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平成21年度第2回国地方係争処理委員会 議事録

【磯部委員長】
 それでは、平成21年度第2回国地方係争処理委員会を始めたいと思います。長谷部先生は、30分程度遅刻するというお届けでございます。
 本日は、「『国・地方間の係争処理のあり方に関する研究会』について」、それから「住基ネットの活用状況と住基ネット不接続団体に対する是正の要求について」及び「委員会の公開について」の3つを議題といたします。なお、本日の委員会の議事においては、審査に係る合議に関する部分は特に予定してございませんので、平成13年2月5日委員会決定に基づきまして、議事要旨と議事録を公表することを予定しております。
 まず、本題に入ります前に、委員会の庶務を取り扱う行政課長さんに人事異動がございましたので、新行政課長の安田さんから一言ごあいさつをお願いいたします。

【安田行政課長】
 本年7月に行政課長を拝命いたしました安田でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

【磯部委員長】
 何とぞよろしくお願いいたします。
 それでは、早速ですが、まず「『国・地方間の係争処理のあり方に関する研究会』について」とプラスアルファがあるかと思いますが、安田課長さんのほうからご報告をいただきまして、引き続き植田市町村課長さんから、「住基ネットの活用状況と住基ネット不接続団体に対する是正の要求について」をご報告いただきまして、まとめて質疑応答を行いたいと存じます。その後、最後に委員会の公開につきましてお諮りするという順序で進みたいと存じます。よろしゅうございましょうか。
 それでは安田課長さん、早速ですがお願いいたします。

