7 公営企業等の状況
地方公共団体の会計のうち普通会計以外として区分される公営事業会計においては、水道、交通、病院等の公営企業のほか、国民健康保険事業、後期高齢者医療事業、介護保険事業等について経理がなされており、その決算の状況等は以下のとおりである。
(1)公営企業等
公営企業は地方公共団体が経営する企業であり、料金収入をもって経営を行う独立採算制を基本原則としながら、住民生活に身近な社会資本を整備し、必要なサービスを提供している。また、地方独立行政法人が経営する企業である公営企業型地方独立行政法人(*)においても、公営企業と同様の役割を果たしている。
公営企業及び公営企業型地方独立行政法人(以下「公営企業等」という。)の全体及び事業別の決算について、法適用企業(公営企業型地方独立行政法人を含む。以下同じ。)と法非適用企業に分けてその状況をみると、以下のとおりである。
ア 概況
(ア)事業数
令和5年度末において、公営企業を経営している団体数は1,780団体(一部事務組合等のみで公営企業を経営している7団体及び特別区を含む。)である。
また、公営企業型地方独立行政法人を設立している団体数は63団体(一部事務組合等のみで公営企業型地方独立行政法人を設立している4団体を含む。)であり、公営企業型地方独立行政法人が経営している事業は全て病院事業となっている。
公営企業等の事業数は7,993事業(建設中のものを含む。)で、水道事業及び下水道事業における事業統合等により、前年度末と比べると62事業減少している。これを事業別にみると、第52図のとおりである。
(イ)事業の状況
公営企業等は、住民の生活水準の向上を図る上で大きな役割を果たしている。各事業全体の中で公営企業等が占める割合は、第21表のとおりである。
(ウ)決算規模
決算規模は18兆6,402億円で、物価高騰による営業費用の増加等により、前年度と比べると1.1%増となっている。
決算規模の推移は、第53図のとおりである。
(エ)全体の経営状況
法適用企業と法非適用企業を合わせた全体の経営状況は第22表のとおりであり、黒字事業数は全体の82.6%、赤字事業数は17.4%となっている。全体の総収支は4,711億円の黒字で、物価高騰による営業費用の増加等や病院事業における国庫補助金等の減少等により、前年度と比べると42.0%減となっている。また、赤字額は3,201億円で、前年度と比べると127.4%の増となっている。
(オ)料金収入
料金収入は9兆8,107億円で、病院事業における診療収入の増加、交通事業における旅客数の増加等により、前年度と比べると2.1%増となっている。
これを事業別にみると、第54図のとおりである。
(カ)建設投資額の推移
建設投資額の推移は第55図のとおりであり、令和5年度の額は4兆3,031億円で、前年度と比べると4.2%増となっている。
建設投資額が前年度より増加した主な事業は、水道事業(対前年度比5.5%増)、病院事業(同18.0%増)、下水道事業(同2.3%増)となっている。
(キ)企業債の状況
資本的支出に充当された企業債の発行額の状況は第56図のとおりであり、発行額は2兆4,840億円で、前年度と比べると7.4%の増となっている。
また、企業債現在高の令和5年度末の総額は35兆5,005億円で、前年度末と比べると2.4%減となっている。
(ク)他会計繰入金の状況
他会計からの繰入金は2兆9,076億円で、下水道事業における企業債元利償還金に対する繰入金の減少等により、前年度と比べると0.6%減となっている。
この内訳をみると、収益的収入(*)として2兆404億円(収益的収入に対する繰入金の割合14.0%)、資本的収入(*)として8,673億円(資本的収入に対する繰入金の割合19.7%)となっている。
これを事業別にみると、下水道事業への繰入額が最も大きな割合(繰入額総額の54.3%)を占め、以下、病院事業(同29.7%)、水道事業(同7.4%)の順となっている。
(ケ)法適用企業の経営状況
a 損益計算書、貸借対照表
損益計算書の状況は第57図のとおりであり、令和5年度は、総収益が総費用を上回り、総収支は黒字となっている。
