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人材力活性化研究会(第1回)議事概要

日時

平成22年6月9日 17:00〜19:00

場所

総務省10階 共用会議室2

出席者(敬称略)

(1)構成員
飯盛 義徳(座長)、小澤 浩子、舘  逸志、谷  和樹、富永 一夫、豊重 哲郎、沼尾 波子、
前神 有里、松原 朋子、宮城 治男
(2)事務局
椎川地域力創造審議官、宮田人材力活性化・連携交流室長

議事概要

(各構成員の取組の紹介)

【飯盛座長】
  • 地域を元気にしていくために人づくりが重要であるので、どのような人をつくっていけばいいのかをこれから本格的に考えていかないといけない。現在、全国各地でいろいろな取組が成果を上げている。私自身も大学生を連れて、問題発見解決型の地域活性化の合宿をやっている。
  • いろいろな地域において、伝統産業を含め地域の産業が元気になることによって、日本の活路は見出していけるのではないか。
  • 全国の知を集めて、地域を元気にするための人材、リーダーはもちろん、リーダーと一緒に活動する人材を育んでいくには、どのようなプラットホームが必要なのかを議論して、一定の方向性を見出していくことがこの研究会の目的だと心得ている。
【小澤構成員】
  • 消防団は、男女を問わずあらゆる年代、職種、立場の人が集まって、自らが関わる地域を守るという目的で活動している。
  • 後継者がなかなか育たないのが大きな課題。この課題克服のために、今年度、東京消防庁管内の消防団では、防災に関わることのできる子どもたちを育てる活動を展開していくことになった。
  • 消防団も特に予防の分野で、地域の中心的な存在として活動しており、いろいろなグループと連携していけるのではないか。
【舘構成員】
  • 平成17年に地域再生法が成立し、その後、地域活性化や地域再生をしていくためには人づくりが大事だということで、例えばNPO活動に携わる人材育成事業に対する支援制度が創設されたりしたことが、現在のいろいろな人づくりにつながっている。
  • 地域における人づくりにおいては、地方の大学が大きな役割を果たせるのではないかと考えている。例えば北陸先端大学では、平成18年に地域再生システム論の講座を開講し、総論としての地域活性化のための政策論と各分野論(地域産業づくり、まちづくり、地域の健康等)の講義と先行事例研究を行った。そこでの研究がその後、様々なプログラムに発展したが、同様の取組が、全国約30大学に広がってきているという状況もある。
【谷構成員】
  • TOSSは、全国に約700のサークルがあり、約1万人の先生が参加している民間の教育研究団体。あらゆる分野・教科、あらゆる子どもを対象としている。
  • 観光立国推進基本法を契機に観光立国教育を進め、全自治体の観光に関するテキストを作成し、各地域で先生方に授業していただき、全国大会で情報交換を行った。今回、まちづくりにおいて、同じような取組を行う予定であり、志の高い先生が子どもたちと一緒に活動すれば、非常に高い効果が期待できるのではないかと考えている。
【富永構成員】
  • 人材育成の中で、一番切実なのは後継者の育成。企業のように組織力があれば、だれかにバトンタッチができるが、地域においては困難。この課題を解決するために、民間企業の協力を得て、「「学び」と「しごと」のサポートセンター」をオープンしたが、これをいかに使っていくかということがこれからのテーマ。
【豊重構成員】
  • 集落を活性化するためには、まず行政に頼らず自らでできることは自らでやる人材を育成すること、しっかりとした組織と数字で集落民に説得させること、そしてキーワードを持つことが重要。現在活動を行っている人がきちんとした成果を出し、後ろ姿を見せれば、後継者が育つ。
  • 活動を初めて10年目で、全国から参加者を募集してリーダー育成をスタート。産・官・学・地域という四者連携での国づくりの入り口がリーダー養成。
【沼尾構成員】
  • 地域活性化センターで行っている地域リーダー養成塾(平成2年度〜)は、市町村職員を中心に毎年40人が集まって毎月2泊3日で東京で開催している。座学で勉強するだけではなく、ゼミナール形式で研修を行う。これは、地域で抱える政策課題についてOBも含めて情報交換しあう関係をつくる仕組みとして、大きく機能している。
  • 一方、本務の大学では、閉じたコミュニケーションの中で生活してきた大学生が、好奇心を持っていろいろな地域にかかわってくシステムをどうつくるかが、非常に大きな課題。
  • 地域に人が入ったときにその地域の空気に癒されるとか、そこから元気をもらって何かを学び合う、連携し合うことができるという可能性を地域はもっている。地域の空気をどう生かすかという観点からも人材力を議論していきたい。
【前神構成員】
  • 個人の地域活動として虐待問題を解決する活動を行っている。虐待には、いろいろな種類があるが、行政では所管が分かれていて、横のつながりが弱い。虐待は、被害者、加害者双方の抱える問題が複雑にかかわっているが、その人たち自身が希望を感じ取れたとき、そこから変わろうという力が見えてくるので、地域の中に希望が持てるということが重要ではないか。活動では、様々な職種の人が、それぞれの所属だけでできないことを持ち寄って、それをいろいろな立場から解決方法を提案し、考えている。
  • 行政と住民とのコミュニケーションの橋渡しも行っている。また、学会等を通して仕事や地域で発見した課題等を広く問題提起をする活動も行っている。
【松原構成員】
  • マイクロソフトでは地域活性化協働プログラムとして、地域でのITリーダーの育成を行っている。住民の方々に地域活性化に対する意識や地域に参加するというマインドを持っていただくためには、やはりその地域のリーダーの方々に活躍していただいて、地域のつながりを活かしていくのがカギになるということで始めた。その際、自治体などその地域をよく知っている方々に、だれがリーダーの候補になり得るかということを慎重に相談しながらリーダーの選定をしていくことが大事。リーダーの方々のネットワークづくりにもITを活用するなど、仕組みづくりに主眼を置いてプログラムを展開している。
【宮城構成員】
  • 人材育成にもともと関心があり、特にリーダーとなるような人材を育てていくということを考えて、東京中心にインターンシップの取組をしてきた。現在は東京よりも地方のほうが人材育成力が高いと考えているので、人材育成偏差値の高い地方へ人材育成の動きを広げていっている。
  • 学ぶ理由や挑戦する理由を見出す機会が必要なので、手法としてのインターンシップという形をとっており、若者たちは地域でのインターンシップ等を通じながら、地域の人たちと関係性を築き上げていく中で成長していく。したがって豊かな関係性をいかに多くの地域でつくっていくかということを念頭に置いて活動している。
  • 地域で人材育成の環境をプロデュースしていく存在が必要だが、自治体の行政職員や消防団員など、地域に根ざしてハブとなり得るような方々が、そのような存在になり得る。また、大学の先生等いろいろな方が協力してチームとして人材育成の環境をつくることも可能ではないかと考えている。

