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政策評価・独立行政法人評価委員会 政策評価分科会(12月2日開催)議事録

日時

平成21年12月2日(水)16時00分から18時10分

場所

中央合同庁舎第2号館 総務省第1会議室

出席者

(政策評価分科会所属委員)
金本良嗣分科会長、藤井眞理子委員、青山彰久臨時委員、牛尾陽子臨時委員、大村昭人臨時委員、齊藤誠臨時委員、佐藤主光臨時委員、高木勇三臨時委員、高橋伸子臨時委員、田辺国昭臨時委員、永井良三臨時委員、中川雅之臨時委員
(総務省行政評価局)
江澤審議官、松林政策評価官、羽室政策評価審議室長

議題

  1. 重要政策(「地震対策のうち建築物の耐震化及び地震保険」及び「医師確保対策」)の評価の結果等について
  2. 政策評価結果の平成22年度予算要求等への反映状況について

資料

会議経過

【金本分科会長】  時間になりましたので、ただいまから政策評価分科会を開会させていただきます。
 本日の議題に入る前に、事務局のほうから、「重要政策の評価」の枠組みについて御説明があります。その後、「重要政策の評価」の結果と、それから「政策評価結果の平成22年度予算要求等への反映状況」について、議論を進めたいと思います。
 それでは、事務局のほうからお願いいたします。

【松林政策評価官】  それでは御説明申し上げます。
 これまで、先生方、お忙しい中御審議に参加いただきまして、鋭意進めさせていただきました。この取組につきましては、従来、「政策評価の重要対象分野」として進めてまいりました。この間、御案内のとおり政権が交代いたしまして、枠組みの中核をなします経済財政諮問会議が、事実上、その活動を中止している状況にございます。他方、政策評価に関する基本方針におきましては、各行政機関の評価活動に関して、内閣としての重要政策を踏まえつつ、評価活動の重点的かつ計画的な実施を図ることとされております。このようなことを踏まえまして、これまでの「政策評価の重要対象分野」の取組は、「重要政策の評価」として、今回、取りまとめることといたしたいと考えております。
 また他方、夏頃まで先生方にいろいろ御審議をいただいた、新たなテーマの選定につきましても、政権が交代いたしまして、現在、事業仕分けをはじめとして、従来の政策の見直しが、各府省において全般的に行われている状況にございます。したがいまして、新たなテーマの選定につきましては、そうした状況を見極めた上で改めて検討することが適当ではないかと考えてございます。
 以上につき、御理解、御了承いただければと存じます。よろしくお願いいたします。

【金本分科会長】  ということのようでございますが、何か特段の御意見がございましたらお願いいたします。よろしゅうございますか。
 それでは議題に入らせていただきます。「重要政策の評価」の結果について、建築物の耐震化、それから地震保険、医師確保対策、この3つに分けて、事務局から御説明いただいた後に御議論をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【松林政策評価官】  それでは、引き続きまして、「重要政策の評価」について、その答申案の御説明に移らせていただきます。
 今、分科会長のほうから御紹介がございましたとおり、3つのパートに分けてございます。順次御説明申し上げた上で、パートごとに御議論をいただければと存じます。
 答申の組み立てでございますけれども、これは、昨年の重要対象分野の答申と同じ形をとることを考えております。最初にまとめ的な前文を載せ、その次、パートごとに、政策課題を巡る状況を書かせていただき、それから、それぞれの施策の概要が続きまして、その施策に関する各関係府省の評価を客観的に記述し、委員会の認識した課題ということで締めくくりということにさせていただければと考えております。
 それでは、具体的な内容につきまして、担当の柏尾のほうから御説明を申し上げます。

【柏尾上席評価監視調査官】  御説明申し上げます。
 まず前文でございます。政策評価・独立行政法人評価委員会は、当委員会が平成20年度に提示し、関係府省において実施された「地震対策のうち建築物の耐震化及び地震保険」、及び「医師確保対策」に関する政策評価について審議を行い、評価結果及び当委員会の認識した課題を取りまとめた。当委員会の審議においては、関連する施策の実施状況を踏まえつつ、評価結果を導いたデータや分析についての課題を示すとともに、関係府省における政策の推進や見直し・改善への反映に資するために、評価において更に解明すべき事項などの課題を示すよう努めた。
 「建築物の耐震化」の評価結果においては、耐震化が、人的被害や災害復旧・復興のための社会全体のコストの軽減に大きな効果があることが明らかにされた。一方で、耐震化を効果的・効率的に進めるための基礎的データ、地震危険度に着目した地域別の耐震化率と施策の対応関係に関するデータ等が把握されていないことなどの課題が認められた。
 「地震保険」の評価結果においては、地震保険料控除制度や耐震割引などの割引制度が、保険加入を十分に喚起できていないことが明らかにされた。一方で、地震保険の普及が進まない原因が十分に分析されていないことなどの課題が認められた。
 また、「医師確保対策」の評価結果においては、現在講じられている様々な施策について、効果発現の推論が明らかにされた。一方、効果的な医師確保対策を進めていく上で必要な地域別・診療科別の医師不足の実態は把握できていない。また、医師の偏在是正のための施策については、そのほとんどの施策が開始されて間もないことから、効果の検証は行われていない。今後、政策の全体的な枠組みと個々の施策の具体的な目標を設定するために、的確な効果の検証が必要となっている。当委員会は、関係府省において、当委員会の示した課題を今後の政策評価や政策の推進等に適切に反映させていくことを求めるということでございます。
 続きまして、「地震対策のうち建築物の耐震化及び地震保険」でございます。「政策課題を巡る状況」につきましては、建築物の耐震化は、死傷者、また被災後の社会全体のコストを最小限に抑える根幹的な政策でありますが、住宅総数の25%に相当する1,150万戸の耐震化が不十分と推計されているということ。
 地震保険につきましては、法律により普及を図るとされていますが、制度創設より40年以上を経過して、加入率は全世帯の2割程度にとどまっているということを記載するとともに、所信表明演説で、総理が、地震列島に暮らしている我々、こういう自然災害に万全の備えをするのが政治の第一の役割であると述べられているということを記載しております。
 第1の建築物の耐震化、国土交通省でございます。国土交通省の評価。1、建築物の耐震化の効果、(1)直接的効果でございます。ここでは、阪神・淡路大震災を基にしまして、犠牲者の95%以上が住宅の倒壊によって亡くなったと推測され、その8割は地震発生後15分以内に死亡しており、住宅の倒壊そのものを防ぐことが極めて重要であるというふうに述べられております。
 (2)副次的な効果、これにつきましても、阪神・淡路大震災を例にとりまして、災害後5年間で、1.5兆円の国費が支出されております。これらの支出は住宅が倒壊しなければ発生しなかったコストと考えられるとされております。
 (3)地震防災戦略の減災目標でございます。これは、減災目標の中で耐震化が最優先に取り組むべきものとして位置付けられておりまして、例えば東海地震における減災目標では、死者数減4,700人のうち3,800人、8割、経済被害額減18兆円のうち12兆円、66%は、この耐震化により見込んでいるということでございます。
 続きまして、2、建築物の耐震化促進のための施策の効果。(1)耐震化に関するインセンティブ構造ということで、国土交通省は、アンケート調査結果によりまして、耐震化の主な阻害要因は3つであると。耐震化の必要性に関する認識、耐震化のコスト、業者・工法等に対する信頼性であるとされております。
 (2)各種施策の効果であります。耐震化率につきましては、現在の75%を、平成27年までに少なくとも9割にすることを目標としております。補助制度、融資制度、税制上の優遇措置による直接的支援、平成18年度以降470億円を投じまして、促進を図ってまいりました。目標に達するためには、年間10万戸を耐震化させるということでございますけれども、現在、年間8.7万戸というふうに目標を下回っている状況にあるということであります。
 課題でございます。耐震化の必要性の高いターゲットを示すデータがあれば、重点的な対策を講じることが可能となる一方、このようなデータがない場合には、施策が全国均一の非効率なものとなる可能性が高まります。アンケート調査によって、耐震化の阻害要因はおおむね明らかにされましたが、今後は最新の住宅・土地統計調査の確報値の結果を活用するなどして、地震危険度に着目した地域別の普及状況とそれに対する各種施策の対応状況を把握する必要があります。また、世帯構成、年齢、収入といった分析軸を用いて、耐震化のボトルネックを把握する必要があります。
 続きまして、3、被災支援策が建築物の耐震化に及ぼす影響でございます。国土交通省の評価では、被災者生活再建支援制度などの事後対策の存在が、建築物の耐震化などの事前対策の実施に影響を及ぼしているのではないかという点につきまして、アンケート調査を行いましたところ、設定した選択肢の中で最も少ない結果になったことから、被災者支援策に対する期待が耐震化を阻害している傾向は見られないというふうに述べております。
 続きまして、4、耐震技術の開発及び普及等でございます。(1)低価格で信頼性の高い耐震技術の開発及び普及であります。アンケート調査によりますと、耐震改修に対する支払い可能額は50万円未満とする回答者が62%ということになっております。これに対しまして、耐震改修に要する実際の費用は平均211万円であり、相当のギャップがあるということとされております。国としまして、補助制度の充実、また安価で効率的な耐震改修工法の開発・促進が有効であるので、そのような支援を行っていると述べられております。
 (2)悪質な業者の存在の影響等ということでございます。アンケート調査によりますと、耐震化をしない理由ということで、業者・工法に対する信頼性に関するものが、耐震診断で20%、耐震改修で27%を占めており、業者・工法等の信頼性に関してニーズが高い。これに対しまして、地方公共団体におきましては、悪質リフォーム対策として、情報提供あるいは相談体制の整備、信頼できる業者の登録等が実施されていると述べられておりまして、このうち耐震アドバイザー等の技術者の派遣が有効であると述べられております。
 課題でございますが、技術開発を行う民間技術者等に対する支援については、補助件数や技術開発の概要は示されているものの、開発された技術の普及状況は明らかにされていません。アンケート調査の結果では、木造一戸建て住宅の居住者の耐震改修に対する支払い可能額を50万円未満とする回答者が62%となっております。低価格で信頼性を確保した耐震技術の開発・普及は、価格ニーズに合わせるという普及面からの重要性のほか、同一の補助金額でより大きな効果を得る上で重要であり、具体的な目標を設定し、効果を測定していくことが必要です。支援を行う技術開発についても、その普及効果の検証が必要であります。
 さらに、耐震改修の本質的なニーズとも考えられる業者・工法等への信頼性の確保については、地方公共団体における相談体制の整備、信頼できる業者の登録制度、耐震アドバイザーの派遣など様々な施策が講じられておりますが、各施策の効果は把握されておらず、効果がより広範に及ぶ施策を見極め、重点化を図る観点から検証する必要があります。
 5、建築物の耐震化促進のための代替案の検討ということでございます。評価では、アンケート調査によると、住宅購入時に優先する判断材料として、価格、立地、間取り・広さというものが大半を占め、耐震性の有無というものは5%にすぎないという結果が出されております。ただ、耐震性の有無を考慮できる環境整備を促進することは有効であるとしておりまして、住宅性能表示制度や耐震診断・耐震改修マーク表示制度といった取組は進んでいるとしております。
 課題であります。住宅購入時の判断材料として、耐震性の表示など耐震性の有無を考慮できる環境の整備は重要と考えられるが、住宅性能表示制度は、平成20年度末で2,000戸でございますので、必ずしも進んでいるとは言えないことが課題となっております。
 続きまして、6、建築物の耐震化への関心の低い者に対する効果的なアプローチということでございます。評価では、耐震化の必要性を浸透させる、意識不足を解消させるためには、地震リスク情報を国民に伝えることが必要というふうに述べており、地震防災マップの取組の状況のほか、多くの地方公共団体で積極的な普及啓発を推進し、耐震診断数が増えている。特に江戸川区、一宮市では、PRと無料耐震診断をパッケージにした活動が行われており、有効性が確認されたとしてございます。
 また、補助制度を知らなかった人が耐震診断で4割、耐震化改修で6割に上っており、周知徹底が必要であるとしております。
 課題でございます。評価において挙げられている一宮市のローラー作戦は、市職員等が住宅を訪問して、無料の耐震診断を勧誘するきめ細かい取組ですが、平成20年度においては、対象となった618件のうち、耐震診断の申し込み件数は203件、32%となっています。無料であっても対象者の約7割が利用しないことについては、情報発信について見直すべき事項や、既存の各種施策に一定の限界があり得ることを示唆しており、新たな施策展開の検討が必要かどうかを見極めるために、このようなローラー作戦を実施する地方公共団体の協力を得て、無料の耐震診断を受けない原因の分析を行う必要があります。また、耐震診断において倒壊の危険性があると診断されたにもかかわらず、耐震改修を行わない居住者については、その割合がどの程度あり、危険度を認識した上で耐震化を行わない又は行えない理由は何なのかを把握する必要があります。
 耐震化の答申案は以上でございます。

