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会見発言記事

第193回国会(常会)総務委員会における総務大臣所信表明

平成29年2月14日

はじめに

 総務委員会のご審議に先立ち、所信を申し述べます。
 総務大臣に就任以来二年五か月の間、国民の皆様の生活に密接に関わる幅広い総務行政に、精一杯取り組んでまいりました。
 本年は、「アベノミクス」の諸施策をより一層推進し、日本の未来を拓く取組を加速する、大切な年となります。
 国民の皆様に「暮らしが豊かになってきた」、「地域社会に活気が出てきた」と変化を実感していただける年になるよう、総務省の政策資源を総動員してまいります。
 以下、特に力を入れて取り組みたい政策の方向性について、一端を申し述べます。

国民の生命・生活を守る

 昨年は、四月の「熊本地震」や、八月の「台風第十号」などによる河川氾濫被害をはじめ、大規模な災害が多発しました。十二月には糸
魚川市での大規模火災により、甚大な被害が発生しました。
 これら災害からの復旧・復興に向けて、被災地の実情をよくお伺いしながら、地方交付税や地方債による地方財政措置を講じてまいりました。今後も、被災自治体の財政運営に支障が生じることのないよ
う、適切に対応してまいります。
 被災自治体への応援職員の確保についても、「東日本大震災」や「熊本地震」などからの復旧・復興を着実に進めるためにも、引き続き、全国の自治体に対し、職員派遣に係るご協力を要請してまいります。
 今後想定される大規模災害などを見据え、「地域防災体制の点検と更なる充実・強化」が必要です。
 昨年の水害等の教訓を踏まえて実施した「地域防災体制の再点検」結果を受け、市町村による避難勧告等の適切な発令のための体制整備や、都道府県による市町村の取組支援などについて検討し、必要に応じ、今年の出水期までに、「地域防災計画」や「マニュアル」などを見直すよう、全ての自治体に要請しました。
 糸魚川市の大規模火災を踏まえ、木造建築物密集地域における消防・防災対策や強風下における消防活動の在り方などについて、有識者検討会を開始したところであり、今後の全国における消防活動や消防・防災体制の充実・強化につなげてまいります。
 更に、「緊急消防援助隊の大幅増隊」、「女性や若者の消防団への加入促進」、「災害対応の拠点となる庁舎等の耐震化」、「救急安心センター事業(♯七一一九)の全国展開」など、地域の防災力を高める施策を推進します。
 外国人やご高齢の方々に災害情報が確実に伝達される環境を整備することも重要であり、昨年末、「情報難民ゼロプロジェクトアクションプラン」を取りまとめました。
 具体的には、二〇二〇年を目標に、「空港・駅などのターミナル施設などにおける災害情報の多言語化・視覚化」、「一一九番通報や救急搬送の多言語対応」、「情報コーディネーター(仮称)による避難所等における情報の伝達支援」などに取り組んでいきます。
 必要な方々に対し、「防災行政無線の戸別受信機」や「コミュニティ放送を活用した自動起動ラジオ」の普及などを進めます。
 放送ネットワークの強靱化をはじめ情報通信インフラの耐災害性を向上させ、災害時の情報伝達を可能にする基盤整備を推進します。

地方税財政制度の充実

 地方税、地方交付税等の一般財源総額について、社会保障の充実分の確保も含め、平成二十八年度地方財政計画の水準を上回る額を確
保するとともに、概算要求時点における地方交付税の減と臨時財政対策債の増を、可能な限り抑制します。
 また、地方財政計画に、引き続き「まち・ひと・しごと創生事業費」を一兆円計上するとともに、公共施設等の老朽化対策と適正配置を図るため、現行の「公共施設等最適化事業費」を拡充し、新たに「公共施設等適正管理推進事業費」を計上するなど、喫緊の課題に対応するための所要経費を、適切に計上します。
 こうした地方財政計画の内容を踏まえ、地方交付税の総額の確保などについて規定した「地方交付税法等の改正案」を今国会に提出しています。
 平成二十九年度の地方税制改正については、就業調整を意識しなくて済む仕組みを構築する観点から、「個人住民税の配偶者控除及び配偶者特別控除の見直し」を行うとともに、燃費性能がより優れた自動車の普及を促進するため、「自動車取得税、自動車税及び軽自動車税の特例措置の見直し」を行います。
 このほか、「居住用超高層建築物に係る固定資産税の新たな税額算定方法」の導入などを行うこととしており、こうした内容の「地方税法等の改正案」を今国会に提出しています。

