昭和62年版 通信白書(資料編)

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2 電波監視等

 電波監視の内容としては,電波利用の秩序を確保するため,発射電波を通じて行う電波の監査,混信の排除,不法無線局の探査並びに電波の有効利用を図るための発射状況及び利用状況の調査があるほか,外国主管庁から要請されて行う電波の監視がある。

(1)電波監視結果

ア.電波の監査
 電波の監査は,無線局から発射される電波を受信して,電波の質(周波数偏差,占有周波数帯幅,スプリアス発射の強度)及び電波の使用方法が国際電気通信条約又は法令の規定に適合しているか否かを確かめることであり,規定に違反している者に対しては,規正等の措置を実施してきている。監査の方法としては,無線局単位で行う質及び運用の監査と国内無線局のみを対象に通信系単位で行う運用の監査とがある。

資料5-15 国内無線局の電波の監査状況(61年度)

資料5-16 外国無線局の電波の監査状況

イ.混信状況調査
 混信状況調査は,既設無線局等に対する混信妨害の原因を究明して,混信波を排除し,無線局等の正常な運用を確保するため実施している調査であって,混信の発生原因は,周波数帯別にみると,短波帯(3MHz〜30MHz)においては外国の無線局,超短波帯(30MHz〜300MHz)以上の周波数帯においては,国内の無線局に起因するものが多い。

資料5-17 周波数帯別混信状況調査件数(61年度)

ウ.不法無線局の探査
 61年度は,不法無線局の多くを占めている不法市民ラジオの根絶を図るために,6月1日から10日間を「電波法違反防止旬間」と定め,電波法令違反を未然に防止するための広報活動を全国で集中的に実施するとともに,捜査機関の協力を得て,路上及び海上における強力な取締り等を行った。この結果,不法市民ラジオは大幅に減少してきているが,依然として相当数が残存しているものと推定されるので,引き続き強力な取締り等を行うこととしている。
 また,不法市民ラジオ以外に,ハイパワーの不法コードレス電話,不法改造パーソナル無線,37MHz帯不法無線局,不法ミニFM局,不法ミニTV局等,新しい形態の不法無線局が出現してきており,このため,一般不法局の摘発件数が著しく増加している。これらの不法無線局は,防災行政無線等の重要無線通信に混信妨害を与えるおそれがあるため,今後とも広報活動により国民の注意を喚起するとともに,悪質なものに対しては,捜査機関へ告発するなどの措置を行うこととしている。

資料5-18 不法無線局の措置状況(61年度)

エ.電波の発射状況等の調査
 電波の発射状況調査は,必要とする周波数帯について,そのスペクトルの空間的占有状況を把握し,周波数の効率的な利用を図るために実施している調査である。
 電波の利用状況調査は,特定の周波数を対象として,そのスペクトルの時間的な占有状況を把握し,電波が効率的に利用されているか,また,通信の疎通状況に問題がないかどうかを調査するものである。
 両調査とも無線局の分布状況及び電波の伝搬特性を考慮して固定及び移動により実施されているが,移動による調査においてはその大部分が超短波帯(30MHz〜300MHz)以上となっており,特に150MHz帯及び400MHz帯が多くなっている。

資料5-19 周波数帯別電波発射状況調査及び電波利用状況調査件数(61年度末現在)

オ.国際監視
 IFRBからの協力要請に基づく通常国際監視及び短波放送専用周波数帯の監視を行っている。

資料5-20 国際監視の実施状況(61年度)

(2)電波障害の防止

 放送の受信及び無線通信に対する電波障害を防止し,電波の円滑な利用を図ることを目的として,関係省庁,放送事業者,その他の関係団体によって構成される電波障害防止協議会が設置されている。同協議会は,電波障害の防止に関する思想の普及,防止措置の指導,調査等を行っている。
 また,テレビジョン放送等の受信障害に関する苦情等の申告に対して,適切かつ円滑な処置を行うため,55年9月から,地方電気通信監理局及び沖縄郵政管理事務所に,受信障害対策官(沖縄郵政管理事務所にあっては,受信障害担当官)を設置し,申告の一元的な受付・処理を行う体制をとっている。

