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平成19年第4回過疎問題懇談会議事概要

日時

平成20年1月25日(金) 10時00分〜12時00分

場所

虎ノ門パストラル 「けやき」の間

出席者(敬称略)

(座長)
宮口 とし廸 (早稲田大学教育・科学学術院教授)

(委員五十音順)
安藤 周治 (NPO法人ひろしまね理事長)
小田切徳美 (明治大学農学部教授)
上治 堂司 (高知県安芸郡馬路村長)
菊池 恵美 (西日本新聞取締役編集局長)
桑野 和泉 (由布院温泉観光協会長)
沼尾 波子 (日本大学経済学部准教授)
本田 敏秋 (岩手県遠野市長)
横道 清孝 (政策研究大学院大学教授)

(自治体)
安田 公寛 (熊本県天草市長)
綿引 久男 (茨城県大子町長)
松村 憲樹 (島根県地域振興部地域振興室長)

(総務省)
岡崎 浩巳 (総務省大臣官房総括審議官)
津曲 俊英 (総務省大臣官房審議官)
青木 信之 (総務省自治財政局財務調査課長)
丹下 甲一 (総務省自治行政局自治政策課長)
渡辺 秀樹 (総務省自治行政局地域振興課長)
室田 哲男 (総務省自治行政局合併推進課長)
安藤 英作 (総務省情報通信政策局地域通信振興課長)
佐藤啓太郎 (総務省自治行政局過疎対策室長)

(国土交通省)
大矢 浩 (国土交通省都市・地域整備局地方整備課長)

議事概要

(1)自治体ヒアリング

熊本県天草市長、茨城県大子町長、島根県地域振興部地域振興室長から過疎地域の現状と課題、今後の過疎対策のあり方等についてヒアリングを行った。

【熊本県天草市】

○ これまでの過疎対策の結果、住民の生活基盤の整備に一定の成果をあげており、過疎地域の日常生活の基盤、地域住民の拠り所として活用されている。近年、経年劣化した施設の維持・管理に要する経費が多額となり、苦慮している。また、企業立地、UJIターン対策、交通対策、観光戦略、医師確保等のいわゆるソフト施策に対する財政支援については考慮の必要があると考えられる。

○ 合併に伴い、面積は標準団体の約4.2倍と広大な市域となっており、451の集落が点在。防災、教育、福祉等の分野において標準団体並みの施策の強化と効率化を両立させることは、財政的に厳しい状況である。よってこれからは面積の広さと集落の点在から生じる行財政運営のコスト高に着目した支援が必要ではないか。

○ 国の場合、施策により所管省庁が違うため、一体的な振興策が図れていないことはもとより、多くの施策が錯綜しているのではないか。各府省の垣根を越えた横断的な支援や、窓口の一本化が望ましいのではないかと考えている。

○ 過疎地域内の集落は、長い歴史の中で集落内での支え合いや心のきずなを基調とした地域社会を築いてきており、地域の伝統文化等も国として支えていかなければならない。高齢化等により厳しい状況にある集落の住民が集落を離れずに安心して暮らせるのは、近くに日常生活を支える中心都市が存在するからである。地方で暮らしたいと望むUJIターン者にもこのような条件は必須。これからの過疎地域は、ゆとりある生活を営む周辺地域・集落と、それらの生活を支える地域内中心都市の整備、機能役割の充実が肝要であり、これにより地域全体の住みやすさが享受できる。

【茨城県大子町】

○ 過疎化による影響は、少子化、高齢化、地域の活力の喪失といった全国共通のもの。しかしその対応策としては、それぞれの地域の置かれている地理的・社会的条件により異なるものであり、それぞれの地域に見合った対策を積み重ねていくことで、実現していくものであると考える。

○ 当町では、若者が住む、活力あるまちづくりを目指している。そのため、企業誘致、都市住民の誘致、観光客の誘致により外部からの活力を導入すること、及び住民自身が活性化することの2点に取り組んでいる。

