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政策評価・独立行政法人評価委員会 政策評価分科会(4月22日開催)議事録

日時

平成23年4月22日(金)10時00分から12時00分

場所

中央合同庁舎第2号館 第3特別会議室

出席者

(政策評価分科会所属委員)
谷藤悦史分科会長、藤井眞理子委員、森泉陽子委員、小野達也臨時委員、加藤浩徳臨時委員、門脇英晴臨時委員、城所幸弘臨時委員、小峰隆夫臨時委員、佐藤主光臨時委員、高橋伸子臨時委員、立花宏臨時委員、田中常雅臨時委員、田中弥生臨時委員、堤盛人臨時委員、前多康男臨時委員、森田朗臨時委員
(総務省行政評価局)
田中行政評価局長、宮島官房審議官、新井官房審議官、讃岐総務課長、山内政策評価官、平野評価監視官、城代政策評価審議室長、荒木調査官、柴沼総括評価監視調査官

議題

1.児童虐待の防止等に関する政策評価について
2.平成23年度の政策評価の取組
3.平成23年度行政評価等プログラム(案)(行政評価局調査テーマを含む)

資料

会議経過


【谷藤分科会長】  それでは、時間になりましたので、ただ今から政策評価分科会を開会したいと思います。
 最初に、事務局に人事異動がございましたので、4月1日に着任されました山内政策評価官から御挨拶をいただきたいと思います。
【山内政策評価官】  山内でございます。どうかよろしくお願いいたします。
【谷藤分科会長】  どうぞよろしくお願いいたします。それでは、本日の政策評価分科会の議題でございます。議題1は、これまでやってまいりました、児童虐待の防止等に関する政策評価が整いましたので、それについての議論をいただきたいと思います。議題2は、平成23年度の政策評価の取組でございます。前回から議論されていることでございます。議題3が、平成23年度行政評価等プログラム(案)が出されておりますので、これは行政評価局の調査テーマを含んでおりますけれども、それについて事務局から説明がございます。それに基づいて、委員の方々から御意見をいただきたいと思います。
 最初に、議題1の「児童虐待の防止等に関する政策評価について」、事務局から説明をお願いいたします。
【平野評価監視官】  担当の評価監視官の平野でございます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
 私からは、今、御紹介がございました、児童虐待の防止等に関する政策評価の取りまとめの方向性の概要につきまして御説明させていただきます。資料1、クリップをお外しいただきまして、資料1−1に沿って説明させていただきたいと思います。
 本日は、現在、取りまとめを行っております政策評価につきまして、取りまとめの方向性が固まってまいりましたので、御説明させていただきまして、いろいろと御意見を賜りたいと思っております。今後につきましては、本日、先生方からいただいた御意見を踏まえまして、補足調査などを行いながら、さらに分析、検討を進めまして、最終的な取りまとめを行いたいと考えております。
 内容の説明に入ります前に、資料1の構成などについて御説明させていただきます。今回、政策評価を行うに当たりまして、児童虐待の防止等に関する政策を、私どもで4つのステージに分けて整理しております。左に縦書きで書いておりますが、「発生予防」、「早期発見」、発見され通告された後の「早期対応から保護・支援」、一番下でございますが、「関係機関の連携」という4つのステージに分けて、それぞれ、Iといたしまして「施策の概要」、IIといたしまして「主な施策の効果の発現状況」、これにつきましては、私どもの管区行政評価局を動員して関係機関に対して行いました実地調査の結果、それから、私どもが現場の実務担当者に対して行いました意識調査の結果、各種の統計データ、各省、厚労省とか文科省で行われた調査の結果などから、効果の発現状況を取りまとめております。これを受けまして、IIIとして「評価の結果及び課題」を整理させていただいております。
 まず、全体評価でございますが、一番上に書かせていただいております。児童虐待防止法が平成12年に制定・施行されております。その後も、虐待防止法、それから関連する児童福祉法の改正が数回にわたって行われておりまして、児童虐待の発生予防、早期発見、早期対応から保護・支援、関係機関の連携に係る制度・仕組みというものが順次整備されてきております。また、各省においてもいろいろ取組が行われておりますけれども、私どもの調査結果におきましても、有効であると認められる取組が多く実施されておりますので、一定の効果がみられると考えております。
 しかしながら、現在の制度、仕組み、取組で十分かと言いますと、依然として、児童虐待相談対応件数は増加傾向にございますし、また、児童相談所の相談体制や児童養護施設の受入体制などをみますと、まだ不十分というところがみられますので、この政策につきましては一層の推進を図る必要がある。特に評価において見いだされた課題への対応が必要ではないかと、全体評価を整理させていただいております。
 それでは、個別のステージごとの評価でございます。
 一つ目の発生予防につきましては、Iの施策の概要のとおり、主に育児の孤立化防止を目的として乳児家庭全戸訪問事業、生後4か月までの乳児のいるすべての家庭を訪問し、子育てに関する情報提供とか母子の心身の状況把握などを行うという事業が市町村において実施されております。
 また、養育支援が必要と判断した家庭を訪問し、相談に応じたり指導を行うという養育支援訪問事業も実施されております。
 これらの事業につきまして、効果の発現状況でございますが、一つ目のマルで、この二つの事業につきまして、事業の開始前後で虐待相談対応件数が増えたか、減ったかということを私どもで調べたところ、減少しているところが多くみられております。
 意識調査におきましても、全戸訪問事業につきましては児童福祉司の約98%が、養育支援訪問事業につきましては児童福祉司の約70%が、有効であると回答しております。
 しかしながら、三つ目のマルでございますが、これらの事業をいまだ実施していない市町村や、全戸訪問事業についてはすべての家庭を訪問するとなっておりますけれども、すべての家庭を訪問できずに、まだまだ訪問率が低調である市町村がみられるという状況でございます。
 これを受けまして、評価の結果といたしましては、これら二つの事業につきましては有効性が認められるが、まだ事業を実施していない市町村がみられるなど、効果の発現が十分であるとはいえないということで、課題といたしまして、実施率の向上などを指摘させていただいているところでございます。
 次に、早期発見でございます。早期発見につきましては、コメ印で書いておりますが、児童虐待防止法におきまして、児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、児童相談所又は市町村に速やかに通告しなければならないと規定されております。子どもに接する機会が多く、また、早期発見をしやすい立場にあります保育所、学校、医療機関などにつきまして、その対応状況をみております。
 IIの効果の発現状況の一つ目でございますが、保育所、学校からの通告件数を見ますと、全体の件数が増加しているということもあるかと思いますが、これらの件数も増加しております。それから、保育所とか小・中学校からの実際の通告事例につきまして、私どもで、速やかな通告がなされているかどうかということを調べたところ、保育所では88%、小・中学校では81%の事例につきましては、速やかな通告がなされていると思われるものでございましたが、残りの事例につきましては、速やかに行われてはいないと考えられるものでございました。
 次のマルでございます。文部科学省ではスクールカウンセラーを配置する事業を行っておりますが、スクールカウンセラーにつきまして、意識調査の中では、小・中学校担当者の約81%が配置は有効であるとする一方で、実際の配置は不十分という回答が約3分の2みられております。
 三つ目のマルでございます。これも文部科学省で、児童虐待の対応に関する学校向けの研修教材を作成しております。この研修教材につきまして、活用していないという教育委員会が、私どもの調査の中でみられております。また、意識調査におきましても、小・中学校担当者の約41%が、この教材を知らないと回答しております。
 四つ目のマルでございます。医療機関の中には小児科とか産婦人科など、関係する医師、看護師などで構成する院内チームを設置し、組織的に児童虐待に対応するという取組を行っているところがございまして、私どもが、院内チームを設置している医療機関とそうでない医療機関からの通告件数を比較したところ、院内チーム設置の医療機関からの通告件数が多くなっているということで、院内チームの設置につきましては、児童虐待の早期発見に有効であると考えております。しかしながら、厚生労働省におきましては、院内チームの設置の推進といった取組は行われていないという状況でございます。
 これらを受けまして、この項目につきましても、取組は進んでいる状況はみられるが、速やかに通告されていない事例などの問題がみられることから、効果の発現はいまだ不十分といたしまして、速やかな通告の徹底、院内チームの実態の把握、設置の推進といったことを課題として指摘させていただいております。
 次が、早期対応から保護・支援までのステージでございます。一つ目が、児童虐待相談対応体制、通告を受けて実際に対応する児童相談所とか市町村体制の整備でございます。
 これにつきましては、IIのところを御覧いただきたいと思いますが、一つ目のマルで、全体の虐待対応件数が増加する中で、児童福祉司、市町村担当者の数は増加してきております。実際の一人当たりの受持件数を私どもで調べたところ、児童福祉司につきましてはこの3年ほど横ばいで、一人当たり平均30件ほど、市町村担当者につきましては若干減少しておりまして、20件弱程度となっておりますが、意識調査におきましては、負担感が「非常に大きい」又は「大きい」と回答した児童福祉司が約94%、市町村担当者は約77%に上っておりまして、まだまだ現場の負担感は解消されるに至っていないとみられるところでございます。
 二つ目のマルでございます。研修の実施状況について調べたところ、都道府県におきましては主に市町村担当者への研修を実施しておりまして、児童福祉司への研修の実施は低調となっております。意識調査におきましても、研修が不十分であると回答した児童福祉司が約60%、市町村担当者は約44%となっておりまして、研修機会が少ないということに不満が示されている状況でございます。
 三つ目のマルでございます。私どもで、経験年数が実際に担当した事例の状況の変化にどのように関係しているかということで、経験年数3年以上の児童福祉司と3年未満の児童福祉司につきまして、実際に受け持った事例がその後どうなっているかということを調べたところ、当然のことではございますが、3年以上の経験年数のある児童福祉司のほうが状況を悪化させた割合が低いという結果がみられております。それから、意識調査におきまして、児童虐待に的確に対応するにはどのぐらいの経験年数が必要かと尋ねたところ、「3年以上」の経験が必要という回答が、児童福祉司、市町村担当者、いずれも最も多くなっております。実際の経験年数につきまして、私どもが調べたところでは、「3年未満」というものが児童福祉司では約57%、市町村担当者では約65%という状況でございました。
 これらを受けまして、評価の結果でございますが、要員の確保などによる体制整備につきましては、受持件数に大幅な減少がみられないなど、総じて効果の発現の程度は低いということで、課題といたしまして、受持件数などに見合った要員の確保、研修の充実、必要な経験年数などを踏まえた担当者の配置といったことを指摘させていただいております。
