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ICTビジョン懇談会(第2回)議事要旨

日時

平成21年1月27日(火)10:00〜12:00

場所

総務省 第1特別会議室

出席者(50音順、敬称略)

・構成員: 岡素之(座長)、公文俊平(座長代理)、安藤真、内田勝也、岸博幸、黒川和美、嶌信彦、妹尾堅一郎、寺島実郎、野原佐和子、原丈人、松原聡、村上輝康、茂木健一郎、米倉誠一郎 (計15名)
・総務省: 鈴木総務審議官、寺ア総務審議官、小笠原情報通信国際戦略局長、河内官房総括審議官、谷情報通信国際戦略局次長、山根情報通信国際戦略局参事官、戸塚政策統括官、久保田官房審議官、阪本官房審議官、桜井総合通信基盤局長、吉田電波部長、田中官房総括審議官
・事務局: 谷脇情報通信国際戦略局情報通信政策課長、竹村情報通信政策課調査官

議事

(1)ICTビジョンの策定に向けて
  1. ○ 事務局より、資料「検討の方向性(議論の叩き台)」について説明を行った。事務局説明の概要は以下のとおり。
    • ・実現すべき社会像としては、我が国の『強み』と『弱み』を分析した上で、『強み』を活かすための施策展開を図っていくアプローチが必要ではないか。また、どのような社会を描き、ICTによる日本創生をどのように図っていくのかについて、「先進的知価創造立国への転換」が必要ではないか。
    • ・ビジョン策定における時間軸の設定については、直面する現下の経済危機に対応するため、今後3年間に集中的に展開すべき新経済成長実現のための施策パッケージと、2015年ごろを見据えた、持続的な成長を実現するための政策パッケージについて、同時並行的に展開していく必要があるのではないか。
    • ・重点展開施策の考え方としては、以下の内容に着眼する必要があるのではないか。 (「個人・地域・企業のエンパワーメントを実現するプラットフォーム作り」、「ICTを利活用した幅広いデジタルコンテンツの流通促進」、「国民が利便性を実感できるユビキタス技術の面的あるいは立体的な展開」、「新技術の積極的投入による世界最先端の電子政府の実現」、「世界一安心・安全なネット利用環境の実現」、「先進的な知価創造立国を実現するためのルール整備」、「グローバル展開を目指した研究開発環境の整備」、「世界最先端の情報通信基盤整備の更なる強化」、「ベンチャーが『挑戦可能』な場作り」、「戦略的かつ骨太な国際競争力の強化」、「ボーダーレス化が進展する中での国際連携強化・国際協力推進」等)
  2. ○ 資料の説明を踏まえた自由討議における、各構成員の発言概要は以下のとおり。
    • ・緊急かつ効果的な公共投資は必要だと思うが、政府がやるべき仕事とやらなくてもいい仕事がまざっている。集中的に規模感を持ってやることは重要だが、本来政府がやらなくていいことまでやると阻害要因になる可能性がある。ベンチャーや産官学連携についても、何を政府はやらなければいけなくて、どこから先を民間が自由に活動できる場なのかを切り分けることが必要。
    • ・日本は、公共性を持った知の集積をインターネット上でやるという意識がユーザーにないのが弱点。国の経済成長の基礎体力は、国民の広い意味でのインテリジェンスに比例する。日本国民は、公共性のある場で、どうやって知のインフラを構築していくかということについての意識が低過ぎる。ICTによる国民のラーニング、知的資産のレベルを高める施策として何が考えられるか。また、携帯で接続するユーザーにも、インターネットを知のインフラとして使うという意識を広げられないか。
    • ・ビジョン全体の組み立て方として、当面の緊急施策と2015年の中長期の展望を分けるのは、非常にいい対応の仕方。諸外国の状況を鑑みても、日本の対応の仕方として、雇用創出、あるいは付加価値の創出につながるような、ICTニューディールとでもいうべき大きな固まりに体系化され、3年程度を対象にした緊急施策が必要。固定系のネットワークのブロードバンド化をさらに発展・活用する形で、ネットとリアルの融合を推進するのが、2015年に向けての中長期のICTの大きな方向。電子タグ、センサーネットワーク、ネットワークロボット等が自由に活用できる環境構築のための、ワイヤレスのブロードバンド化、ネットワーク環境の整備等が重要。
    • ・予算の原資を生み出すという意味で長期的には公共分野のBPR(Business Process Reengineering)が必要だが、日本経済全体では、各産業分野において先端的なICTがビジネスモデルに組み込まれること、新しい社会システムを作るためにICTを組み込まれることが大事。失われた10年からの立ち直りは、デジタル化が鍵になったが、今の経済危機から立ち直るためには、多様な機器がネットワークにつながることで、日本の産業界がうまく乗っていけるのではないか。こういった立ち上がりを支援する環境を整備するカギは、投資がいかに起こるかということ。投資を推進するような方向で、次の立ち上がりを大きく環境として支援していくということがカギ。
    • ・長期ビジョンについては、国民世論を上手に喚起しながら進めていく必要がある。日本の将来のためにはこういう方向性が絶対に必要、ということが国民の共通意識となり、このビジョンに取り組んでいかなければならないといった環境を作る必要がある。そのために、わかりやすさを国民にアピールし、国民の心をキャッチする言葉を考えていきたい。