○ 企業誘致については当町の現状にあわせ、中小企業に絞った企業誘致を行っており、低額な用地の提供、町民を採用した場合の補助などの優遇策を実施している。都市住民の誘致としては、「山田ふるさと農園」として20年間無償で土地を貸し、二地域居住や定住地として活用してもらう取り組みを実施しており、反響を呼んだところ。今後も空き家対策、遊休農地の利活用対策として都市住民とのマッチングを進めていく。

○ 子育てしやすい環境整備のため、子育て世代向けの町営住宅の整備や、地元高校への進学者を含めた給食費補助を行っている。特に町営住宅整備については、デザインを業者から公募し、町民代表に「子育てしやすい家はどれか」という観点から投票を行い選定してもらい、一戸ずつ異なるデザインを決定する工夫を行った。

○ 以上のような様々な取り組みを今後も展開していくためには、過疎対策法制度が必要である。過疎地域が生き残るためには、新しい過疎対策法制度のもと、それぞれの過疎地域が与えられた自然的・地理的条件の中で独自の施策を展開し、人材を育成していくことが重要である。その際には、大規模工場の立地といったような「大きな施策」ではなく、小さな施策の積み重ねが必要なのではないか。

【島根県】

○ 島根県では、新たな過疎対策に向けた提言等について研究するため、県内市町村とともに「島根県過疎・中山間地域対策研究会」を設けており、平成18年8月からこれまで8回にわたり会議を開催。本日は検討過程のものであるが、そこでの議論を説明させていただく。

○ 過疎地域は、多面的機能(木材生産、食料生産、温暖化防止)を持つ森林・農地が多く存在し、また、水・食料・エネルギーを都市に供給しており、豊かな自然・文化を有しているといった地域であるが、これら過疎地域の意義を都市住民にいかに受け入れてもらうかが重要。過疎対策は国家的な問題として捉えていく必要がある。

○ 過疎対策は、昭和45年の過疎地域対策緊急措置法の制定以来、社会基盤の整備を中心に過疎地域の底上げをする役割を果たしてきた。

○ 過疎地域の現状としては、道路、下水道等の社会基盤整備の遅れ、民間バスの撤退、医師不足、耕作放棄地の増加、集落の人口減少・高齢化、厳しさを増す市町村の財政状況など、課題がある。

○ 今後の過疎対策の重点事項としては、1)地域で、安全かつ安心に生活するための対策、2)地域資源を活用した産業振興と雇用対策、3)食料・水・エネルギーを支えるための国土保全対策、4)都市との交流、の大きく4つに分類できるのではないか。

○ 過疎債は市町村道の整備率や上水道の普及率、下水道の整備に一定の成果をあげている。かつては観光、レクリエーション施設での活用が多かったが、近年はこれらへの適用がほぼなくなっており、現在はケーブルテレビや光ファイバー、携帯電話通話エリアの整備等の情報通信基盤整備に多く用いられている。

○ これまでの過疎対策は社会基盤の整備等により、都市との格差を是正する役割を担ってきた。これからの過疎対策は、都市と過疎地域との共生関係について国民全体の認識を深めつつ、それぞれの地域が特色をもって発展していく、自立を促進していくことが必要ではないか。

(2) 自治体からの意見を踏まえて、委員との意見交換を行った。

横道委員
天草市・大子町として今後新たに整備すべきインフラ施設としては、どのようなものがあるか。また、新たな施設の整備と今までの施設の維持・管理のどちらの比重が大きくなりそうか伺いたい。
安田市長
天草市の中でも旧本渡市以外の区域については、下水道はほぼ未整備である。また道路等も整備する必要がある。一方、いわゆるハコモノについてはほとんどできあがっているので、その維持・管理に対する比重が大きい。
綿引町長
町の中心市街地での下水道整備に約20億円、ゴミ処理場の更新に約30億円など、避けて通れない施設整備が目の前に控えている現状である。