【安田行政課長】
 それでは私のほうから、国・地方間の係争処理のあり方に関する研究会についてご説明させていただきたいと思います。資料1−1をごらんいただきたいと思います。
 まず、「開催趣旨」というところにございますけれども、ご案内のとおりでございますが、分権一括法によりまして国の地方公共団体に対する関与のあり方が見直されまして、本委員会でございますけれども、第三者機関による係争処理手続も整備されたわけございます。
 しかしながら、国の是正の要求・指示に対しまして、地方公共団体がこれに応じず、かつ、審査の申し出も行わない場合には、係争処理手続が活用されないということになりまして、問題が解決されないまま継続するという課題が残されていたわけでございます。最近になりまして、現実にこういう事態も生じてきているということがございまして、こういう課題に対してどのように対処すべきかという点に関しまして、この研究会を設置いたしまして調査研究を行っているところでございます。
 スケジュールでございますが、本年の7月に第1回の研究会を開催いたしまして、9月29日の第3回目の研究会まで3回の研究会を開催してきているところでございます。今後2回ほどで取りまとめを行いたいということで進めていただいているところでございます。
 資料1−2でございますけれども、研究会のメンバーの名簿でございます。座長は東京大学の塩野先生でございまして、国地方係争処理委員会の最初の委員長でございます。それから、委員にも青山先生が入っておられまして、青山先生は塩野先生の次の委員長ということでございますけれども、こういう方々で構成している研究会でございます。
 資料1−3は「国地方係争処理委員会制度の概要」でございまして、これは省略させていただきます。
 資料1−4をごらんいただきたいと思います。研究会における主な論点ということでございます。順次ご説明させていただきますと、幾つかの論点を設定しているわけでございますけれども、まず「総論について」ということでございますが、そもそも先ほど申し上げましたような課題に対してどのように考えるかということで、必要性についての議論を行っていただいているわけでございます。
 それから、「2.国等から訴え提起等に向けた手続きを開始できる場合について」と書いてございますけれども、仮にそういう制度を設けるとした場合に、どのような場合に国等から訴え提起を可能にするかということでございます。
 大きく2つございまして、まず、現在地方からの審査の申し出につきましては、是正の要求、許可、拒否その他の処分その他公権力の行使に該当する関与は、すべて審査の申し出の対象になっているわけでございますが、国等が訴え提起等をできる場合は、是正の要求、あるいは是正の指示を行った場合に限定するかどうかというのが1つ目の論点でございます。その場合、地方公共団体が不服申立期間等に不服申立等を行わなかった場合に限定すべきではないかというのがもう一つの論点でございまして、2つ目の論点はこういう点についてご議論いただいているということでございます。
 「3.訴訟の形態について」ということでございますけれども、新たな訴訟を考える場合には、いかなる訴訟の形態とすべきかということでございまして、違法確認型とすべきか、義務づけ型とすべきか等について議論をいただいているところでございます。
 それから、次のページでございますけれども、「4.『訴え提起に向けた指示』について」と書いてございますが、新たな訴訟を考える場合に、是正の要求等とは別に、訴え提起の前提として、是正の要求等の具体的内容を行うべき期限を定めて指示する「訴え提起に向けた指示」が必要かどうかをご議論いただいているということでございます。
 この意味でございますけれども、是正の要求については、自治事務についての関与ということがございますので、是正すべき具体的内容は地方の裁量によるという考え方をとっているわけでございます。したがいまして、このままの状況で訴訟を提起した場合に、訴訟物がどのように特定されるのかという議論があるために、改めての指示が必要かどうかを論点として挙げているということでございます。
 それから、「5.訴え提起に向けた『加重要件』について」ということでございますけれども、訴え提起を行う場合、特に自治事務の場合には、「違法である」ということに加えて、「明らかに公益を害していると認めるとき」という追加の加重要件を設けるべきかどうかという論点でございます。
 6番目の論点は、「判決の執行力を担保する仕組みについて」ということでございまして、訴訟を設けた場合に、そういうものを設ける必要があるのかどうか等についての論点でございます。
 7点目でございますけれども、「国地方係争処理委員会等の審査・勧告について」と書いてございますが、こういう訴訟を考える場合に、現在地方からの訴えの提起につきましては、国地方係争処理委員会の審査・勧告の前置が必要ということになっておりますけれども、国からの訴え提起の場合にも同様に考えるべきか、あるいは前置を必要としないとすべきかご議論いただいているということでございます。
 8番目の論点は、「国等からの訴え提起等以外の方策について」ということでございまして、こういう訴訟を設ける方法以外に、最初に設定した課題を解決する方法があるかどうかという論点でございます。
 資料1−5は、第2回目までの研究会で出された主な意見をまとめたものでございます。3回目の議論が反映されていないものでございまして、それについては今作成中でございますけれども、簡単に主な意見をご紹介させていただきたいと思います。
 まず、「1.総論について」の「国による訴え提起等の必要性について」につきましては、最初の丸にございますように、「国からの指示や要求に従わないことによって生じている不利益が当該団体限りにとどまるのであれば、当該団体の判断であり構わないのではないか。一方、国全体あるいは他の団体が重大な不利益を受けている場合や、当該団体の内部で人権侵害が生じているような場合には、国による是正措置が必要となるのではないか」といったように、ある程度要件を限定して訴訟制度を設けてはどうかという意見がございました。