また、物価高騰による営業費用の増加等により総費用は増加し、営業外収益(病院事業における国庫補助金等)の減少等により総収益は減少している。
貸借対照表の状況は第58図のとおりであり、下水道事業等の法適用事業数の増加等により、資産が増加している。
b 損益収支(*)
法適用企業の総収益(経常収益+特別利益)は14兆1,153億円、総費用(経常費用+特別損失)は13兆7,366億円となっている。この結果、純損益は3,787億円の黒字となっており、総収支比率は102.8%と前年度より2.7ポイント低下している。また、経常収益(営業収益+営業外収益)は14兆196億円、経常費用(営業費用+営業外費用)は13兆6,432億円となっている。この結果、経常損益は3,763億円の黒字となっており、経常収支比率は102.8%と前年度より2.6ポイント低下している。
経常収支比率の推移をみると、平成3年度以降100%を下回る状況が続いていたが、平成15年度からは21年連続で100%を上回っている。
なお、純損益及び経常損益における黒字・赤字事業数及び黒字・赤字額は、第23表のとおりである。
c 資本収支(*)
建設投資や企業債の償還金等の支出である資本的支出は7兆4,008億円で、前年度と比べると3.1%増となっている。これに対する財源は、企業債等の外部資金が3兆8,944億円、損益勘定留保資金等の内部資金が3兆3,736億円で、資本的収入額が資本的支出額に不足する額である財源不足額は1,328億円となっている。
資本的支出のうち建設改良費は4兆337億円で、前年度と比べると5.0%増となっている。建設改良費が大きい事業は、下水道事業(建設改良費総額の41.8%)、水道事業(同36.5%)、病院事業(同12.6%)である。
d 累積欠損金
過去の年度から通算した純損益における損失の累積額である累積欠損金は3兆7,831億円で、前年度と比べると2.4%増となっている。また、累積欠損金合計額に占める割合が大きい事業は、病院事業(累積欠損金合計額の44.9%)、交通事業(同37.8%)である。
e 不良債務
令和5年度末現在において、流動負債の額(建設改良費等の財源に充てるための企業債等を除く。)が流動資産の額(翌年度へ繰り越される支出の財源充当額を除く。)を上回る場合の当該超過額である不良債務は1,145億円で、前年度と比べると0.4%増となっている。不良債務の大きい事業は、交通事業(不良債務額総額の51.1%)、下水道事業(同30.6%)、病院事業(同13.2%)である。
(コ)法非適用企業の経営状況
法非適用企業の実質収支をみると、黒字事業数は法非適用企業全体の97.3%、赤字事業数は2.7%を占めており、全体では924億円の黒字(前年度749億円の黒字)となっている。
(サ)資金不足額の状況
資金不足額(*)の状況を事業別にみると、第24表のとおりである。
資金不足額がある公営企業会計数は43会計であり、前年度より14会計増加しており、資金不足額は97億円となっている。
イ 事業別状況
(ア)水道事業
a 事業数
(a)上水道事業
地方公共団体が経営する上水道事業で、令和5年度決算対象となるものは1,299事業であり、このうち、末端給水事業は1,230事業、用水供給事業は69事業(うち建設中2事業)である。
(b)簡易水道事業
地方公共団体が経営する簡易水道事業で、令和5年度決算対象となるものは458事業(うち法適用169事業(うち建設中2事業))である。
b 経営状況
(a)法適用企業
<1> 損益収支
水道事業の総収益は3兆2,136億円、総費用は2兆9,710億円となっており、この結果、純損益は2,426億円の黒字、総収支比率は108.2%となっている。また、経常収益は3兆2,030億円、経常費用は2兆9,587億円となっており、この結果、経常損益は2,444億円の黒字、経常収支比率は108.3%となっている。純損益及び経常損益における黒字・赤字事業数及び黒字・赤字額は、第25表のとおりである。
累積欠損金は707億円で、前年度と比べると5.9%増となっている。また、不良債務は3億円で、前年度と比べると41.3%増となっている。
