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政策評価・独立行政法人評価委員会 政策評価分科会 議事録

日時

平成20年11月12日(水)10時30分から12時15分

場所

虎ノ門パストラルホテル マグノリア

出席者

(分科会所属委員)

金本良嗣政策評価分科会長、藤井眞理子委員、森泉陽子委員、上田孝行臨時委員、小峰隆夫臨時委員、佐藤主光臨時委員、高橋伸子臨時委員、田中常雅臨時委員、田辺国昭臨時委員、八丁地隆臨時委員、吉野直行臨時委員、大竹文雄専門委員

 

(総務省行政評価局)

関行政評価局長、新井審議官、渡会審議官、新井総務課長、松林政策評価官、羽室政策評価審議室長、新井調査官

議 題

1 政策評価の重要対象分野について

2 農林水産省における政策評価の取組状況について

資 料

資料1 答申(19年度重要対象分野の評価)の骨子(案)

資料2 答申(20年度重要対象分野の選定)の骨子(案)

資料3 農林水産省説明資料

 

会議経過

【金本分科会長】 時間でございますので、ただいまから政策評価分科会を開催させていただきます。

  本日は、まず、議題1にございますが、政策評価の重要対象分野について、前回の政策評価分科会で議論いただきましたけれども、その後、事務局から各委員の方々に個別に意見をお伺いしてもらっていますので、それを踏まえて分科会として答申案を取りまとめることにさせていただきます。

  次に議題2につきまして、農林水産省における公共事業の評価の取組状況についてヒアリングを行いたいと思います。

  それでは、まず、19年度の重要対象分野に係る答申案について事務局から御説明をお願いいたします。

【松林政策評価官】 それでは御説明申し上げます。

  前回の政策評価分科会で御議論いただき、その後、各委員のいろんな意見を拝聴いたしました。そのほか関係府省との議論等もありまして、答申案を整理いたしました。本日は、前回の政策評価分科会からの主な変更点を御説明してまいりたいと思います。まず、育児休業制度でございます。

  期間雇用者の育児休業について、八丁地臨時委員から育児休業取得率の数字の説明を追加してはどうかという御指摘をいただきました。これは、51.5%という数字が、期間雇用者の育児休業取得が予想以上に進んでいるといったような誤解を与えかねないものとなっておりました。そこで、期間雇用者の育児休業取得率は51.5%となっている、の後に、「この取得率には期間雇用者のうち継続就業を希望しながら出産前に退職を余儀なくされた者は含まれていない」といった趣旨の表現を追加させていただき、その後、育児休業給付の受給者に占める期間雇用者の割合は4%にとどまっているといった表現で続けさせていただきたいと思います。

  2点目でございますが、事業主への助成金による支援について、これは前回の政策評価分科会で佐藤臨時委員から、育児休業制度の法的性格、その法的性格に対応する望ましい政策手段は何かという説明、そして助成金という政策手段がそれには当てはまらないといったような流れで説明すべきという御指摘を賜りました。それを踏まえまして、育児休業制度は、全企業が法律上の義務として従業員に与えなければならないものであることから、効果が広範に及び、意欲の低い企業にもインセンティブが働く政策手段が必要であると考えられる、しかし、助成金という政策手段では、対象となり得る企業数に対するカバー率が小さく、他の企業への波及効果も見込めないものとなっているといった表現に修正させていただきたいと思います。

  次は、男性の育児休業の課題でございます。ここにつきましては、男性の育休取得が伸びない主な要因として、休業期間中の収入減というものを想定しておりましたけれども、そもそも身分保障のない民間企業の労働者については必ずしも合理的とは言えない面もございまして、なお精査が必要と判断をいたしました。  また、前回の政策評価分科会での御議論におきましても、育児休業給付率が収入の5割であることを特出しするのはいかがなものかという御意見もございました。これらを踏まえまして、男性の育児休業取得率が伸びない原因である男女の固定的な役割分担意識や制度に関する理解不足を解消することは重要な課題であり、今後は改善策としてあげられている、配偶者が専業主婦の場合に適用される育児休業取得除外規定の撤廃などの男性の育児休業の取得促進策について早急に取り組むとともに、その効果も含め、男性の育児休業の取得が増えない原因の掘り下げた分析とそれを踏まえた必要な見直し・改善が求められるといった表現に改めさせていただきたいと考えております。

