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平成20年度第2回過疎問題懇談会議事概要

日時

平成20年5月30日(金)

場所

総務省地下2階 共用第1〜3会議室

出席者(敬称略)

(座長)
宮口 とし廸 (早稲田大学教育・総合科学学術院教授)

(委員五十音順)
安藤 周治 (NPO法人ひろしまね理事長)
飯盛 義徳 (慶應義塾大学総合政策部准教授)
小田切徳美 (明治大学農学部教授)
上治 堂司 (高知県安芸郡馬路村長)
菊池 恵美 (西日本新聞取締役編集局長)
本田 敏秋 (岩手県遠野市長)
横道 清孝 (政策研究大学院大学教授)

(総務省)
津曲 俊英 (総務省大臣官房審議官)
渡辺 秀樹 (総務省自治行政局地域振興課長)
室田 哲男 (総務省自治行政局合併推進課長)
安藤 栄作 (総務省情報通信政策局地域通信振興課長)
佐藤啓太郎 (総務省自治行政局過疎対策室長)

(農林水産省)
田野井雅彦 (農林水産省農村振興局農村政策課長)

(林野庁)
井上 康之 (林野庁森林整備部計画課長補佐)

(国土交通省)
白石 秀俊 (国土交通省都市・地域整備局半島振興室長)

議事概要

(1)説明事項等

過疎地域における農林水産業の現状と課題等について、配付資料に基づき事務局・農林水産省から説明を行い、その後、意見交換を行った。

(2)意見交換概要

農村の現状と振興施策の展開方向(資料1)
農林水産関係資料(資料2)
○過疎地域などの条件不利地域を対象とした事業には、どういったものがあるか。条件不利地域における補助金の採択要件の緩和については承知しているが、中山間地域等直接支払制度のように、特定地域を対象とした事業にはどのようなものがあるか。

(→農林水産省)
○ 補助率に差を設け優遇している制度はあるが、中山間地域等直接支払制度のように特定の地域を対象とした事業は少ないと承知している。

○ 人口減少・高齢化の進行や、消滅のおそれがあるなど厳しい状況にある農業集落への対策について伺いたい。

(→農林水産省)
○ 平成19年度から集落機能再編促進事業を行っている。単独で存続が困難となった集落を対象として、複数集落による集落機能の相互補完や自治範囲の見直し等、新たな地域コミュニティの将来像を策定する取組を促進するため、地域の特性に応じた新たなコミュニティのモデル作りを行うことを目的とするもの(モデル事業)である。

○ また、小規模・高齢化集落支援モデル事業を平成20年度から実施することとしている。小規模・高齢化集落を数多く抱える中山間地域において、直接支払制度に取り組んでいる集落との連携により、小規模・高齢化集落の水路、農道等の地域資源を保全管理するための活動についてモデル的に支援を行うもの。

○ 総務省の過疎対策は、過疎債を大きな支援策の柱としながら過疎地域の自立活性化を図るもの。農林水産省は、農業振興をベースとしながら、地域政策の観点も含めきめ細かく取り組んでいるように思われる。今後の過疎地域への対策に関して、両省の方向性が近づいてきているようにも思われる。今後もうまく連携して取り組んでいただければと思う。

○ 「『人』に注目する」、「コミュニティを対象とする」、「全体としてソフト事業に着目する」といったビジョンを示しているようであり、過疎問題懇談会の認識と近いように感じられる。

○ 今後は、農山漁村活性化法(農山漁村の活性化のための定住等及び地域間交流の促進に関する法律)のように、交付金(農山漁村活性化プロジェクト支援交付金)による支援が今後増えてくるのではないか。一方で、地方分権改革(一般財源化・税源移譲の推進)の流れからすれば、逆方向の動きとも思われる。この点についてどう考えるか。

(→農林水産省)
○ 農村振興政策を考える上で、「国がどこまでやるべきか」というジレンマは常にある。そうした中で国の役割は、「政策の大きな方向性を決め、示すこと」、「取り組みのきっかけづくり」、「基盤整備などリスクが大きい事業への取り組み」などであると考えている。

○ きっかけ・仕組みづくりとは、「モデル的に」、「先進事例を作る」というところに重点を置いているかと思う。一方で、我々が過疎対策を考える際には、「全国普遍的に」という事もポイントになる。そこを踏まえた上で、農村振興政策の将来の見通しは如何か。

(→農林水産省)
○ 各地で農村振興に係る様々な取組みの芽が出てきているが、各地域を取り巻く状況は多様であり、「全国等しく」というわけにはいかないものの、大きな流れができてきているのではないか。

○ 過疎地域における農林水産業は、第一次産業それ自体として成り立つことは難しいということだろうか。「業」として成り立ち得ないのであれば、過疎地域における働く場・雇用の確保、定住者の確保のためには、農林水産品の加工・販売などに転化していかなければならないということであろうか。第一次産業で過疎地域が成り立つという事はもう厳しいのだろうか。

○ 海外からの輸入食料品が増えているが、これでは食物に対する「安心・安全」が確保できないのではないか。第一次産業を復活させる方法を考える必要があると思う。

(→農林水産省)
○ 国際競争の中で輸入品に対する障壁を新たに設けることは難しいが、過疎地域における農林水産業についてはすべて加工して販売する方向に転化していかねばならないということではないだろう。輸入品との価格差がある中でも、品質など「ブランド化・高付加価値化」に取り組むことが重要である。例えば兵庫県豊岡市の「コウノトリ米」、能登の羽咋市神子原の棚田米など、1次産品のブランド化・高付加価値化で成功している例がある。

