総務省トップ > 広報・報道 > 大臣会見・発言等 > 第190回国会(常会)総務委員会における総務大臣所信表明(平成28年2月18日)

会見発言記事

第190回国会(常会)総務委員会における総務大臣所信表明

平成28年2月18日

はじめに

 総務委員会の御審議に先立ち、所信を申し述べます。
 一昨年九月に総務大臣に就任して以来、地方経済の好循環を確立する「ローカル・アベノミクス」の実行を掲げ、地域経済の再生と財政健全化の両立、社会全体のICT化の推進、誰もが意欲を持って参画できる社会の実現、安心・安全な社会の構築などの重要課題に取り組んでまいりました。
 今後とも、総務省の総力を結集して取組を加速し、誰もがもう一歩前へ踏み出すことができる「一億総活躍社会」を創り上げるという強い決意の下、去る二月四日に署名したTPP協定の早期発効を目指すとともに、同協定を経済再生・地方創生にも結びつけるべく、できることは全て行うとの認識を持って、未来へと挑戦してまいります。
 以下、特に力を入れて取り組みたい政策の方向性について、一端を申し述べます。

国民の生命・生活を守る

 「閣僚全員が復興大臣である」との意識の下、東日本大震災の被災地の再生のために力を尽くします。
 被災自治体が、復旧・復興事業に迅速かつ着実に取り組めるよう、震災復興特別交付税四千八百二億円を確保するほか、各種事業の本格化を踏まえ、全国の地方公共団体に対し、職員派遣についてより一層の協力を要請するなど、被災自治体における人材確保を支援してまいります。
 昨年は、口永良部島の噴火をはじめ全国的に火山活動の活発化が見られ、また、各地で大雨被害が発生し、特に九月の関東・東北豪雨では鬼怒川の堤防が決壊するなど甚大な被害が発生しました。
 これらの災害を踏まえつつ、将来発生が危惧される大規模災害に備えて、緊急消防援助隊の大幅増隊、女性や若者を中心とした消防団への加入促進などを実施してまいります。
 また、放送ネットワークの強靱化、G空間情報の活用、Lアラートの普及展開など、災害時の情報伝達体制の整備にも取り組むとともに、携帯電話などの途絶を想定して、医療・救護活動など災害応急活動に不可欠な非常用通信手段の在り方の検討を進めます。
 また、伊勢志摩サミットにおける消防・救急体制の確保や、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック競技大会などの開催に向け、安心・安全対策の推進や、昨年九月に閣議決定された「サイバーセキュリティ戦略」も踏まえ、サイバーセキュリティの一層の強化に取り組んでまいります。

地方創生のための地方税財政制度の充実

 地方財政については、地方公共団体が地方創生などの重要課題に取り組みつつ、安定的に財政運営を行えるよう、地方税、地方交付税などの一般財源総額について、平成二十七年度地方財政計画の水準を上回る額を確保します。
 また、地方公共団体が自主的・主体的に地方創生に取り組むことができるよう、引き続き、地方財政計画に、まち・ひと・しごと創生事業費を一兆円計上するとともに、地方における喫緊の重点課題に対応するため、重点課題対応分を計上します。
 さらに、地方交付税総額について昨年度とほぼ同程度の額を確保しつつ、赤字地方債である臨時財政対策債の発行額を前年度から大幅減とするなど、一般財源の質を高めます。
 こうした地方財政計画の内容を踏まえ、地方交付税の総額の確保などについて規定した地方交付税法等の改正案を今国会に提出しています。
 地方財政の「見える化」については、今後、住民一人当たりのコスト情報の大幅な充実を図るとともに、ストックに関する情報を新たに加えるなど、各地方公共団体の財政状況の「全面的な見える化」を図ります。
 平成二十八年度の地方税制改正については、経済の好循環を確実なものとするため、成長志向の法人税改革の一環として、法人事業税所得割の税率引下げと外形標準課税の拡大などを行います。
 また、地方創生の推進に向け、地域間の税源の偏在性を是正し、財政力格差の縮小を図るため、法人住民税法人税割の更なる交付税原資化などを行うとともに、地方法人特別税・譲与税を廃止します。
 このほか、自動車取得税を廃止するとともに、自動車税及び軽自動車税に環境性能割を導入するなどの車体課税の見直し、農地集積バンクに貸し付けた農地に係る固定資産税の軽減及び一定の遊休農地への課税強化などを行うこととしており、こうした内容の地方税法等の改正案を今国会に提出しています。

