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政策評価・独立行政法人評価委員会 独立行政法人評価分科会委員懇談会(平成26年9月29日)議事録

日時

平成26年9月29日(月)13時30分から15時30分まで

場所

中央合同庁舎第2号館8階 第1特別会議室

出席者

(委員)
宮内忍独立行政法人評価分科会長、有信睦弘、出雲明子、岡本義朗、木村琢麿、齋藤真哉、瀬川浩司、柳澤義一の各臨時委員
(総務省行政管理局)
上村進局長、讃岐建官房審議官、竹中一人管理官、坂井憲一郎企画官、平野誠調査官

議題

  1. 見直し当初案に関する各府省ヒアリング(経済産業省)
  2. その他

配布資料

資料1−1PDF 産業技術総合研究所説明資料
資料1−2PDF 日本貿易振興機構説明資料
資料2PDF 経済産業省所管法人の見直し当初案整理表等

会議経過

(宮内分科会長) それでは、少々時間前でございますが全員集まりましたので進めたいと思います。お集まりいただきましてありがとうございます。ただいまから、独立行政法人評価分科会を開催したいと思うのですが、残念ながら本日は会議の定足数が11名のところ8名のご出席予定と聞いておりますので、懇談会という形で議事を進めることにしたいと思います。
 それでは審議に入ります。中期目標期間終了時における平成26年度の事務事業の見直しについて、3回に分けまして今年度の見直し対象となっている12法人の見直し当初案に関する各府省ヒアリングを行っているところでございます。
 本日は、経済産業省所管2法人の見直し当初案に関するヒアリングを行います。それでは経済産業省所管の産業技術総合研究所につきまして、ヒアリングを行います。本日は、経済産業省の安永審議官をはじめ、ご担当の皆様にお越しいただいております。産業技術総合研究所の見直し当初案の主要なポイントにつきましてご説明をいただき、その後質疑応答を行いたいと思います。
 全体の時間の関係もありますので、15分程度でご説明をお願いいたします。
(安永審議官) よろしくお願いいたします。経済産業省の産業技術環境局の審議官をしております安永でございます。お手元に幾つかの資料がございます。資料1−1、独立行政法人産業技術総合研究所の中期目標期間終了時における、組織業務全般の見直しについての当初案概要、横長の紙、それからそのホチキス留めで後ろのほうに縦長で、当初案というものがございます。これに基づきましてご説明をさせていただきますが、説明の都合上絵を使ったほうがよろしいかと思いますので、お手元に付けております、資料番号付けてなくて恐縮ですが、革新的技術シーズを迅速に事業化へとつなぐ橋渡しシステムの抜本強化、この横長紙を使わせていただきたいと思います。
 それではご説明を申し上げます。私ども、このイノベーション、それからなかんずく技術が先導するイノベーションというものを政策的に推進していくに当たり、やはり革新的技術を作るというのは当然非常に重要なことだと思っております。もちろん日本の状況を見ますと、技術の側面で言いますと、例えばサイエンスの分野でいきますと、先端的な研究の非常に優れた学術論文の数が減っているとか、あるいは特に日本人で博士課程の大学院に進む優れた学生の数が減っている、こういう問題がございます。
 また実業界を見ましても、産業の中で、かつては非常に日本の産業界強くて、企業の研究開発部門も強かったわけですが、最近ですと企業の研究開発費の9割以上がほとんど向こう3年ぐらいの短期的な研究開発、これは言ってみれば商品開発ですね。次のボーナス期にどんな製品を出すかと、こういった製品のモデルチェンジのための開発に相当のリソースが使われていて、いわゆる中長期の研究開発となると、これは国が相当の責任を持ってやらなきゃいけないと、こういう状況でございます。
 言ってみれば、研究開発の一番上流のサイエンスに近い側も、それから製品を作る企業の側も、大きな課題を抱えているということだと思います。
 こうした中で、産総研につきましては、この横長の資料1−1にございますけれども、一番上の橋渡し機能強化というところをご覧いただきたいと思います。私が今日お話しするのはもうこの1点でございます、ほぼ。橋渡しというのは先ほど申し上げました、非常に先端的なサイエンス、学術的知見で生まれる新技術、これをいかに商売もんである新製品、産業界が作る新製品につなげていくか、その中間段階を言っております。
 まさしく、その中間段階のところが、日本はかつてかなりは大企業の中央研究所、我々の世界ではコーポレートラボと呼んでおりますが、こういったところがかなり力を持って研究開発を進めていた者が、企業の研究開発も短期化している。また、革新的シーズを作るための学術研究のところも、人を含めて弱くなっている。また企業は、まさしく四半期ごと、あるいは毎日の株価の変動に敏感でなければいけないので、どうしても短期的な投資に偏りがちである。こういうところでこの真ん中のところの橋渡しをとにかく強化すると、こういうのが私たち経済産業省としましての産業技術の最大のミッションであると考えております。
 まさにここに書いてございますように、産業構造審議会の研究開発評価小委員会というのを今年の1月から5月まで、5回ほど開催をいたしまして、その中の中間取りまとめで、特に産総研はこの橋渡し機能、革新的な技術シーズを事業化に迅速につないでいくと。この橋渡し機能の強化を図るべきだと。そしてそれが産総研の次の第4期の中期目標期間の基本方針になるべきであると、こういう方針を出しております。
 もちろん産総研は、いわゆるエレクトロニクス、新材料、それからライフサイエンス、環境、こういった分野の産業技術の研究をやるとともに、いわゆる知的基盤として日本全国の地質の状況を調べて、地質図を作る。それから計量標準、まさしく物を正しく測るというところの業務をやっております。これらも幅広い意味では、例えば地質調査の部分は安全な建物を作る、安全なインフラを作るという意味で、また計量標準というのはまさしくナノテクなどが産業の最前線になってくる中で、正確にものを計るという意味で非常に大事な分野でございますが、いずれにせよ、こういう知的基盤の整備も含めてきちんとやっていこうということでございます。
 それから1−1の上の四角の3つ目に書いてございますが、先ほど申し上げましたように博士課程の学生ですね。この学生というものが非常に私ども、今後の日本のイノベーションのための人材として不可欠と思っております。今は、ともするとこの中には理工系の先生方もいらっしゃいますから非常に失礼千万なんですけれども、博士課程にいくと高学歴ワーキングプアになってしまうというような懸念を実際にお持ちの学生さんが非常に多うございます。
 例えば産総研におきましては、既に優れた学生さんにつきましては、一定の給料を出して、産総研のリサーチアシスタントとして雇用をして生活の心配ないと、その代わり産総研の中で実験も思いきりやってよいと。こういう形で現場経験を踏ませながら博士課程、博士号を大学でとっていただく。こういうサポートをすることによって、非常に実践的で高度な博士人材を作ろうということも始めております。これをぜひ強化してまいりたいと思います。
 それでは次に、この1−1、ホチキス留めの紙を3枚ほどおめくりいただきましてこの縦長の紙、これ今私が申し上げつつございます、この見直しの当初案の説明でございます。各論がございます。下に6ページと書いてある2ポツ、業務全般の見直し、これにつきましてご説明をしたいと思います。
 恐れ入りますがこれと、これを例えば左側に置いていただいて右側にこの横長の革新的技術シーズを迅速に事業化へと繋ぐ「橋渡し」システムの抜本強化、この紙をご覧いただきたいと思います。
 先ほど申し上げましたように、言ってみれば本当に純粋な理論的な基礎研究というものは、大学ないしは基礎研究を担う公的研究機関、例えば理研などですね、こういったものでやっておられると思います。産総研はこの左から右に1から9までの段階書いております。これはアメリカなどで技術マネジメントやる時に通常使われる、テクノロジーレディネスレベルと、技術の発展段階に応じた記述でございますけれども、2の辺りから大体やっておるところでございます。
 2の辺りを我々の世界では目的基礎研究と呼んでおります。純粋な基礎研究との違いは、純粋は基礎研究は、もう本当に好奇心オリエンテッド、curiosity drivenと呼んでおりますが、これなぜだろう、どんなことができると面白いのかな、とこういうことをやるわけですが、産総研の研究者は、こういう現象を突きつめていくと、将来はこういう形で産業に使えるに違いない。こういう仮説を必ず持っております。この部分を研究としてはアーリーステージなんですが、目的基礎研究と呼んでおります。
 我々が今回、大きく産総研を改革したいのは、産総研は非常にたくさんの目的基礎研究を今までやってきております。その中で事業化につながったものもたくさんございます。今詳しく述べませんが、東レがボーイング787の機体に乗っけている材料でございます炭素繊維、あれはまさしく50年前に産総研の前身であります工業技術院の大阪の研究所で作られた技術でございます。
 この時立派だったのは、技術を作っただけではなくて、その研究者はその当時の日本の繊維メーカー26社に技術移転を行いました。そしてその中で頑張られたのが東レと、こういうことでございます。まさしく目的基礎研究をやっていいネタができたのならば、それを確実に右側の産業技術につないでくれと、実用化につなげてくれと、これが産総研の橋渡しミッションでございます。
 具体的には、目的基礎研究をやっただけではまだものになりませんから、これを企業の将来ニーズを予測した研究テーマ設定のもとで、まさしく具体的に、この技術はどういう形で使うとあなたの製品に使えますかということをやります。このためにはマーケティング機能の強化をいたします。
 また、だんだん右のほうに行きますと、この上のTRLの尺度の中で、研究室のレベルを終え、想定使用環境でのテストが照準に入る辺りで、企業に受け渡していくと。これは企業から人に来てもらって受け渡す場合もありますし、企業に行ってやる場合もあると。そのほか、企業からこれをやってくださいよと、これを産業に使えるように研究してくださいよというふうな形で受託金を得て研究をするという形もあると。こういった形で産業界に確実に橋渡しをしていきます。
 また橋渡しをする際の相手方は大企業だけではありません。日本、まさしく大企業は非常に大きな研究力、開発力、それから商品の生産力、ディストリビューション力を持っておりますけれども、やはり先端的な研究を実現していくためにはニッチなマーケットというのを開拓する必要があります。そのためには中小・中堅企業、それからベンチャー企業、場合によっては今でも既に110社ほどありますが、産総研発ベンチャー、こういったものをどんどん作っていく。こういった形によって橋渡しをしていこうと思っております。
 こういったことが6ページから7ページにかけて書いてあります。その中で非常に大事なことは、先ほども申し上げました企業のニーズをきちんと把握する、マーケティングであります。そのためには企業との、企業の研究現場、それから製品を生産している事業現場との意見交換も必要ですし、そういうマーケティングができる人材を新たに雇う必要があります。
 また、7ページの(3)に書いてございますけれども、まさしく今までに研究した成果でできあがった基礎技術は、これを確実に橋渡しをしていく。それと同時に次の世代の橋渡しのネタを見付けていくためにはやはり目的基礎研究、これちゃんとやらないといけません。ある程度の仮説を持ちつつも、非常にリスクの高い研究をやっていかないといけない。これが大事なところであります。
 もう1つ、先ほど大学院生のお話をいたしましたが、まさに大学などで次の世代の基礎研究はやられているわけです。こういった新しい知見をどんどん取り入れていくために、我々クロスアポイント制度と呼んでおりますけれども、大学に所属しつつ産総研にも所属する。またその研究室の学生さんは、大学院生は産総研にも来てもらって実験をやっていただく。こういった形で研究コミュニティの流動性を高めようと思うんです。
 日本では大学に行ったら大学の先生だけ、産総研に行ったら一生産総研、企業の研究者だったら一生企業と、こういうものが多いと言われております。こういったものをぜひ流動化をさせてイノベーションを促進したいと思います。
 では最後に、じゃ産総研ってそういうことを今まで一度もやっていなかったのかと言われると、それはそうではありません。もう1枚横紙で、橋渡し機能の例という横長の絵がございます。これはあるスピントロニクスという技術の例でございます。ちょっと専門的になりますが、スピントロニクスというのは、言ってみれば物質の中の電子が、電子は普通原子核を回っているわけですが、これは実は左回りと右回りと言いますか、スピンをしているんですね。こういうふうにねじれておる。このねじれの方向を変えることによって情報の1と0を記憶できる、つまりメモリという製品にできるという性格があるわけですが。これは実は学術的には相当早くから研究されていました。
 1980年代から、学術的にはいろいろな大学の先生、世界で研究をされておったんですけれども、実際にものを作ることは誰もできなかった。この図のレベル3と4の間に、赤字で産総研の湯浅が酸化マグネシウム結晶素子で、巨大TMR効果を実現とあります。これはまさに産総研のある研究者が、理論的には酸化マグネシウムという材料で、このスピントロニクスのある効果ができると言われておったのを誰もできなかったんですね。それを始めて実現したと。そうなったらですね、上のほうは実はコンピュータに入っているハードディスクの磁気ヘッドの製造装置を作るメーカーですが、そこと共同研究をやって、まさに今世界のハードディスクに搭載されているヘッドの製造装置は、日本製の産総研の技術を使ったものにほぼ100%なっている。
