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3 防災・減災、国土強靱化及び公共施設等の適正管理の推進等

近年、気候変動の影響により気象災害は激甚化・頻発化し、南海トラフ地震などの大規模地震の発生も切迫している。引き続き、国民の生命・財産を守るため、地方公共団体が国と連携しつつ、防災・減災、国土強靱化対策に取り組む必要がある。

また、高度経済成長期に大量に建設された公共施設等が一斉に更新時期を迎える中、各地方公共団体においては、人口減少や少子高齢化等による公共施設等の利用需要の変化や地方財政の厳しい状況等を踏まえ、公共施設等の適正管理に向けた取組を着実に推進する必要がある。

(1)令和6年能登半島地震の被災地への対応

令和6年1月1日に最大震度7を観測した令和6年能登半島地震では、死者515人(うち、災害関連死287人)、住家被害155,751棟(令和7年1月28日、総務省消防庁発表)にのぼる被害をもたらした。また、令和6年9月20日からの大雨では、能登半島地震からの復旧復興の途上である被災地に更なる被害をもたらした。

このため、累次の一般会計予備費使用の閣議決定や令和6年度補正予算(第1号)により、被災地の復旧復興の支援策が講じられている。また、地方財政措置としては、全国の自治体からの応援職員やインフラ復旧工事事業者等の宿泊場所について、石川県が一元的に確保する費用に対する特別交付税措置を創設するとともに、令和6年能登半島地震からの復興に向けて、被災自治体が地域の実情に応じて、住民生活の安定、液状化対策、住宅再建支援、産業や教育文化の振興等の様々な事業について、単年度予算の枠に縛られずに弾力的に対処できる資金として石川県が創設する復興基金に対し、特別交付税措置を講じたほか、広範な地域で液状化の被害が発生している富山県、新潟県が単独事業で実施する液状化対策に係る特別交付税措置を創設した。

さらに、なりわい再建支援事業及び災害廃棄物処理事業に係る災害対策債や、災害関連事業等に係る補正予算債の交付税措置の拡充、上下水道事業の災害復旧に係る地方負担額が一定以上となった場合の特例の創設など、地方財政措置の拡充等を行った。このほか、被災地を支援するために応援職員が派遣されており、これに要する経費に対して地方交付税措置を講じることとしている。

(2)防災・減災、国土強靱化の推進等

ア 防災・減災、国土強靱化の推進

「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」(令和2年12月11日閣議決定。以下「5か年加速化対策」という。)に基づく直轄事業及び補助事業について、当初予算に計上される場合には、その地方負担を防災・減災・国土強靱化緊急対策事業債により措置することとし、補正予算に計上される場合には、その地方負担を補正予算債により措置することとしている。令和7年度までの5か年加速化対策の5年目については、令和6年度補正予算(第1号)(国費1兆6,992億円)を活用することとされており、その地方負担については、補正予算債等により措置することとしている。

地方公共団体が、喫緊の課題である防災・減災対策のための施設整備等に取り組んでいけるよう、「緊急防災・減災事業費」について、緊急消防援助隊の無人走行放水ロボットの整備等を対象事業に追加した上で、令和7年度の地方財政計画に前年度同額の5,000億円を計上している。

また、地方公共団体が、5か年加速化対策と連携しつつ、地方単独事業として緊急に自然災害を防止するための社会基盤の整備に取り組んでいけるよう、「緊急自然災害防止対策事業費」について、積雪寒冷特別地域の道路における凍上災害の予防・拡大防止対策(基層及び路盤を含む対策)を対象事業に追加した上で、令和7年度の地方財政計画に前年度同額の4,000億円を計上している。

さらに、地方公共団体が、地方単独事業として緊急に河川等の浚渫を実施できるよう、「緊急浚渫推進事業費」について、事業期間を令和11年度まで延長するため、「地方交付税法等の一部を改正する法律案」を第217回通常国会に提出している。また、農業用排水路に係る浚渫を対象事業に追加した上で、令和7年度の地方財政計画に前年度同額の1,100億円を計上している。

イ 水道等の防災対策の推進

令和6年能登半島地震の被災状況や教訓を踏まえ、災害時の水の確保が極めて重要であることに鑑み、水道管路耐震化事業に対する地方財政措置について、対象となる上積事業費の算出方法を、事業費を基準とする方法に見直した上で、特別対策分の対象要件を緩和し対象団体を拡充するとともに、用水供給事業者を新たに一般対策分の対象団体に追加することとしている。また、病院事業債(災害分)を改編の上、病院事業については災害拠点病院等における給排水管の耐震性能の確保工事を、水道事業については水道施設が被災した際の応急給水のための設備(給水車、防災用井戸、可搬式浄水設備)の整備を、それぞれ対象事業に追加し、公営企業債(防災対策事業)を創設することとしている。

(3)公共施設等の適正管理の推進

公共施設等の適正管理については、公共施設等の老朽化や人口減少等の進行を踏まえ、長期的な視点をもって、更新・統廃合・長寿命化などを計画的に実施し、財政負担の軽減・平準化を図りつつ、公共施設等の最適な配置を実現することが必要であり、各地方公共団体において、公共施設等の総合的かつ計画的な管理に関する計画(以下「総合管理計画」という。)を策定している。

そのような中、総合管理計画の策定から一定の期間が経過していることも踏まえ、地方公共団体に対して、個別施設ごとの長寿命化計画(個別施設計画)の内容を反映しつつ、中長期のインフラ維持管理・更新費の見通しや適正管理に取り組むことによる効果額を盛り込んだ総合管理計画の見直しを令和5年度末までに行うよう要請してきた。

その結果、令和6年3月末時点で97.8%の団体が見直しを行い、ほぼ全ての団体で見直しが完了したところである。今後も、人口減少等を踏まえた不断の見直しを行い、更なる内容充実を図り、総合管理計画の具体性・実効性を高める取組を進めていくことが重要である。

令和7年度においては、地方公共団体が公共施設等の適正管理に積極的に取り組んでいけるよう、「公共施設等適正管理推進事業費」について、集約化・複合化事業の対象に集約化・複合化等に伴う施設の除却事業を追加した上で、地方財政計画に5,000億円(対前年度比200億円増加)を計上している。

また、広域的な公共施設の集約化・複合化を円滑に進めるため、複数の地方公共団体による公共施設の集約化等に向けた調査検討経費及び集約化等の円滑化のための経費について、令和7年度から新たに特別交付税措置を講じることとしている。

併せて、後述する「経営・財務マネジメント強化事業」により、総合管理計画の見直しや複数の地方公共団体による公共施設の集約化等の取組を支援するための専門のアドバイザーを派遣することとしている。

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