<2> 資本収支
資本的支出は2兆943億円で、前年度と比べると2.9%増となっている。これに対する財源は、外部資金が8,146億円、内部資金が1兆2,736億円で、財源不足額は62億円となっている。資本的支出の内訳をみると、建設改良費は1兆4,742億円で、前年度と比べると5.9%増、企業債償還金は5,628億円で、前年度と比べると2.0%減となっている。
<3> 給水原価と供給単価
有収水量1m3当たりの給水原価(用水供給事業を除く。)は178.15円(資本費59.82円、職員給与費20.50円、受水費28.60円、その他の経費69.23円)、1m3当たりの供給単価(用水供給事業を除く。)は173.63円となっており、供給単価が給水原価を4.52円下回っている。
また、令和5年度中に料金改定を実施した水道事業(用水供給事業を含む。)は91事業(前年度90事業)で、営業中の事業の6.2%となっている。
(b)法非適用企業
簡易水道事業における法非適用企業は289事業で、実質収支をみると、黒字事業が283事業で58億円の黒字となっており、赤字事業が6事業で125百万円の赤字となっている。
(イ)工業用水道事業
a 事業数
地方公共団体が経営する工業用水道事業で、令和5年度決算対象となるものは150事業(うち建設中3事業)である。
b 経営状況
(a)損益収支
工業用水道事業の総収益は1,638億円、総費用は1,405億円となっており、この結果、純損益は233億円の黒字、総収支比率は116.6%となっている。また、経常収益は1,437億円、経常費用は1,279億円となっており、この結果、経常損益は158億円の黒字、経常収支比率は112.3%となっている。純損益及び経常損益における黒字・赤字事業数及び黒字・赤字額は、第26表のとおりである。
累積欠損金は302億円で、前年度と比べると20.3%減となっている。また、不良債務を有する事業はない。
(b)資本収支
資本的支出は1,024億円で、前年度と比べると0.5%減となっている。これに対する財源は、外部資金が425億円、内部資金が595億円で、財源不足額は4億円となっている。資本的支出の内訳をみると、建設改良費は628億円で、前年度と比べると5.5%減、企業債償還金は255億円で、前年度と比べると2.0%増となっている。
(c)給水原価と供給単価
有収水量1m3当たりの給水原価は29.12円(資本費11.96円、職員給与費3.16円、その他の経費14.00円)、1m3当たりの供給単価は31.29円となっており、これを補助事業と単独事業に分けてみると、単独事業では供給単価(17.28円)が給水原価(14.50円)を2.78円上回っており、補助事業では供給単価(34.77円)が給水原価(32.75円)を2.02円上回っている。
(ウ)交通事業
a 事業数
地方公共団体が経営する交通事業で、令和5年度決算対象となるものは85事業である。これを事業別にみると、バスが23事業、都市高速鉄道が9事業、路面電車が5事業、モノレール等が2事業、船舶が46事業となっている。
b 経営状況
(a)法適用企業
<1> 損益収支
法適用の交通事業の総収益は6,404億円、総費用は5,881億円となっており、この結果、純損益は523億円の黒字、総収支比率は108.9%となっている。また、経常収益は6,385億円、経常費用は5,873億円となっており、この結果、経常損益は511億円の黒字、経常収支比率は108.7%となっている。純損益及び経常損益における黒字・赤字事業数及び黒字・赤字額は、第27表のとおりである。
累積欠損金は1兆4,302億円で、前年度と比べると3.5%減となっている。また、不良債務は585億円で、前年度と比べると15.3%減となっている。
これを事業別にみると、バス事業においては、第28表のとおりである。
累積欠損金は842億円で、前年度と比べると0.9%減となっている。また、不良債務は83億円で、前年度と比べると1.2%増となっている。
都市高速鉄道事業においては、第29表のとおりである。
