昭和49年版 通信白書

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5 画像通信システム

(1) テレビ電話
 テレビ電話は,電話と映像機能とを組み合わせ,会話本来の形態を再現させようとするものであるが,また,品物や簡単な図面などを相手に見せ.言葉では表現しにくい内容を容易に理解させたり,簡単なデータ端末として多面的に利用できる。米国においては,1650年ごろよりベル電話研究所において本格的に実用化研究が開始され,1970年のピッツバーグを皮切りにニューヨーク,シカゴ等で対面通話を主体とした1MHzテレビ電話サービスを開始した。最近,ベル電話研究所ではテレビ電話の多機能化を進めている。
 我が国では,電電公社の手により,45年の万国博にテレビ電話を出展して以降47年度まで試験が行われ,それらの技術を基に,47年度末よりテレビ電話(グループタイプ)のサービスが短距離の範囲内で試行的に開始された。
(2) テレビ会議方式
 テレビ画面と音声とにより,遠隔・複数地間で会議を可能とするテレビ会議方式について既に英国等でサービスが開始されているが,その他の国でも研究開発が行われている。我が国においては,電電公社が45年ごろより研究開発を開始しており,48年度には画面分割により1会議室6〜10名が会して利用可能な4MHzカラー方式による標準テレビ会議方式の実験が行われ,十分実用に供し得る見通しを得ている。この結果を基に,現在,東京・大阪間で実用に供するための準備が進められている。このほか,応用型としてフレーム多重,こま落し等の技術を導入し,システムの経済化,複数対地間での会議を可能とする方式,及びカラー画像品質の向上について検討が進められている。
(3) ファクシミリ
 48年度には,電電公社により電話網を利用する電話ファクス・サービス(A4判の原稿を走査線密度3.85本/mmで4分又は6分で電送可能)が開始された。また,電話ファクスと相互通信が可能で,小型軽量,経済化を目標とした簡易型ファクスの開発が進められている。一方,更に高速のものに対する要望に対し,48kHz帯域使用の高速ファクス(B4判の原稿を走査線密度6本/mmで55秒で電送可能)の商用試験が行われ良好な結果が得られている。
 このほか,将来の超高速ファクシミリとして電子走査方式,電荷転送素子等の固体走査方式,更にはデータ通信端末の出力装置としてファクシミリ応答装置の研究開発が進められている。
 受信記録方式としては各種のものがあり,従来は写真電送には銀鉛紙を用いた化学的写真方法が用いられ,白黒模写伝送は放電記録が主に用いられていたが,最近では,放電記録方式のようににおいが発生しないこと,記録品質が優れていること等から静電記録方式が多く採用されるようになってきている。
 このほかに,現像定着等の手段が不用な感熱記録,普通紙が使えるインクジェット記録,中間調記録ができるドライシルバー紙等が実用化されつつある。ファクシミリの高速電送としては伝送帯域を広げる方式及び伝送帯域を広げずに高速化を図る帯域圧縮方式の研究開発が各方面で進められている。
 広帯域を利用したファクシミリは,現在新聞電送などに使われているが,将来は有線テレビ(CATV)など広帯域回線の普及によりビデオ帯域の高速度ファクシミリの可能性も考えられ,これらについて基礎的研究が進められている。
 国際ファクシミリ電報業務は,47年に取扱いが開始された日本・韓国間国際ファクシミリ電報が現在における世界唯一のものであるが,その他の諸国間にも,将来この種の業務を開設したいとの要望の声が高まってきている。このような要望にこたえるため,CCITTでは加入電話網に付加すべきファクシミリ装置について,技術標準の取決め等の諸問題を研究課題として取り上げている。
 ファクシミリの冗長性を削減し,回線の有効利用を図るためには,帯域圧縮技術の開発が必要であるが,国際電電研究所では,先行走査が1走査線にわたって白情報を検出すると後続する主走査が当該走査線を飛び越すようにして伝送時間を短縮する方法,あるいはファクシミリ信号を平面的に白黒情報変化の密な部分と疎な部分に分け,それぞれの部分に適した符号化を行う方法等について研究を進めている。
(4) 行政情報通信用ファクシミリ装置
ア.開発の経緯
 郵政省は,45年度以来,行政管理庁と共同して,各省の協力を得つつ,行政情報通信ネットワークの基本構想の検討,行政情報流通の実態調査及びシステム設計など基礎的な調査研究を進めているが,48年度においてはその関連技術の開発として,効率的なファクシミリ通信システムの研究開発を行った。
 この研究開発は,ファクシミリ通信がデータ通信などに比較して伝送技術,利用技術において立ち遅れているため,行政情報の流通特性に適合した機能(蓄積同報,自動送受信,高速化の各機能)をもつ標準システムを開発することを目的としている。
イ.開発の内容
 標準ファクシミリ通信システムは,ファクシミリ端末装置と同報装置により構成される。同報装置は,同一文書を複数対地に送る場合に使用され,送信機から伝送された文書を一度蓄積した後,複数対地の受信機に送信する装置である。48年度は試作装置を開発し,その評価を行っている。端末装置に関しては,メーカー各社の固有技術を有効に活用することをねらいとして,我が国の代表的メーカー3社により,それぞれ1対向ずつ計3対向の装置を,同報装置についてはミニコンピュータを使用した蓄積プログラム制御方式の1装置を試作した。
ウ.開発の成果
(ア) 端末装置
 試作装置を評価するに当たり,機能,性能条件,外部条件,経済性,運用条件にわたる約40の要求項目を設け,各要求項目ごとに,最低必要条件,望ましい要求条件,理想条件の3要求レベルを設定し,ユーザ側の要求条件を明確化している。そして画質試験用4種,伝送時間測定用10種,紙質試験用10種の計24種のテストチャートを用いて,画質試験,伝送速度試験,自動送受信機能試験,温度試験,伝送路試験等18種の試験を行い,自動給紙ブロック,帯域圧縮ブロック等端末装置の10ブロックごとに,3装置の方式を,要求条件に照らし評価している。その結果,加入電話網とのインターフェイスを持ち,B4判1枚を3分以内で自動送受信できるファクシミリ装置の実現性が確認された。
(イ) 同報装置
 同報装置の機能・性能は,ソフトウェアに依存しているため,評価は基本的な同報機能を確認するにとどめている。その結果,電話網とのインターフェイスを持ちミニコンピュータ方式で行う同報装置の実現性が確認された。
また蓄積能力は2.5MbのディスクにB4判で約30ページ可能であり,同報装置を経由することによる画質劣化は特に認められなかった。

 

 

 

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