    • ・構造改革の結果として進むグローバル化は悪ではなく、グローバル化に勝たないと国民生活もないといった視点が必要。日本の強みと弱みは大事だが、日本がどのぐらい世界で強いのかといったことが国民にとってわかりにくいため、わかりやすいデータをホームページで更新するなど日本のアドバンテージとディスアドバンテージがわかるようなものを作り、国民にICTのビジョンは大事、国際競争で勝つためには、ここを伸ばす、ここは負けている、といったことを示すことのできるわかりやすさが必要。
    • ・現在は財政出動のチャンスであることは間違いないが、ICTに使うことが本当に日本全体の財政出動の中で優先順位が高いのか、ICTはCO2節約に効果があるとか、売りみたいなものを相対的に出す必要がある。ただ使うのではない、というところを国民に対して示すことが必要。ICTに関して総務省が金を使った結果、これだけ節約できる、といったことでアピールできるのではないか。
    • ・お金も、人材も、時間も限られている中、優先すべきは技術開発。ICTは、雇用を増やし、経済成長を促してきた最も大切な産業であるが、基幹産業の変遷から見ても、現在のICTがこのまま成長していくことはあり得ない。技術開発分野に資金を投入できるような仕組みをいち早く作ることができたら、10年、20年の間で日本と欧米の間に大きな格差を生むことができる。市場原理のいいところをうまく取り入れながら、今後の世界経済の流れを大きく作っていくために必要な技術開発ができる国になるために、いろいろな分野における諸政策を作ればいい。
    • ・強み、弱みの観点は非常に重要。弱みと同時に強みをしっかり認識し、強みを強化していくことが非常に重要。グローバル化の中で戦っていくときに、丸くなってしまっても仕方がないわけで、強いところはより強くして、弱いところも底上げしていかないと、日本の良さが発揮できない。強み、弱みをしっかり踏まえてビジョンを作っていくことは非常に重要。ゲームや、アニメ、カラオケ、Wiiといったものは日本の製品・サービスの中でも国際的な競争力があり、国際市場に受け入れられている。そういった現状をポジティブに評価し、その上で、環境で整備していくことが重要。
    • ・メッセージ性のある、インパクトのあるキャッチフレーズが必要。今回の検討が幅広い業界の中で受け入れられる、浸透する、世論に影響を与えられるためには、わかりやすく、メッセージ性がしっかりある短いものが必要。また、短期目標と中長期に実施すべきことはしっかりと区別しながら具体的な施策に落としていくことが必要。
    • ・電子政府の実現で最も重要なことは新技術の投入ではなく、組織の連携や、利害関係者の調整。そういったものを乗り越えることで、電子政府の実現もより進む。また、技術のマーケティング力、事業開発力や、技術を国際展開するための国際展開力の強化も重要。
    • ・いわゆる情報化は産業化とは違う種類の社会変化であり、短期的には経済にとってはマイナスに働き、政治においては混乱を招く。ネットをポジティブに使った政治や行政システムの導入や、安全、確実に安く自由にお金のやり取りができる仕組みが確実に作られれば、非常に大きな新しい流通の仕組みができることになる。ICTで今の経済や政治をうまく補完できるような仕組みにしていくことが必要。
    • ・他省庁の関連戦略とのシナジーが重要。日本の国家安全保障をかけた情報セキュリティ問題をどう視界に入れるのか。責任ある高度情報通信社会を作るという問題意識をしっかり持ち、違法発信の世界をエンカレッジするような形のIT社会を作ってはいけない。また、日本の技術を活かし、例えば準天頂のような仕組みで、GPSを高度化し、次なる情報通信社会に日本の宇宙開発戦略がどう絡むのか、といったこともリンクしていた方が、総務省のICTビジョンとしてはよいのではないか。
    • ・人間の顔をしたICT社会にこだわりたい。ITにかかわる業界で働いている人たちは、安定した基盤のもとに生き生きと人間的な喜びを感じながら働いているのか。IT社会が始まって、雇用や労働がどう変わったのか、体系的な分析が必要ではないか。IT社会で働くことに喜びが感じられるようなものを作りだす努力が必要。社会工学、ソーシャルエンジニアリングの視点から、人間を幸福にする2015年状況をどうやって作るのかということについて、思想・哲学を傾けて立ち向かう必要がある。
    • ・ブロードバンド基盤があるということは、強みでも弱みでもなく特徴。その特徴を強みとして活かし得る戦略は何か、ということを発想することが重要。現在強いと認定しても、その結果、将来継続できるのか、強化できるのかという点に焦点を合わせないといけない。
    • ・growthの段階からdevelopmentに持っていくこと、つまりモデルを磨き上げることからモデルを変えることになるということは非常に良い。オープンに限らず、イノベーションを創出していくことが必要である。
    • ・標準化戦略を事業・産業の強化に結びつける議論が必要である。