 あるいは4つ目の丸でございますけれども、「およそ国法の適法性の維持は、国の責務であるから、公益を害するかどうかにかかわらず、国は違法な行為を是正すべきであるという、ドイツ的な議論もあり得るのではないか」というご意見もございました。
 その後、諸外国の立法例等についても、ドイツ、フランス、アメリカについて今まで研究会で発表がなされたわけでございますけれども、こうした国々ではいずれも適法性確保の手段があるということがわかってまいりまして、こうした国の状況を参照しながら判断すべきだという認識が広まっているところでございます。
 次に2ページでございますが、論点の2点目でございますけれども、「国等から訴え提起等に向けた手続きを開始できる場合について」ということでございまして、先ほど申し上げましたような、どういう関与について提起できるのか、いつ提起できるのかということが論点として設定されていたわけでございますが、2回目までの議論では地方公共団体側から審査の申し出が行われないまま申立期間が徒過した場合に訴えを提起できる、することを前提にいたしまして、そうした場合に関与の適法性が確定してしまうのかどうか、あるいは地方側から違法性の主張を認めるべきかどうかということについて、主に議論になったところでございます。
 まず、最初の丸でございますけれども、適法性が確定するかどうかという点につきましては、適法性が確定するということではないということでほぼ意見の一致を見たところでございます。
 次の丸でございますが、出訴期間を地方団体側から見て徒過した場合に国が訴訟を提起するケースにおいて、地方団体側から違法性の主張を認めるか、あるいは遮断するかということでございますが、遮断することはあり得るけれども、違法性の主張を認めるべきだという考え方もあり得て、両論の意見が出ているということでございます。
 その点について、4つ目の丸でございますけれども、裁判所の判決の事実上の権威で地方公共団体を従わせようということになるのであれば、申立期間が徒過した場合であっても、既に行われた是正の要求等の違法性について双方から主張を立証させて、裁判所が判断を下すべきという考え方はあるのではないかというご意見も出されているところでございます。
 それから、「3.訴訟の形態について」でございますけれども、論点のところでご説明申し上げましたように、義務づけ訴訟、違法確認訴訟があり得るということでございますが、いずれもあり得るという議論がなされております。さらに、最初の丸にございますように、差止訴訟の類型も検討対象となり得るという議論になっているところでございます。
 4ページ目でございますけれども、「『訴え提起に向けた指示』について」ということでございますが、最後の丸をごらんいただきたいと思いますけれども、「是正の要求等において地方公共団体の裁量を認めているとしても、そこで一度自治体に判断の機会を与えているのであるから、それを行わなかった場合に、国が、その範囲内である程度特定して、直ちに義務付け訴訟を起こすことができるとし、訴訟の前段階で改めて特定のための指示をする必要はないとすることは、可能ではないか」という意見など、不要という意見が多い状況にございます。
 それから、次に5ページでございますけれども、「訴え提起に向けた『加重要件』について」ということでございます。ここには何も記載されていないわけでございますが、第3回の委員会で議論になりまして、違法性だけを訴訟要件とすればよいという意見と、公益を害するかどうかを訴訟要件とすべきだという意見の両論が出されている状況にございます。
 それから、「6.判決の執行力を担保する仕組みについて」ということでございますけれども、「仮に執行力がない違法確認であったとしても、違法確認をすることによって一定の効果が生じる場合があるだろうから、それで良いのではないか」というご意見と、一方で、そもそも法律に従わない地方団体に対して、判決の執行力を担保する措置がなければ従わないのではないかという両方のご意見がございまして、担保措置の必要性はあるという意見もありましたが、一方で、我が国における行政事件訴訟の義務づけ訴訟でも担保措置がないことも考えるべきではないかという意見もあったところでございます。
 それから、「7.国違法係争処理委員会等の審査・勧告について」でございますけれども、訴訟提起に当たって前置を必要させるかどうかということでございますが、もともと地方分権推進委員会の第4次勧告で第三者機関による係争手続が勧告されたわけでございますが、その時点では国、地方両方からの第三者機関への提起という仕組みが検討されていたわけでございます。
 そうしたことを考えるべきではないかという意見もございましたが、一方で、今の国地方係争処理委員会は地方側の救済機関という位置づけになっているわけであるので、国側からの審査の申出はしっくりこないのではないかという意見、あるいは地方側が審査の申し出をしないときに、国が国地方係争処理委員会に提起するのはあまり意味がないのではないかという意見などが第3回で出されておりまして、消極的な意見のほうが多かったのではないかという印象を持っております。
 以上、雑駁でございますが、主な意見についてご紹介させていただきました。最初に申し上げましたように、10月、11月と委員会を開きまして、研究会としての方向性が出されるというスケジュールを予定しているところでございます。
 あわせまして、もう一点ご報告させていただきたいと思いますが、実は、最近の動きでございますけれども、新潟県の泉田知事が国地方係争処理委員会に審査の申出をしたいというコメントを出しているという内容の記事がございましたので、ご報告させていただきたいと思っております。
 10月14日の記事でございますけれども、北陸新幹線の整備問題でございまして、駅舎などの追加工事実施計画を国土交通大臣が認可したということでございますが、これについて泉田知事が、「手続きに重大かつ明白な瑕疵があり、無効だ」と抗議し、認可を取り下げるよう申し入れたという内容の記事でございます。
 「泉田知事は、『新幹線の整備は、国と地方の共同事業として進められるべきにもかかわらず、一連のやり方は、両者の信頼関係を失わせるもの』と主張。国と地方自治体の争いを処理する『国地方係争処理委員会』に審査を申し出るなどの措置も辞さない考えを示した」という報道でございます。
 以上でございます。