【金本分科会長】  ということでございますが、御意見、御質問、ございましたらお願いいたします。
 田辺委員、どうぞ。

【田辺委員】  問題点、それからその評価に対する課題等は、はっきりはしているのだろうとは思うんですけれども、ただこれは、こちらが出している課題を国交省側が受けとめて共有化された後、具体的にどういう処理と言うんでしょうか、対応がなされるものなんでしょうか。こちらがフォローアップして、評価のフレーム等で、国交省がそれを反映する作業を行うかどうかということを今後見ていくということでしょうか。
 耐震化で、例えば東海であるとか、南海であるとか、その次の地震が来るまでにやってもらわなければ困ることが結構あると思うので、そこら辺の、言いっぱなしではない仕掛けというものがどういう形になるのかというところを若干懸念しているものですから、お伺いできればと思います。

【松林政策評価官】  お答え申し上げます。
 昨年御答申いただきました若年者雇用や少子化対策についてもそうでございますけれども、この重要政策の評価の答申のフォローアップの仕方については、総務省における客観性担保評価活動というものがございまして、そちらで、翌年の評価書にきちっとそれが課題として取り組まれているかということをチェックすることにしております。今年度については、今現在、前回の答申の内容がきちっと反映されているかどうかの問題点について把握を進めているところであります。
 今回いただきました御答申につきましても、同様のフォローアップをきちっとやっていくということで、具体的にどういう課題についてどういう答え方をしてもらうかというのは、この答申の中身をブレークダウンする形で各省に伝えることを考えております。

【金本分科会長】  よろしゅうございますか。
 そのほか、何かございますでしょうか。中川先生、齊藤先生、よろしいでしょうか。

【齊藤委員】  ごく一般的な話ですけれども、評価の観点をこの委員会で絞っていくときに、基本的には住宅・土地統計調査を基本として、実態的な把握をしっかりして、その上で政策指針を考えていこうということだったと思うんですけれども、今回は、基本的には、アンケート調査を比較的小さいサンプルで行って、それと、あと出てくる数字は、これは言い方が悪いんですけれども、既に分かっているようなことばかりなんです。こうなってしまった経緯などを、若干背景等も説明いただいて、本来データに基づいて政策評価しようとしていたのがなかなかできなかった理由などをまとめていただいて、それを、今後の評価を考えていく上で確認していただければと思うんですけれども。

【松林政策評価官】  考え方について、私から御説明を申し上げます。
 国土交通省とのやり取りで、夏以降でございますけれども、なるべく最新のデータに基づき、具体的には住宅・土地統計調査を使いまして、国土交通省ともセグメント別に細かい分析をするべきではないかという話を進めてまいりました。統計局につきましても、私どものほうからいろいろ相談を持ち込みまして、手続的には速報値でやろうとすればできるのではないかというところまでいったのですが、よくよく詰めてみますと、その速報値の集計が、確報値とかなりずれが出てくる可能性があるということが判明いたしまして、そうしますと、速報値でせっかくセグメント別に分析をいたしましても、必ずしも正確な分析ができないのではないかといった懸念が生じてまいりました。
 一番良いのは、時期的には遅れてしまい、先ほど田辺先生に御指摘いただいたフォローアップの段階になってしまいますけれども、私どもとしては、きちっとした20年度の住宅・土地統計調査の確報値が出た段階で、国土交通省にはこの答申の問題意識を踏まえてしっかり取り組んでいただくということにしたいと思っております。また、国土交通省もその必要性は十分認識していると聞いてございますので、今後この答申を具体化するに当たりまして、そういったことをきちっとフォローアップしていきたいと思っております。

【金本分科会長】  では、中川委員。

【中川委員】  今のことに関連するんですけれども、私、伺っていて、国土交通省として、建築物の耐震化に関する戦略といいますか、方針のようなものが基本的にないということが一番大きな問題だと思っておりました。今、齊藤委員のほうから御指摘がありましたように、この委員会の問題意識というのは、住宅政策とか、あるいは建築物の安全化という面で、どういうところが遅れているのかということを把握しなければ、そもそも戦略的な対応ができないからということで、いろいろなサジェスチョンをしていたのだと思います。
 最新の統計データに基づいた分析とか戦略があったほうが良いに決まってはいるんですけれども、おそらく5年ぐらい前の、1つ前の住宅・土地統計調査においても、分析をすることによって、若干古いんですけれども、何らかの戦略を立てていくということはおそらく可能であったのではないかなと思います。
 それが現在の段階でないということ自体はやむを得ないと思いますけれども、基本的には、一番重要な部分として、国土交通省として効率的な耐震化政策を行っていくということが必要だと思いますので、ここでの答申におきましては、基本的には耐震化のボトルネックを把握する必要があるというリクエストになっておりますけれども、耐震化のボトルネックを把握する必要があるというリクエストの中には、おそらく科学的な耐震化の進展度合いとか進捗度合いみたいなものをきちんと統計データによって把握するということだけではなくて、それにプラスして、耐震化の戦略的・効率的なそういう方針を立てて、行政を、政策を効率的に進めていくということも含めた答申ではないかなと私自身は理解しております。
 ですので、フォローアップの中では、把握しました、調査しましたということだけで済ませてしまうのではなくて、それを踏まえて、どういう戦略を練って、それをつくって、実際に耐震化政策というものはシステマティックに運営されているのか、総務省のほうとしてはそれをモニタリングしていただくという体制で臨んでいただきたいと思っております。

【金本分科会長】  よろしゅうございますか。

【佐藤委員】  すみません、被災者支援対策が耐震化に及ぼす影響についてという、ここだけ何か自信満々に、被災者支援策に対する期待が耐震化を阻害している傾向は見受けられないというふうに断言し切っているんですけれども、これは断言していいのかなという素朴な質問……、やっぱりこのモニタ−アンケート調査そのものは大丈夫なのかというのが多分あったと思うんですね。やっぱり規模が小さいということと、申し訳ないけれども、これは多分バイアスがあると思うんですね。もともと国土交通省さんのいろいろな政策に対して何か御意見を申し上げるというか、そのためのモニターさんたちのようなので、そもそも代表的サンプルなのかということもありますし、これも聞き方によって結構意見が分かれるところもあって、後で地震保険のところに出てくるんですけれども、災害のときに、被災したとき何に期待しますかという質問が地震保険のアンケート調査にあるんですね。そこの中で見ると、地震保険に加入していない人はやっぱり公的支援をあてにしているねという議論が出てくるので、これは、本当を言うと聞き方なんですね。
 で、検証されなかったというのは分かるんですけれども、ただ、その傾向は見受けられないと断言していい……、そこまではちょっと……、これは国土交通省の評価なので、それはそれなんでしょうけれども、こちらとしてそれを受け入れていいかどうかというのは別の問題かなという気がします。
 もう一つは、これも地震保険のほうの先取りになってしまうのかもしれないんですが、全体として分かってきたのは、認知といいますか、補助金制度そのものを知らない人がいるわけでして、それはなぜだろうと考えたときに、そういう情報が行き渡っていないというのはファクトですね。でもそのボトルネックになっているのは何なのかということを分析しなければいけなくて、それは住民の無関心なのか、あるいは行政側の発信そのものの努力が少ないのか、行政と一言で言ったときは、それは国土交通省のことなのか、市町村のことなのかということもありますし、それから発信の仕方が悪いのか。一生懸命頑張ってはいるけれども、市町村とかも窓口ではいろいろと言っているけれども、やり方に何か問題があるのか。これもまたフォローアップの中に出てくる話だと思うんですけれども、ファクトとして見出した上で、そのボトルネックは何なのかというところまで踏み込んだ議論がなければいけないのかなと思います。

【金本分科会長】  今の御意見はどういうふうに……。

【佐藤委員】  いや、簡単で、通常、評価の後に必ず課題というのがあるんですね。評価で、課題というのは、私が理解する限り、これはこちらのほうが提示している課題ということになるので、例えば国土交通省はそう言ってはいるけれども、実際のところ、これはアンケート調査をやるならちゃんと徹底してやらなければ分からないねといったようなのが課題なのではないかとは思うんですが……。
 それから、いろいろとこれから耐震診断を受けない原因の分析をというふうに言っていますけれども、情報に関して、これは後で地震保険にも書いてあることですが、広報活動ということに関したときに、実際に情報が行き渡らない理由ということについては、そのボトルネックは分析しなければいけないのではないかと、そういったことを加えるか、何か示唆するというのはあってもいいのかなと。ただ、これは私の意見なので、別になくても、そうではないなら、それはそれでいいんですけれども。

【金本分科会長】  最初の点については、モニターアンケート調査としてはサンプルがそんなに多くないということとか、対象にバイアスがかかる傾向があるのではないかとか、そういったことについて配慮の必要があるといった指摘はあり得るのかなと思います。
 それから耐震診断を受けない原因の分析のほうは、かなり頑張ってやってもなかなか、ローラー作戦でも難しいという面があるようですので、広報努力で全部が解決するというのは難しそうな課題ではあると思いますけれども。
 では、青山委員、どうぞ。

【青山委員】  今、金本先生がおっしゃったところですが、無料で耐震診断を一軒ずつしてもこうだったというのは、実は相当強烈な事実ですね。それをしておきながら放っておくということ自体に、担当する政策官庁としては、ちょっとひど過ぎないのかという感じを一瞬受けるんですよ。
 そこで、多くの国民がいずれ答申に触れるんですけれども、その際にこの持って回った言い方は何だろうかというふうになると思うんですね。「無料であっても対象者の約7割……、情報発信について見直すべき事項や既存の各種施策に一定の限界があり得ることを示唆しており」ではなく、これはもう一つ踏み込みして、例えば1つか2つぐらいは決定的なこういう理由だろうというふうにこちらのほうで見極めて、これはまだほんの1つかもしれないけれども、ほかにまだあるはずだと。何のかんのいろいろ政策をやっていますといっても、こういう事実があって、最も進んでいる自治体でローラー作戦をやってもこうだったというところが最も大切なところじゃないんですかね。私とすれば、それを持って回った言い方をしないで、もっとストレートに書けるものはないのかと。最低でもその原因の1つか2つか……、という印象を受けるんです。
 もう一つ、これは単なる抽象論で申し訳ないんですが、こういう国土交通省の評価、それでそれに対する課題というふうに1つずつ書いていくパターンは、おそらく今まで一貫してやってきた方法だと思うんですが、はっきり言うと、非常に読みにくいんじゃないかなと思うんです。この答申は一体何を注文したのかというのが、まあ、最初のところに大きく枠で囲って大切な結論をばんと書くような……、で、その後、少し詳しくやるというスタイルのほうが……、ぱっと見て、何を提供したのかというのが、こうやって1つずつ見ていかなければ分からないという感じを受けるんです。
 だから、もし読むほうの側の読み方を……、国土交通省の人はこれでいいんですよ、だけど、多くの国民が、もし今後、この政策評価をもう少しバージョンアップしようというふうに政権が言っているようなことも言っているようですけれども、その場合に、結論をもっとはっきり、そのためにはもっとシャープに書いたほうがいいんですけれども、構成というか、順番というかを……、という感じはします。

