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疎問題懇談会過疎地域の現地視察調査
(平成19年度第2回過疎問題懇談会)概要

日時

平成19年11月22日(木)、23日(金)

場所

長野県 木曽郡木曽町(きそぐんきそまち)、下伊那郡清内路村(しもいなぐんせいないじむら)

出席者(敬称略)

(座長)
宮口 とし廸(早稲田大学教育・科学学術院教授)

(委員)
安藤 周治(NPO法人ひろしまね理事長)
小田切徳美(明治大学農学部教授)
上治 堂司(高知県安芸郡馬路村長)
菊池 恵美(西日本新聞取締役編集局長)
本田 敏秋

(岩手県遠野市長)
沼尾 波子(日本大学経済学部准教授)
横道 清孝(政策研究大学院大学教授)

(総務省)
佐藤啓太郎(自治行政局過疎対策室長)

(国土交通省)
大矢 浩(都市・地域整備局地方整備課長)   ほか

過疎地域の現地視察調査の趣旨

 今後の過疎対策のあり方の検討に資するよう、過疎関係市町村の現状や、産業振興、デジタルディバイド対策、地域交通の確保対策、集落の現状等について幅広く把握するため、現地調査を行ったもの。

工程

【平成19年11月22日(木)】

  1. (1)木曽町(於:木曽町役場)
    木曽町の現状、過疎対策への取組み状況等の説明を受け、意見交換を行った。

    【出席者(敬称略)】
    (木曽町)
    田中 勝已(木曽町長)
    横澤 淳一(木曽町副町長)
    重盛 秀幸(木曽町総務課長)
    邑上 豊美(木曽町企画調整課長)

  2. (2)木曽町沢頭集落 意見交換会(於:沢頭集落集会所)
    自治会長から集落の概要について説明を受け、集落住民代表、木曽町役場三岳支所を交え、集落の現状、今後の課題等について意見交換を行った。

    【出席者(敬称略)】
    (木曽町・自治会等)
    田中 勝已(木曽町長)
    横澤 淳一(木曽町副町長)
    田口 優 (北部自治会長)
    柏崎 孝 (木曽町三岳支所長)
    下田 弘美(木曽町三岳支所総務振興課長)集落住民代表2名

  3. (3)株式会社まちづくり木曽福島 意見交換会(木曽町役場)
    住民と行政が一緒になって地域活性化に取り組む事例として、運営状況について概要説明の後、意見交換を行った。

    【出席者(敬称略)】
    (株式会社まちづくり木曽福島)
    重野 信孝(株式会社まちづくり木曽福島代表取締役)
    加藤 晋悟(株式会社まちづくり木曽福島専務取締役)
    (木曽町)
    田中 勝已(木曽町長)

【平成19年11月23日(金)】

  1. (4)清内路村(於:清内路村役場))
    清内路村の現状、過疎対策への取組み状況等の説明を受け、意見交換を行った。

  2. (5)下清内路集落
    引き続き、下清内路集落内の視察を行った。

    【出席者(敬称略)】
    (清内路村)
    櫻井 久江 (清内路村長)
    野村 健司 (清内路村副村長)
    原  和機 (清内路村教育長)
    佐藤 義則 (清内路村振興課長)
    熊谷 津賀子(清内路村民生課長)
    ほか