  次に、仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)の変更点について御説明申し上げます。

厚生労働省の政策課題として、前回の分科会では、週労働時間60時間以上の雇用者の割合のすう勢について、現時点において容易に達成できる見込みとなっているから新たな目標設定が必要だという内容の説明をしておりましたけれども、厚生労働省から意見がございまして、週労働時間60時間以上の雇用者の割合は、現在のすう勢から予測して10年後には6.7%であり、目標値である半減の5.4%が容易に達成できるというものではないということであります。これは安易な目標設定とまでは言い切れないのではないかということで、ここは課題としての提示を見合わせたいと思います。  それから、30歳男性の週労働時間60時間以上の雇用者の割合が高止まりしていることへの対策について、前回の分科会でこれも佐藤臨時委員から、政策のターゲットの大きさ、そのターゲットの大きさに対応する望ましい政策手段は何か、そして助成金という政策手段がそれには当てはまらないといったような流れで説明すべきだという御意見を賜りましたので、それに沿って修正したいと思います。  次に、子育て支援サービスの変更点について御説明申し上げます。まず、文部科学省の政策課題の部分でございます。前回の分科会では、幼稚園の子育て支援サービスに十分満足しており、これ以上のサービスを望んでいないという保護者も多いことを、潜在的なニーズやサービスの充足状況の把握が必要であるということの根拠としておりました。こうした保護者の意識だけでは根拠としてやや弱い面がありましたために、また、これ以上のサービスを望んでいないということをとらまえてサービスが過剰となっているということまでは言い切れないということもございまして、より明確な公立幼稚園のサービス実施率というものを根拠として絞り込みたいと考えております。そこで、答申案では、アンケート調査結果では、預かり保育のニーズが高く、実施率も71%となっておりますが、公私別の状況を見ると、公立幼稚園における実施率は46%であり、これについての原因分析はなされておらず、また、公立幼稚園における預かり保育の潜在的保育ニーズが高い可能性も考えられ、今後、同施策の推進にあたっては、公立幼稚園などにおける未実施の理由や潜在的な保育ニーズに対するサービスの充足状況の把握・検証を行うことが求められるというように修正したいと考えてございます。  次に、放課後子どもプランの課題でございます。前回の分科会における御指摘を踏まえまして、まず放課後子どもプランが厚生労働省と文部科学省が連携して実施する施策であることを明記いたしたいと存じます。それから、課題の説明が不明確であったことから、サービスを受けることが困難となっている課題、具体的には、小1の壁、小4の壁について明記いたしたいと存じます。それから、厚生労働省の評価が施設の設置実績を示すにとどまっているという評価上の課題も追加するとともに、継続就業を希望する保護者のニーズ把握を厚生労働省が行い、その検証については、厚生労働省・文部科学省が連携して行うということを求めたいと考えております。  最後に、若年者雇用対策の変更点について御説明申し上げます。前回の分科会における御指摘を踏まえまして、最後のまとめの部分で、経済産業省が行うのは検証のみではなく、国の支援の必要性の検討まで行うべきことを明記したいと考えております。

  以上でございます。

【金本分科会長】 それでは、ただいまの御説明につきまして御意見、御質問をお願いいたします。

  よろしゅうございますか。

  では、また後ほど思いついたら議論していただくということで、次に進ませていただきたいと思います。

  次は、20年度の重要対象分野に係る答申案についてですが、まず御説明を事務局からお願いいたします。

【松林政策評価官】 それでは、20年度の重要対象分野の答申案について、前回の政策評価分科会からの主な変更点を御説明申し上げます。

  まず、地震対策でございます。評価のねらいとして、地震保険の目的の1つとしまして、その普及というものがあるということを明確にするため根拠規定を追加したいと考えてございます。  次に、前回の分科会におきまして、金本分科会長から、評価の視点を明確化して、評価手法についてはできるだけ柔軟に対応できるように、あまり答申で限定してしまわないようにという御指示をいただきました。

  以下、建築物の耐震化につきましては、そういった方針に沿って、関係府省の手足を縛るような例示、例えば、答申の中で、救急救命とか、避難所の設置とか、そういった一連の災害応急対策や復旧・復興対策の例示を考えておりましたけれども、それはやめたいと考えております。