【金本分科会長】  最初の点、柏尾さん。

【柏尾上席評価監視調査官】  まず1点目、もう少し踏み込んだ表記ということでございますけれども、ローラー作戦というのは、最もきめ細かく、これ以上の施策はおそらくないだろうと考えられます。それでもなおかつ7割近い人が受けないということから考えますと、経験則といいますか、もし耐震診断を行ったときに、危ないということが分かったら怖いとか、その後に耐震改修をしなければならないときに、お金がどれぐらいかかるだろうかというような、そういう予想はつくんでありますけれども、これをはっきり私どもとして、こういう理由があるからであるという材料を持ち合わせていない、推測になってしまう。であれば、まずローラー作戦を実際にやっておりますので、そこの協力を得て、どういう原因なのかとかをより探ってもらうのが、評価としては第一歩、やり方というふうに考えてございます。

【青山委員】  そうだと思うんですが、このローラー作戦というのはいつやったんですか。

【柏尾上席評価監視調査官】  一昨年、昨年です。

【青山委員】  一昨年、昨年ですね。それで、お金は国土交通省から全額出たんですか。

【柏尾上席評価監視調査官】  いいえ、違います。

【青山委員】  一宮市が全額負担してやったんですか。

【柏尾上席評価監視調査官】  いいえ、補助ですね。

【青山委員】  補助を受けてやったんですね。だけど、多分、1つずつ歩いていった人たちは分かっていると思うんですね。一宮市自身で、ここで考えるよりも、もう少し目の前で、みんな一軒ずつ歩いて行ったわけだから、ああ、そうですかといって終わったはずがないと思うんですよ。そうすると、今になってああだこうだというのも申し訳ないんですけれども、本来だったら一宮市の職員からきちんと聞き取るだけでも、踏み込んだ分析ができるんじゃないのかなと思うんですね。一軒ずつ歩いた人が一番よく知っているはずです。
 多分経済負担が大きいんじゃないかなと、何となく予感はしますけれども、それから所有関係が複雑だとか何とかというのもあるかもしれないけれども、それは、総務省の評価をする人たちは彼らから聞き取らなかったかと、こういうふうに今度は言われると、私なんかは大方お聞きしたくなっちゃうので、しなかったとしたら、もっと踏み込んでやるべきだった。まさか総務省の人たちが一軒一軒歩くわけにはいきませんけれども、少なくとも手がかりをもう一つ踏み込みできるのではないのかなという感じがします。

【松林政策評価官】  ローラー作戦を実施する地方公共団体の協力を得て原因を分析してくださいと課題として指摘しますのは、先生が、今、まさにおっしゃったような問題意識で私どもとしては書かせていただいております。そういった無料のサービスは、おそらく最も手厚い施策だと思うんですけれども、それさえもこれだけ行き渡っていないのはなぜなのかについて、やはり現場に立ち返って聞いてみる必要があると、私どもも全く同じ問題意識であります。

【青山委員】  これをつくっていく過程の中で、一宮市から聞かなかったんですか。少なくとも、彼らも仮説かもしれないけれども、こういうことを言っていると。これが本当かどうかはもう少しさらに踏み込んで分析する必要があるんだという言い方はあると思いますけれども、例えば、特に財政資金をかけていろいろやっている補助制度が、お金の問題じゃなくて、制度的に非常に使いにくいものだとか、実態と遊離しているものだとかということがあるのかもしれませんけれども、彼らは、今のところこういう推測を立てていると。しかし、それをさらに本当かどうか、国土交通省が来て共同調査をやるべきではないのかという結論に……、多分ほとんど同じだと思うんですけれども、いかにもこれは何となくおざなりなんですよ。じゃあ、何もしていなかったのかみたいな……、一般の人が見たら、あれは何を言いたいのかねという話になってしまって、読んで何の情報も分からないというか、情報発信がいけないのか、既存の各種施策がいけないのか、「一定の限界があり得ることを示唆しており」というのは、何ともはや……だなという気がして、もっとやれるところは踏み込んで書かなければ、国交省と総務省の間では、意味は、サインは通じますけれども、国土交通省と総務省の間だけの文書ではないわけですから、一般国民に伝わるような踏み込んだ部分も入れないといけないんじゃないのかなと思うんですが、今の現況の中で無理なら、次以降、そういうふうにしていただければいいと思いますけれども。

【松林政策評価官】  ちょっと検討させてください。
 それから、2点目に御指摘いただきました部分については、評価や課題を一覧で視覚的に分かりやすくした表をポイントとして作成し、対外的な説明もこういった形で出していこうかと考えております。

【金本分科会長】  よろしいですか。これ自体、少し御意見をいただいて、後から改善をする余地はあると思いますが……。

【青山委員】  そうですね。しかし、この先、いろんなことに通じるかもしれませんけれども、各省との間でやっている内部文書ならいいんですが、一般国民が見て、なるほどなというふうに……。

【金本分科会長】  こちらのまとめのポイントを見ていただけるように、事務局にも少し頑張っていただくと、そんな感じではないかと思うんですが。

【青山委員】  端的に言うと、霞ケ関文学をなるべく使わないほうがいいというのが私の主張です。何を言っているのか、両方いろいろなニュアンスにとれて、誰も気付けないように、うまい、文法的には訳の分からない文法を使うけれども、これからはなるべくそうではないほうがいいのではないかなと思います。多分いろいろな関係があって、様々なことが最終的にこういう表現になっていることは容易に想像つくんですが、それはもう少し目を外に向けてもらってと。

【金本分科会長】  では、藤井委員、どうぞ。

【藤井委員】  質問ですので、分かれば教えていただければという点です。補助、優遇税制、融資等で、18年度以降470億円を使って促進とされていますが、国土交通省の評価書の「住宅・建築物の耐震化の促進」という資料では、例えば26ページあたりにその実施状況が書いてございます。ここには、国費はこれだけ確保しましたという当初予算の計上額が書いてありますが、実際に財政的な金額として、決算でどうなったのかということが分かりません。その前のページを見ますと、地方自治体によっては補助制度が整備されていないところもあったり、先ほど補助制度の認知の問題が出ましたが、使えない自治体もあるということだと思いますが、予算は十分に確保してあるけれども、認知度が少なくて使われないということなのか、あるいは、制度の不備も影響しているのかなどは決算額を見ると多少分かるのではないでしょうか。民間の自助努力も含めると、結果として8.7万戸が進められたとなっておりますが、公的な補助制度とどうつながっているのかがよく分かりませんでしたので、もし把握されているようでしたら教えていただければと思います。

【柏尾上席評価監視調査官】  決算額については把握しておりませんので、国土交通省に照会をしてみたいと考えております。

【金本分科会長】  牛尾委員、どうぞ。

【牛尾委員】  基本的なスタンスの問題ですけれども、結局、国の基本方針があって、地方公共団体が耐震化促進計画を策定して耐震化を促進するための施策を講じているわけで、目標が15年の75%から27年の90%というふうになっているわけですね。でも既に平成20年度が終わりで、来年平成22年度になるわけで、要するにこの評価の結論としては、21年なり何なりの中間レビューとして、これまでの政策の効果が見られないから、なるべく27年までに国の基本方針の目標を達成できるような形になるように、国土交通省にさらに頑張ってほしいというような意図が当然あるわけですよね。

【松林政策評価官】  そうです。

【牛尾委員】  ですよね。けれども、大変申し訳ないんですけれども、文章を読んでいると、国土交通省に更に頑張って取り組んでほしいという総務省の、ないしは我々委員会の意図があまり見えなくて、結構おざなりで、おざなりでと言うと申し訳ないんですけれども、このままいったら、また5年後、10年後も、やっぱりなかなか認知ができていないね、周知されていないね、耐震化率が全然上がらないんじゃないかという議論になりかねない危険性があると思うんですね。
 結局、だからこの後でフォローアップの問題が出ましたけれども、例えば27年までの間に、国交省としてどういう段階で21年度から27年度までもう一回見直しをかけるのかとか、そういうのは聞かないんですか。

【松林政策評価官】  私どもやこの委員会では、まず国土交通省の評価を踏まえて、その評価の在り方についての課題を御指摘いただいていると思います。それに加えまして、先ほど中川委員からも御指摘がございましたけれども、主に施策を進めるに当たって、きめ細かいセグメント別のデータの把握ができていないもので、では、今後どういう効果的な施策、何が一体効果的な施策なのか、それをどこにどういうふうに打っていけばいいのかという戦略が、そういう情報がなければ、まず立てられないでしょうと。
 ですので、まずそういった情報を、住宅・土地統計調査、最新のデータを使って細かい分析をした上で、その戦略的な方針を立ててくださいと。そうすることによって、いかに効率的に、別に27年を待つ必要もないのですけれども、そういった地震というのはいつ来るか分かりませんので、一刻も早くそういったターゲットに行き着けるように、まず国土交通省として、きちんとしたデータに基づいた方針を立ててほしいというところが、この答申の最大の趣旨でございます。

【金本分科会長】  青山委員。

【青山委員】  私も、今の牛尾委員の問題意識に賛成ですけれども、持って回った表現ではなくて、総合的な戦略を再構築する必要があるという表現はどこかにあったほうがいいんじゃないですか。多分国土交通省と総務省は横並びの省ですから、そう強く言うことができないということは私もよく分かっていますが、内閣の重要政策というならば、行政評価局はそういう権限を与えられているわけだから、やっぱり重要政策と銘打った以上は、それは強くちゃんと言わなければいけないのではないかと思います。

【金本分科会長】  その辺も、若干、どういう言い方ができるかというところで、この取組では、こういう政策をすべきだという役割を持っているのではないんですね。だから、評価について意見を言うことはできるけれども、政策をこうすべきだということについては、直接的に言う権限があるかというと、そうではないというところが、ここにいる委員の方も含めて、みんなフラストレーションがたまるところだと思うんです。
 それで、ここでやるのは、評価についていろいろな意見を言っていくことの中から、政策について変えていくようにさせるといったところだろうと思うんです。その辺のところを、ストレートに戦略がないから戦略をつくれという言い方が我々の役割として可能かどうかというところが、若干、もう少し考えないといけないという感じですね。

【牛尾委員】  ないからというと差し障りがあるので、例えば現行の施策に対して、もう少し加速化する必要があるのではないかとか……。

【青山委員】  しかしそこは、解釈は通例的にそうなるんですかね。もう一つ踏み込めないのか、評価の在り方しか言えないということなんですか。それは、これができたときに、法律解釈、法制局の解釈があったのかもしれませんが、しかし……。

