平成23年12月12日up
第一部は、北海道大学大学院 教授 山本 強氏による「農業の価値を高めるためのICTの使い方」と題した基調講演から始まりました。
「農業生産者がICTを使わないのは、ICTを不必要と感じているか、必要だがニーズにマッチしていないから。誰のためのICTなのかを考えることが大事。農業のICT化で生産量が何倍にも増加したり、価格で海外に勝てるわけでもない。ネット取引は多品種・少量販売が売れる傾向にあり、生産者と消費者の直接取引や、農産物のブランド化といった新しい動きは確実に経済効果を上げてきている。ICTは食情報の増幅器である。安心安全・美味しい・楽しいなどの情報を加えることが生産物の価値を高め、農業の潜在能力を何倍にも増幅できる。これが農業のためのICTである」と述べられました。
次に、ICT利活用に取り組んでいる地域から事例発表がありました。
一例目は、乙部町の小石氏から「乙部町ICT利活用地域再生プラン」(注2)が紹介されました。
町のブロッコリー農家が生き残れるか、町の存続をかける思いでICTを活用。気温・湿度などを収集する気象ロボットのデータから収穫量を予想して安定出荷のための微調整を行い取引先の商社のニーズを捉えていること、農家は価格や操作の面で効果を感じにくいようだが安定出荷が保たれていることは喜ばれているなど、成果と課題の両面が伝えられました。
二例目は、熱い想いで事業に取り組んだという美唄市の土屋氏から、美唄やきとりなど特産品の購買につながるよう、美唄ファン(ポータルサイト会員)とともに工夫して月間アクセス50〜60万ビューとなるサイトを作り上げ、東京都庁での販売などリアル事業へ発展を続けている「美唄市郷土情報による地域活性化モデル事業」(注2)が紹介されました。
三例目は、初山別村の大水氏から、これから構築する「初山別村生活支援システム」について、すべての住民に情報が行き渡るように、1世帯に1台以上の携帯電話環境の実現やタブレット端末を活用した教育など産学官連携の構想が紹介されました。
続いて第二部では、討論会「地域および産業の再生におけるICTの可能性」が行われました。
北海道に移住して宿を営む荒木氏から、「田舎暮らしにインターネットは不可欠だと思うが、光が整備される際、急いで申込みした自分と対照的に申込みする住民は少なかった」と、住民の中で温度差がある様子が伝えられました。
討論会で荒木氏にお会いすることから、事前に荒木氏の移住体験を綴った本をネットで購入したという北海道地域農業研究所の黒澤氏は、購入後、道内出身・在住の自分に対して道内移住関連本が購入サイト上の画面上にずらりと表示されたエピソードで会場を沸かしながら、ICTの面白さや、行政などのシステム構築者が使う側のニーズをくみ上げる必要性を訴えていました。
当局の津田課長からは、政府、総務省の農林水産業に係るICT利活用の取り組みの紹介とともに、これまでは一つの目的に特化したアプリケーションやシステムが構築されてきたが、スマートフォン等の新しい情報伝達ツールも活用しながら色々なアプリを使うことが可能になった。柔軟な発想で、皆様も身の回りのICTを眺め、新しい使い方を考えてほしいと呼びかけていました。
最後にアドバイザーの山本氏から、「行政・消費者・売り手の立場を変えて考えてみること、農家も自分のお金を使って商品をネットで買ってみることが大事。あれもこれもではなく、できることから始める、そして、自分(農業)を羨ましいと思わせる、それができれば大丈夫」と温かいアドバイスで締めくくられました。
北海道大学大学院 情報科学研究科教授
山本 強 氏
乙部町 財政課長 小石 裕之 氏
美唄市 商工交流部商工労働課
土屋 貴久 氏
初山別村 経済課長 大水 秀之 氏
討論会の様子
