(座長)
宮口 廸
(早稲田大学教育・総合科学学術院長)
(委員五十音順)
安藤 周治
(NPO法人ひろしまね理事長)
飯盛 義徳
(慶應義塾大学総合政策部准教授)
小田切徳美
(明治大学農学部教授)
上治 堂司
(高知県安芸郡馬路村長)
菊池 恵美
(株式会社テレビ長崎常務取締役)
沼尾 波子
(日本大学経済学部教授)
本田 敏秋
(岩手県遠野市長)
横道 清孝
(政策研究大学院大学教授)
(総務省)
椎川 忍
(総務省大臣官房地域力創造審議官)
市橋 保彦
(総務省自治行政局地域政策課長)
山 重孝
(総務省自治行政局地域自立応援課長)
室田 哲男
(総務省自治行政局合併推進課長)
高田 寛文
(総務省自治財政局財務調査課長)
奈良 俊哉
(総務省情報流通行政局地域通信振興課長)
佐藤啓太郎
(総務省自治行政局過疎対策室長)
(農林水産省)
仲家 修一
(農林水産省農村振興局農村政策部中山間地域振興課長)
(国土交通省)
橋本 拓哉
(国土交通省都市・地域整備局地方振興課半島振興室長)
過疎地域等における教育の振興について、配付資料に基づき事務局並びに文部科学省初等中等教育局及び大臣官房文教施設企画部から説明を行い、その後、意見交換を行った。
また、過疎地域における医療の確保について、配付資料に基づき事務局及び厚生労働省医政局から説明を行い、その後、意見交換を行った。
<1>過疎地域等における教育の振興について
○ 学級規模の基準は昭和30年代に定められており、相当の期間を経過している。地方都市でも少子化の進展によりこの数に満たない学校は数多く出ているのではなかろうかという気がするが、今後の適正配置の基準の見直しについてのお考えを伺いたい。
(→文部科学省)
○ 中央教育審議会で検討しており、指摘の件も議論の対象になると思っている。なお、ある研究者が市町村教育委員会にアンケートを行うと、小学校について12クラスというのは各学年2クラスという数字であり、やはりクラス替えできるだけの規模がほしいという意見、中学校であれば部活動であったり、教科担任制であったりを考慮すればやはりこのぐらいの規模が良いのではとの意見が多く、12クラスから18クラスという標準は支持を受けているといえるのではないか。いずれにせよ、様々な議論を踏まえて、さらに議論・検討していく必要がある。
○ スクールバスによる通学所要時間は通常どのぐらいか。
(→文部科学省)
○ 正確に把握しているわけではないが、ヒアリングをしてみると1時間近く乗っているケースもあるようである。例えばスクールバスにあまりに頼ると、体力の低下につながるという心配もあり、スクールバスがあればいくらでも統廃合を進めてよいかというと、こうした別の観点からの議論も必要になるのではないか。
○ 中学校で1学年が20人を割るような状況となると、統廃合の議論は避けられないのではないかと思っている。
○ 小中学校の整備において、木材利用の推進は過疎地域の振興のためには非常に重要。木材利用により山の手入れも進む。また、木造校舎は子供の教育上も良い効果をもたらすとのことである。
○ 本格的な木造の方が長持ちする面があり、先進的な市町村の中には率先して木造校舎に取り組んでいるところがある。
○ スクールバスを用いることにより、子供が地域を歩かなくなる。「道草コミュニティ」が失われ、子供の地域への愛着が損なわれるおそれがある。統廃合にあたっては地域の旧小学校区のコミュニティ強化を強化することとセットで取り組む必要があるという話を聞いている。地域によっては、スクールバスに乗る地点まで子供をわざわざ歩かせるという工夫をしているところもある。こういった点での議論、施策上の工夫などがあればご紹介いただきたい。
(→文部科学省)
○ スクールバスについての詰めた議論はこれからであるが、例えば少し学校の手前から降ろして歩かせるような工夫があるという話は聞いたことがある。
○ 学校教育として、小規模校が適切なのか、あまりに人数が少なくクラス替えもできないなかで、社会性が十分育つだろうか、ということも一つの議論のポイントである。逆に、地域の文化やコミュニティの拠点としての学校の性格を大切にしようというご意見もあり、今後議論を整理していきたい。
○ 生徒数が一定数いる中で教育を受けるという意味での社会性、地域コミュニティとの関わりという意味での社会性があって、学校を大きくすることによって地域と断ち切られるようでは困るという心配についても、ぜひご議論をいただきたい。