(事例発表:富永構成員「地域づくりにおけるNPOの役割」)

  • 地域経営では、固定費として多くの人を抱え込むことはできないので、プロジェクト単位別に協働プロジェクトチームをどうつくっていくのかということが重要。
  • 地域活動を楽しくわかりやすいものにするためには、ネーミングも大事。地域活動はいわば商品開発。そのためにマーケティング能力が必要であり、それを地域に受けとめてもらうためにセールスのセンスも必要。
  • 活動拠点は多摩ニュータウンの八王子市域。新しい町なので、地域住民同士がお互いを知らない。しかし、そこにも「人」と「物」と「金(かね)」と「情報」がある。それをいかに融合させるかによっていろいろなことがプロデュースできる。
  • 事務局は、企業で言えば経営陣だが、地域経営においては上から主導するのではなく、下からサポート型のリーダーシップを取ることが重要。
  • 住民の情報共有の手段としては、早いうちから経費のかからない電子メールやホームページを採用。そのために、民間企業のADSL普及に協力し、協力費としてNPOに収入を得た。その他、これまでに住宅メンテナンスや住宅の建設、総菜屋の設立、研究所の運営等を行ってきた。継続的に収入が得られないとスタッフの生活が維持できないので、現在は、長池公園の指定管理者を受けている。
  • 地域経営は全員野球。住民の一人一人が人材で、それを活性化することが重要。物が言える人だけが人材ではなく、一人一人にそれぞれの役割とやりがいがある。
  • 財源については、八王子市から協定金が大きい。一方で、行政資金だけに頼るのではなく、寄贈品や自動販売機のコミッション、受託研修費用も重要な収入源。
  • ボランティアの上手な活用の仕方についてはノウハウがあるが、現在はまだ充分共有できていない。
  • いろいろな人との協働を考えるためには、事務局が必要。事務局には多彩な人材を集める必要がある。能力だけがバラエティーに富んでいればいいのではなく、いろいろな立場の人がいなければいけない。また、我々は「表土の事務局」であり、他のボランティア活動や里山活動を行う人には、自立した「お花畑事務局」を作り、極力、人、物、金、情報をそこで完結させて活動するように言っている。
  • 事務局を地域住民が役割分担して行い、行政はそれを法律を基本として支えればいいのではないか。また、企業等は特に専門的な分野で時と場合に応じて連携する存在ではないか。
  • NPOでこれまで培ってきた地域経営のノウハウを全部公開情報にし、人材育成を行うために、6月1日に「「学び」と「しごと」のサポートセンター」として「エイビットスクエア」をオープンした。いろいろな仕事をしながら勉強してスキルアップしていく場。地域中小事業者の社員教育やシニア世代の地域人材を開発する「はちおうじ志民塾」の場として活用していく。また、地域人向け社会人大学院の誘致にも検討している。
  • 地域は宝の山。遊休の物やお金が存在するものの、行政だけでは効率的に使えない。一方で、NPOの側には人と知恵、情報がある。しかし両者が必ずしもマッチングしていない。長池公園の事例は、公共財産である公園と、税金というお金と、我々の地域人脈と知恵が融合したら、こんなふうに活性化したという1つの事例。