【磯部委員長】
 ありがとうございました。あり方委員会のことと、内容は別なんですけれども最近の話と合わせてご報告をいただきました。質疑は後でまとめてやることにいたしまして、引き続きまして、住基ネットの活用状況と住基ネット不接続団体に対する是正の要求につきまして、植田市町村課長さんからご説明をお願いしたいと思います。

【植田市町村課長】
 市町村課長の植田でございます。よろしくお願いします。右肩に資料2と書いてございます住基ネット関連の資料に沿いましてご説明させていただきます。
 先ほど安田課長から、国・地方間の係争処理のあり方に関する研究会の設立趣旨の中でございましたように、国の是正の要求に対して問題が解決しないまま継続するという課題が残されてきたところであり、現実にそのような事態が生じているということがございましたけれども、その現実の事態の一例として、住基ネットの案件がございます。
 1ページ目でございますが、具体的には、今住基ネットが全国で稼働しておりますけれども、矢祭町と国立市の2団体については接続されていないという違法状態が続いている状況でございます。特に、直近の矢祭の例を1ページに書いてございますけれども、矢祭町は住民基本台帳ネットワークシステムに不接続状態、平成14年8月5日から違法状態が続いているということでございまして、「経緯」の2つ目の四角のように、福島県知事から是正の勧告を2度実施しておりますが、それに対しても対応がなかったということで、今回是正の要求を地方自治法245条の5第2項に基づいて行った。「是正の要求」のところにございますように、矢祭町に対して是正の要求を行うよう総務大臣から福島県知事に対して指示を行い、矢祭町に是正の要求がされた。
 こういうことがあったんですけれども、一番下にございますが、法的効果として矢祭町が違法を是正するために必要な措置を講ずる義務が生じたわけですけれども、2ページに参りまして、2つ目の丸のところ、「矢祭町は、是正の要求に不服がある場合は、是正の要求のあった日(8月12日)から30日以内(9月11日)に、総務大臣に自治紛争処理委員の審査に付することを求める旨の申出をすることができ、自治紛争処理委員の勧告に不服があるときは、矢祭町は、高等裁判所に提訴できる」という状況であったにもかかわらず、結局何らの措置もなされず審査の申出期間30日も経過して、現在に至っているという状況でございます。
 3ページは、先ほど申しました不参加団体、国立と矢祭それぞれの経緯について改めてまとめてございます。
 4ページ以降に、具体的に住基ネット不接続によってだれにどういう不利益が現在生じているかということをまとめてございます。4ページが当該市町村の住民に生じる不利益、5ページが国・都道府県に生じる不利益、6ページが他の市町村に生じる不利益ということで、どういう不利益が生じているかということですけれども、まず4ページ目は国立、矢祭の住民の方々に生じる不利益ということで、1つは一番上の丸ですけれども、年金の現況届に係る届出書を提出することが必要である。従来は、全国において年1回はがきが各年金の受給者に来て、それに対してはがきを出し返して現況確認を行っていたんですけれども、住基ネットの稼働によってその事務が必要なくなったということがございますが、矢祭と国立の住民の方々だけは、いまだにはがきで送り返す作業が必要になっているという状況でございます。
 それから、2つ目はパスポート申請等の際に住民票の添付が必要。パスポートに限らず、さまざまな行政手続において住民票の添付が必要だというときに、住基ネットに接続していることによって添付が必要ないわけですけれども、矢祭、国立の方々だけは住民票を添付してそういう申請等を行わなければならないということ。
 それから、3つ目はe−Tax、国税の電子申告の関係でございます。平成19年と20年の電子申告については、e−Taxという手続を行うことによって5,000円の税額控除が行われるという仕組みがあったわけですけれども、その際には住基カードを使って手続を行うことになるんですが、住基カードが発行されていない矢祭、国立の2団体の住民の方々は、電子申告自体ができない状況にあるということでございます。
 そのほか、4つ目の丸が引っ越しをしたときの転出入の手続について、その次が住基カードが発行されないことによってカードの身分証としての活用ができない、あるいは住民票の広域交付を受けることができない等の不利益が生じているというところでございます。最後の年金については、後で出てまいりますので後ほどご説明します。
 5ページが、国・都道府県に生じる不利益ということでございます。一番上の丸が、国・都道府県が事務を行う際に本人確認をする必要が生じた場合、今住基ネットを使って行うことができるということですけれども、住基ネットに接続されていない場合は、一々例えば住民票を持ってきてもらう等の手作業で本人確認をする必要があるということ。
 それから、2つ目の丸で具体的に小さな点で4つほど書いてございますけれども、例えば年金の受給に関して、先ほど申しました現況届を住民の方ははがきで出さなければならないということがございますが、受ける社会保険庁のほうでは、現況届を印刷したり、郵送で出てきたはがきを確認する等の事務が生じてくるということ。それから、今住基ネットで現況確認の事務をやりますと簡単にできますので、年6回現況確認を行っているんですけれども、はがきでやると年1回ということで、どうしてもタイムラグが出てきてしまうという不利益もございます。
 それから、一番下にあるように、パスポートの申請等において別途の取り扱いが必要である。これは先ほど申し上げたところに関連しますけれども、それらの不利益が生じているということでございます。
 6ページが、他の市町村で生じている不利益ということで、転出、転入それぞれの市町村間で、こういう人が転入してきましたという通知を転出元の団体に行うという作業があるんですけれども、例えば国立に住んでいる人が、どこでもいいですが千代田区なら千代田区に引っ越しをするときに、引っ越し先の千代田区が国立市にこういう人が引っ越してきましたと転入の事実を通知しなければならないという事務があるんですが、今住基ネットで瞬時にできるんですが、国立の場合は住基ネットにつながっていないので、千代田区の職員の方がわざわざ郵送等で国立市に通知をしなければならないということが起こっています。
 2番目のポツは、戸籍についても今般そういう事務が生じまして、同じような状況が出てきているということ等が、他の市町村にも生じている不利益ということで記載してございます。それらの不利益がそれぞれについて生じているということでございます。
 7ページが、ご参考までに今住基ネットでどういう事務が行われているかということですけれども、左にございますように、住基法に定められた国の行政機関等、地方公共団体の事務の処理に関して、本人確認情報をそれぞれの機関に提供している。右のピンクの一番上ですけれども、今実際に国の行政機関等に対して、毎年1億1,000万件の情報が住基ネットから提供されているということがございます。非常に多くの情報提供がなされているということでございます。
 その他、ここにございますようなさまざまな情報提供等の利用がされておりまして、最終的な住基ネットによる効果ということで、毎年400億円を超える効果が生じているという試算があるところでございます。
 それから、最後に8ページでございますが、年金のことを先ほどちょっと申しかけましたけれども、実際にこういうことに住基ネットが活用、利用されているという一例でございます。消えた年金ということで、昨年なども非常に大きな議論になりましたけれども、社会保険庁で約5,000万件の未統合記録があった中で、真ん中の黄色の部分ですが、解明されない記録が2,000万件あった。その中で、住基ネットを活用して氏名の突合等を行うことによって、一番下の四角囲みですが、結果的に314万件の記録について住所情報等が判明したということがございます。
 このように、具体的に住基ネットが事務で有効に活用されているということですけれども、国立、矢祭の方々についてはこういうメリットというか、効果も受けられない状況であるというご説明でございます。
 私のほうからは以上でございます。