○ まちづくりや地域活性化を考えるうえで、地域のことを知っている、誇りをもっている、アイデンティティーをもっているということでは重要なポイントではないかと思っている。特に過疎地域においては、こうした意味で学校は非常に大事なプレーヤーであって、まちをよく知る、地域のことをよく理解するという教育をぜひ充実させていただければと思う。これが長期的には過疎地域の活性化につながっていくと思う。
(→文部科学省)
○ 「総合的な学習の時間」での地域と連携した授業等がここ数年増えてきている。また、小中学校の低・中学年の社会科では身の回りの地域を知ることが一番大きなテーマであり、しっかりと進めていく必要がある。また、へき地学校での教育のソフト面の充実についても、研究大会の実施などを通じ、ノウハウの共有化などに努力していきたい。
○ 資料によれば、中学校では0〜5学級の中学校数がある程度維持されているが、これは、市町村の中で中学校が1校であり、規模は小さいがこれ以上は統合を進められない、ということが要因であろうか。また、1市町村で1校であるが、小規模となったため維持が難しいという場合の対処についてどう考えておられるか、伺いたい。
(→文部科学省)
○ 制度としては、隣接市町村と学校事務を共同処理すること、隣接市町村に学校事務を委託することはできるが、実際には、自分たちのまちに中学校が一つもなくなってしまうことへの抵抗感が歯止めになっているかもしれない。
○ 統合により校舎を整備した後にさらに児童生徒数が減ってクラス数が減っていくといったことも視野に入れると、施設要件の緩和や施設の使途を柔軟にするなど基準の弾力化が必要ではないか。
(→文部科学省)
○ 統廃合による学校整備の事例においては、学級数については12から18を標準としているが、例えば離島などで、統合しても12学級以下というところがあり、こうしたものも国庫補助対象とできるようにしている。また、施設の基準は最低限のものであり、地域の実情に応じた工夫に対しても国庫補助は可能となっている。
○ 県境を超えて、事務委託や一部事務組合で学校事務を行うことはできるか。特に中山間地では県境を超えた対応も考えないと難しいとこともあるようである。
(→文部科学省)
○ 法令上は、可能である。
○ 本日は小中学校の議論であったが、ある離島では、県立高校は是非残してほしい、子供を遠くへ下宿させるには費用が大変である、という意見も伺っている。
○ 私自身各学年1クラスの出身であるが、人間論的には小規模校にも価値がある面もあると言えるのではないか。
<2>過疎地域における医療の確保について
○ 遠野市では、産婦人科医が不在となったため、市民の安心・安全の確保にむけ産婦人科医の確保に努力をしてきた。しかし、「お願い」さえすれば医師に来てもらえるかといえば必ずしもそうではないため、我々の地域で何ができるか、ということで遠隔医療の推進、ICTの利活用で「いのちを見守る」仕組みを作るということに取り組んだ。
○ 遠野市は人口3万2千人の市であり、毎年200件ほどの出産があるが、アンケート調査によれば、妊婦の約9割はお産を扱う医療機関がないことに不安を感じている、第2子出産にもためらいを感じているという大変厳しい状況であった。そこで、経済産業省のモデル事業として、県内の10医療機関とネットワークをつくり、ICTを活用した検診システムを構築した。
○ 新しい研修医制度の導入後、特に大学から遠い地域での医師の引き揚げが起こっている。九州では、例えば大分では竹田、熊本では天草といったところがそうである。この臨床研修制度は、非常に幅広く医療の現場を学べるという効果をあげているが、もう一つの側面として、地域では、特に産科、小児科といった分野で、いろいろな問題も起きている。
○ 県単位では医師数は確実に増えているが、県内で各地域を細かく見ていくと、医師の偏在が生じている。
○ 国の緊急医師派遣制度は、特に医師不足が深刻な地域に臨時に派遣する仕組みであるが、6ヶ月後の任期後にどうするかという点は課題である。派遣された医師に対して派遣先の地域から「ずっとここに留まってください」という要望も出されている。
○ 医学部の定員増もなされているが、その効果が現場に現れるまで10年程度以上を要する。その間に医師の偏在にどう対処していくか、これからさらに知恵を出していかねばならないと考えている。
○ 各医療機関がそれぞれの特色を生かして連携し、全体として総合的な医療を担っていくという動きがある。県境にとらわれずに、こうった取り組みを進めていくべき時代が来ている。例えば鹿児島県と熊本県南部、福岡県南部と熊本県北部ではこういった動きが始まっているところ。
○ 宮崎県は周産期死亡率の改善を目指し、宮崎医科大を基幹病院とし、県内を4地区に分けNICUi の整備を進めことでネットワーク型の仕組みを作り上げ、周産期死亡率を全国一低くしたという事例がある。