(1)木曽町役場

  1. 1)木曽町 概要説明(田中 木曽町長)
    ○木曽町は、平成17年11月1日に1町3村合併(木曽福島町、日義村、開田村、三岳村)により生まれた町で、面積の95.4%は森林であり山々に囲まれている。
    ○合併前の1町3村のうち、木曽福島町、開田村、三岳村は過疎団体であり、日義村は非過疎。合併後の木曽町全域として、法第2条による過疎地域となった。
    ○人口減少も大きいが、平成17年度国勢調査で高齢者比率が31.5%と高く、第1次産業の割合も低下し農林業従事者が減少している。また、農産物への有害鳥獣による被害の問題も発生。
    ○木曽町で特に力を入れているのは次の2事項である。
    1. 1)『木曽町まちづくり条例』を制定し、住民が主人公のまちづくりを実施。
    2. 2)路線バスやデマンドタクシー等の交通システムによる地域交通の確保。「安心して医療機関へ通えるようにして欲しい」との住民要望に対応。
    ○ 第3セクター『株式会社まちづくり木曽福島』により、中心市街地活性化の取組みを実施。
    ○都市部への人口流出により、いずれは町そのものが消滅してしまうのではないかと危機感をもっている。国土保全の観点からも、農山村の定住人口が増えるようにしていく必要があると考えている。
    ○現行過疎法の期限切れ後についても、過疎対策事業債をはじめとする過疎対策制度が必要である。
  2. 2)意見交換・質疑
    安藤委員
    木曽町まちづくり条例を制定され、軽微な道路の維持補修作業などには住民へ資材提供を行い住民が実施するなど、住民自治を実践されているが、自治組織へ財源を提供するということは考えているか。
    木曽町
    木曽町が国庫補助を受ける事業について、その財源を自治組織に提供することは制度上困難であろう。町が単独の事業については、支所や自治組織へ財源を提供することも考えられる。
    なお、支所に回す仕事を増やし、支所の人員を増やす必要も感じているが、具体的には今後予算編成とともに検討していかなければならない課題。
    安藤委員
    町の中心地の振興に貢献しているTMO(タウン・マネージメント・オーガニゼーション)は成功しているということであるが、その事業を拡大することは考えているか。
    木曽町
    高齢化が進む中で、住民とともに取り組む産業振興は大事。間伐材の有効利用なども検討しているところ。住民とともに産業を興し、雇用を拡大することで、若者に残ってもらえるようにしたい。新たな過疎対策においても、このような施策に取り組みやすくなるような仕組みを望んでいる。
    本田委員
    146行政区と自治会との関係はどうか、町村合併によって統合は行われたか。146行政区は今後も維持するのか。
    木曽町
    146行政区は合併した旧1町3村でそれぞれの形式があるため、合併後に再編することなく合併前のものをそのまま受け継いでいる。町の配布資料や広報・連絡事項等の手伝いをして頂く自治組織も、合併前から機能していた形式がそのまま維持されている。
    146行政区は再編していないが、それぞれ管轄する戸数にも差があり、再編は課題と認識。
    菊池委員
    救急医療の体制、救急車の搬送件数等について現状はどうか。
    木曽町
    消防については、木曽広域連合により対応。医療についても木曽郡の町村会の負担により、信州大学医学部附属病院での土日の待機態勢を整備。
    国道19号線で交通事故が多発していたが、ここ3年で激減したため、交通事故対応のための救急車の出動数は減少。不足感はない。
    横道委員
    今後、大きな財政負担が見込まれる建設事業はあるか。
    木曽町
    下水道整備はほとんど終わったが、今後大きな負担が見込まれる事業として、保育園の統合、学校の統廃合、図書館の整備、道路整備といった財政需要がある。
    横道委員
    地上デジタル放送など、情報通信分野での課題認識について伺いたい。
    木曽町
    木曽広域連合でCATVを整備し、全戸を対象に今年で整備が完了する。行政情報提供や高速インターネットも対応することとしている(総事業費44億円。国庫補助金と過疎対策事業債を活用。平成17〜19年度3カ年事業)。
    しかし、消防救急無線のデジタル化への対応は課題として残っている。

(2)沢頭集落(木曽町)