【磯部委員長】
 ありがとうございました。
 それでは、ご自由にご意見、ご質問等ございましたらお願いいたします。
 矢祭町は、別段何も動いていないということですね。

【植田市町村課長】
 はい。何のアクションもないままに現在に至っているということです。

【磯部委員長】
 議会とか住民も特段何も動きはない。

【植田市町村課長】
 そうでございますね。議会も町長の考え方に近い方のほうが多いという状況でございます。あと、住民からも特に大きな動きはないという。

【磯部委員長】
 国立も同様ですか。

【植田市町村課長】
 そうですね。

【磯部委員長】
 e−Taxの減税を受けたいという人がいても不思議はないけれど。

【植田市町村課長】
 国立市も、人口自体7万人以上ございますので。ただ、国立の場合は、市会議員の方々で非常に問題意識を持っていらっしゃる方がいるようでして、その中では、何らか具体のアクションが必要だという議論はしていらっしゃるということをお伺いしております。

【磯部委員長】
 しかし、議会で質問が行われたりとかいうことではないですか。

【植田市町村課長】
 いや、質問自体は議会の中ではなされているようでございますが、例えばさっきのe−Taxの5,000円のメリットを受けられないということで訴訟を起こすとか、具体のアクションはまだ今の段階ではないという状況です。

【久元自治行政局長】
 国立は、是正の要求の前に、議会は1票差で接続すべきだという決議をしているんです。それから、当然接続すべきではないか、違法ではないかという質問は、市長に反対する方々からは相当多数行われております。

【岩崎委員】
 矢祭は、不参加の理由はどう説明しているんですか。

【植田市町村課長】
 個人情報を十分保護できないのではないかという問題意識を持っているということが1つと、あと、公式かどうかは別にして、国に対してきちんと物を言うべきだとおっしゃる議員さんもいたようではありますが、いずれにしても、先ほど申し上げた個人情報の部分が一番大きな理由だと伺っております。

【磯部委員長】
 杉並区は接続して、その後特段問題は落着という感じなんですか。

【植田市町村課長】
 はい。杉並区は区自体が訴訟を起こしていたのですが、最高裁の判決が出たのを契機に接続しました。

【磯部委員長】
 だれも文句も言わない。
 というわけで、いかがですか。これは制度の欠缺があるという問題なので、あり方委員会の方で検討するということかと思いますけれども。そうそうたるメンバーでご議論いただいているわけで、いかがですか。この委員会は、ほんとうに専門的な観点から理論的な問題点を検討して、制度設計をきちんとしようということですよね。しかし、この事柄は法律論だけで決まるのか、それとも政治的な、もう少しマクロな視点も必要なのかもしれなくて、そういう視点が必要かどうかということも問題なのかもしれないんですけれども。

【安田行政課長】
 現実に制度化するということになった場合には、地方団体側からいろいろな意見が出てくるんだろうと思います。そういう調整も必要というのも出てくる可能性はあると思います。

【磯部委員長】
 前に地方制度調査会で議論になったときに、うろ覚えですが、確かに制度的にちょっとおかしいかもしれないけれども、大局的に見れば国のほうがより支配的なのであって、自治体が少しくらい言うことを聞かないからといって、かさにかかって殊さら制度までつくって、言うことを聞けというほどのことでもないのではないかというご意見もあったように記憶しているんですが、そんな感じはあるんですかね。

