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会見発言記事

第189回国会(常会)総務委員会における総務大臣所信表明

平成27年3月3日

はじめに

 総務委員会のご審議に先立ち、所信を申し述べます。
 昨年九月に総務大臣に就任して以来、地方経済の好循環を確立する「ローカル・アベノミクス」の実行を掲げ、多くの課題に取り組んでまいりました。安倍内閣によるこの二年間のアベノミクスによって、我が国には「経済の好循環」が生まれつつあります。他方で、まだまだ地方では厳しい、成長の果実を味わえていないという切実なお声も伺っているところです。「ローカル・アベノミクス」の取組を更に加速して、各地域で雇用と所得が拡大し、家計で景気回復を実感していただけるようにしたいと考えています。
 また、私は、「国家の究極の使命は、国民の生命と財産を守り抜くことである」との強い信念を持って、大臣の職責に当たっております。引き続き、被災地復興に取り組むとともに、消防防災体制の拡充・強化を進めます。
 全国各地どの地域に住んでも、安全な環境で生活ができ、質の高い教育や必要な福祉サービスを受けることができ、働く場所がある、そういう地方がたくさんできていく、その姿を目指して、総務省の政策資源を総動員するとともに、世界最先端の「社会全体のICT化」の推進や各種の国民のための改革を進めてまいります。
 以下、特に力を入れて取り組みたい政策の方向性について、一端を申し述べます。

国民の生命、財産を守り抜く

 「閣僚全員が復興大臣である」との意識の下、東日本大震災の被災地の再生のために力を尽くします。
 被災自治体が復旧・復興事業に迅速かつ着実に取り組めるよう、震災復興特別交付税五千八百九十八億円を確保するほか、被災自治体の要望等を踏まえ、全国の地方公共団体に職員派遣を要請するとともに、被災自治体での任期付職員の採用の支援、民間企業の人材活用の促進などを行ってまいります。また、「東北メディカル・メガバンク計画」や、ICTを活用した復興街づくりの推進等に取り組んでまいります。
 昨年は、広島での大規模な土砂災害や御嶽山の噴火、長野県北部を震源とする地震などの自然災害が発生しました。
 これらの災害の教訓を踏まえ、将来発生が予測される大規模災害に備えて、緊急消防援助隊の大幅増隊、女性や若者を中心とした消防団への加入促進、土砂災害・噴火災害対策の推進などを進めてまいります。また、災害時における国民への迅速かつ適切な情報提供を確保するため、放送ネットワークの強靱化やG空間情報を活用したLアラートの高度化など、防災対策へのICTの活用を進めてまいります。
 この冬は、積雪が平年より多く、高齢者の雪下ろし中の痛ましい事故が多発しております。このため、豪雪地帯の実情を踏まえて、支援策を充実してまいります。
 ICTの活用が進み、ICTの安心・安全な利用環境の確保は、ますます重要となっております。消費者利益や安全性・信頼性の確保に努めるとともに、情報セキュリティ上の脅威への対応などに取り組んでまいります。