  同様に、建築物の耐震化促進のための施策の効果におきましても、やはり建築物の耐震化の進捗状況につきまして、地域別とか建物の種類別、戸建て住宅、マンション等といったような例示を細かくいたしたいと考えておりましたけれども、こういった例示をやめまして、家庭及び企業の建築物の耐震化に関するインセンティブについて、地域、建築物の種類・構造・所有者の状況などを手がかりに分析するというように、趣旨を明確化した上で、関係府省が柔軟に調査に取り組めるようにいたしたいと考えております。

  次に、被災者支援策が建築物の耐震化に及ぼす影響の変更点について御説明申し上げます。こちらも同様でございまして、被災者支援策につきまして、倒壊家屋の解体撤去とか、仮設住宅の整備とか、そういった例示を挙げておりましたけれども、こちらの例示もやめて、家庭及び企業の建築物の耐震化に関するインセンティブについて、政府の被災者支援に対する期待との関係から分析するというような表現にいたしたいと考えております。

  次に、地震保険の効果の変更点について御説明申し上げます。前回の分科会におきまして、金本分科会長から御指摘を賜りました政府が再保険を行う意義というものについても説明した方がよいという御意見でございました。その御指摘を踏まえまして、地震保険については、冒頭に、政府が再保険を行うことで、保険加入者を増加させるとともに、民間の損害保険会社の保険支払い能力を確保する役割を担っているといった政府が再保険を行う意義の説明を追加しまして、その説明の後に、このことから、政府が再保険を行うことに伴う保険料の負担低減効果を明らかにするとともに、地震保険の加入率の低いことが、大規模地震のリスクを吸収できる保険キャパシティーに及ぼす影響について明らかにするというような表現でつなげていきたいと考えております。  また、地震保険の加入促進のための施策の効果につきましても、細かい例示を落としまして、居住者へのインセンティブが弱く、地震保険の加入率が思うように伸びていない原因について、地域、建築物の種類・構造・居住者の状況などを手がかりに分析するといった表現にいたしたいと考えております。

  それから、藤井委員から、インセンティブという言葉が複数あり、意味が分かりづらいという御指摘をいただきました。これを踏まえまして、他と区別するため、販売インセンティブではなく販売意欲に表現を改めたいと考えております。

  それから、保険内容が地震保険加入に及ぼす影響についての変更点について御説明申し上げます。前回の分科会で、金本分科会長から、地震保険については、インセンティブ確保とは別の方向からも考えてみた方がいいのではないかという御指摘を受けまして、新たな視点として保険の安定的な運営のための課題でございます、逆選択の問題について盛り込みたいと考えております。そこで、答申では、地震の地域的な発生確率、建築物の耐震性能の保険料への反映方法が、逆選択の現象、つまり、保険契約者が保険事故発生の可能性が高い危険のみを選んで保険を付保することを生じさせていないかどうかを検証するとともに、居住者の地震保険に関するインセンティブに及ぼす影響について明らかにするといった視点も盛り込みたいと考えております。

  次に、被災者支援策が地震保険加入に及ぼす影響の変更点について御説明申し上げます。前回の説明では、被災者支援策を評価対象とするような誤解を与えかねない表現であったために、分析対象を、「地震保険に関するインセンティブ」と明示した上で、居住者の地震保険に関するインセンティブについて、政府の被災者支援に対する期待との関係から分析するという表現に修正したいと思います。

  最後に、地震対策に関する評価については、これまでにない視点からの分析を求めている部分も多いこと、また、内閣府を始めとする関係府省の有するデータの活用が必要となることも想定されることから、総務省行政評価局は、評価実施省が評価を実施するに当たり必要な協力を行うべきであるといった表現も盛り込むべきではないかと考えております。

