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平成26年版
地方財政白書
(平成24年度決算)

8 東日本大震災の影響

(1)普通会計

平成23年3月11日に発生した東日本大震災は、死者18,703人、行方不明者2,674人(平成25年9月9日、総務省消防庁発表)、被害総額(推計)約16兆9千億円(平成23年6月24日、内閣府(防災担当)発表)にのぼる被害をもたらすとともに、全国的にも生産、消費、物流等の経済活動に大きな影響を与えた。

東日本大震災発生以降、政府を挙げて被災者の生活の支援や被災地の復旧・復興対策の取組が進められ、平成24年度においても前年度に引き続き、被災地の地方公共団体を中心に復旧・復興事業に係る経費が支出されるとともに、被災地以外の地方公共団体において被災地の地方公共団体への支援事業や東日本大震災の教訓を踏まえ全国的に緊急に実施する防災・減災事業等に係る経費が支出されるなど多額の東日本大震災関連経費が支出されたところであり、その状況は次のとおりである。

ア 東日本大震災分の歳入及び歳出の状況[資料編:第136表第138表

(ア)歳入

東日本大震災分の歳入は6兆89億円で、地方債や繰入金の増加等により、前年度と比べると19.4%増となっている。これを団体種類別にみると、都道府県においては、特別交付税等の一般財源や国庫支出金の減少等により前年度と比べると13.3%減となっている一方で、市町村においては、東日本大震災復興交付金等の国庫支出金や緊急防災・減災事業債等の地方債の増加等により前年度と比べると119.5%増となっている。

歳入の構成比は、国庫支出金が47.2%(前年度53.3%)、繰入金が16.5%(同4.9%)、一般財源が15.4%(同28.1%)、地方債が10.0%(同4.7%)などとなっている。

国庫支出金は2兆8,373億円で、東日本大震災復興交付金の増加等により、前年度と比べると5.7%増となっている。

繰入金は9,904億円で、東日本大震災復興関連基金からの取崩し額の増加等により、前年度と比べると301.3%増となっている。

一般財源は9,260億円で、特別交付税及び震災復興特別交付税の減少等により、前年度と比べると34.6%減となっている。

地方債は5,991億円で、緊急防災・減災事業債の増加等により、前年度と比べると154.5%増となっている。

(イ)歳出

東日本大震災分の歳出は、5兆3,198億円で、普通建設事業費、物件費、災害復旧事業費の増加等により、前年度と比べると18.5%増となっている。これを団体種類別にみると、都道府県においては2兆9,791億円で、積立金の減少等により、前年度と比べると18.0%減となっている一方で、市町村においては3兆446億円で、積立金、普通建設事業費の増加等により、前年度と比べると138.4%増となっている。

a 目的別歳出

目的別歳出の構成比は、総務費が32.1%(前年度24.7%)、民生費が13.4%(同23.1%)、災害復旧費が11.4%(同11.4%)、教育費が9.9%(同3.1%)、土木費9.3%(同3.6%)、商工費が9.1%(同10.2%)、衛生費が4.8%(同13.9%)などとなっている。

総務費は1兆7,058億円で、東日本大震災復興関連基金への積立の増加等により、前年度と比べると54.0%増となっている。

民生費は7,106億円で、応急仮設住宅の設置の減や災害弔慰金の支給の減による災害救助費の減少等により、前年度と比べると31.5%減となっている。

教育費は5,277億円で、学校施設耐震化等の緊急防災・減災事業の増加等により、前年度と比べると277.4%増となっている。

土木費は4,967億円で、復旧・復興事業及び緊急防災・減災事業に係る普通建設事業費の増加等により、前年度と比べると206.6%増となっている。

商工費は4,862億円で、補助費等の増加等により、前年度と比べると5.8%増となっている。

衛生費は2,560億円で、地域医療再生臨時特例基金や福島県の県民健康管理基金等への積立の減少等により、前年度と比べると59.1%減となっている。

b 性質別歳出

性質別歳出の構成比は、積立金が37.0%(前年度45.8%)、普通建設事業費が23.9%(同11.7%)、物件費が13.2%(同11.4%)、災害復旧事業費が11.4%(同11.4%)などとなっている。