 スクールソーシャルワーカーにつきましては、私どもの調査では、効果の有無につきましては把握できておりません。しかしながら意識調査におきましては、小・中学校担当者の約66%が配置は有効であるとされた一方で、配置は不十分という回答が約84%となっておりまして、評価の結果といたしましては、スクールソーシャルワーカーの配置の有効性について検証の上、配置拡充のための措置を検討することが必要と整理させていただいております。
 次が、安全確認の実施でございます。安全確認につきましては、厚労省から、48時間以内に実施することが望ましいということが示されておりまして、私どもで、安全確認が実際に通告後何日ぐらいで行われたかということを調べました。
 そうしたところ、一つ目のマルに書いておりますが、通告後2日以内に実施されておりましたのは、児童相談所の事例では86%、市町村の事例では84%にとどまっておりました。
 それから、3日以上要した事例をみたところ、子どもの心身が重大な危機にさらされていたという事例もみられております。
 三つ目のマルで、「厚労省の調査でも」と書いておりますが、昨年7月に、大阪で2人の幼児が母親のネグレクトにより死亡するという事件が起き、その事件では安全確認が実施できていなかったということもありましたので、厚労省でもその後、昨年の夏に児童相談所における安全確認の実施状況を調査されております。その調査結果におきましても、安全確認ができていないケースが約2%みられております。
 これらを受けまして、評価の結果でございますが、安全確認はまだ不十分ということで、さらなる徹底ということが課題として挙げられるのではないかと考えております。
 次が、児童及び保護者への援助、指導といったことでございます。(1)に一時保護所について書いておりますけれども、安全確認を実施いたしまして、児童の安全を確保するためにすぐに親から引き離さなければいけない場合には、一時保護所で一時保護を実施することとされております。
 また、保護者に対しましては、アセスメントを実施いたしまして援助指針を決め、それに基づいて必要な指導、支援を行うことになっております。これにつきましては、一般的な指導では十分ではない場合には、法律に基づく行政処分としての指導とか、指導に従わない場合には、さらに勧告も行われております。
 これらにつきまして、効果の発現状況の一つ目のマルといたしまして、一時保護が必要なときに適切に実施されているかというところを私どもが調べたところ、95%の児童相談所におきましては適時に実施されておりました。しかしながら、残りの5%の児童相談所におきましては、一時保護所の空きがなくて、一時保護をしたかったけれどもできなかったという事例がみられております。また、一時保護所におきましては、被虐待児童のほかに非行児童なども保護しておりますけれども、被虐待児童と非行児童などを同じ居室で処遇するということは、被虐待児童のケアにとっては望ましいことではございませんので、混合処遇を改善する、居室を別にするという取組も行われてきておりますが、意識調査におきましては、児童福祉司の約57%が、さらに混合処遇の改善が必要と回答しているところでございます。
 その下の二つ目のマルでございます。私どもで、児童相談所、市町村が対応した事例がその後どうなったかということを調べたところ、児童相談所の事例の約71%、市町村の事例の約44%は改善しておりました。悪化していた割合はそれぞれ1.4%、3.8%、さらに再発していた割合がそれぞれ6.1%、3.4%となっておりました。悪化・再発事例の中には、最初のアセスメントが十分ではなかったこととか、あるいは保護者指導の仕組みが有効に機能していないことに起因しているものがみられております。保護者指導の仕組みが有効に機能していないと言いますのは、先ほど、一般的な指導に親が従わない場合には、行政処分としての指導とか、さらには勧告が行われるということを申し上げましたけれども、行政処分としての指導とか勧告に親が従わない場合にも、罰則等はございませんで、これらについて強制力がないということが原因の一つではないかということでございます。
 これらを受けまして、評価の結果でございますが、この点につきましても、一時保護所の整備などは進んでおりますものの、保護者に対する援助や児童相談所と養護施設の連携などに関して問題がみられ、効果の発現はいまだ不十分ということで、一時保護所の定員増、混合処遇の改善の一層の推進、アセスメントの適切な実施、保護者指導の仕組みの見直しといったことを課題として挙げさせていただいております。
 次に社会的養護体制の整備でございます。これは、一時保護を行っている間にアセスメントなどを行いまして、その後どのような対応をしていくかということを決めるわけでございますが、その後におきましても、引き続き親とは引き離す必要がある場合には、児童養護施設などへの入所措置、または里親への委託措置が行われるということになっております。それから、養護施設などで被虐待児童をケアする際には、精神的にもできるだけきめ細かいケアを行うことが必要でございますので、現在、国では、施設の小規模化とか被虐待児童に個別に対応する職員の配置の推進といったことを行っております。
 二つ目の里親につきましては、普及、委託の促進といった取組がなされているところでございます。
 これらにつきまして、効果の発現状況の一つ目のマルといたしまして、施設の整備は一定程度推進されておりますが、受入施設がないために一時保護が長期化しているという事例がみられております。一時保護は原則2か月までとなっておりますが、2か月を超えて、長い場合には1年とか、長期間にわたって一時保護がされているケースもみられているところでございます。それから、施設の小規模化につきましては、国で目標を定めておりましたが、まだ達成されていないという状況でございます。
 二つ目のマルでございます。施設に入所しております児童に占める被虐待児童、虐待経験のある児童の割合というのは年々増加してきておりまして、私どもが調べたところでは、児童養護施設では昨年4月現在で、約58%が虐待経験のある児童であったという結果がみられております。しかしながら、そうした被虐待児童の増加に対応して職員体制の整備が行われているとは言いがたい状況でございます。また、意識調査におきましても、施設担当者の約85%が業務上の負担が大きいと回答しております。
 里親につきましては、委託率について、国で目標を15%と定めておりましたが、実際は10.8%と、達成されていない状況にございます。また、厚労省で行われている里親委託促進の事業につきまして、事業の実施前後で委託率の変化などを調べたところ、必ずしも委託率が向上しているという結果がみられていない状況でございます。
 これらを受けまして、評価の結果といたしましては、施設の整備などは進んでいるが、小規模化、職員体制の整備、里親委託に関しては十分に進んでおらず、効果の発現がいまだ不十分ということで、地域の実情に応じた施設の整備、職員体制の一層の整備などを課題として挙げさせていただいております。
 最後でございますが、関係機関の連携といたしまして、市町村におきまして、関係機関の連携を図るために要保護児童対策地域協議会を設置するということが、児童福祉法において努力義務として課せられているところでございます。関係機関と申しますのは、児童相談所とか市町村、小・中学校、保育所、医療機関、警察など、いろいろな機関でございます。
 この協議会の設置・運営状況につきましては、一つ目でございますが、まず、設置率につきましては、22年4月で約99%ということで、ほぼすべての市町村に設置されている状況でございます。
 二つ目のマルでございますが、この協議会におきましては、個別のケースに対応するために情報共有とか役割分担を決定し、さらには個別のケースの対応方針を検討する個別ケース検討会議とか、あるいはケースの進行管理などを行う実務者会議を開催することが期待されておりますが、児童虐待が発生しているにもかかわらず、実際にはこれらの会議が一度も開催されていないというところがみられております。また、意識調査におきましても、児童福祉司の約39%が、この協議会は効果的に機能していないと回答しております。
 これらを受けまして、評価の結果といたしまして、組織づくりは進んでいるが、会議の開催が低調など、効果の発現は十分であるとはいえないということで、未設置市町村においては設置の促進、実務者会議、個別ケース検討会議の開催の促進ということを課題として挙げさせていただいております。
 私からの説明は以上でございます。
【谷藤分科会長】  どうもありがとうございました。こういう方向で取りまとめたいというところが事務局の案でございます。
 それでは、各委員の方々から御意見をいただきたいと思います。加藤委員、どうぞ。
【加藤臨時委員】  2点あります。まず1点目は、取組に効果がありという全体評価がありながら、虐待相談件数が増加していることに対する疑問です。これは、取組を充実したおかげで潜在的な問題が顕在化しただけなのか、それとも、そもそも最近の景気低迷等で虐待件数そのものが増えているのかというのが、よく分かりません。こうした中で、現在の結論を出すことは、本当に正しいのでしょうか。結論を出すためには、虐待相談件数増加の原因メカニズム解明をきちんとするべきだと思います。
 例えば、データを見る限りでは、市町村からの報告は増加しているようです。児童相談所からの報告件数は、ジグザグしているようなので、もしかしたら市町村で取組が一生懸命行われるようになったせいで、顕在化しただけなのかもしれません。その辺について、もし分かっていることがあれば教えてください。
 2点目です。資料1−1を見る限りでは、既存事業の効果が主に評価されているようですが、本来、政策評価がやるべきなのは、目標そのものの妥当性や事業の十分性を評価することではないでしょうか。また、今の評価では、有効な取組が多いこととなっていますが、これだと無効な事業が存在することが十分にチェックされていない可能性があり、十分ではないと感じています。
 以上です。
【谷藤分科会長】  どうもありがとうございました。
 それでは、事務局のほうから、2点につきまして御説明願います。
【平野評価監視官】  件数の変化、推移についてどのように見るかという1点目でございますけれども、先ほど先生は、児童相談所については件数がジグザグしているとおっしゃいましたが、参考資料1の1ページの一番上の表1を御覧いただきたいと思いますが、こちらに、児童相談所、市町村における相談対応件数の推移を載せさせていただいております。この数字を見ますと、児童相談所、市町村、いずれにおきましても、これまで毎年、幅はございますけれども、増加しているという状況でございます。
 この増加しているという状況につきまして、潜在していたものが顕在化していたのか、それとも、実数そのものが増えているのではないかということにつきましては、いろいろな議論があるところでございますけれども、今回の意識調査の中では、実数そのものが増えているのではないかという回答が多くみられておりますし、また別途、私どもで、この政策評価を行うに当たりまして、有識者の方にお集まりいただいて研究会を開催しておりますけれども、研究会の先生方に御意見を伺いましても、児童虐待の要因が増えていて、実数そのものが増えていると捉えてよいのではないかという御意見をいただいているところでございます。
 発生の要因などにつきましては、厚生労働省で、実際の児童虐待による死亡事例について、専門家を集めて検証を行うといった取組がなされておりまして、そうした検証とか実態調査の中で、児童虐待を発生させるおそれのある要因が整理されておりまして、そのリスク要因に基づいて、実際に現場で、それぞれの段階でどのように対応していったらいいのかといったことも、厚生労働省で作成されておりますマニュアル、児童虐待対応の手引きでは示されているところでございます。