  1. 1)沢頭集落 概要説明(田口 北部自治会長)
    ○集落の現況
    • 人口  6世帯13名(昭和63年 10世帯43名)
    • 年齢構成50代−5名、60代−4名、70代−1名、80代−2名、90代−1名
    • 空き家数4戸
    ○農地の状況
    • 畑 約48千m2、水田 約45千m2
    ○主な活動内容
    • 集会所の維持管理、集落内での定期的な会合(月1回)、集落内の葬祭等の手伝い、出役(道・水路等の維持管理作業)
    ○自治会等の構成図
  2. 2)意見交換・質疑
    横道委員
    北部自治会としての主な取り組み状況について伺いたい。
    自治会長
    町村合併とともに「三岳地区自治協議会」、「北部自治会」を立ち上げ。
    今年の自治会の取り組みで主なものは、県の『地域発 元気づくり支援金』を活用しての用水路の修繕である。北部自治会の活動としては、7集落が協力して行う。
    安藤委員
    生活全般も含めた地域の総合的な計画作りはしているか。計画作りに役場から人的支援を得たいということはないか。
    自治会長
    計画は作成していなかったが、今後、計画作成を検討する必要がある。
    安藤委員
    女性は結婚で集落を離れていくことが多いと思われるが、男性の転出状況はどうか。
    集落住民
    就職により、東京、名古屋、長野県内への転出が多い。
    横道委員
    集落内の空き家は、どのように管理されているか。
    集落住民
    持ち主が管理に立ち寄るもの、管理されていないもの、など様々である。
    安藤委員
    1年を通して、日常の生活で最も大変なことはなにか。
    集落住民
    除雪作業。高齢世帯は近隣住民で手伝っているが、集落の大きな課題。
    横道委員
    食料購入と医療受診の現状について伺いたい。
    集落住民
    社会福祉協議会の弁当の配送サービス、近隣のスーパーまで行けない人たちはJAの週2回程度の配達サービスが利用されている。
    また、医療受診については、隔週での社会福祉協議会による診療所までの送迎、週1回のデイサービスがある。北部地区全体の集会場に診療所の医師が出張してくれることもある。
    本田委員
    デマンドタクシーの利用状況はどうか。
    集落住民
    当集落では、自分ひとりで動けない人が社会福祉協議会の送迎を利用することが多い。北部地区全体では、デマンドタクシーを利用して診療所へ行っている人もいる。幹線バスと循環バスとデマンドタクシーで交通システムは構成されており、沢頭集落にも要請すればデマンドタクシーを呼ぶことができる。
    横道委員
    地上デジタル放送への対応、インターネット利用環境について伺いたい。
    自治会長
    CATV整備により、地上デジタル放送の受信、インターネットの利用環境ともに問題はない。
    本田委員
    地区の共有財産はあるか。ある場合どれくらいあるか。
    自治会長
    山林などの共有財産がある。
    横道委員
    有害鳥獣による農作物被害の状況について伺いたい。
    集落住民
    主にイノシシだが、サルによる被害もある。対策が課題である。
    安藤委員
    収穫直前での有害鳥獣による被害は、大きな失望につながり、耕作意欲まで損いかねないものであり、大きな課題である。
    集落住民
    道端の草刈り、樹木剪定は大変になってきている。今では気付いた人が作業したり、集落の行事のときに一斉に作業している。
    本田委員
    集落の人口も減少し高齢化も進む中で、集落内の土地の管理を行いながらの生活は大変だと思うが、生まれ育ったこの集落で今後も頑張っていくということか。
    集落住民
    北部自治会でお互い協力し合うことで、集落・住民が「孤立している」という感はもっていない。今後もこの集落で頑張っていく。
    本田委員
    消防団の活動について伺いたい。
    集落住民
    町村合併前に消防団は1つにまとまっており、60歳前くらいの方々で消防の後方支援隊を結成している。

(3)株式会社まちづくり木曽福島

  1. 1)会社概要説明(重野代表取締役、加藤専務)
    ○中心市街地活性化を図るために設立。地域食材を生かしたイタリアンレストラン「松島亭」が町外からの来客も含め好調であり、会社としての黒字化も見えてきたところ。店舗付近の活性化にもつながっている。
    ○少ない正社員と多くのボランティアで運営しており、それぞれ事業ごとでチームを設けて以下のような事業を行っている。
    • 町内情報の収集・分析・発信
    • 観光マップの作成
    • 観光施設等を花で飾るもてなし
    • 関所、代官屋敷の歴史史跡の活用
    • キャンプ場の運営
    • 観光ガイド
    • イタリアンレストラン経営
    • 観光客受入に際し、受入側の意識向上のための講習会開催
    ○ボランティアの方々の力があってこそ、会社運営ができている。
  2. 2)質疑   ※『株式会社まちづくり木曽福島』を『木曽福島』と略する。
    横道委員
    木曽町との関わりはどのような状況か。
    木曽福島
    副町長が取締役に就任している。
    また、指定管理者として、町有施設の管理を行っている。
    出資金については、資本金7,500万円のうち、公募による3,500万円以外4,000万円は町の出資である。