積立金は1兆9,670億円で、都道府県における東日本大震災復興関連基金への積立の減少等により、前年度と比べると4.3%減となっている。

普通建設事業費は1兆2,723億円で、復旧・復興事業や学校耐震化等の緊急防災・減災事業の増加等により、前年度と比べると142.4%増となっている。

物件費は7,031億円で、被災地における廃棄物処理事業の増加や震災等緊急雇用対応事業の増加等により、前年度と比べると37.3%増となっている。

災害復旧事業費は6,077億円で、補助事業費の増加等により、前年度と比べると19.0%増となっている。

イ 特定被災地方公共団体等における決算の状況[資料編:第139表

(ア)特定被災県

a 歳入

特定被災県(「東日本大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律」(平成23年法律第40号。以下「東日本大震災財特法」という。)第2条第2項に定める特定被災地方公共団体である県をいう。)である9県の歳入総額は11兆4,073億円で、前年度と比べると5.7%減(全国では2.3%減)となっている。

このうち、通常収支分は8兆3,795億円で、前年度と比べると1.2%減(全国では1.4%減)、東日本大震災分は3兆277億円で、前年度と比べると16.4%減(同13.3%減)となっている。

歳入総額の内訳を前年度と比べると、地方税が4.3%増(全国では2.4%増)、地方交付税が13.2%減(同3.9%減)、国庫支出金が32.8%減(同15.6%減)などとなっている。

b 歳出

特定被災県の歳出総額は10兆7,756億円で、前年度と比べると7.5%減(全国では2.9%減)となっている。

このうち、通常収支分は8兆1,820億円で、前年度と比べると1.8%減(全国では1.8%減)、東日本大震災分は2兆5,936億円で、前年度と比べると21.8%減(同18.0%減)となっている。

なお、特定被災県の東日本大震災分の歳出は、全国のそれの87%を占めている。

歳出総額の目的別の各費目を前年度と比べると、総務費が積立金の減少等により25.0%減(全国では9.2%減)、民生費が応急仮設住宅の設置の減や災害弔慰金に係る市町村への交付金の減等により17.9%減(同2.5%減)、衛生費が積立金の減少等により39.5%減(同24.6%減)、災害復旧費が48.4%増(同48.3%増)などとなっている。

歳出総額の性質別の各費目を前年度と比べると、普通建設事業費が応急仮設住宅の設置の減等により17.3%減(全国では5.0%減)、災害復旧事業費が48.4%増(同48.3%増)、補助費等が市町村の行う除染に対する交付金の増加等により9.0%増(同3.2%増)、積立金が50.5%減(36.2%減)などとなっている。

c 決算収支

特定被災県の実質収支は1,053億円の黒字で、前年度と比べると235億円増加(全国では176億円増加)している。

d 地方債現在高等の状況

特定被災県の地方債現在高は16兆1,679億円で、前年度末と比べると1.1%増(全国では1.7%増)となっている。債務負担行為額は1兆3,237億円で、前年度末と比べると8.8%増(同4.0%減)となっている。積立金現在高は2兆3,164億円で、前年度末と比べると3.6%増(同2.9%減)となっている。

(イ)特定被災市町村等

a 歳入

特定被災市町村等(「東日本大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律第二条第二項及び第三項の市町村を定める政令」(平成23年政令第127号)の別表第1に定める特定被災地方公共団体である市町村並びに同令の別表第2及び別表第3に定める市町村のうち特定被災地方公共団体以外のものをいう。)である227市町村の歳入総額は8兆5,141億円で、前年度と比べると17.5%増(全国では2.5%増)となっている。

このうち、通常収支分は5兆8,762億円で、前年度と比べると0.2%減(全国では0.8%減)、東日本大震災分は2兆6,379億円で、前年度と比べると94.7%増(同119.5%増)となっている。

歳入総額の内訳を前年度と比べると、地方税が0.8%増(全国では0.5%減)、地方交付税が8.7%減(同0.9%減)、国庫支出金が72.9%増(同8.7%増)などとなっている。

b 歳出

特定被災市町村等の歳出総額は8兆321億円で、前年度と比べると17.6%増(全国では2.4%増)となっている。

このうち、通常収支分は5兆6,206億円で、前年度と比べると1.0%減(全国では0.9%減)、東日本大震災分は2兆4,115億円で、前年度と比べると109.0%増(同138.4%増)となっている。