【金本分科会長】  経済財政諮問会議はほとんどなくなったと同じですが、それをやるのが経済財政諮問会議で……。

【青山委員】  そうなんですね。

【金本分科会長】  そのための材料として、評価について我々が検証していろいろなことを言って、その次、彼らに言ってもらう、そういうスキームだったんですね。それがうまく回るような言いぶりにするということは重要だと思うんですが。
 大村委員、どうぞ。

【大村委員】  今のディスカッション、私はちょっとおかしいなという気がするんです。というのは、その評価上、やっている政策にあまりにも問題があって、もっと別の選択肢があるではないかということぐらいは、この委員会は言うべきではないかと私は思うんです。具体的にこういう政策を実施しろということではなくて、こっちのほうが有効ではないかと言うのは、これはそうでないと、実際、評価といっても非常におざなりというか、真綿に包んだような形でメッセージが伝わらないと。
 さっきの言葉も、やっぱりお役所言葉は絶対避けるべきであって、これはホームページに出るわけですよね。国民が読むということを前提にした……、この間、事業仕分けにおいても、出てきた担当者の言葉が分かりにくいという話がありましたけれども、これは我々もそろそろ反省すべきことであって、今の代替の政策をこうしろと具体的に我々が言うのではなくて、むしろこっちの方向へ行ったほうが有効ではないかということは、当然この委員会として言ってよろしいと私は思います。おそらくその辺は、民主党がこの行政評価局をもっと強化すると言ってくれたのは、ある意味ではそういう優しい後押しがあるのかなと私は解釈しておりますけれども。

【金本分科会長】  評価というか、ちゃんとした評価をベースにそういうことを言うのは基本的にできるとは思うんですが、とりあえず、今、ここでやっているのは、国土交通省等の評価を見て、それについていろいろ検証して、課題として意見を言っているというところで、本格的な評価をしてどうこうということはまだできていないわけですね。それをベースにしての話なので、ここですぐ、これをこういうふうに変えるべきだというところまで、私の感じだと、難しいのかなといった感じはしています。将来的に頑張っていただくというのはあると思いますが。

【松林政策評価官】  御指摘を踏まえさせていただきたいと存じますけれども、先ほど耐震化の戦略をつくりなさいといった中川委員からの御指摘も聞かせていただきましたが、いろいろなセグメント別に、重点的な施策について、戦略的な方針をもって取り組んでいくべきだといったところまでは言えると思います。昨年の答申の中でも、いろいろ評価から導かれるような政策については提言しておりますので、そういったところは最大限工夫させていただきたいと思います。

【金本分科会長】  では、齊藤委員。

【齊藤委員】  そもそも論であまり時間をとりたくはないですが、政策評価法の中では、どういう点が一番重要かというと、政策効果の把握は当該政策の特性に応じた合理的な手法を用い、できるだけ定量的に行うこと、そのために、政策特性に応じて学識経験を有する者の知見の活用を図ることということですから、あくまで政策効果が、科学的、客観的、定量的に行われているということを、やられる主体は各省ですから、それを我々は見ていくということで、何か具体的に政策を提言するということは、少なくとも法律の枠内ではないような気がします。

【金本分科会長】  一応そういった仕切りになっているということではありますが、評価をして、ちゃんと検証してみれば、これは全然だめだということであれば、それが発信されてくるといったところではあるかと思うんですけれども。

【青山委員】  これからの仕組みをどういうふうに強化していくかという、さっきのフォローアップのこともそうですけれども、制度未発達というふうに思ってはいけないのでしょうか。というのも、経済財政諮問会議がなくなった後、各府省の一段上に立ってこうせよと言う機能が、内閣、官邸に何かそういう会議ができるのか、内閣府がそれを取り仕切るのか。それからこの政策評価が最終的に出るんでしょうけれども、何でこの答申を受けてもそれがうまく実現しなかったかという説明も全部しなければいけないだろうけれども、その説明でだめなんだと、誰か言う人がいなければいけなかったわけですね。経済財政諮問会議がなくなった後、そこのところをどういうふうに各府省横並びの中でやらせるかというのは、これからの制度開発の問題ですよね。それは改めて……。

【金本分科会長】  それは鋭意検討中のはずでございますというところで……。
 時間もなくなってまいりましたので、次のトピックに移らせていただければと思います。次は地震保険でございますが、これについて事務局から御説明をお願いいたします。

【柏尾上席評価監視調査官】  第2、地震保険でございます。1、地震保険の効果、(1)地震保険制度の必要性についてということでございます。財務省の評価では、被災者生活再建支援金の支給額が最高300万円ということなどに制約があることから、地震保険は自助の備えとして有効な制度の1つであるというふうに述べております。またアンケート調査で、被災前の住宅規模が回復できなかったという人の割合が、非加入者が加入者に比べて多くなっていたということで、一定の役割を果たしていると述べております。
 課題でありますが、財務省の評価におけるアンケート調査の結果では、住宅規模や利便性、住環境を被災前と同程度に回復できなかったとする人の割合は、地震保険非加入者が加入者に比べて多くなっているとしていますが、その割合は地震保険加入者16.1%、非加入者19.6%であり、両者に大きな差は見られません。今後、地震保険の必要性を説明しつつ普及を図っていくためには、地震保険が生活の再建に多額の負担を強いられる被災者のためにどのように役立ったのか、被災者を対象とした調査を通じて検証し、公表することが求められます。
 (2)政府による再保険の必要性について、評価では、地震保険制度は、利潤も不足も生み出さない保険料率設定、ノーロス・ノープロフィットの原則により、低廉な保険料で安定的に保険を提供しておりますということでございます。
 課題であります。政府の再保険を通じた保険料の引下げによる保険の普及が、地震保険に政府が関与する正当性の根拠の1つですが、財務省の評価では、政府の再保険による保険料の引下げ効果が具体的に把握されておりません。普及を促進していくためにも、国民が地震保険のメリット、魅力を実感することができるよう、政府が再保険を行わなかった場合の保険料の試算を行うことにより、地震保険がどの程度割安に提供されているのかを公表することが求められます。
 (3)巨大地震への対応についてということでございます。地震保険における1回の地震等当たりの保険金総支払限度額は5.5兆円ということになっておりまして、これは関東大震災級の被害を想定して設定されております。今後30年以内に高確率で発生が予想されている首都直下地震では約3兆円、東海・東南海・南海連動地震におきましては約3.8兆円の保険金支払いが予測されております。これにつきまして、責任準備金残高が保険金総支払額に達していない場合には、政府は再保険金の支払いのために借り入れをすることができ、円滑に再保険金を支払うことが可能となっているということでございます。
 課題であります。地震保険の責任準備金残高が保険金総支払額に達していない場合には、政府は借入れによって再保険金を支払うこととされていますが、巨大地震が発生すれば、政府は、責任準備金の不足分の借入れ、被災者支援金の支払い、インフラ被害の復旧などのために巨額の資金を調達しなければならないことが想定されます。巨大地震への対応が制度上可能という評価にとどまらず、地震保険を実際に長期安定的に運営するための方策の検討が必要です。
 首都直下地震における予測額は、地震保険で約3兆円、責任準備金残高は、今、2.1兆円でございます。被災者支援金の予測支払額は同じく3兆円、基金は600億円でございます。
 2、地震保険の加入促進のための施策の効果、(1)加入率が伸びていない要因ということでございます。地震保険の世帯加入率は、阪神・淡路大震災以降14年連続で増加しており、平成6年度末9.0%でありましたけれども、平成20年度末現在、22.4%に高まっております。また付帯率も6年連続で増加し、平成20年度末現在45%となっております。
 まず、地震保険加入者と非加入者の属性についてということで、地震危険度が大きい地域ほど火災保険の付帯率が高めの傾向にあるということでございます。
 地震保険非加入者の非加入の理由についてでございますが、アンケート調査の結果で、保険料の割高感を非加入の理由とする者が多数を占めているということでございます。
 地震保険加入者と非加入者の地震発生可能性等の認識についてということでございます。これにつきましても、アンケート調査によりまして、保険に入っていない方については、地震による被害、あるいは生活再建についてのイメージが弱く、これが地震保険の加入・非加入を分ける要因になっていると述べております。
 (2)税の優遇措置の効果についてでございますが、地震保険料控除を加入動機とした人の割合が5%ということで、周知が不十分であったという結果となっております。
 (3)広報活動の効果についてでございますけれども、これは、実際に加入した人の認知媒体を見ると、保険会社、あるいは住宅購入、入居時の関係者、これは不動産業者でありますとか銀行でございますけれども、こういう方から聞いて入ったというのが5割以上を占めていて、保険会社等の説明というのは重要な役割を果たしていると述べております。保険会社における販売インセンティブについても同様に、保険会社は利益を得ていないけれども、火災保険とセットで地震保険加入のきっかけの5割以上を占めていると述べております。
 課題でございます。地震危険度の高い地域ほど火災保険の付帯率が高い傾向は、地震保険の長期安定的な運営・維持に懸念を生じさせますが、危険度の高い地域に保険加入が集中する逆選択の現象がどの程度起きているのかは必ずしも明らかではありません。また財務省の評価では、地震保険の非加入の主な原因と考えられる保険料の割高感が、国民の地震保険に関する認識不足、地震災害対策の必要性に関する意識不足に起因すると分析されています。
 しかし、評価書附属の参考資料では、世帯年収が低いほど地震保険の加入率が低いことが示されており、地震保険の加入が進まない主な原因として、この点も踏まえた方策の検討が必要です。さらに、保険会社等の説明が保険加入に重要な役割を果たしているものと分析されていますが、このほかに有効な施策は示されておりません。評価書附属の参考資料では、地震危険度が同じ地域でも火災保険への付帯率には大きな差が見られることから、この差の原因を分析することを通じて、加入促進のための方策を検討することが必要です。
 3、保険内容が地震保険加入に及ぼす影響、(1)保険料率水準についてということでございます。財務省の評価では、保険料が高いイメージがあった方に実際の保険料を見てもらい、その印象についてみると、実際に保険料を知ると、これは妥当である、安いという印象を持った人が一定割合存在している。また、政府の再保険によって保険料は低廉になっているということを知らない人が多数いると。また、平成19年度に大幅な料率改定がありまして、その大幅に料率が改定された地域でも保険契約は増加しているということから、保険料水準というよりも、地震保険制度や保険料に対する理解が十分に得られていないことが、地震保険の非加入の理由となっている可能性があると述べております。
 課題であります。保険料に対する国民の理解を得ることは重要ではありますものの、評価書附属の参考資料からは、実際の保険料を見て、妥当または安いという印象を持った人は、非加入者全体でみると1割程度にとどまっております。保険料の割高感を持つ要因についてさらに掘り下げた分析を行い、それを踏まえた方策の検討が必要です。
 続きまして、(2)加入限度額と付保割合についてでございます。地震保険は、現在、加入限度額は、建物につき5,000万円、また主契約であります火災保険金額の30から50%の範囲内で設定するということになっておりますが、この付保割合の上限を撤廃いたしまして家屋全額をカバーするということになりますと、国の財政力をもってしても保険金支払いが不可能である、極めて高額な個人資産についてまで国が関与するというのは適当ではない、一災害における損害の集積を避けたいということから、こういう限度を設けているということでございます。
 アンケート調査でも、この限度があるので加入しなかったという方が2割程度存在しているということですが、この2割の方に、保険料が上がるんですけれども、それでも入りますかと聞いたところ、分からないというのが4割以上あって、これは、メリット・デメリット双方あって、さらなる検討が必要であるということになっております。
 (3)地震発生確率の保険料率への反映方法についてでございます。保険料率は、現在、都道府県単位に1等地から4等地に4区分されておりますけれども、この都道府県単位の区分を改めて、地震危険度を保険料率により細かく反映させるという考え方があります。しかし、料率を細分化すると、制度の複雑化を招く、事務コストが増加するおそれがある、料率設定によっては保険料が高騰する地域が生じるということと、アンケート調査では、もっと単純な保険区分でいい、今のままでいいという人が細分化すべきという人を上回っている、こういうことも踏まえて検討を行う必要があるとしております。
 課題でございます。現在の保険料設定は、確率論的地震動予測地図でリスクを細かく把握しつつも、保険料を都道府県単位で平準化しており、保険の加入促進を考慮したものとなっています。一方、地震危険度の高い地域に保険加入が集中する逆選択の現象が大きくなると、地震保険の長期安定的な運営・維持に懸念が生じますが、この逆選択の現象がどの程度起きているのかは、現在の都道府県単位の区分では必ずしも明らかではないことから、より細分化した単位で、地震危険度と地震保険の加入状況の対応関係を把握することが必要です。
 (4)耐震割引等の割引制度の効果についてでございますけれども、こちらは、建築年・耐震性による割引制度を加入動機に挙げた方は3割と少なく、これは周知が不十分だったと述べております。
 4、被災者支援策が地震保険加入に及ぼす影響についてでございますが、こちらも、アンケート調査では、地震保険に加入しないという理由で、公的支援、義援金に期待しているという人はあわせて8%程度であった。これらの方々は、低所得、高年齢の方、あるいは過去の地震による被害経験がない方であったと。これらのことから被災者支援策の地震保険の加入への影響を判断することは難しいと述べております。
 5、地震保険の加入促進のための方策の検討、(1)加入促進のための方策についてということでありますが、これまでの評価結果を踏まえまして、地震保険の加入促進のためには、地震発生可能性、地震発生の危険性といった意識、地震保険の必要性の認識、地震保険料の水準に対する理解が重要であるので、周知啓発を強化するということでございます。
 (2)火災保険の強制付帯についてでありますが、強制付帯とすれば、火災保険と地震保険をあわせた保険料を支払うことになりまして、保険料が大幅に上がり、火災保険にも入らない人が出る可能性があることから、慎重な検討を要するとしております。
 地震保険の答申案は以上でございます。