  次に、医師確保対策の主な変更点について御説明申し上げます。

  まず、基本的に医師確保対策につきましても、前回の分科会におきまして、金本分科会長から、評価の視点を明確にしつつも、手法は柔軟性を持たせて各関係府省が評価をする際にやりやすくした方がいいのではないかという御指摘をいただきましたので、必要な医師数の基準及び医師の過不足数の推計につきましても、性別・年齢階層別の有病率等を基に患者数を推計するなど細かく評価手法をあげることを考えておりましたけれども、こちらの具体的な手法の例示を落としたいと考えております。  それから、医師の質の確保については、前回の分科会におきましては、いわゆる医師誘発需要というものをあげておりましたが、この医師誘発需要につきましては、厚生労働省からも意見がございまして、議論いたしましたが、様々な考え方があって、このままだと水掛け論に終わる可能性が高いということで、将来確実に課題となる医師の質を維持するための対応策というものに評価の視点を絞り込みたいと考えております。答申では、医師数を増加させつつ医師の質を維持するためには、医師数の増加に伴う教育・訓練の拡充が必要となることから、それへの対応策及び効果の見込みについて明らかにするというような表現にしたいと考えております。また、評価の視点の変更に伴いまして、項目のタイトルも「医師数の増加が及ぼす影響」から「医師の質の確保」ということに改めさせていただきたいと考えております。

  次に、医療機関の役割分担の明確化・機能の集約化による医師不足に対応するための諸施策の検討の変更点について御説明申し上げます。前回の分科会では、医療機関の役割分担の明確化や機能の集約化と医師不足の関係について、言葉がちょっと足りませんで、分かりにくい説明でございました。このため、医師の過重労働を招く原因の一つとして、大学病院から診療所まで形態は様々でも機能が重複し、患者が大病院等に集中する傾向にあること、同じ地域において同じような診療科・規模の病院が競合し、医師配置の分散や過剰な病床数を招く傾向にあることが指摘されているというような説明を加え、分かりやすい表現に改めたいと考えております。

  最後に、地震対策と同様に、医師確保対策についても、これまでにない視点からの分析を求めている部分が多いことから、行政評価局による協力についての表現をどこかに盛り込みたいと考えております。

  以上でございます。

【金本分科会長】 どうもありがとうございました。

  それでは、ただいまの御説明につきまして御質問、御意見をお願いいたします。

【吉野臨時委員】 何点かありますが、1つは、地震対策の地震保険のところで、前回の分科会では、損害保険会社が非営利ベースで保険を販売していることが、販売意欲を弱めているという御説明がございましたが、損害保険会社は株式会社ですから生命保険とちょっと違うので、むしろこれは営利ベースで販売しているために地震保険をあまり売りたくないということがあるのではないかと思うのですが、ここのところがちょっと気になりました。

  それから、地震保険の全体の流れとして、やっぱり自動車事故とかオートバイ事故と

違って確率的ではないものですから、普通の保険と違うというところでやっぱり国の再保険みたいなものが必要だというところはあるのではないかと思います。これは印象です。

  次に、医師確保対策の医師の質の確保についてですけれども、医師の質というのはどうやって測るか、それが分からないと、医師の質が確保できるかどうかが分からないと思うのです。ですから、医師の質をどういう指標でみて、それがきちんと評価できるかどうかだと思います。

  それから、医療機関の役割分担の明確化・機能の集約化のところなのですが、これは4つぐらい主体がありまして、そこがうまくコーディネートできてないような気がいたします。1つは民間の病院、国が経営するような病院、地方公共団体、あといろんな共済組合がやる病院がありまして、そこがどうもうまく会話ができていないようですので、そういう意味ではもう少し具体的にどういう主体がどのように機能すれば、お互いに過剰な病床数を招くようなことを防ぐかという具体的なところまで踏み込んでいただきたいと思います。

  以上です。

【金本分科会長】 事務局から説明できるところについてはお願いいたします。

【松林政策評価官】 いただきました表現の工夫については、検討させていただきたいと思います。

  医師の質をどうやって測るかという点につきましては、教育条件等を1つの指標にして測っていくということも考えられると思いますが、今後、どのようにして質の確保に取り組んでいくかという点については、これだという確定的な議論はまだされていないかと思います。ここの辺も評価設計段階におきまして担当省とよく議論をした上で、また御相談申し上げていきたいと思います。

【金本分科会長】 地震保険の非営利ベースという話は、販売が非営利ベースということではないような気がしているんですが、地震保険の料率などについてもうけがないように設計をされているといったことを言いたいのではないかという気がいたします。