地方からの日本再生

 日本再生のカギは地方経済にあります。地方に「しごと」をつくり、「しごと」が「ひと」を呼び、「ひと」が「しごと」を呼び込む好循環を拡大することが必要です。
 このため、「地域経済好循環推進プロジェクト」を推進し、引き続き、為替変動にも強い地域経済構造の構築に取り組んでまいります。具体的には、雇用吸収力の大きい地域密着型企業を立ち上げる「ローカル一万プロジェクト」や、バイオマスなどの地域資源を活用して地域エネルギー企業を立ち上げる「分散型エネルギーインフラプロジェクト」により、生産性の高い企業の立地を増やしてまいります。
 また、公共施設を民間に開放し、民間事業者のビジネス拠点を創出する「公共施設オープン・リノベーション」や、地域産品の海外への販路開拓や対日直接投資を推進する「地域経済グローバル循環創造事業」などを進めてまいります。
 さらに、地方への「ひと」の流れを促進するため、地方公共団体や関係府省、民間企業との連携の下、「全国移住ナビ」の仕事情報や住まい情報を更に充実させることなどにより、「移住・交流情報ガーデン」の情報提供機能を強化するほか、「地域おこし協力隊」について、隊員数を三千人に拡充することを目指して、支援を充実してまいります。
 活力ある地域を創出していくために、「集約とネットワーク化」の考え方に基づき、広域連携のための施策を重層的に展開してまいります。中核性のある都市と近隣市町村の有機的な連携の下、圏域全体の経済成長の牽引、高次都市機能の集積・強化などの役割を担う連携中枢都市圏や、圏域全体で必要な生活機能を確保する定住自立圏の形成を推進します。また、過疎地域など条件不利地域については、基幹集落を中心とした集落ネットワーク圏の形成などにより、集落の維持・活性化を図ってまいります。

世界最先端のICT大国へ

 ICTはあらゆる社会・経済活動に不可欠な基盤であり、「社会全体のICT化」の推進やグローバル展開を通じて、更なる成長に貢献してまいります。
 来る「IoT/ビッグデータ時代」に向け、新たな投資や雇用を促す施策や次世代人工知能などの研究開発に取り組むとともに、新たなIoTサービスの創出支援や実践的なサイバーセキュリティ演習を行うことができるよう、国立研究開発法人情報通信研究機構法等の改正案を今国会に提出します。
 IoT時代に向けて、スマートフォンを国民の生活インフラとして定着させるため、昨年十二月に策定した取組方針に沿って、スマートフォンの通信料金負担の軽減や端末販売の適正化などを推進し、利用者にとって分かりやすく納得感のある料金・サービスを実現してまいります。
 さらに、東京オリンピック・パラリンピック競技大会は、日本の世界最高水準のICTを世界に発信する絶好の機会です。4K・8Kの推進や第五世代移動通信システムの導入、デジタルサイネージと多言語音声翻訳システムを有機的に組み合わせた「IoTおもてなしクラウド」の構築など、世界最高水準のICT利用環境の実現に取り組みます。
 各地域において、地域活性化に向けた好循環の芽を育てるため、農林水産業、医療、教育、復興など様々な分野へのICTの利活用や、無料公衆無線LANの利用環境の整備などICTによる街づくりを、一層推進してまいります。
 株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構とも連携しつつ、防災や郵便をはじめとする我が国ICTの特徴・強みを生かした「質の高いインフラ投資」を推進し、更なるトップセールスに取り組みます。また、放送コンテンツの国際展開やテレビ国際放送の充実強化を通じ、我が国の対外情報発信力を強化してまいります。
 本年四月には「G7香川・高松情報通信大臣会合」を開催します。IoTやサイバーセキュリティなどのテーマについてG7各国と議論を深めるとともに、議長国としてリーダーシップを発揮し、五月の首脳会合における議論にも貢献してまいります。

