働き方改革×チャットツールのビジネス活用

 働き方改革の目的には、多様な働き方の実現や業務効率化による生産性向上といったものがありますが、その実現には、従前の業務プロセスの見直しや、テレワーク導入によるワークスタイルのフレキシブル化など様々な施策を講じる必要があります。このような中で、チャットツールは、働き方改革の障壁となる課題を解消するものとして注目されています1。
 
 チャットツールは、主にSkypeやFacebook Messenger、LINEなどのように個人同士でのコミュニケーションに用いられるものが有名ですが、近年では、「チャットワーク」2や「Slack」3などのビジネス用途のチャットツールを導入する企業が増えています。これらを導入することで、プロジェクトやチームのマネジメント面での業務効率の改善が期待されています。

 今回は、ビジネス用途のチャットツールを用いた業務での活用・改善事例について紹介します

■企業におけるチャットツールの普及状況

 民間企業では、年々チャットツールが普及しつつあります。一例をあげると、伊藤忠テクノソリューションが、2017年2月に実施した大手企業の役職者を対象にした「大手企業のビジネスチャットツール導入事例調査」4によると、正式に個人向けのチャットツールやビジネス用途のチャットツールを「全社で導入している」と回答した企業が12.1%、「一部で導入している」が16.0%といった結果となり、約30%の企業がチャットツールを導入していることが明らかとなっています。

 導入しているチャットツールは、「主に社員がPCで業務する」企業(206社)をみると、「Skype」が30.5%、「Facebook」が15.3%、「Microsoft Teams」が11.9%で、「主に社員が携帯電話/タブレットで業務する」企業(206社)については「LINE」が24%、「Facebook」19.8%、「Skype」が16.8%でした。

 導入の基準に関しては、「使いやすさ」が21.6%、「セキュリティ」が20.6%、「業務効率化」が15.6%、「安心感(開発している会社に信頼がある等)」が15.1%となり、使いやすさとセキュリティ(安全・安心)が重要な基準となるようです。

 導入した理由に注目すると、「スピーディーなコミュニケーションができる」が23.6%、「会議時間の短縮が期待できる」が15.7%、「複数人での情報共有が容易になる(他部署間でのコミュニケーション活性化等)」が13.9%となっており、時間短縮による生産性向上やコミュニケーション活性化による情報流通といったメリットが期待されているとのことです。

 このように、大手企業におけるチャットツールの利用は現状で全体の約3割ですが、セキュリティや管理機能を備えた企業向けのビジネスチャットツールの利用が本格化していく中で、同市場が拡大していくことが期待されています。

■チャットツールのビジネス活用事例

 次に、ビジネスチャットツールのチャットワークを導入し、業務改善を行った具体的な事例を紹介します。
 
(1)東洋アルミニウム株式会社の事例4
【導入以前の課題】
・工場での時間外労働
・膨大なメール処理
・長時間の会議
【導入の決め手】
 営業の若手による提案。複数のツールから選定。コミュニケーションを効率化させる機能を有し、国内企業への導入実績やセキュリティ、サポート面などを検討の上で導入決定。
【解決策】
・報告・連絡・相談、決裁をチャット上で行う
・製品、テーマごとのグループチャットで情報の一元化
・会議前に資料をチャットでアップロード
【導入後の効果】
・意思決定の迅速化及び業務時間の短縮(時間外労働の低下)
・事前の資料共有による会議時間の大幅な短縮
・ビデオチャットによる顧客対応の質の向上
 

(2)株式会社サイバーエージェントの事例5
【導入以前の課題】
・一般的なソーシャルサービス利用によるシャドーIT6問題
・メール使用による顧客とのコミュニケーションでの非効率さ(スピーディーさに欠け効率が悪い)
【導入の決め手】
 サービス関連部署がすでに導入しており、営業職が多い事業部で試用して導入決定。
【解決策】
・役員を巻き込んだ全社導入
・業務プロセスをチャットに流すように変更
・顧客とのやり取りをメールからチャットワークに切り替え
【導入後の効果】
・セキュリティに厳しい大企業とのリアルタイムなやり取り
・事業本部全体で一月あたり2万5千時間以上の業務効率化
・顧客を中心とした子会社、関連会社などグループ全体でのプロジェクト推進
 

このように、両社とも導入以前の課題に対し、ビジネス用途チャットツールを導入することで社内外におけるコミュニケーションスピードの向上、ツールを前提とした業務プロセス刷新による業務効率化とサービス品質改善の両立といった成果を得られています。

■今後の展望

ビジネス用途のチャットツールの導入は、働き方改革の推進を後押しすることを可能とします。これらを導入している企業は、社内外とのコミュニケーション効率化、及びチャットツールを軸としたビジネスプロセスの見直しによる生産性の向上、個人用のソーシャルメディア利用が引き起こすシャドーIT化の防止によるガバナンス・セキュリティの強化といった効果を享受しています。
企業が働き方改革を進める中で、ビジネス用途のチャットツールを導入する企業は増加していくと予想されており、今後も注視していく必要があるでしょう。

脚注

[1]  近年では、業種によって最適とされるチャットツールの導入も進められています。米シンフォニー・コミュニケーション・サービシズ(カリフォルニア州)は、金融業界などの法人向けチャットルツールを開発し、2018年中には日本でも提供を始める予定となっています(日経産業新聞2018年1月15日)。

[2]  チャットワークは、グループチャット・タスク管理・ファイル共有・ビデオ通話/音声通話を兼ね備えており、世界223カ国・約167,000企業で導入されています。2018年2月には大和証券へのサービス提供を始めるなど 、多くの企業へ導入実績があるビジネスチャットツールです。
https://go.chatwork.com/ja/ 

[3]  Slackは、グループでの会話を柔軟に行うことや、一部のメンバーのみで会話できる非公開チャンネル、個別に連絡できるダイレクトメッセージ機能などを備えています。連携する外部アプリは1000を超えており、メールの管理やスケジュールの通知など仕事の効率化をサポートする機能を有しています。
https://get.slack.help/hc/ja 

[4] 伊藤忠テクノソルーションズ株式会社「大手企業のビジネスチャットツール導入実態調査を実施」(平成29年)
実施期間:2017年2月3日〜2月4日
調査対象:全国売上規模100億円以上、従業員数200名以上の企業に勤務する経営者・
役員・係長・リーダークラスの役職者を対象。
有効回答数:412
調査方法:インターネット調査
http://www.ctc-g.co.jp/news/press/20170413a.html

[5] ChatWork株式会社請求資料「「働き方改革」で若手発案のビジネスチャットを導入-なぜ東洋アルミニウムはビジネスチャットを導入したのか-」

[6] ChatWork株式会社HP
https://go.chatwork.com/ja/case/cyberagent.html

[7]従業員が所属する企業が管轄していないIT機器やサービスを利用することです。許可外のデバイスで社内システムにアクセスすることや、外部サービスで業務データをやり取りするなど、セキュリティトラブルの原因とされています。
 

問い合わせ先

連絡先:情報流通行政局
情報通信政策課情報通信経済室
電話:03-5253-5720
FAX:03-5253-6041
Mail:mict-now★soumu.go.jp
(★をアットマークに変換の上、お問い合わせください)
 

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