(4)清内路村

  1. 1)概要説明(櫻井 清内路村長)
    ○いわゆる“限界集落”という言葉には抵抗感がある。65歳でもしっかりと村を支えており、「限界」とは思っていない。
    ○過疎の現場がこれまでやってこられたのは、過疎対策制度によるものである。
    ○財政的に脆弱な団体同士の合併であるとの懸念はあるが、隣接する団体との市町村合併の実現が最大の課題である。
    ○地上放送デジタル化への対応、インターネット利用環境の整備に取組みたいが、過疎対策事業債の制度がなければ、対応できない。
    ○過疎地域の置かれた厳しい現状について、多くの人に実際に現場を見ていただき、理解を深めていただきたい。
  2. 2)意見交換・質疑
    安藤委員
    村役場職員が少ない中で、住民サービスの提供はどのような状況か。
    清内路村
    老人福祉は介護サービスの提供、また、近所の声かけ運動実施、緊急通報システムの設置、災害に対応した支え合いマップ作成を行うなどの工夫をしながら対応している。
    宮口座長
    村の財政状況の悪化により、住民生活にどのような影響が生じたか。
    清内路村
    保育料、上下水道料金、固定資産税税率の見直しを行ったところ。
    上治委員
    『清内路ビレッジャー』(登録制の「特別村民」)との交流の状況、今後の課題について伺いたい。
    清内路村
    メールによる情報提供を行っている。今後の交流人口の増加につなげたい。清内路村は地理的に通り抜けをされてしまう地域であり、通行者をうまく呼び込む対策が必要と考えている。
    宮口座長
    斜面に点在する出づくりの家(農作業等のため季節的に移り住む家)の状況について伺いたい。
    清内路村
    30戸程度存在するが、実際に出づくりの家として利用されているのは1戸だけである。道路整備が進んだこともあり、利用は減少している。
    小田切委員
    清内路村での集落数はいくつか。また、「支え合い」の単位となるのは集落か。
    清内路村
    集落数は、上清内路集落と下清内路集落の2集落である。支え合いの単位としては、『隣組』という組織が村内に26ある。別に財産を持つが行政を担わない『区会』(集落単位で組織)がある。
    宮口座長
    人的な結合単位である隣組と、財産的な結合単位である区会とは、一体化・再編した方がより力を出すことができるのではなかろうか。過疎地域が生き残る道として、こうした方法もあるであろう。熊本県小国町では、財団法人まなびやの里に地元が共有財産から出資している例がある。
    安藤委員
    地縁団体とともに、例えばPTAのような、テーマ別の助け合い・結合単位が連携し、重なりあいながら動くような仕組みも一つの考え方であろう。
    小田切委員
    『区会』が地域コミュニティの一形態としてあまり発達していない、活用されていない理由はなにか。
    清内路村
    以前は『区会』が学校や寺の修繕等をしていたが、高齢化でこうした活動を支えられる人が減ってきた。また、自治組織を作ることに賛同は得られても「村で作ってください」といったように依存する意識もあるかもしれない。
    沼尾委員
    阿智村に中学校事務を委託する際に、一部事務組合方式ではなく、事務委託という形式によることとした理由は何か。
    清内路村
    一部事務組合方式の場合、議会設置の必要があるなど負担が大きいことが理由である。
    宮口座長
    阿智村との中学校統合により空き校舎が生じるため、有効活用を図っていただきたい。
    総務省
    合併に関する清内路村内での住民のとらえ方はどうか。
    清内路村
    最大の行財政改革は合併と考えており、また、中学校の統合についても合併を視野に入れてのことである。住民説明会や学習会の開催など住民の理解を深めた結果、中には清内路村を残したいという声もあるが、合併について理解されている。合併に伴う不便さが生じるかどうか不安の声はある。
    宮口座長
    現行過疎法が期限切れした後、仮に何らかの過疎対策を講じるとした場合、合併市町村の過疎地域の指定のあり方について意見を伺いたい。
    清内路村
    合併後の懸念として、過疎化がさらに進むのではないかとの意見もあり、一部を過疎として見る現行の仕組みは継続していただきたい。

(5)下清内路集落(清内路村)

○集落の現況
150世帯 427人
○高齢者数
152名(高齢者比率 35.6%)
○集落の立地
緩い傾斜に密集して住戸が存在
○主な活動
定期総会1回、役員会7〜8回
元旦祭、春季例祭、秋季例祭、新穀祭式、大晦日祭、区内除雪、さわやか清掃など
○視察時の主なやりとり

  • 下清内路集落へ空き家に移住してきた例はないが、問い合わせはある。
  • 下清内路集落への移住の相談は、団塊の世代よりも若い世代の方が多い。
  • 集落の雰囲気、景色、佇まい等は魅力がある。村の魅力を発掘し、育て、PRしていく施策をうまく行うことによって、人を呼び込めるのではないか。集落で住民同士支え合えば悲観することはない。 (以上)

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