【金本分科会長】  ということでございます。御質問、御意見がございましたらお願いをいたします。

【高木委員】  まず、政府が再保険を行わなかった場合の保険料の試算ということですけれども、これは、機会原価概念の情報を提供すべきだということになっているんですけれども、これは言い切ってしまってよろしいのかなという私の意見ということです。
 それから、地震保険制度の長期安定的な運営というふうな観点が入っているんですけれども、これはあくまでも特別会計を比較的安定的に運営するためという話だと思うんですが、関東大震災あるいは駿河湾大震災みたいなものが起きたときに、今の特別会計制度でもつかどうかという話自体があると思うんですけれども、これは、我々のほうで、特別会計を長期安定的に運営するための方策が必要だというふうに言う必要があるんですかという疑問ということです。
 以上です。

【金本分科会長】  事務局のほうから何かございますでしょうか。

【柏尾上席評価監視調査官】  このように言い切ってしまっていいのかと、開示することがいいのかというご趣旨でしょうか。

【高木委員】  いや、そんなに唯一効果が得られる方策なのかという疑問だということです。

【柏尾上席評価監視調査官】  これが唯一効果がある方策かどうかというのは分かりませんが、現在の地震保険の保険料が、政府が関与することによって一体どれぐらい割安になっているのかということがよく分からない。研究者の試算では、民間が地震保険を運営した場合に、今の保険料の3倍とかになるということを国民の皆様は知っていないということであります。地震保険も保険商品と考えてみますと、その値段がどれぐらい割安かということを知らせるというのは、その普及にとってはかなり重要なことではないかなというふうに考えているというのが1点であります。

【高木委員】  質問ですけれども、そもそも政府の再保険なしに民間の保険会社が日本の地震保険を引き受けるという構図は成り立つんですか。確かに海外のほうに地震保険があるというのは存じ上げていますけれども、地震発生率の問題を考えると、日本の地震保険について保険会社が引き受けるというのはあり得るのかなと思うんですけれども、3倍程度のコストで済むのかな、そもそも制度自体が成立するのかなという疑問があるんですが。

【金本分科会長】  実際に出している保険会社も……。

【齊藤委員】  東京海上がやっています。

【金本分科会長】  あるんです。

【高木委員】  そうですか。

【齊藤委員】  実は、自然災害起因の火災とか倒壊に関して損害保険が免責になっているような契約、日本の損害保険自体が非常に特殊です。いろいろな経緯があったんですけれども、本来ですと、カタストロフィーリスクの再保険市場というのはグローバルなマーケットで十分発達していますから、保険料はもちろん高くはなりますけれども、そのキャパシティーがないというふうに最初から前提とするのはという気がします。あと、今の地震保険のように、地震起因の火災と倒壊をカバーするような再保険市場はなかなか難しい面もあるんですけれども、例えば地震起因の火災のみの保険であれば多分できると思います。

【高木委員】  分かりました。了解。

【柏尾上席評価監視調査官】  もう一点の、長期安定的な運営をこちらとして考える必要があるのかということでございますけれども、地震保険法には、長期的に再保険料収入が再保険金を償うような合理的な再保険料でありますとか、健全な経営の確保といった文言があり、長期安定的な運営ということは考えなければならないのではないかと……。

【高木委員】  一般債務にしてしまうというのは考えられますよね。

【柏尾上席評価監視調査官】  巨大地震が起こったら、それは全部払いますということですか。

【高木委員】  いや、地震保険特別会計の債務のというふうに考えないで、一般債務化してしまうという……、全然違う特別会計で、それに近いことも、一部実際には出ていますよね。

【齊藤委員】  今の地震保険特別会計は、借入れを政府保証で行うことができますから、事実上、国の潜在的債務をこの制度は持っていると思うんですけれども。

【高木委員】  ええ、その限りにおいて安定的に推移すると思うんですけれども。

【柏尾上席評価監視調査官】  それが、巨大地震が起こった場合に、地震保険だけでなく、被災者支援金でも払わなければいけない、インフラ整備でも国債を発行して借入れをしなければならないということになろうかと思うんですけれども、そこはできるだけ、保険は保険として単独で安定的に運営していくというのが、この制度を評価してみている以上、そこが立脚点になるのではないかなと。

【高木委員】  いや、そもそも財政制度の設計の問題だと思うんですけれども、ここまで心配する必要がこの政独委にあるのかというところですが。

【藤井委員】  今の問題に関してですが、長期安定的に運営されるための方策の検討が必要と指摘したときに、具体的に何を求めているのか、というその内容は明らかなのでしょうか。また、どの程度割安に提供しているかを公表することが求められると指摘したときに、先ほどは「一説によれば」と御説明がありましたが、政府の試算として公表できるということは確認されているのでしょうか。

【柏尾上席評価監視調査官】  いろいろな仮定、前提は置くことになると思いますけれども、それは財務省ではできると思います。

【藤井委員】  できるということでよろしいのですね。そうしますと、この長期安定的な方策の検討の具体的な内容として何を指しているのか、我々はどのように理解すればよろしいでしょうか。

【柏尾上席評価監視調査官】  できるだけ地震危険度と保険料率というものを……。今、どういう対応関係にあるのかというのは、都道府県単位の4つの区分でしかないものですから、本当にその実態はどうなっているのかを知るというのが最初かなと。そこで、都道府県単位の4区分ではなくて、細分化した単位で、危険度と加入状況というものが一体どうなっているのかと、まずそのデータがあって、その次の議論に進むのかなというふうに考えてございます。

【金本分科会長】  改めて考えてみると、よく分からないところではありますね。

【高木委員】  この思想が結構前提に流れていると言えるようなんですかね。

【藤井委員】  今の御説明の話は、保険料水準のところに確か何かお話があったと思うのですが、今の内容が、この責任準備金の話の後に来るということで、対応関係としてはよろしいのかどうかという点が少し気になりました。

【柏尾上席評価監視調査官】  各省の評価書の構成をそのまま踏襲して、こちらも課題を立てているというところがございまして、分かりづらくなっているのですが、この点につきましては、例えばポイントとかで、もうちょっと分かりいいように工夫をさせていただければと存じます。

【金本分科会長】  この流れだと、長期安定的にというのでは、もっと金を積めとか、そういう話になりますね。どういう表現がいいのか、全体の仕組み……、いずれにせよ、巨大地震の場合には、この特別会計の外側から何かしなければいけないということについて、多分異議を申し立てるわけではないと思いますので、それを含んだ上で、この特別会計の仕組み自体、どういうふうにうまくつくっていくかということだと思うんですが、私も具体的なイメージが、若干、どうすればいいのかよく分からないというところがあるんですね。今、ここですぐに回答は出ないかと思いますが、ちょっとお考えいただいてということで。
 そのほか何かございますでしょうか。牛尾委員、どうぞ。

【牛尾委員】  財務省の総合評価書の5ページの、要するに販売インセンティブの話ですけれども、結局、端的に言うと、儲からないから売りたくないという話が財務省との間に出ていると思うんですが、つまり、火災保険とのセットでなければ販売インセンティブが保険会社にないという形に解釈できるわけですね。民間企業にとって、販売のインセンティブがなければ当然売る気にはならないので、加入者も増えないのではないかという形になってくるので、今回、保険の評価に関する問題で、どちらかというと加入の促進を、つまり加入者の認識が足りなくて加入の促進をもっとしなければいけませんよという論点はあるんですけれども、販売する会社にとっての販売インセンティブが、つまりメリットがないからなかなか加入もできないというような部分というのは、今後、例えばもう少し売れる商品を開発して、その保険会社にとって魅力ある商品を提供云々という話まで、民間企業ですから、政策評価で何かを言うということはないんですけれども、つまり、政策評価としては、加入の促進だけを提言するという形になるわけですか。それとも、商品として魅力……、この財務省の評価を見ますと、はっきり言って、売る側にとってはあまり魅力のある商品ではないんですね。火災保険とセットでないと売れませんよということが、この財務省の評価にははっきり出ていますね。その部分で、民間企業にとっても、売るようなメリットとか、プロフィットとかという話は財務省から出なかったんですか。

【金本分科会長】  それについては……。

【柏尾上席評価監視調査官】  普及が第一の目的だというのは間違いないと思いますが、そこで、普及させるためには保険料を下げるというのがありますが、保険会社に利潤を持たせるというような形になりますと、当然保険料が上がってしまうということがあります。そこについては、保険料が上がるという方向で考えるということはなかなか難しいのかなと思っております。

【牛尾委員】  ごめんなさい、私が聞きたかったのは、変な話ですけれども、要するに財務省は、お話ししていて、例えばこの地震保険に対して参入障壁みたいなものがあるという認識はなかったですか。

【柏尾上席評価監視調査官】  参入障壁ですか。

【牛尾委員】  はい。つまり、他の保険だと、今、外資なんかの参入で競争が非常に激しくなっていったじゃないですか。でも地震保険に関しては、そういう、例えば外資がかなり参入しているという状況があったかどうか、私は分からなかったので……。

