海外ニュース(2018年11月1日号)

■5G

[1]ホワイトハウス、5Gネットワーク構築支援にかかる5Gサミットを開催≪米国≫

 9月28日、ホワイトハウスは「5Gサミット」を開催しました。サミットでは、民間セクターによる可能な限り迅速な5Gネットワーク構築を政府がいかに支援できるかついて協議されました。
移動通信関連の企業の幹部を招いたこのサミットは、5Gに積極的に関与していきたいというトランプ政権の意向を初めて明確に示すものとなりました。
 政府側からは、ラリー・クドロー国家経済会議(NEC)委員長やマイケル・クラツィオス連邦副最高技術責任者(CTO)などが出席したほか、上下院の有力議員や、連邦通信委員会(FCC)、国家電気通信情報庁(NTIA)の関係者も参加しました。
クドロー委員長は、政府は移動通信業界が5Gを構築するために必要なものを与える方針だと述べ、トランプ政権は「America First、5G First」のアプローチを取ると明言しました。また、税率の引き下げや規制緩和も進めていくとしています。
また、共和党のグレッグ・ウォルデン下院議員は、米国が5Gのサプライチェーンを保護・奨励していく必要性を訴えました。ウォルデン議員は、「単純に米国市場からベンダーを排除すれば良いという考えもあるが、ハードウェア、ソフトウェア市場は国際的だ」とも述べました。ウォルデン議員は、サプライチェーンにリスクが潜んでいることは知られているが、国際的かつ全体的に考えなければならないとしました。
 その他、5Gサミットでは、ウォルデン議員やNTIAのレドル長官などから、中帯域の周波数を積極的に移動通信へ開放していくべきとの意見も出されました。

■AI

[2]華為技術、5大AI発展戦略と2種類のAIチップを発表≪中国≫

 10月10日、中国ベンダー大手の華為技術(Huawei)は、5大AI(人工知能)発展戦略を発表しました。主な内容は次のとおりです。
 
(1)基礎研究への投資:コンピュータービジョン、自然言語処理、意思決定・推理などの分野において、高データ効率(データ量を減らす)、高エネルギー効率(計算量とエネルギー消費を減らす)、かつ安全で信頼できる自動的・自律的なマシンラーニング基礎能力を構築する。

(2)フルスタック・ソリューションの構築:クラウド、エッジなどの利用シーン向けの独立的・協同的なフルスタック・ソリューションを打ち出し、豊富かつ経済的な計算資源を提供する。

(3)オープン・エコシステムと人材育成への投資:各国の学界、産業界、パートナーと広範に協力し、AIのオープン・エコシステムを構築し、AI人材を育成する。

(4)ソリューションの強化:AIの考え方と技術を従前の製品とサービスに導入し、価値の向上と競争力の強化を実現する。

(5)社内効率の向上:AIの活用による社内の日常業務を最適化し、社内の運営効率及び質の向上を図る。
 
 また、2種類のAIチップも発表されました。一つはハイパフォーマンス・コンピューティング性能を重視するAscend 910で、チップごとの計算密度が世界最大で、米NVIDIAのV100の2倍に相当します。もう一つのAscend 310は低電力計算を重視します。これらのAIチップは、2019年第2四半期に量産される予定ですが、華為技術の徐直軍董事長によると、チップの単独販売ではなく、AIアクセラレーションのカードやモジュール、サーバーといった形で販売する見込みです。

■没入型技術(VR・AR・MR)

[3]英国政府、クリエイティブ産業におけるVR・AR・MR等の没入型技術を活用したストーリーテリングのスキルを備えた人材育成のための産業センターを設立≪英国≫

 10月4日、英国政府はクリエイティブ産業分野において、VR(仮想現実)・AR(拡張現実)・MR(複合現実)等の「没入型(イマーシブ)」技術を活用したストーリーテリングのスキルを備えた人材を育成するための産業センター「イマーシブ・ストーリーテリング・センター(Center for Immersive Storytelling)」を設立すると発表しました。
 同センターには、英国のイノベーション分野の産官学連携団体である「英国リサーチ・イノベーション(UK Research and Innovation)」を通じて、政府の「産業戦略チャレンジ基金」の「将来の視聴者」プログラムの予算3,300万ポンド(約48億2,400万円)から1,000万ポンドが投資されます。
初期の段階では、映像分野の専門家向けに、没入型技術を用いたストーリーテリングに関して、クリエイティブな訓練と調査プログラムが提供されます。実験、ワークショップ、職業紹介、訓練コース等が提供され、実際の没入型技術を活用した制作に対して資金援助と支援が行われます。長期的には、幅広い没入型技術の専門性を育成するため、修士課程を設立する計画です。
センターは、ロイヤル・ホロウェイ大学のサリー州にあるキャンパス内に設置され、同大学と国立映画テレビジョンスクール(NFTS)が運営を担います。
 これにより、英国では、クリエイティブ産業において、世界でもトップクラスのVR・AR・MRなどの没入型技術のストーリーテリングのスキルを持った人材が育成されることとなり、今後の展開が期待されています。