 いずれにいたしましても、児童虐待の発生要因については、私どもでもこれから分析を進めさせていただきたいと思っております。
 2点目の、目標が妥当か、事業が十分かどうか、それから、私どもの全体評価の中で、有効である取組が多いと書いているが、無効なものがないのかどうかという点でございますけれども、目標につきましては、児童虐待の防止ということで、これは当然、妥当な目標と考えております。
 それから、個別の取組の有効性につきまして、現在、私どもで、これは無効だと評価できる取組というのは見いだせておりません。効果の把握ができないというものは幾つかみられておりますけれども、効果を把握できないから直ちに無効とまでは、まだいえないと考えておりまして、その点につきましても、さらにこれから分析、検証を進めさせていただきたいと思っております。
【加藤臨時委員】  私のデータを見るところが、一部本来見るべきところと違っていたようです。申し訳ありません。増えているということですね。その点については、発言を修正させてください。
【谷藤分科会長】  よろしいでしょうか。
【加藤臨時委員】  はい、大丈夫です。ありがとうございます。
【谷藤分科会長】  では、佐藤委員、どうぞ。
【佐藤臨時委員】  2点ほど。例えば全戸訪問が97.7%とか、ここの数字は全国平均だと思いますが、都市部、地方部、どんなところで、例えば乳児家庭全戸訪問事業というのは進んでいる、あるいは進んでいないのかとか、それから、教材を活用していない教育委員会があるということですが、これも、一体どんなところで実際に活用が進んでいるのか、いないのかとか、地域の属性というのが分からないと、もともとあまりニーズがなくて普及していないのかもしれないし、あるいは、ニーズが高いにもかかわらず、つまり問題が多いにもかかわらず全くやっていないのかもしれないし、あるいは、単にお金がなくてやっていないのかもしれないし、普及を阻害している要因というのは何かあるのか、その地域の属性はどうなっているのかということをたほうが、改善策を具体的に考えていく上では大事かなということ。
 それから、いろいろな数字が出てくるのですけれども、例えば発生予防として、繰り返しますけれども、全戸訪問事業とか養育支援訪問事業というのがありますが、これが実際普及している自治体のほうが児童虐待相談件数は低くなっているのか、あるいはそうでもないのかとか、あと、経験年数は3年以上というのが基本的に大事だと言いますけれども、確かに直観的にもそうだと思いますが、それが実際、後の再犯率とか、その後の安全確認にかかる時間とか、そういったところにもリンクしているのかどうか、数字が出ていますので、あと、保護施設に一時的に保護しているということになっていますけれども、そういった保護の体制が再犯率とどうリンクしているのかとか、せっかく予防、発生、早期対応と分けているので、それぞれの施策がその次の段階にどのようにインパクトを与えているのかという整理があったほうがいいのかなと。
 そうしないと、単に普及している、普及していない、それで自己完結してしまうので、そのあたりのリンクがあると分かりやすいかなと思いました。
【谷藤分科会長】  どうぞ、説明はありますか。
【平野評価監視官】  今の先生の御指摘を踏まえまして、さらに私どもで分析を進めさせていただきたいと思っております。まだまだ現時点では、要因分析についてはできていないと考えておりますので、さらに進めさせていただきたいと思っております。
【谷藤分科会長】  城所委員、どうぞ。
【城所臨時委員】  先ほど加藤先生がおっしゃったことと重なりますが、私もまだ総務省の政策評価がよく分かっていないというところがあるのですが、通常、政策評価というのは、目標の妥当性を問うことだと思います。例えばここでいうと、児童虐待の防止というのに対して何をすればいいのか、それは、例えばどれだけの予算をかければどれだけの虐待を減らせるのかというのが、本当の政策評価で、前回の分科会でも話が出ましたけれども、結局、法曹3,000人というのは妥当なのかということを問うべきだというのが政策評価ではないかと思います。
 ただ、ここでやっていることというのはどういうことかというと、そうではなくて、目標は所与なのですね。つまり施策の概要を決めた上で、その目標をどれだけ達成しているか。どちらかというと行政の監査に近いのかなと、個人的には思っています。
 そうすると1の「施策の概要」と2の「主な施策の効果の発現状況」はいえると思うのですね。2まではいえるけれども、3の「評価の結果及び課題」はいえないのではないかと思うのです。例えば、3の中に、広報・啓蒙活動の推進というのがありますが、これは追加的な費用を伴うものですから、そこを伴ってもやるべきかということになると、先ほどの、本当に児童虐待を防ぐにはどうしたらいいかということに戻らざるを得ないので、3はいえないのではないかと思います。
 もう一つは、そもそも、今、私が言ったように、総務省が実施している児童虐待の防止等に関する政策評価は、行政の監査であっていいのかどうかが論点だと思うのですが、実態としては、どちらかというと、行政の監査プラス実態調査だと私は思っています。
 実態調査も、どちらかというと供給者側のみに集中していますね。市町村側であったり、児童相談所であったり、児童虐待の防止を防ぐサービスを提供する側の視点が多く出ていて、需要側の声が何もないというのは一方的ではないかと思います。
 例えば、乳児家庭全戸訪問事業ですが、実は私の家にも保育士が来たのですが、これは本当に無駄だと思いました。来られて数十分話して、それで帰る。一回きりで、それに予算を使ってどういう意味があるのか、よく分からないのですが、多分、私と同じように感じている全国の保護者の方は多いと思います。そういう需要側の声は入っていないわけですね。
 そこも突き詰めていくと、果たしてこういうことをすべきかどうかという、目標の妥当性を問うことに戻ってしまいます。しかし、たとえ、このように行政の監査ということになったとしても、需要側の視点を必ずどこかに取り入れないと、一方的な見方になるのではないかと思います。以上です。
【谷藤分科会長】  今、2点ありましたけれども、それについて説明はございますか。
【平野評価監視官】  まず、どれだけの予算で、本件については、効果としてはどれだけ虐待件数が減ったのかということの分析が必要ではないかとの御指摘が1点目かと思いますけれども、これにつきましては、費用の把握の面と効果の把握の面、両方の面で非常に難しいところがございまして、残念ながら現時点では、私どもではそうした分析ができていないという状況でございます。
 費用、予算の面につきまして、簡単に具体的な例を御説明させていただきますと、文部科学省でスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーを配置するという事業が行われていますが、資料1−2の左下に、23年度予算額を書いておりますが、そこの注のところで、文部科学省では、今申し上げましたスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーの活用事業につきまして、これらに係る補助金は、そのほかの、例えば放課後子ども教室推進事業など、合わせて六つの事業に係る補助金として、一括して地方公共団体に交付されておりまして、個別の事業ごとの内訳が把握されていないという状況にございます。したがいまして、いわゆる統合補助金の中で、児童虐待に関連する二つの事業についての正確な予算が、現在、私どもは把握できないという状況でございます。
 それから、効果につきましても、実際にいろいろな事業や取組が行われることによって、どれだけの児童虐待の件数が予防されたのか、あるいは仮に起こったとしても、虐待の程度が軽いもので済んだのかということにつきましては、そうした数字を把握することがそもそもできないということと、仮に把握できたとしても、金銭に換算することが非常に難しいといったことがございますので、効果につきましても把握、分析ができていないという状況でございます。
 それから、今回の整理については、需要側について調べていないのではないかとの御指摘でございます。具体的に乳児家庭全戸訪問事業についてのお話がございましたけれども、乳児家庭全戸訪問事業、それから養育支援訪問事業につきましては、私どもでも、事業の対象者に対するアンケート調査などをできないかということを検討いたしましたが、実際に調査を行うに当たっては、事業の対象となった人の個人情報を入手しなければいけないわけですけれども、個人情報保護の観点から、なかなか難しいということがございます。
 それに代わるものとして、私どもが直接実施するのではなくて、これらの事業を実施している市町村にアンケートをお願いできないかということも考えましたけれども、市町村に面倒をおかけするのもいかがなものかということで、これらの事業についての需要サイドに対する調査は断念したという経緯がございます。
【谷藤分科会長】  田中委員、どうぞ。
【田中(弥)臨時委員】  今の先生方の御議論ともつながっていくのですが、2点ございます。
 1点目は、ここでの政策評価の意義に関することですが、今後、政策目標達成明示制度等々が出てくると、より強力な上位概念がそこに出てきたときに、設定された目標に従って淡々と達成度を説明していればいいのかという問題にもつながると思うのですが、先ほど先生方がおっしゃったように、そこを所与としないで、達成できないのは目標がまずかったから駄目なのか、やり方がまずかったから駄目なのかということで、きちんと独立したポジションをとって、フィードバックできるような委員会であってほしいと思います。
 そうした視点で資料1−1の説明を拝聴していましたが、例えば、一番最後のネットワークを作るという話ですが、これを作って稼働させることが所与の条件となっていますが、これだけ開催されていない率が高いというのは、ネットワークの設置自体が本当に妥当であったのかどうかということも問いかける必要があったのではないかと思います。
 もう一つは、細かいことですが、参考資料の11ページで、主な児童虐待の発生原因のところです。御説明を聞いていると、いろいろな要因がばらばらに聞こえてきますが、例えば虐待の発生要因に関して、貧困だとか養育能力の不足というのは相互に絡んでいるものでありまして、ここをこのようにばらばらに説明してしまうと、おそらく対応策もそれぞればらばらに持って、切ってしまうような気がするのですが、もう少し、このような要因がどのようにつながっているのかというところを構造的に見ていただくような分析をすることによって、また違う側面、対応策が生まれてくるような気がいたします。以上です。
【谷藤分科会長】  今の御意見について、評価監視官からありますか。
【平野評価監視官】  まだまだ要因分析等が十分ではないというのは認識しておりますので、今の先生の御指摘も踏まえまして、さらに分析、検討を進めさせていただきたいと思います。
【谷藤分科会長】  立花委員、どうぞ。
【立花臨時委員】  大した問題提起ではありませんが、今の田中先生の問題提起とも若干重なる点がありますけれども、児童虐待防止のような現場で人と接する仕事は、どちらかといえば義務づけてやらせるというか、役所だけに任せておけない問題で、隣り近所の地域総がかりといいましょうか、あるいは現場の力といいましょうか、そういった力をどうやって引っ張り出すかということが大事だろうと思うのです。