累積欠損金は1兆3,210億円で、前年度と比べると3.8%減となっている。また、不良債務は502億円で、前年度と比べると17.4%減となっている。
<2> 資本収支
資本的支出は3,262億円(うちバス事業277億円、都市高速鉄道事業2,866億円)で、前年度と比べると9.3%減となっている。これに対する財源は、外部資金が1,601億円、内部資金が1,296億円で、財源不足額は365億円となっている。資本的支出の内訳をみると、建設改良費は1,454億円(うちバス事業183億円、都市高速鉄道事業1,202億円)で、前年度と比べると13.7%減、企業債償還金は1,776億円(うちバス事業86億円、都市高速鉄道事業1,644億円)で、前年度と比べると4.5%減となっている。
(b)法非適用企業
交通事業における法非適用企業は船舶運航事業の39事業で、実質収支をみると、黒字事業が39事業で7億円の黒字となっており、赤字事業はない。
(エ)電気事業
a 事業数
地方公共団体が経営する電気事業で、令和5年度決算対象となるものは96事業(うち建設中1事業)であり、法適用企業が30事業、法非適用企業が66事業である。
b 経営状況
(a)法適用企業
<1> 損益収支
法適用の電気事業の総収益は1,109億円、総費用は795億円となっており、この結果、純損益は314億円の黒字、総収支比率は139.5%となっている。また、経常収益は1,095億円、経常費用は765億円となっており、この結果、経常損益は329億円の黒字、経常収支比率は143.0%となっている。純損益及び経常損益における黒字・赤字事業数及び黒字・赤字額は、第30表のとおりである。
累積欠損金は23億円で、前年度と比べると46.1%減となっている。なお、不良債務を有する事業はない。
<2> 資本収支
資本的支出は805億円で、前年度と比べると40.0%増となっている。これに対する財源は、外部資金が284億円、内部資金が521億円で、財源不足額を有する事業はない。資本的支出の内訳をみると、建設改良費は480億円で、前年度と比べると21.4%増、企業債償還金は93億円で、前年度と比べると5.2%増となっている。
(b)法非適用企業
電気事業における法非適用企業は66事業(うち建設中1事業)で、実質収支をみると、黒字事業が65事業で13億円の黒字となっており、赤字事業はない。
(オ)ガス事業
a 事業数
地方公共団体が経営するガス事業で、令和5年度決算対象となるものは19事業である。
b 経営状況
(a)損益収支
ガス事業の総収益は748億円、総費用は708億円となっており、この結果、純損益は39億円の黒字、総収支比率は105.6%となっている。また、経常収益は748億円、経常費用は708億円となっており、この結果、経常損益は40億円の黒字、経常収支比率は105.6%となっている。純損益及び経常損益における黒字・赤字事業数及び黒字・赤字額は、第31表のとおりである。
累積欠損金は18億円で、前年度と比べると7.6%減となっている。なお、不良債務を有する事業はない。
(b)資本収支
資本的支出は133億円で、前年度と比べると33.7%減となっている。これに対する財源は、外部資金が14億円、内部資金が120億円で、財源不足額を有する事業はない。資本的支出の内訳をみると、建設改良費は82億円で、前年度と比べると17.3%増、企業債償還金は37億円で、前年度と比べると67.9%減となっている。
(カ)病院事業
a 事業数
地方公共団体が経営する地方公営企業法を適用する病院事業及び公営企業型地方独立行政法人が経営する病院事業で、令和5年度決算対象となるものは681事業(うち建設中2事業)であり、これらの事業が有する病院(以下「公立病院」という。)数は858病院である。このうち、地方公共団体が経営する地方公営企業法を適用する病院は742病院であり、公営企業型地方独立行政法人が経営する病院は116病院となっている。
一般病院*13818病院のうち病床数300床以上の病院は、33.9%に当たる277病院となっており、地域における中核的な役割を担う病院として地域医療を支えている。