○ 女性医師で稼働しておられない方がいるが、女性が働きやすい職場を作っていくということも今後の課題である。
○ 過疎債があることによって、小さい村でも診療所の整備、医療機器の整備ができ、若い医師に来ていただいて、診療もできるし、ある程度の研究もできるようになっている。この仕組みは今後とも続けていく必要がある。
○ へき地にも程度があり、まずは診療所があればよい、高度な救急医療を受けるためには救急車で2時間も走らなければならない、というところもある。へき地の程度も様々であり、実情にあった対策をお願いしたい。
○ へき地医療支援機構、へき地医療拠点病院への財政支援はどうなっているか。また、へき地医療拠点病院の県内での配置イメージについてうかがいたい。
(→厚生労働省)
○ 支援機構や拠点病院としての機能を果たすための運営費は国・県折半で補助を行う仕組み。また、へき地医療拠点病院は、おおむね2次医療圏の中核病院のイメージ。
○ へき地に医師を供給する拠点病院で、医師不足が起きているという課題が生じているのではないか。
(→厚生労働省)
○ 病院勤務医が足りず、診療所に医師を送り込むべき拠点病院の医師が足りないことが最近の課題の一つ。全体の医師不足の解消ということとあわせて取り組む必要がある。
○ 医師確保とあわせて、地方の公立病院の経営が厳しいという問題があり、病院や診療所の経営が成り立ちにくいという実態がある。これに対する財政支援のあり方についても今後の課題である。
(→厚生労働省)
○ 公立病院については、救急医療、小児医療、へき地医療など一部に国の補助はあるが、基本的には地方財政措置が講じられる中での各自治体の取組みによることとなる。
○ 本日の議論によると、条件不利地域における医療の確保について政策評価をどのように行うかという見地からは、無医地区数はアウトカム指標としては評価しがたい、別のアウトカム指標が必要ということになるか。また、具体的にどのような指標がありうるか。
(→厚生労働省)
○ 無医地区数は、実際にその地域の医療ニーズが満たされているかどうかを測る指標としては不十分と思う。現在、へき地の医療ニーズに合った医師数、医療機器などのミニマム・リクワイアメントをどう設定したらよいかということ等について、研究班において議論いただいているところ。
○ 現在のところ、過疎を始め条件不利地域の医療確保といった議論の中で無医地区数は広く使われているが、ミスリーディングを招くのではないかと思っている。新たな指標の開発についてはよろしくお願いしたい。
○ 大学病院の医師派遣機能の低下が地域の医師確保にあたって大きな課題となっているが、省の壁を越えて、文科省と厚労省の連携した取り組みが必要ではないか。
(→厚生労働省)
○ 臨床研修については厚労省と文科省が協力して取り組んでいる。また、医師確保対策については総務省、厚労省、文科省で連携して取り組んでいるところ。
○ 地域の拠点病院に勤務医が確保できていないという現状からすれば、勤務医の収入その他の面の待遇をアップする必要があるのではないか。また、診療報酬の中ですべて対応することが難しいとすれば財政的な対応も必要ではないか、といった議論も考えられるが、いかがか。
(→厚生労働省)
○ 来年度概算要求には、救急・産科・へき地医療を担う勤務医等への支援として、救急を担う勤務医の手当、産科医の手当への財政的支援といった事柄を盛り込んでいる。また、平成20年4月の診療報酬の改定においても勤務医への配慮を行ってきたところ。
○ 医師が地域にいてくれる、ということが原点であり、医師が引き揚げられるという状況になんとか歯止めがかけられるよう、ぜひ取り組みをお願いしたい。
○ 遠隔医療を進める際には、協力してくれる医師の確保や、看護師・薬剤師などとの連携、情報インフラの整備、その他さまざまなことを進めていく必要があり、コーディネートが重要であるように思われる。この点についてどうお考えか伺いたい。
(→厚生労働省)
○ へき地医療対策の補助メニューの中の遠隔医療補助事業として、必要な画像伝送システムの経費補助など、診療情報をやりとりすることへの支援にも取り組んでいる。
(→総務省)
○ 「遠隔医療の推進方策に関する懇談会」の中で、各種の補助・支援スキームを全体的にどううまく活用していくかということもテーマの一つとして検討したいと考えている。
次回の懇談会については、日程調整等のうえ、開催することとされた。
i Neonatal Intensive Care Unit、新生児集中治療室のこと。