地方創生のための地方税財制度等の充実

 第三次安倍内閣の最重要課題は、アベノミクスの効果を全国津々浦々に届け、元気で豊かな地域を創生することです。
 地方公共団体が地方創生に意欲的に取り組みつつ、安定的に財政運営を行うことができるよう、地方税、地方交付税等の一般財源総額について、本年度の地方財政計画の水準を相当程度上回る額を確保します。
 また、地方公共団体が自主性・主体性を最大限発揮して地方創生に取り組み、地域の実情に応じたきめ細かな施策を可能にする観点から、新たに、地方財政計画に「まち・ひと・しごと創生事業費」を計上するとともに、公共施設等の老朽化対策に要する経費について、「公共施設等最適化事業費」を計上します。さらに、交付税原資の安定性の向上・充実を図るため、地方交付税の法定率を見直します。
 こうした地方財政計画の内容を踏まえ、地方交付税の総額の確保等について規定した地方交付税法等の改正案を今国会に提出いたしました。
 平成二十七年度の地方税制改正については、経済再生と財政健全化を両立するための地方消費税率の引上時期の変更等を行うとともに、デフレ脱却・経済再生をより確実なものにしていくため、成長志向に重点を置いた法人税改革の一環として、法人事業税の所得割の税率引下げと外形標準課税の拡充等を行います。このほか、地方創生の観点から個人住民税における「ふるさと納税制度」の拡充を行うとともに、環境負荷の少ない自動車を対象とした自動車取得税及び軽自動車税の特例措置の見直し等を行うこととしており、こうした内容の地方税法等の改正案を今国会に提出いたしました。
 さらに、人口減少社会においても、活力ある地域を創出していくために、広域連携のための施策を重層的に展開してまいります。
 まず、「まち・ひと・しごと創生総合戦略」に基づき、「地方中枢拠点都市圏」を含む複数の都市圏概念を「連携中枢都市圏」に統一し、地方財政措置などの支援により、その形成を推進してまいります。
 また、「定住自立圏構想」についても、これまでの取組の成果を検証し、更なる圏域数の拡大を目指し、一層推進してまいります。
 過疎地域など条件不利地域については、基幹集落を中心とした「集落ネットワーク圏」の形成を推進することなどにより、活性化を図ってまいります。

ローカル・アベノミクスの実行

 地域経済の好循環をつくるため、雇用吸収力の大きな地域密着型企業の立上げを支援する「ローカル一万プロジェクト」を進めてまいります。
 また、電力の小売自由化を踏まえた「分散型エネルギーインフラプロジェクト」を引き続き推進し、地域全体の生産性と所得の向上を図りながら、為替変動リスクにも左右されない力強い地域経済構造づくりを目指してまいります。
 さらに、経済産業省との新たな協力の枠組みの下で、地方公共団体と日本貿易振興機構や中小企業基盤整備機構との連携を強化しつつ、「地域の元気創造プラットフォーム」を拡充し、企業立地や地域の特産品の海外への販路開拓などを支援してまいります。
 地方大学が地方公共団体や地元企業などと連携して「地方への新しいひとの流れをつくる」取組や「地方にしごとをつくる」取組を実施することが期待されていることから、地方大学を活用した雇用創出・若者定着の取組を促進します。
 また、地域の農業・医療・教育・雇用・行政等の分野におけるICTの利活用を一層進めることにより、地域産業の生産性向上や地域サービスの充実を図り、地域の活性化に貢献します。そのため、ICTを活用した街づくりに取り組む地方公共団体等への支援や、地方で暮らしながら大都市に立地する企業等の仕事ができるようにすることで地方への新しいひとの流れをつくる「ふるさとテレワーク」の促進、地域コンテンツの流通促進による地域の魅力の情報発信支援等に取り組むとともに、公衆無線LAN、高速モバイル、ブロードバンドなど地域の通信・放送環境の整備を推進します。
 地方移住を検討する方の利便性確保のため、居住・就労・生活支援等の移住関連情報を総合的に提供する「全国移住ナビ(仮称)」を構築します。また、対面による情報提供や相談支援の一元的な窓口となる「全国移住促進センター(仮称)」を本年度中に開設します。
 地方への人材還流を一層推進するため、「地域おこし協力隊」については、隊員数を平成二十八年度に約三千人に拡充することを目指して、国による支援を充実します。
 さらに、これまで同様、育児中の女性、高齢者、障害をお持ちの方などが多様な生活スタイルに応じて住居等で柔軟な働き方ができるテレワークの普及にも取り組んでまいります。

