動衛星
  等による新たな衛星通信システムによるサービスが開始されると、衛星
  から発射される各種周波数帯の電波が、広く地球全体を覆うこととなり、
  電波天文業務の継続的な運用に支障を生ずる懸念が示されている。
   国際的には国際電気通信条約に基づき、電波天文業務を無線局と同程度
  に混信等の妨害から保護すべきことが規定されている。我が国では、この
  規定を受け電波法を改正し、電波天文業務に係る受信設備と周波数帯を
  指定し、無線局と同様に他の無線局からの混信妨害から保護している。
   平成9年(1997年)に開催された国際電気通信連合(ITU)世界無線
  通信会議(WRC97)において、電波天文業務で使用している周波数帯
  の継続利用と新たな周波数分配等が決定され、当面、既存業務の無線局と
  共存を図りつつ、地球環境観測等の安定的な運用が推進されることとなっ
  た。
   今後とも、周波数の分配に当たっては、電波天文業務の継続的な運用に
  支障が生じないように配慮することが必要である。


第7章 情報通信を活用した地球環境観測

1 観測システムの現状と課題

 (1) 人工衛星によるグローバル観測
   昭和47年(1972年)に米国が打ち上げた、高分解能光学センサを搭載
  した地球観測衛星ERTS(現LANDSATの1号機)以来、高分解能赤外放射計、
  合成開口レーダやマイクロ波散乱計などのマイクロ波センサを搭載した
  衛星などが打ち上げられ、海面水温など個々の物理量の測定技術の開発と
  解析手法の確立がなされた。
   米国では1980年代後半からさらに多数の観測機器を搭載して地球環境を
  総合的に観測する大型の地球観測プラットフォーム衛星(EOS)計画が構想
  され、ヨーロッパと日本含む国際的な計画に発展した。日本のADEOSはEOS
  の第1号機とみなすことができる。
   1990年代中頃から巨額の資金を必要とするEOS計画をそのまま進める
  ことが困難となるとともに、巨額の開発資金を投じて多数の観測機器を
  大型のプラットフォームに集積することの危険性が指摘され、危険分散の
  点から小型衛星による観測が提案されている。
   近年、米国では、「より早く、より安く、より優れた」のかけ声のもと
  に、小型で且つ先端的な観測衛星を短期間で実現させており、今後、観測
  センサの小型・計量・低コスト化と先端化、及び実現までの期間の短縮は
  世界的な流れとなると考えられる。

 (2) 航空機・気球による観測
   航空機や気球に搭載するセンサでは衛星搭載センサでは困難な多機能化
  が比較的容易に行え、各種観測機能の実証、自然現象のプロセス研究など
  で優れた能力を発揮する。また、基礎データの取得、将来型センサの開発
  仕様の決定、データ処理アルゴリズムの開発において特に有効である。
  通信総合研究所と宇宙開発事業団が共同で開発した航空機搭載合成開口
  レーダはその典型例であり、XバンドとLバンドの2周波同時観測を実現し、
  分解能はXバンドで1.5mと衛星の場合の10倍以上で、多偏波観測機能や
  立体観測機能も有する(資料25)。
   また、航空機では、人工衛星と異なり、災害などの緊急時に即応性の
  ある観測が可能であることも優れた特徴である。

 (3) 地上における観測とそのネットワーク化
   衛星観測の長所(空間分布の把握)と地上観測の長所(経時的変化の
  把握)を組み合わせ、現象のプロセスの把握とモニタリングを効果的に
  行うことが可能となる。
   衛星観測データとの組み合わせを効果的にするためには、地上観測でも
  複数点での連続観測が必要で、このためには観測とデータ利用の効率化を
  図るネットワーク観測の手法が効果的で、今後の主流となると考えられる。
   しかし、これまでの観測ネットワークは、ネットワークを通じてデータ
  をリアルタイムで共有したり管理するに至っていない。その中で、アラス
  カ大学地球物理学研究所の行っているGEDSでは、各所で観測されたデータ
  をリアルタイムあるいは準リアルタイムで収集し、多数のディスプレイに
  同時表示し、またそれらを蓄積することで、多種・多量のデータを研究者
  が効率的に扱う具体的な手法を提示する、先駆的な取組である。
   また、今後は、地上観測においても、衛星観測の場合と同様に、センサ
  からデータ伝送、処理・配布までを一元化して観測のシステム化を図り、
  第三者によるデータ利用が容易に行えるようにすべきである。