 その場合に、私はよく分からないのですが、こういった問題について、例えばNPOとかNGO、いろいろな団体があって、今回の震災の事後の問題でも大変な活躍をされているわけですけれども、もちろん一口にNPOとかNGOといっても、いろいろな思惑を持って、ピンからキリまであるわけですから、そう簡単に信用できるかという問題はあるかもしれませんけれども、基本は、どうやって児童に寄り添って、真剣に対応を考えていくかということで、最後の関係機関の連携のところで、自治体、あるいは警察、医療機関、学校、保育所とかがありますけれども、あるいは個々の施設で、ボランティアとしてやっていくといったこともあるでしょうし、健全なNPOとかNGOの力をどうやってこういった問題の解決につなげていくか。
 私はその辺が、今日の資料では主として公的な機関を中心に、この関係機関のところが分析されていますので、NGOとかNPOの力をどうやって結集しながら、こういったネットワーク、あるいは個々の施設での公的な職員、どちらかといえば、自分たちの待遇改善ということも大事でしょうけれども、行政コストが、人数を増やせば増やすほど膨大になってきますから、人と接するところでは、NPOやNGOの力をどうやって使っていくかという視点も大事だと思うのですが、その辺は、関係機関の連携のところでは当然、問題意識を持っておられて、分析しておられると思うのですが、どういうことになっているのか、教えていただければと思います。
【谷藤分科会長】  その点につきまして説明願います。
【平野評価監視官】  今、先生御指摘の、NPOなど、もっと民間の力を積極的に活用することがこの分野でも必要だという点につきましては、先ほど申し上げました研究会の中でもそういう御意見がございまして、私どもも非常に重要な視点だと思っておりますので、取りまとめの中に盛り込んでいくべく作業を進めさせていただきたいと思っております。
【谷藤分科会長】  それでは、森泉委員。
【森泉委員】  御説明ありがとうございました。一言だけ言わせていただきたいと思います。
 要因分析がこれからということをお聞きしたので、評価の結果というか、評価の方法について一言申し上げたいと思います。一番始めに、加藤先生でしたか、御質問、コメントがあったように、潜在的に増えているのか、それとも制度の効果として出てきているのかということが混在してしまっているのではないかということも踏まえて、それから、先ほどの要因分析の中で、それぞれの要因が複雑に相関を持っているのではないかという田中先生の御意見も踏まえて、この要因分析は統計的手法が有効だと思われるので、できるだけそのような方法でおやりになったらいかがかと思いました。
 意識調査も、これだけのサンプル、標本が集まっているわけですから、ただグラフを書いて一つ一つ要因をみても、要因同士の関係ということが、明らかに立体図でも書かないと出てきません。また、要因が幾つも絡み合っているときは図の書きようもなくてということになってきますので、要因分析をこれからおやりになって評価に結びつけるためには、簡単なものでもいいですから、何らかの統計的な手法をお使いになるとよいのではないかと思いました。以上です。
【谷藤分科会長】  それについて、意見はございますか。
【平野評価監視官】  私どもでいろいろと勉強させていただいて、そうした手法をできるだけ用いるようにさせていただきたいと思います。
【谷藤分科会長】  それでは、高橋委員、どうぞ。
【高橋臨時委員】  諸先生方の御意見と重なるところも多いと思うのですが、一番申し上げたいのは、この政策評価を私どもがやっていることも含め、スピード感がないといけないと思っています。児童の虐待は本当に命に関わる問題で、政策評価でいえば、安全確認の実施というところに非常に問題があることは分かったわけですけれども、そこに対する評価の結果、課題に、単に「安全確認の徹底」と書くことに何の意味があるのかなと、正直感じました。
 安全確認の徹底には、ここだけ見ても、例えば市区町村とか児童福祉司の経験年数が非常に足りないということが出てきて、田中委員がおっしゃったように、本当に有機的な関係が必要です。そこのところができていないのに、関係機関の連携のところで、「実務者会議や個別ケース検討会議の開催促進」と書いてありますけれども、今既に形骸化しているのに、ここに促進ということを我々が書くことの意味は何だろうかと、大きな疑問を持ちました。
 少し似た課題として、私は多重債務者対策本部有識者会議のメンバーですが、そこの場合には、自殺が非常に増えているのが問題でした。今、立花委員がおっしゃったようなNPOとの連携促進に取り組み、ベストプラクティスを共有したりすることで、市区町村の窓口の担当者であるとか、様々な人たちにもっと有機的に結合、団結もしながら動いていただこうということをして効果をあげました。
 ですので、特に命に関わる問題のときに、単に左から1、2、3の形で書いていくと、ばらばらとまた無駄なことがやられるようになってしまいそうです。政策評価としても、この先といいますか、総合的に見て、どのように進めていくのか、スピード感とか縦割り的な進め方の問題点をきちんと指摘しておくべきと思いました。
【谷藤分科会長】  ありがとうございます。これについては、今は御意見ということでよろしいですか。
【高橋臨時委員】  はい。
【谷藤分科会長】  前多委員、どうぞ。
【前多臨時委員】  前多でございます。今年から委員になりまして、今回初めて政策評価の案を見させていただいたのですが、率直な感想を言わせていただくと、全体の評価手法が非常に記述的で、なおかつ定性的な手法になっているということを感じました。特に意識調査のデータがそのまま生の形で出てきて、それに過度に依存しているようなところがあるのではないかと。
 例えばスクールカウンセラーについて、意識調査では80.5%が有効としつつ、66.7%が不十分と。したがって、そこから評価すると、スクールカウンセラーの配置の充実をしようということになるわけですね。スクールソーシャルワーカーだと、意識調査では65.5%が有効であるとして、83.7%は不十分と。だから結論としては、配置拡充のための措置を検討するとなるわけです。
 ただ、限られた予算をどういう形で効率的に配分していくかを考えた場合に、例えば人として10人分の予算がある。そのうち何人をスクールカウンセラーにして、何人をソーシャルワーカーにするか、5人、5人増やすのかとかそのようになると、定性的な分析だとそこで詰まってしまうわけです。
 提案したいのは、統計的な手法をやったほうがいいということで、これは森泉先生が既に御指摘しているとおりですが、例えばスクールカウンセラーの配置が有効であれば、配置しているところと配置していないところで早期発見の割合がどれだけ統計的に異なるのか、これだけでもすぐできるわけですね。これは別に、大学の統計学を半年ぐらい聞いていただけると分析が可能な、非常にプリミティブな、そのようなものは随所にみられるわけです。
 もう少し進んだ分析をしようとすれば、例えばスクールカウンセラーとスクールソーシャルワーカーというのは、ある程度、相互効果があるはずですね。スクールカウンセラーというのは臨床心理士などの方々で、スクールソーシャルワーカーというのは多分、福祉関連の方々だと思うので、かなり連携していっている。そうすると、例えば一人一人、組になってやったほうがいいのかどうか、そういう相互の連関効果のようなものも統計的な分析をすると出てくるのではないか。意識調査に過度に依存して分析すると、そういう横断的な効果はなかなか見づらいというところがあります。それは最終的に、税金が限られている中で、より効率的な配分を行うということを考えた場合には、重要なことではないかと思います。以上です。
【谷藤分科会長】  今の意見につきまして、何かありますか。
【平野評価監視官】  先生御指摘の意識調査の取り扱いにつきましては、私どもでは、あくまでこれは実地調査結果などの補強材料として使っているという認識でございまして、スクールカウンセラーのところ、この資料に書いていない部分がございまして大変申し訳ないのですが、私どもの調査の中では、スクールカウンセラーによって、カウンセリングの中で実際の虐待が発見されたような事例が幾つかみられております。それと意識調査結果から見極めながら、評価をさせていただいているというところがございます。
 しかしながら、今、先生から御指摘がございました、スクールカウンセラーとソーシャルワーカーの関係とか、その配置状況によった件数の変化といった点については、私どもが持っている材料で、どこまで分析ができるか分かりませんけれども、取り組んでみたいと思っております。ありがとうございました。
【谷藤分科会長】  そのほか。どうぞ、田中委員。
【田中(常)臨時委員】  施策そのものの評価で、実際の原因であるとか、全体についてどう捉えるかということの検証が要ると思うのですね。特に子ども・子育てビジョンだとか、それに関連する施策というのは、発生予防に非常に関係していると思うのですが、ここには全く出てこないですよね。
 ですから、多少評価の領域を広げれば、今ある子ども・子育てビジョンの施策と児童虐待の防止についての関連性も紐解けるような気がするので、できればそういったところまでやられたらどうかと思います。
【谷藤分科会長】  そのほか。門脇委員、どうぞ。
【門脇臨時委員】  児童虐待防止法が施行されて、かなりの年数が経つわけですが、現実が法律の目的の方向に改善されているのか、この分析結果からは理解しにくいように思います。相談件数の増加が主要指標として示されていますが、増加した方が良いのか、減少した方が良いのか見えて来ない。その中で施策が逐次投入されているわけで、投入コストに対し、効率的に施策が実施されているかについてはさらに見えにくい。実態の改善とはどこに目標を置くべきなのか、はっきり判かるような分析が必要です。
さらに、子ども、特に乳幼児虐待は、実の親と云えども誠に卑劣な話だと思うのですが、諸外国では親に対して厳しい処罰が下されることになっているのではないでしょうか。子どもに留守番させるだけで警察が飛んで来るとも聞いています。外国の虐待防止はどのような形で実施されているのかということも、よく研究していただきたいというのが私の考えであります。
【谷藤分科会長】  門脇委員、今の御発言は御意見としてよろしいでしょうか。
【門脇臨時委員】  結構です。
【谷藤分科会長】  よろしいでしょうか。私のほうで取りまとめをするというわけにはまいりませんので、本日の議論を踏まえまして、たくさんの問題点が指摘されたと思います。その因果連鎖をどう説明していくのかということや、設定された目標を、単に所与のものとしないということが、まさに政策評価の重要な点でございます。その目標が妥当であるのかどうかということ、あるいは、ここで組み込まれないような政策があるのかどうかという問題、それから、高橋委員から、ベストプラクティスを抽出していくということも大変必要だろうということ、制度のフレームワークの中だけで議論するのではなくて、外国の事例を参照するとか、あるいは統計的手法により、十分、因果連鎖を把握できるのではないかという御意見もございましたので、これらを踏まえまして、さらに政策評価の充実を図っていただきたいと思います。
 では、第1議題はこれまでにしたいと思います。田中局長、ございますか。
【田中行政評価局長】  御指摘をどうもありがとうございました。ただいまの分科会長の御指示に従いまして、引き続き取りまとめ作業をさせていただきます。
 これからの御議論にも関係がございますので、所信表明で申し訳ないと思うのですが、いわば総務省が行います政策評価の本質的な論点についてのいろいろな御指摘をいただいたと受け止めております。非常に有り体に言いますと、10年経って、今更そういう御指摘をいただくのかということだと思います。調査の出来の良さ、悪さにも関係あるかもしれません。