一方、病床数が150床未満であり、直近の一般病院までの移動距離が15km以上となる位置に所在している等の条件下にある「不採算地区病院」は、一般病院の38.3%に当たる313病院となっており、民間医療機関による診療が期待できない離島、山間地等のへき地における医療の確保のため、重要な役割を果たしている。
さらに、公立病院全体の85.2%に当たる731病院が救急病院として告示を受けており、地域の救急医療を担っている。
b 経営状況
(a)損益収支
病院事業の総収益は5兆6,236億円、総費用は5兆8,291億円となっており、この結果、純損益は2,055億円の赤字、総収支比率は96.5%となっている。また、経常収益は5兆5,837億円、経常費用は5兆7,935億円となっており、この結果、経常損益は2,099億円の赤字、経常収支比率は96.4%となっている。純損益及び経常損益における黒字・赤字事業数及び黒字・赤字額は、第32表のとおりである。
累積欠損金は1兆6,974億円で、前年度と比べると10.5%増となっている。また、不良債務は151億円で、前年度と比べると105.8%増となっている。
また、医業費用に対する医業収益の割合である医業収支比率は89.4%(前年度90.9%)となっており、これを病院の種別にみると、一般病院が89.6%(同91.2%)、精神科病院が79.0%(同78.4%)となっている。
(b)資本収支
資本的支出は9,737億円で、前年度と比べると8.0%増となっている。これに対する財源は、外部資金が6,005億円、内部資金が3,109億円で、財源不足額は622億円となっている。資本的支出の内訳をみると、建設改良費は5,095億円で、前年度と比べると18.0%増、企業債償還金は3,936億円で、前年度と比べると1.2%増となっている。
(キ)下水道事業
a 事業数
地方公共団体が経営する下水道事業で、令和5年度決算対象となるものは3,595事業(うち建設中9事業)であり、法適用企業が2,492事業、法非適用企業が1,103事業である。
b 経営状況
(a)法適用企業
<1> 損益収支
法適用の下水道事業の総収益は4兆288億円、総費用は3兆8,331億円となっており、この結果、純損益は1,957億円の黒字、総収支比率は105.1%となっている。また、経常収益は4兆111億円、経常費用は3兆8,171億円となっており、この結果、経常損益は1,940億円の黒字、経常収支比率は105.1%となっている。純損益における黒字・赤字事業数及び黒字・赤字額は、第33表のとおりである。
累積欠損金は1,704億円で、前年度と比べると0.3%減となっている。また、不良債務は350億円で、前年度と比べると9.8%増となっている。
<2> 資本収支
資本的支出は3兆4,806億円で、前年度と比べると1.6%増となっている。これに対する財源は、外部資金が2兆1,203億円、内部資金が1兆3,360億円で、財源不足額は243億円となっている。資本的支出の内訳をみると、建設改良費は1兆6,844億円で、前年度と比べると3.4%増、企業債償還金は1兆7,647億円で、前年度と比べると0.6%減となっている。
(b)法非適用企業
下水道事業における法非適用企業は1,103事業(うち建設中3事業)で、実質収支をみると、黒字事業が1,072事業で222億円の黒字、赤字事業が28事業で3億円の赤字となっており、差引219億円の黒字となっている(第33表)。
(c)全体の経営状況
法適用企業と法非適用企業を合計した下水道事業の黒字額は2,384億円、赤字額は208億円となっており、この結果、全体の収支(法適用企業の純損益と法非適用企業の実質収支の合計。以下同じ。)は2,176億円の黒字となっている。
汚水処理原価(汚水処理費を年間有収水量で除したもの)は145.79円/m3(維持管理費86.79円/m3、資本費59.00円/m3)で、前年度と比べると0.6%増となっており、使用料単価(使用料収入を年間有収水量で除したもの)は137.76円/m3で、前年度と比べると1.0%増となっている。
その結果、経費回収率(使用料単価を汚水処理原価で除したもの)は94.5%となっており、前年度と比べると0.4ポイント上昇している。