■新技術・サービス促進

[4]規制サンドボックス制度導入の根拠法案が国務会議通過≪韓国≫

 韓国で、革新的な新サービス・技術の迅速な導入を目指すと同時に規制改善につなげる制度である「規制サンドボックス」を導入するための根拠法が整備されました。規制サンドボックスは、まず、英国でFinTech分野を促進するために導入され、日本でも今年から導入されました。文在寅政権の規制改革方針の目玉として導入する規制サンドボックスでは、既存の規制があっても、期間や参加人数を限定する形で新サービスをテストできる環境を整備します。規制サンドボックスをICT融合とFinTech分野から優先的に適用するため、五つの法案がまとめられました。このうち、情報通信融合法、産業融合促進法、地域特区法の三つの法律改正案が10月8日開催の大統領主宰国務会議で可決されました。これにより、2019年から(1)規制の迅速確認、(2)実証のための特例、(3)臨時許可制度が新たに導入されます。個別の新制度の内容は次のとおりです。
 
(1)企業の新サービス導入に際しての規制の具体的質問に対して関係省庁は30日以内に回答をする。30日以内に回答が無い場合、企業は規制が無いものとみなす。

(2)新サービス導入に係る規制が不透明な場合、一定条件下で規制の適用を受けずに特例で実証テストを許可する。

(3)新サービス導入のための根拠法が不明確な場合は一定の条件下で早期に市場に出せるように臨時許可を出す。関連省庁は臨時許可期間内での関連法令の整備を義務付けられる。
 
 なお、規制サンドボックス関連5法案のうち、行政規制基本法と金融革新法は現在国会で係留中です。政府は法施行に合わせて規制サンドボックスが即時に機能するように、政府横断のタスクフォースを通じて後続措置を整備します。今回通過した情報通信融合法と産業融合促進法は2019年1月、地域特区法は4月から施行されます。

■ロボット、プログラミング教育

[5]IMDA、2016年以来160の幼稚園でロボット導入カリキュラムを実施≪シンガポール≫

 子どもが長時間スクリーンの前に座っていることは成長の面で望ましくないといわれていますが、その一方で目まぐるしい技術発展を続ける現代社会に対応していくための準備を進めることも時には必要です。こうしたジレンマに陥る保護者や教育者は少なくありません。
これに対して、シンガポールの政府機関である情報通信メディア開発庁(IMDA)は2016年、全国160の幼稚園にロボットを導入するという大規模な解決策を打ち出しました。「プレイメーカー」プログラムと名付けられたこの施策は、パソコンやテレビ等の画面を用いないスクリーン・フリー(screen -free)なロボットを利用したもので、STEM(科学、テクノロジー、エンジニアリング、数学)教科を本格的に学習する前段階にある4歳〜7歳向けのカリキュラムの一環として導入されています。
 プレイメーカー・プログラムの下、子どもたちは、「Kibo」と「Bee-Bot」というセンサーやライト、モーターを搭載した2種類のロボットを操作する練習を行います。「一定の方向へ進む」、「光を放つ」といった単純な操作ではありますが、子どもたちにプログラミングの概念を習得させ、コーディングの出発点となるエンジニアリングを学習させることが狙いです。
 また、シンガポールのSTEM分野における専門家の男女比は20:7となっており、この男女格差を是正するためには、性別に関するステレオタイプが根付く前に女子児童がSTEMに触れる機会を作ることが効果的であるとの指摘がなされていますが、今回のプログラムがその役割を果たすことも期待されています。プレイメーカー・プログラムに関しては、ロボットで遊んでいる児童の様子に男女差を見つけることは困難である、プログラムに参加した女子児童はその後エンジニアに関心を示している等の調査結果が出ており、女子のSTEM分野への関心促進に一定の効果を発揮していることが伺えます。
 その他、シンガポールでは、従来のSTEM関連教科に加えてイノベーションを促進する芸術分野での早期教育も重視されており、今回のプログラムでもロボットの外見を児童がデザインできるようになっているとのことです。
 プレイメーカー・プログラムは今後、より多くの幼稚園に導入される予定です。

問い合わせ先

情報流通行政局
情報通信政策課情報通信経済室
電話:03-5253-5720
Mail:mict-now★soumu.go.jp
(★をアットマークに変換の上、お問い合わせください)

ページトップへ戻る