 もう1つはここに書いてございますけれども、MRAMという次世代のメモリでございます。これは東芝さんと名前書いてございますけれども、東芝さんが実際に東芝の技術とあわせて、産総研の技術と一緒にして実際のデバイスを作る研究をやられて、これ今年の末か来年の初めにはもうサンプルの出荷が始まるということでございます。更に先の研究も含めてやっております。
 このように今までは、この目的基礎段階の研究を製品化に結び付けるための努力もやっておりますが、我々の改革は、産総研には2300人のプロパー研究者がおります。こういった人たちが皆こういうことを心がけて橋渡しをやる、あるいは将来の橋渡しにつながる目的基礎研究をやると、こういうことをやるために改革をやるというのが見直しの基本的方針でございます。以上でございます。どうもありがとうございます。
(宮内分科会長) ありがとうございました。それではただいまご説明いただきました、産業技術総合研究所の見直し当初案につきまして、ご質問などございましたら、どなたからでもご発言願います。
(岡本臨時委員) どうもありがとうございました。また、視察に労をとっていただきましてどうもありがとうございました。
 今、審議官が非常にうまく説明されましたので、経産省らしいプレゼンテーションだなと拝聴しておったんですけれども、ちょっと確認をさせていただきたいのですが。趣旨はよくわかりました、今日のプレゼンテーション、趣旨はわかったんですけれども、実際に産総研が今審議官がご説明されたような方向で変わられるかどうかっていうのが我々の一番の関心事項でありますし、見直しについての審議をするというのはそこにポイントがあるかと思います。
 ちょっと意地悪な質問になるかもしれませんが、今審議官がご説明された目的基礎研究から始まってマーケティングを強化して企業との受託研究、大企業を含めてやっていかれるという中で、今まで産総研もやっておられたというご説明なんですが、今回の特にこの橋渡し機能というのは、言葉はこういうふうに閣議決定から出てきているのかもしれない。従来からやっておられることだと思っておるんですね、私は。ここで大きな組織の変更というのがなされていらっしゃるんですか、その具体的にこういう方針、戦略のもとで、どのように戦略が実際の運営において産総研の中に、何て言いましょうか、地べたをちゃんと踏んでいくような橋になっていくかどうかという、具体的な組織の変更というようなところのご説明をできればお願いしたいと思います。
(安永審議官) 先ほどの資料1−1の縦長の部分になりますが、7ページの(2)の(3)、真ん中辺りに書いてございます。橋渡し研究に携わる研究者のインセンティブ付与、個々のところでございます。
 まさしくご指摘をいただいたように、やる人はやってるじゃないかと、何が変わるんだと。橋渡しをやらせるために何をどう変えるのかということでございますが、最大のポイントは、この研究者のインセンティブ付与の形を変えるということでございます。
 いわゆる産総研の研究者は、営利機関の研究者ではありませんから、彼らの成果を図る物差しというのは、今までいわゆる学術論文ですね、学会に出して査読をして、それをパスすると認められる。いわゆる学術論文の本数ともう1つは特許でございます。ところが、これ先ほどの横長の紙をご覧いただきますと、目的基礎研究のところでは論文を書けるんですね。それからそれを少し応用にしてみようという、このテクノロジーレディネスレベルの3ぐらいになりますと、これでちょっとやってみるかと。やれればこれ特許書けるわけです。
 ところがより右側をやりますと、論文や特許がだんだん書けなくなってきます。特にレベル5、6、7ぐらいの、企業とがっぷり四つに組むところでは、論文をかけるようなアーリーステージ、原理原則的な部分の研究ではなくなってしまうわけですね。実際に物を作らないといけない。
 加えて、場合によっては特許を出願することも、特にプロセス関係なんかですと、これは企業はやめてくれと言うわけですね、共同でやってる。それをやると企業秘密が漏れちゃうと。となると、今までの研究者の評価のよりどころだった論文も特許も書けない、この橋渡しを研究を必死にやると。我々はそこに対してきちんとしたインセンティブを、今まで全く付与してなかったかと言うとそれはそうではないというふうに現場で言うんですけれども、我々はまさしく論文、特許を書かなくても、右側をやっていたら例えば研究費、あるいは処遇、そういった形でインセンティブを高めるための工夫をすると、これが1点でございます。
 それからもう1つは、まさに企業との共同研究、橋渡し研究のやり方でございます。先ほどやっている部分あるというふうに申し上げましたけれども、例えばある技術で、ある産総研発の技術をマスターをするために、きちんと産業技術をものづくりにつなげるため、ある企業は30数人、2年間産総研に派遣をしてこられた。逆に産総研からも1人2年間派遣をしたんですが、こういった人事交流をやらないといけない。そしてまさしく交流をやることによって、企業のものづくりの現場の技術まで高めていくということをしていきます。
 ですから今までですと、産総研の共同研究というのは、やはり少し産業界からすると若干敷居が高いですねと、あるいは実際にものを作るところのレベルまではなかなか、自分がやらなきゃいけないですねと、こういうことが多かったわけですが、まさしく人の相互交流も含めてやるという形に体制を改めようと思います。
(岡本臨時委員) ありがとうございました。
(宮内分科会長) よろしいですか。
(瀬川臨時委員) 大変わかりやすいご説明ありがとうございました。恐らく安永審議官、この話は最もよくわかっておられる方だと思うので、非の打ち所のないご説明だったかとは思うんですが、あえて2点ほどご質問させていただきたいと思います。
 1点は、安永審議官自身が本当に産総研の理事長であって、完全に所を掌握をして引っ張っていける体制があればいいんですけれども、なかなかやはり産総研、独立した組織として、民間からの理事長も来て、その中でそれぞれの部署が独立に動いているということがあります。
 先ほど岡本委員のほうからお話があったのは、やはりそこら辺のガバナンスの体制をどのようにきちんと確立をしていくのかということが、実際にここに書かれている目標を達成するのに非常に重要じゃないかなと思います。そこの点についてはどのようにお考えでしょうか。
(安永審議官) 瀬川先生から非常に核心をついたご指摘をいただきました。ありがとうございます。私実は、私とここに座っております産総研室長の徳増室長、この二人で筑波に月何回も行きまして、それから地方にもセンターがございますので、地方にも何回も伺っているところでございます。
 そこで感じますのはまさにご指摘の点でございまして、1つは、これはやはりある意味で研究者というのは今までやってきたことを大事にするし、なかなか今までやってこなかったことに対して新しく取り組むということは少し怖いものであります。私ども、産業技術環境局と産総研というのは一体なんですが、もちろん緊張関係ございます。私たちが現場と遊離した政策を押し付けると、これはまさしく現場が動かないということだと思います。
 そういった意味ではガバナンス体制の構築は非常に重要であると思っております。まさしく、これは個々の分野によってやり方が違います。ただ、今までですと我々監督官庁として産総研に対しては、おいこうやってくれよということを言いがちだったと思いますし、ある意味で理事長も高名な方に来ていただいてお任せをしていたと、任せきりだったという側面あると思います。私たちそれを変えたいと思っていまして、まさしく行政の問題として、例えばここにいい技術があるねと、それをどういう企業に橋渡ししたらいいの。これ、研究者だけでできないんですね。これは我々の仕事のしどころだと思います。まさしく我々とNEDOの人間も、NEDOは研究開発のプロジェクトにお金を出す機関ですから、どういったところに橋渡しをすればいいのか、どういうやり方でやればいいのかを含めて現場でやるしかないと思っております。
 そういう意味では、ガバナンスの中で、管理監督だけではなく、まさしく企業との間を取り持つという仕事を、産業技術環境局が仕組みとして作っていくということを今やらんとしているところでございます。
(瀬川臨時委員) ありがとうございます。今すぐにどんな体制かっていうのはなかなか難しいかと思うんですけれども、実際にそういう戦略を練る組織がきちんと産総研の中にできあがってくるのかというのを注視しておりますので、ぜひご尽力いただければと思います。
 2つ目の質問なんですけれども、科学技術イノベーション会議のほうでも、やはり産総研の非常に重要なミッションとして橋渡し研究があげられています。
これは確かに非常に重要で、今までどういった研究機関であっても、最も実は難しいところであったのがこの橋渡し機能であるわけですね。もちろんそういうところを、積極的に果敢に取り組むというのは非常に大事なことで、我々もサポートはしたいと思っているんですけれども、一方独立行政法人の評価という観点では、非常に悩ましいことに、評価をやはりしないといけないと。
 その段階に当たって、いただいた資料の中で8ページの評価基準のところなんですけれども、獲得資金というのが1つのキーワードになってるかと思います。ただ、この点についてはいささか私異論がございまして、実はこういう外部資金の獲得、あるいは企業からの共同研究というのは、必ずしも橋渡しだけではなくて、企業ができない基礎の部分を例えば産総研にお願いをしたり、あるいは逆に応用にかなり近いところであっても、既に製品化されているものであっても場合によっては産総研に委託するということが出てくるかと思います。
 現状でも当然、企業からの獲得資金は産総研としてあるわけでして、その中の比率が今どれぐらいになっていて、将来的にどこまで伸ばす必要があるのか。それも必ずしも金額ベースがいいとは私思っておりません。
例えば件数ベースのことも考えないといけませんし、それから例えば企業の規模によってもかなり影響を受けるかと思います。大きな企業からの委託研究については、1件当たりの経費も大きくなりますし、一方中小の企業からすると、逆に金額ベースは少なくなるかもしれない。
 むしろ産総研としてサポートしなければならないのは、大きな中央研究所を持っているような大企業ではなくて、これから伸びる可能性がある中小のところにいかにサポートしていくのか、そういう面では資金ベースで評価するのは私いささか問題だなと思っていて、金額が少なくても、実際に実効的に有効に機能して、産総研がきちんと役に立ったという形のものが見える評価軸というのをお考えいただいたほうがいいのではないかと思います。
 獲得資金というのはどうしても企業、景気にも左右されます。つまり余剰資金がないと、産総研等に共同研究を申し込みたくても申し込めないということもあるかと思います。
 そうすると、外的要因によって、実際には産総研がいろいろ頑張ってやったことも、実際には獲得資金という数字の中では全く見えてこない可能性もあるので、この辺りは慎重に評価軸というのをいろいろお考えをいただいて提示をいただいたほうがいいんじゃないかと思います。
(安永審議官) ありがとうございます。私どもが現場でいろいろ議論している内容をお見通しなのではないかというふうに感じました。
 今、産総研、運営費交付金で600億円ぐらいいただいております。それから外部から、いろいろな形で大体二百数十億円いただいております。ただ二百数十億円の中では、例えば科研費で個人が文科省のJSPSからいただいてくるお金もありますし、あるいはNEDOから来てるものもあると。実は企業から純粋に共同研究ないしは受託研究でいただいているのは50億円程度でございます。
 これが多いのか少ないのかという評価は別にいたしまして、瀬川先生からご指摘のとおり、お金というのもいろいろあると。まさしく我々調べてみますと、橋渡しのためにお金を受託している部分もあることはあるんだけれども、例えば先生おっしゃったように、今結構いろいろな企業が中央研究所を縮小していると。そうすると、ものになるかどうかわからないけれども、ちょっとやってみたい味見研究がありますね。味見研究を産総研でやってくださいと、こういうのもありますし、まさしくかなり後ろのステージだけれどもどうしてもこの問題が解決しない、現場の問題なんだけど、これがどういうメカニズムで起きてどう解決すればいいのか、これを調べてくださいとこういう研究もございます。
 まさしくそういったものも、言ってみれば広い意味での橋渡しと位置付けて、我々は産業界と一緒にやっていきたいと思います。
 それからまさに相手方、これはご指摘のとおりでして、我々もいろいろ調べてみますと、例えば大企業ですと、新しい事業部門を作るという決断をするのは、世界でのマーケット規模が1000億以上、自社の売上げが100億以上でないといけないと。ところが中小企業ですと、数億で済むんですね。そうなりますとやっぱり我々は、新しいマーケットというのはやはりニッチから来るから、数億のマーケットを最初に立ち上げようと素早く動いていただける中小企業やベンチャーは、非常に大事なパートナーだと思っております。
 現実に産総研の現場でも、そういったところと共同研究をやっておりますし、そういったところがおっしゃるように、大体産総研と共同研究をやるにしても、100万円200万円のお金しか出てこないんですね。我々は産業のためにやるから、はい金ください、1000万円、あるいは1億円ということをやみくもに言っていたんではこの改革は逆効果だと思いますので、そこはまさしく中小企業の状況なども見ながらやっていきたいと思いますし、逆に中小企業と産総研が共同研究をやって新しいものを目指す時には、まさしくNEDOなんかも今までは大企業支援が多かったわけですが、もう少し中小、ベンチャー企業の比率を増やして、そういったコラボレーションを応援していくと。