2 観測データの伝送・処理・配布

 (1) 人工衛星から地上への観測データの伝送の現状と課題
   当初の地球観測衛星ではオンボード・レコーダが無く地球局の可視範囲
  でしか観測ができなかったが、その後のオンボード・レコーダの進歩に
  よりグローバルな観測データを記録し地球局で地上に降ろすことで地球
  規模の観測が可能となった。現在では、データ中継衛星の開発によって、
  地球上のすべての場所の観測データがリアルタイムで取得できるように
  なっている。TRMMはこの方式で運用されている。しかし、最近、コスト面
  と利用面の双方で、地球局方式が再評価されている。
   近年、各国・各機関が種々の地球観測衛星を打ち上げており、これらの
  データの受信を一機関で行うことが困難になっており、国内でも複数の
  地球局が必要となっている。このような体制は、特に、災害監視や気象
  予報に取り込むなどのリアルタイム性が要求される場合には不可欠なもの
  となる。

 (2) 地球局からデータ処理システムへのデータ伝送の現状と課題
   観測データ量の増大への対応とリアルタイム性の確保から、受信データ
  の伝送において高速ネットワークが必要不可欠となっている。特に、地球
  上に分散した地球局の受信データを国内のデータ処理システムへ送るため
  には、静止通信衛星や光ファイバによるグローバル高速ネットワークが
  必要不可欠である。現在、郵政省ではギガビット超高速衛星通信ネット
  ワークの計画を進めており、通信総合研究所では、国内においてNTTの
  打ち上げたN-STAR衛星のKaバンドマルチビーム中継器を用いて鹿島宇宙
  センタと京都精華町の間で155Mbpsの伝送実験を実施している。

 (3) データ処理と利用者へのデータ伝送の現状と課題
   現在、センサの高空間分解能、高スペクトル分解能などによる観測デー
  タの大容量化により、高速データ処理が必要不可欠となっている。これに
  対処するためには、データ処理を複数の機関で行う分散処理・蓄積の形態
  をとらざるを得ない。加えて、今後予想される大容量データの処理・解析
  においては、個々の利用者の処理能力の向上が不可欠であり、データ利用
  ソフトウェアの開発・提供を行って、末端ユーザを支援する体制を整備
  する必要がある。

 (4) 観測からデータ利用までを一体化したデータシステム
   今後は、上記の観測からデータ利用までのデータの流れを一体化した
  データシステムとして運用することが、地球温暖化など地球環境の観測・
  計測の効率化にとって必要である。米国では、EOS計画の提案とともに、
  地球観測データ情報システムEOSDISの構築が開始されている。

3 観測・計測における情報通信技術の利用

 (1) 観測・計測における情報・データ利用の特徴
   (1) 発信源の空間的・時間的分散性
    環境情報・データは、本質的に広域に分散された計測機器、機関に
   より取得・生成される。
   (2) マルチメディア性
    その内容は文字データ、数値データ、グラフ、表、画像、動画像
   など多様である。
   (3) 内容の多様性・分散性
    データ解析においては物理、化学、生物、地質、気象などの学術
   分野を含み、対象分野も地下、海中、海上、地表、低層〜高層大気、
   宇宙といった広い領域に及ぶ。
   (4) 大容量性
    このため環境計測に限っても、その扱うデータの量は莫大である。
   (5) 利用者の多様性・分散性
    それぞれの分野や対象領域で取得・生成されたデータは、その分野
   だけにとどまらず、種々の分野の研究機関・研究者が利用する。さら
   に、環境問題は生活と密接に関係していることから、その利用者は
   国・地方自治体などの必ずしも専門知識を持たない人々や政策決定者
   にまで及ぶ。
   (6) 異文化性
    これらの分野あるいは対象領域では、使用する専門用語、方法論、
   分析方法、考え方、価値観などが種々さまざまに異なる。
   このことは、環境情報の処理及び表現を極めて複雑にする。しかし、
  環境問題はこれら種々さまざまな人々の協力なくしては対処し得ない問題
  であることから、データあるいは情報は、これらの人々が全て認識できる
  形でまで処理し表現する必要がある。一方で、これら種々さまざまな人々
  がある程度共通の言葉、分析方法などを持つように教育・訓練することも
  重要である。

