4 自治体DX・地域社会DXの推進
地域社会全体のデジタル変革を加速させ、活力ある地方を創るためには、デジタル技術を活用して地方の社会課題解決や魅力向上を図るとともに、地方公共団体のDX(デジタル・トランスフォーメーション)を推進していく必要がある。
(1)マイナンバー制度及びマイナンバーカードの普及・利活用の推進
マイナンバー制度は、行政の効率化、国民の利便性の向上及び公平・公正な社会を実現するデジタル社会の基盤である。今後、各地方公共団体のDX等を進め、質の高い行政サービスを効果的・効率的に提供する業務改革に取り組んでいくに当たっては、マイナンバー制度を積極的に利活用していくことが不可欠である。
マイナンバーカードについては、「デジタル社会の実現に向けた重点計画」(令和6年6月21日閣議決定。以下「重点計画」という。)等に基づき、令和6年12月2日以降、健康保険証の新規発行がされなくなり、マイナ保険証(マイナンバーカードの健康保険証としての利用)を基本とする仕組みに移行したことを踏まえ、同日から、1歳未満の乳児や紛失した者など特に速やかな交付が必要となる場合に、申請から原則1週間で交付できる特急発行の仕組みを導入するとともに、1歳未満の者に係る顔写真なしマイナンバーカードの交付や、出生届とマイナンバーカードの申請様式の一体化を開始している。
また、高齢者等のカードの取得に課題のある方に対する環境整備として、福祉施設等における出張申請受付を推進するとともに、令和7年3月24日からマイナンバーカードと運転免許証の一体化を開始するなどカードの利便性の向上、機能強化にも取り組んでいる。今後も重点計画に基づき、マイナンバーカードと在留カードとの一体化や、カードへの振り仮名記載などの取組も進めていくこととされている。
さらに、本人の所得・地方税、行政機関からのお知らせなど、必要な情報をいつでも確認できる行政手続のオンライン窓口である「マイナポータル」においては、オンラインでの出生届の提出に併せて新生児のマイナンバーカード交付申請が可能となるなど、オンラインで完結される手続が順次、拡大してきている。
(2)自治体DXの推進
ア 自治体DX推進計画等
総務省では、国の取組と歩調を合わせた地方公共団体の取組を強力に推進するため、「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画【第3.0版】」(令和6年4月24日。以下「自治体DX推進計画」という。)等を策定しており、引き続き、国の取組の進捗等を踏まえて見直しを行っていくこととしている。
自治体DX推進計画では、DXの取組を着実に実施するための前提となるDX推進体制の構築やデジタル人材の確保・育成について示した上で、自治体フロントヤード改革の推進や自治体の情報システムの標準化・共通化など、7つの事項を自治体が重点的に取り組むべき「重点取組事項」として定め、その具体的内容や国の主な支援策等を示している。
イ 自治体フロントヤード改革
自治体フロントヤード改革については、マイナンバーカードやデジタルツールを活用し、対面非対面の対応を適切に組み合わせて住民との接点を多様化・充実化することや、データ対応の徹底、さらにバックヤード改革に繋げることで、住民の利便性向上と業務効率化による業務改革を実現することを目指している。
このため、令和5年度補正予算(第1号)及び令和6年度補正予算(第1号)において実施している自治体フロントヤード改革支援事業を通じて、住民の利便性向上・業務効率化に関する効果を示しつつ、円滑なデジタル実装が可能となるような手順書の作成や、取組状況の見える化を推進するとともに、ガバメントクラウド上での「窓口DXSaaS」の提供や「窓口BPRアドバイザー」の派遣等を通じて、「書かないワンストップ窓口」の横展開を行うことにより、地方公共団体の自主的な改革を促進することとしている。
ウ 地方公共団体の情報システムの標準化・共通化
地方公共団体の情報システムの標準化・共通化については、「地方公共団体情報システムの標準化に関する法律」(令和3年法律第40号)に基づき、基幹業務システムを利用する全ての地方公共団体が、同法第5条に基づく基本方針の下で所管省庁が作成する標準化基準に適合した標準準拠システムへ円滑かつ安全に移行することができるよう、その環境を整備することとし、その取組に当たっては、地方公共団体の意見を丁寧に聴いて進めることとされている。