○ 農林業が盛んな中で農地・林地の保全が図られてきた。国土保全という観点から、農地や森林の荒廃などへの対策についてどう考えるか。

(→農林水産省)
○ 中山間地域等直接支払制度は、まさに農地を良好に維持するという発想から生まれたもの。農地・水・環境保全向上対策もそうである。また、土地改良等基盤整備も使いにくい土地であるがゆえに放棄されるということのないよう行うものであり、ある意味では国土保全に資するものと言える。

○ 成功事例となっている農村は、農村内部での「強いつながり」・「弱いつながり」の融合がうまくいっている。「弱い関係性」だけでは信頼関係を築くのが難しく、「強い関係性」だけでは新しいことが起こりにくい。こういったジレンマがある。そこを如何に融合させるかということが大事なことであり、そのポイントの一つが情報通信技術の活用である。愛媛県内子町の産直販売支援システム「からりネット」i和歌山県北山村ii の例などは好例。情報通信技術の活用についてどう考えているか。

○ 政策を実施するにあたっては、「人づくり」がポイントになってくると思う。また、「人づくり」では成果が問題となるかと思うが、如何か。

(→農林水産省)
○ 情報通信技術の活用は重要であり、様々な支援策のメニューに盛り込んでいるところ。「人づくり」は難しい問題。現時点では試行段階であり人づくりの成果を数値で示すところまでは難しいが、ソーシャルキャピタルの定量化ができないか研究を行っているし、農山漁村(ふるさと)地域力発掘支援モデル事業の事例を通じて、事業の実施前後で、集落内部の関係性がどう変わるかということも調査しようとしているところ。

○ 「人づくり」は現場で実体験してもらう仕組みを如何に作るかという点が大事。各省庁ともに、リーダーの養成を行っているが、もうワンランク上の仕組みが欲しい。徹底的に学ぶことが出来る場が必要である。

○ 総務省・農林水産省・文部科学省の三省連携による子ども農山漁村教育交流については成果を期待しているが、例えば県レベルでは、教育委員会が学校任せとなっており取り組みが弱いと感じる。現場でしっかり体制を整え、プログラムづくり等を行う必要があるが、なかなか思うように進まない面もある。

(→農林水産省)
○ 現場での様々な危惧なり課題については聞いているところ。当省としては、出来る限り解消できるように努力していきたい。

○ 小学校で児童数が30名程度となったため、小学校単独ではなく、中学校・高校・地域も含め地域全体で運動会を行ってみてはどうかと考えている。地域の結びつきをより強め、大人と子どもの接点を増やすなど、教育効果も含め、大きな効果があるのではないか。教育課程の一環としての運動会という面は確かにあろうが、教育現場にも理解を求めていきたいと考えているところ。

○ 農地・農業の持続的・多面的機能、国土保全の機能にかんがみ、良好な里山・農村環境を維持するにはどうしても一定のコストが必要。

○ 品目横断的経営安定対策については、農村の現場で経理をしっかりできる人がいない点が一つのネックとなっているが、元経理マンであるI ターン者が参画して成功につながった例がある。この事例はヒントになるのではないか。

○ 純粋にコストだけを考えるとひきあわないかもしれないが、国土保全、国づくり、安心・安全の確保という観点が農村対策として、また、過疎地域振興対策として、極めて重要。また、新規就農者の確保についても視点として重要である。

○ 農村振興について、集落や地域社会に対する取り組みとして農林水産省が様々取り組みをされている。これらは、我々が考えるべき過疎対策と繋がってくる部分もあると考える。

○ 懇談会でも「人材確保・人材育成」がキーワードだが、農村振興の面でも現場で活躍する「普及指導員」のマンパワーは大きな力となっている。しかしながら、「普及指導員」の存在があまり重視されていないようである。専門的な技術を持ち、使命感も持った普及指導員をどう活用していくかも重要な視点である。

(→農林水産省)
○ 農業・農村の多面的機能に関する国民の関心を高め、国民に理解していただくことが肝要。様々な機会を通じて広報・PRに努めて参りたい。

○ 新規就農者対策については、定年後の帰農ブームも見られるが、若い人を呼び込むためにも「儲かる」「生活の糧となる」農業を考えなければならない。水田など土地利用型農業については近代化・効率化が重要であるし、施設園芸では品種改良・特産品作り・ブランド化などが重要だと考えられる。こうした面への支援策も講じていく。

○ 中山間地域等直接支払制度導入を通じて、集落内で、また、集落同士での議論を喚起したという点で高く評価している。是非何らかの形で続けていただければと思う。

○ 農林水産省の政策は、地域社会に対するきめ細かい行政という点で、今後の過疎対策に繋がる部分がある。総務省・農林水産省の連携が重要になってくると考える。

(3)今後の予定等

次回の懇談会は6月下旬に開催することとされた。

  1. 特産物直売所「内子フレッシュパークからり」と農家をネットワークで結んだ産直販売支援システムを構築。生産者が自宅からメール(パソコン、携帯電話)で、直売所のPOSデータを取得し、出荷品の販売状況を確認しながら残品を引き取ったり、新鮮な商品を追加で店頭に並べたりすることを可能にした。電話による音声案内でも販売状況を確認できることから、高齢者もこのシステムを利用することができる。
  2. 平成19年6月、田舎の暮らしと都市の暮らしをつなぐブログサイト「村ブロ」を開設。地域密着型ブログとして、熊野古道、歴史街道をはじめ観光情報を全国に発信。また、紀州熊野のファンを開拓し、「じゃばら」をはじめとする地域産品の販売の促進を図り、ブログ内での収益による運営を目指している。

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