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政策評価の手法等に関する研究会(第19回)議事概要

日時

平成12年11月13日(月) 13:00〜16:00

場所

中央合同庁舎第4号館共用第3特別会議室(401号室)

出席者

(研究会)
村松座長、金本良嗣、久保惠一、田辺国昭、星野芳昭、山谷清志の各研究協力者

(総務庁)
塚本行政監察局長、堀江官房審議官、松村官房審議官、鎌田企画調整課長、若生政策評価等推進準備室長、新井政策評価制度法制化担当室長、土井次長、石川次長、藤野次長その他関係官

議題

  1. 事例研究の取りまとめについて
  2. 「政策評価に関する標準的ガイドラインの案」に関する意見募集の結果について
  3. 政策評価制度の法制化に関する検討状況について
  4. 最終まとめに向けた検討事項について(「政策評価の基本的な在り方」関係)
  5. その他

会議経過

  1. 事例研究のとりまとめとして政策評価の設計手順について土井次長から説明後、以下のような意見交換が行われた。

    (久保研究協力者)
    • 「政策評価の設計手順」とあるが、設計という言葉は理科系的な表現であり、実施手順でよいのではないか。

    (星野研究協力者)
    • 「政策評価に関する標準的ガイドラインの案」との関係を明確にする必要があるのではないか。この「設計手順」は、ガイドラインに基づいて各府省が政策評価制度の詳細を設計する時の手引書・手順書と理解できるのではないか。

    (若生室長)
    • 設計手順は、ガイドラインで求めているものに即して評価を行う場合において、標準的に想定される手順や段取りを事例研究結果を基に作成したものであり、実際の運用の手引書、作業手順書として作成したものである。

    (星野研究協力者)
    • 対外的に誤解を与えないために、ガイドラインとこの設計手順を含めた付属資料の性格の違いや拘束力の違いを明確にすることが必要である。

    (若生室長)
    • ガイドラインは、各府省が合意した政府内の一定の合意文書として拘束力を持つものであり、それに対してこの手順書は、研究会の最終報告の付属資料として添付し広く公表して、各省庁にも示して参考に供したいと考えている。

    (久保研究協力者)
    • 効果や成果という言葉の意味が曖昧であることから整理が必要である。

    (土井次長)
    • 実務上、成果だけに限定するとうまく把握できない部分がある。成果をとらえることは重要だが、とらえにくい場合には、効果、いわゆる実績も捕まえる必要がある。

    (村松座長)
    • 効果という言葉自体は、行政活動がもたらす結果を広く表現するために必要である。その上で、アウトカムやアウトプットの意味について明確にすべきである。

    (星野研究協力者)
    • 政策評価の一番のポイントは成果である。成果は効果よりも限定された概念であり、目的達成度と上位の目的に対する貢献・寄与度という2種類の意味がある。それらが混在して使われてきている。

    (田辺研究協力者)
    • デザインの組み立ての部分と具体的手順の部分が混在していると考える。観点別に見た上で設問を設定しそれを把握するために指標を立てるという構成になっており、円滑な導入のためには役立つと考える。
    • しかし、実績(事業)評価におけるコストベネフィットの推定をどのように行うかということであり、特に規制の場合について書かれていないこと、総合評価において因果関係をどのように抽出していくかということは欠けていると思われる。
    • 手法については、性質の異なるものが並列されているので整理すべきである。費用便益分析とコスト分析はデータをどこで(政策の効果をどのレベルで)とらえるかといったものであり、時系列分析、クロス・セクション分析、パネル分析はデータの性質に係るものである。

    (若生室長)
    • 規制のコストの問題は将来の課題として今後も研究して行きたい。総合評価の因果関係の問題については、事例研究で該当するものがなく記載できなかった。手法については整理を行いたい。

    (山谷研究協力者)
    • 事業評価と総合評価の効率性の記述がかなり重複しており、これでは効率性の評価については事業評価も総合評価も同一であると解釈されてしまう。事業評価は事業レベルでの効率性、総合評価は政策の全体的効率性又は政策間の比較などが入ってくると考えられるので、そのような点に留意すべきである。

    (星野研究協力者)
    • 総合評価について、その性格を明確にするためには、具体的事例で検討する必要がある。施策間のバランス、費用と負担の配分等をどのようにするのかを明らかにするのが総合評価であると考える。

