地方財政白書 平成14年版 概要
平成14年版「地方財政の状況」の概要
1.地方財政の果たす役割
- 政府支出に占める地方財政の割合は、国と地方の歳出決算・最終支出ベースで60.4%となっている。
- 国内総支出のうち政府部門については、前年度と比べて0.3%減少。地方政府は前年度と比べて4.9%の減少となっている。なお、中央政府と地方政府が国内総支出に占める割合は、地方政府が13.3%、中央政府が4.6%となっており、地方政府の占める割合が中央政府の約3倍となっている。
政府支出に占める地方財政の割合(歳出決算・最終支出ベース)
|
12年度 |
構成比 |
国と地方の歳出純計額 |
159兆 311億円 |
100.0 |
|
国の歳出 |
62兆9,614億円 |
39.6 |
地方の歳出 |
96兆 697億円 |
60.4 |
(注)国 :一般会計と特定の特別会計との純計(国から地方に対する支出を控除)
地方:普通会計(地方から国に対する支出を控除)
国内総支出と地方財政
|
平成12年度 |
構成比 |
(国内総支出=100) |
(政府部門=100) |
国内総支出(名目) |
513兆 61億円 |
100.0 |
― |
|
民間部門 |
385兆2,679億円 |
75.1 |
― |
政府部門 |
121兆5,424億円 |
23.7 |
100.0 |
― |
|
中央政府 |
23兆7,888億円 |
4.6 |
19.6 |
地方政府 |
68兆4,387億円 |
13.3 |
56.3 |
社会保障基金 |
29兆3,149億円 |
5.7 |
24.1 |
財貨・サービスの純輸出 |
6兆1,958億円 |
1.2 |
― |
(注)国内総支出のうちの政府部門には、扶助費、公債費等付加価値の増加を伴わない経費は含まれないことなどから、それらが含まれている国と地方の歳出決算額より小さくなる。
2.決算規模(普通会計)
歳入、歳出ともに前年度決算額を下回っている。
この主な要因としては、国の補正予算による経済対策等が前年度と比べて小規模であったこと、介護保険制度の実施による影響
(注)等があげられる。
区分 |
12年度 |
11年度 |
増減額 |
増減率 |
歳入総額 |
100兆2,751億円 |
104兆 65億円 |
▲3兆7,314億円 |
▲3.6% |
歳出総額 |
97兆6,164億円 |
101兆6,291億円 |
▲4兆 128億円 |
▲3.9% |
(注)介護保険制度の実施に伴い、関係する歳入及び歳出が普通会計から公営事業会計に移行した結果、歳入面では、国庫支出金等が減少して
おり、歳出面では、老人福祉費において、関係経費(人件費、扶助費等)が減少している。
3.決算収支(普通会計)
(1)
実質収支は、1兆1,259億円の黒字となっている。
(2)
実質収支が赤字の団体は、都道府県2団体(東京都、大阪府)、市町村22団体の合計24団体となっている。
(3)
単年度収支、実質単年度収支ともに、黒字となっている。
(注)実質収支 :歳入歳出差引額から翌年度に繰り越すべき財源を控除した額
単年度収支
:当該年度の実質収支から前年度の実質収支を差し引いた額
実質単年度収支 :単年度収支に、財政調整基金への積立額及び地方債の繰上償還額を加え、財政調整基金の取崩し額を差し引いた額
4.歳入(普通会計)
(1) |
地方税 |
地方税は、道府県民税の利子割が増加するとともに企業収益の改善により法人事業税等が増加したことから、前年度決算額を上回っている(歳入総額に占める割合は前年度より1.7%ポイント上昇の35.4%)。 |
(2) |
一般財源 |
一般財源は、地方税、地方交付税等が増加したことから前年度決算額を上回っている(歳入総額に占める割合は前年度より3.8%ポイント上昇の58.7%)。 |
(3) |
国庫支出金 |
国庫支出金は、国の補正予算により介護保険円滑導入臨時特例交付金等が前年度追加計上されていたこと、普通建設事業費支出金の減等により前年度決算額を下回っている。 |
(4) |
地方債 |