【松林政策評価官】 そうです。

【金本分科会長】 私も修正をした方がよいかと思います。具体的に吉野臨時委員がこういう表現だといいとかいうのはございますか。

【吉野臨時委員】 考えてみます。

【高橋臨時委員】 基本的な方向性については賛成でございますが、少し細かい点でお願いしたいところがございます。

  まず地震保険のところで、保険内容が地震保険加入に及ぼす影響、これに対して保険料の割高感とか、それから地域的な発生確率とか諸々をみて検証していくということですけれども、地震保険は、平成17年3月に政府の特別の機関が地震の確率の予測地図を出したことで、平成1910月から大幅な料率変更、保険料の変更が行われています。それで、保険料が全体で7.7%の減なんですけれども、地域的にみますと、地域区分が大きく見直されて、3割上がったところもあれば、6割安くなったところもあるという状況でございます。実は私は損害保険料率算出機構の仕事をしておりましたのでちょうどその改正に携わったわけなんですけれども、都道府県別にかなりこの改正によって負担が変わっておりますので、その辺をとらえて調査をしていただくと、保険に対する人々の認識とか行動が読み取れるのではないかと思いますので、ここはぜひきめ細かくお願いしたいです。

  それから、地震保険の加入促進のための施策の効果ですが、これも平成19 年から所得税で最大5万円、住民税で最大2万5,000円の地震保険の控除が創設されたということなので、そこにかなり絞った形で各種の調査をしていただきたいです。  もう一つは、医師確保対策でございます。医師の偏在を是正する施策を幾つかあげていただいているのですけれども、あまり具体的な説明がないので、もし漏れてしまうといけないということで申し上げます。来年の1月から産科医療補償保険の制度というのがスタートするのですが、これは厚生労働省の制度でありながら、財源の措置等々の問題があって民間保険の枠組みになってしまったんです。今マスコミでも来年の創設に向けていろんな取材が始まっているんですけれども、厚生労働省は民間の保険だと言い、金融庁のほうは厚生労働省の制度だと言い、どうも責任関係がはっきりしないのですが、そもそもは厚生労働省が医師確保策として始めたことなので、これに関してもう3年も検討して、来年1月から実際に始まると。しかも健康保険からの出産一時金を3万円値上げして妊婦さんに払って、妊婦さんは分娩費の3万円の値上げで対応するという非常に複雑で世の中からも今批判の多い制度になっているのですが、もうスタートすることは社会保障審議会でも了承して決まってしまいましたので、5年様子を見るということになっておりますが、少子化対策の側面からも医師確保対策の側面からもこれの有効性というのは早く判断していただいて、変更の施策等を打っていく必要があると思いますので、その点御配慮いただきたいというお願いでございます。

  以上です。

【金本分科会長】 なかなか今からやるのは難しそうなものが多いですが。

【松林政策評価官】 医療に係る紛争の増加など、なるべく関係府省の手足を縛らないようなものにしたいと考えております半面、いろんなことを求められるようにもしたいと考えてございますので、こういった視点を明示しながら、関係府省に具体的な評価設計をやっていただく中で議論させていただきたいと思います。

【金本分科会長】 産科医療補償制度の話は、ちょっとタイミングとして、来年度のタイミングでやらせるのは難しそうな感じがします。まだやっていないので、データもないと言われるとちょっと突っ込みようがないという気がいたします。

【高橋臨時委員】 ただ、分娩施設がどれだけその保険に加入するのかというのは、もう既に8月にいったん締め切ったときから数字が出てきて、今追い込みで率を上げているところなので、その効果というのは、見ていくことができると思います。その点お願いしたいという意味でございます。

【金本分科会長】 はい。

  そのほかございますか。

【小峰臨時委員】 医師の質の確保のところですが、これは元々医師誘発需要の議論についてだったと思うのですけれども、医師誘発需要の議論とこの医師の質の確保の議論は随分ずれているという気がして、元々入っていた部分の代替案になっていないのではないかという気がします。

  私の理解では、元々この議論は、厚生労働省がヒアリングに来たときに、医師誘発需要というものはありませんと資料を出して指摘したのが発端だと私は理解していますので、それは水掛け論だから外してほしいという説明だけではちょっと理屈が通らないのではないかという気がします。

