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平成26年版
地方財政白書
(平成24年度決算)

4 行財政改革の推進

(1)給与の適正化及び適正な定員管理の推進

地方公共団体においては、現下の厳しい財政状況において、計画的に行政改革を推進するとともに住民への説明責任を果たす見地から、目標の数値化やわかりやすい指標の活用を図りつつ、給与情報等公表システムにより給与及び定員の公表を行うなど、定員管理や給与の適正化などの取組を行っている。

給与については、国の給与構造改革の取組を踏まえ、ほぼ全ての地方公共団体で給料表水準の引下げ等を実施している。

また、平成25年11月15日に「公務員の給与改定に関する取扱いについて」が閣議決定され、その中で国家公務員の給与については給与体系の抜本改革に取り組み、平成26年度中から実施に移すこととされ、地方公務員給与についても、国の見直しの動向に鑑み、地方の意見を聞きつつ検討していくこととしている。

地方公共団体の総職員数については、第51表のとおり、平成19年4月1日から平成24年4月1日までの5年間で、都道府県4.4%減、政令指定都市2.1%減、政令指定都市を除く市区町村9.6%減となっており、全地方公共団体では6.2%の減少となった。

第51表 地方公共団体の定員管理の状況について

(2)地方公営企業等の改革

ア 地方公営企業の抜本改革の推進

地方公営企業が、将来にわたり本来の目的である公共サービスの供給を行っていくためには、経営環境の変化に適切に対応し、事業の在り方を絶えず見直していくことが求められており、地方公共団体においては、以下に掲げる事項等について抜本改革の取組が進められているところである。

(ア)地方公営企業が供給しているサービス自体の必要性を検討する。また、サービスが必要な場合であっても、地方公営企業として実施する必要性があるのかを検討し、公共性の確保等の意義が薄れているなどの場合は、事業廃止、民間への事業譲渡を検討する。

(イ)地方公営企業として事業を継続する場合であっても、公の施設の指定管理者制度、地方独立行政法人制度、PFI事業、民間委託等の民間的経営手法の導入を促進する。

第125図に示されるように、平成16年度以降における事業廃止の事業数は318事業となっている。各事業について平成16年度決算対象事業数に対する平成16年度以降の事業廃止数の割合をみると、宅地造成事業13.2%(82事業)、と畜場事業11.3%(9事業)、観光施設事業・その他事業10.8%(54事業)の割合が高い。また、第126図に示されるように、平成16年度以降における民営化・民間譲渡の事業数は244事業となっている。各事業について平成16年度決算対象事業数に対する平成16年度以降の民営化・民間譲渡数の割合をみると、ガス事業36.2%(17事業)、交通事業20.7%(23事業)、介護サービス事業16.0%(123事業)の割合が高い。指定管理者制度については、第127図に示されるように、平成25年度時点での導入済事業数は739事業(都道府県・政令指定都市等116事業、市町村等623事業)となっており、各事業について平成15年度決算対象事業数に対する指定管理者制度導入(平成15年度)以降の導入数の割合をみると、駐車場事業59.1%(152事業)、観光施設事業・その他事業30.5%(170事業)、と畜場事業27.7%(23事業)の割合が高い。

第125図 事業廃止の状況
第126図 民営化・民間譲渡の状況
第127図 指定管理者制度の導入状況

全ての地方公共団体に対し、平成25年度までに、地方公営企業の抜本改革の推進、一層の経営の健全化等に集中的に取り組むことを要請しているところであるが、公営企業は経営環境の変化に対応しながら、あり方を絶えず見直す必要があり、平成26年度以降も、これまで抜本改革に係る検証を行っていない場合や今後事業環境が大きく変わった場合には、事業の意義や事業手法についての検討が求められる。

イ 第三セクター等の抜本的改革の推進

(ア)第三セクター等の抜本的改革

平成25年度の「第三セクター等の状況に関する調査」によれば、第52表のとおり、地方公社及び第三セクターの数は7,952法人で、前年比262法人減となっている。なお、平成24年度においては、廃止が243件、統合が19件、出資引き揚げが46件行われている。

第52表 第三セクター等の状況

地方公社及び地方公共団体等の出資割合が25%以上又は財政支援を受けている地方公社及び第三セクターのうち、約41%が赤字であり、平成24年度に法的整理を申し立てた法人は11となるなど、依然として厳しい経営状況にある。うち、土地開発公社については、平成24年度末における土地保有総額は第128図に示されるように、前年度と比べると4,388億円減少の2兆834億円となり、16年連続の減少となった。

第128図 土地保有総額の推移

第三セクター等は地域において住民の暮らしを支える重要な役割を担っている。一方で、地方公共団体が損失補償等を行っている第三セクター等に係る債務については、民間企業と同様の市場規律やガバナンスが働かないケースも多くあり、その経営状況が著しく悪化した場合は、地方公共団体の財政に深刻な影響を及ぼすことが予想される。

