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5 全世代型の社会保障制度の構築

少子高齢化など人口構成の変化が一層進んでいく中、年金、医療、介護などの社会保障を持続可能なものとするためには、社会保障制度を見直し、給付・負担両面で、人口構成の変化に対応した世代間・世代内の公平が確保された制度へと改革していくことが必要である。

また、社会保障分野のサービス・給付の多くが地方公共団体を通じて国民に提供されていることから、国と地方が一体となって安定的に実施していくことが重要であり、社会保障制度改革は国・地方が協力して推進していく必要がある。

(1)社会保障の充実と人づくり革命

社会保障と税の一体改革は、社会保障の充実・安定化に向け、安定財源確保と財政健全化の同時達成を目指すものである。

消費税率の引上げ分は、「社会保障の充実」、「人づくり革命」等として、全額社会保障の財源に使われることとされている。

社会保障の充実については、消費税率5%から10%への引上げによる増収分の一部及び重点化・効率化による財政効果を活用して、子ども・子育て支援、医療・介護、年金の各分野で実施することとされた。

令和7年度における「社会保障の充実」の施策に係る所要額は、第73図のとおりである。

また、「新しい経済政策パッケージ」(平成29年12月8日閣議決定)における「人づくり革命」については、待機児童の解消・保育士の処遇改善、幼児教育・保育の無償化、高等教育の無償化、介護人材の処遇改善等の施策を推進するための安定財源として、消費税率8%から10%への引上げによる増収分の一部を活用することとされた。

令和7年度におけるこれらの施策に係る所要額は、第74図のとおりである。

(2)全世代型社会保障構築を目指す改革

全世代対応型の持続可能な社会保障制度の構築については、「全世代型社会保障構築を目指す改革の道筋(改革工程)」(令和5年12月22日閣議決定)において、時間軸を考慮した具体的な改革工程が整理されており、その内容は第75図のとおりである。

このうち、「2028年度までに検討する取組」については、令和10年度までの各年度の予算編成過程において、実施すべき施策の検討・決定を行い、全世代が安心できる制度を構築し、次の世代に引き継ぐための取組を着実に進める必要があるとされている。

(3)こども・子育て政策の強化

少子化は我が国が直面する最大の危機であり、若年人口が急激に減少する2030年代に入るまでに少子化トレンドを反転させ、人口減少に歯止めをかけなければ、持続的な経済成長の達成は困難となる。2030年(令和12年)までがラストチャンスであり、政府として次元の異なる少子化対策を進めることとしている。

地方公共団体は、こども・子育てサービスの多くを提供する主体であり、現場において果たす役割が極めて大きいことから、こども・子育て政策の強化は国と地方が車の両輪となって取り組んでいく必要がある。

ア こども・子育て支援加速化プラン

次元の異なる少子化対策の実現に向け、「こども未来戦略」(令和5年12月22日閣議決定)において、国・地方の事業費ベースで3.6兆円程度となる「こども・子育て支援加速化プラン」(以下「加速化プラン」という。)が掲げられた。加速化プランは、その大宗を3年間(令和8年度まで)で実施することとされており、令和7年度までにおける充実額は、国・地方の事業費ベースで累計3.0兆円程度となった。

令和7年度の前年度からの地方負担の増(2,413億円)については、その全額を地方財政計画の一般行政経費(補助)等に計上するとともに、適切に地方交付税措置を講じることとしている。

イ こども・子育て政策に係る地方単独事業の推進

こども未来戦略に基づく取組に合わせて、地方公共団体において地域の実情に応じた現物給付事業を拡充することが見込まれることから、地方公共団体が、地域の実情に応じてきめ細かに独自のこども・子育て政策(ソフト)を実施できるよう、令和6年度の地方財政計画において、一般行政経費(単独)を1,000億円増額して計上した。令和7年度においても、引き続き前年度同額の1,000億円を計上している。

また、こども未来戦略に基づく取組に合わせて、地方公共団体がこども・子育て支援機能強化に係る施設整備や子育て関連施設の環境改善(ハード)を速やかに実施できるよう、令和6年度の地方財政計画の投資的経費(単独)において、「こども・子育て支援事業費」を創設した。令和7年度においても、引き続き前年度同額の500億円を計上している。

ウ 児童虐待防止対策体制の強化

児童虐待防止対策体制の強化については、「新たな児童虐待防止対策体制総合強化プラン」(令和4年12月15日児童虐待防止対策に関する関係府省庁連絡会議決定。令和6年12月23日再改定)において、令和8年度までに、令和4年度と比べて児童相談所における児童福祉司を約1,610名、児童心理司を約950名増員することが目標とされている。

同プランに基づき、令和7年度において、全国で児童福祉司を約90名、児童心理司を約240名それぞれ増員できるよう、地方財政計画に必要な職員数を計上するとともに、道府県の標準団体で児童福祉司99名分及び児童心理司44名分の配置について、地方交付税措置を講じることとしている。

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