小田切委員
今後の過疎対策として重要な施策の一つにコミュニティ対策があると思われるが、これについて天草市としてどのような対策を考えているか伺いたい。
安田市長
集落が多数存在する天草市では、51箇所の地区振興会を設けており、それぞれが自立し自らの地域は自らで守るという意欲のもと取り組めるよう、地区振興会に1人ずつ市職員を「コミュニティ主事」として担当させ、支援している。

小田切委員
島根県の取り組みについては、「過疎地域の将来像」を総論に位置づけなければ、それぞれの取り組みが各論的、ばらばらになってしまい、いわば「総論なき各論」となってしまう。よって島根県として、過疎地域の将来像をどのように描いているか伺いたい。
松村室長
地域住民の自治力を強化するためには、市町村、都道府県、国がそれぞれの役割を果たしていかなければならない。また、多様な主体によって地域が自主的に運営される、または地域資源を活用した産業を振興することで地域が維持できるような仕組みづくりが必要である。それらを支えるために市町村が最低限の基盤整備をすることも重要である。

菊池委員
天草市では医師確保対策にどのように取り組んでいるか、また、医師確保策への提案として具体的にどのようなものがあるか、伺いたい。
安田市長
合併に伴い病院診療所を合わせ7つの医療機関を抱えているが、医師確保には大変苦慮している。当市でも「地域医療を考える検討委員会」を設け、様々な制度上の要望を行っている。
その一つに、県で医師を確保し、医師が不足する市町村に派遣する制度を提案している。また、大学の医学部の定数枠を一定数「地域枠」として増やし、増えた学生については、一定期間は県内の市町村医師として地域に貢献できるようにしてもらうよう提案している。

沼尾委員
天草市ではソフト事業への支援が必要とのことであるが、その方法として、目的を特定した交付金のような仕組みを考えているか、あるいは交付税措置の充実を考えているのか伺いたい。
安田市長
合併自治体には交付税の算定における「合併算定替え」の10年間の特例があるが、特例期間の経過後も、面積が広くなることにより消防・防災経費を中心に行政コストが非常に高くなることへの考慮をお願いしたい。また、施設の維持・管理、企業誘致などへの様々な優遇措置が必要と考えている。

安藤委員
過疎市町村としてソフト事業を推進するためには、使途を特定した交付金での支援や財政上の特例を設けるといったような限定した支援ではなく、自治体が使いやすいような形がよいのか、大子町長及び天草市長にお考えを伺いたい。
綿引町長
特に人材育成のようなソフト事業については、市町村からの提案を幅広く認める間口の広い制度が望ましい。
または、それぞれの市町村で施策を提案し、その中で過疎地域の人材育成に役立つと思われる施策を優先的に採用するような仕組みもあってよいのではないか。
安田市長
あまり固定的な制度であると使い勝手が悪いので、弾力的に運用できるような制度を構築すべきである。

宮口座長
ソフトというかけ声はたくさん聞こえてくるが、具体的にどういうことがソフトなのかというイメージアップ等々がまだ十分に進んでいないので、今後工夫・検討が必要であろう。

宮口座長
様々な施策を講じた結果として、「人口が増える」、「若年層の比率が上がる」ということはおそらく難しいと思う。このような厳しい中での将来像といったことも考えていく必要があるのではないかとも考えたが、その辺りについてどう考えるか、大子町長に伺いたい。
綿引町長
過疎地域が将来どうなるのかということは正直見えていないが、はっきりしていることは、人口がこれからも増えないであろうということ、そして10年後にはかなりの人口が減るということである。その時に、高齢者だけが残る町ではなく、若い人にも残ってもらえるような町にしなければならない、と考えている。これから人口が減っていくのはやむを得ないが、その中で小さな施策の積み重ねにより、若い人(後継者)が残ってくれるような町にすべく、まちづくりをしていきたいと考えている。