 (2) 観測・計測で要求される情報通信利用技術
   これら環境分野における情報通信利用の特徴から、今後環境計測分野
  では以下のような情報通信利用技術が必要となる。
   (1) 分散データの効率的な収集・交換技術
   (2) 多数の機関・研究者へのデータの提供技術
   (3) 多様な利用者に対応するデータ処理・加工技術
   (4) 多種・多様なデータの効率的な解析技術
   (5) 異分野間の共同研究・協調解析の具体化技術
   これらの意味するところは、環境計測の分野における情報通信利用は
  単なる1対1の通信線の確保、1メディアによる通信では無意味であり、
  「ネットワーク化」「マルチメディア化」が必然であることである。

   (1) 分散データの効率的な収集・交換技術
    米国においては国立科学財団(NSF)の支援するNSFnetが大学や研究所
   を高速回線で結ぶネットワークインフラの整備を進めており、この
   国際的な展開であるアジア・パシフィック先端ネットワーク(APAN)
   の実現により、近年、ネットワーク環境の改善が著しい。
    また、ATMスイッチ、サービスの質の改善(QoS)などの各種ネット
   ワーク技術の進歩によってマルチメディア大容量データの交換が可能
   となりつつある。
    さらに、移動体衛星通信技術の発展により、北極などの極限地域に
   おける観測データの収集・利用環境の改善が予想される。
    今後、環境計測分野においても、グローバル情報通信ネットワーク
   による大容量分散データの効率的な収集・交換をめざして、ATM等の
   技術を用いた地球環境データの利用に適合する高速ネットワーク技術
   の開発を一層進める必要がある。郵政省通信総合研究所では、その
   第一段階として、地球変動観測高度化のための情報通信技術の開発に
   着手し、既存の国際情報ネットワークを利用した分散データの効率的
   な収集・交換技術の研究開発を進めている(資料26)。

   (2) 多数の機関・研究者へのデータの提供技術
    環境計測分野においては、データベース及びこれを提供するための
   データセンタはデータ利用の根幹をなしており、検索や利用の利便性
   を備えた分散型のデータベースあるいはデータセンタが今後の方向と
   考えられる。
    データベースの利用の点では、ブラウズ・データの普及やディレク
   トリの整備により情報検索手法の高度化が進んでおり、最近のイン
   ターネットの高度化とWWWなど情報検索ツールの発達により、情報への
   アクセスの改善が図られている。
     将来的には、高速ネットワークでこれら分散型データベースを組み
   合わせて階層化した、解析型・統合型データベースの研究も重要な
   テーマである。これにともない、データセンタも、地理情報システム
   などで提案されているように、蓄積型のデータセンタから解析型の
   データウェアハウスへの転換を図り、環境と持続可能な開発に関する
   情報へのアクセスの改善をいっそう進めるべきである。

   (3) 多様な利用者に対応するデータ処理・加工技術
     環境計測データの有効利用のためには、多様な利用者が大容量の
   データを効率的に解析・判断できる環境の整備が必要である。この
   ために、各種画像の組み合わせによる分類精度の向上、画像の自動
   判読と必要データの自動抽出、データ同化によるデータ・フュージョ
   ン、データの3次元視覚化、データの動画化などのデータ処理・加工
   技術の向上とそのためのソフトウェアの普及を図ることが重要である。

   (4) 多種・多様なデータの効率的な解析技術
     今後、大容量のデータを限られた人手で効率的に解析するためには、
   マルチ表示システムによる多元的なデータ解析手法の開発など、情報
   通信技術の積極的な活用が不可欠である。