  2. 続いて、「政策評価に関する標準的ガイドラインの案」に関する意見募集の結果について若生室長から説明後、以下のような意見があった。

    (星野研究協力者)
    • 全般的に自己評価に対し懐疑心を抱いている意見が多い。各府省が自己評価をきちんと行っているかを第三者によってチェックすることが必要である。

    (久保研究協力者)
    • 政策評価を適切に行うためにはどのような内部体制にするかが問題である。そのために、第三者評価や総務省による評価において、評価を行うための体制についても評価対象とすべきであり、その結果を国民に知らせることが必要である。

  3. 次に、「政策評価制度の法制化に関する研究会」における検討状況について、新井政策評価制度法制化担当室長から説明後、以下のような質疑応答がなされた。

    (久保研究協力者)
    • 各府省の中に政策評価に係る第三者機関を置くことについては消極的なように見えるが、その背景にはどのようなものがあるか。

    (新井法制化担当室長)
    • 既存の審議会の整理が済んだ段階での新たな審議会を設置することの問題や、総務省に置かれる「政策評価・独立行政法人評価委員会」が新たに各府省に第三者機関を設けると屋上屋になりかねない点が挙げられる。
    • 法制化研究会においても、総務省の委員会に第三者的評価を全て担わせることも考えられるという議論もある。ただ、そうなると、かなり強力な権限を与える必要があること、客観性を担保するために、各府省の全ての政策に精通しているような専門家をどれだけ確保することができるのかという問題もある。

    (久保研究協力者)
    • 予算と評価との関係については、予算を編成するに当たっては政策評価の結果を参考とするように財政当局に義務付けることはできないのか。
    • 国会報告については、各府省から直接報告するのか、総務省の委員会が取りまとめて国会に報告する形になるのか。
    • 総務省内部での利益相反の問題があり得ると考えるが、この点について、法律上の整理はするのか。

    (新井法制化担当室長)
    • 予算編成については、ガイドラインにおいても、財政当局は評価結果をその中で適切に活用することとされており、これを踏まえて検討している。
    • 国会報告を行う主体については、政府であると思う。事務的には、総務省が取りまとめ整理して報告することになると考える。
    • 総務省内部での利益相反の問題については、予算編成と予算執行等が大蔵大臣の下で行なわれている例もあり、法律で権限がきちんと分けてあれば問題はないと考える。

  4. 引き続き、最終報告に向けた検討事項(「政策評価の基本的な在り方」関係)について、若生政策評価等推進準備室長から説明があった後、以下のような意見が見られた。

    (久保研究協力者)
    • 第三者評価については国民からの意見も多い。これに対応するということであれば、各府省にも第三者機関をつくり評価を行うということがあってもよいのではないか。
    • 各府省で適切な政策評価を行うためには、きちんとした評価マネジメント・システムの導入が不可欠であるとすることを明記すべきである。
    • 予算編成については、財務省の役割という形で政策評価の結果を参考とする旨が書かかれるのが主要である。

    (星野研究協力者)
    • 政策評価制度の法制化は、同制度の実効性を高めることを目的とするものである。そのためには、きちんとした評価が実施されているかどうか、また、評価結果が評価の計画やその実施に反映されているかどうかということが重要である。
    • きちんとした評価結果を出すためには、評価結果に対する責任体制も重要であり、評価のどの段階で不具合が生じたのか追跡できることを義務付けることが重要である。また、評価結果が反映されなかった場合には、なぜそうなったのかも検討すべき。
    • 多元的な評価については、地方公共団体の行う政策評価との整合性が気になる。総合評価の中には、地方公共団体単位で行った方が縦割りの弊害の克服に役立つものも出てくるので、国と地方の政策評価を一元的にとらえるべきである。
    • 総務省に設置される委員会の役割については、各府省が設置する第三者評価的な審議会における構成員や評価内容が監視する役割が大きいのではないか。
    • 人材の養成・確保については、評価をきちんとできるアンパイア的な役割を持つ人をどう養成するかが重要である。知識があって、自制心が強い人でないとできない。
    • 職員の意識改革については、研修啓発だけでは限界がある。少なくとも管理職の能力評価に反映させないと実効は上がらない。税金を効果的に使うというアウトカム思考への意識改革を明確にすべき。
    • 評価結果の予算への反映については、予算制度そのものを変えなければならないという印象を持っている。
    • 評価手法やデータについては、どこかで集約して、誰もが使えるような機能をもたせた仕組みをつくってはどうか。
    • 評価のインセンティブについては、人材育成や人事評価とも連動して考えていくべきである。

