(座長)
宮口 廸(早稲田大学教育・科学学術院教授)
(委員五十音順)
安藤 周治(NPO法人ひろしまね理事長)
小田切徳美(明治大学農学部教授)
上治 堂司(高知県安芸郡馬路村長)
菊池 恵美(西日本新聞取締役編集局長)
桑野 和泉(由布院温泉観光協会長)
白石 真澄(関西大学政策創造学部教授)
沼尾 波子(日本大学経済学部准教授)
本田 敏秋(岩手県遠野市長)
横道 清孝(政策研究大学院大学教授)
(総務省)
津曲 俊英(総務省大臣官房審議官)
青木 信之(総務省自治財政局財務調査課長)
丹下 甲一(総務省自治行政局自治政策課長)
渡辺 秀樹(総務省自治行政局地域振興課長)
室田 哲男(総務省自治行政局合併推進課長)
安藤 英作(総務省情報通信政策局地域通信振興課長)
佐藤啓太郎(総務省自治行政局過疎対策室長)
(農林水産省)
永嶋 善隆(農林水産省農村振興局企画部農村政策課長)
(国土交通省)
大矢 浩(国土交通省都市・地域整備局地方整備課長)
過疎対策室から配付資料に基づき説明した後、意見交換を行った。
○配布資料で示されたように道路等については未だに格差が残っている。また、今後は、地域の実情に合わせて、「人が実際に移動できる仕組み」をつくることが必要である。
○過疎対策を論じる際には、均衡ある発展を図る「守りの側面」、地域の内発的発展を図る「攻めの側面」の両方を追求する必要がある。今の過疎対策は守りの側面が大部分であるが、今後は攻めの側面をもう少し打ち出すべきである。新しい過疎対策はある意味シンボリックな政策であり、世の中に対して新しい対策を約束し、世の中に新しいメッセージを送る重要な役割を担うことから、積極性が必要ではないか。
○五全総で提唱された多自然居住地域の概念を発展させ、自然との共生や都市との共生という意味でたとえば共生居住という新しい価値を作り出していくということが必要ではないか。また、人の暮らし方として、現在のような暮らし方にプラスして地域コミュニティの中に参加していく生き方、さらに、地域に新しい産業を創っていく概念が必要ではないか。新しい過疎法では、こうした点も踏まえるべきではないか。
○現行過疎法の制定時には、新しい生活様式の実現の場であったり、美しく風格ある国土の形成が盛り込まれた。それから10年近く経ち、自然との共生、都市だけでの生活の限界、スローライフ等、過疎地域の積極的な役割に着目した議論が生まれてきている。
○過疎地域の現状には、生活維持や身近な交通手段、「足」の確保など、身の回りのことすら難しくなってきている面もある。そこに生活したいという人がいる限り、生活維持ができるようなベーシックなサービスは提供していくことが必要。
○雇用の場は中心都市で、生活は自分が従来住んでいた過疎地域で、というように、広域的な役割分担・機能分担を考えていくことも必要ではないか。
○現地視察をした長野県清内路村では、飯田市までのアクセスは良く通勤が可能であるため、飯田市を通勤先としつつ、ある程度住戸が固まって集落が形成されており、集落が維持できている。規模が小さい村であるため、行政としての住民サービスがどこまでできるかというと厳しい状況にあるようだが、過疎団体にも様々なタイプがあり、うまく分類できればよいのではないか。
○過疎地域の果たす役割、新しい暮らし方、都市住民とのつながりを都市住民にしっかりとアピールしていくことが必要である。
○教育については、空き家や廃校舎など地域ストックを活用して、山村留学や離島留学などで都市住民の子弟の教育に用いるなどの方策が考えられる。
○例えばデマンドバスの仕組みは、様々な地域に応用していけるのではないか。また、馬路村のゆずを活用した商品開発の成功事例など、過疎地域がこれまでに取り組んできた成果、知恵をお互いに情報交換できる仕組みが必要ではないか。
○全国過疎問題シンポジウムにおいては、表彰事例の発表も行っている。このような優良事例の普遍化・共有化ということが重要であろう。
○病院バスとスクールバスとをうまく組み合わせることによって、実質的にバスの本数を増やす取組みを実験的に実施している団体もあるが、このように地域で「実際に人が動ける」仕組みを国として考えるということも必要ではないか。
○過疎対策の論点としては、過疎地域がどのような意義を果たしてきたか、都市と地方との関係がどのように変わってきたか、あるいは過疎地域の新しい役割論などから整理し、そのうえで各論(各分野毎の全国と過疎地域の比較や、支援措置のあり方等)に入るべき。
○国の中の広大な過疎地域という空間が、人の生活に適した空間として保持されるということが過疎法の基本的な目的なのであろう。それが国民的合意となるような理念の整理を行い、また、その理念のために必要な実際の仕組み・ツールを考えていく、ということが必要である。
○ふるさとが都市である、という人は、既に相当の数になっている。都市の若者には中山間地域のことは理解されにくい。教育交流を発展させ、実のあるものにしていく取り組みが必要。
○株式会社のまちづくり会社を立ち上げることとしているが、行政の仕事でも、ある程度代替しうるだけのものができるのではないか、と考えている。地域の発展を目指す役目は、時代の変化とともに、役所だけが担うものではないという流れがあり、そのようなことも新しい過疎対策の議論に取り入れるべきである。