   (5) 異分野間の共同研究・協調解析の具体化技術
     地球環境分野では、研究者や現場の担当者がそれぞれの分野で最先
   端の知識や技術を維持したままで、異分野の研究者や担当者と協調
   して研究・作業を行うことが求められる。このためのシステムとして、
   ネットワーク観測、分散型データベース、多元的データ解析システム
   及び高速ネットワークによる協調解析システムを包含する総合的な
   システムとして、マルチメディア・バーチャル・ラボラトリ(MVL)が
   提案されている。郵政省通信総合研究所では平成9年度(1997年度)
   より、MVLのために必要となる技術の開発や、既存技術を利用した
   その有効性の実証実験に着手している(資料27)。


第8章 途上国の環境問題への取組に対する国際協力

1 途上国における地球環境問題の現状と今後の見通し

  途上国の多くは、貧困な中で、非常に高い人口増加を示しており、エネ
 ルギー消費の拡大、CO2排出の増大が続いている。また、都市への人口
 集中に基盤インフラの整備が追いつかず、大気汚染、水質汚濁、土壌汚染
 といった都市公害が発生し、それらがさらには酸性雨のような地球環境
 問題に発展している(資料2829)。
  地球温暖化問題についてみると、現在途上国においては、先進国に比較
 して過去のCO2累積排出量も少なく、一人当たりのCO2排出量もASE
 AN諸国等の一部の国を除くとなお低い水準にあるが、ASEAN諸国等
 を中心にCO2排出量の伸び率は先進国を大きく上回っており、将来的には
 CO2排出量は大幅かつ急速に増加する見通しとなっている。
  また、途上国のエネルギー消費効率は、先進国に比べると全般に非効率
 であり、大きな省エネルギーの余地をもっている。
  以上のように、今後途上国の地球環境問題は重要性を増していくことは
 間違いなく、先進国と途上国が協力して問題の解決に向かう必要がある。

2 途上国に対する環境関係の国際協力の現状

  現在、我が国の地球環境保全に関する国際協力は、平成9年(1997年)の
 国連環境開発特別総会において、我が国のODAを中心とした環境協力の
 包括的な中長期構想として発表した「21世紀に向けた環境開発支援構想
 (ISD)」に沿って進められている(資料30)。
  現在までに実施されてきた環境に係る国際協力の概要は、次のとおりで
 ある(資料31)。

 (1) ODAを通じた我が国の国際環境協力
   我が国の環境ODAの具体的な対象分野は下記のとおりである。
 (1) 居住環境改善(上下水道、ゴミ処理等)
 (2) 防災(洪水防御等)
 (3) 森林保全
 (4) 公害対策(大気汚染防止、水質汚染防止等)
 (5) 省エネルギー
 (6) 自然保護 等
   また、国際的な途上国への地球温暖化防止資金支援メカニズムの運営
  主体(GEF)への資金拠出を始めとして、世界銀行、アジア開発銀行等
  の金融機構、ITTO(国際熱帯木材機関)、IPCC(気候変動に関す
  る政府間パネル)、UNDP(国連環境計画)等の環境関連国際機関に
  対し資金の供与や専門家の派遣を行っている。
   途上国の環境問題対処能力の向上を重視し、タイ、インドネシア、中国、
  メキシコ、チリにおいて環境研究研修センターの設置等を通じた人造りを
  行っている。
   援助実施に当たっては、個別プロジェクトの採択、実施、評価のあらゆ
  る段階において環境配慮に留意してきている。また、援助実施機関(JI
  CA、OECF)では事前調査の段階における「環境配慮のためのガイド
  ライン」を作成し、プロジェクトを実施する際に予想される自然・社会
  環境への影響について様々な角度から調査を実施している。