 こういうところが大事であろうと思っておりますので、先生おっしゃったように、研究のフェーズ、それから相手方によって資金というものをどう考えるかというのは、考えていきたいと思います。
 ちなみに我々が1つの参考として、お手本というふうに考えております、ドイツのフラウンホーファー研究所では、三分の一が交付金、つまり目的を限定せずにいただける国のお金、それから三分の一が委託の形ですね、プロジェクトの形。そして三分の一はまさしく企業からいただくということになっておりまして、彼らも三分の一より受託研究費が増えるとかえって研究が曲がってしまうと、そういうことを注意をしているようでありますので、そういったところも参考にしながら取り組んでいこうと思っております。ありがとうございます。
(瀬川臨時委員) ありがとうございました。
(宮内分科会長) よろしいですか。
(瀬川臨時委員) はい、結構です。
(宮内分科会長) ほかにございますか。
(岡本臨時委員) 審議官すみません、1点だけ、おっしゃったことで気になった点だけ申し上げたいんですけれども、インセンティブの件なんですけど。研究者に対するインセンティブを変えるんだとおっしゃったんですかね。できるだけ後ろのほうにも研究者の目が向くようになさっていかれるということだったんですけど、私瀬川先生とか有信先生のように研究者じゃないものですから、本当のところわからないんですけど、研究者って変わるものなんですか、そういうところで。あるいは具体的にどういうふうにされていこうとされているかというのもお聞きしたいんですけれども。
(安永審議官) これは今から、というか今やりつつあるところなんですけれども。研究者が変わるのかどうかっていうのは、これはまさしくミッション設定の問題だと思うんですね。今なぜ、論文や特許を中心とした評価がなされているかと言うと、今まではそれしか評価指標がないと思われてたからなんです。
 産総研の本分を聞くと、いやそうじゃないと、企業と共同研究をやっているからこの人はちゃんとプロモートしていますよということは言うんですけれども、なぜかと言うと、これはちょっと赤裸々に申し上げます。
 産総研の研究者の定年は60才なんですね。今国立大学の定年65才なんです。そうすると産総研の研究者も基本的には60才から65才の間をどうやって生きるのかというのを考えないといけない。今までですと、大学の先生になりたいと。大学の先生の採用というのは、これは学術論文の、もちろん質はありますけれども本数が非常に多くなってきます。
 そうしますと、人生のある時期、橋渡し研究を、例えば1つの技術を橋渡しするのに例えば3年間一本も論文を書かなかったと。大学の先生にこういう方おられないわけです。そうすると産総研の人は、大学には行きづらくなっちゃうわけですね。もちろん3年なんかものともしないという立派な研究者はいます。たくさんいるんですけれども、一般的に言うと、研究者のためのインセンティブづくりのためには違った体系を作らないといけないんです。
 そのためには、1つは先ほども申し上げましたように、流動化を進めると。産総研にずっと閉じこもってるんじゃなくて、企業に行ってもいいじゃない。企業の中で活躍できたら企業の研究者になっていいじゃないと。もちろん大学に行ってもいいよ、逆もあっていいよと。こういうのを進めるために、先ほども申し上げたように、企業との共同研究ないしは受託研究のところのインセンティブもあげないと、いつまで経っても論文の数だけカウントして、大学の先生になりたいんですけどと、こういうカルチャーは変えられないんですよ。そこは私ども非常に今、苦労をしつつあるところでございます。
(宮内分科会長) ほかによろしいですか。
(岡本臨時委員) はい。
(齋藤臨時委員) 教えていただきたいところは、まさに評価、今の話題のところなんですけれども。外部資金、特に企業から得られる資金、これに重点化していって評価をするのだということでありますけれども、従来の論文の数であるとか、あるいはレファレンスの数であるとか、それから特許の申請等の獲得の数であるとかいったことも、これはあわせて評価基準の中には今後盛り込んでいかれるという、そういうことだと理解してよろしいですね。
(安永審議官) 結構です。というのは先ほど申し上げましたように、目的基礎研究を引き続きやるわけですから、この部分は主にやっぱり論文で評価をされますし、大体技術コンセプトの確認、3ぐらいのレベルになると、あるいは4ぐらいでもそうですかね。特許になりますので、これは特許として評価をされます。ただ右側の5、6、7の辺りは論文や特許以外の、先ほど申し上げたお金の面も含めて、企業とどう一緒にやるかというところのアクティビティで評価をすると。こういう混合体制でございます。ですから人によって比重が異なります。そういった形で考えております。
(齋藤臨時委員) わかりました。これはなかなか難しいということはわかっていながらのお願いではあるんですけれども、恐らくこちら、ポンチ絵でも出していただいたような橋渡し機能の例として、スピントロニクスの技術の実用化、やっぱり時間のかかるものですよね。今後はアウトカムのほうに力を入れて強化というふうなことではないのかなというふうに考えますと、実際の成果が挙がるのに結構時間がかかるので、長期的視野に基づいた評価の手法、評価の基準といったものについてもお考えいただいたほうが、橋渡しという観点からすれば、特に基礎的な研究、将来実用化につながるような基礎研究ということでございましたけれども、その評価にもつながるのかなと思いますので、ぜひともお考えいただければありがたいなというふうに思います。
(安永審議官) ありがとうございます、そのとおりだと思います。そのようにやってまいります。
(宮内分科会長) ほかにございますか。
(瀬川臨時委員) 1点よろしいですか。今の議論に少し関連して1つお話をさせていただきたいと思いますが、研究者個別の評価、これはもちろん今審議官おっしゃったように、新しい試みとしてエフォート率と、それからそれぞれの特許なり論文なり、あるいは共同研究なりの評価を組み合わせてやっていくという、この点については全く異存はないんです。むしろ、そこのきちんとしたものを提示をしていただければ、それは1つのモデルになるかもしれないのでぜひやっていただきたいと思うんですが、一方我々は、研究者個人を評価しているわけではなくて、法人の業務を評価する立場でございます。
 その点お考えいただいて、むしろ我々が評価しなければいけないのは、産総研ご自身がそれぞれの研究者をどのように評価をしてどういうふうにマネジメントをして、全体としての成果の最大化を目指していってるのかという、そちらのガバナンスの点を我々は評価するのであるというのを、ぜひご理解いただきたいと思います。
(安永審議官) ありがとうございます。これも日々悩んでおりまして、今日はお手元に、ご説明申し上げませんが、「ここにもあった産総研」というこのブローシャーですね。これをお示ししております。これらは、中身は産総研で開発された注目すべき技術ですが、どこまで実用化されているかということについては若干差がございます。しかしながらこれは、言ってみれば産総研のスター研究者の例でございます。
 我々、大事なのはまさしく、今ご指摘のあったように、個々のスターはこれはいいんです。しかし組織として国の研究所というのを考えた場合に、これは今議論中なんですが、ある意味で非常にいいシーズを開発した研究者がいるとすると、その人一人に橋渡しを任せるんじゃなくて、ちょっとチームでやろうよと。チームでやろうというのはきれいごとじゃなくて、恐らくその間個人が追究するテーマが少し時間的には減るわけですね。そういうこともやってでも、産業界に役立つ形にしようやというようなマネジメントをやらないといけないんだと思います。
 今まではそこら辺はかなり現場の裁量に委ねられていたと。それは現場の裁量は確かに大事なんですけれども、どういった形でせっかく得られたシーズを橋渡しするかというところについて、研究者をチームとして考えた場合のマネジメントの仕方、ガバナンスというのは今からは大きな課題だなと考えております。
(出雲臨時委員) よろしくお願いします。お聞きしていますと、研究所の方向性が大きく変化していく中で、お話をしていただいた橋渡し機能は、現状の研究所の役割としては、予算的にも受託研究の金額的にもある程度限定的なものなのかなという印象を受けたんですけれども。こういう研究所の方向性を大きく変えていく中で、チーム長という役割なのか、研究部門のディレクション機能のようなものによって変えていくということになるかと思うのですが、こうした人材は既にある程度いらっしゃると考えていいのでしょうか。それとも新しく何かしら育成するですとか採用されるというご予定なんでしょうか。
(安永審議官) 産総研は今、40近い、中にいわゆるセンターですとか研究部門を持っております。また地方にも8つ研究機関を持っているんですけれども、いずれにしましても、研究者としての流動性はそれなりにあるんです。例えば大学からこの研究者を迎えたい、あるいは海外の大学に行っておられた日本人の方、日本人じゃない方もおられるんですけれども、そういった形を招くというのはこれはやっております。
 ただし、おっしゃったように、これを産業技術に直結させるという意味においては、マネジメントのやり方というのは変えないといけない。それは必ずしも現状のセンター長や部門長がベストであって、1点非の打ちどころがないかというとそれはやっぱり違うんですね。皆さん、研究者としては立派なご業績をお持ちですけれども、それはやっぱり僕らも一緒になって、産業界に橋渡しをするというのはどういうことなのかというのを考えながら、それから実践をしていかないといけない、こういうことだと思います。
 恐らく額的には、先ほど600億円、全体で850億円の予算の中で50億円が産業界からのお金というふうに申し上げましたが、これはぜひ数倍にはしたいなと思ってますし、実力としてはそのぐらいあるんじゃないかなと思ってるんですね、実は。あんまりめちゃくちゃな、実現不可能な目標ではないと思っております。ただ、やるやり方は変えていかないと、今までの真似事じゃできないということだと思います。
(出雲臨時委員) と言いますと、例えば研究支援のあり方と言いますか、研究者以外の方の支援の体制についてはどうされるご予定なんでしょうか。
(安永審議官) 今のご質問、いわゆる研究補助者と呼ばれる方なんですね。これは非常に大事な話であります。恐らく大学なんかでも、私が30数年前学生だった時は、実験器具を使っていただける技官の方がおられたんですが、今誰もいないから学生さんが自分でやると。産総研も同じであります。自分でやらないといけない。ここを変えたいと思っております。もちろんそれはお金が要ります。お金が必要だということになると、これはなかなか交付金は増えませんのでいろいろな形で、例えばNEDOのファンディングを活用する、プロジェクトを組むとか、あるいはまさしく民間企業からも共同研究のお金をいただくということが必要になるんですが。
 学生さんも今度から入ってこられまして、彼らの研究へのサポートにもなるよう工夫をしたいと思っております。
(宮内分科会長) よろしいですか。
(有信臨時委員) 非常にいろいろよく考えられておられて、ということがよくわかりました。
 ちょっと気になることがあるんですが、主な説明で用いられた図なんですけど、これアメリカでよく使われているReadiness度っていうご説明だったわけですけれども、基本的にこの絵を見ると何となくリニアモデルの格好になっていて、審議官よくご承知のように、実際にはこういうリニアモデルに囚われると、基本的にスタートラインの技術だとか発見だとか、そこにこだわりすぎて、結局イノベーションが大きく広がらないという例はさまざまあります。
 実際に具体的な例で説明されたスピントロニクスについても、結局コンセプトが決まったところで、新たにさまざまな、MRAMにせよ、TMRヘッドにせよ、さまざまな基礎的な研究が必要になっていたはずです。
 それからまたさまざまな技術革新も必要になっていたはずで、実際に産総研に期待されている橋渡し機能というのは、そういうコンセプトが決まったところで、例えば日本中にあるさまざまな大学の研究者の誰が新たに必要とされている、まずは必要とされているさまざまな何ていうか、ミッシングリングと言いますか、未知のものが何であるかということをきちんと整理をして、それの研究者としてどこに誰がいて、何をまとめあげていくというかプロジェクトを組むのが適切であるかということを考えて、それを新たなイノベーションに結び付けていく。ここの構想力がイノベーションの、その後の大きさにも関わってきて、そこの部分の橋渡しもやはり産総研に期待されていることだと思うんですね。
 昔で言えば企業の中でここの部分はできたわけですけれども、今もう企業にその力はないし、現在ないものに対する想像力というのは極めて貧弱になっている。こういう中で産総研に期待されることは非常に大きくて、そういう観点で見ると、いわばここで、先ほどからのガバナンスという質問がさまざま出てましたけれども、ガバナンスというかマネジメントですね。ここの部分のコンセプトを作るところから来る橋渡しのところ、もちろんオリジナルな、非常に可能性のある発見を見出して、これを新たなイノベーションに結び付けていくという橋渡しも必要なんだけれども、あるコンセプトができたところでは本当に必要な研究だの、あるいは必要な技術革新との橋渡しをやるという機能についてのマネジメントの体制を作る、こういう点については何かお考えはあるんですか。
(安永審議官) 有信先生からのご指摘いただいたことは非常に大事なことでございます。実は我々審議会でこれは議論するべき、必ずちょっとリニアモデルに見えるんですけどそこはご勘弁いただいてという前置きをおきながらやってたんです。