法適用企業と法非適用企業を合計した下水道事業の建設改良費は1兆7,296億円で、前年度と比べると2.3%増となっている。
(ク)その他の公営企業
a 事業数
地方公共団体は、前述した事業のほかにも各種の事業を経営している。これを事業別にみると、令和5年度決算対象となるものは、港湾整備事業が92事業、市場事業が145事業、と畜場事業が42事業、観光施設事業が217事業(うち建設中1事業)、宅地造成事業が404事業(うち建設中46事業、年度途中廃止1事業)、有料道路事業が1事業、駐車場整備事業が175事業、介護サービス事業が467事業(うち建設中1事業、年度途中廃止1事業)、その他事業(廃棄物等処理施設、診療所等)が69事業となっている。
b 経営状況
その他の公営企業の純損益、経常損益及び実質収支における黒字・赤字事業数及び黒字・赤字額は、第34表のとおりである。このうち、社会経済情勢の変化等による事業リスクが相対的に高い観光施設事業については、全体の収支が37億円の黒字であり、法適用企業の累積欠損金は前年度と比べると8.1%減の170億円となっている。また、同様に事業リスクが相対的に高い宅地造成事業については、全体の収支は724億円の黒字であり、法適用企業の累積欠損金は前年度と比べると3.5%減の2,893億円となっている。
(2)国民健康保険事業
国民健康保険制度については、「持続可能な医療保険制度を構築するための国民健康保険法等の一部を改正する法律」(平成27年法律第31号)の施行により、平成30年度から都道府県が国民健康保険の財政運営の責任主体とされ、市町村とともに都道府県も国民健康保険の保険者となっている。
また、市町村は、国民健康保険の保険者として、引き続き、資格管理、保険給付、保険料の賦課・徴収等の被保険者に身近な保険者業務を担うこととされているが、医療給付等に必要な資金は都道府県から保険給付費等交付金の交付を受ける一方で、徴収した国民健康保険税(料)は基本的に都道府県に国民健康保険事業費納付金として納付することとされている。
ア 都道府県
(ア)歳入
都道府県の歳入決算額は11兆3,525億円で、前年度と比べると1.0%減となっている。
歳入の内訳は、第59図のとおりである。また、前年度と比べると、前期高齢者交付金が1.6%増、国民健康保険事業費納付金が2.0%増、国庫支出金が3.8%減となっている。
(イ)歳出
歳出決算額は11兆1,391億円で、前年度と比べると1.0%減となっている。
歳出の内訳は、第60図のとおりである。また、前年度と比べると、保険給付費等交付金が1.2%減、後期高齢者支援金等が8.1%増となっている。
(ウ)収支
実質収支は2,129億円の黒字(前年度2,131億円の黒字)となっており、実質収支から財源補填的な他会計繰入金を控除し、繰出金を加えた再差引収支については、2,129億円の黒字(同2,131億円の黒字)となっている。
イ 市町村(事業勘定)
令和5年度末において国民健康保険事業会計を有する団体は、1,742団体(前年度同数)となっている。
(ア)歳入
事業勘定の歳入決算額は12兆7,208億円で、前年度と比べると0.9%減となっている。
歳入の内訳は、第61図のとおりである。また、前年度と比べると、都道府県支出金が1.2%減、国民健康保険税(料)が3.3%減となっている。
(イ)歳出
歳出決算額は12兆5,360億円で、前年度と比べると0.5%減となっている。
歳出の内訳は、第62図のとおりである。また、前年度と比べると、保険給付費が1.1%減、国民健康保険事業費納付金が2.0%増となっている。
(ウ)収支
実質収支は1,835億円の黒字(前年度2,393億円の黒字)であり、昭和40年度以降黒字傾向が続いている。
実質収支から財源補填的な他会計繰入金及び都道府県支出金を控除し、繰出金を加えた再差引収支については、265億円の赤字(前年度616億円の黒字)となっている。
再差引収支を黒字・赤字団体別にみると、黒字団体数は1,087団体(前年度1,182団体)で、その黒字額は1,182億円(同1,541億円)となっている。一方、赤字団体数は655団体(前年度560団体)で、その赤字額は1,446億円(同925億円)となっている。