 (2) 地球温暖化防止のための共同実施活動
   気候変動枠組条約には、各国が有する地球温暖化防止に関する技術、
  ノウハウ、資金等を組み合わせることにより世界全体として地球温暖化
  防止対策を費用効果的に実施することを目的として、条約締結国が共同
  して温暖化防止のための政策及び措置を実施する「共同実施」が規定され
  ている。この「共同実施」を進めるための諸条件については、平成7年
  (1995年)にベルリンで開催された第1回条約締結国会議(COP1)で
  議論されたが、主に先進国と途上国との間の共同に関する条件について
  国際合意が得られず、代わって「共同実施」のパイロット・フェーズとの
  位置づけで「共同実施活動」が行われることとなった(資料32)。
   このCOP1の決定を受けて、我が国は平成7年(1995年)に「気候変動
  枠組条約に係るパイロット・フェーズにおける共同実施活動に向けた
  我が国の基本的枠組み(共同実施活動ジャパンプログラム)」を申し合わ
  せた。この枠組みに沿って、平成8年(1996年)から11件の共同実施活動
  が開始されている。

 (3) 民間レベルでの国際協力の推進
   NGOが行う途上国への環境協力などについて「地球環境基金」を設け
  支援を行っている(環境事業団)。また、郵政省の寄附金付郵便葉書や
  国際ボランティア貯金の寄附金の配分等においても、NGOの環境保全
  事業が支援対象となっている。

3 京都議定書における地球温暖化防止のための国家間協力

  平成9年(1997年)12月開催のCOP3で採択された京都議定書では、
 地球温暖化防止のための国家間協力について、次の3つの概念が定めら
 れた。

 (1) COP3で定められた国家間協力
  ア 共同達成
   「排出削減数値目標」(議定書第3条の温室効果ガス排出抑制削減の
   約束)を共同で達成することに合意した「先進国」(気候変動枠組条約
   附属書I締結国は、合意をした国の合計の排出量が合計の約束量を超え
   ない場合に、約束を達成したものとみなされる。

  イ 排出取引
   「先進国」間の共同事業として温室効果ガスの人為的排出の削減、
   人為的吸収の拡大を行い、共同国間の排出削減量の移転・獲得を認める。
    ただし、事業に関与する締結国の承認があること、その事業がなかっ
   た場合に比べて排出量の削減か、吸収量の拡大をもたらすこと、国内的
   行動に対して補完的であること等の条件がある。
    また、「排出削減数値目標」を持つ国(京都議定書附属書B締結国)
   は、その約束の履行のために排出量の取引に参加することができる。

  ウ クリーン開発メカニズム
    このメカニズムの目的は、「途上国」(気候変動枠組条約非附属書I
   締結国)が持続可能な開発を達成し、条約の究極の目的に貢献すること
   を支援し、「先進国」が「排出削減数値目標」を達成することを支援
   することである(京都議定書第12条:資料32)。
    その内容は、「途上国」が、認証された排出削減をもたらす事業活動
   から利益を得て、「先進国」が締結国会議の決定に従い「排出削減数値
   目標」の達成の一部に当てるために、事業活動から生ずる認証された
   排出削減量を利用することができるというものである。


    すなわち、「先進国」は資金拠出して「途上国」を援助し、その結果
   得られた排出削減量を(先進国の)「排出削減数値目標」の達成に利用
   することができるとしている。
    また、クリーン開発メカニズムには、公共セクターだけではなく民間
   企業も参加することができる。

   以上の排出取引とクリーン開発メカニズムの方法、ガイドライン等の
  詳細は、京都議定書第1回締結国会議(MOP1:COP4と同時開催、
  平成10年(1998年)11月ブエノスアイレス)以降に決定される。

 (2) 我が国の国家間協力の活用の検討
   COP3で決まった我が国の「排出削減数値目標」は、「平成2年
  (1990年)比6%の削減を平成20年(2008年)〜平成24年(2012年)の期間
  に達成」というもので、既存の国内対策の積み上げだけでは達成が難しい
  と考えられている。今後、COP4、MOP1に向け、国内対策の強化に
  加え、クリーン開発メカニズムを我が国の対策にどのように織り込んで
  いくのか検討が必要である。