○どんな地域でも誇るべき文化や歴史がある。「どぶろく」も誇るべき地域文化ととらえ、構造改革特区認定を受けるなど、地域住民も参加しながら取組みを行ってきた。これにより、経済波及効果はもちろん、地域への愛着・誇りをもつといった効果も出ている。食文化、伝統文化、地域文化を生かした取り組みにより、経済波及効果が生まれるだけではなく、地元住民にやる気・意欲が生まれる。
○山・森林の荒廃が激しい。国土保全等、過疎地域の大部分を占める山・森林は大きな価値を有するものであり、適切な財政支援も必要である。
○都市に住む子供達が社会に出たときに、実体験がないと過疎地域を語れない。教育の中で、実際に現場に行って様々な体験ができるような仕組みをつくるべきである。
○過疎地域だから支援を、というのではなく、日本があり都市があるためには、地球温暖化の防止やエネルギー供給の役割を担っている過疎地域が必要である、したがって支援が必要である、ということをアピールすべきである。
○数年前より高知県で取り組んでいる事業として、企業と連携して森林整備をする「共同の森事業」があるが、このような方法で企業に過疎地域の重要性を知ってもらうことも必要。
○過疎地域に人が暮らすため、暮らす場所として成り立つための対策として、過疎地域の財源保障のスキームをどのように財政制度全体の中で仕組んでいくのかという視点からの検討が必要ではないか。
○人がなかなか住めない、あるいは住まない地域は荒廃していくこととなるが、そうした地域の森林・水源等の保全についての財源確保をどのように考えていくか。管理や保全の担い手を育成し、あるいは管理や保全に住民等が参加できるような仕掛けを作ることを考えていかなければいけない。
○インターネットの普及により、国からの情報がダイレクトに入ってくるなど、国との距離が近くなったが、そのぶん県との距離が遠くなった感もある。改めて国と県と市町村との関係について見直す必要がある。また、過疎対策、地域振興については、引き続き現場に最も身近な市町村主導の仕組みとすべきである。
○集落の維持・活性化対策には話し合いが必要。その際に、外からのアドバイザーが入り一緒に議論することによって集落の新しい方向性が生まれてくる。そういった意味で、今後の過疎対策においては、基盤整備等による格差是正とともに、人的支援を行う必要があろう。
○現行法では、都市と過疎市町村の合併に伴い、浜松市などの政令市も一部過疎地域を抱える過疎関係市町村となっている(法第33条第2項)。過疎対策の単位としては、現行の市町村を区切りとするのではなく、平成の合併前の旧市町村の方がよいのではないか。
○例えばバスや情報通信基盤の整備については、過疎指定区域だけを考えても効果がなく、広域的に考える必要がある。具体的には、合併した過疎市町村については中心部と従前の過疎区域とで、合併していない過疎市町村については核となる地方都市とで、というように、広域的に問題をとらえる必要がある。
○高齢化や人口の減少が続く集落では、将来的にもう集落が無くなっても良いと考えるのか、若い人に来てもらい、産業興しをしたいなどの意欲を持って取り組むのか、集落によって考え方は異なると思われる。画一的な対策は難しく、集落の実態に応じたケースバイケースの対策が必要である。
○人口3万人ないし10万人程度の地方中心都市は、地域の空洞化のフロンティアにあるといえる。その対策を講じずに、過疎地域だけを守ることは難しい。例えば映画館が存在している中国山地の都市は津山市だけであり、都市機能の解体、分散が進んでいる。地方中小都市の機能を維持する、いわば人口のダムとして地方中小都市を位置付ける取組みが必要。
○2020年といった比較的先を見たときに、過疎地域はどのような姿になっているか。例えば過疎地域は「生涯現役の地域」である、「自然とのつきあうワザを持ち合わせた地域」である、「環境に優しい産業で日本を支えている地域」であるなど、過疎地域のあり方を明らかにしていく必要がある。自治体からのヒアリングの際には、過疎「対策」のあり方のみではなく、過疎地域が将来的にどのような地域となっていくべきなのかについて意見を聞いてみたい。
○遠野市では、胎児の心拍数、母体の状況等をデータ化し、これにより遠隔地の産婦人科医に見てもらうモバイル画像診断の実証実験を行ったところ、効果的であった。そこで、地域に残るマンパワーとして助産師を2名採用し、近隣の9の医療機関の協力も得て、12月1日にモバイル画像診断を用いた公設の助産院「ネットゆりかご」を設立した。診療に行く回数が約半分になるということで、大変好評。こうしたネットワークを作ることに、過疎地域の知恵、したたかさ、文化をうまく組み合わせれば様々なことができる。
○過疎対策による道路整備の結果、ある地域では、直線距離80キロぐらいの都市との間で日常の食料調達を行い、息子・娘が往来するなど、過疎地域における実生活と道路とが密接不可分なものになっている。また、ある地域では光ファイバー整備が全戸になされているが、こうした先行的な投資の効果が少しづつ現れている。
○海外においても携帯電話が通じる時代であるが、過疎地域では未だに使えない地域がある。即急な対策が必要。
次回の懇談会は1月25日に開催し、自治体からのヒアリング及び意見交換を行うこととした。
次々回の懇談会は3月31日に開催することとした。