    • ・デジタルコンテンツの発信地・リソースが地方にあるケースが多いことを考慮し、観光庁主宰の「観光イノベーション」、経済産業省の「集客交流」等と関連させることによって、地域の魅力をコンテンツ化することにつなげられるのではないか。また、政策については、官民の切り分けだけではなく、官民の関係付けを行う必要がある。
    • ・緊急的な問題をICTによって解決できるということを、モデル地域の紹介等を通じてPRすることによって、ビジョンの内容についての理解が深まるのではないか。また、ICTを利活用してどのように人間を幸福にするのか、メディアにおけるICT利活用の在り方、ICTの利活用による既存産業の底上げ(例えば1.5次産業や2.5次産業等)という発想等が重要ではないか。
    • ・日本のコンテンツ産業を活かすためには、コンテンツ力の知的な財産価値を測る力やその財産価値を正確にプレゼンテーションする力を持つこと、コンテンツの海賊盤への対策等についても議論する必要がある。
    • ・ネットワーク産業のインフラ部分については、アジア諸国が協力して取り組んだ方が良いのではないか。
    • ・ベンチャー等が挑戦する場としては、日本中の国土がネットワークの中でうまく位置付けられ、様々な人が活動する空間の場が広がり、それが世界とつながっているというイメージ(例えばスイスのように)として構築できれば良いのではないか。国、地方、道州等、将来の制度の変更に合わせた形で、地域にも足元があるような環境作りができれば良いのではないか。
    • ・ビジョンは、日本全体に対して正しい問題意識を持たせる、興奮させるものである必要がある。ITは手段にすぎないが、これだけ力強いパワフルな手段を使いどういった分野をどう戦略的に強化するかが大事。日本は、少子高齢化や人口減少等のいろんな課題が世界でもかなり早く来ているので、課題先進国だからこそできる、医療や電子政府等、世界最先端のソリューションがいろんな分野で作れるはず。
    • ・本当に、ものづくり力、コンテンツ力は強いのか。強み、弱みはかなり冷静に分析しないとまずいし、世界の動き、社会的なニーズについての分析がないと、手段であるICTをどう活用するかというビジョンはなかなか作りにくい。欧米、アジア含め見ていると、ソーシャルやクリエーティブというのが大事なキーワードになりつつあるような気がする。そういった社会がどう変わりつつあるのかという部分も含めて考えていく必要がある。
    • ・ビジョンで方向性、進むべき方向を考えた場合に、沢山でてくる他省や民間がやるべきことをどうアドレスしていくのか。その際には、官民パートナーシップが重要になるが、日本はずっとこういう部分で遠慮していたので、今後は役割分担をしっかりと、お互いのやるべきことを整合性をもってやっていくということを明確に出していく必要がある。
    • ・海外ではいろんな方策がとられている割に、日本では非常に単線的な形での人材育成しかやられてない点に大きな問題がある。また、電子政府で必要なのは説明責任であり、住基ネットのときには説明はおろか反論さえもしなかったことを非常に危惧している。少なくとも国家戦略的なものに対してはきちっと周知するべきではないか。体系的に考えるということ、いろんな面でクオリティーの問題を考えていくことが必要。ICTは目的ではなく手段と考え、ビジョンを作っていく必要がある。
    • ・ビジョンを作るときには、格差を少し大きくするが底上げするような力強さはない、最先端技術の持つ本質的な性格を気にしておくことが必要。どんどん進んでいくときには、ある意味でどんどん取り残す場所が出てくる。ICTでできないものは何かという問題をきちんと洗い出しておかないと、必ず取り残しが出てくる。また、3、4年で、状況は変わるので、こういった議論を繰り返していくことが非常に重要。
    • ・技術開発については、いろんな成功例を見ると、ユーザーの意見と全くかけ離れたところで芽が出る技術もたくさんある。総務省が旗を振るのか、技術者がリードするのか、ユーザーが問題を提案するのか、どこが一番の出発点になるのかはわからない。
    • ・懇談会の中間取りまとめは3月末となっているが、日本の政府の中での動きも非常に早まってきているように思う。来週発足するIT戦略本部の新しい専門調査会も3月下旬に取りまとめ、経済財政諮問会議も前倒し、と日本政府の動きが非常に早まってきている。いいタイミングでメッセージを出すということも大事なので、次回懇談会の前に緊急提言するといった取り組みがあってもいいのではないか。
    • ・本日議論いただいた内容等も踏まえ、本懇談会として、ICT関連施策のあるべき方向性について、政府全体の動きを見ながら、必要に応じ、鳩山大臣に提言していきたい。

以上


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連絡先

総務省情報通信国際戦略局情報通信政策課
(寺本係長、小笹、常田)
TEL : 03-5253-5735
FAX : 03-5253-5721
E-mail : ict-vision〈@〉ml.soumu.go.jp
(注 : 迷惑メール防止対策のため、〈@〉を、
@に置き換えてください。)

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