4 途上国における環境改善対策と情報通信の役割

  多くの途上国では公共的な情報通信設備の未整備に起因する問題を多く
 抱えており、それらを改善することができれば、交通の効率的利用や、
 対応するエネルギーの節減対策が急速に進み、環境負荷の低減に結びつく
 ことが期待できる。
  途上国の中でもアジアの途上国は、地政的、社会・経済的に我が国と
 緊密な関係にあると同時に、世界の中の成長センターであり、今後の地球
 環境の保全にとって大きな影響力を持っていることから、我が国にとって、
 アジアの途上国に向けた環境関連の援助が重要である。
  さらに、これらのアジア地域の開発途上諸国においては、急速な工業化、
 熱帯林の破壊等が進み、酸性雨、砂漠化等の地球環境問題が指摘されて
 いる。この様な地球環境問題を解明するためには、その前提として、地球
 環境変動メカニズムを解明することが不可欠であり、広域を瞬時に測定
 できる電磁波技術による地球環境の監視・観測(モニタリング)の果たす
 役割は極めて有効である。

   さらに、環境問題は南北問題、人口・食料問題など、それぞれの国の
  おかれた状況や地理的条件が関与する難しい問題を抱えているだけに、
  相互理解が大変重要であり、情報通信の発達がその促進に寄与し、自助
  努力と支援に大きく貢献する。
   また、地球温暖化問題に関しては、我が国はアジアの中で唯一の京都
  議定書の温室効果ガスの排出削減数値目標を持つ国であることから、
  同議定書で規定されたクリーン開発メカニズム(上述)を先進国として
  利用し、アジアの途上国などと共同して費用効果的に温室効果ガスの排出
  削減に取り組む方策を検討する必要がある。特に、途上国でのCO2排出
  削減量を我が国の排出削減分として計上できるような方策の策定が重要で
  ある。
   以上の状況を踏まえると、我が国が取り組むべき、途上国における情報
  通信を活用した環境改善対策は次のとおりである。

 (1) アジアの途上国での移動の代替
   アジアの途上国で、情報通信を活用した移動の代替により環境負荷の
  低減を図ることが考えられる。
   道路環境・(公共)交通環境の未整備の高人口密度都市圏で情報通信を
  活用した人流の代替を図ることで、交通渋滞の緩和等を通じた環境負荷の
  低減が期待できる。また、投資が生活基盤、産業基盤整備となる。
   具体的な方策としては、テレワークの推進、ITSの推進が考えられる。
  (財)未来工学研究所の調査によると、バンコクにおいてテレワークを推進
  した場合の、交通代替効果及び環境負荷低減効果の試算例では、テレワー
  クの推進で最大8%弱の乗用車走行量及びCO2、NOx、SPMなどの
  環境負荷物質の排出を削減できるとしており、大きな効果が期待できる(
  資料33)。この内、CO2の排出削減については、クリーン開発メカニ
  ズムの活用により、我が国の排出削減分として計上できる可能性がある。
   また、APEC加盟地域では、テレワークを導入するためのハンドブッ
  クの作成をプロジェクトとして採択しており、アジアの途上国での活用が
  期待される。

 (2) モニタリング
   途上国への環境改善に対する情報通信の活用として、モニタリングへの
  活用も非常に重要で、環境問題に対する正確な状況把握を行い、対策に
  反映させることが必要である。
   地球観測衛星を利用した地表状況のモニタリング(リモートセンシン
  グ)は、砂漠化や熱帯林減少、土地利用の変化、海洋汚染の状況把握に
  効果を発揮する。
   また、電磁波による観測・計測技術を用いた、地球環境に大きな影響を
  与える対流圏から熱圏までの地球大気のモニタリングは、地球環境変動
  機構の解明に貢献する。
   雨水pHセンサーを結合したネットワークによる酸性雨の状況のモニタ
  リング等、測定センサーをネットワークで結び、大気質や水質の遠隔監視
  を行うことも重要である。
   小型発信器を埋めた物体の追跡モニタリング技術は、野生動物の生態は
  把握や有害廃棄物移動のモニタリングに威力を発揮する。
   また、以上のようなモニタリングに必要な技術の移転、モニタリング
  した情報の収集・整理・加工・配信等に、積極的に情報通信を活用すべき
  である。


第9章 政策提言

 前章までに、地球環境問題の現状と情報通信の活用について、幅広い観点
から検討し、高度な情報通信システムの活用が地球環境の保全に非常に有効である
ことが明らかになったところである。これを踏まえ、情報通信の活用による地球環
境保全のための具体的な政策を以下のとおり提言する。