 取り分け、今、分科会長にも触れていただきましたように、政策目標とか施策制度を前提とするのであれば、かつ、御指摘の、いみじくも行政監査的とおっしゃいましたが、私どもの仕事の一分野である行政評価・監視は、まさに現行の政策目標なり施策を前提として、その運用状況をみていくということを手間と金をかけてやっているわけでございまして、他方、政策評価は、まさに政策目標あるいは施策制度そのものを問うていくということが建前でございますので、誠に厳しい御指摘だと思います。
 それから、スピード感の問題、あるいは課題の縦割り的な取上げ方を含めますいろいろな意味での分析手法の問題など、本当に繰り返しですが、本質的な御指摘をいただいたと思います。その点をよく私どもも心得まして、取りまとめたいと思います。御指摘ありがとうございました。
【谷藤分科会長】  よろしくお願い申し上げます。
 それでは、議題2にまいりたいと思います。「平成23年度の政策評価の取組」につきまして、まず、事務局から説明をお願いいたします。
【山内政策評価官】  それでは、資料2−1を御覧ください。平成23年度の各行政機関における政策評価の進め方についてでございます。
 今回の東日本大震災の発生に伴いまして、政府としては、その対応を最優先に行うべき状況にあります。このため、政策評価の実施につきましても、各府省官房長等宛てに行政評価局長から、以下の2点の内容を通知したいと考えております。
 まず、1点目でございますが、これは政策評価の実施全般に係る内容でございます。例えば各府省の中で、関係部局が震災対応に忙殺されて、政策評価の実施が困難である場合があるかと思いますけれども、そういった場合につきましては、各府省で定めております実施計画を変更して、今年度の評価対象から当該政策を外すなど、各行政機関において、震災対応に支障が生じないように適切な対応に努められたいというのが第1点目でございます。震災対応の状況といいますのは、各府省、各部局で異なっておりますので、それぞれの行政機関において、責任を持って判断していただきたいというものでございます。
 第2点目は、「目標管理型の政策評価」の改善方策についてでございます。これにつきましては3ページ目、4ページ目に様式をお付けしております。これは前回の分科会で席上配布資料としてお配りしたものについて、細かいところを修正しております。
 まず、評価書につきまして、各府省統一の簡略化した様式により作成するとともに、次のページの事前分析表を、あらかじめ様式にのっとって作成するというものでございます。これらにつきまして、前回も御議論いただきましたけれども、各府省との間でも相談しておりました。しかしながら、大震災の発生に伴いまして、各府省の状況をお聞きしましたところ、ある府省は震災対応に追われておりまして、なかなか新たな改善措置に取り組める状況にはないというところがある一方で、別の府省では、もう既に作業を始めさせている。もちろん一部の部局は対応できないけれども、できるところもあるだろうというお話もありました。
 また、23年度については、試行として実施してはどうか。試行として行った上で、現場の声を聞き、分科会の先生方の御意見も伺って、今後より良いものになるよう、慎重に検討していってはどうかといった御意見もございました。このため、私どもとして、23年度の改善措置につきましては試行的取組として、できるところにはやっていただくということにしたいと思っております。
 具体的には、2ページでございます。まず、評価書の様式でございますが、これは3ページに付いております新たな標準様式によることを基本としたいと思っております。ただし、3ページの様式にあります要素をすべて盛り込んだ上で各府省の工夫を加えて、一部様式の修正を行うことは問題ないと考えております。また、この様式を使うことは難しいという場合、従来、各府省で行われていた評価書の様式の中にこの要素を盛り込んでいただくことも可能と考えております。
 それから、次の事前分析表でございます。4ページでございますけれども、事前分析表についても、原則として、新たに作っていただくということを考えておりますが、この一部修正も可能と考えております。
 こういった新たな取組につきましては、当然ながら、部局によりまして、震災対応でできないというところもあろうかと思いますので、震災対応による困難、あるいはその他特段の事情がある場合には、この取組を実施しないこともできるという意味で、試行的取組とさせていただきたいと考えております。
 その後でございますけれども、24年度以降の取組としましては、せっかくできるところにはやっていただくという事例ができるわけでございますから、それを踏まえ、また、各府省の御意見ですとか、分科会での御議論を踏まえて、改めて検討させていただきたいと考えております。これが1点目でございます。
 次は、資料2−2、行政刷新会議、行政事業レビューでございます。行政事業レビューにつきましては、昨年度、試行を行い、今年度から本格的実施を行うというスケジュールになっておりました。
 しかしながら、これにつきましても地震対応を優先させるということで、年度末から6月ぐらいまでにかけて行う予定でございました、行動計画の作成、公開プロセスの実施、行政事業レビューシートの中間公表などは、今年度は必要としないとされております。
 また、8月末の概算要求時に向けて作成・公表を行うこととしておりました行政事業レビューシートにつきましては、当面、災害対応の状況がどうなるか分かりませんので、5月以降に行政刷新会議で判断されるということになっております。
 こういった状況でございますので、前回、政策評価と行政事業レビューとの連携について御議論いただきまして、その際には、次回、すなわち今回でございますけれども、事務局から連携の検討結果を御報告するということを申し上げておりましたけれども、残念ですが、改めて御報告させていただきたいと考えております。
 併せまして、先ほどいろいろと御指摘もありましたけれども、政策評価の制度全体がどうあるべきかといった見直しも、今回、法律が施行されて10年経っているわけでございまして、行っていくというお話を前回もさせていただいたかと思いますけれども、その進め方につきましても、改めて御報告させていただきたいと思っております。
 資料2−3でございますが、先ほどの目標管理型の政策評価の改善方策について、具体的に、今年度どのように進めていくかというのを図に落としたものでございます。
 本日、分科会で御議論いただきまして、その結果を踏まえて、今月中に局長通知を発出したいと考えております。8月末には、できるところにおいては新しい様式に基づいて評価書を公表していただく。11月末までに事前分析表をできるところで作成していただき、そういったものについて、年度内に実施状況を把握し、課題等の整理を行い、分科会における審議や関係機関との調整を踏まえて、24年度以降の対応を考えていきたいと思っております。
 議題2についての説明は以上でございます。
【谷藤分科会長】  ありがとうございました。平成23年度における政策評価の実施の基本的な方針ということでございます。分科会の意見を受けて、4月中に局長通知書をこういう形で発出したいということでしょうか。
【田中行政評価局長】  もう一つ、次の議題もございまして、若干時間が押しておりますので、今の説明で、有り体に、私から簡単にコメントさせていただきたいと思います。
 御案内のとおり、3月11日の震災を受けまして、政府部内の全体としての仕事のやり方と申しますか、実務の取り進め方につきまして、いろいろと内閣官房から指示が出ております。正確な言葉遣いではありませんけれども、私どもなりに一言で整理しますと、とにかく当面、復旧・復興事項を優先させる、多少、通常業務に支障があっても、そちらのほうにマンパワーも含めて投入せよという指示だと受け止めております。そういう環境下で、法律に基づく政策評価をどうやっていくかという局面であるわけです。
 それからもう一つ、政策評価プロパーの問題といたしましては、昨年の秋、いろいろと御議論いただきましたが、他のレビュー機関、とりわけ行政刷新会議との関係・連携の論点を、私どもの行う政策評価の中にどう盛り込んでいくかという論点がございました。
 本日、卓上にいろいろと資料が置いてありますが、取り分け参考資料1から3で分かるように、3月2日の行政刷新会議での閣僚レベルでの議論を踏まえて、大筋こういうことでやろうかということで各省間で調整が進んでおりました。具体的にどうするかという局面で震災が起こりまして、基本的に、大体こんなことをやろうということでは内々合意を得ておりますけれども、新しい試みで、かつ、実際にやろうとすると相当程度、実務的な力が要りますので、その点について、先ほど申し上げた環境の中ではあまり無理は言えないということで、この辺は試行的な取組ということでやっていただきまして、その中で、もし仮に問題点があるならば、それは本格的実施の際に活かそうということで、基本的にはそういうスタンスで臨みたいということでございます。以上です。
【谷藤分科会長】  一番大きな変更点は、2番目に書かれております、「目標管理型の政策評価」を試行的に23年度は試みるということでございます。他機関との連携、行政事業レビューとの関係については、今後、行政刷新会議の動向を見ながら、改めて連携を模索するということでしょうか。
【田中行政評価局長】  言い忘れました。行政事業レビュー、行政刷新会議の方は、まだどうおやりになるか、お決めになっていない状態ということでございます。
【谷藤分科会長】  以上の御報告を踏まえまして、御意見がございましたらどうぞ。
 小野委員、どうぞ。
【小野臨時委員】  意見というよりも質問をさせていただきたいのですが、質問が2点と、あと意見というか、一つあります。
 質問の一つ目は、「目標管理型の政策評価」という、かつてはあまり使われていなかった用語かと思いますけれども、資料2−1のところで、「「目標管理型の政策評価」とは」という説明が1ページの一番下に出ていますが、いわゆる実績評価方式のようなやり方で行っている政策が、まさに目標管理型の政策評価そのものだと思うのですけれども、「及びあらかじめ設定された目標の達成度合いについて評価する内容を含む、いわゆる「施策」レベルの政策の事後評価をいう」と書かれていますが、これは、実績評価方式を採っている評価以外にどのようなものが、ここで整理されている目標管理型の政策評価というのに相当するのか、具体的な範囲の特定といいますか、そういうことがあるのか、ないのか。
 つまり、ある程度、現在行われている、各省でいろいろ特色あるものもありますけれども、どれが目標管理型の政策評価というような認識というか、総務省なりの捉え方というのがあるとしたら、そこを教えていただきたいこと、要するに、実績評価方式以外のどういう部分が目標管理型の政策評価ということになるのかということが1点目の質問です。
 2点目の質問は、評価書の標準様式と、それから、これは簡素なもので、その中の指標とか目標値というのがどこから出てきたのかということを事前に明らかにしておくような事前分析表というのがございますが、両者の関係ですけれども、事前分析表というのは、新たな標準様式を使う場合には、こちらも必ずセットでやってくださいという趣旨のものなのかどうか、それがシンプルな確認です。
 つまり、標準様式に切り替えない場合には今までどおりで、標準様式を使う場合には、これだと簡素で、指標とか目標値の背景の情報が一切ありませんから、必ず事前分析表を使うのだという、ある種のルールというか、そういう性格なのかということです。これが2点目の質問です。
 3点目は、意見というか、コメントですけれども、今回の様式を示すということは、総務省として、ある程度簡素化しつつも重要なポイントを押さえるということが一つの方針だと思うのですけれども、その中で、震災の対応とかもあるので、できない場合もある。もう一つは、各省固有の評価の取り組み方もあるので、対応できない部分がある。