資料5-21 電波障害原因別処理件数及び構成比(61年度)

イ 不要電波問題
 高度情報化の基盤となるマイクロエレクトロニクス技術の進展に伴い,外部からの電磁波の影響を受けやすく,また,それ自体不要な電磁波を輻射する高集積化されたディジタル機器が広範に利用されるようになり,その結果,不要電波により様々な障害が発生するようになっており,何らかの抜本的対策が要請されている。
 不要電波問題懇談会が,実態調査により収集した不要電波による障害事例は,150件(同種のものは1件とした。)程度であり,軽微なテレビジョン等を受信障害から重大な人身事故まで多岐にわたっている。これらの事例の中から社会的に問題となったもののいくつかを次に挙げる。
[1] 60年8月,工場用布地の加工メーカーにおいて,布地製品を検査する検反機のそばに配置していたパソコンが誤動作した。調査の結果,布地に帯電していた静電気による火花が電磁波を発生したものと判明した。
[2] 59年12月及び61年3月に駅構内において列車無線の運用が不可能になるほどの雑音が入った。調査の結果,40mほど離れたゲームセンターのテレビゲーム機から漏れた電磁波と判明した。
[3] 58年10月,空港監視用レーダーのモニター・ディスプレーにスポーク状の妨害が入った。調査の結果,近隣の一般住宅の屋根に設置されたテレビジョン用ブースターが発振したものと判明した。
[4] 57年3月,工事用クレーンのだす火花からの電磁波により,産業用NC旋盤の主軸が突然回転し,巻き込まれた作業員が死亡した。
[5] 50年2月,オレフィンブランド原料ガス圧縮機の出口に設定してある温度警報設定機が,至近距離で使用していた携帯型無線機の電波に感応して動作し,プラントを停止させた。

資料5-22 不要電波による障害の発生状況(62年5月)(1)

資料5-22 不要電波による障害の発生状況(62年5月)(2)

資料5-23 国内における不要電波の対処状況(1)

資料5-23 国内における不要電波の対処状況(2)

資料5-24 諸外国における不要電波対処状況

ウ 電磁環境問題
 電磁波の生体に及ぼす影響においては,未解明の点が多いが,近年,高度情報社会を迎えて多種多様な電磁波利用設備が増大してきたことに伴い,生活環境や労働条件にかかわるものとして検討を行っていく必要が生じている。世界保健機構(WHO)でも,1981年「環境健康基準16」を勧告し,電磁波の生体への照射による健康への影響についての疫学的研究の必要性を指摘している。
 我が国においては,電磁波の生体に及ぼす影響に関して郵政省電波研究所及び一部の大学で基礎的な研究が進められているにとどまっており,放射される電磁波についての国の基準としては電子レンジを除いては設けられるいたっていない。

資料5-25 諸外国における電磁環境の安全基準

(3)高周波利用設備

 高周波利用設備は,電波が外部に漏れて放送の受信や他の無線通信に妨害を与えるおそれがあるため,電波法に基づく許可が必要である。許可の対象となる設備は,10kHz以上の周波数を使用する通信設備(電力線搬送及び誘導式通信)及びISM設備(産業用,科学用,医療用,家庭用その他これと類似の用途に利用する通信設備以外の設備で,高周波出力が50Wを超えるもの)である。

資料5-26 用途別高周波利用設備許可件数(累計)の推移

 許可を要する高周波利用設備のうち,搬送式インターホン,一般搬送式ディジタル伝送装置,特別搬送式ディジタル伝送装置,電磁誘導加熱式調理器,超音波洗浄機,超音波ウェルダー及び超音波加工機については,型式指定の制度を導入しており,郵政大臣が定める技術基準に適合する型式であると認められた設備は,許可を受けなくても使用できる。
 また,電子レンジについては,従来型指定の対象となっていたが,昭和60年12月4日から製造業者等が自ら型式確認を行う制度が導入され,製造業者等が郵政大臣の定める技術基準に適合していることを確認した機器については,許可を受けなくても使用できることとなった。

資料5-27 機種別型式指定・確認件数(累計)(61年度末現在)

 

 

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