地方債は、地方税収の落込みに伴う減収を補てんする地方債の発行が減少したこと、普通建設事業が減少したこと等から、前年度決算額を下回っている。このため、地方債依存度(歳入総額に占める地方債の割合)は、前年度と比べ1.5%ポイント低下の11.1%となっている。 |
(単位: 億円、%)
区分 |
12年度 |
11年度 |
比較 |
決算額 |
構成比 |
決算額 |
構成比 |
増減額 |
増減率 |
地方税(1) |
355,464 |
35.4 |
350,261 |
33.7 |
5,203 |
1.5 |
|
うち住民税(個人分) |
84,307 |
8.4 |
87,671 |
8.4 |
▲3,364 |
▲3.8 |
うち住民税(利子割) |
12,895 |
1.3 |
3,818 |
0.4 |
9,078 |
237.8 |
うち法人関係二税 |
69,187 |
6.9 |
65,285 |
6.3 |
3,903 |
6.0 |
地方譲与税(2) |
6,202 |
0.6 |
6,089 |
0.6 |
113 |
1.9 |
地方特例交付金(3) |
9,140 |
0.9 |
6,399 |
0.6 |
2,742 |
42.8 |
地方交付税(4) |
217,764 |
21.7 |
208,642 |
20.1 |
9,122 |
4.4 |
(一般財源)(1)+(2)+(3)+(4) |
588,570 |
58.7 |
571,391 |
54.9 |
17,179 |
3.0 |
国庫支出金 |
144,543 |
14.4 |
165,990 |
16.0 |
▲21,447 |
▲12.9 |
地方債 |
111,161 |
11.1 |
130,733 |
12.6 |
▲19,572 |
▲15.0 |
その他 |
158,477 |
15.8 |
171,951 |
16.5 |
▲13,474 |
▲7.8 |
歳入合計 |
1,002,751 |
100.0 |
1,040,065 |
100.0 |
▲37,314 |
▲3.6 |
(注1)法人関係二税は、住民税(法人分)と事業税(法人分)の合計である。
(注2)国庫支出金には、交通安全対策特別交付金及び国有提供施設等所在市町村助成交付金を含む。
5.歳出(普通会計)
(性質別)
(1) |
義務的経費(人件費、扶助費及び公債費の合計額)は、前年度決算額を下回っている。これは、人件費が、職員給の減少等により減少するとともに、扶助費が介護保険制度の実施に伴い関係経費が公営事業会計に移行したことから減少したことによる。一方、地方債の元金償還の増により公債費は前年度決算額を上回っている。 |
(2) |
投資的経費は、その大部分を占める普通建設事業費が減少したことから、前年度決算額を下回っている。なお、普通建設事業費のうち、補助事業費、単独事業費はともに減少しているが、引き続き、単独事業費が補助事業費を上回っている。 |
(3) |
その他の経費は、前年度決算額を下回っている。これは、繰出金が増加したものの、積立金、補助費等、貸付金、物件費等が減少したためである。 |
○性質別歳出の状況
(単位:億円、%)
区分 |
12年度 |
11年度 |
比較 |
決算額 |
構成比 |
決算額 |
構成比 |
増減額 |
増減率 |
義務的経費 |
453,200 |
46.4 |
457,162 |
45.0 |
▲3,963 |
▲0.9 |
内訳 |
人件費 |
268,775 |
27.5 |
270,475 |
26.6 |
▲1,700 |
▲0.6 |
扶助費 |
60,964 |
6.2 |
69,127 |
6.8 |
▲8,164 |
▲11.8 |
公債費 |
123,462 |
12.6 |
117,560 |
11.6 |
5,901 |
5.0 |
投資的経費 |
244,335 |
25.0 |
268,148 |
26.4 |
▲23,813 |
▲8.9 |
|
うち普通建設事業費 |
239,017 |
24.5 |
261,119 |
25.7 |
▲22,102 |
▲8.5 |
|
うち補助事業費 |
105,138 |
10.8 |
116,504 |
11.5 |
▲11,366 |
▲9.8 |
うち単独事業費 |
118,570 |
12.1 |