なお、特定被災市町村等の東日本大震災分の歳出は、全国のそれの79%を占めている。

歳出総額の目的別の各費目を前年度と比べると、総務費が積立金の増加等により83.3%増(全国では15.0%増)、民生費が災害廃棄物処理事業関係費の増加等により4.6%増(同1.9%増)、土木費が災害公営住宅整備事業や防災集団移転促進事業の増加等により21.9%増(同1.5%増)、災害復旧費が8.0%増(同15.7%増)などとなっている。

歳出総額の性質別の各費目を前年度と比べると、扶助費が災害弔慰金の支給の減少等により3.1%減(全国では1.4%増)、普通建設事業費が災害公営住宅整備事業や防災集団移転促進事業の増加等により22.6%増(同4.3%増)、災害復旧事業費が8.0%増(同15.7%増)、物件費が災害廃棄物処理事業の増加等により8.1%増(同0.1%減)、補助費等が災害廃棄物処理の県への委託の増加等により16.7%増(同7.1%増)、積立金が182.4%増(同60.1%増)などとなっている。

c 決算収支

特定被災市町村等の実質収支は2,478億円の黒字で、前年度と比べると53億円減少(全国では454億円減少)している。

d 地方債現在高等の状況

特定被災市町村等の地方債現在高は6兆2,568億円で、前年度末と比べると0.8%増(全国では0.0%減)、債務負担行為額は1兆5,120億円で、前年度末と比べると32.0%増(同8.1%増)、積立金現在高は2兆7,407億円で、前年度末と比べると81.9%増(同14.0%増)となっている。

(2)公営企業会計

地方公営企業については、「東日本大震災財特法」第2条第2項に定める特定被災地方公共団体である9県及び「東日本大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律第二条第二項及び第三項の市町村を定める政令」の別表第1に定める特定被災地方公共団体である178市町村(以下、特定被災地方公共団体である県及び市町村(当該団体が加入する一部事務組合等を含む。)を「特定被災地方公共団体」という。)を対象として、東日本大震災の災害復旧事業に係る一般会計からの繰出基準の特例等を講じている。

特定被災地方公共団体における地方公営企業の決算状況は次のとおりである。

ア 特定被災地方公共団体における公営企業の経営状況[資料編:第140表

(ア)総収支

特定被災地方公共団体における法適用企業と法非適用企業を合わせた収支の状況(建設中のものを除く。)は、黒字事業が848事業(事業数全体の90.5%)で、前年度(808事業)に比べ40事業、5.0%の増加であり、黒字額は982億円で、前年度(718億円)に比べ264億円、36.8%増加している。また、赤字事業は89事業(事業数全体の9.5%)で、前年度(135事業)に比べ46事業、34.1%の減少であり、赤字額は219億円で、前年度(471億円)に比べ252億円、53.4%減少している。

特定被災地方公共団体における公営企業の総収支は763億円の黒字で、前年度(247億円の黒字)に比べ516億円、208.4%増加している。

前年度に比べ収支が改善した事業は10事業あり、水道事業で208億円(対前年度比129.8%増)の改善と最も大きく、次いで宅地造成事業で103億円(同134.6%増)、病院事業で86億円(同233.5%増)の改善となっている。これらの事業で収支が改善した原因としては、料金収入の増加や、被災施設除却損による特別損失の減少等が挙げられる。一方、前年度に比べ収支が悪化した事業は5事業あり、工業用水道事業で6億円(対前年度比8.5%減)の悪化と最も大きく、次いで市場事業で3億円(同61.4%減)、観光施設事業で2億円(同52.5%減)の悪化となっている。

また、前年度に比べ黒字事業数が増加し、赤字事業数が減少した事業は8事業あり、特に、料金収入の増加が大きかった水道事業においては、黒字事業が30事業増加、赤字事業が33事業減少している。

(イ)法適用企業の状況[資料編:第141表第143表

特定被災地方公共団体における法適用企業の純損益の状況をみると、黒字事業は239事業(対前年度比34事業、16.6%増)で、建設中のものを除いた322事業の74.2%となっており、赤字事業は83事業(同39事業、32.0%減)で、同25.8%となっている。