【安田行政課長】
 研究会におきましても、最初にご紹介いたしましたように、必要性についてもいろいろなご意見がございまして、例えば住民訴訟とか他の手段によってカバーできる場合にはそれでいけばいいのではないか、ほんとうにそれだけの必要性があるのかという議論もございました。ただ、もう一つには、今の住基のように、数はそう多くございませんけれども具体にそういう事実、いわば立法事実が出てきている。
 それから、途中でもご紹介いたしましたけれども、諸外国の例を研究会で発表いただいて検討しましたところ、今議論したのは3カ国でございますが、何らかの形で地方公共団体が国法等に違反する行政を行った場合の適法性確保の仕組みを設けているということがありまして、まだ結論は出ていないわけでございますけれども、そういうことを十分参考にしながら考えるべきではないかという意見も多いように記憶してございます。

【篠ア委員】
 今3カ国とおっしゃったのは、どことどこですか。

【安田行政課長】
 今まで議論したのは、ドイツ、フランス、アメリカでございます。次回の研究会でイギリスを検討する予定にしてございます。

【岩崎委員】
 ドイツとアメリカは連邦国家なので、地方自治体は州の管轄になると思うんですけれども、その場合は州法に違反した話ですか、それとも国法ですか、両方ですか。

【安田行政課長】
 基本的には州法違反ということでございます。

【岩崎委員】
 そうしたら、各州が適法性確保の手段を持っている。

【安田行政課長】
 はい。

【岩崎委員】
 すべての州が持っているということですか。

【安田行政課長】
 すべての州といいますか、州ごとに異なるとは思うんでございますけれども。

【岩崎委員】
 異なってもいいんですけれども、要は適法性がカバーされている。

【安田行政課長】
 それは、すべて行政的な手法ということではございませんで、裁判所に司法的な手法でということでございまして、マンデマスの訴訟でございますとか一般訴訟の類型があるということでございます。

【磯部委員長】
 さっき加重要件の話がありましたよね。違法であるというだけじゃなくて、放置しておくことが公共の福祉に反する場合初めて強制できる、訴えができるというふうにする。そうすると、住基ネットなんていうのはどっちなんだろうという話もなさっているわけですか。

【安田行政課長】
 それは、加重要件を設けたら該当しなくなるのではないかという疑問でございます。今植田課長のほうからご説明申し上げましたように、公益上大変重要でございますけれども。

【磯部委員長】
 重要だといえば重要ですよね。しかし大部分がもう接続していて機能しているのだから、ほんの少しの例外市町村があったとしても、大したことないではないかという議論もあり得るのでしょうか。それともそういう話ではなくて、やはり違法なものをそのまま存置、存続すべきではないという話なのか。

【安田行政課長】
 加重要件は必ずしも必要ではないのではないかというご意見もかなり有力であったんでございますけれども、一方で現行の自治法で代執行を行う手続が定められておりまして、この場合の発動要件が、それを放置することにより著しく公益を害することが明らかであるときという加重要件を設けているということがございまして、そうしたものとのバランスを考えるべきではないかという意見もございました。そういう意味で、両論とご紹介申し上げた次第でございます。

【磯部委員長】
 国地方係争処理委員会の前置手続が必要かどうかというあたりは、かなり我々に影響するわけですけれども、だからというわけじゃないですが、分権委員会は最初、国地方係争処理委員会は両側から争えるニュートラルな委員会としてつくられたというイメージだったと思うんですけれども、実際にできたのは、専ら自治体の側からの救済の駆け込み寺のようにしてというイメージなんですよね、きっと。それにそぐわないのではないかというご紹介だったんですね。

【安田行政課長】
 さようでございます。

【磯部委員長】
 そう言われればそうなんですかな。

【安田行政課長】
 この委員会の性格という議論と、もう一つは、若干触れさせていただきましたけれども、地方側が国地方係争処置委員会に審査の申出をしなかったという状況のもとで、国がここに審査の申出をしたとしても、地方が果たして出てくるのかということで、実質的にどれだけの意味があるのかという点もあるのではないかという議論があったかと思います。

【磯部委員長】
 それから、判決の執行力を担保する仕組みは、何もこれに限らないのではないか。およそどんな判決だって、国が当事者になって敗訴したら、黙って金を払ったりしてきているわけですから、国に対する強制執行ということは考えずに済んできた。判決が出ても執行しない公共主体というものが出てきたときには、そこは手当てが何もないではないかと言われればそのとおりなんだけれども、こういう議論は憲法学で何かありますかね。

【長谷部委員長代理】
 しかし、先生がおっしゃるように一般的な制度をつくろうとすると、総務省限りでという話ではなくなってきますね。先生が気にしておられるのは、ここだけ間接強制をつくるのは、いかにも突出した感じにならないかということですか。

【磯部委員長】
 いや、ここは特別なんだという考え方もあるだろうし、全体を見通してやるべきではないか、迷いますねという話なんですけどね。国とか地方公共団体は常に善良な当事者なのである、判決で命じられたら必ず執行するのであるという前提で、大抵の国は制度ができているんだろうと思うんですけど。