絶え間ないイノベーションの創出

 「二〇二〇年オリンピック・パラリンピック東京大会」は、日本の優れたICTを世界に発信できる絶好の機会です。大会以降の我が国の持続的成長も見据え、無料公衆無線LAN環境の整備、「言葉の壁」をなくす多言語音声翻訳システムの高度化、4K・8Kやデジタルサイネージの普及促進、先進的な研究開発の推進等、世界最高水準のICT利用環境の実現に取り組み、「社会全体のICT化」を進めてまいります。
 さらに、我が国の世界最高水準のICT基盤の更なる普及・発展を通じたイノベーション創出による経済活性化や国民生活の向上を目指し、超高速ブロードバンド等の普及・利活用の促進のための競争環境の整備、消費者保護ルールの充実等を図るため、電気通信事業法等の改正案を今国会に提出いたします。

日本の優れた技術を世界に発信

 ICTによって我が国の経済成長と国際貢献を牽引するため、「地上デジタル放送日本方式」、「日本型郵便インフラシステム」、「防災ICTプロジェクト」など、ICT分野全体で、更なるトップセールスの推進を図ります。
 さらに、海外において通信・放送・郵便事業の展開を図る事業者に対し「産投出資」を活用して資金面や運営面の支援を行う機構を設立するため、所要の法律案を今国会に提出いたします。
 地域経済活性化にも資する放送コンテンツの国際展開の促進やテレビ国際放送の充実・強化を通じて、我が国の対外情報発信力の強化に取り組んでまいります。
 本年は、国際電気通信連合の創設百五十周年に当たる重要な年であり、関係する国際機関の諸活動にも積極的に貢献してまいります。

国民とともに改革を成し遂げていく

 地方行政体制については、人口減少社会に的確に対応できるよう、地方制度調査会での審議を踏まえ、様々な観点から検討を進めてまいります。
 マイナンバー制度については、本年十月から始まるマイナンバーの通知、また来年一月から始まる個人番号カードの交付やマイナンバーの利用などに向け、地方公共団体と連携しながら、着実に準備を進めてまいります。また、個人番号カードを活用した公的個人認証サービスの利活用推進に取り組んでまいります。
 政府情報システムについては、オンライン申請や公共データの提供の促進、政府共通プラットフォームの活用やシステムの統廃合を進め、行政サービスの向上、コストの削減とセキュリティの強化を図ります。また、地方公共団体の情報システムについても、クラウド化を進めてまいります。
 国の行政の業務改革については、電子決裁などICTの活用による業務処理の見直し、行政のオープン化・双方向化などを更に推進するとともに、現在進めている有識者による調査研究の成果を踏まえ、今後一層、効率的で質の高い行政を推進してまいります。
 地方公務員給与については、国家公務員給与の見直しを踏まえ、地域民間給与のより的確な反映など、適切に見直しがなされるよう取り組んでまいります。
 政策評価については、新設予定の審議会の有識者の知見も頂きながら、標準化・重点化の定着、評価の質の向上のための取組を強化し、政策の企画立案に一層役立つよう図ってまいります。
 また、行政評価・監視や行政相談については、国民の関心や社会的影響等を見極めつつ、行政の実態と課題を明らかにし、改善を促してまいります。
 統計については、本年十月一日に国勢調査を実施いたします。今回の調査は、「ビッグチャレンジ」として、初めてスマートフォンにも対応するオンライン調査を全国展開することとしており、実施に万全を期してまいります。また、統計データと地図情報との重ね合わせによる分析機能の強化など、オープンデータの高度化を進めるとともに、これらを活用する「データサイエンス」力の高い人材育成を図ります。
 郵政事業については、ユニバーサルサービスを引き続き確保するとともに、郵政民営化の成果を国民の皆様に一層実感していただけるよう、日本郵政グループ三社の上場に向け、企業価値の向上を促進してまいります。また、郵便・信書便市場の活性化に向け、特定信書便役務の範囲の拡大等を行う郵便法及び信書便法の改正案を今国会に提出いたします。

むすび

 以上、所管行政の当面の課題と政策の方向性について申し上げました。
 副大臣、大臣政務官、職員とともに、全力で取り組んでまいりますので、桝屋敬悟委員長を始め、理事、委員の皆様方のご指導とご協力を賜りますよう、お願い申し上げます。

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