 冗談はさておき、例えば今日お机の上にあります「ここにもあった産総研」の第2号、ナンバー2というのがちょっと小さいんですが、焼かずに吹き付けるだけで堅牢なセラミックス膜ができると、こう書いてあるこの冊子の7ページご覧いただけますか。これはまさに焼かずに吹き付けだけでセラミックス膜を作る研究をやっていた明渡さんという、私も尊敬している研究者がおられるんですけれども、この方がまさに今有信先生がおっしゃっているように、これまでは基礎研究で言うサイエンスがあって応用開発というエンジニアリングが成り立つとされてきましたが、実際にはそのようなリニアモデルじゃないのです。
 まさしく、現場で言っておられます。この方が言っておられるように、この方はまさに、自分で吹き付けたらセラミックスの膜ができたよというのを学会発表された後、いろいろな企業と共同研究をやられてるんです。それをNEDOでも大分応援をしました。
 その時に、やはり彼自身もこう言っておられるんですけれども、これができたよというだけで製品はできないですよね。ご指摘のあったように、これができたよというのは非常に革新的なんだと。焼かずにセラミックスを吹き付けるだけで膜ができたっていうのはすごいんだけど、じゃそれで何を作る時にどういう技術が要りますか、必ず周辺課題が出ます。面積でかくするにはどうしたらいいですか、吹き付けるセラミックスも1種類じゃない、いろんな違った種類のをいっぺんに吹き付けるにはどうしたらいいですかと、そうするとその技術があると。あるコンセプトができると。そうしたらまさしく課題がどんどん出てくるわけです。そうすると今度は左から右ではなくて右から左に戻ってまた基礎的なところを研究し直さないといけない。その時にはチームもいる。まさしくおっしゃったように、右、左、往復しながらやる、コンカレントなイノベーションと言うんでしょうけれども、こういうのをどう設計できるかというのが非常に大事なことであります。
 おっしゃったように、あんまりそのシーズがいいぞとか、それに鼻にかけているとろくなものはできないというのが、これは研究機関の常だと思います。まさしく右からの要請をもとに、やるために、マーケティングというのもいろんなレベルでやっていって、その時に例えば周辺技術がないと、この技術1個ではものできないとなったら周辺技術もあるやり方でやっていく。それも産総研の中だけではなくて、おっしゃったように大学の力を使う、あるいは企業と共同でやる。そういったことをやりながら、本当にものができるところのサポートをしていく、こういうことだと思います。これはまさしく研究者の研究のやり方のところから変えないといけないので非常に大変だと思いますが、産総研にはこういうモデルになるような人もいるということで、こういう人が2300人いるといいなという、例えばの話ですが、そういうことになります。
(宮内分科会長) 有信先生よろしいですか。じゃ私のほうから1つお願いします。
 クロスアポイントメント制が今ここで言われておりまして、確かにこれは産総研だけがこれを採用したとしても、相手方が同じように受け入れてくれないと、なかなか勝手にはうまくいかないという類のものだろうと思います。
 国立大学においても、実際にもう導入を決めているところも出てきてまいりますから、これからの時代に向けての動きとしてはクロスアポイントメント制の早期の導入が図られれば、研究者の流動化に必ずや役立つものと私も確信しておりますので、ぜひ早くお願いしたいと思っております。
 その中である種、いろいろな方が言われている組織面の問題として、本日いただいた9ページの組織の見直しという3番目の項目がございます。組織・制度をゼロベースで見直すということのようですが、これもいつどのぐらいの期間をターゲットに見直すのか、見直しは不断にかけていかないとならない、いきなり作ってこれで終わりという類のものではないんだろうと思います。今言われた、先ほど言われたような研究のステージが、あっちに行ったり、こっち行ったりということについて、どこに属して、自分がどこにいるのかというようなことについても、研究者の責任のもとでそれを全部やれというのはかなり困難であり、組織的なバックアップがないとできない話でもあるのではないかと思いますので、ぜひそういうものを可能にする組織の立案をお願いしたいと思いますし、これも早い段階での、もし目標があるのであれば、早い段階での樹立、確立をお願いしたいと思います。
 それからもう1つ、法人の評価、ここの評価は法人の評価ということになります。ぜひ1つの要素として創設されたマーケットの規模によってこれらを評価していくというアイデアもお考えいただきたいというふうに、それをどうやってやるのかというのはまたいろいろな方法が考えられるのかと思いますけれども。確か前に、研究活動を行ったものの、何年後かにおける成果というのを検討されていた資料を拝見したことがあるんですけれども、最終的にそれがどういう形でマーケットを形成し、どういうふうになっていったのかっていうのはまさしくアウトカムに相当する事柄であろうかと思いますので、ぜひそれも含めた検討をお願いしたいというふうに思っております。
 何か、組織・人事制度等についての目標、これはそういう方向でということだろうと思いますので、目標なり何なりというのはお決めいただけるような状況にあるのかどうかだけ、お教えいただきたい。
(安永審議官) この体制、それから組織・人事ですね。これは来年の4月からの第4期の中期目標期間にあわせてきちんと作りたいと思っております。今産総研でも議論を始めておりまして、ぜひきちんと作りたいと思います。
 それからおっしゃってように組織的なバックアップをしないと、何でもかんでも研究所に押し付けてそれができるというのは、これは確かにそう簡単ではありませんので、我々政策サイドとしても自分の問題と考えてやりたいと思います。
 また、アウトカム評価でございますが、まさしく先ほどカーボンファイバーのお話を申し上げましたけれども、まさしく炭素繊維が実用化されて、最初は30年ぐらい前に釣竿に使われていたわけですね。グラスファンバーだった釣竿がカーボンファイバーになってしなりがよくなったと。あるいはテニスラケットになって、軽くてなおかつ反発係数が大きい、よく打てるラケットになったと。こういうところから、恐らくそれだけでは炭素繊維としてのマーケットは数億円といった程度だと思うんですが、今数千億円近くまで上がってきたと。
 こうなるのに普通確かに50年もかかっちゃうんですね。生きている間になかなか評価が反映されるふうにならないのが非常に苦しいところではあるんですけれども、これだけイノベーションも時代の動きが早くなってまいりましたので、そのアウトカム、どういうマーケットを作ったのか、規模もそれから、規模だけじゃないインパクトもありますですよね。こういったものもうまくくみ取れるような形でまさしく法人の成果を評価していただけるように少し考えたいと思っています。ありがとうございます。
(岡本臨時委員) 残った質問をさせていただきたいと思います。産総研が橋渡し機能100%であればよろしいかと思うんですが、冒頭の説明でありましたように資料1−1の2つ目の柱が、基本的な考え方の2つ目の柱として、実質計量標準というのを残されていらっしゃると。これは橋渡し機能とは毛色の違った知的基盤整備ということだと思いますので、これは過去の経緯があるということだと思うんですけれども、今のように大きな方向性を変えられていく中で、事実これを残されていくのはどういう意味合いがあるのかと、ちょっとこれは愚問かもしれませんがあえてお聞きしたいと思います。
 それともう1点、今のような審議官が理事長であって向こうで陣頭指揮を執られたらいいと思うんですけど、実は別の中鉢さんがいらっしゃって、今筑波にいらっしゃらないって聞いてるんですけど、それは事実ですか。東京本部にいらっしゃるケースが多いと。だとすると、今のような大きな改革をなされていくということをなさっていくには、やはりマネジメント体制というものはもう少し、正直言って、素人的に思っても筑波におられたほうがいいんではないか、あるいは陣頭指揮をされたほうがいいのではないかというふうに、単純に思いますけど、いかがでしょうか。
(安永審議官) まず第1点目の、地質調査、計量標準でございます。つまらぬ係長的な答弁をいたしますと、これは言ってみれば産業技術の研究は、産総研の業務の1号業務と、地質が2号業務と、計量標準が3号業務となって、法律上違うことをやることになっています。というのがすごく係長的な説明なんですが、私たちはこう考えています。
 地質調査は、確かにこれはミッションとしては日本の国内の地質図を作る。それから今では近海ですね、近海ないしはものによってはもう少し出て、経済水域の中の、例えば資源、海底熱水鉱床ですとか、あるいはメタンハイドレートですとか、そういう特に資源が胚胎されるところの地質をちゃんと作ると、こういうことがございます。
 これは確かに、業務としては、そういった地質を明らかにして、その地質を用いて仕事をやる人のための標準的な情報基盤を整備すると。こういうことなんですが、今私申し上げましたように、これが実際に大きな例えば資源ビジネスですとか、あるいは資源でなくても、例えば今産総研の活断層チームなんかやってますので、発電所の下に断層がないかと。こういった産業立地にも非常に重要な関係を持っておりますので、直接技術のシーズをものづくりに持っていくという橋渡しではないんですが、まさしく産業の基盤として必要だということでやる意義はあるんだと思っております。
 また計量標準ですが、これも実は計量標準の中にも幾つかありまして、1つは昔ながらの計量器メーカーなんかは、この例えば1グラム、あるいは1センチ、1ミリの単位は正しいですかというのを示す時に、一番大元になる物差しはこうですよとお示しするのが産総研の仕事。これは研究開発ではなくてまさにメモリを付けるという仕事なんですが、実はそれをやるに当たっても最新技術が必要だと。
 特に産総研の計量部門では、今まで産業界が計れなかったものを計るということに非常に取り組んでおりまして。これがまさに実業のニーズと相まって非常に大きな成果を挙げているんです。例えば最近では、東大のある先生が極めて正しい時計、光格子時計と言うんですけれども、の原理を発明されたと。ただその時計というのは、作れないと実際に秒の単位にならないんですね。その作るところの研究開発は、ここの産総研の軽量部門がやっておりました。これは確かに今いきなり橋渡しをして、そこら中の時計が光格子時計になるわけではないんですけど、まさに産業の基盤として正しい単位は何かと。10年後、20年後になって、もっと厳しい条件で単位というものを求められた時どうなるかと。こういう、まさしくやはりこれは産業基盤で、橋渡しのための基礎になるものだと思っておりますので、非常に大事だと思っております。
 それから理事長の所在ですけれども、確かに理事長がうちの今の霞が関の10階にいるケースは多うございます。必ず週1回は筑波でやっておりますし、それに加えてもう1回ぐらい現場での会議などもありますので、恐らく平均的には週1.5〜2ぐらいなんだと思いますが、確かにおっしゃられるとおり、トップが一番の現場にいないという、どういうことかということはありますので、これは帰って指摘をいたします。ちなみに副理事長、彼は研究現場出身でございまして研究者でございますけれども、彼は当然毎日筑波におります。そのご指摘は伝えます。ありがとうございます。
(宮内分科会長) 大体よろしいでしょうか。
(瀬川臨時委員) じゃ1点だけ。1点、最後に1つ申し上げておきたいことがございます。産総研、昔の工業技術院、多数の研究所が統合され、また地方のセンターが統合され、また数年前に新しく、福島の再生可能エネルギー研究所ができという、非常に強大な組織であります。もちろんその中でかなり多様性があって、やはり産総研としての存在意義というのは余り一色に染まらずに、その多様な部分をきちんとうまく生かしながら、相互に連携をしてやれる。やはり地方と筑波の連携、こういったことが非常に大事になるかと思うんですね。
 ところが大変残念ながら、例えば同じ分野で、例えば地方の関西センターとあるいは筑波で、同じ産総研のグループが競合しながら1つの研究をやってるというようなところもないわけではない。そういうところをうまくコントロールしながら、普通の企業では、きちんとそういうガバナンスが多分働くんだろうと思うんですけれども、恐らくまだ産総研の中ではそこまでに至っていないのかなというところがあります。
 次期計画の中ではぜひ、多様な組織をうまく生かして、全体として効率を上げられるというような仕組みですね。例えば地方の企業等々とうまく連携をしながら、筑波のいろいろな成果をうまく流していくような仕組みであるとか、そういったことも含めて考えていただければなと思います。
(安永審議官) ありがとうございます。ぜひそうしたいと思います。
(宮内分科会長) それでは大体よろしいでしょうか。時間の都合もございますので、産業技術総合研究所についてはここでいったん議論を打ち切らせていただきます。本日ご説明いただきました皆様におかれましては、ご多用の中ご協力を賜りましてありがとうございます。当分科会といたしましては、本日の議論なども踏まえつつ、今後主要な事務事業の見直しに関する審議を深めてまいりたいと思いますので、引き続きご協力のほどよろしくお願い申し上げます。
 また、本日は時間の関係で十分なご質問等ができなかった委員がおられるかもわかりません。その場合は後日事務局を通じて照会したり、必要に応じワーキンググループで再度ヒアリングをお願いしたりすることがありますので、その際にはご対応方、何卒よろしくお願いいたします。
 それでは、経済産業省の皆様方はご退席いただいて結構でございます。どうもありがとうございました。