【金本分科会長】  これはもともと儲けてはいけないという制度設計で、その大前提を覆すかどうかというところは、今の段階では誰も踏み込んでいないと。だから、保険会社として儲からないので販売インセンティブがないというのは、多分みんな前提ですね。そこまで踏み込むかどうかというのは考えどころではあるんですが、とりあえずこの財務省の評価書も、答申案も、そこには踏み込んでいないという状況ですね。
 問題があるとすれば、今、都道府県単位で料率とかが設定されていて、そうだと入りたくない、リスクを考えると入る意味が全くない人がかなりいるわけです。そういったところについて、もう少し制度的に自由度を増やすと、保険会社として新しい顧客を得ることができるかもしれない。火災保険とセットですから、火災保険のほうで少し儲けていれば売るインセンティブが出てくると、そういったこともあり得ないわけではないと思います。

【高橋委員】  保険会社のインセンティブの問題は、私も以前から申し上げてきているんですが、でも全くないかと言えばそうではなくて、火災保険だけしか売っていないと、地震が原因の火災のときには保険金が払われないわけですね。費用分のほんのわずかしか払われないので、それが阪神大震災のときなどは保険会社が問題にされたので、それ以降はかなり一生懸命売るようになっていると。つまりセットで売らないと、原因によって、火災保険に入っている人に払われない、火災であっても、地震の後に燃えた場合は、火災保険だけでは払えないという事実があるので、それをキャンペーンして、契約をかなり伸ばしてきたということはあると思います。
 ただ、この問題を考えるときに、踏み込んでいいということであれば、自動車の自賠責保険と任意保険と同じような形に、この地震保険を強制加入にするしか、安定的にする方法は多分ないと思います。リスクを細分化すればするほど、またその数値を公開すればするほど、リスクのある人は入るけれども、でも高ければ払えないと。リスクのない人は、じゃあ、払わなくていいじゃないかということになって、制度自体がもたなくなりますので、なるべくそのリスク区分は広くして、みんなが入るということでしか、長期的に安定的にということは言えないと私は思いますので、踏み込むんだったら、自賠責保険、自動車の保険と同じように強制加入という要素をつける以外に方法がないというふうに私は感じております。

【齊藤委員】  先ほどの国交省の議論のときと同じで、ここで具体的な制度を提案するという場ではないということを考えると、今みたいな回答を考えていく上で、きっちり評価、事実を認識すべきだと思うんですけれども、例えば、今の料率が都道府県別でしかなされていないという実態と、あと、ある一県内での加入状況がどうなっていて、本当にリスクごとに危険な人たちが加入しているのかどうか、そういう一律に保険料を適用していることで、県内の保険料などの再分配みたいなことがどのぐらい起きてしまっているのかということを事実として調べていって、その上でどういう制度にしていけばいいのかということを考えていくべきだと思うんですね。
 実は、このケースでは、インフォーマルに財務省の方にいろいろとお願いして、参考資料のほうの39ページに、東京都内の付帯率と加入率を地区別で出してもらったんですけれども、これは、実は私がこの委員会に入って一番の収穫だったと思うぐらい非常に重要なデータで、これがなかなか出てこないことで、我々も、同一都道府県内のどういう分布かということは分かっていなかったんですけれども、ちょっと粗い数字ですが、出していただいて、私のほうでいろいろな変数とかを使って簡単な計量分析をしたら、地震危険度の高いところの加入率が、所得を制御した後でもやっぱり有意に高いんです。ということは、一律に保険料を出していて、それで加入率はリスクに適応していて、財務省が言うようにみんなが無頓着に入っているわけではなくて、その地域のリスクに応じて加入行動があるんですね。
 そういうことを考えると、本当に一律の保険をやっていて、例えば民間の保険との整合性がとれてくるかというと、例えば、ここは半分ぐらいまでしか保険金をカバーできないんです。あと残りをやろうと思えば民間の保険金でカバーしないといけないんですけれども、どういうことが起きるかというと、同じ東京都内でも、非常に地盤が良くて頑健な建物を建てているところは、政府の保険料は民間保険料に、多分8割から5割ぐらい勝るだけなんです。しかし脆弱な基盤のところで脆弱な建物を建てているところは、民間の保険でそれをカバーしようとすると、1:3とか、1:4のようなことになってしまうんですね。そうすると、売りにくいですね、民間のマーケットでは。ですので、もし民間の保険と政府の保険との接合性をして、民間のほうも、自分たちも地震保険を売るんだという形にしていこうと思うと、保険料率自体をリスクにある程度感応的なものにしていかないと、なかなか難しい側面は出てくると思うんです。
 というようなことも含めて、こうした貴重なデータが出ているのに、掘り下げて分析をしないというところがすごいフラストレーションで、せっかく実は損害保険料率算出機構に損保協会がすごい労力を使って、この1枚の表をつくってきているのに、評価書には、この表に関して踏み込んだ分析が1行たりともないんです。
 だからそういうことを考えると、この政策評価の場で本来やるべきことをきっちり省庁のほうでもやってもらって、もちろん、経緯でなかなか数値をストレートに合わせられないとすれば、一部分は委員限りという形でデータを押さえながら、それで有意義な検証をしていって、その先に、制度をどうするかはまた別に考えていけばいいのではないかと思います。

【金本分科会長】  そんなところだと思いますが、時間も超過気味でございますので、ほかに何かございますでしょうか。よろしゅうございますか。安定的な運営のところはまだクリアでないので、後でまた御意見もいただきながら検討させていただきたいと思います。
 次は医師確保対策でございます。これについて、まず御説明をお願いいたします。

【柏尾上席評価監視調査官】  医師確保対策の政策課題を巡る状況でございますけれども、これまで医師を削減する措置が講じられてきましたけれども、方針転換がございまして、平成20年度以降、医学部定員が増員されております。医師総数につきましては、医学部定員を調整することによりコントロールする一方、地域別・診療科別に見ると、開業・勤務につきましては医師の自由意思が反映されるものとなっておりますことから、医師の偏在が生じております。総理の所信表明演説では、医療費を抑制してきたこれまでの方針を転換し、質の高い医療・介護サービスを効率的かつ安定的に提供できる体制づくりに着手しますと述べられております。
 1、医師数の決定方法についてでございます。(1)必要な医師数の推計について、評価では、診療科別・地域別の必要な医師数については、医療機関の配置状況、地理的な条件等の影響が大きく、現時点では推計を行うことは困難としております。課題でございますけれども、医師の不足は、医師が充足されている状態との差があって認識されるものであり、それがなければ、医師不足の実態や、それが解消されたかどうかを検証することはできません。
 厚労省の評価では、診療科別・地域別の必要な医師数の推計は困難とされていますが、医師不足問題に的確に対応して効果的な医療提供体制を確立するためには、地域別・診療科別に医療ニーズと医師の需給を定量的に把握することが必要です。この把握に当たっては、現在、奈良県が行っている脳卒中を例とした医療の需給バランスの定量的把握は、参考とすべき取組と考えられます。また、地域別・診療科別の人口対医師数と全国平均との差などの医療サービスの利用格差に着目した指標を設定し、これをモニタリングすれば、問題状況の早期把握と施策の効果測定が可能と考えられます。
 (2)医師配置標準と医師不足との関係についてでありますけれども、厚労省の評価では、医師配置標準は医師不足とは直接関係することはないが、その充足率は8割前後で推移していることから、医師不足等により人員確保が困難な状況が認められるとしております。
 課題でございます。厚労省の評価では、医師配置標準を充足している医療機関が8割であることを、医師不足の現状を表すデータとして用いています。この認識は正しいものと考えられますが、他方、医療機関の8割において標準医師数が充足されている一方、医師は恒常的に長時間勤務の実態にありますため、標準医師数が医師の適切な勤務時間を前提としたものになっているかどうかについて検証する必要があります。
 医師配置標準、一般病床について患者16人に対して医師1人、外来について患者40人に対して医師1人ですが、昭和23年の制定以来見直されておらず、医療の高度化、医療ニーズの変化に対応していないことも十分に考えられます。
 (3)これまでの医師の需給見通しの推計方法について、厚労省の評価では、平成18年の医師の需給推計については、女性医師の急増、勤務形態の多様化、老人医療費の急激な増加、医療ニーズの変化等に対応できなかったということがありますので、その反省を踏まえて、さまざまなパラメーターをできるだけ考慮した専門的な推計を行うこととし、平成22年度に、その研究事業の成果として、それを明らかにしたいということでございます。
 課題でございます。厚労省の評価では、今後の医師数の決定については、さまざまなパラメーターを考慮した専門的な推計を参考にしながら改善していくとされていますが、今後は、医師総数の確保及び診療科・地域による偏在を是正していく必要があることから、需給推計は、医師の総数を決定するための判断材料としてもさることながら、将来の医療ニーズの変化と医師の勤務形態の多様化などによる医師の動向を予測し、いつまでにどのような診療科・地域の医師数を増加させる必要があるのかを判断するための材料として活用できるものにする必要があります。
 (4)教育・訓練の拡充への対応策及びその効果の見込みについてでございます。文科省の評価では、昭和50年代後半以降、学生1人当たりの教員数については増加しておりまして、平成17年度より実施している共用試験の平均点は上がっているということから、学生の質については一定の水準が保たれているということが推察できるとしております。また、大学における地域枠につきましては、地域に定着する確率が高くなっておりまして、一定の機能を果たしているということが分かるとしております。
 課題でありますが、文科省の評価では、医学部学生1人当たりの教員数の増加と共用試験の平均点の上昇に関するデータを用い、医学部学生については一定水準の質を確保していると説明されています。医学部学生の質は教員数に依存するところが大きいと考えられ、今後、医師総数を増加させていくことを考えれば、教員数の増加が課題となると考えられます。その際、どの程度増加させるかについて、将来の医療ニーズの変化や医師の勤務形態の多様化などによる医師の動向を踏まえる必要があります。そのためにも、医師の需給推計は、いつまでにどのような診療科・地域の医師を増加させる必要があるのかを判断するための材料として活用できるものとする必要があります。
 2、医師の偏在の是正についてであります。(1)病院勤務医の過重労働、女性医師の増加など、医師不足問題に関する様々な要因に対する施策についてということであります。大学の医師派遣機能の低下につきましては、臨床研修制度の施行を契機としまして、大学の医師派遣機能が低下しているという指摘がございますので、平成22年度から、これを見直し、都道府県別に研修医の募集定員の上限を設定するなどの措置を講じようとしており、今後、この見直しの効果を検証していく必要があるとしております。
 病院勤務医の過重労働ということにつきましては、平均勤務時間が週61.3時間で、引き続き厳しい状況にあるとしております。医師に対するアンケート調査から、事務作業を行う医療クラークの配置・充実が効果があるのではないかとしております。また、看護師等の医療関係職種と医師の間の業務範囲を見直す必要性が指摘されており、現在、チーム医療の推進に関する検討会でこの方策を検討しており、その結果を踏まえ、さらなる方策を講じていく予定があるとしております。さらに、患者側の受診行動の適正化に向けた取組ということで、愛知県岡崎市の例を引き、救急外来患者数が減少しているということで、一定の効果が上がっているのではないかとしております。
 女性医師の増加につきましては、特に産科・小児科の若手層に女性医師の比率が多いということがあり、ニーズ調査を行った結果、保育でありますとか人員の増加というニーズがありますので、それに対応するような施策を講じていると説明されております。
 医療紛争、訴訟の割合が増加しておりまして、診療科別に見ると、医師1人当たりの訴訟件数は産婦人科が内科の6倍、外科の3倍以上になっておりまして、産科医療補償制度については効果が見込めるのではないかというふうに説明されております。
 (2)経済的インセンティブの付与による医師の偏在を是正するための諸施策ということでございますけれども、これはアンケート調査を用いまして、医学生、初期研修医、卒後3年から5年の医師、指導医、どの立場も、医師不足地域に従事する場合には、処遇、待遇、給与がよいという回答を寄せておりまして、これら経済的インセンティブが効果的ではないかと述べております。こういう経済的インセンティブということで、21年度予算において、分娩手当、夜間休日救急手当などを措置したというふうに述べられております。
 (3)地方勤務義務付けによる医師の偏在を是正するための諸施策ということでございます。ここにつきましては、医師不足地域での医療従事を義務付けます入学定員の地域枠について述べられておりまして、奨学金制度と連動することによって一定の効果が見込めるのではないかとしております。
 (4)医療機関の役割分担の明確化、機能の集約化についてでありますが、これにつきましては、医療計画に4疾病5事業に係る医療機能を担う医療機関の名前を記載しまして、役割分担の構築を図っている。具体的には、医療関係者の協議でありますとか、クリティカルパスの作成・普及、住民への啓発等を行っているということでございます。
 課題でございます。現在、医師不足問題に対応するために、医師の総数の増加が行われつつありますが、医師の偏在の是正が適切に行われなければ、場合よっては偏在が拡大し、医療ニーズに的確に対応できない可能性もあります。現在、医師の偏在是正を目的として様々な対策が緊急的に措置されているところです。
 しかし、厚労省及び文科省の評価では、医療関係者に対するニーズ調査の結果、医師不足の原因に関する推論、それに対する施策の実施状況の説明はされているものの、開始されてから間がない施策が多く、その効果を把握するためのデータが蓄積されていないこともあり、効果がデータに基づき検証されている施策は、医学部の地域枠など、ごく少数にとどまっております。
 今後、医師の偏在を是正するための施策を的確に講じていくためには、施策全体の枠組み及び目標を明らかにし、個々の施策の目標と効果測定を通じて、効果的な施策に集中していく必要があります。その際、医師は、地域、診療科、医療機関の種類・規模、勤務・開業をどのように選択し、流動しているのかをつかむことが重要と考えられます。
 また、限られた医療資源を有効に活用し、緊要性の高い人が確実に質の高い医療サービスを受けられるよう、受診の適正化に関する施策の効果の把握も重要であり、パンフレットの配布等により救急外来患者を減少させた愛知県岡崎市、公立病院の再編等により救急外来患者を3割以上減少させた兵庫県豊岡市、患者側が「県立柏原病院の小児科を守る会」を立ち上げ受診の在り方を見直した同県丹波市などの効果を上げている地域の取組をベストプラクティスとして普及させる必要があります。さらに、医師のサポート体制の強化による勤務医の負担軽減効果にも留意することが重要です。 以上でございます。