小田切委員
若者が残れるまちづくりをするためには、若者がどのように地域コミュニティに入っていけるのか、が実質的な論点になると思うが、その点どのように考えるか大子町長に伺いたい。
綿引町長
大子町には集落ごとに「区長制度」があるが、その幹事役に若者がどんどん入っていけるようにしていきたい。また、消防団が非常に活発に活動しているので、その人材を中心として地域のコミュニティがうまく行きつつあると思っている。

菊池委員
島根県では、都市の中核的な病院と、医師不足が深刻な過疎地域の病院とを診察支援で結ぶという「診療支援ネットワーク」を検討しておられるが、そのためには市町村だけではなく、県がリードしていく必要があるだろう。その際には、新たな制度創設が必要になるのか、県としてどのようなことを提案していかれるのか、伺いたい。
松村室長
資料に掲げた「診療支援ネットワーク」については、画像診断など、一部取り組んでいるものもある。
県立病院については過疎対策の対象ではないので、これからは県立病院と過疎地域の病院との連携を図る取り組みについては、過疎対策として何らかの制度設計できないか、提案していきたいと考えている。
横道委員
過疎の市町村だけでは担いきれない、対応できないような、例えば医療の確保、幹線道の整備といった取組みに対しては、県が支援するのが良いのか、あるいは中心市と連携するのが良いのか。またそれらをどのような制度・仕組みとして実現していけばよいのか。島根県にお考えを伺いたい。
松村室長
都道府県がどこまで出て行くべきかということについては議論があると思う。過疎地域の市町村は近年、財政状況が極めて厳しく切迫した状態であり、県としても一定の役割を果たしてほしいという声はある。これからよく議論していきたい。
安田市長
今の問いについては、権限移譲とも関わりのある話で、県が持っている権限を市に、あるいは町に移譲することによって解決できる部分もいくつかあると考える。例えば県道を市町村道に移譲することで、過疎債等を活用し事業が実施できる。熊本県において、合併自治体に権限を移譲する計画を進めているが、その中では、県が事業をするよりも市に権限を移譲した方がより有利な措置を活用して整備が出来る、という事例もいくつかあるのではないかと考えている。

本田委員
多数の自治体が合併した天草市においては、遊休施設が生じていると思うが、新たにリニューアルし、成功事例となったものは何かあるか伺いたい。
また、新市の一体感醸成のためには、情報の共有化が非常に大切だと思うがそれについてどうお考えか、伺いたい。
安田市長
2市8町の合併をした本市においては、一体感を醸成するということは、非常に難しいと感じている。その中で我々が最初に取り組んでいる事業は、市民が情報を共有できるようにするため、光ファイバー整備等の情報通信基盤整備事業である。
またNPO法人と協力し、廃校舎を福祉施設とコレクティブハウス、地域住民との交流の役割を持つ複合施設として活用するため、地域再生事業の認可を得て事業に着手した。これが成功事例になれば、と思う。

本田委員
大子町の取り組みの中で外部活力の導入は大事なことだと考えるが、地元住民の理解・支えも必要であろうと思うが、状況について伺いたい。
綿引町長
例えば山田ふるさと農園の現地説明会では、地元住民も好意的に協力をしてくれたものと思う。また、都市住民の皆さんが来たときに、地元でのサポート体制を具体的にどうするか、町として検討しているところである。

宮口座長
天草市は451の集落を51の地区振興会でまとめているが、新たな自治組織を設置し、公共施設や防災など地域における総合センター的機能を担うとする、島根県の提案をどう受け止めたか伺いたい。
安田市長
支所が9つあるが、人員の適正化を図る中で職員数は全体として減らしていくし、新市の一体感を醸成するためにも、支所は将来的にはなくなっていくことを想定している。現在51地区振興会にコミュニティ主事と公民館主事を1名、合計2名づつ配置しているが、支所はなくなったとしても、例えばこれらの担当職員を増やすことによりきっちりフォローしていける、地域の自立を図っていく努力をして参りたい。

(3)今後の予定等

年度内にもう一度懇談会を開催することとされた。

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