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ICTビジョン懇談会(第5回)議事要旨

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日時

平成21年6月1日(月)13:00〜14:30

場所

総務省 第1特別会議室

出席者(50音順、敬称略)

・構成員: 岡素之(座長)、公文俊平(座長代理)、内田勝也、岸博幸、黒川和美、國領二郎、嶌信彦、野原佐和子、野村修也、原丈二、松原聡、村上輝康、茂木健一郎、米倉誠一郎、ロバート・A・フェルドマン (計15名)
・総務省: 鳩山総務大臣、鈴木総務審議官、寺ア総務審議官、小笠原情報通信国際戦略局長、桜井総合通信基盤局長、山川情報流通行政局長、山根情報通信国際戦略局参事官、戸塚政策統括官、河内官房総括審議官、田中官房総括審議官、久保田官房審議官、武内電気通信事業部長、吉田電波部長、児玉技術政策課長
・事務局: 谷脇情報通信国際戦略局情報通信政策課長、竹村情報通信政策課調査官

議事

(1)ICTビジョン懇談会報告書(案)について

○ 國領構成員(基本戦略WG主査)及び事務局より、資料に基づいて説明を行った。
○ 資料の説明を踏まえた自由討議における、各構成員の発言概要は以下のとおり。
・ ICTの利活用を進めることによって、どのような社会が実現するかというビジョンはこれまでも広く宣伝されているが、現状としては、インフラ整備は進むが、国民生活に密着した利活用が進んでいないのが実態。その背景を探ると、法律的な規制、圧力団体からの圧力、制度・習慣、国民の理解不足などがネックになっており、進まない原因分析が非常に足りないのではないか。今後、本ビジョンを進める上で、IT戦略本部で同じようなビジョンを描くのではなく、阻害要因が何かを中心に議論してほしい。
・ 各省庁が同じようなテーマで予算をつけて行っていることを、もっと融合できないか。そのような問題点について政府全体で取り組むとしたら、IT戦略本部では単なるビジョンではなく、実現のための戦略と工程、実現の阻害要因と克服法もきちんと書いてほしいと思う。何かICTについて政府の出すビジョンは結局、インフラ整備だけに終わるケースが多いような気がする。
・ 日本政府を中心とするICTの推進は、これまでの霞が関文化を変えるチャレンジ。ICTに関しては政策決定、政策実施プロセス自体を変えないと実を結ばない分野と認識している。他の外国政府のように、従来の大臣、事務次官などの人員配置とは少し違った視点でCTOを置き、その人がフリーのポジションを持っていろいろ動き回ることで、政策が実現するのではないか。
・ 報告書の内容については、これまでも言われてきた内容が含まれるが、それがなかなか実現できてないという部分があるので、報告書が完成した後の作業として、いかに実現できるようにするかを検討する必要がある。これまでのIT戦略本部の歴史では、厚労省、農水省、文科省が規制で動かない、経産省が邪魔するなどたくさんあったと思うので、国民を味方につけてベンチマーク、アクションプランを明確にしていくことで取り組んで欲しい。
・ 例えばコンテンツの部分では、政府が手とり足とりやりすぎることによって体力が弱まることがあるので、バランスを考えた方が良いのではないか。
・ PDCAのCとAの部分について、きちっとやっていく点について、もう少し何か出してほしい。
・ 日本で人材育成を行う場合、中央官庁で資格制度を創り、それを入札の条件にするようなことがあまりにも多く、阻害要因となっているので、進め方について考慮してほしい。
・ 実現に向けての具体的な方向性が重要。スマート・ユビキタスネット社会実現プログラムのようなものを策定し、総務省自身がやれることについては、特にIT戦略本部、他省庁と関連がある部分を積極的且つ具体的にどのように働きかけていくかなど、相当はっきりとした改革工程で書くべきである。
・ ベンチマークについては、今の政府で政策評価をなるべく数量的にやろうと動き始めているので、定性的な目標を具体的な数値に落とし込んでいく作業を行って欲しい。2011年をターゲットとした時には、ブロードバンド・ゼロ解消が定量的にわかりやすい目標としてあったので、それに代わる数値的な目標を明確に打ち出す必要がある。
・ 通信系に偏った内容が強い印象があるため、テレビ、電波、融合などをどうするかについて、今後の課題としてほしい。