 対応できない理由はおそらくこの二つでしょうが、先ほどの御説明の中にもあったと思いますが、ただ、この二つは分けておく必要があるというか、今は非常事態でもありますから、対応できないということはもちろんあって当然だと思うのですけれども、一方で、そもそもそれとは違うやり方をするということとは少し違うと思います。あるいは、今はできないというときには、今後こういう方向に誘導していくのかということもあると思います。その区別は、おそらく新しい様式に限らず、政策評価全体にあまり力を注げない状態になるということについても同じようなことがいえると思うのですけれども、なし崩し的に、せっかくいろいろ整えようとしている部分が中途半端になるというのは避けたほうがいいのではないかという、これは意見というか、コメントです。以上です。
【谷藤分科会長】  山内政策評価官から、説明はございますか。
【山内政策評価官】  まず、御質問についてお答えしたいと思います。目標管理型の政策評価とは何かということでございますけれども、従来、ガイドライン等では、3分類を典型的なものとして掲げておりまして、その中の一つである実績評価方式、これがおっしゃられたとおり、目標管理型の政策評価の典型的なものでございます。ただ、それ以外にも、例えばガイドライン上の分類としては総合評価方式に分類されるとしても、実態的には、実績評価と同じようなやり方をしているものがある。そういったものについても、ガイドライン上の分類にこだわらず、こちらの様式を使ってはいかがかということでございます。そういう意味で、ガイドライン上の類型とは別次元での分類だとお考えいただければと思います。
 二つ目の御質問は、新しい評価書の標準様式と事前分析表の作成はセットかというお話がございまして、私どもとしては、これはセットで設定しておりますので、それが望ましいと考えております。ただ、どうしても一緒にできない場合というのがあるとすれば、そういった特段の事情ということで、各府省で御判断いただくしかないかなと思っております。
 それから、御意見については、おっしゃるとおりだと思っておりまして、震災のため、今できないという部分と、それから、特段の事情で、各省それぞれの特性に応じてできないという部分があると思います。それはまさに今回、試行として行いますので、できた結果を踏まえて、改めて検証、検討させていただくほうがよろしいのかなと思っております。以上でございます。
【谷藤分科会長】  そのほかに。堤委員、どうぞ。
【堤臨時委員】  事前分析表について感想を申し上げます。我々大学の人間も、よくこういう報告書を書く機会があって、ぱっと見て、どれぐらいで書けるかなと自分なりに考えました。もし一人で担当しているとすると、2、3時間あればできるのかなと思いました。
 それは何かと言うと、要するにほとんどのことは、予算要求等の段階で決まったことをコピー・アンド・ペーストすれば埋まるようなことがあって、事前分析表で強いて言えば、一番下の段落の右側、「施策の達成すべき目標への寄与の内容」というところ、ここがこの分析の骨子なのだと思いますが、これも多分、ここにあるような例だとコピー・アンド・ペーストで終わってしまうような。一体この事前分析表が、何をしようとして要求したのか、その議論を今、失念してしまっているのですけれども、それも含めて、本当にこんなものでいいのでしょうか、というのが率直な疑問です。
【谷藤分科会長】  山内政策評価官から、説明がございますか。
【山内政策評価官】  全体として、政策評価と行政事業レビュー、その他の第三者的な検証、いろいろなものがございます。その中の役割分担をどうしていくかということも含めて、全体の中で、政策評価はどの程度の負担、事務量のもとに何を目指していくのかということの中で、例えば評価書については統一し、簡略化したもので、事務負担が少ない中で、説明責任を果たしていけるような形にする。ただ、それとセットで、あらかじめどのような目標に対して指標を立てて、どういうことをやっていくのだということを明示していただくことが重要だろうということで、事前分析表を作っているものでございます。
 書きぶりについてですが、これにどの程度の事務量がかかるかという点に関しましては、おそらく政策によって千差万別ではないかと思っておりまして、そういう意味でも、今回、試行になったということで、実際に検証させていただいた上で、改めて御報告させていただければと思っております。
【谷藤分科会長】  田中委員、どうぞ。
【田中(弥)臨時委員】  お隣で聞いていて、カット・アンド・ペーストだったのだなと思っていたのですけれども、逆に、私はシートを拝見していて、書くのが大変だろうなと思ったのですね。
 二つ挙げられるかと思うのですが、一つは、どんな評価でも一番皆さんが苦しむのは、どうやって指標を選定したらいいのか、デザインしたらいいのかというところで、この目標からどういう思考のプロセスを経て指標に到達したのかというのは、考え方とか手法、訓練が必要な気がするのですね。
 もう一つは、一番下の、「施策の達成すべき目標への寄与の内容」と書いてありますけれども、この事業を行ったことによって、本当に政策目標に、きちんと因果関係を持って寄与したのだということを証明するのはものすごく難しいことで、因果関係を説明するよりは、ある程度、進捗状況を説明するぐらいに抑えておいたほうが、きちっと正直な答えが出てくるのではないかなという気がいたします。すみません、細かい話になりましたけれども。
【谷藤分科会長】  それについて、御説明はありますか。
【山内政策評価官】  おっしゃるとおり、難しい政策もあると思います。ただ、指標がきっちりしたものが立たないと、外部の方にとって、なかなか検証できないということはありますので、できる限り定量的なもので探していただくということをやり続ける必要があるだろうなと思っております。
 それから、寄与につきましては、事後の分析ではなくて、事前の分析でございますので、進捗状況といいますか、これでどのように寄与していくのだというように各府省で予定している内容を書く。実際、難しい部分があるかと思いますけれども、当然ながら、税金を使って事業を行うわけですから、どの程度のことを見込んでいたか、それを事後の評価の際に効果を検証するということでワンセットと考えております。
【谷藤分科会長】  よろしいですか。これはあくまでも素案でして、決定ではありません。試行することによって随分変わってくるだろうと思います。
 加藤委員、どうぞ。
【加藤臨時委員】  私も田中先生と同じで、これは難しいだろうと思います。ただし、私の考えでは、難しさの本質は、各府省でやられている事業がきっちり目標と1対1対応をされていない可能性がある点にあると思います。
 そういう意味で言うと、すべての事業を網羅的に整理できるかが、実は問題かもしれません。今回、もし試行的に一部だけをやりなさいと言うと、多分やりやすいものからやってくることになるだろう、というのが私の予想です。今回は、震災の影響もあり、やむを得ないと思いますが、例えば、総務省で一度、事業を網羅的に整理してチェックをしてみるというのは、この方法の妥当性を検討する1つの良いやり方だと思います。
【谷藤分科会長】  小野委員、どうぞ。
【小野臨時委員】  今、皆さんがされている議論に絡んで、一つだけ、御提案といいますか、事前分析表の中で、これは私も、本来、2、3時間で書いてはいけないものというか、あるいは、書こうとすれば書けてしまうものということなのかもしれませんが、指標の選定理由と目標値の設定の根拠というところは極めて重要だと思っているのです。ですから、ここをどう書くかによって、作業時間というか、必要な時間が非常に少なくて済むか、たくさんかかるかが大きく違ってくると思うのです。
 具体的にお願いというか、御提案というのは、各省に示すときに、どのように示されるか分かりませんが、例えば今日配布されている未定稿の案の記入例のようなものですと、いかにもコピー・ペーストで、どこかから持ってきて済むということに見えますので、できれば見本はしっかりと、この指標はこういう意味で、この事業なり施策を代表するものとして設定できるということとか、あるいは目標値は、ここにこう書いてあるということではなくて、これこれこういうことで、こういう目標値を設定しているのだというような、見本については、少なくともそういうふうにしていただいたほうがいいのかなと。
 指標の選定も、目標値の設定もコピー・ペーストで説明してしまうとなると、どんどん悪い循環になるような気もしますので、何かそういうことはしていただいたほうがいいのかなと思います。以上です。
【谷藤分科会長】  佐藤委員、どうぞ。
【佐藤臨時委員】  どなたもおっしゃらないので、素朴な感想だけ。本来、国家の危機だからこそ、こういう政策評価というのは有効であるべきでありまして、というのは、そもそも政策評価とは何かと言うと、政策の優先順位付けをしたり、どういう政策に問題があって、どういう政策が本当に必要なのかという色分けをするのが政策評価の最終的な目標だったはずで、PDCAというように、結果を見て、ちゃんと次の予算に反映させましょうという、これも意図だったはずなので、だからこそ、復興財源は、ちょっとショートしているので、お金がないときに、本来であれば政策評価の蓄積を活かして、従来、こういういろいろな問題がある政策があるよ、これはとりあえず先送りしておいてもいいよね、この政策は震災といったってやらなければいけない政策なのだと、本来そういう仕分けができていないとおかしかったはずだと思うのですね。
 あと各省庁の中でも、これから自分たちの中で、震災に充てる財源を見つけていかなければいけないわけですから、その中で、自分たちの中で、今やらなければいけない仕事と先送りできる仕事というのを、本来ちゃんと区別できるようになっていないといけなかったのかなと思います。
大人の話なので、今年は仕方がない、起きてしまったことはもうどうしようもないですが、ただ、今後のことも考えると、こういうときだからこそやめるべき事業と、こういうときだからこそ続けなければいけない事業、せめてそこはちゃんと分けられる体制にしておかないと、今後のこともありますので、震災は特に長いですから、10年ぐらいかかると思うので、考えていかなければいけないかなというのが感想です。
【谷藤分科会長】  説明は別に要りませんか。
【佐藤臨時委員】  いいです。
【谷藤分科会長】  よろしいでしょうか。これについては、また議論すべき課題がたくさんございますけれども、時間が押しておりますので、第3の議題に入りたいと思います。
これにつきましては、先ほどの行政事業レビューとの関連で、もう一回議論しなければいけないということになるのかもしれません。それが出ましたら、改めて委員の方から御意見をいただきたいと思います。
 それでは続きまして、議題3の平成23年度行政評価等プログラム(案)です。行政評価局の調査テーマの問題になります。これも第2の議題と大きく関係します。どのようなテーマを選定するかというような問題に関わります。
 これについて、事務局から御説明願います。
【讃岐総務課長】  それでは、机上配布の資料3−1に沿って御説明させていただきたいと思います。23年度以降のテーマ、それから行政評価等プログラムということでございます。