【金本分科会長】 この辺はいろいろやりとりがあったようでございますが。

【松林政策評価官】 最終的に何を残すかという議論になったときに、事務局としては、医師を増加させることに伴う医師の質の低下をどうやって防いでいくかという視点は、医師の増加というのはある意味で医療の充実であり、それに伴いまして、医師の配置をどういうふうに変えていくかというところで、また教育体制の変更も必要になるであろうといったようなところを中心に評価をすればいいのではないかということから視点を絞り込んだものでございます。

【金本分科会長】 医師の需給見通しについては、医師養成数の調整方法のところで、推計方法の検証を求めておりますね。

【松林政策評価官】 はい。これまで医師が過剰になるといったような方針でずっとやってこられまして、ここで方針転換をするわけでございますけれども、そもそも医療行政として中長期的にどういった見通しのもとにやっているのか、行き当たりばったりなのか、医療行政当局としてどういった需給見通しを立ててきたのか、あるいは立てていなかったのか、あるいは、方針転換に当たってどこまできちっと見込んで行政としての目標を立ててやっていくのですかといったところを、この辺できちっと検証してくださいという趣旨で、この需給見通しのところの評価の視点を考えております。

【金本分科会長】 そんな感じでございますが、その辺の方針の転換をきちっと評価をしていくというのは、来年度すぐにパッとやるというのは、予測手法もいろんな手法を使っているようでありまして難しそうだといったことが背景にあるようでございます。小峰臨時委員、そんな感じですがいかがでしょう。

【小峰臨時委員】 あまり納得できないですけれども、皆さんがそれでいいというならいいです。

【上田臨時委員】 建築物の耐震化についてですが、これは総務省というよりは国土交通省の方で出された方針で、ちょっと根本的に欠けているから大事な、耐震化の進まない意識調査とかをやった研究が幾つかあったものですから、それをちょっとお手伝いしたことがあったのですが、事前の耐震の診断、要するに、建物の健康診断の部分ですが、非常に値段が高くて、1回やると、普通の家屋でも数十万から、集合住宅ですと100万オーダーの費用がかかってしまう。そもそも診断をするところが非常にハードルが高いというような例がありまして、特に木造家屋は本来耐震補強が一番重要なところであるのが、高齢者だったりすると、そもそも耐震診断をしてくださいと言っても、そのお金の補助制度もあるのですが、もういいと。どうせそんなに長く使う家じゃないから、地震が来たら、それはそれでしようがないみたいなあきらめをされているところがあったりして、しかもそれに輪をかけて診断に非常にお金がかかる。そうすると、そもそも耐震補強、あるいは地震保険に入ってくださいというときに、先ほどハザードマップが出て、随分保険の加入が変わったというお話もあったんですが、ハザードマップはかなり地盤の条件をしっかり見ないといけないので、これは個人ではなかなか調査できないし、その条件が分からないと、そもそも建物が安全かどうか、地震動がどうかということがなかなか判断できないというふうになっている。  そうすると、診断の部分でかなり公的に、大規模にまとめてやらないと情報が出てこない部分と、個別の家屋についてかなり高額のお金を払って診断をしなければいけない部分がある。つまり、この最初の取っかかりのところのハードルを下げない限りは、保険への加入や耐震補強の工事をしてくださいという次のステップに行かない構造になっていると思います。ですから、先ほど国土交通省の施策の防災への関心の低い人に対するアプローチという説明がありましたけれども、関心を持ってもらうというよりは、まずは健康診断に値する診断のところ、そこのところについての何らかの有効な方法は、どういうふうにこれからなっていくのか、その部分を特に、最初の取っかかりのところですので、政策評価としては特に重点的に見ていただくことが必要かと思っています。

  以上です。

【金本分科会長】 重要な点ではありますが、多分やっている途中で出てくる話かと思います。

  そのほかございますか。よろしゅうございますか。

  幾つか表現の修正をしなければいけないところがあるかと思います。もう少し答申に盛り込めることがあるのではないかという御意見もいただきましたが、入れ込むことができるかどうかを検討させていただいて、修正をしたものを政策評価・独立行政法人評価委員会に提出するといった格好にさせていただければと思います。細かい調整については、私に御一任いただければ幸いでございますが、よろしゅうございますか。

(「異議なし」の声あり)