・ インフラに関連する内容について、セキュリティにはソフト的な側面が強く、インフラ自体が物理的に切れた時のバックアップ体制について議論が不足した印象があるので、今後の課題としてほしい。
・ 技術は強いが事業は弱いことを打破するためには、研究開発した技術を事業化して成功させる力を強化する必要がある。そのためには、技術力と事業開発力を併せ持つ人材、ICT領域と各産業界での知見・経験を併せ持つ人材など、異なる複数領域についての知見や経験を持つ人材を産業界全体で育成し、活躍できる環境を作っていくことが重要。ただ育成するだけではなく、大学や産業界の中で育ち、実際に活躍でき、しっかりとキャリアアップし、社会全体の中にそういう人材がしっかり根づいていけるような環境を構築することが必要。このような観点についてこれからも踏まえた上で、個々の具体的な施策を展開する時に、全体像を見ながら進めていって欲しい。
・ 各産業界におけるICT利活用、例えば農業、医療、教育、行政などが重点分野として挙げられるが、ICTという観点からやれそうなこと、やりたいことを実施しているだけという施策も多い。逆に医療、教育、農業などの観点から課題を抽出した結果を踏まえ、それを解決するためのICTにならないといけないが、まだその実現には距離があるので、その辺も踏まえた上で施策を実施願いたい。
・ デジタルネイティブ、デジタル新世代が出現してきているが、そういう世代が何者であって、どのような行動様式を持ち、どのようなポテンシャルを持っているのかをよく見極める必要がある。そして、その人たちが活躍していける場を創っていくことが重要。そのような一種の社会学的な配慮を念頭に置きながら、実現工程を考えていくときには配慮してほしい。
・ わかりやすい数値目標として、例えば、2015年までに日本の青少年が遠隔教育及び遠隔医療の分野において発展途上国のICT普及のために貢献する仕組みを完成するということを入れるのはどうか。遠隔教育、遠隔医療において、技術ビジョンができ上がっても法律面や製造面で既得権益者などの存在で促進できないこともあるが、そういったものを国内で変えていくことにより、日本の若い人たちが海外でつくり上げた実例を日本に持ち帰ることが可能となるのではないか。
・ データ連携は、現在のインターネット論に書かれているWeb 2.0、クライアント・サーバ・アーキテクチャーなどは、コンピューティング及びコンピュータのソフトウエアの延長線上の技術ではおそらく実現できない。技術論の分野において、実現するための技術をどのように開発するかといった点に、もう少し力点を置くと良いのではないか。
・ 2つ目の2015年の明確な目標として、現在のアメリカ合衆国を中心とするコンピュータ、クラウドコンピュータ、ソフトウエア技術の延長線上にない、新しい技術をどのように開発するのかの観点が必要である。これらを実現できる人材はイスラエル、ヨーロッパ、アメリカにいるので、そのような人材をどのように我が国が利用していくかという観点で考えることが良いのではないか。
・ ICTベンチャーに対する助成、ICT関連ファンド、ICTベンチャーの異業種交流、マッチングなどの新技術は大企業ではおそらく実現できない。しかしながら、ベンチャー企業でやるとすると、キャッシュフローが数年間で黒字に転化することができない。この基礎研究を行うベンチャー企業に対する育成の仕組みを独自に考えていく必要があるが、税制の仕組みを活用する内容が抜けており、可能であれば付け加えられないか。
・ 数値目標の役割が非常に大きい。市場規模の倍増を目指すという内容を脚注ではなく表紙に載せた方が、国民の参加を呼び起こすような効果を持つのではないか。
・ 5W1Hに関して、What以外の説得力が弱い。
・ 利活用を促進していく上で、国民がこれをやっていくとどのような社会になるのかというイメージをもっと強烈に打ち出す必要がある。やはり利活用の促進は、パワーのある人が自分でやっていけるという認識のもと、日本の社会に未来があるのだということが示されなければ進まないと思う。報告書自体はプロ向けとして、産業界においてこの報告書によって新しいビジネスを探ろうという方がいることはご指摘のとおりだが、私たちの社会がここに書かれているようなものになるためには何をすればいいのかということを、もう一歩踏み込んで考えられないか。