【金本分科会長】  ということでございますが、では、大村委員、どうぞ。

【大村委員】  まず1つは、先ほどの1番のバイブルに書いてある科学的なデータに基づいて我々は評価しなくちゃいけないんですけれども、科学的データはほとんどない。ですから評価のしようがないというのが私の結論でございますけれども、その中で、特に幾つか、これは総務省が非常に苦労してまとめられたという苦労の跡がにじみ出ているんですが、例えば、教育・訓練の拡充への対応策及びその効果の見込みについてということで、教員数のことがある。これは私の意見を入れて教員数の増加ということに触れていただいてはいるんですが、日本の医学部の学生のレベルが非常に低いという指摘を私はさせていただきましたけれども、これについて、例えばCBTとかOSCEで、これを何回もやれば、その点数が上がってくるのは当たり前の話であって、そうではなくて、今の日本の現状がどうであるか、それから医学部の高学年の学生の臨床能力が非常に低いというのは、これは私の意見だけではなくて、外から見た人たちが客観的にそういう評価をしているわけですね。そういったことに対して全く触れていただいていない。今後どうするかということも触れていないという問題がある。
 それから、新臨床研修制度について、この研修制度がどういう効果とか影響を与えたかということなんですが、文科省の評価では、大学院重点化により平成3年以降博士課程に入学する者は増加したが、医療施設の従事者についてもほぼ同じ割合で増加しており、医師不足への実質的な影響があったとは考えにくいとされているのですが、これは、その大学院の重点化なのか、臨床研修制度との絡みでこれを述べておられるのか分からないけれども、今、実際に、もし研修制度の実質的な影響がないと言えば、おそらく全国の大学病院、それから自治体病院は非常に怒るだろうと僕は思うんですね。ですから、これはかなり無責任な回答だと私は思っています。
 それから、医師の偏在の是正についてのところも、「大学病院に在籍する臨床研修医が大幅に減少し、その結果、大学の医師派遣機能が低下し、地域の医師不足を顕在化させたとの指摘がある」と。指摘があるというのは外の意見であって、自分たちの意見はここに全くない。なおかつ、今言ったこういった事実を否定しているような文言を入れている。私はここは消していただきたい。こんなことを言うのはおかしいのではないかと。
 それからもう一つ、先ほど客観的データがないと申し上げましたが、週平均61.3時間であると。厚労省のほうは、最初のデータとして、実際の現実とつじつまが合わないような、医師が増えているというデータを出してきましたね。それで、ここでも61.3時間と。これも実は全く科学的なデータではなくて、いろいろなところからデータを集めて統計をとったんでしょうけれども、今の病院は超過勤務をなるべくタイムカードに反映させないような圧力がかかっているわけです。例えば愛育医院なんかでそれをやって正直に出したら、労働基準監督署から、すぐ是正しろと、そうしなければ、診療報酬というか、そういった形で締めつけるぞという連絡が東京都からあった。じゃあ、やめましょうというぐらい開き直っている。そういうことから考えても、国立保健医療科学院のデータでは、医師の平均勤務時間は70時間と書いてあります。あちらのほうがもうちょっと現実に、真実に近い。ですから、ここも科学的なデータではないという問題がある。
 それから、先ほどの地方の医師の偏在をどうするかという問題ですが、ここでずっと出ているのは、これはみんな地方がやったことで、厚生労働省の医師確保として、あるいは文科省の医師確保としてやったことではないわけですね。地方が勝手にやったことなので、これは、本来ならばこの委員会の評価対象にならない……、いやいや、いいんですよ、ここに書いていいんですが、これも非常に大きな問題であるということで、実質的に、先ほど政策提言はこの委員会の役割ではないと。私は、政策提言する必要はないと思うんですが、実際にこれだけ科学的なデータがなくて、厚労省も、文科省も、医師確保という政策をよく前に出したなと。初めからできもしないことをやって、それを我々がまた逆に評価させられているという、ある意味では時間の無駄をさせられているような印象を私は持っています。
 これを盛んに、奈良県でいろいろな試みがある、実際の科学的データをつかもう、それから岡崎市とか豊岡市では現実的にいろいろなことをやっている、あるいは「県立柏原病院の小児科を守る会」でも非常に具体的なことをやっている。今、地方でも、地域枠あるいは専門枠まで出しておられるようなところもある。地方が独自に努力をしていて、今の医師確保が、ある程度厚労省と文科省のプランで方向がもし見えたとしたら、それは今の日本の深刻な医療全体の問題が、ほぼ9割以上というか、ほとんど解決したことになってしまうんですね。そんなことは解決できるわけがない。
 ということは、もっと別の観点からやっていくこと、これは厚労省や文科省ではなくて、地方自治体が病院の再編・統合とか、そういった中で、いかに専門医がどのぐらい不足しているか、あるいは実際に医師がどのぐらい、専門医あるいは一般医として不足しているか、そういうデータは、地方自治体が一番具体的なデータを持っているわけですよ。ですから、そういったところを活用して、それをもうちょっと厚労省が吸い上げて出していただけるとありがたいなということで、やれることはいくらでもあるんだけれども、こんな非科学的なデータしか出てこなかったということは非常に問題であるというのが私の評価でございます。ありがとうございます。

【金本分科会長】  永井委員、どうぞ。

【永井委員】  私も、これはちょっと物足りないと思います。厚労省の現在の枠組みの中ではこういう話になるかもしれないのですが、枠組み自体がおかしいのではないかと思います。枠組みまで踏み込んで、この医師不足の問題を論じる必要があります。
 先日、担当者の方に資料をお渡ししましたけれども、医師不足と言っても、実は人口当たりの、例えば足りないと言われている外科医の数、これはアメリカよりはるかに多いわけです。人口当たりでは、心臓外科で約3倍、脳外科で約4.5倍という数の外科医がいるわけです。現場で足りないのは事実ですけれども、それとは別に、もっとマクロで見たときに、人口当たりでは多いことを認識する必要があります。
 1人の外科医当たりの手術数が、心臓外科は3倍いますから、1人当たりは3分の1ぐらいになります。しかし、脳外科は4.5倍いるのですが、1人当たり20分の1以下の手術件数です。なおかつ脳外科医は、50歳前後になると大体半数以上の人が年間10件、月に1件も手術をしていないという状況になっているわけです。
 結局、足りないというのはどういう視点から足りないか。つまり枠組みがどうもおかしいのではないかというシステムの問題としても議論する必要があると思います。それは結局、医療機関の集約化とか、機能分担をしないと、人口当たりで足りていて現場は足りないという問題、かつ現役を長く続けていないという問題を理解できないわけです。ですから、厚労省が言っているような基準から言えば足りないかもしれないけれども、基準がそもそもおかしいのではないかと思われます。このままでは医学部の定員を増やしても、雲散霧消してしまう状況が起こり得るということは警告しておく必要があるのではないかと思います。
 そうすると、対策としては、やはり医療機関の集約化、機能分担ということと、それから、これは少し言われていますけれども、サポート体制の強化ですね。各種医療職の役割分担、これは、私、今、厚労省でもチーム医療ということでやっていますが、すべてを医師が担当して、病院の数が非常に多ければ、どこも足りなくなって忙しくなるのは当たり前なので、各種の医療職との役割分担と連携が必要です。おそらくそういうところの増員も必要ですし、今度財政的な支援が必要になってくるということは指摘するべきではないかと思います。
 それから医師の側でも、全員が専門医になる時代ではもはやなくて、専門医制の在り方、また専門医とGeneral Physicianとの役割分担、こういうことを考えていかないといけない、そういうことをこの報告書で指摘するほうがよろしいと思います。
 以上です。

【金本分科会長】  では、高木委員、どうぞ。

【高木委員】  私、収束問題を判じる会議で、やはりフラストレーションがかなり感じられるところなんですけれども、まず客観的ではなくて主観的なコメントですけれども、そもそも日本の医療行政において、開業医に対しては大きく肩を持つような圧力団体の存在と、それを容認する政治という構成が大きくあるかと思うんですけれども、その辺の問題のところにこの問題も大きくかかわっているというふうに私は感じざるを得ないんですけれども、その辺のところが、極めて距離感が遠い感じの表現になっているなというのが主観的に感じる不満というところです。
 それから、これは客観的な事実ということですけれども、私、3月のこの会議で、厚生労働省の課長に対して、行政組織の体をなしていないという批判を申し上げたわけですけれども、先ほどの大村委員の御発言のところにも通じる話だと思うんですが、2年ごとに集計されているデータを厚労省のほうは入手しながら、それを何ら分析しないで、集計もしないで放置していたと思わざるを得ないというふうに私はとらえているんですけれども、その辺のところの問題性というのが今回の中には全く出てきていないと思いますので、その辺のところが非常に不満を感じるところです。
 もう一つ、今、1つ医師不足という中で、産婦人科医の不足というところが大きく挙がっているわけですけれども、2週間ほど前に医療機関の関係の企業の社長と話したんですが、産婦人科の場合には、一定程度、母子のいずれかに障害が出るというのが一般的な通念だということを言われまして、もしそうならば、そういう理解が国民において不足している。またそういった説明が、行政あるいは医師サイドのほうから不足しているということが指摘されるのかなと感じたということを申し上げておきたいと思います。 あと、このコメントですけれども、事前にもお伝えしていますが、厚労省の評価の「推計は困難」ですけれども、これまで何もやっていなかったから困難ということが言えるのではないかと思いますので、この「推計が困難」について、この政独委のほうで何らコメントされていないというところについてはいかがなのかなと思うのが1つです。
 もう一つ、やはり厚労省の評価ですけれども、医師の偏在の是正のところですが、よくよく確認しますと21年度に入って出された施策、これから出そうとされている施策というふうに言えると思うんですけれども、その辺のところにも触れていないのはいかがなのかなと私は思うんです。これはそもそも20年度を中心にした評価というふうに私は理解するところですし、もちろん21年度に入ったところも勘案することは全くやぶさかではないと思うんですが、あたかも以前から取り組んでいたような誤解を抱くようなつくりになっているというところ、この辺のところも不満というところでございます。
 以上でございます。