【金本分科会長】 それでは、そういった格好にさせていただきます。どうもありがとうございました。

  続きまして、農林水産省における政策評価の取組状況についてのヒアリングをさせていただきたいと思います。今日のヒアリングは10月9日の政策評価分科会での議論を踏まえまして、今後の調査審議の参考にするために、農林水産省のほうから公共事業の評価の現状をお聞きするといったものでございます。

  農林水産省の皆様方、お忙しいところを大変ありがとうございます。最初に御説明をいただいた上で、質疑応答を行わせていただきます。よろしくお願いいたします。

【齋藤設計課長】 農林水産省の設計課長の齋藤でございます。

 農村振興局では農業農村整備事業に関しまして、効率的な事業実施を図る観点から政策評価に取り組むとともに、手法につきましても適宜運用改善を図っております。本日は、農業農村整備事業に関する政策評価の調査審議の参考として政策評価分科会から御要請がございました平成19年3月に策定しました新たな土地改良事業の効果算定マニュアルの改定内容と考え方について御説明させていただきます。私のほうから、その前段といたしまして国営かんがい排水事業を含みます農業農村整備事業の概要につきまして簡単に御説明させていただきたいと思います。

  農業農村整備事業の概要ということで資料1でございます。これに基づきまして説明させていただきます。

  1ページ目は、農業農村整備事業の概要でございます。生産基盤の整備、これは生産性を上げるための基盤整備でございます。それから、農村の整備、これは担い手の定住条件を確保するための農村の生活環境整備、それから、農地等保全管理ということで、災害から未然に施設を防止するための、そういった災害等の防災事業をやっているものでございます。この3つの柱から成り立っております。

  食料・農業・農村基本法での位置付けでございますけれども、2ページにございますように基本法では、食料の安定供給の確保、多面的機能の十分な発揮ということを掲げておりまして、そのために必要となる農業の持続的な発展と農村の振興ということで4つの柱を掲げております。この法律の中の二十四条におきまして、農業生産基盤の整備につきまして国が必要な施策を講ずることにしております。それから、三十四条におきましては、同じように農村の総合的な振興につきまして国が施策を計画的に推進するということに位置付けられております。  3ページは事業のための手続でございます。私ども土地改良法という法律に基づいて事業をしております。他の公共事業と異なりまして申請主義、同意主義ということでございます。3ページの右下にございますように、農家からの申請があって事業が始まるという形になっております。特に受益農家の一軒一軒の同意を集めます。計画書に判子を押してもらってという、そういった手続をしております。それから、県、市町村といろんな負担割合につきましても合意形成を図ることにしておりますので、地元からの申請、それから県、市町村との合意形成なくてはできない、そういう特殊な事業になっております。事業を申請する農家につきましても、受益者に一定の負担割合を求めてございまして、3ページの左側にございますように、国営の事業で言いますと、農家については大体1割ぐらいの負担を求めている場合が多くなっております。

  4ページでございますけれども、そういう形で国営の事業が始まるのですが、国営の事業地区内におきましても、国が実施するのは基幹的な施設に限定されておりまして、その絵で言いますと、赤字で書きました頭首工とか幹線用水路、幹線の分水工まででございまして、そこから末端の分岐するような支線の用水路、それから面的なほ場整備、そういったものにつきましては、県もしくは市町村が事業主体となっているということで、国自ら実施する部分はかなり限定的になっております。

  5ページでございますけれども、特にかんがい排水事業につきましてはどういったことをやっているのかということでございますけれども、農業用水の安定供給の確保、それから洪水から農業被害を防ぐための排水対策ということを目的としておりまして、水源につきましてはダムを必要に応じてつくっております。ですけれども、最近はもう新規のダム着工というのは非常に限定的にしております。それから、ダムにためた水を頭首工という取水施設で河川から取水する。それを幹線用水路で運ぶ。末端の支線の用水路、それからその中の区画の形状を直して水路を通すようなほ場整備という、こういった幹線部分から末端部分の一連の水利施設といいますか、水利システムが整備されて所定の効果を発揮するというような事業の仕組みになっております。