<説明者等退席>

(宮内分科会長) それでは次に、経済産業省所管の日本貿易振興機構につきまして、ヒアリングを行いたいと思います。本日は経済産業省の岸通商政策課長をはじめ、ご担当の皆様にお越しいただいております。日本貿易振興機構の見直し当初案の主要なポイントにつきましてご説明をいただき、その後質疑応答を行いたいと思います。全体の時間の関係もございますので、15分程度でご説明をお願いいたします。
(岸課長) 経済産業省通商政策局通商政策課長の岸でございます。今日は上司の幹部が海外交渉の関係で出張しておりますので、私のほうから対応させていただきます。よろしくお願いいたします。
 お手元の資料の1‐2というところにJETROの見直し当初案ということで出させていただいておりまして、そのほか参考資料の1と2というところを用意をさせていただいております。見直し当初案のほうは、横紙の概要と本文付けておりますが、時間の関係で概要を中心にご説明をさせていただきます。
 この見直し当初案は、経済産業省の独立行政法人評価委員会、更にはその下にありますJETRO部会というところで7月の上旬から3度にわたる審議を経てこのように取りまとめをしたものでございます。
 概要紙の左上でございますけれども、基本認識と、これは委員の皆様ご承知のとおりでございますが、日本経済を取り巻く現状としまして、国内の人口減少、これは平成23年辺りから日本の総人口の大幅な減少というのが統計上出始めたわけでございますが、その一方で急拡大をしているのは新興国の成長市場ということで、ただそこを巡る競争も激化しているということでございます。
 それからもう1つ、後ろの参考資料の1というところでちょっと統計を付けさせていただいておるんですけれども、我が国の貿易収支でございます。お手元、色が付いていましたら青い折れ線グラフでございますが、震災前の、あるいはリーマンショックの前には毎年10兆円を上回る貿易黒字だったわけでございますが、昨年は10.6兆円の貿易赤字というところで、2011年の前まで31年にわたって続いていた貿易黒字が赤字に転落しているということでございます。
 もちろん原発の停止などに伴うエネルギー輸入の増というところはございますけれども、貿易立国日本の競争力の基盤が揺らいでいるんじゃないかということで、輸出を中心に伸び代のあるところをどうやって伸ばしていくかということが、政府として急務だと考えております。
 もちろん投資、所得収支ということで、海外投資から稼ぎが増加して補っているという部分あるわけですけれども、これも合わせました経常収支ベースで見ましても、昨年の下期、それから今年の上期は経常収支ベースで赤字になっていると。今後予断を許しませんけれども、日本として稼ぐ力を本当に維持していけるのかどうかというところ、政府として危機感を持っているところでございます。
 上の真ん中で、そういう中で日本再興戦略、アベノミクスの第三の矢というところでございますけれども、要すれば世界の経済成長を我が国に取り込んでいくしかないということで、これは東京だけでなくて地域、ローカルアベノミクス、そちらのほうにも及ぼしていくということで、政府目標の一例でございますけれども、対日投資について現在17〜18兆円、これを2020年に倍増35兆円、あるいは農林水産物や食品の輸出、これもほぼ倍増の1兆円と。それから中小・中堅企業を中心としました輸出も含む海外展開、これ今大体1万弱ぐらいですけれども、新たに1万社ということで、政府として目標を立てているところでございます。
 加えまして、昨年の秋にはオリンピック、パラリンピックが2020年東京でということで決まりまして、政府としましてもそこに向けて、日本はまだやれるんだと、日の没する国ではないんだということをアピールする絶好の機会ということで、したがいましてJETROの次の中期目標期間、今まで4年、4年、4年ということでやってございますけれども、次の目標期間もまさに国を挙げて2020年に向けて勝負を賭けるタイミングと重なるということで考えております。
 そういった中で、この日本再興戦略の閣議決定、ちょっとまた参考資料の後ろのほうに2というところで横長の紙ですけれども、7ページから8ページのところに、日本再興戦略に基づくジェトロの取り組みということで、対日投資あるいは農林水産物・食品の輸出、終章企業などの輸出ということで、これいずれも政府の閣議決定で、時間の関係で1つ1つご説明いたしませんけれども、JRTROの機能の強化などの直接的な強い表現もいろいろ盛り込まれているところでございます。
 これにとどまらず、経済産業省に産業構造審議会ですとか、あるいは経団連、中小企業団体を中心とした経済界、あるいは与党など国会議員のほうからもアベノミクスの目標実現のために、JETROの活動に一層期待が今集まっているところでございます。
 ただ、最初の当初案概要の横紙に戻りますけれども、右上のところで、やはりやみくもに拡充するということではなくて、JETROの強みを生かしながら関係機関と連携しつつ役割を果たしていこうということで、強みを改めて整理いたしますと、1つ目のところは、JETROの持っている活動拠点、あるいはネットワークということで。数字ここに書いてございませんが、国内には約40か所の貿易情報センター、海外には74か所の事務所を持っております。こういったネットワークを生かす。
 それから2つ目は、これまでの知見・ノウハウの蓄積、これを生かすと。3つ目として、やはり公的機関ということで、特に中立的に官民をつなぐ役割ということで、内外で信頼、知名度を得てきた部分ございますので、こういった強みというのをきちんと認識しながら、その下につながり機能という言い方を書いてございますけれども、これも双方向、双方向と言いますので、日本から海外へのアウトバンド、海外から日本へのインバウンド、これ両方、双方向の好循環、これを日本経済、あるいは地方経済に持っていこうということでございます。
 こういった点を踏まえまして、下の絵がございますが、今後のJETROの事業の方向性というところで、真ん中のところにJETROの強みと書いてございまして、これを生かした国内外の双方向、つながり機能のハブとしての役割を果たすと。
 左側に国内外の関係機関と連携してということで、JETROが単独でその役割を担うということではなくて、関係機関としっかり連携、補完し合ってと。ただJETROのほうは国内と海外、両方に拠点、ネットワークあるものですから、連携のハブとしての役割を果たしていこうと、この辺り外務省ともそういうような考え方で合意をしてございます。
 三本柱としまして、(1)の対日投資の促進、(2)農林水産物・食品の輸出促進、それから(3)中堅・中小企業等の海外展開支援ということでございまして、特に1つ目の対日投資、それから2つ目の農産品、この辺りは現在第3期の中期目標よりも、政府の方針を踏まえてプライオリティを高めることと考えております。
 1つ1つ簡単に捕捉をさせていただきますと、(1)の対日投資でございます。2020年に倍増目標がございますので、対日投資促進においてもJETROを中核機関と位置付けて、ローカルアベノミクスで地域の活性化にも資する取り組みということで、特に重要だと思っておりますのがトップセールス、あるいは地方自治体との共同の誘致活動だと思っております。
 トップセールスが、海外においては特に例えばインフラ輸出の受注などで、これまでいろいろやってきているわけでございますけれども、対外投資の呼び込みというところも含めまして、今年になってからロンドンで阿部総理が行った時に、JETRO主催の対日投資セミナーで、阿部総理のほうから対日投資を呼びかけると。傍らに広島県知事、三重県知事とか神戸市長さん、福岡市長さん、とともに東京だけでなくて地域への投資も呼びかける。
 ちょうど先週も23日の火曜日に、総理ニューヨークにおられましたけれども、そこでもJETRO主催の対日投資セミナー2回目をやりまして、和歌山県知事、京都市長、新潟のちょっと小さいところで十日町市長さんとか、岡山に美作市っていうところがあるんですけどここの市長さん、こういった形も含めて投資を呼びかけてきたということでございます。
 総理のほうからも、若干ご紹介しますと日本の地方は大きな潜在力を秘めていると。総理のお言葉ですけど。豊かで元気な地方をつくるためにも、私は日本の市場を世界に開き、海外からの投資で日本を変えていきます。JETROと大使館が連携して日本への投資を考えている経営者を、総力を挙げて支援する体制も整えていますと。ぜひ日本に投資していただきたいというような形のメッセージを国際的に発信をしているというところでございます。
 それから攻めの営業活動として、誘致競争は世界的にどこへ引っ張ってくる競争でございますので、進出を検討している会社に対して日本がいいですよとPRするだけじゃなくて、経済効果の高そうな案件の掘り起こし、そこに高そうな案件に重点的に事業構想の段階から早めに情報をつかんで具体化を提案するような、積極的な案件形成、案件創出活動ということをJETROのネットワークも生かして行うこととしております。
 次に(2)の農林水産物・食品の関係でございますが。
(宮内分科会長) すいません、時間内に概要は極力短く説明してください。その後の質疑応答の時間をとっておりますのでよろしくお願いします。
(岸課長) はい、失礼しました。
農林水産物のところはオールジャパン、日本ブランドの訴求力を高めるというところが重要と考えております。(3)でございますが、中堅・中小企業、これは先ほど申しました中小企業基盤整備機構などとの連携も含めて切れ目のない支援を行っていきたいということでございます。
 下のところで、JETROの今三本柱を支える基盤といたしまして、海外ビジネス情報の収集ですとか政策提言その他の基盤的な活動というものがございます。
 最後に右側のところでございますけれども、効率的・効果的な業務実施のための取り組みということで、もちろん魔法の杖があるということではありませんけれども、外から言われるまでもなく、今JETROへのいろいろな新しい期待が高まっている中で、経営陣としても効率的にどうやってやるのかということが最優先課題だということで、外部の評価をいただきながらPDCAを回すようにしておりますが、次の中期目標に向けましても、1つ目は目標の設定においてもアウトカムに更に着目した定量的な目標、こういったものを一層考えていきたい。
 それから2つ目としまして、国内外の事務所でございますけれども、国内においてはやはり地域に根差したきめ細やかな支援が期待されているという部分、それから海外事務所でございますけれども、アジアはもちろんのことアフリカも含めた新興国、こういったところを念頭に、更には対日投資、あるいは農産品、クールジャパン、こういったところで、引き続き先進国も重要な部分多いわけでございます。各事務所の果たすべき役割を、改めてしっかり検討しながら、運営の効率化を図りながら全体としてのネットワークの質の向上、効率化を図っていきたいということ。
 それから3つ目のところでは、貿易投資振興政策機関同士のネットワークのハブとしまして、国全体としてより予算効率の高い効果の実現、これを図っていく。