各地方公共団体がシステムの移行の際に必要となる準備経費や移行経費については、令和6年度補正予算(第1号)において、地方公共団体情報システム機構に設置されているデジタル基盤改革支援基金の積立てに要する経費として194億円を追加し、累計で7,182億円を計上しており、当該基金を活用し、国が補助を行うこととしている。
また、令和6年12月の基本方針の改定や「令和6年の地方からの提案等に関する対応方針」(令和6年12月24日閣議決定)を踏まえ、令和7年度末までとされているデジタル基盤改革支援基金の設置年限について、5年延長することを改正内容とする法律案を第217回通常国会に提出する予定である。
なお、標準準拠システムの利用に伴うガバメントクラウドの利用料及び関連する費用については、所要額を一般行政経費(単独)に計上し、普通交付税においてガバメントクラウドへの移行状況に応じた措置を講じることとしている。
(3)地域社会DXの推進
デジタル技術を活用し、全国各地域における地域課題解決を促進するため、令和6年度補正予算(第1号)において、AI・自動運転等の先進的ソリューションや先進無線システムの実証、地域の通信インフラ整備の補助等の施策を総合的に行う地域社会DX推進パッケージ事業や高齢者等を対象としたデジタル活用支援等を実施することとしている。
また、「地域社会のデジタル化に係る参考事例集【第3.0版】」(令和6年5月31日)について、各地方公共団体の新たな取組状況を踏まえつつ、地方公共団体が取り入れやすい汎用的な事例や、住民がサービスの恩恵を強く感じられる事例を中心に内容の拡充を予定しており、更なる横展開を図ることとしている。
(4)デジタル活用推進事業債の創設等
ア デジタル活用推進事業債の創設
担い手不足が急速に深刻化するおそれがある中、デジタル技術を活用した行政運営の効率化・地域の課題解決等に向けた取組をしていくため、地方財政計画の一般行政経費(単独)において、「デジタル活用推進事業費」を創設し、令和7年度は1,000億円を計上している。
対象事業は、デジタル活用推進計画に位置付けて実施する地方単独事業等としている。具体的には、「行政運営の効率化・住民の利便性向上を図る自治体DXの推進」として、住民サービスの提供に必要な情報システムの導入、共同調達による情報システムの導入、住民利用又は住民サービスの提供に必要な職員利用の情報通信機器の購入、公共施設のネットワーク環境の整備、また、「地域の課題解決を図る地域社会DXの推進」として、地方公共団体及び公共的団体等による日常生活に不可欠なサービスの確保、地域産業の生産性向上等地域の課題解決に資する情報システムの導入及び情報通信機器等の整備を対象(公共的団体等による事業は地方公共団体からの補助を対象)としている。
その事業費について、地方債を充当できることとする特例措置を創設するため、「地方交付税法等の一部を改正する法律案」を第217回通常国会に提出している。
事業期間については、令和11年度までとしている。
イ 都道府県と市町村が連携したDX推進体制の構築に向けたデジタル人材
全国的にデジタル人材が不足する中、令和7年度中に全ての都道府県で市町村と連携したDX推進体制を構築し、その中で市町村が求めるDX支援のための人材プール機能の確保を進めることとしている。都道府県が一定のスキル・経験を有し、市町村支援業務を行うデジタル人材を常勤職員として雇用する場合、当該職員の人件費については、これまで特別交付税措置の対象としていたが、令和7年度からは職員数に応じて普通交付税措置を講じることとしている。また、デジタル人材の募集経費について、特別交付税措置の上限を引き上げることとしている。
加えて、市町村がCIO補佐官等として外部人材の任用等を行うための経費や、地方公共団体におけるデジタル化の取組の中核を担う職員(DX推進リーダー)の育成に要する経費について、引き続き特別交付税措置を講じることとしている。
また、令和6年度補正予算(第1号)において、総務省とデジタル庁が連携して行う都道府県への採用ノウハウの提供のほか、人材プール構築に協力できるデジタル人材や企業のリスト化、都道府県が確保した人材に対する行政実務研修等を行う「都道府県と市町村が連携したDX推進体制構築に向けたデジタル人材確保プロジェクト」を実施することとしている。