このため、平成21年度から平成25年度までの間、地方公共団体が自らの決定と責任の下、第三セクター等の抜本的改革に取り組み、財政規律を強化することを推進しているところである。そのため、地方公共団体に対し、地方公営企業、地方公社及び第三セクターの事業の意義、採算性等について、改めて検討の上で、事業継続の是非を判断し、債務調整を伴う処理が必要な場合は、法的整理等の活用を図るとともに、事業を継続する場合でも、最適な事業手法の選択、民間的経営手法の導入の検討を行うなど、第三セクター等改革推進債の活用も念頭に置きつつ、存廃を含めた抜本的改革に集中的かつ積極的に取り組むことについて助言・情報提供を行っている。

こうした第三セクター等の抜本的改革は、現時点において、全国的には相当程度の進捗が見られるところである。一方で、第三セクター等に係る財政的リスクが相当の規模にのぼる地方公共団体や、抜本的改革に係る方針が決定されていない地方公共団体も依然として存在している。このことも踏まえて、平成26年度以降も、地方公共団体が自らの判断と責任において、第三セクター等の抜本的改革を含む経営健全化に取り組むことが必要である。第三セクター等が、地域活性化や公的サービス提供等の地域において求められる役割を果たすことと、地方公共団体の財政の健全化を図ることとを両立させるために、引き続き助言・情報提供を行うこととしている。

(イ)第三セクター等改革推進債の状況

地方公営企業、地方公社及び第三セクターの改革については、地方公共団体が「地方公共団体財政健全化法」の全面施行から5年間で抜本的改革を集中的に行えるよう、平成21年度から平成25年度までの間の時限措置として、その整理又は再生のために特に必要となる一定の経費を議会の議決等の手続を経て地方債の対象とできることとされている。

平成24年度において第三セクター等改革推進債を起債した団体は21団体、許可額は1,824億円となっており、21年度から24年度までの累計額は、4,714億円となっている。また、平成25年度の許可額は4,822億円となる見込みであり、21年度から25年度までの累計額としては9,536億円となる見込みである。

なお、第三セクター等改革推進債については、地方財政法を改正して一定の経過措置を講じるため、「地方交付税法等の一部を改正する法律案」を第186回国会に提出した。

ウ 地方公営企業会計制度等の見直し

地方公営企業の会計制度については、昭和41年以来のほぼ半世紀ぶりとなる全面的な見直しを進めている。その内容は、「地方公営企業会計制度等研究会」の報告書(平成21年12月)を踏まえたものであり、大きく三段階に分かれる。

第一段階は、資本制度の見直しであり、利益処分や資本の取扱い等に関する制約を廃止し、議会の議決又は条例のもとで、経営判断に基づく処分等が可能となった。「地域の自主性及び自立性を高めるための改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」(平成23年法律第37号)によって「地方公営企業法」が改正され、平成24年4月から施行されている。この改正により、これまでは公営企業の経営に法による様々な制約があったが、経営の自由度を高めるとともに、住民等への情報開示や議会の関与を強め、地方公共団体が自らの責任において経営を行っていくことができるような仕組みが整備された。

第二段階は、会計基準の見直しである。主な見直し内容は、借入資本金を負債に計上すること、みなし償却制度を廃止すること、退職給付引当金等の引当てを義務化することなどであり、地方公営企業の特性等を適切に勘案しながら、現行の企業会計原則の考え方を最大限取り入れたものとなっている。関係政省令の一部改正については、平成24年2月1日から施行され、新しい会計基準は平成26年度の予算及び決算から適用(早期適用も可能)される。

新会計基準の適用によって、地方公営企業の経営実態をより的確に把握できるようになるとともに、損益計算書及び貸借対照表が他の地方公営企業や他のセクターと比較しやすく、住民等にも分かりやすいものになる。各地方公営企業においては、どの程度の赤字・黒字の構造か、どの程度公的支援に依存しているかなどを検証するとともに、経費縮減や適切な料金水準の検討などの経営改革に活用していくことが重要である。

第三段階は、財務規定等の適用範囲の拡大である。会計基準の見直しにより、地方公営企業の会計基準は企業会計原則の考え方をできる限り取り入れたものとなるが、新会計基準が適用される地方公営企業は、「地方公営企業法」で当然適用とされた8事業(上水道、工業用水、バス、軌道、地下鉄、電気、ガス、病院)及び財務規定等を任意適用することとした事業に限られている。これを平成24年度末事業数でみると、全地方公営企業8,724事業のうち2,996事業となっており、全体のほぼ3分の1程度にとどまっている。財務規定等の適用により、経営成績や財務状態の明確化が図られ、中長期的な視点による経営計画や施設の建設改良計画の策定等に寄与する。平成25年7月、「地方公営企業法の適用に関する研究会」を設置し、地方公共団体等の意見も聴きながら、検討を進めている。