 4つ目のところで人材の多様化とございますけれども、女性の活躍促進、更には専門性、成果を意識した人材育成の強化。
 5つ目、最後でございますけれども、JETROが政府の方針に応えるために財政基盤の一層の健全化というところも重要でございますので、必要な経営資源を機動的に投入する一方で、自己収入拡大にも取り組み、優先順位を明確にしながら最適配分を図っていくということでございます。
 政府、社会の期待が高まる中で、事業及び事務効率の徹底的な推進、これも含めまして今後ともしっかり政府としても取り組んでいくことをJETROに期待していきたいというふうに考えております。ちょっと長くなりましたが以上でございます。
(宮内分科会長) ありがとうございました。それではただいまご説明いただきました、日本貿易振興機構の見直し当初案につきまして、ご質問などございましたらどなたからでもご発言願います。
(岡本臨時委員) ご説明ありがとうございます。また視察に労をとっていただきどうもありがとうございました。何回かの意見交換でありますので、もう既に申し上げてることの繰返しになるんですけれども、今課長からご説明いただいた我が国の取り巻く現状でありますとか政府の戦略の中でもJETROの位置付け、あるいはJETROの強みというのは私はそのとおりだと思ってるんです。
 1つお聞きしたいのは、この資料1−2の一番最後なんですね。業務の優先順位を明確化し、経営資源を最適配分、本当にされていますかということを前から申し上げていて、今日の資料の中の参考資料の運営交付金も、こういうふうに右肩下がりで下がってきている現実もありますし、そんなに職員の方が増えているわけでもない中で、この重要な戦略の中でどうJETROとしてやっていらっしゃるかというところをご説明いただきたいという、私にとってはその1点が非常に見直しの点で重要かなと思っております。
 それで今日のご説明は、1−2のこれから強化をしていきますと、3つの柱がありますということだと思うんですけれども、ちょっと裏の質問ですけれども、これでやめておられる、前期中期目標期間でやっておられて、次期中期目標においてやめられた業務、あるいは具体的に経営資源を最適配分するために人員を異動されたとか、そういうちょっと細かい話で大変恐縮なんですけど、そういうのがあったらまずご説明いただきたいと思います。
(岸課長) ありがとうございます。事業の見直しと、これをしっかりやっているかという視点だと思います。次期中期目標、中期計画に向けてはまだ検討中の部分もございますけれども、この第3期、3年経過したところでございますが、その中でも業務の実績、あるいは外部のご意見、こういったものをいただきながら、JETROの中でも、理事長をヘッドとするアウトカム向上委員会その他、いろいろなPDCAの仕組みを回しているところでございまして、具体的な数字の一端でございますけれども、例えばその中で5年以上継続しているような事業、こういったものを例えば総ざらいをいたしまして、その結果平成23年度には2つの事業を廃止、平成24年度は縮小も含めて9事業の廃止等、それから25年度には12事業の廃止、これは1つの例でございますけれども、そういった取り組みもしていることをご紹介させていただきます。
 あわせまして人員の配分と、これも非常に、正直申し上げていろいろ労働が高まっている中で、これをいかに最適配分するかというところは、経営陣としても非常に重要だというか頭の痛い問題で、最優先課題としていろいろ考えておるところでございます。
 その中で、極力現場に振り向けるということで、それから現場の中でも例えば地方ですとか、それから同じ海外の中でも、少なくともこれまでは先進国から新興国のほうへ振り向けるというようなことで、これも1つの数字のご紹介ですけれども、例えば過去の10年間ぐらいですと、先進国において11事務所閉鎖、4事務所はナショナルスタッフということで、日本から機関職員を送らずにナショナルスタッフ中心の事務所に効率化をするといったようなことも含めて、先進国では40事務所から30事務所に減少すると。人員では大体70〜80名、75名ぐらいだと思いますけれども。
 そういった取り組みをずっとしてきておりまして、その部分を、例えば新興国に振り向けたり、あるいは地方に振り向けたり、それからいわゆるプロパー職員だけではなくて、外部委託とかそういったところも活用しながら何とかやりくりをしているところでございまして、これは不断の見直しが必要なことだと思いますので、引き続きそういう方向性で取り組んでまいることだと思っております。
(宮内分科会長) ほかにございますでしょうか。
(齋藤臨時委員) ご説明ありがとうございます。資料の1‐2の中で、下の段のほうの右のところのIIIの(1)のところで、事業成果工場に資する目標の設定ということで、今回アウトカムに着目した目標設定を行うのだというご説明いただいてるかと思うんですが、具体的に質の高い定量的目標として、どのようなものが検討されているのかということについてお教え願えませんでしょうか。
(岸課長) 従来からの課題であるわけですけれども、アウトプットだけではなくてアウトカムに着目して、より政府、あるいは国民の皆様との関係でわかりやすく、事業の必要性や効果について見せていくんだろうと、そういう問題意識で今検討をしております。現状においても、例えば商談会の成約件数、実際に輸出契約が何件整ったのかと、そういったことも一部アウトカムとして入れておるところでございますけれども。今後、今まだ検討中でございますけれども、例えば企業の海外展開については、実際に何社展開することとなったこと、あるいは海外企業の対内投資については何件ぐらい誘致をしたのかですとか、そういったことをアウトカム目標にするというのが1つの有力な候補になるのかなというふうに考えてございます。
 もちろんアウトカムになりますと、JETROの努力以外のさまざまな要因も絡みますので、因果関係といったところでございますけれども、そこはバランスをとりながら今後検討を深めていきたいというふうに考えてございます。
(齋藤臨時委員) はい、ありがとうございます。そういたしますと少し気になっていますのが拠点なんですけれども、2つ目の強みというところでネットワークを使ってというところを強調していただいてるんですけれども、国内の拠点といったものと海外の拠点といったものの比率なんですけれども、どうも国内の拠点の数は多過ぎるんではないかなという印象を持っておるんですね。
 いろいろな地方公共団体からの強い要請ということでお示しいただいているんですけれども、例えば時間にすれば1時間、あるいは少なくとも2時間ぐらい時間を要すれば、別の都道府県の事務所に行くことができるようなところででも開設されているという例があるかと思うんですけれども、そうなった時に先ほどの例としてアウトカムの話とつながるかと思うんですけれども、例えば新たにそういった拠点を作った、開設をしたという場合のメリットとデメリットというのがあるんですが、当然のことながらコストがかかるということ、ゼロということではないですよね。応分の負担は地元にしていただくとしてもゼロではないと。コストはマイナス面が明らかであると。
 それから当然のことながら近隣のところで相談をしてた人たちが、地元ができたからといって地元に行くだろうと推定できますから、ちょうど時間のかからないところの拠点に質問、相談等をしてた人たちが減るという、そういうマイナス面もあるかと思いますが、そういう観点からした時に、新たなセンター等の開設に関して、それが本当によかったのかどうかということの判断っていうのは、どういうふうに今後されていくのかなということについて、お教え願えませんでしょうか。
(岸課長) 国内事務所でございますけれども、今大阪本部以外に40か所有してございます。今、先生からご指摘のあったような、例えば2時間で行けるところもあるじゃないかというような点も、当然意識をしながらということではあるんですけれども、1つ目まず政策の全体の方向性といたしましては、全国各地のやはり中小企業に、中小企業の海外輸出、海外展開というのはこれまだ伸び代がかなりあると思っております。
 1万社という目標ありますけれども、中小企業は全国に400万社ございますので、あながち不可能な目標と考えているわけではございません。そうした中でやはり地域に根差したきめ細やかな取り組みというのが政策的には求められているんだろうと。今特に、ローカルアベノミクスという中では、ますますそういう要請は片方で強まっているというふうに思っております。
 他方、コストを伴うものである以上、コストとの兼ね合いということで、そこはもちろん、自治体から作ってくれという設置要望、これかなり引き続き強いところがございます。ただ丸抱えでJETROがやるわけではなくて、当然半分ないしそれに近くは自治体のほうがちゃんと負担してくれるというようなコミットを引き出しながらということで進めておりますけれども、それのみならず、やはり実際に産業あるいはポテンシャルがどのぐらいあるのかという地域の事情、こういったものをしっかり踏まえながら、個々の事務所設置の必要性についても検証しておるところでございますし、既に作った部分についても、これはどういうふうに有効性を判断するかという部分でございますけれども、恐らくそこは突きつめると手段やリソースの配分そのものというよりは、全体のJETROとしてのアウトプット、アウトカム、これの実績、成果を全体として評価をすると。
 人員や事務所のリソースの配分というのはその1つの手段ということではないかなというふうに考えております。
(齋藤臨時委員) ありがとうございます。今のご説明というのは、個々の事務所でアウトカム等の評価をして、その開設あるいは閉鎖というものは判断しないという、そういうご回答だったというふうに理解してよろしいんでしょうか。
(岸課長) 必ずしもそういうことではなくて、アウトカム、アウトプットの把握の仕方、もちろん中期目標、中期計画のところで、細かく県ごとというふうに設けるかどうかは別でございますけれども、JETROにおける内部のいろいろな仕分け的なPDCAのレベルでは、当然事務所というかどうかは別にしても、それぞれのエリアで厚いところ、できているところ、できていないところ、そういったところも視野に入れながら、全体として成果が挙がっているかどうか。あるいはリソースとの関係で、効率、効果の上がるものになっているかどうかというところを当然評価していくべきというふうに考えております。
(齋藤臨時委員) ということは、今後は開設ばかりではなくて閉鎖ということも考慮に入れて、そういうこともあり得るのだろうということも検証しながら。
(岸課長) もちろんそういう前提を置くわけではございませんけれども。ただ、今の全体の流れとしてはむしろ地域に根差してきめ細かく、掘り起こしも含めて、やはりポテンシャルというところについて、地域再生戦略からの期待は大きいのかなというふうには考えてございますが。