ウ 市町村(直診勘定)
令和5年度末において直営診療所を設置している団体は、355団体(前年度同数)となっている。
直診勘定の歳入決算額は582億円で、前年度と比べると3.8%減となっている。
直診勘定の歳出決算額は552億円で、前年度と比べると3.1%減となっている。
実質収支は29億円の黒字(前年度34億円の黒字)となっているが、この実質収支から他会計繰入金を控除し、繰出金を加えた再差引収支は、143億円の赤字(同139億円の赤字)となっている。
(3)後期高齢者医療事業
後期高齢者医療事業では、保険料の徴収や後期高齢者医療広域連合へ保険料等の納付を行う団体(1,739団体(前年度同数))及び後期高齢者医療事業を実施する都道府県区域ごとの後期高齢者医療広域連合(47団体(前年度同数))に特別会計が設けられている。
ア 市町村
市町村の特別会計の歳入決算額は2兆1,646億円で、前年度と比べると4.5%増となっている。
歳入の内訳をみると、被保険者が支払う後期高齢者医療保険料が1兆5,382億円で最も大きな割合を占めており、次いで繰入金が5,484億円となっている。また、前年度と比べると、後期高齢者医療保険料が3.4%増、繰入金が8.3%増となっている。
歳出決算額は2兆1,264億円で、前年度と比べると4.5%増となっている。
歳出の内訳をみると、後期高齢者医療広域連合への納付金が2兆216億円で最も大きな割合を占めており、前年度と比べると4.7%増となっている。
イ 後期高齢者医療広域連合
(ア)歳入
後期高齢者医療広域連合の歳入決算額は18兆1,337億円で、前年度と比べると3.9%増となっている。
歳入の内訳は、第63図のとおりである。また、前年度と比べると、支払基金交付金が6.1%増、国庫支出金が4.0%増、市町村支出金が4.3%増となっている。
(イ)歳出
歳出決算額は17兆7,885億円で、前年度と比べると4.3%増となっている。
歳出の内訳は、第64図のとおりである。また、前年度と比べると、保険給付費は5.2%増となっている。
(ウ)収支
実質収支は47団体全て黒字となっており、その黒字額は3,438億円(前年度3,894億円の黒字)となっている。
(4)介護保険事業
介護保険制度を実施する保険者である市町村が設ける介護保険事業会計は、第1号被保険者(65歳以上の者)からの保険料や、支払基金交付金(第2号被保険者(40歳以上65歳未満の医療保険加入者)の介護納付金分に係る社会保険診療報酬支払基金からの交付金)等を財源として保険給付等を行う保険事業勘定と、介護給付の対象となる居宅サービス及び施設サービス等を実施する介護サービス事業勘定とに区分される。
なお、市町村が実施する指定介護老人福祉施設、介護老人保健施設、老人短期入所施設、老人デイサービスセンター及び指定訪問看護ステーションの5施設により介護サービスを提供する事業は、介護サービス事業として公営企業会計の対象とされている。
令和5年度末において、介護保険事業の保険者は、1,574団体(前年度同数)となっている。
また、介護サービス事業勘定を設置している団体は、590団体(前年度606団体)となっている。
ア 保険事業勘定
(ア)歳入
保険事業勘定の歳入決算額は12兆3,314億円で、前年度と比べると2.6%増となっている。
歳入の内訳は、第65図のとおりである。また、前年度と比べると、支払基金交付金が3.0%増、国庫支出金が1.5%増、保険料が0.2%増、他会計繰入金が2.5%増、都道府県支出金が1.8%増となっている*14。
(イ)歳出
歳出決算額は12兆26億円で、前年度と比べると3.3%増となっている。
歳出の内訳は、第66図のとおりである。また、前年度と比べると、保険給付費が3.0%増となっている。
(ウ)収支
実質収支は3,142億円の黒字(前年度3,897億円の黒字)となっており、実質収支から財源補填的な他会計繰入金及び都道府県支出金を控除し、繰出金を加えた再差引収支についても、3,129億円の黒字(同3,884億円の黒字)となっている。