1 CO2排出削減効果の期待できる情報通信システムの普及の推進

 (1) テレワークの推進
   テレワークは、交通代替による大きなCO2削減効果が期待できる。
   前述のように当審議会の試算では、テレワーク人口が2,080万人と
  なった場合、110万炭素換算トンのCO2削減効果が見込まれており、
  その実現のため、郵政省が推進している(1)公務員への積極的な導入、
  (2)テレワークセンター施設整備事業の推進、(3)テレワークに関する国際
  的な連携の推進等の施策を一層推進するとともに、今後、民間分野に
  おけるテレワークの導入を一層促進するため、関係省庁と連携しつつ、
  税制支援制度や財政投融資制度の創設等の支援措置の充実を図る必要が
  ある。

 (2) 高度道路交通システム(ITS)の推進
   ITSについては、交通流の円滑化などによる大幅なCO2削減効果が
  試算されている。現在、郵政省は、関係省庁と共同でモデル実験の
  フィージビリティスタディを行っているところであるが、今後とも、
  21世紀初頭の実現を目指し、一層の推進を図る必要がある。

 (3) 環境負荷低減型情報通信システム導入の促進
   遠隔会議システム、遠隔医療システム、遠隔教育システム等、環境
  負荷の少ない経済社会システムの構築に資する情報通信システムの導入
  を促進するため、税制支援制度や財政投融資制度の創設等の支援措置の
  充実を図る必要がある。


 (4) 物流の情報化の推進
   物流の情報化は、物流の効率化を進めるために不可欠であり、CO2
  削減効果も大きい。このため、共同輸配送の推進、物流システムの安全
  性・信頼性の向上等に資する移動通信システム、衛星通信システム、
  地理情報システムなどの各種の情報通信ネットワークの開発・普及を
  推進する必要がある。

 (5) 普及推進のための法制度の整備等
   日本でテレワークが普及しない理由の1つに、時間外労働や労働災害
  の問題がある。そのため、労働関係法制度の整備を図ることにより、
  21世紀のワークスタイルとして期待されるテレワークの推進に対する
  取組の方向性を国として明らかにする必要性がある。
   また、紙の使用量の削減を阻んでいる要因として、現行法体系が情報
  通信の利用を想定していないという側面があり、これについては、高度
  情報通信社会推進本部・制度見直し作業部会において、(1)書類の電子
  データによる保存、(2)申告・申請手続きの電子化・ペーパーレス化を
  できる限り速やかに実施することとされており、これを踏まえ、早期に
  制度見直し・規制緩和を推進することが望まれる。
   さらに、国や地方公共団体等が持っている環境保全に資する各種の
  データや情報を情報通信システムを活用して積極的に提供・開示して
  いくことが必要である。

2 情報通信事業分野における自主的計画策定の支援

  既に環境自主行動計画を策定している他産業と同様、情報通信事業分野
 においても、CO2排出削減のための自主的な行動計画を策定し、これを
 着実に実施することが必要である。
  昨年11月、当審議会は、地球温暖化対策に焦点を絞った中間取りまと
 めを公表し、その中で「情報通信事業分野における自主的計画策定の
 支援」を提言した。これを受け、郵政省では、通信・放送関係業界に自主
 行動計画の策定を要請し、現在、業界団体において自主行動計画の策定に
 向け、作業が進められているところである。
  今後、自主行動計画を確実に推進するため、地球温暖化対策の実施状況
 について、年1回、当審議会を活用したフォローアップを行うことが必要
 である。

3 情報通信機器の省エネルギー対策及びネットワークの高機能化の推進

  省エネ法等に基づく個々の情報通信機器の稼働時消費電力及び待機電力
 の削減など機器単体に対する省エネ対策を推進するとともに、これに加え、
 ネットワーク全体の通信制御方式や運用方法、技術開発を進めて、トラ
 フィック量に応じた柔軟な伝送・交換機能を実現するなど、省エネの観点
 からのネットワークのインテリジェント化・高機能化を一層推進すること
 が必要である。