【長谷部委員長代理】
 ただ、国のほうが判決の言うとおりにするのが遅れて、例えば国が持っている貯金だか預金だかに強制執行がかかるということがあるわけですよね。

【磯部委員長】
 ありますね。郵便局か何かに入って差し押さえるみたいな。

【長谷部委員長代理】
 実は、私数年前にイギリスに行って、イギリスでも同じことがあるかと言って、そんなことはあるわけないと言われましたけどね。国のほうに対する強制執行はないんだという話をしていました。

【磯部委員長】
 フランスもそうだったと思います。それは考えにくいことであるという。だから、日本のほうが、公権力主体である国家と債務を負う普通の経済主体と同じ立場の国家を分けているということかもしれないですけど。

【長谷部委員長代理】
 少なくとも、私経済行政に類似の構造をしている限りにおいてはということでしょうか。

【磯部委員長】
 国家賠償判決が出た場合はそういうことになるということなんでしょうけどね。あまり議論されていない論点ですね。

【長谷部委員長代理】
 これは行政法の先生方に。

【磯部委員長】
 行政法だけでやっていいのかどうか。この制度は特別なんだと考えていくのか、広く訴訟一般、裁判所と行政権の関係という議論にかかわると考えていくのか。

【安田行政課長】
 アメリカなどでは法廷侮辱罪みたいなことで、裁判所の判決に従わない場合には一般的にペナルティーを科されるということも中で議論になりました。

【磯部委員長】
 英米法的な発想を採用できるかどうかですよね。

【安田行政課長】
 ただ、そうなるとここだけの問題じゃないということになりますね。一方で、違法と認めた上でなお法律に従わない地方公共団体であれば、裁判所が判決を出したとしてもそれに従わないことが想定されるんじゃないかという議論。

【磯部委員長】
 そういうことですね。

【安田行政課長】
 実際の事案として紹介されましたのが、磯部委員長のご論文にもありましたようですけれども、日ノ出町というところで産廃処分の関係の情報公開か何かだったと思いますが、間接強制金の支払い命令に従わなかったというケースがございました。それから、滋賀の豊郷町というところで、小学校の校舎の取り壊しの差しとめ命令があったんですが、一時期町長が従わないで取り壊しを強行しようとして、住民との間にいろいろあって、最終的にはとまったんでございますけれども、こういう案件があって、最後は豊郷の件はとまったわけですし、日ノ出の件は支払い命令が取り消された、判決が変わったということがございまして、こういうのをどう評価するかという議論もあったと記憶しております。

【磯部委員長】
 いずれにせよ、制度をつくったときは、自治体は善人であるという性善説に立っていたことはたしかで。

【長谷部委員長代理】
 むしろ、国のほうが悪いことをするんじゃないかというふうになっていたんですね。

【磯部委員長】
 それでつくったものですから。
 それでは、特に資料1、資料2に関しましてさらにご意見、ご質問等がなければ、「委員会の公開について」という件でございます。ちょっとご相談しておきたいということで、これも安田課長からご説明をお願いいたします。