    (金本研究協力者)
    • チェック・アンド・バランスの仕組みを法制化で考えておく必要がある。評価内容や結果を国民に公表する仕組みを作るだけでは不十分である。
    • 特に、総務省や総務省に設置される委員会が機能できる制度的担保がないと、十分に機能しなくなるおそれがある。総務省内部における利益相反についても、行政評価局が十分な内部評価を行えるかという懸念があり、そのための措置として、委員会に調査権限等独自に動ける権限を与えておくことも重要。

    (新井法制化担当室長)
    • 総務省や委員会が機能しないのではないかという話は、法制化された後の運用の中で、そのような問題点が出てきた場合に対応する話ではないかと考える。また、委員会は、意見の申し出が可能であり、諮問そのものにしか答えられないということではない。

    (金本研究協力者)
    • 既に行われている公共事業の評価を見ても、現状は決して楽観できない状況である。全く仮定の話をしているのではなく、現在行われている評価の現状を踏まえた上で、もう少しきちんとした評価を行うには何が必要かというのが私の問題意識である。

    (新井法制化担当室長)
    • 現在でも行政監察において再評価的なことを行っている。これまで全く行っていなかったということでもない。

    (金本研究協力者)
    • どのような評価を行うかということについては、専門家レベルの議論が必要になるが、法制化となると省の権限の議論が先に来てしまう。そのような法制度だといずれうまく機能しなくなるおそれがある。

    (田辺研究協力者)
    • 府省の中の委員会に自由な調査権限を認めるというのは少し不自然な印象を受ける。直接首相に意見を提出するなど委員会の勧告権限を強めるという議論はあり得るが、飛び越えた権限を持たせることになるので、現実的には難しいかもしれない。それよりもむしろレビュー機能を強化していくべきであるというのが法制化研究会の議論の方向となっている。
    • 公表と権限についてはワンセットで考えなければならず、公表データについては法制化でかなり書き込んで、標準的ガイドラインで決められた基準を維持したいと考えている。その前提の下で第三者機関や総務省の委員会を十分に機能させるような制度構築を行う必要がある。

    (金本研究協力者)
    • 情報の公開についてのポイントは、公開されている資料できちんとしたレビューができるかということである。評価に当たって作成すべき情報についてどこかの機関に勧告権限のようなものを持たる必要がある。
    • 情報提供について一文何か権限規定があると、各府省は何か出してくると思う。これがないときに情報を取るのは非常に難しい。

    (山谷研究協力者)
    • 法制化の議論の中で、特殊法人の話は出て来なかったのか。

    (新井法制化担当室長)
    • 特殊法人は、実施機関という位置付けが多く、独立行政法人の評価の仕組みが既に出来ている。与党でも特殊法人については抜本見直しの考え方があり、法制化研究会では採り上げていない。

    (山谷研究協力者)
    • 現実的にみると、重要なポイントではないか。特殊法人には、実際に政策手段を実施しているものもある。ある程度触れておいた方がよいのではないか。

    (新井法制化担当室長)
    • 政策評価を実施するときの対象には入っている。議論となるのは、特殊法人が自ら企画立案するものについて、どこまで実施するかだが、この点については、現段階では政策評価との関連で議論する重要性は薄いのではないかと考えている。

    (金本研究協力者)
    • 評価のプロをつくるというのは、資源の有効利用としては望ましくない。よい政策を行うための政策評価であるので、政策立案機能を適切に行えば、評価の中身も充実したものになる。政策立案機能の強化の一貫として評価の機能をとらえるべき。
    • 評価結果の予算への反映については、あまり踏み込むのは難しい。各府省における自己評価は基本的に自分達の政策を擁護する評価を出す。それをそのまま予算へ反映させるべきということは言えない。
    • 評価手法については、個表まで含めてデータを公表する仕組みを整備する必要がある。その制度的担保として、行政評価局や評価委員会が積極的に動ける形にしておく必要がある。
    • 評価に対してのインセンティブの付与という側面もあるが、成果を厳しく評価する代わりに意味のない古い規制を取り除いていくということであるので、そのことに言及する必要がある。

    (山谷研究協力者)
    • 各府省で評価のノウハウの共通のスタンダードを作ればお手盛り評価を防げるのではないか。そういう仕組みを法律で触れ、現実に作ることができるのか。