4 情報通信を活用した地球環境に関する啓発・教育の推進

  CO2の削減その他地球環境の保全のためには、あらゆる部門の人々に
 対する啓発や教育が必要となり、そのためには、情報の効果的な提供が
 重要である。
  特に、日常生活に起因する環境負荷が地球環境問題の大きな原因と
 なっているため、ライフスタイルの変革が不可欠であり、国民一人一人が
 CO2削減効果を有する各種情報通信システムを積極的に活用していくと
 ともに、その利用面でも、情報通信機器の待機電力や消し忘れなど、環境
 負荷の低減に留意することが求められる。
  近年、インターネット等の普及により、画像、音声、動画、アプリケー
 ション等がネットワーク上でやりとりされるようになってきていること
 から、これらを活用し、ライフスタイルを環境負荷低減型に変革させる
 ような分かりやすい啓発・教育が必要である。
  このため、様々な地球環境情報を収集・提供する環境情報収集・提供
 システムの開発に向けた情報通信ネットワーク技術の研究開発とその
 導入・普及を推進する必要がある。
  さらに、今後も、COP3において構築された情報提供システムのよう
 な国際会議における情報通信システムの積極的な活用を推進する必要が
 ある。

5 情報通信システムのCO2排出量や削減効果等に関するデータの蓄積

  説得性のある啓発と教育を効果的に行うために、また、政策の立案や
 調査研究・シミュレーションを行う際の基礎となるデータとして、情報
 通信システムの稼働時の原単位、情報機器の製造時のCO2排出量等、情報
 通信とCO2排出に関連する様々な基礎的データの整備が必要となる。
  CO2排出削減に資することが期待される情報通信システムについて、
 変化する実態を把握し、実際のCO2排出削減効果を継続的、定量的に確認
 していくことが必要である。

6 地球環境に関する観測・計測

  地球規模の環境対策を国際的な協調のもとに進めるためには、観測に
 よる状況の把握と発生機構の解明、モニタリングによる推移の把握、並び
 にそれらのデータ・情報を世界中で共有することが鍵となる。
  全地球規模の現象を把握し、モデルによる影響評価・予測を行うために、
 人工衛星等を用いた地球規模の観測・計測技術を向上し推進するとともに、
 そのデータ利用技術の向上を図る必要がある。
  また、地球温暖化等の地球規模の環境変動におけるそれぞれの地域の
 役割とそれぞれの地域に与える影響を評価するために、それぞれの地域に
 応じた総合的な拠点観測・計測のための技術開発を推進するとともに、
 各地域の観測データの融合と利用を促進するための技術開発を推進する
 ことが必要である。
  地球環境の観測・計測におけるネットワーク等を利用した情報通信技術
 の開発とその活用を積極的に推進し、環境・開発情報へのアクセスの改善
 とその利用のための技術の向上を図るとともに、企業をはじめ、様々な
 主体が保有する環境情報の開示・提供を促進するなど、利用のための環境
 整備を行うことが必要である。

7 途上国との協力、途上国への支援

 (1) アジアの途上国でのテレワークの推進
   自動車交通需要の伸びに交通インフラの整備が追いつかず、激しい
  交通渋滞を起こしている地域を対象として、京都議定書で採択された
  クリーン開発メカニズムの活用を視野に入れつつ、テレワークの推進を
  図るための取組を推進していく。

 (2) テレワーク導入ハンドブック作成の推進
   APECプロジェクトとして採択されたAPEC諸国向けのテレワー
  ク導入ハンドブックの作成を我が国が中心となって推進していく。

 (3) モニタリングの推進
   これまでに取り組んできた、電波・光を用いた地球観測・モニタリン
  グ等の成果を、途上国の環境保全に活用できるように支援していく等、
  既存の取組を強化していく。

8 研究開発の推進

  上記1から7までの施策の推進に必要な技術の研究開発を積極的に推進
 する必要がある。具体的には、通信総合研究所等の国の研究機関における
 研究の推進のほか、通信・放送機構の研究実施・支援スキーム等を活用
 して、民間におけるCO2排出削減のための情報通信に関する研究開発の
 促進を図る必要がある。


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