(齋藤臨時委員) わかりました。一番気になっているのが、いろいろなところにたくさんたくさん事務所、あるいはセンター、拠点というものを設けてしまうと、専門的な方々が散ってしまうんではないかと。予算が限りなくあればまたいいんでしょうけれども、決してそういう状況ではないという中で、まさに最適な資源配分を考えた時に、本当に散らすことがいいのかということが非常に危惧されていますので、またよろしくご検討いただきたいというふうに思います。
(岸課長) ご指摘の点よく認識をしながら、蛇足でございますけれども、やはり広域的な取り組みが適する場合もございますので、専門性を例えばブロックに集めて、そういったことも、広域的な取り組みも並行して進めたり、あとはやはり地域の事情にもよりますけれども、いろいろな自治体、あるいは商工会議所、商工関係団体とか、あるいは地銀さんとか信金さんとか、そういったものの関係、あるいはネットワークを生かしながらという視点も含めて、効率、効果を同時に追求してまいりたいと思っております。
(齋藤臨時委員) よろしくお願いいたします。
(宮内分科会長) ほかにございますか。
(出雲臨時委員) よろしくお願いします。先ほどの国内事務所から海外事務所、更には先進国から新興国への人材のシフトという点におきまして、総人件費との兼ね合いもあって、なかなか新興国への人材の配置というのは、地域手当的に結構上昇するという問題を抱えているかと思うんですけれども、そういった総人件費との兼ね合いと人材のシフトという点でどういうふうにご解決と言いますか、対策を考えてらっしゃるのでしょうか。
(岸課長) 非常に重要なポイントでありますし、よく議論が必要かなというふうに私どもとしても考えております。特に海外事務所は、従来先ほども申しましたように、どちらかと言うと総人件費のキャップが全体にはまっておる中で、スクラップアンドビルドのような、必ずしも1対1の関係にあるわけではありませんけれども、新興国シフトということでやってきておりましたけれども。ただ今後、海外事業を取りに行く、あるいはいろいろ誘致をしたりするという中で、なかなかその延長線上だけでは非常に期待に必ずしも応えていけなくなりつつあるのではないかと。
 足元でたまたま円安ということで、海外に関する経費というものが円建てで相当膨らんでいるというような、そういう要因もございますけれども、非常にJETROの中、あるいは経済産業省としても、その部分の効率性とそれから政策効果、そういったものとのバランスをどうやって図っていくのかというところは、大変な論点になっております。
 いずれにしましても、極力現場を厚くすると。管理のほうは極力効率化をし本部で引き受けるという基本方針のもとに、それから外部で、JETRO本体の職員の専門性をきちんと高めるというのがやはりコアになるわけですけれども、やはり足元を見る時に、外部の専門家ですとか、あるいはそれぞれの国におけるローカルスタッフ、ナショナルスタッフの更なる活用といったものも組み合わせながら、新しい要請に対応をしていかなければいけないと。
 先ほどちょっと申しましたけれども、先進国のほうも、ただ単に、従来型の工業品の輸出というところを超えて、やはり農産品とか食品の輸出ですとか、あるいはクールジャパンの関係の、やはり新しい需要の開拓、それから対内投資。対内投資の主体は大体アメリカとヨーロッパがあわせて3分の2くらいやはり占めますので、そういったところはしっかり目配りしていかなければいけないというところで、そんな中で来年度の概算要求の中でも、JETROの基盤的な経費について拡充をする方向で要求をしておりまして、今後第4期におけるいわゆる効率化のあり方について、今後関係当局とも調整をしていきたいというふうに考えております。
(瀬川臨時委員) いただきました資料の中で、参考資料2の16ページを見ていただきたいんですけれども、今後の評価の指標についての話をさせていただきたいと思います。これを拝見すると、非常に成績がよろしくて、平成23年度から25年度まで、年度別の実績すべて達成ということで出ているわけです。一方、先ほど参考資料の1を見せていただきましたけれども、これを見ると日本のいわゆる貿易収支のほうは、右肩下がりで下がる一方だということは、実はそもそもJETROがどれぐらいの割合、これまで本当に貿易収支の向上に寄与してきたのか、あるいはこの定量的目標の設定自体がそもそも間違っていて、これではJETROの機能を本来正しく評価できていないのではないかと。
 次期中期目標に向けては、きちんとよく考えて、新たな目標、指標等を設定する必要があるかと思うんですけど、そこら辺はどういうふうにお考えですか。
(岸課長) やはりこういった数値目標的なものを設定する時には、JETROの現実のリーチと言いますか、効果をよく及ぼしうる範囲というものも考えながら設定をしていかないと、絵に描いた餅になってしまうのかなというふうに考えておる中で、例えば自動車の輸出とか、特に家電の輸出、携帯電話の輸出なんかが極めて落ち込んでいるわけでございます。
 もちろん、TPPをはじめとする、あるいは日−EUの経済連携とか、大きな枠組みが進捗することによって、そういった大企業の輸出についても大きな好影響を及ぼし得る部分はあると思いますし、そういったものにJETROとしてもいろいろ政策提言ですとか、いろいろなことで貢献していることは事実でございますが、ただJETROが個々の輸出の金額あるいは件数に比較的直接影響を及ぼし得る部分として考えた時に、やはり先ほど伸び代という言い方を申しましたけれども、これはちょっと内側ですけど対日投資であるとか、対日投資はまだ日本は各国に比べて非常に、ご案内のようにGDP比で少ないわけでございますし、それから農産品の輸出のところ、それから中小企業の輸出、海外展開、その辺りはまだ相当伸び代があるので、件数の増というのが期待できるのではないかというふうに考えております。
 例えば農産品や食品で申し上げますと、以前別のところでもご紹介あったかもしれませんけれども、JETROが数年前に行いました海外での調査で、例えば日本食、好きな料理は何ですかというところで、日本食というふうに答えてくれた人というのが、アメリカとかヨーロッパとかで、大体イタリア料理と首位を争うぐらい、2割前後の方々が日本食と言ってるんですけれども、ただ実際の農産品、食品の輸出額、こういったものを見てみると、日本からの輸出額はイタリアの輸出額のやっぱり10分の1ぐらいという意味においても、やはりその辺りはJETROがいろいろな取り組みをすることによって、成果に結び付きやすい部分ではないかなということでございます。
 そういったことも考慮しながら、次期中期目標における定量的な目標について、適切に設定をしていければなというふうに考えております。
(瀬川臨時委員) 少し質問の意図を誤解されていて、経済情勢のご説明をいただいたようですけれども。もちろん為替レートの問題であるとか、ほかの燃料費等々高騰があって難しいというのはわかるんですけれども、それでもJETROがどれだけ貢献したのかというのがわかる指標になっていないといけない。
 具体的に言うと、今参考資料の2の16ページのところ見ていただきますと、例えば商談件数であるとか相談件数等々の、何と言いましょうか、具体的なアウトプットなりアウトカムの目標設定になっていないので、ここのところをきちんとわかるような形で目標設定をしておかないと、一体何が悪かったのかわからない。
 これが例えば、23年度から25年度満点であっても、実際に貿易収支がこれだけ下がってJETROの貢献がその中で余り見えないということになると、やはりJETRO自身の存在価値というか意義というか、そこも見えないということになってくるので、むしろJETROがここのところが足りなかったから、実際にここを改善することによって、次期目標について更に高みが達成できるというようなことがあるのであればいいんですけれども。
 自己評価の段階で、非常に成績がよくて、そうするとこの事項そのまま伸ばしていくだけでは、次の目標が達成できないのではないかという趣旨で質問させていただきました。
 つまり定量的目標の中身をもう少し精査いただいたほうがいいんじゃないかというのが趣旨です。
(岸課長) ご指摘のとおりだと思います。定量的な目標として、どういったものを設定したらいいのか、それからその目標の具体的な水準についても、ここは当然不断に議論をしていくべきものだというふうに考えております。
 ここに書いてあるのは、主としてどうなんでしょうか、アウトカムと言うよりアウトプット的なものが、ご指摘のとおり中心になっておりますけれども、今後は因果関係という部分はあるんですけれども、より国民あるいはユーザーからわかりやすいアウトカムというようなものをもう少し入れていけないかと。それから必ずしも定量的でなくても成功事例をきちんと具体的に紹介するというような定性的なアウトカム、こういったものとの組み合わせということも考えられます。
 ご指摘の点、もう少しこういう指標があったほうがいいんじゃないかというようなご知見を、私どもも広く求めながら、そこは必要なところを見直してまいりたいというふうに考えてございます。
(岡本臨時委員) 今もちょっと議論になったかと思うんですけど、確かに国内外におけるネットワークがJETROさんの1つの大きな強みというのは確かにそうだなという気もするんですね。
 それで、例えば今日の参考資料の4ページ、参考資料の2のほうですかね、の4ページで、地域での取り組みを支える国内ネットワークという絵と、それからその次に海外のネットワーク、それから4国のJETROに対応し得る防衛都市間の海外事務所比較図を示していらっしゃるんですけれども、これ例えば4ページの日本国の絵を見ると、これ何か白いところをなくしていきたいということを暗に示していらっしゃるんですかね。栃木県、京都赤になっていまして、で、1つ質問なんですけど、強い要請であろうと強くない要請であろうと、地域から、地方自治体、特に都道府県だと思いますけど、都道府県から要請があってJETROが出さないと、何かこういうJETROさんがやっていらっしゃるような貿易であり通商であり、そういうものが効果が上がらないという確固たる信念がおありになるんですかね。
 その時に、こういうものがあるから、いや地域で任せておけないんですよと、いうようなご説明があると、やはりJETROさんは必要ですよねということになるんですけど、何かふわっとした、JETROがやらなきゃいけないということを前提に議論されているように思える。
 例えばそれから海外でも、これ確かに韓国と比べると日本少ないんですよね、丸の数。だからここは韓国に追いつこうとされているんですか、数で。あるいは地域において。そういうことだとすると、なぜそうしなきゃいけないんだという議論があって、フランス、イタリアとはほぼ同じくらいの数だと思うので、ある程度地域的な濃淡はあるかもしれませんけど、そういう話が必要じゃないかなと思うんですね。