【金本分科会長】  事務局のほうから何かお伝えすることはありますか。

【柏尾上席評価監視調査官】  今の、21年度の施策ばかりかということですけれども、評価書上あります施策は、必ずしも21年度からというものに限らず、確かに始められて短いということはありますが、18年度以降が多い状況になってはおります。この中で、地域枠については効果が一定程度発現ということとしましたのは、9年度からやっているので、ある程度データの蓄積があったということでございます。

【高木委員】  いや、私が申し上げたのは、臨床研修制度の見直し、勤務環境の改善、女性医師への支援、これは、私が確認したところでは、平成21年度に入ってから行っている施策、あるいはこれから行おうとされている施策というふうに理解するんですが、それが頭にぽんと出てきていて……、という書き方が、まとめられ方に疑問を覚えるというコメントということです。

【松林政策評価官】  分かりました。ここは実績を踏まえて考えてみたいと思います。
 それから、おっしゃっていただいた最初のほうですけれども、医師数の決定の推計が困難というところ、これは、先生方の答申の中では、そういった推計もさることながら、先ほど大村先生にもおっしゃっていただいたんですが、まずその偏在の実態、地方での医療ニーズと医師の需給の実態の格差といったものを、まず実態としてきちっと把握していくのが先決ではないかといった提言をさせていただいております。

【高木委員】  大村先生、先ほど科学的でないとおっしゃいましたけれども、要は集計分析をしていなかったということであれば、これは評価以前の問題だと。そのこと自体が評価されないのは、これは片手落ちになるのではないかということを申し上げたいということです。

【高橋委員】  先ほど高木委員もおっしゃいました産科医療に関連したところですが、医療に係る紛争の増加でございます。ここのところに、平成21年から実施した産科医療補償制度に関して、自己評価として、「医療リスク軽減のための手段としては効果的であると考えられる」と最後に書いてあるんですけれども、これに対しても何のデータもなく、世論の批判と全く合っていないというふうに思っております。
 ですので、これは厚労省の評価として百歩譲ったとしても、私どものほうの課題としては、医療リスクの軽減のためにとった策に関しても、何らアンケートをされたわけでもなく、多分医療補償制度のほうで原因分析とかをやっているので、それが出ますとかと、もしかしたらおっしゃるかもしれないんですが、私は以前、この制度が医師確保策の1つであるならば、もっときちんと早目に検証なりをしてくださいねと申し上げたんですけれども、まず産科を目指す人にとってこの制度がいい制度であるかとか、現在、産科医にとっていい制度であるかどうかということをきちんと検証すべきだと思うんですが、そういうことをやった形跡がなくて、データも、評価書の参考資料の13ページ目には確かに医療の訴訟事件が多いというのが出ていて、その次のページに支援体制の整備と書いてあるんですが、これはまさに国のきちんとした制度ではなくて、民間に丸投げした問題であるとか、対象が妊娠28週以降で分娩した通常分娩の脳性麻痺の子に限られると、これだけでも相当な問題になって、私もテレビでこれの報道番組をやりましたけれども、お医者さんの側からも問題提起され、いろいろなところから問題提起されているにもかかわらず、これがここで効果的であるというふうに彼らが考えたことに対して、申し訳ないけれども、黙っているわけにはいかないということになると思います。
 国としては、出産手当一時金を3万円上乗せしたということと、プラス補助金1万円を国と地方の負担でやったということだったと思うんですが、これが本当に医師確保策として有効な手だてであったのかどうかということは、使われたお金の大きさと、それから民間保険に丸投げされて、保険の数理もきちんとしないまま、余剰金が相当出るだろうと思われてスタートされました施策ですので、これに関しても触れていただいて、今後の検証をしてもらうようにしてください。

【大村委員】  皆さんのコンセンサスはかなり出ただろうと思います。先ほど永井委員がおっしゃったように、専門医でも、救急、産科、小児科は絶対数が不足しているわけですね。外科、胸部外科医も、脳外科医も、これは実際にきちんと再編等をすれば、十分患者数に対応できる人数、あるいはそれ以上に、必要以上にいるかもしれないという問題がございまして、実は胸部外科学会がこういった調査をやって、大体この程度の地域にはこの程度の人数が必要だという調査をやっているんですね。それも、私、実はちらっと言ったことはあると思うんですが、それともう一つは、先ほど言いましたように、各都道府県が、今、非常に一生懸命やって細かいデータを出しています。それを集めた形跡が全然ないというのが私はここで一番不満なところなので、そこをきちんとしないと我々も評価できないということは一言入れていただきたい。

【金本分科会長】  時間も超過してしまったんですが、大体、今、大村先生のおまとめのような方向で、どこをどういうふうに直すことができるかといったところを検討させていただこうかなと、そんな感じでございます。それについて、特にというのは、よろしゅうございますね。

【佐藤委員】  細かいんですけれども、ちょっとだけ。医学教育の質は教員数や教育設備等に依存するということなんですが、文科省の評価では、学生1人当たりの教員数についても増加していると、これはファクトとしてですね。次に、試験の成績は上がっている、これもファクトとして。で、2つを関連付けて、将来医師になる学生の質についても一定の水準が保たれると書いてあるのは、自分たちでは教員数が重要なファクターだと言っているような気がするんですけれども、これは大丈夫ですかということですが……。つまり、自分たちでは教育設備について充実してきたとか何かそういう話があれば、そうですねという議論が出てくるんですけれども、そこは自分たちでは何も言っていないんですよね。

【大村委員】  いや、それはおっしゃるとおりです。教育スタッフは今後50%増やせば当然少なくなるはずで、そのことについても何も言っていない。

【金本分科会長】  時間でもございますので、今日、まだ言い足りないこととか、あとお気付きだったことがありましたら、短期間で恐縮でございますが、明日の午後6時までに事務局のほうにお寄せいただければと思います。
 そういう御意見も踏まえまして、答申の確定をさせていただきたいと思いますが、その調整については私に御一任をいただければと思いますが、よろしゅうございますでしょうか。それでは、私任せにせず、御意見をお寄せいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 ということで、この件はこれまでにさせていただきまして、次、政策評価結果の平成22年度予算要求等への反映状況について、事務局から簡単に御説明をお願いいたします。

【松林政策評価官】  それでは御説明いたします。予算要求等への反映状況の御説明の前に、ただいま分科会長からも総括していただきましたけれども、重要政策の評価につきまして、さまざまな貴重な御意見を賜ったと存じております。評価の在り方につきましては、国交省の部分で、政独委としてもう少し具体的なメッセージも、評価の範囲内で加えるということで御指示がございました。それから文章を国民に読んでいただくために、分かりやすくすべきだ、要点をきちっと出すべきだということの御指摘がございました。これにつきまして、この評価委員会の答申である、評価であるということを踏まえます。
 また地震対策につきましても、医師確保対策につきましても、これは間違いなく現政権において重要政策という位置付けをされてございますので、こういったことを踏まえまして、政権としても最重要政策として推進していくということは間違いございませんので、そういったことを踏まえて、限られた答申までの時間ではございますけれども、前向きに御指摘を反映できるように検討いたしまして、分科会長はじめ、また委員の皆様方と御相談をさせていただければと思います。今しばらく、よろしくお願いいたします。
 それでは、簡単に反映状況のほうを説明させていただきます。資料2−1でございます。今回、概算要求の出し直しがありましたために、昨年より2カ月弱おくれて公表いたします。
 取りまとめのポイントを2ページ目にまとめてございます。この反映状況取りまとめの取組は、各省において、概算要求までにきちっと政策評価を行って、それを概算要求に反映させることを推進するためにやってまいりました。こういった取組が定着してまいりましたので、昨年からその質の向上ということに重点を置きまして、好事例を選定し、公表することといたしました。
 今回の取りまとめにつきましては、それに加えまして、政策評価の中でどれだけ予算の効率化に資すことができたのかということを取りまとめて公表いたしております。実は前政権、前内閣でも無駄削減に取り組むことになっておりまして、その中で政策評価も積極的にやっていくという方針が立っておりました。現政権におきましても、予算の効率化、事業仕分け等々が行われておりますが、そういった方針が引き継がれてさらにパワーアップしております。
 それから、今回の要求におきましても、予算書の表示科目の単位、項、事項、これを政策評価の単位と対応させて評価を実施いたしました。
 3ページは概況でございます。評価件数763件、うち予算要求に反映しました数が674件、機構・定員要求が189件という概況になってございます。
 4ページ目でございますけれども、評価の結果、政策を見直して、これは何らかの政策の変更につなげたものという御理解をいただければいいかと思いますが、207件、45%というふうになっております。そのうち予算要求を行わず、また予算の減額要求を行ったもの78件、約998億円の縮減というものになってございます。
 5ページ、6ページは、具体的にそれぞれ効率化に資した例と、それから逆に予算の要求を行って、施策の充実につなげた例を紹介しております。
 資料2―2に本体をお配りしております。昨年、好事例ということで御紹介をさせていただきました。今年も11ページ以降、この好事例について、ベストプラクティスということでピックアップをしております。昨年これを御紹介させていただいた際に、委員の皆様方から、どこがどう好事例なのかがよく分からないという指摘がございました。総務省のコメントとしてそれを付すようにという御指摘がございましたので、今年から評価書の最後のところに、当該事例のポイントとしまして、お勧めポイントが明確に分かるように記させていただきました。
 以上、簡単でございますが、御紹介でございます。

【金本分科会長】  御覧になると、何か言いたいということはいっぱいあると思いますが、時間もございませんので、あとは事務局のほうにお寄せいただいて、次回以降につなげていっていただきたいと思います。
 ということで、恐縮でございますが、今後のスケジュールを事務局からお知らせいただいて、終わりにさせていただきたいと思います。

【松林政策評価官】  本日御審議いただきました重要政策の評価につきましては、また御意見等をいただきまして、御相談をさせていただくことといたします。
 会議といたしましては、次は、政策評価・独立行政法人評価委員会がございまして、12月9日水曜日10時から、この場所におきまして、諮問になります。それから16日水曜日15時30分から、場所はまだ調整中でございますけれども、答申を予定しております。
 本日はどうもありがとうございました。

【金本分科会長】  どうもありがとうございました。
 これで本日の政策評価分科会を終了させていただきます。どうもありがとうございました。

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政策評価・独立行政法人評価委員会
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