(事例発表:豊重構成員「地域再生〜行政に頼らない感動の地域づくり〜」)

  • やねだんでは人口が減少し、活力源の農業経営者の高齢化が進み、後継者もおらず、休耕地が増えて疲弊していた。
  • まず「慌てるな、急ぐな、目的に近道するな」というテーマを自分で掲げて、10年間で地域再生を行うつもりで取組を始めた。
  • 大切な3つの柱は治安と義務教育と自主財源。これらを確かなものにして、地域再生に成功すればこれらを国にも提言したいと考えた。
  • 取組を初めて10年目にリーダー養成(ふるさと創生塾)を始めた。楽しみながら集落民が認めるリーダーを育成するのが人づくりの基本。また、全国から参加者が集まることは、集落の誇りとなる。
  • 反目者が必ず1%はいる。彼らを地域再生に巻き込んでいくために、まず感動を与えて、能力を引き出し、出番を用意して、最終的には役員になるまで育てた。その結果、取組は15年目の今まで続いている。皆に出番が有り、補欠はいないというやり方がよかった。
  • 組織の体制を整えて、独立採算性のシステムをつくったら、行政に頼らず自治ができる。
  • やねだんのやり方はどこでもできる。「不」の項目に優先順位をつけて自主財源を使っているだけ。不満についてアンケートを取ったところ、家畜の排便の悪臭に対する不満が多かった。そこで、土着菌を利用して分解し、それを無農薬無化学肥料に土づくりの自然農法に利用した結果、現在では問題が解決された。
  • 取組が軌道に乗ってくると、機運が盛り上がって、さらに取組が進む。そのためにはビジネスの恩恵を還元することが必要。
  • 地域づくりの基本は「文化向上」でキーワードは「子ども」。そこで、集落の財源で古民家を改修して芸術家を招へいし、子どもが文化を学ぶ場を作ると同時に交流人口の増加も狙った。その結果、地域環境の魅力が高まって交流人口が増加し(現在年間約5,000人)、集落の人口増加にもつながった。現在は、やねだんのこどもたちにだけではなく、近隣の中学校の生徒にも芸術を学ぶ機会を提供している。
  • 今年のやねだんのテーマは地域医療。元気な地域は何かにつけて話題があって楽しい。
  • 視察を受け入れる際も、主婦が昼食を作ったり、住民のカメラマンが写真を取ったり、効果的に土産物を販売したりすることで、集落の所得が増える工夫をしている。
  • 地域づくりにおいて大切なことは、原点を忘れないこと、組織で物を言うこと、数字で結果を示すこと、そして会話。500人程度の人口なら、みんなのフルネームを覚えることができる。名前を呼んで会話をすることが大切。

(主な意見)

  • 特産品をインターネットで販売した際などに、現在は売り上げの一部を仲介業者に手数料として支払っているが、行政等に寄付できる仕組みがあれば、地域貢献ができてよいのではないか。
  • やねだんとフュージョン長池は、ほとんどコンセプトが一緒。しかし、人口規模は対極にある。どちらも一人のリーダーシップによって地域活性化が達成されているが、このような事例について研究し、そのノウハウ等をカリキュラムにしていけばよいのではないか。
  • 芸術家が地域活動に関わると地域は盛り上がる。
  • 視察を受け入れる際には、行政も経済効果を数字でも評価することが重要。また、一つの地域に訪問しただけで終わるのではなく、近隣地域とネットワークを作って圏域的に訪問してもらう努力が必要ではないか。
  • 人、土地等地域ごとに持てるものを活性化することが地域活性化につながる。
  • 何もつながりがないところからつながりをつくっていく、もしくは狭いつながりの中からまた新しい人たちを受け入れてつながりをつくっていくというような、つながりをつくっていく技術というものをどうやって生かすのかということを研究していく必要がある。
※ 次回の研究会の開催については、7月中を予定し、日程調整を行うこととされた。

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