 実は、御案内のとおり、前回、2月28日の分科会で、テーマの選定についての候補について御議論をいただいたわけでございます。そのときの想定といたしましては、22年度末、3月の終わりぐらいまでにテーマを決めて、また、行政評価等プログラムという局の業務の運営の基本方針を決めようということで、分科会での議論を踏まえて、3月10日に政務三役に、会議に付議するという手続までとったところであったわけですけれども、その後、3月11日の大震災ということでございまして、それを踏まえた政府のいろいろな各般の取組状況、あるいは、局としてそれをどう受け止めるのかということを整理しないと、新年度の業務運営というのは決められないだろうということで、1か月程度、決定のプロセスを遅らせようということで、改めて検討した結果ということでございます。
 流れといたしましては、今日の御議論を踏まえて、パブリックコメントにかけて、さらに5月の連休明けぐらいをめどに、大臣にまで御説明して、決定したいと考えているところでございます。
 そこで、資料3−1「行政評価等プログラムの骨子(案)」でございます。先ほど局長からもございましたけれども、政府全体の、今回の震災を受けての対応を最優先しなければいけないような状況を踏まえて、局としての当面の対応方針ということでございますけれども、二つ目のマルに書いてございますとおり、震災が起こってから、当局は東北地方にも各県に管区局、評価事務所がございますので、各市町村の状況を把握するという大臣の御指示を受けての活動をしてきました。
 また、二つ目ですけれども、本来有する機能といたしまして、個々の苦情を受け付けるという、被災者を中心とした方の苦情窓口、あるいはフリーダイヤルを設置するという活動を今、取り組んでいるところでございます。
 更に、実地調査機能とございますけれども、評価機能を有するという特性を活かして、震災についての対応機能を発揮していくことが重要だろうということでございます。
 そのために、次のマルに書いてございますとおり、体制についても、今、行政相談のほうに重点的に配置している、このような対応をとっているところでございます。また、機動的な調査というものがあれば、そういったところに対応を図っていくということ。
 それから、次のマルにございますとおり、この委員会においても、このような状況を踏まえつつ、今後随時、御審議いただくようにお願いしたいということでございます。
 また、最後にありますとおり、各般の機能発揮におきましては、各府省等において震災復旧というものが重要な取組になっているようなところについては、それを十分踏まえるということでございます。
 そこで、次に書いてございますとおり、具体的には、行政相談については、今申し上げたように、重点的に体制を配備して、被災者の皆様の生活上の様々な困難などについての相談、行政として何が今できるのかということをお伝えする、あるいはそこから、何か本質的に制度改正をしなければいけないようなものなどがあるのかどうかというのを、よく把握しようということでございます。
 二つ目のマルに書いてございますとおり、局の評価機能を発揮して、何か改善すべきものがあれば、そういったものをどう扱うのかということも検討していかなければいけない。
 二つ目が、まさにテーマ選定に直接関わる部分でございますけれども、行政評価局の調査の実施に当たっては、政府全体のこの問題に関する状況を踏まえて、局としてどのようなことができるのかということについて、3行目に「常時監視」とございますけれども、震災対応について、あるいは原子力防災の問題について、とりあえず今すぐ何かできないか、今、現場での対応が最優先されているわけですので、局の調査として何ができるのかということをよく勉強していこう、ウオッチしていこうということでございます。
 そういうことを踏まえて機動的、重点的に活動していこうということで、そういう前提のもとで、現在実施中のものについて、これは引き続き継続するとしても、弾力的な対応が必要であれば弾力的に対応する。新たに調査するものということでございますけれども、これは前回の御議論で新たに、キャパシティーの関係で、七つ程度のテーマを選定しよう、機動的な体制配備を行っている中でも、大体七つ程度ということだろうと考えているわけですけれども、それについて、震災の状況を含めてもなお、内閣の重要課題として継続しているものは、そういうものを一応選ぶとともに、しかし、必要に応じ、何らか機動的な対応が必要であれば、そういうものを差し替えるということも当然、今年は考えていかなければいけないだろうということでございます。
 3といたしましては、政策評価の推進ということは、先ほど山内がお話ししたとおりのことでございます。また独立行政法人評価についても、震災の状況を様々踏まえた評価ということで、独立行政法人評価分科会で御議論いただくということになろうと思います。
 2ページは、従前からの方針も、引き続き必要なものは記述していこうということでございます。
 それではということで、今年度の局の全体の業務というのは、3ページの大きな絵の中でございますけれども、真ん中のところに、まさに七つのテーマを想定して空欄にしている。これを前回も御議論いただいたわけですが、今回、震災後の状況を踏まえて御説明し、御意見をいただければということでございますが、次に、常時監視でございますけれども、まさに震災後の状況を踏まえて、よくウオッチしなければいけないものはウオッチしていこうということでございます。
 それは何かというのは、4ページでございます。リストの全体は、テーマについては、前回といっても1か月以上前ですけれども、これまでの議論の延長線上でございます。この中から大体七つといったときに、大体のことを言いますと、これは内閣の重要課題を踏まえるということになると、震災後の状況を踏まえてもなおということを考えますと、マルの付いているもの、既に八つに絞り込まれておりますけれども、そのうち上から七つ目ぐらい、農地の保全及び有効利用ぐらいまでがそれに該当するのかなと考えているところでございます。
 一方で、この委員会で幾つか御議論がございました。9番目にある水害・土砂災害防止対策、こういったことも重要だろうという御議論がございましたけれども、やはりこれは、今の津波という状況を踏まえて、全体をどうみるのかということをみていかなければいけないだろうということですので、そういうことを踏まえて、これはむしろ先のことだろうと思います。
 それから、その四つ下に、農地公共事業とございますけれども、農地の関係、TPPの関係もあり、重要だろうという御指摘がございましたけれども、この公共事業については、現場での様々な修繕とか復旧というものが重視されて、対応されているということでございますので、むしろ農地の関係でいえば、上から七つ目のところにある、農地の保全及び有効利用、こちらのほうを後でやろうと思っていたものが、むしろ先になるだろうと考えているところです。
 それから、この枠の一番下、常時監視でございますけれども、特に最初の二つ、震災対策・津波対策につきましては、一つは、私どもの行政相談で上がってくる様々な生活上の困難に対応して、何かしなければいけないことがあるのかどうかという整理や、更に災害対策全般についての対応状況といったものを踏まえて、どういうふうに対応したらいいのか、まさに今の段階は勉強しなければいけない。
 原子力防災対策についても同様、今、現場で何か検証できる状況というわけではございませんけれども、これについて調査機能というもので、どういうことを考えていかなければいけないのかということをウオッチしていこうということでございます。
 以上の状況を踏まえまして、この資料の次のページに、大体の着眼点などを整理してございますけれども、パブリックコメントにかける。これは来週早々から、当面10日程度と思ってございますけれども、これは一つの区切りであって、国民からの意見募集は、年間を通じて常時やっていくということにしたいと考えてございますけれども、パブリックコメントを経て、改めて整理いたしまして、連休明けに大臣まで御説明し、御了解いただいて、決定していきたいという状況でございます。
 以上でございます。
【谷藤分科会長】  どうもありがとうございます。今、御説明にございましたように、震災状況を踏まえた上で、テーマは前回も出ておりましたけれども、ややプライオリティーという、組み替えがここでなされております。それと、もう一つありますのは、下の常時監視ということで、次のことを丁寧に監視していきたいということが加わったということでよろしいですね、新たに書いてあるのは。
【讃岐総務課長】  もう1点、追加的に申し上げますと、ここは政策評価分科会で、法律のこの委員会の所掌上、政策の評価についてはこの委員会に諮って、これからの計画を決めるということで、政策の評価に該当するものは黒で塗りつぶしてあるもの、ワーク・ライフ・バランスということですね。それから今後の課題として、消費者、高齢者、障害者ということでございます。もちろん今やっているものは、先ほどの児童虐待も含めてやっているということでございます。
【谷藤分科会長】  それでは、今の御説明を踏まえまして、御意見をいただきたいと思います。23年度のテーマについてということになります。
 どうぞ、田中委員。
【田中(弥)臨時委員】  事情はすごくよく分かったのですけれども、パブリックコメントがどこまで周知されるかということにもよりますが、いわゆる一般の方で、常時監視ということをよく理解されなければ、おのずと、ここで評価してほしいところでは、原子力の問題を扱ってほしいという意見が多いだろうと思います。そのときに、これは常時監視の対象ですので、国民の皆さんの要望は多かったけれども、今年は評価をやりませんでしたというようなことで、本当に社会的にそれで説明がつきますかね。それがちょっと心配です。
【讃岐総務課長】  まさにそういうことは常々、おそらくパブリックコメント、あるいは国会でも問われるようなことが出てくるだろうと考えるところでございますので、その時々の状況に応じて説明をしていかなければいけないだろうと思います。常時監視をするテーマ、課題としての原子力防災について、今の考え方を申しますと、今は事態の検証をできる状況にないだろうということ、また一方、官房長官、これは内閣としてということだと思いますけれども、何らか検証しなければいけないだろうというコメントがなされております。ただ、どうやっていくというものはまだ分かりません。そういうことまで整理できていない状況です。
 また、この原子力の問題は極めて大きな問題ですので、大きなエネルギー政策の根本全体に関わるような問題として、これから議論されていくということも想定されるだろうということ、事態の推移をとりあえず今はみていく必要があるだろうということ、もう一つ、当局の調査になじむか、なじまないかということに関して言うと、原子力防災については、4年ほど前、中越沖地震、柏崎の原発のときに防災対策について取り組んだのですけれども、そのときからの整理として、安全基準そのもの、あるいは技術性の高いものについては、これは調査になじむということではないだろうということで、そうでない分野の問題について、そのときに取り組んだわけでございますけれども、そういう前提もあるでしょうし、また、様々な基準とかマニュアル全般というのも、これから一つ一つ大きく見直しをしなければいけない状況だろうということを踏まえて、それでもなお、いつの段階でどういう対応ができるのか、これは時々刻々変化する状況を押さえながら整理していかなければいけないということだろうと考えている次第であります。
【谷藤分科会長】  藤井委員、どうぞ。
【藤井委員】  原子力の問題は非常に広範に渡るということで、常時監視を是非していただきたいですし、それから、こちらのテーマの案の原子力政策のほうで、施設の立地や安全対策等ということが取り上げられています。
 そのほかに、別の視点といたしまして、事故対応のための措置ないしは、これまでの政策という面もあるのではないかと思うのですが、報道等を拝見していますと、事故に対応するために、かつていろいろな開発をやっていたけれども、効果が見極められなかったのか、その後の取組みが中断しているというような内容もございました。