(3)地方公会計の整備促進

現金主義では見えにくい資産・負債(ストック)や行政コスト(フロー)に関する財務情報の開示といった観点から、複式簿記・発生主義といった企業会計の考え方及び手法を導入した公会計の整備は重要である。

近年の地方公会計の整備については、平成18年5月に地方公共団体が参考とすべき財務書類のモデルとして基準モデルと総務省方式改訂モデルを提示し、全ての地方公共団体に対して連結財務書類4表の整備を要請してきたところである。

さらに、平成20年6月には、「地方公会計の整備促進に関するワーキンググループ」を設置し、中小規模の団体でも円滑に財務書類の整備を進めることができるよう、実務上の課題となっている事項に対する解決方策の検討や財務書類の作成のより詳細な手順等の検討を行い、「新地方公会計モデルにおける資産評価実務手引」、「新地方公会計モデルにおける連結財務書類作成実務手引」、「地方公共団体における財務書類の活用と公表について」等の各種手引書を順次とりまとめ、公表してきたところである。

この結果、平成25年3月末時点における平成23年度決算に係る財務書類の整備状況は、第53表のとおりとなっており、全国の9割以上の団体が財務書類の作成に着手済み(作成済又は作成中)となるなど、財務書類の作成は着実に進んでいるものの、作成方式が複数あることによる比較可能性の確保や固定資産台帳の整備が進んでいないといった課題もあるところである。

第53表 平成23年度決算に係る財務書類の整備状況

こうした点を踏まえ、平成22年9月に設置した「今後の新地方公会計の推進に関する研究会」において、全ての地方公共団体に適用できる新たな財務書類の作成基準の設定や固定資産台帳整備の指針の作成等に関して取りまとめる予定としている。また、その後、より詳細な取扱いを定めたマニュアルの策定等を進めた上で、新たな基準による財務書類の作成を推進することとしており、更なる地方公会計の整備を促進していく予定である。

(4)公共施設等の総合的かつ計画的な管理

地方公共団体において、過去に建設された公共施設等がこれから大量に更新時期を迎えるが、<1>地方公共団体の財政は引き続き厳しい状況が続くこと、<2>人口減少や少子高齢化の進展等により今後公共施設等の利用需要が変化すること等が見込まれる。したがって、各地方公共団体は、公共施設等を総合的かつ計画的に管理することにより、財政負担を軽減・平準化するとともに、その最適な配置を実現し、時代に即したまちづくりを行うことが重要である。このため、総務省においては、「インフラ長寿命化基本計画」(平成25年11月29日インフラ老朽化対策の推進に関する関係省庁連絡会議決定)も踏まえ、地方公共団体に対して、「公共施設等総合管理計画」の策定を要請するとともに、当該計画の策定に係る指針となるべき事項を示すこととしている。策定指針においては、公共施設等の管理に関する基本的な方針等計画に定めるべき事項を示すとともに、議会や住民との議論を行う等当該事項を定めるにあたっての留意事項等を示すこととしている。各地方公共団体においては、速やかに公共施設等総合管理計画を策定するとともに、当該計画に基づき計画的に公共施設等の管理を行っていくことが求められる。なお、これに関し、計画策定に要する経費について、特別交付税措置を講じるとともに、計画に基づく公共施設等の除却について、地方財政法を改正し地方債の特例措置を創設するため、「地方交付税法等の一部を改正する法律案」を第186回国会に提出した。

(5)社会保障・税番号制度の導入

平成25年5月に成立した番号関連4法(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(平成25年法律第27号。以下「番号法」という。)、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成25年法律第28号。以下「番号整備法」という。)、地方公共団体情報システム機構法(平成25年法律第29号)及び内閣法等の一部を改正する法律(平成25年法律第22号))により、社会保障・税番号制度(以下「番号制度」という。)が導入されることとなった。

番号制度は、複数の機関に存在する個人の情報が同一人の情報であるということの確認を行うための基盤であり、社会保障・税制度の効率性・透明性を高め、国民にとって利便性の高い公平・公正な社会を実現するための基盤(インフラ)であり、<1>付番、<2>情報連携、<3>本人確認の3つの仕組みから成り立っているところである。なお、番号の利用分野については、社会保障分野、税分野、災害対策分野の3分野に限られている(第129図第130図)。

第129図 番号制度の仕組み
第130図 社会保障・税番号制度の概要

番号制度導入のため、各地方公共団体においては新たなシステムの構築や住民基本台帳、税務システムをはじめとした既存の情報システムの改修が必要となるところであり、その経費について支援していくこととしている。また、複数自治体によるクラウド技術の活用による情報システムの共同利用(いわゆる「自治体クラウド」)に同時に取り組むことにより、関係経費の節減やセキュリティの強化が図られることから、番号制度の導入に合わせた自治体クラウドの活用を推進していくこととしている。

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