採択事業 立命館大学

被災に伴い制限された通信環境下における、地下空間を含む情報伝達・避難誘導支援の実現

先進技術を組み合わせた「G空間誘導灯システム」により情報インフラを創出することで、シームレスで汎用性の高い情報伝達を、来街者を含む大量の滞在者に提供。

実証地域

大阪府大阪市、愛知県名古屋市、東京都

担当局

近畿総合通信局

実現するモデル

  • (1)世界最先端のG空間防災モデルの確立に関する実証事業
  • 2.都市災害時の地下街等閉鎖空間における情報伝達の実証事業

構築したシステムの説明

本事業では、位置・場所に応じた的確な情報収集、伝達、避難誘導の実現を目指し、都市生活住民が85%の時間を過ごす地下街等の屋内空間において、先進的なG空間技術(準天頂衛星、IMES、Beacon、Wi-Fi、PDR、近接通信、人流センシング)を組み合わせた「G空間誘導灯システム」等を用いてシームレスな測位環境を構築し、さらに、施設管理者が非常時に被災現場の情報収集・伝達に活用可能な「BtoBアプリ」と、滞在者が平常時/非常時シームレスに利用可能な「BtoCアプリ」の2つを開発しました。「BtoBアプリ」には、災害発生場所や従業員の現在位置等がマップ上で表示される機能や、施設来訪者の人流を見える化するヒートマップ機能などを、「BtoC」アプリには、非常時に「災害モード」に切り替わり、来訪者の位置に応じた各種災害情報を配信する機能を搭載しています。これらは、各種防災訓練を通じて性能や機能を検証し、実用化を進めています。

実証事業の概要(全体構成図)

本実証のポイントは、G空間情報機器を設置し「場所に応じた情報」サービスを実現したことと、災害オープンデータも活用し一般向け職員向けの情報を一括管理・配信したこと。

G空間誘導灯システム(統合測位ボックス)・災害対策本部で使用するBtoBアプリイメージ

G 空間誘導灯システム( 統合測位ボックス)から得られる来訪者の人流ヒートマップや職員位置・施設被害情報、発信された災害情報のタイムラインが、BtoB アプリで表示される。

活用するG空間技術、G空間情報

  • 準天頂衛星 メッセージ機能
  • 屋内測位用 G空間非常灯システム(IMES、BluetoothLE Beacon、Wi-Fi、人流センシング)
  • PDR(歩行者向け自律航法)
  • 近接通信
  • 3次元地図(3D空間モデル)

実施団体

  • 立命館大学
  • 慶應義塾大学
  • 特定非営利活動法人位置情報サービス研究機構Lisra
  • 東京駅周辺地区防災隣組
  • 一般財団法人都市みらい推進機構
  • 株式会社日建設計総合研究所
  • クウジット株式会社
  • 株式会社ゼンリンデータコム
  • TIS株式会社
  • メタプロトコル株式会社
  • 西日本電信電話株式会社
  • エヌ・ティ・ティ・コムウェア株式会社
  • 株式会社ACCESS
  • 株式会社U's Factory
  • 株式会社R−pro

インタビュー

立命館大学情報理工学部教授
西尾信彦さんに聞きました

慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス助教授等を経て、2003年より立命館大学理工学部助教授、2005 年より現職。慶應義塾大学政策・メディア博士。専門はユビキタス・コンピューティング。


今回、G 空間シティ構築事業に提案した背景を教えて下さい。
6年ほど前より大阪地下街の複数の施設管理会社と連携し、デジタルナビゲーションマップを作成しています。各管理会社が施設マップを作成していますが、一枚の地図になっていない為、利用者に分かり難い状況でした。さらに、ストリートビューを撮ってナビゲーションをしたり、屋内測位の為にサイネージを活用したりするなど、各種実証実験の機会を頂きました。その成果として、「うめちかナビ」というサービスを6年間継続実施しております。今回、東京、大阪、名古屋という三大都市圏での地下空間でやろうと声かけしてチームを作りました。
事業におけるアピールポイントをお教え下さい。
IMESWi-Fiなど特定の技術だけを使った実証は過去にもありますが、東名阪の3箇所において、屋内空間をターゲットに行ったハイブリッド測位の大規模実験は、世界でも初ではないでしょうか。
実証内容についてご説明下さい。
実証実験は、我々が作ったシステムがしっかり動くかという性能の実証と、災害が起きた時にその災害時の皆さんの行動を支援することができるかという災害想定の避難訓練のような実証と2つにわかれています。東京は、東京メトロの二重橋駅をサイトにしていまして、そこで火災発生のシナリオで駅員さんに今回のシステムを使っていただきます。大阪の訓練の実証では、梅田地下街は南海トラフ地震が起こると2時間後に水没することを鑑み、地下街にいる人にできるだけ高い位置に上がっていただきます。大阪市自身もこの件は非常に憂慮されていて、今年度大阪市地下空間浸水対策協議会という協議会を設立され、2015年3月に防災訓練を企画しています。そこと連携し、協議会の会員でもある大阪地下街さんのエリアを使わせてもらって、同じシナリオで同じ時間に我々のシステムを使って実験をすることになりました。名古屋は一般参加可能になっていまして、栄のセントラルパーク一帯で行います。AppleのAppStoreから「センパナビ」というセントラルパーク専用の商用アプリをダウンロードしていただき、その場で使ってもらいます。普通、異なる地下街で同じアプリを使うことはありませんので、平常時は各施設のアプリを使っていただく想定です。それを、災害時には、ライブラリをリンクすると同じアプリとして機能するような仕組みを構築し、災害時の行動支援をしたいと考えています。一般向けのアプリケーション(BtoCアプリ)は、災害時には災害モードに変わり、避難関係の情報や災害情報、近隣交通情報などが見られるようになります。現在地もわかるし、ハザードマップといって、今地下街の中で破損している場所や行ってはいけない場所やブラックリストの地図上の表示などもそこに出てくるようになっています。施設の従業員向けのアプリケーション(BtoBアプリ)では、ここが火元だなど危ない場所を、写真を撮って送ってもらうラインのようなアプリケーションが付随しており、それが防災センターに集まるようになっています。防災センターがそれを見て、メッセージを出したり、地図上にハザードを出す場所にアイコンを載せていくと、アプリケーションにそれが配信される仕組みです。地下鉄はエリアが広く、指示も煩雑になるため、こういう仕組みがあると、指示統制ができるのではないかと考えています。
今後の取組予定や期待を教えてください。
大阪と名古屋では、継続してサービス提供する予定です。東京は、今回は二重橋駅のみでしたが、他のプロジェクト等に技術移転をすることを考えています。ソフトウェアなどはオープンソース化し、どの施設でもどの地域でも希望があれば展開可能な形にするつもりです。加えて、他地域に展開するために必要なガイドラインをしっかり整備するといったところは、最低限行なっていきたいと考えています。

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G空間シティ構築事業
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