暮らしやすく働きやすい社会の実現

 本年一月からマイナンバーの利用及びマイナンバーカードの交付が開始されました。詐欺対策を含めたマイナンバー制度の分かりやすい広報に取り組むとともに、地域の経済成長という視点も踏まえ、マイナンバーカードのICチップの空き領域や公的個人認証サービスの官民における利活用の推進に努めてまいります。
 国民の利便性の向上、行政運営の効率化、公正・公平な社会の実現に資するというマイナンバー制度の基本理念の実現のためには、多くの住民情報を扱う地方公共団体の情報セキュリティ対策を抜本的に強化することが不可欠です。総務省としても、都道府県及び市区町村と連携しながら、しっかりと取組を推進してまいります。
 一億総活躍社会に向けて、地方への新しい「ひと」や「しごと」の流れを促進する「ふるさとテレワーク」など、多様で柔軟な働き方を実現するテレワークの普及に取り組むとともに、地方公共団体における女性活躍の取組を支援してまいります。
 郵政事業については、日本郵政グループ三社の上場後も、引き続き、ユニバーサルサービスを確保するとともに、国民の皆様が民営化の成果を一層実感できるよう、新たな事業展開や、ゆうちょ銀行とかんぽ生命保険の限度額の見直しにより、企業価値や利用者の利便性の向上を促進してまいります。

未来を拓く行政基盤の確立

 地方自治制度については、地方公共団体のガバナンス等に関し、今後取りまとめられる第三十一次地方制度調査会の答申の内容を踏まえ、制度改正に向けた検討を行ってまいります。
 持続可能で質の高い行政の実現のため、ICTの活用などにより、国及び地方の業務改革に取り組みます。国の情報システムについて、高いセキュリティレベルを確保しつつ、クラウド化や整備・運用の効率化を推進するとともに、地方についても、自治体クラウドを中心にクラウド化を進めてまいります。
 行政機関等の保有するパーソナルデータについては、昨年、民間部門の個人情報保護法の改正が行われたことも踏まえ、個人情報の保護と国民の安心をしっかりと確保しながら、適正かつ効果的な活用を図るため、所要の法律案を今国会に提出します。
 約五十年ぶりに抜本的に改正された行政不服審査制度が、本年四月にスタートします。新設される行政不服審査会の機能を適切に発揮させ、行政に対する信頼の確保に努めてまいります。
 国家公務員における給与制度の総合的見直しを踏まえ、地方公務員給与についても、地域民間給与のより的確な反映などの見直しを着実に推進してまいります。
 行政の評価・監視や行政相談については、国民の視点に立って、各府省の業務の実態や課題を明らかにし、改善を力強く働きかけてまいります。
 政策評価については、政策の見直し・改善に一層活用されるよう、評価の質の向上を図ってまいります。
 統計については、経済センサス活動調査などを実施し、国の基幹となる統計情報の提供を行ってまいります。また、オープンデータの高度化と「データサイエンス」力の高い人材育成を進めるとともに、地域の産業構造を見える化した「地域の産業・雇用創造チャート」の普及を進め、地方創生を後押しします。さらに、本年四月には統計委員会が内閣府から移管されることも踏まえ、「公的統計基本計画」に基づき、公的統計のより一層の充実に努めてまいります。
 選挙権年齢の引下げを踏まえ、主権者教育を推進し、若者の政治意識の向上に取り組んでまいります。また、引き続き、有権者が投票しやすい環境の整備に努めてまいります。

むすび

 以上、所管行政の当面の課題と政策の方向性について申し上げました。
 副大臣、大臣政務官、職員とともに、全力で取り組んでまいりますので、遠山清彦委員長をはじめ、理事、委員の皆様方の御指導と御協力を賜りますよう、お願い申し上げます。

ページトップへ戻る