 したがいまして、立地とか、当事者が直接関わるものというのとはまた別な話として、原子力に関わる国の政策として、これまでどのようなことが採られてきたのか、特に事故を想定したような技術開発なり、あるいは対応策の開発なりという面で、もし取り上げられることのできる問題があるのであれば、そういった視点も含めて、関心の高いテーマだと思いますので、少し多面的な観点から国の措置等を点検していただいて、評価になじむものがあれば、ぜひ取り上げていただきたいと思います。
【讃岐総務課長】  まさにそういう点も含めて、常時監視として勉強をしていくということが重要かと思います。
【谷藤分科会長】  そのほか御意見はございますか。城所委員、どうぞ。
【城所臨時委員】  1点、基本的な質問なのですけれども、行政評価局調査と政策評価というのはどこが違うのでしょうか。白マルと黒マルの違いなのですが。
【讃岐総務課長】  これは、行政評価局調査の中に、いわば二つの性格のものがあって、一つは行政評価・監視といわれるものと、もう一つは、政策の評価というものがあるということです。一言で言いますと、行政評価・監視というのは、既存の政策を前提として、監査的な面、昔、行政監察だったわけですけれども、現場までしっかり指示が徹底しているかどうかとか、法規にのっとってやられているかどうかというような視点が主になります。一方で、政策の評価、政策評価については、ある意味、既存の枠組み自体の有効性までも問い得るものという位置付けのものということで、設置法上の整理がなされております。
【城所臨時委員】  予算が違うとかそういうことではないですか。
【讃岐総務課長】  予算は、細目は確かに違っておりますけれども、実態上の運用として、それによって何らかという制約……。
【田中行政評価局長】  制度論としては、政策評価は原則、各省がやるわけですね。それが前提となっていまして、それで、政策上の名称の付け方があるのですけれども、各省でできないものについて、評価局が自らやるという立て方になっております。
【谷藤分科会長】  そのほか。森田委員、どうぞ。
【森田臨時委員】  今までのことを含め、また感想も含めて、今の論点に関して申し上げたいと思います。私自身はあまり出席率がよくないのですけれども、7、8年、この委員会に確か出席させていただいていると思いますし、それ以外、各省とか地方公共団体の政策評価も随分お手伝いをさせていただいているのですけれども、冒頭に出た議論と、今の制度の評価と行政の評価の話、これはどうなっているのだというのは8年前から毎年出ている論点でございます。
 なぜそういうことが起こるのかといいますと、一つ、私自身が思いますのは、現在の政策評価法における政策の概念というのが必ずしも明確ではないのですね。普通、アカデミックな観点からみて政策評価という場合には、制度フレームが目的達成のためにどれくらい効率的であるか、有効であるかということをきちんと評価することであるわけです。その場合、前提になっておりますのは当然のことながら、制度に基づいて、そこでの行政活動、インプリメンテーションが有効に行われるということです。
 それによって、インプリメンテーションの結果、アウトプットがあって、それが社会にインパクトを与えて、アウトカムが発生する。そのアウトカムを評価することによって、その制度の有効性というのをみるというのが普通のフレームだと思います。けれども、現在行われている政策評価の場合には、制度フレームは、今申し上げましたように、各省が、ある意味で、自分たちでやるということになっておりまして、ここの会議の場合には専ら、その意味でいいますと、それをにらみながら、インプリメンテーションのほうの評価がどうしても重視されざるを得ない。
 その結果、正直申し上げまして、制度にかなり欠陥がある場合でも、インプリメンテーションをちゃんとやっているかどうかということが議論になってくる。その結果、アウトカムが良いわけがないというケースもかなりあるわけですね。さらに言いますと、そもそもこんな政策は要るのかというものまで、制度がある以上は評価の対象になって、それをインプリメンテーションのほうでしっかりと活動されていれば、それはある意味で高く評価せざるを得ないという矛盾といいましょうか、現実があるわけです。
 これは先ほど申し上げましたように、政策評価法と現在の行政制度の枠組みそのものが前提になっているわけです。各省が所管されている法令といいますか、それについては、基本的にそれを前提として議論する。評価はしますけれども、それほど踏み込む評価はできないわけで、A省とB省で重複している事務はA省に統合すべきだというようなことはなかなか言えない。
 もう一つ、それに関連して言いますと、そもそも法律のフレームというのは、行政内部で作っているわけではございませんので、要するに国会です。そこで、立法府と行政府の関係もあって制約が出てくる。
 要するに、何を申し上げたいかといいますと、そうした制約の中で、行政活動、ポリシーンプリメンテーションの有効性なり効率性というものを評価しようというわけですけれども、どうしても最終的なアウトカムを評価する場合の縦割りの構造がもたらす非効率というものは、そこからは指摘しにくいということがありますし、もう一つ、私の経験で、これは検証するエビデンスはありませんけれども、感覚的に申し上げますと、パフォーマンスの評価が低いというのはなぜかというと、予算が足りない。もっともだと思いますけれども、そういう意味でいいますと、結果についての寄与度、寄与の要因としては、制度と予算というのはかなり効いているのではないか。その中で何を評価するのかというのがここで問われているのではないか、という気がしております。
 したがいまして、今日、政策評価を研究されている方がいらっしゃると思いますけれども、こういうことを冒頭に申し上げてはなんですけれども、一生懸命にやっているとフラストレーションがたまってくる。これは、ある意味でいいますと、評価法が10年経つものですから、評価法も変えたらといいたい。その辺について、もう少しすっきりした仕組みをということを、別なところでも私申し上げていたのですけれども、なかなか反応はなくて、むしろ、そういう形で行われている評価ですから、当然のことながら、ばさっと低い評価をして予算を切るとか、こちらに重点的に付けるということが非常にしにくい構造になっている。
 その結果、何が起こっているかといいますと、何となく皆おおむね達成しているという評価が多くなってきて、それではなかなか、現在の財政状況のもとで政策の見直しができないのではないか。そこで、関係している方がいらっしゃったら失礼な言い方かもしれませんけれども、かなり乱暴と思われるような事業仕分けというのが、評価に代わるような形で行われたのではないかと思います。ただ、あの事業仕分けで、この政策評価はいいという評価を受けたので、よく分からないのですけれどもね。
 何を申し上げたいかといいますと、そういう前提でここでの評価というものをやってきたということで、フラストレーションの解消方法としては、ここで問われている評価とプラスアルファで、今もちょっと触れられましたけれども、やはり基本的な制度そのものについても、どの程度いえるかは知りませんけれども、分けて発言をしていかないと、ずっとフラストレーションがたまり、毎回、委員が変わるたびに同じことが議論されるということになるのではないかという気がしています。
 もうちょっと評価を実質のあるものにしようとして、数値目標を設定して細かく書いていくというのは、現場にとってものすごいワークロードになっているわけですし、それが何らかのきちっとした形で、自分たちにプラスないしマイナスというメッセージで現れてくればいいのですけれども、それも必ずしも現れていないというのが評価をされる側の御意見だと思っております。
 その意味でいいますと、評価の仕方そのものをもう少し変えていくということもありますし、目標による管理も良いのですけれども、どちらかというと、現時点では横の評価、類似している部署がどういう評価をしているかという方式か、あるいは歴史的、時間的にどういうふうにそれが変異しているか、そうした形で定性的な要素も入れながら、評価、改善を進めていくほうが、実質的には有効ではないかというのが私の意見です。
 めったに出て来なくてこんなことを言っていいのかどうか分かりませんけれども、ちょっと長く関わっている観点からみますと、年度の初めということもございますし、今度、震災で、先ほど佐藤先生がおっしゃいましたように、思い切ってどこを切るかという話が当然出てくると思うので、そのときに必要な情報を生産するという形での評価というものが重要な意味を持つのではないかなと思っております。
 長くなりましてすみません。
【谷藤分科会長】  ありがとうございます。政策評価制度の根幹に関わる問題でありまして、森田先生と同じように、ずっと私もフラストレーションを共有しておりましたけれども、これで良いのかというふうなことは、導入当初からずっと考えておりました。ある意味では、政策評価制度そのものの大きな評価をしなければいけないという時期にあるのかもしれません。今、良いチャンスであるのかもしれない。それはまさに佐藤先生が指摘していることだろうと思います。
【森田臨時委員】  もう一つ余計なことを言いますと、それを真似して、もっと複雑にしたのが大学の評価ですから。
【谷藤分科会長】  藤井先生、どうぞ。
【藤井委員】  ややネガティブな意見が強かったのですけれども、ただ、いろいろ拝見していますと、例えばこの場で議論する具体的な施策、政策について調査をされたり、データを揃えたり、広く議論できる材料を提供していくという意味では、全体の大きな話はあるとしても、一定の役割があると思います。その意味で、テーマの選定と結果をうまく公表していくということの意義を見失うべきではないのではないでしょうか。
 繰り返しになりますけれども、提言なり勧告をするに当たって、エビデンスをどういう種類のものを揃えて、その中からこういう分析で何が言えた、あるいは独自に調査された結果がこうだということをできるだけ広く、詳細に行い、また、模範例的なことを提供するという意味での意義もあると思いますので、大所高所の議論で異論があるわけではありませんが、だからといって、個々のテーマの議論をあまりしないということにもならないのではないかと思います。
【谷藤分科会長】  ありがとうございます。また委員の皆さんにフラストレーションを残すことになるかもしれませんけれども、実は時間がやってまいりました。それで、前回から、いわゆるテーマのことについて、ちょっとプライオリティーが変わっておりますけれども、こういうプライオリティーでもって、予定ですと28日からということになりますか、パブリックコメントのほうは。
【讃岐総務課長】  27日、来週水曜日です。
【谷藤分科会長】  来週水曜日から、一度こういう形でパブリックコメントにかけるということでよろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【谷藤分科会長】 パブリックコメントの意見を踏まえまして、その後、連休明けに政務三役のほうですか。
【讃岐総務課長】  はい。パブリックコメントでどういう意見が出て、それをどういうふうに整理したのかということは、例えばメールとかで随時御連絡するようにいたします。その上で、大臣が決定しましたら、その決定について、また御報告するようにしたいと思います。
【谷藤分科会長】  よろしいでしょうか。
 それでは、時間になりましたので、本日はこれで終わりたいと思います。
 御参加いただきましてどうもありがとうございました。

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