128,886 |
12.7 |
▲10,316 |
▲8.0 |
その他の経費 |
278,629 |
28.6 |
290,981 |
28.6 |
▲12,352 |
▲4.2 |
|
うち物件費 |
77,022 |
7.9 |
79,873 |
7.9 |
▲2,851 |
▲3.6 |
うち補助費等 |
66,266 |
6.8 |
70,707 |
7.0 |
▲4,441 |
▲6.3 |
うち繰出金 |
39,367 |
4.0 |
32,462 |
3.2 |
6,905 |
21.3 |
うち貸付金 |
59,892 |
6.1 |
63,744 |
6.3 |
▲3,852 |
▲6.0 |
うち積立金 |
19,474 |
2.0 |
25,141 |
2.5 |
▲5,667 |
▲22.5 |
歳出合計 |
976,164 |
100.0 |
1,016,291 |
100.0 |
▲40,128 |
▲3.9 |
(目的別)
(4) |
民生費、土木費等が減少したが、この要因としては、民生費については介護保険制度の実施に伴い関係経費が公営事業会計に移行したことが、土木費については普通建設事業費の減少があげられる。一方、公債費は元金償還の増加により増加している。 |
○目的別歳出の状況
(単位:億円、%)
区分 |
12年度 |
11年度 |
比較 |
決算額 |
構成比 |
決算額 |
構成比 |
増減額 |
増減率 |
総務費 |
91,565 |
9.4 |
91,780 |
9.0 |
▲ 215 |
▲ 0.2 |
民生費 |
133,920 |
13.7 |
150,640 |
14.8 |
▲ 16,719 |
▲ 11.1 |
衛生費 |
65,197 |
6.7 |
65,845 |
6.5 |
▲ 648 |
▲ 1.0 |
労働費 |
4,758 |
0.5 |
6,553 |
0.6 |
▲ 1,795 |
▲ 27.4 |
農林水産業費 |
58,700 |
6.0 |
62,091 |
6.1 |
▲ 3,391 |
▲ 5.5 |
商工費 |
54,277 |
5.6 |
60,020 |
5.9 |
▲ 5,743 |
▲ 9.6 |
土木費 |
195,603 |
20.0 |
209,781 |
20.6 |
▲ 14,178 |
▲ 6.8 |
消防費 |
18,758 |
1.9 |
18,736 |
1.8 |
22 |
0.1 |
警察費 |
34,288 |
3.5 |
34,179 |
3.4 |
109 |
0.3 |
教育費 |
180,787 |
18.5 |
181,927 |
17.9 |
▲ 1,140 |
▲ 0.6 |
公債費 |
123,786 |
12.7 |
117,980 |
11.6 |
5,806 |
4.9 |
その他 |
14,525 |
1.5 |
16,759 |
1.8 |
▲2,236 |
▲13.3 |
歳出合計 |
976,164 |
100.0 |
1,016,291 |
100.0 |
▲40,128 |
▲3.9 |
6.財政構造の弾力性(普通会計)
(1) |
経常収支比率は、前年度より1.1%ポイント低下の86.4%となっている。これは、人件費の減少などから経常経費充当一般財源の伸び率が経常一般財源の伸び率に比べて低かったためである。 |
(2) |
起債制限比率は、前年度より0.3%ポイント上昇の11.3%となり、9年連続して上昇している。 |
(注)経常収支比率は特別区、一部事務組合等を除き、起債制限比率は特別区を含み一部事務組合等を除く。
|
経常収支比率 |
起債制限比率 |
平成12年度 |
86.4% |
11.3% |
平成11年度 |
87.5% |
11.0% |
差 |
▲1.1% |
0.3% |
(注)いずれも加重平均である。
7.将来にわたる財政負担(普通会計)
(1) |
地方債現在高は、前年度末と比べ2.0%増加し、約128兆円となっている。 |
(2) |
普通会計が負担すべき借入金残高は、前年度末と比べ4.4%増加し、約181兆円となっている。 |
(注)
普通会計が負担すべき借入金残高