総収益(経常収益+特別利益)は1兆1,692億円で、前年度(1兆1,389億円)に比べ303億円、2.7%の増加、総費用(経常費用+特別損失)は1兆1,123億円で、前年度(1兆1,328億円)に比べ205億円、1.8%の減少であり、この結果、純損益は570億円の黒字となっており、前年度黒字額(62億円)に比べ508億円、825.7%増加している。また、総収支比率は105.1%と前年度より4.6ポイント上昇している。

こうした純損益の改善の主な要因として挙げられるのは、料金収入の増加と特別損失の減少である。料金収入は9,405億円で、前年度(9,029億円)に比べ376億円、4.2%の増加、特別損失は210億円で、前年度(455億円)に比べ246億円、53.9%減少している。

なお、総収益に占める料金収入の割合は80.4%(前年度79.3%)と前年度に比べ1.1ポイント上昇している。

経常損益(純損益−特別損益)の状況をみると、経常利益を生じた事業数は240事業(対前年度比20事業、9.1%増)で、経常損失を生じた事業数は82事業(同25事業、23.4%減)となっている。経常損失を生じた事業数の全体事業数(建設中のものを除く。)に占める割合は25.5%と前年度より7.3ポイント低下しており、事業別にみると、水道事業、電気事業、ガス事業において減少している。

経常収益(営業収益+営業外収益)は1兆1,522億円で、前年度(1兆1,222億円)に比べ300億円、2.7%の増加となっており、経常費用(営業費用+営業外費用)は1兆915億円で、前年度(1兆872億円)に比べ42億円、0.4%の増加となっている。なお、経常損益は607億円の黒字で、前年度(350億円の黒字)に比べ257億円、73.6%増加している。また、経常収支比率は105.6%と前年度より2.3ポイント上昇している。

(ウ)法非適用企業の状況[資料編:第142表

特定被災地方公共団体における法非適用企業全体の形式収支(歳入歳出差引額)は479億円の黒字であり、前年度(516億円の黒字)に比べ37億円、7.1%減少している。また、この額から翌年度への繰越財源を控除した実質収支は193億円の黒字であり、前年度(186億円の黒字)に比べ7億円、4.0%の増加となっている。

実質収支で黒字を生じた事業は609事業で、全事業数(建設中のものを除く。)の99.0%、赤字を生じた事業は6事業で全事業数の1.0%となっている。黒字事業の実質黒字額は212億円で、前年度同数となっている。また、赤字事業の実質赤字額は18億円で、前年度(26億円)に比べ7億円、28.8%減少しており、営業収益(受託工事収益を除く。)に対する実質赤字額(赤字比率)は1.0%(前年度1.6%)となっている。

イ 特定被災地方公共団体における公営企業の料金収入[資料編:第143表]

料金収入は1兆592億円で、前年度(1兆80億円)に比べ513億円、5.1%増加している。

前年度に比べ料金収入が増加した事業は12事業あり、病院事業で123億円(対前年度比3.0%増)の増加と最も大きく、次いで水道事業で114億円(同3.5%増)、宅地造成事業で95億円(同31.7%増)の増加となっている。一方、前年度に比べ料金収入が減少した事業は3事業あり、最も大きいのは電気事業で1億円(対前年度比1.1%減)の減少となっている。

ウ 特定被災地方公共団体における公営企業の他会計繰入金[資料編:第144表]

他会計からの繰入金は4,324億円で、前年度(4,696億円)に比べ371億円、7.9%減少している。

この内訳をみると、収益的収入として2,398億円、繰入率(収益的収入に対する繰入金の割合)16.5%、資本的収入として1,926億円、繰入率(資本的収入に対する繰入金の割合)28.0%となっており、前年度に比べ収益的収入への繰入れは200億円、7.7%減少しており、資本的収入への繰入れも171億円、8.2%減少している。これらの要因としては、震災による修繕費及び災害復旧費の減少等が挙げられる。

前年度に比べ他会計繰入金が減少した事業は12事業あり、下水道事業で225億円(対前年度比11.2%減)の減少と最も大きく、次いで港湾整備事業で55億円(同21.4%減)、宅地造成事業で50億円(同9.0%減)の減少となっている。一方、前年度に比べ他会計繰入金が増加した事業は3事業あり、最も大きいのは交通事業で69億円(対前年度比30.8%増)の増加となっている。

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