再差引収支を黒字・赤字団体別にみると、黒字団体数は1,566団体(前年度1,567団体)で、その黒字額は3,149億円(同3,904億円)となっている。一方、赤字団体数は8団体(前年度7団体)で、その赤字額は21億円(同21億円)となっている。
イ 介護サービス事業勘定
介護サービス事業勘定の歳入決算額は180億円で、前年度と比べると4.3%増となっている。
歳出決算額は170億円で、前年度と比べると3.9%増となっている。
なお、実質収支は9億円の黒字(前年度8億円の黒字)となっており、実質収支から財源補填的な他会計繰入金及び都道府県支出金を控除し、繰出金を加えた再差引収支は76億円の赤字(同70億円の赤字)となっている。
(5)その他の事業
ア 収益事業
収益事業を実施した地方公共団体の数は、延べ279団体(前年度280団体)となっている。
これを事業別にみると、公営競技についてはモーターボート競走事業を施行した団体が103団体と最も多く、以下、自転車競走事業54団体、競馬事業50団体、小型自動車競走事業5団体の順となっている。
また、宝くじは、47都道府県及び20政令指定都市の67団体で発売されている。
収益事業の決算額は歳入5兆7,724億円、歳出5兆5,103億円で、前年度と比べると、歳入は2.0%増、歳出は2.2%増となっている。
実質上の収支(歳入歳出差引額から翌年度に繰り越すべき財源、繰入金及び未払金を控除し、繰出金及び未収金を加えた額)は、6,322億円の黒字(前年度6,427億円の黒字)となっている。
収益金の大部分は普通会計等に繰り入れられ、道路、教育施設、社会福祉施設等の整備事業などの財源として活用されている。その繰入額は4,395億円で、前年度と比べると1.2%増となっている。
イ 交通災害共済事業
直営方式により交通災害共済事業を実施した地方公共団体の数は、51団体(前年度52団体)となっている。
交通災害共済事業会計の決算額は歳入36億円、歳出26億円で、前年度と比べると、歳入は12.3%減、歳出は8.0%減となっている。
なお、実質上の収支(歳入歳出差引額から未経過共済掛金、繰入金及び未払金を控除し、繰出金及び未収金を加えた額)は、12億円の黒字(前年度14億円の黒字)となっている。
ウ 公立大学附属病院事業
公立大学附属病院事業を実施した地方公共団体の数は、1団体(前年度同数)である。
公立大学附属病院事業会計の決算額は、収益的収支では総収益25億円、総費用24億円となり、前年度と比べると、総収益は2.4%減、総費用は2.6%減となっている。
また、資本的収支では資本的収入10億円、資本的支出10億円で、前年度と比べると、資本的収入は71.4%増、資本的支出は67.3%増となっている。
実質収支は1.3億円の黒字(前年度0.7億円の黒字)となっている。
(6)第三セクター等
第三セクター等は、地域住民の暮らしを支える事業を行う重要な役割を担う一方で、経営が著しく悪化した場合には、地方公共団体の財政に深刻な影響を及ぼすことが懸念される。
特に地方公共団体に相当程度の財政的なリスクが存在する第三セクター等については、「第三セクター等の経営健全化方針の策定と取組状況の公表について」(令和元年7月23日付け総務省自治財政局公営企業課長通知)により、地方公共団体に対し、経営健全化方針の策定と、それに基づく取組の着実な実施を要請している。
令和5年度における第三セクター等に係る財政的リスクの状況は、第35表のとおりである。
*13 精神科病院以外の病院をいう。
*14 国庫支出金:・介護給付費負担金(介護給付及び予防給付に要する費用の額(以下「介護・予防給付額」という。)の100分の20(施設等給付費にあっては100分の15)に相当する額)
・調整交付金(介護・予防給付額の100分の5に相当する額)等
都道府県支出金:都道府県の法定負担(※1)を含む
※1 介護・予防給付額の100分の12.5(施設等給付費にあっては100分の17.5)に相当する額
他会計繰入金 :市町村の法定負担分(※2)を含む
※2 介護・予防給付額の100分の12.5に相当する額