    (田辺研究協力者)
    • 法制化研究会の中で、政策評価に関する情報の収集、データベースの整備を図るということを総務省の役割として位置付けられないかということを議論している。

    (金本研究協力者)
    • 総務省でデータベースを持つことについては人とコストばかりかかり、使い勝手が悪いということになるので、データは各府省で蓄積してどこにどのようなデータがあるかが公表されているかという点を総務省が権限を持ってチェックできる仕組みがあれば、それで十分である。

    (村松座長)
    • 各府省の行った自己評価は、国会にも全て報告されるのか。

    (新井法制化担当室長)
    • 個々の結果を公表するとともに総務省にも通知をする仕組みを法制度で考えている。国会報告は、各府省の評価を集めて整理したものを報告することを考えている。

    (村松座長)
    • 総務省に置かれる評価委員会は総務省と同じ情報を見ることになるのか。

    (新井法制化担当室長)
    • 各府省が評価委員会に評価結果を通知するのは困難だが、評価委員会には資料収集権があるので、収集しようと思えばできる。

    (若生室長)
    • 総務省による主要な勧告等について調査・審議するために必要な範囲内で資料を見ることになる。基本的には各府省の評価状況を行政評価局でチェックし、問題があるものなどを委員会に上げていく。一方で、委員会自らの発意で調査し、意見を言うのは可能であり、その範囲で事務局に指示をして資料の提出を求めるということは可能である。

    (村松座長)
    • 短期的に考えると評価のプロのような人材が必要なのではないか。評価についての知識、ノウハウのある者とそうでない者とはかなり差があるのではないか。

    (金本研究協力者)
    • 評価の対象・手法について十分な知識を持ち、それを使いこなせる者でなければ評価はできない。例えば、交通分野だと土木の交通工学を修めた者。しかし、そのような者は単に交通工学のプロにすぎず、評価のプロとはどのような者かということを考えておく必要がある。
    • 公表については、電子媒体での公表も含め、電子政府的なことを考えておいた方がよい。

    (金本研究協力者)
    • 多元的な評価とは、それぞれの立場の人がそれぞれの立場で評価するということである。そのような評価が容易に行えるための基盤整備が必要であり、基本的に一番重要なのは情報公開である。

    (山谷研究協力者)
    • 地方公共団体の評価の取組は混乱状況にある。だからこそ、共通の理解をするような教育、研修のシステムが必要である。

    (金本研究協力者)
    • 評価について重要なのは、きちんと評価した者がどういうオピニオンを出すかということである。それをどう使うかは、政治や行政というのが基本である。
    • 評価の方式に応じて評価情報をうまく使おうという意志のある者でないと、教育しようとしても意味がない。その辺りを強調しておくことが重要である。

    (山谷研究協力者)
    • 評価の設計手順は、現場の者が理解できるためには、かなり詳しく書き込まざるを得ない。一般的なマニュアルにすると、現場では分からない。どの当たりの抽象度に落ち着かせるのか。

    (田辺研究協力者)
    • あまり具体的にせずにこのレベルでとどめておくのは一つの方法かと思われる。より細かい部分は、各省が経験を重ねて行く間に詳細化するということで対応すべきである。

    (金本研究協力者)
    • この設計手順は、基本的に、評価への取組が遅れている府省のためのものだろうと考えている。あまり細かいところに立ち入ると、各省が行う評価をオーソライズしてしまう可能性がある。

    (村松座長)
    • 個々の省の方が所管事項について専門的だとは思う。そうすると、総務省として、客観的に評価するためには、専門家を雇うことも考えなければならないが、外国では専門家を雇っているのか。

    (藤野次長)
    • カナダの会計検査院では、多くの案件で専門家を雇い、調査に参加させてと承知している。

    (金本研究協力者)
    • 日本のように包括的な評価システムを考えている国はあまりない。それぞれの部局から出てきた評価結果をレビューする評価担当部局がどの程度の権限を持っているのか、どの程度の職員を抱えているかでレビューのクオリティーが違う。規制インパクト関係の調査で出かけたときの話を聞くと、アメリカはOMBが権限をもっており、そこにかなりの専門家がいるので、評価のクオリティーがだいぶ上がっているようだが、カナダの場合は、クオリティーのばらつきが強い。

  5. 最後に、若生室長から、次回第20回研究会は、平成12年12月4日(月)の10:00から、最終報告案等について議題として開催することとされた。


以上
(文責:総務庁行政監察局政策評価等推進準備室)

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