=地方債現在高+交付税特別会計借入金残高(地方負担分)+企業債現在高(普通会計負担分)
○普通会計が負担すべき借入金残高
区分 |
12年度 |
11年度 |
増減額 |
増減率 |
地方債現在高 |
128兆1,116億円 |
125兆5,986億円 |
2兆5,131億円 |
2.0% |
交付税特会借入金残高 |
26兆2,633億円 |
22兆2,192億円 |
4兆 441億円 |
18.2% |
企業債現在高 |
27兆 323億円 |
25兆9,714億円 |
1兆 609億円 |
4.1% |
合計 |
181兆4,072億円 |
173兆7,892億円 |
7兆6,180億円 |
4.4% |
(注)交付税特会借入金残高は地方負担分、企業債現在高は普通会計負担分である。
8.地方公営企業の状況
(1) |
総事業数は12,574事業で、介護サービス事業の皆増、下水道事業の増加等により前年度より862事業増加している。 |
(2) |
地方公営企業の経営状況は、前年度に比べて黒字事業数が増加しているが、1割以上の事業で赤字が生じるなど、全体として引き続き厳しい状況にある。 |
○平成12年度地方公営企業決算の状況
(単位: 億円)
区分 |
事業数
(年度末) |
決算規模
(支出) |
収支 a |
前年度
収支 b |
増減額
(a−b) |
全事業 |
12,574事業 |
217,963 |
▲492 |
▲396 |
▲96 |
うち |
水道 |
3,661事業 |
48,419 |
1,648 |
1,533 |
115 |
交通 |
125事業 |
15,543 |
▲2,310 |
▲1,677 |
▲633 |
病院 |
757事業 |
47,001 |
▲644 |
▲952 |
308 |
下水道 |
4,669事業 |
76,378 |
604 |
556 |
48 |
宅地造成 |
718事業 |
15,826 |
▲35 |
▲95 |
60 |
(注)決算規模は次のとおり算出した。
法適用企業:総費用(税込み)−減価償却費+資本的支出
法非適用企業:総費用+資本的支出+積立金+繰上充用金
収支額は、法適用企業にあっては純損益、法非適用企業にあっては実質収支による。
全体の経営状況 |
(単位:事業、億円) |
区分\年度 |
11年度
(a) |
12年度
(b) |
差引
(b)-(a) |
黒字事業数
黒字額 |
8,928
(86.0%)
4,643 |
10,033
(87.3%)
4,901 |
1,105
258 |
赤字事業数
赤字額 |
1,459
(14.0%)
5,039 |
1,453
(12.7%)
5,393 |
△6
354 |
総事業数 収支 |
10,387
△396 |
11,486
△492 |
1,099
△96 |
|
(注)1. 事業数は、決算対象事業数(建設中のものを除く。)であり、年度末事業数とは必ずしも一致しない。
2. 黒字額、赤字額は、法適用企業にあっては純損益、法非適用企業にあっては実質収支による。
3. ( )は、総事業数(建設中のものを除く。)に対する割合
9.地方財政の課題
地方財政は極めて厳しい状況にあり、地方分権の進展のための行財政基盤の整備を図るとともに、地方公共団体においては、地方分権の時代にふさわしい簡素で効率的な行政システムを確立するため、引き続き徹底した行政改革の推進及び歳出の見直しによる抑制と重点化、行財政運営の透明性の向上を図り、地方財政の健全化への努力を続ける必要がある。
地方分権の更なる進展のための行財政基盤の整備
- 財政基盤の充実
地方税財源の充実確保、地方交付税総額の確保、国庫補助負担金の整理合理化等
- 市町村合併の推進等
健全化への努力
- 行政改革の推進
定員管理及び給与の適正化、組織・機構の見直し、事務事業の効率化等
- 透明性の向上等
問い合わせ先 |
自治財政局財務調査課 |
今泉補佐、北代専門官 |
(直通) |
03-5253-5649 |
(代表) |
03-5253-5111(内線5649) |
(FAX) |
03-5253-5650 |
|
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