 よく聞いてみると、確かに都道府県とか大きな政令指定都市ぐらいになると、自らやってらっしゃるところもありますよね。それでJETROさんとの業務の内容が重複してるじゃないかと言いたくなるようなところもあるように聞いてるんですね、事務方の人の説明を聞いていると。そのようなところを、いやそうじゃないというJETRO側の説明、あるいは経産省としての説明というのをちょっとお伺いしたいと思います。
(岸課長) 国内におきましても、それから海外におきましても、今回提示している資料はこれはファクトベースでお出しをしているつもりでございまして、必ずしも結論ありき、必ず増やさなければいけないという固い立場に立っているわけではございません。ただ、例えば国内においても、この白くなっているところは、これは我々としては明らかにこれから、検討課題であろうというふうに考えております。
 もちろんご指摘のように、地元が求めれば何でもやるかと、そういうものではございませんで、やはり効果も含めて政策的な必要性というのをきちんと判断をし、それから評価をしながら考えていくべきものだというふうに考えております。
 これは海外の事務所においても、韓国に比べて特に中国ですとかアフリカですとか、アフリカはこれからやはり新興国として成長が期待される部分でありますが、日本企業はやはりやや慎重なところもあって、そもそもトライもせずに不戦敗というような国が結構多いわけでございまして、その辺りは政策的には課題だと思っておりますので、ニーズがあると、あるいはもちろん海外におきましても、国内事務所も県や自治体の負担を求めますけれども、海外においても相応のステータスですとか、あるいは相手国政府とのいろいろな交渉というものがございますので、そういった必要性と相手方との条件が整うものについては、やはり前向きに検討していくべきものではないかというふうには考えてございます。
 ただご指摘のように、例えば国内事務所ですと、県や市、特に大きいところ、政令市などでは似たような国際展開に対しての支援するような機能、あるいは貸しオフィスみたいなものを既にやっている部分も一部あることは事実でございます。
 ただ、その実態を見てみると、県や自治体が自ら海外の情報を収集したり、あるいは知見を蓄えてというよりは、そういった地元からニーズが上がってきた時に、そこはJETROとやはり連携をして、JETROのネットワーク経由の知見、情報というものをうまくつなぐ、といったような連携関係というものは既にあるわけでございまして、そういった県や市が積極的に取り組むというのは、これは非常にいいことでございますので、現実にどうしてるかというと、極力そこは、事務所を近接化するとか、あるいは一体的に運用するというところで、ただJETROとしてやはり地元との果たすべき役割、あるいは地域と海外の事務所で、電話一本でぱっとつながったり、やはりJETROとして2時間とか3時間かけて行ったり来たりするだけではなくて、やはりもう少し出張ベースではなくて地元ベースできちっと中小企業に知見のある人が来るときちんと回るというような必要性のある部分もやはり多うございますので、そこはJETROが自治体をやっているところを競合するとか食いに行くということでは全くなしで、補完関係としてやはり果たすべき役割があれば、そこは前向きに検討していくということになるんではないかなというふうに考えております。
(岡本臨時委員) 今のお話で、個別でいいの悪いのという議論、今日の本題じゃないと思うんですけど、例えば貿易情報センターなんていうと、福岡県には福岡市と北九州市にあって、また隣接する佐賀市にもあると。これ、私も近くによく行くんで、新幹線だったら十数分ですよね。佐賀でもそんなに遠いわけではないというような地域であったり、例えば今の貸しオフィスの話を例に出されましたけど、ちょっと調べていただくと横浜の貸しオフィスについては横浜市も持っていらっしゃると。部屋数を言うと横浜市のほうが多いじゃないかという議論があって。何でJETROが重複して持たなきゃいけないんだという説明は、ちょっと補完関係と言うよりは、JETROがなぜそこに置かなきゃいけないか、必要性はまだちょっと感じられないんじゃないかと、1つの例を挙げるとですね。
 そういうものがあったりするので、やはり総論ではよくわかりますけど、個別に見ると、今課長がご説明されたようになってないところがあるのではないか。となるとやはり、もう少しJETROが、JETROでしかできないような業務が私だってあると思っていまして、そこをやはり集中的にやっていただきたいという気がします。これは回答結構でございますので、よろしくお願いしたいと思います。
(宮内分科会長) ほかにございますか。
(岡本臨時委員) もう1件。それから今回アジ研の説明が全くないんですけど、アジ研さんはどうされるんですか。私たちも訪問させていただいて、正直言ってアジ研はJETROにいる意味はないですねとおっしゃったように気がしました。これは過去の経緯もあってJETROと統合されたということなんでしょうけど、やはり研究所としてのアジ研というのはそれなりにやっぱりすばらしい研究業績がずっとあって、それがJETROの中に付属機関的にあるということの違和感をぬぐえないし、独法の研究開発の、研究開発法人でしたっけ、というところの文系の1つの法人としては代表的なところだと思えるんですけど、この説明がなかったので、次期中期目標期間のアジ研との関係というのをご説明いただけますか。
(岸課長) じゃちょっと手短に。先ほど基盤的な事業のところは、時間の関係で慌てて飛ばしてしまって大変失礼いたしました。アジ研の活用も大変重要だと思っておりまして。
 ここは従来からご議論いただいているところでございますけれども、アジ研という、比較的基礎的な、もちろん政策提言ですとかあるいは分析、それからやはり基礎的な研究を行っている機能でございますけれども、JETROと統合をして、現在統合効果を引き出していこうということで、これまで進めてきております。基本的にはその方向だというふうに考えております。
 1つの理由は、アジ研は従来、昔は地域研究・開発研究主体でございました。途上国中心ということでやっておりましたけれども、やはり、特に最近になりまして、途上国との関係というのは日本として経済中心かもしれませんけれども、やっぱり新興国という捉え方、あるいは日本における重要性というのが格段に高まってきておりまして、これ貿易投資も含めですけれども、そういった面ではアジ研をJETROに統合したというのは、1つある意味先見の明があった部分もあるんではないかなというふうに考えておりまして、アジ研のもちろん研究の中身も学際的に、あるいは実務に近い部分をやっておりますけれども、基本的な、基礎的な研究も非常に大事ですが、その前提となる情報はJETROの情報も活用しと、それからアジ研のそういう基本的な研究も、JETROのいろいろな施策な活用しということは引き続き大変重要かなというふうに考えてございます。
 もう1つはやはり研究という機能に着目をして、研究開発法人というお話、あるいはいろいろな労務管理とかをもう少し柔軟にというような課題は我々もあるんだと思っております。ただ、やはりアジア経済研究所の場合には、普通の大学以上にはやはりカスタマーですかね、カスタマーというのはJETRO本体のみならず、政府でありあるいは広い意味での日本企業ということが主ではないかと思いますが、それをより意識しながら、そこはあるべきいろいろな運営管理の方法についてはまだ改善の余地と言いますか、そこはバランスをとりながら、カスタマーをきちんと意識しながら、他方研究としてのある種実務をあげていくというところのバランスをとりながら、引き続きそこは課題として追求していきたいというふうに考えてございます。
(宮内分科会長) ほかにございますか。じゃ私のほうから最後に。
 先ほどご説明の中で課長もおっしゃられたように、海外事務所等についてもスクラップアンドビルドをずっと続けてきているというふうに言われたわけですが、スクラップアンドビルドを行うに当たっての判断基準、つまりJETROでターゲットにしている業務そのものが、JETROの機能を十分に満足し、なおかつその地域において引き継ぐべき人材が育ってきたというような状況というのは、どういう格好で想定して、やめていって、次の新しいところに重点的に施策を振り向けていくのかというような判断基準と言うか、目標とそれの達成状況に関連する状況把握というのはどのようにされてるんでしょうか。
(岸課長) スクラップアンドビルド的にこれまでやってきたということでございますけれども、必ずしも一律固定的なスクラップアンドビルドのようなものがいいのか、あるいは手法の問題なのでより成果に着目する形での経営判断に任せる部分とのバランスではないかなということの中で、ご質問のありました必要性の判断基準という部分につきまして、若干いろいろ事務的にも資料でご説明させていただいてる部分ございますけれども、これはなかなか1つ2つの定量的な基準だけで、機械的に必要性が出てくるというよりは、調査1つとってもいろいろその中身の質等々もございますし、それからJETRO固有の事情として、権威や相手国とのいろいろ交渉事、より有利な、よりコストパフォーマンスの高い条件を引き出すというところで、余り手の内を明かし過ぎるわけにもいかないという部分も含めて、種々考える必要性を考える考慮要素というものはございますけれども、それを必ずしも定量的、機械的に当てはめるような運用は現在してございません。
(宮内分科会長) わかりました、はい。それでは大体よろしいでしょうか。それでは時間の都合もございますので、日本貿易振興機構については、ここでいったん議論を打ち切らせていただきます。
 本日ご説明いただきました皆様におかれましては、ご多用の中ご協力を賜りましてありがとうございました。当分科会といたしましては、本日の議論なども踏まえつつ、今後主要な事務事業の見直しに関する審議を深めてまいりたいと思いますので、引き続きご協力のほどよろしくお願い申し上げます。また本日は時間の関係で十分なご質問等ができなかった委員がおられるかもしれません。その場合には後日事務局を通じて照会したり、必要に応じワーキンググループで再度ヒアリングをお願いしたりすることがありますので、その際にはご対応方、何卒よろしくお願いいたします。
それでは日本貿易振興機構の皆様方はご退席いただいて結構でございます。どうもありがとうございました。

<説明者等退席>

(宮内分科会長) 以上で、本日予定の見直し当初案に関する府省からのヒアリングを終了いたします。最後に事務局から報告事項がありますので説明をお願いします。
(竹中管理官) 次回の分科会の予定でございますが、10月30日木曜日10時から12時で行いたいと思います。会場はまだ決まっておりません。案件は勧告の方向性の中間取りまとめと、平成25年度の業務実績評価、あと役員の勘案率が溜まっておりますのでご審議をお願いしたいと思います。以上です。
(宮内分科会長) ありがとうございました。それでは以上をもちまして、政策評価・独立行政法人評価委員会、独立行政法人評価分科会を終了いたします。本日はご多用の中ご出席賜りましてありがとうございました。


以上

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