国際がん研究機関(IARC)は、2011年5月、世界各国から約30名の専門家を招集し、携帯電話に用いられる無線周波(100kHz-300GHz)の電磁界のヒトに対する発がん性評価のための検討会を実施しました。
会合の結果、同年5月31日IARCは、携帯電話の無線周波の電磁界を、発がん性があるかもしれないグループ(2Bというグループ)に分類しました。このグループ2Bには、ほかにコーヒーや漬物などが属しています。
IARCは、神経膠腫や聴神経腫についての携帯電話のユーザーにおける証拠は「限定的」、その他のタイプのがんについては結論を導くには「不十分」と評価しています。
分類 | 例 | |
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グループ1 | 発がん性がある(Carcinogenic to humans )( 107種) ヒトへの発がん性を示す十分な証拠がある場合等 |
カドミウム、アスベスト、ダイオキシン、ホルムアルデヒド、太陽光、紫外線、エックス線、ガンマ線、タバコ(能動・受動)、アルコール飲料 |
グループ2A | おそらく発がん性がある(Probably carcinogenic to humans)(59種) ヒトへの発がん性を示す証拠は限定的であるが、実験動物への発がん性を示す十分な証拠がある場合等 |
PCB、鉛化合物(無機)、ディーゼルエンジン排気ガス |
グループ2B | 発がん性があるかもしれない(Possibly carcinogenic to humans)(266種) ヒトへの発がん性を示す証拠が限定的であり、実験動物への発がん性に対して十分な証拠がない場合等 |
クロロホルム、鉛、コーヒー、漬物、ガソリン、ガソリンエンジン排気ガス、超低周波磁界、無線周波電磁界 |
グループ3 | 発がん性を分類できない(Not classifiable as to carcinogenicity to humans)(508種) ヒトへの発がん性を示す証拠が不十分であり、実験動物への発がん性に対しても十分な証拠がないか限定的である場合等 |
カフェイン、原油、水銀、お茶、蛍光灯、静磁界、静電界、超低周波電界 |
グループ4 | おそらく発がん性はない(Probably not carcinogenic to humans)(1種) ヒトへと実験動物への発がん性がないことを示唆する証拠がある場合等 |
カプロラクタム(ナイロンの原料) |
IARCでは、これまでの研究の結果、電波ばく露とがんとの因果関係に関する証拠は、「限定的」または「不十分」としています。
IARCのChristopher Wild部長は今回の分類について、携帯電話の長期使用についてさらに研究することが重要で、その研究結果を手にするまでは、ハンズフリーキットの使用または携帯メールなど、電波のばく露低減に役立つ実際的な対策を取ることが重要であるとコメントしています。
今回の報道に対する各国の反応は下表のとおりです。
発表主体 | コメント | 付言 |
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英国保健防護庁(HPA) | 今回のIARCの分類はHPAの助言と一貫している。つまり、無線周波電磁界ばく露によるがんのリスクについて科学的証拠は一つもないが、可能性は残る。 | HPAの独立諮問委員会は無線周波電磁界の健康影響に関する全証拠をレビュー、2012年公表予定。 |
ドイツ連邦放射線防護局(BfS) | 今回のIARCの分類について紹介した後ドイツの移動体通信の研究プログラムの結果に言及。(長期的影響と子供への影響に可能性を排除仕切れていない。) | WHOの5つの国際科学協力センターの一つとして移動体通信による健康影響に関する研究を推進。 |
米国国立がん研究所(NCI) | 今回のIARCの分類の基になる携帯電話の電波ばく露によるがんのリスク上昇データについて、研究社はこの知見は決定性に欠けると判断した。 | 国立環境保健科学研究所(NIEHS)の国家毒性プログラム(NTP)が携帯電話の電波ばく露に関する大規模な研究を推進。 |