・ 陰に隠れている日本の大きな問題として、縦割り行政、法制度の硬直化に加えて、習慣、慣習、意識などがあり、それらを分析する必要がある。例えば、医薬、医学、治療は対面でなければならないと思っている人もたくさん存在し、それらの人々の意見を吸い上げながら、どのように新しい社会を築いていく必要があるのかということを考えなければならない。また、住基ネットについても、依然として抵抗感を持っている方がおり、コンセンサスがとれてない部分がある。こういったところを一つ一つ丁寧に議論を積み重ねていかなければ、実現しないと思うので、その辺りをぜひ次の段階で工夫してほしい。
・ 今回ICTの技術的な側面では、ワイヤレスのフロンティアが広がっていく部分と、クラウドコンピューティングについて真正面から取り上げているという部分が非常に大きい。クラウドコンピューティングについては、クラウドコンピューティング環境が構築されていくことが、スマート・ユビキタスネット社会の実現の一つの非常に重要な条件であるという考え方と認識している。本文にハードウエアやソフトウエアを「所有するのではなく」という表現があるが、これは所有しなくても、という意味で、全てがクラウドコンピューティングになるという意味ではないことを確認しておきたい。
・ 人材育成について、技術力と事業開発力を合わせ持つことも重要だが、もう一つ、技術外交人材の育成という観点が重要となる。日本国内の標準、知財などが国際的に需要されなければ、国として失うものが大きいため、技術的なバックグラウンドと外交的なバックグラウンドをあわせ持つ人材が重要。まずは総務省自体の技術外交人材を自ら生みだしていく努力も必要。
・ 半年後、1年後にこの提言がどういう結果になったかをフォローするために、クロージングミーティング、フォローアップミーティングを岡座長の名前でぜひ開催してほしい。
・ 国民が実感できる内容として、スマート・ユビキタス社会の実現を最初の目標としたことは、これまでの議論の内容が反映されている。中でも、電子政府、医療、教育、農水業、地域コミュニティを重点戦略分野としてピックアップし、実現するためのICT産業の育成、基盤強化、人材強化など、目的から手段へとブレークダウンされた内容となっている。他方、内容的に大変難しく、国民にいかにわかりやすく説明するかについて、引き続き考えていく必要がある。
・ PDCAをどのようにフォローしていくかが重要となる。当懇談会でまとめたものを提出すると同時に、例えば経団連やIT戦略本部で打ち出されているとおり、様々な分野で似たような議論をしていることから、それらと並行してフォローしていく必要があるのではないか。
・ 読みたくなる気をどのように起こさせるかは、読んで得だと思わせるタイトルが重要ではないか。例えば、若者の希望、高齢者の安心、すなわち、自分と関連しているようなタイトルが良いのではないか。
・ タイトルを若者の希望や、高齢者の安心とすると、自分に関係していることと認識して読まれる方も多いと思うので、タイトルを変えるということに賛成。
・ 日本のデジタルテレビ方式を南アメリカ諸国に対して導入提案しているように、放送・通信技術を使った遠隔医療や遠隔教育などの、総合的な途上国支援の仕組み作りについて、技術力と事業開発を合わせ持った人材、特に若い人たちに推進させることを目標とすることで、当懇談会のビジョンがより生きるのではないか。
・ 若い方々に希望を、高齢者に安心をというような言葉がそのまま多くの人に伝われば、報告書を読んでみようかという気持ちになり得るのではないか。
・ ICTのビジョンを構築することにおいて、まず産学官を変える必要がある。若者に希望を、高齢者に安心をというのは最終的な目的ではあるが、それをタイトルにするというのはあまりにも嘘っぽい。対象は高齢者、若者の選択行動、政治、産学官の活動であるので、ICTビジョンはICTがどのように変わっていくべきなのかという基本方向を指し示すものであり、それが若者の希望につながるということを大見え切るということではない。

(2) 本日の議論を踏まえた最終的な取りまとめについては、岡座長に一任されることで了承された。

(3) 岡座長より「報告書」が鳩山総務大臣に手交された。続いて、鳩山総務大臣より閉会に際して挨拶があった。

(4) 岡座長より、「ICTビジョン懇談会」閉会の挨拶があり、閉会。

以上

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