地方創生と新たなチャレンジによる経済再生

 地域に「雇用」を生み出し、「為替変動にも強い地域経済構造」を構築するため、「地域経済好循環推進プロジェクト」を進めてきました。
 地域の資源と資金を活用して地域に「雇用」を創出する「ローカル一〇、〇〇〇プロジェクト」では、各地に好事例が生まれています。エネルギーの地産地消を進める「分散型エネルギーインフラプロジ
ェクト」も、事業化の段階に入りつつあります。
 更に「地域経済好循環推進プロジェクト」を進める施策として、「チャレンジ・ふるさとワーク」に本格的に取り組みます。
 具体的には、一定期間働きながら地域での暮らしを学ぶ「ふるさとワーキングホリデー」、地域特性を活かしたサテライトオフィスの誘致戦略を策定する「お試しサテライトオフィス」をはじめとする諸施策を展開し、地域への「ヒト・情報」の流れを加速していきます。
 統計データの利活用については、和歌山県に統計データ利活用の拠点を設け、データの利活用促進を通じた地域の課題解決や発展を促し、地方創生に貢献していきます。
 生活に身近な分野のIoTの活用には、大きな可能性があります。昨年十二月に策定したロードマップも踏まえ、農林水産業、医療、介護、教育、雇用、行政など、様々な分野で、「身近なIoTプロジェクト」などを通じて、地域へのIoTの実装を進めるとともに、ICTを活用した街づくりを推進します。
 地域の連携や自立促進に向け、「集約とネットワーク化」の考え方に基づき、「連携中枢都市圏」や「定住自立圏」の形成を推進します。過疎地域など条件不利地域については、基幹集落を中心とした「集落ネットワーク圏」の形成などにより、活性化を支援していきます。
 「地域おこし協力隊」については、研修の充実や起業支援などにより、良い人材が地域に定着して活躍できる環境づくりに努めます。

国民生活の向上に直結するICT分野の取組

 来る「IoT/ビッグデータ/AI時代」に向け、一体的かつ総合的なIoT推進戦略を策定するとともに、IoT人材の育成にも取り組みます。
 AI(人工知能)についても、社会実装と研究開発を両輪で進めます。多様な分野でAIの基盤技術の実装を促進し、次世代AI技術の研究開発を加速させます。
 昨年のG7情報通信大臣会合で私から提唱した「AI開発原則」について、ガイドラインの策定に向けた議論を行い、国際的な議論の具体化・加速化の中心的な役割を果たしていきます。
 IoT時代の新たな脅威からネットワークを守るため、「IoTサイバーセキュリティアクションプログラム二〇一七」に基づく対策も講じていきます。特に、セキュリティ人材の育成については、情報通信研究機構にナショナルサイバートレーニングセンターを組織し、その取組を一層強化します。
 また、若年層を対象としたプログラミング教育のモデル開発と横展開を進めていきます。
 スマートフォンは、今や、国民の「生活インフラ」であり、通信料金負担の軽減は重要な課題です。
 このため、SIMロック解除の期間短縮や接続料の低廉化などにより、競争を更に加速させ、利用者の皆様に一層分かりやすく納得感のある料金・サービスを実現します。
 我が国の基幹的な通信インフラである固定電話網についても、公正な競争環境や利用者利便を確保しつつ、IP網への円滑な移行の実現に向けて取り組みます。
 東京オリンピック・パラリンピック競技大会は、優れた日本のICTを世界に発信する絶好の機会です。第五世代移動通信システムの導入、デジタルサイネージの相互運用の実現、多言語音声翻訳システムの更なる研究開発、「IoTおもてなしクラウド」の構築など、世界最高水準のICT利用環境の実現に取り組みます。
 4K・8Kについては、インフラの光化や技術的課題への対応、国民の皆様への適切な周知広報など、必要な送受信環境整備を官民連携で推進してまいります。
 防災ICTや郵便、電波監視など、株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構とも連携し、日本の強みを活かしたインフラ・システムの海外展開を強力に進めます。また、放送コンテンツの海外展開を通じて我が国の対外情報発信力を強化し、訪日観光客の増加や地域産品の販路拡大などに貢献してまいります。
 電波の有効利用を促進し、規制の合理化を図るため、電波利用料の料額の改定などを行う「電波法等の改正案」を今国会に提出します。
 NHKの在り方について、「業務」・「受信料」・「ガバナンス」の三位一体の改革に向けて取り組むとともに、NHKにおける一連の不祥事に関し、NHKに対し、再発防止の徹底や、子会社の在り方そのものをゼロベースで見直す抜本的な改革を求めてまいります。