【安田行政課長】
 それでは、資料3に基づきましてご説明させていただきたいと思います。当委員会の会議の公開についてということでございます。
 1に現行の規則等について記載させていただいておりますが、まず「国地方係争処理委員会の議事の公表について」は、当委員会で申し合わせをしたということで13年に取りまとめをしているものでございますが、ここでは「委員会は、公開することにより、公正かつ中立な審議に著しい支障を及ぼすおそれがあるため、原則として、非公開とする。ただし、委員会が必要と認めるときは、公開することができる」と、非公開を原則とすることにいたしているわけでございます。
 また、「国地方係争処理委員会の審査の手続に関する規則」では、第12条で「当事者等が出席する審査は、委員会が公開とすることを相当と認める場合に限り公開する」ということで、限定をつけた上で公開するという形にしているわけでございます。これを、最近の他の審議会等についての規定と比較してみたときに、こういう規定の縛りのままでいいのかどうか、その是非についてご論議いただきたいということでございます。
 「2.閣議決定」とございますが、審議会の公開について一般的に記述しておりますのが、平成7年の「審議会等の透明化、見直し等について」という閣議決定でございます。4の(1)で審議会等の公開について記載しておりますが、「審議会等の具体的運営は、法令に別段の定めのある場合を除き、当該審議会等において決定されるべきものである」としております。その上で、「一般の審議会は」ということで、実はこの一般の審議会というのは紛争処理等を審議する審議会以外の審議会でございまして、当審議会については必ずしもこの後の記述の対象にならないわけでございますけれども、「原則として、会議の公開、議事録の公開などを行うことにより、運営の透明性の確保に努める」ということを一般的な原則として定めているところでございます。
 2ページに「他の審議会の例」ということで、同じように紛争処理等を取り扱う審議会の例を幾つか調べてみました。事例1が電波監理審議会でございますけれども、ここでは法令上公開に係る規定はないわけでございますけれども、運営上こういう取扱いということでございまして、不服申し立てに係る審査については、審理官がまず当事者の意見陳述等を聞くということになっておるわけでございますが、審理官の審理は公開するということでございます。審理官の意見書を受けて、電波監理審議会自体がその内容を合議して決定するという手続でございますが、合議と決定は非公開になっているということでございます。
 公害紛争処理法でございますけれども、ここでの手続は法律に定められております。まず審問という手続がございまして、審問を開いて当事者の意見を陳述させるという手続になっているんでございますけれども、審問は公開して行うという規定になっています。ただし、裁定委員会が裁定するわけでございますが、裁定委員会が一定の事由があって必要があると認めるときはこの限りでないと、法律第42条の15に定められているということでございます。
 今のが審問の手続についての規定でございますが、その上で、裁定自体は合議によって行うということになっておりまして、その過半数によって決定するという規定になっているわけでございますけれども、合議自体は公開しないという規定が第42条の11にございます。
 事例3が公害健康被害の補償等に関する法律でございまして、これもほぼ同様の規定でございますけれども、当事者等の意見を聞く手続である審理は公開して行う。ただし、当事者の申し立てがあったときは公開しないことができるという規定になってございます。これは合議体で決定しますが、審査会の合議は公開しないとなっているということでございまして、こうした規定を勘案いたしますと、意見の集約を行う合議自体は公開しない、関係者の意見を聞く審問や審理は公開で行うけれども、例外的に公開しないという扱いでございますので、こうした点を踏まえて3ページでございますけれども、このように改正することが考えられるのではないかということで案を用意させていただいております。
 まず、議事の公表についてですが、現行は先ほどごらんいただきましたように、「原則として非公開とする。ただし、必要があると認めるときは公開することができる」としておりますが、これを「委員会は、審査に係る合議を除き公開する。ただし、公開することにより、公正かつ中立な審議に著しい支障を及ぼすおそれがあると認められるときその他委員会が必要と認めるときは、公開しないことができる」と、原則と例外を逆転して書いてはいかがかということでございます。
 それから、規則につきましては、現行はごらんいただきましたように、「委員会が公開とすることを相当と認める場合に限り公開する」としておりますが、これを「審査は、公開する。ただし、公開することにより、公正かつ中立な審議に著しい支障を及ぼすおそれがあると認めるときその他委員会が必要と認めるときは、公開しないことができる」としてはどうかということでございます。
 ちなみに、当委員会で横浜の勝馬投票券発売税に係る審査を行ったときには、合議については非公開、関係者からの陳述等については公開ということで運営されていたと私どものところには記録が残っている次第でございます。
 以上でございます。

【磯部委員長】
 ありがとうございました。以上の件で何かご質問、ご意見等ございますでしょうか。これは、特にほかのセクションから言われたからという話ではなくて、自発的にするわけですね。

【安田行政課長】
 私どものほうで、実態はあまり変わらないと思うんでございますけれども、原則と例外を逆転して書いたほうがということでございます。

【磯部委員長】
 平成13年に決めたときに、既に平成7年の閣議決定があったわけですけれども、国と地方が本音でやり合うことになるわけだから、公開するわけにいかんと考えたんでしょうね。

【安田行政課長】
 審議の詳しい経緯はわからないんでございますけれども、そういう推測は考えられると思うんでございます。

【磯部委員長】
 実質は変わらないのだろうと思いますが、原則と例外を変えるということでして、今の世の中はこの方向にあるのだろうと思いますけれども、よろしゅうございますか。
<異議無し>
 それでは、「国地方係争処理委員会の議事の公表について」と、「国地方係争処理委員会の審査の手続に関する規則」の改正につきましては、原案どおり決定させていただきます。形式は審査規則ということで官報に掲載することを予定しておりますので、官報掲載の日から施行するということでよろしゅうございましょうか。
<異議無し>
 また、まずないとは思いますけれども、念のためですが、軽微な文言の修正を行う必要がある場合には、その修正につきまして委員長に一任していただくということでよろしゅうございましょうか。
<異議無し>
 ありがとうございます。
 それから、下の規則のほうを官報に掲載するんですね。

【安田行政課長】
 さようでございます。

【磯部委員長】
 「国地方係争処理委員会の議事の公表について」というほうは特に公表するものではないという。

【安田行政課長】
 そのとおりでございます。

【磯部委員長】
 以上で予定の議題はすべて終了いたしましたが、特にご発言はよろしゅうございましょうか。
 それでは、これをもちまして閉会とさせていただきます。

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国地方係争処理委員会
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