有識者インタビュー (國領 二郎)

有識者インタビュー

國領 二郎(こくりょう じろう)

慶應義塾常任理事、慶應義塾大学総合政策学部教授
1982年東京大学経済学部卒業。日本電信電話公社入社。1986年ハーバード・ビジネス・スクール留学。1992年同経営学博士。1993年慶應義塾大学大学院経営管理研究科助教授。2000年同教授。2003年同大学環境情報学部教授。2006年より総合政策学部教授。2005年SFC研究所長、2009年総合政策学部長、2013年慶應義塾常任理事。主な著書に『オープン・ネットワーク経営』(日本経済新聞社、1995)、『オープン・アーキテクチャ戦略』(ダイヤモンド社、1999)、『オープン・ソリューション社会の構想』(日本経済新聞社、2004)、『ソーシャルな資本主義』(日本経済新聞社、2013年)がある。

NRI
自治体のICTに関する取り組みとして、どのようなことが今の日本に求められているか、その中からG空間がどの位置づけとなるかをお聞かせいただければと思います。まず最初に自治体の中での、防災と産業活性化という観点で、ICTがどの様な効果を持っているとお考えでしょうか?
國領先生
地域の人同士がICTを通してつながることができるので、自治体の問題解決のための道具として有効的ですね。自治体から世界への情報発信のためにも利用することができます。また、医療、教育といった人間が生活をしていく上で必須の物事に対して、コスト的な効率を向上させるという意味で、ICTが不可欠であると認識しています。防災という観点では、強い自治体を作るために有効活用できるのではないでしょうか。
NRI
確かに、地域や世界の人々とつながりを持つことができますね。防災だけでなく、医療、教育とも密接に作用するのですね。逆に、注意すべき箇所等はありますか?
國領先生
自治体が中央から情報を受け取るだけの道具としてしまうと、自治体のお金を中央が吸い取るだけの道具になりかねません。そうならないためにも、自治体が自身の問題を自身で解決するための道具として利用してほしいと思います。
NRI
G空間の10のモデルについて、今後どのような実証と展開をみせるべきとお考えでしょうか?
國領先生
まず実用化に向けた基盤を整備していくべきだと思います。今回、災害と産業の2つの観点でプロジェクトを展開していきますが、いずれもG空間と位置情報がネットワーク化され、クラウドにより共有されるということで、これまでにない非常に多くの可能性が出くるかと思います。いずれのモデルもテーマは違えど、楽しみな取り組みが揃っていますね。
NRI
都市と地方でそれぞれの地域特性に応じた幅広い事業が展開される予定です。都市、地方のそれぞれにおいて、どのような点に注意して進行すべきとお考えでしょうか?
國領先生
都市部の方が、その地域特有のモデルになりやすい傾向にあるため、横展開の可能なモデルであるかどうかに注意すべきかと思います。地方については、コストを上回るメリットを明確にし、進行をする必要があるかと思います。どちらにも言えることですが、位置情報を利用することで、より緻密なサービスが可能となります。防災という観点では、位置情報に加えて、地図、ネットワーク、時間を組み合わせることで、現状では把握できなかった街全体の状況把握が可能となり、これまでとは違うレベルでの情報提供を実現できます。この価値も各自治体がしっかり把握をして、全面に押し出して進行していただきたいですね。
NRI
どのようなモデルがこの先求められてくるのでしょうか?
國領先生
それぞれの自治体がバラバラに取り組みを実施しているようでは有用性が低く、やはり各モデルとも横展開をすべきですね。今回の例で言うと、医療関係のモデルが徳島県にありますが、この県に閉じた話ではなく、別の県や自治体へ横展開をすることを前提に進行していただきたいと思います。
NRI
もう一方で、G空間プラットフォームというものもあり、現在構築中とのことで、来年度はG空間の各モデルとプラットフォームを組み合わせていくフェーズとなるかと思います。
國領先生
ここでつくったものと連結する際に整合性の整っているものとなるよう、双方に注意して進行していただきたいですね。
NRI
横連携の部分について、海外の良い例等ございますか?
國領先生
韓国のトップダウンの仕組みは、かなり情報の集約ができてきていますね。最近は、以前に比べて情報の集約ができるようになってきているのですが、自治体となるとまだまだといった印象です。
NRI
G空間を普及していくにあたり、大学の役割としてはどのようなものとなる認識でしょうか?
國領先生
まだまだ発展途上な部分の多いテクノロジーなので、その基本技術の部分で役に立てるのではないかと思います。また、ステークホルダという意味では、自治体とNPOと企業が連携するとなると、それぞれ全く異なるインセンティブ構想を持っているので、中立的な立ち位置である大学が仲立ちとして機能するのではないかと思います。

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