暮らしやすく働きやすい社会の実現

 マイナンバー制度については、本年夏頃に予定される「情報提供ネットワークシステム」、「マイナポータル」の本格運用に向けて、必要な準備を行います。
 マイナンバーカードの利便性を高め、普及を図るため、「ワンストップ・カードプロジェクト」を立ち上げ、「戸籍や住民票などの証明書に関するコンビニ交付」、マイナポータルを活用した「子育てワンストップサービス」、「マイキープラットフォーム」を活用した「地域経済応援ポイント」など諸施策を取りまとめました。
 「民間サービスにおける展開」や「スマートフォンなどのアクセス手段の拡大」も含めた「マイナンバーカード利活用推進ロードマップ」を策定し、進捗管理を行いつつ、関係省庁の連携を強化・深化し、取組を加速していきます。
 マイナンバー制度の円滑な運用を図るとともに、地方公共団体情報システム機構が処理する事務の適正な執行を確保するための「地方公共団体情報システム機構法等の改正案」を今国会に提出します。
 また、法人間でやり取りされる証明書類や契約書類の電子化を促進するため、マイナンバーカード等を用いて証明書類等に署名した者の権限を、電子的に証明する「電子委任状」の普及を図るための法律案を今国会に提出します。
 ライフステージごとの生活スタイルに合わせた柔軟な働き方や、雇用の場を増やすことを可能とするテレワークについては、都市部から地方への人や仕事の流れを新たに作り出す「ふるさとテレワーク」を推進するほか、「テレワーク月間」などを通じたPRに努め、テレワーク主管官庁として、より一層の普及を図ります。
 郵政事業については、引き続き、ユニバーサルサービスを確保するとともに、国民の皆様が民営化の成果を一層実感できるよう、企業価値や利用者の利便性の向上を促進してまいります。
 ゆうちょ銀行から申請された新規業務の認可については、申請から既に四年以上が経過しておりますので、ゆうちょ銀行の現在の考えをしっかり伺い、郵政民営化法に則り、金融庁とも連携し、適切に対応してまいります。

未来を拓く行政基盤の確立

 地方自治制度については、第三十一次地方制度調査会答申を踏まえ、地方公共団体のガバナンスの強化や、外部資源の活用による地方行政体制の見直しを内容とする「地方自治法等の改正案」の提出に向けて具体的な検討を進めてまいります。
 地方公務員について、一般職非常勤職員に関する規定を整備し、特別職の任用及び臨時的任用の適正を確保するとともに、一般職非常勤職員に対する給付を見直すため、「地方公務員法等の改正案」を今国会に提出します。
 選挙権年齢の引下げに伴い、主権者教育の推進に取り組んでまいりましたが、先の参議院選挙を踏まえ、引き続き、民主主義の担い手である若者の政治意識の向上に取り組んでいきます。
 更に、在宅介護を受けておられる方で、投票に行きたくても実際には投票所に行くことが難しい方が投票しやすい環境の整備に向け、有識者による研究会において議論を進めてまいります。
 ICTを活用した国及び地方の業務改革の取組により、効率的で質の高い行政を実現するとともに、働き方改革にも貢献してまいります。また、行政におけるICT利活用を支える人材の育成強化や情報セキュリティの確保に取り組み、電子政府の推進に貢献してまいります。
 行政の評価・監視や行政相談については、国民の皆様の視点に立って、各府省の業務の実態や課題を明らかにし、改善を強く働きかけてまいります。
 政策評価については、政策意思決定過程での評価の活用の促進など、引き続き、政策の見直し・改善への一層の活用を図ってまいります。
 また、世帯構造の変化、サービスの多様化など経済社会構造の変化に対応し、経済統計を再整備します。
 オンライン家計簿の導入や単身世帯を対象とする新たな調査の実施により、消費全般の動向を捉える新たな消費関連指標を開発してまいります。
 経済統計体系の再構築を図るための公的統計の基本計画の平成二十九年中の見直しや、利用者目線に立った統計改善のための統計委員会の機能の発揮・充実強化など、統計改革を積極的に進めるとともに、政府統計の精度向上に取り組みます。

むすび

 以上、所管行政の当面の課題と政策の方向性について申し上げました。
 副大臣、大臣政務官、職員とともに、全力で取り組んでまいりますので、竹内譲委員長をはじめ、理事、委員の先生方のご指導とご協力を賜りますよう、お願い申し上げます。

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