  それから、農業水利施設の状況でございますけれども、これまで相当な整備がされてきております。そこにございますように農業用水路については約40万km、基幹的な水路についても4万7,000kmというような量がございます。左下の地図は関東平野の地図でございますけれども、赤い線が用水路、青い線が排水系統でございまして、こういった形で用排水路が整備されて農業を支えているということでございます。これらの資産は全国で約25兆円と再建設費ベースで私どもは試算しております。こういった施設を今後とも有効に活用して、その機能を維持していかなければいけないと思っておりますが、右下にございますように戦後つくられた多くの施設が耐用年数を過ぎて非常に老朽化してきているということで、こういった施設の整備を計画的にやっていく必要があるというふうに考えております。  7ページは老朽化した施設がどんな状況にあるかというような写真をつけております。左は漏水して決壊したため池でございまして、左下のほうは河川の流水によって侵食がされて相当埋没が進んだ頭首工の状況ですね。真ん中のほうは水路の系統でございますけれども、右上のようなパイプラインも相当耐用年数を過ぎてきますと、こういった破損事故が生じるということで、こういったことのないように計画的に整備を進めていくということにしております。

  以上で概要の御説明とさせていただきます。続いて、本題のマニュアルの関係でございますけれども、担当のほうから御説明させていただきます。

【室賀土地改良企画課課長補佐】 効果を担当しております土地改良企画課事業効果班の室賀と申します。私から資料2に沿いまして新しいマニュアルに関します御説明をさせていただきたいと思います。

  土地改良事業の新たな費用対効果分析のポイントという資料でございます。おめくりいただきまして、2ページは目次でございますので、3ページから、まず土地改良事業におけます費用対効果分析の背景ということでございます。

  先ほど事業の概要のところでもお話がございましたけれども、土地改良事業につきましては、土地改良法の施行時、昭和24年でございますけれども、法令におきまして事業の施行に関する基本的な要件というのを定めております。これは技術的可能性等を含めました要件がございますけれども、その中の一つとして「当該事業のすべての効用がすべての費用を償うこと」ということが規定されてございます。これに基づきまして、法制定当時より費用対効果分析に取り組んできたという経緯がございます。

  従来、この費用対効果分析につきましては、B/Cが1以上ということを確認するというところを旨といたしまして、主には作物の生産量の増加、増大とかに関する効果、それから労働経費、営農経費、これらの節減に関する効果などを直接的に金銭的評価が可能な効果として、それらを中心に評価をしてきてございます。

  そういった中で、14 年の政策評価法の施行がございましたので、それらの政策効果を幅広く、なおかつ適切に把握するという必要性が出てきたというのが一つでございます。

  また、土地改良事業内部の話といたしましては、先ほどございましたけれども、新しく施設を造るという整備から施設を更新していくという整備に大きく変わってきているということで、そういった更新整備に対応できる評価方法ということで検討が必要ということでございました。

  次のページをおめくりいただきたいのですが、この新しいマニュアルにつきましての改善点といたしましては、そこにございますような4つございます。  1つは、効果体系につきまして、これを再整理するという考え方でございます。この効果体系につきましては、政策の目的に沿いまして、食料・農業・農村基本法の4つの理念、これに即した体系に整理をしております。

  もう一点は評価の方法でございますけれども、それまで投資効率方式という方式をとっておりましたが、これを総費用総便益比という考え方に改善しております。詳しい説明はまた後のほうでさせていただきますけれども、先ほどございましたように、例えば農業水利施設でありますと、上流からほ場までの一連の水利施設の費用と、それによってもたらされる効果ということで把握していきますので、費用便益比というところを総費用総便益比という考え方で整理をしております。

  それから、算定手法につきましては、そこに3つございますけれども、1つはすべての効果を、事業を実施した場合としなかった場合という比較により、一つ一つ効果要因別に積み上げて算定をしていくという考え方にしてございます。

  また、外部経済効果につきましても、より適切な評価ということで、各種の知見とか算定事例等、それらの蓄積を基にいたしまして新たにCVMとかトラベルコストといった方法を導入しております。

  また、下にありますような新しい効果につきましても、それらの事例、知見を基にいたしまして追加をしているということでございます。

  それでは5ページに移っていただきたいのですが、効果の体系をどのように整理したかというところでございます。これにつきましては、先ほど申しましたとおり、新しい手法につきましては基本法の4つの理念に即した形にしたということで、従来の効果体系をそれぞれ整理いたしまして、そこに食料の安定供給の確保、農業の持続的発展、農村の振興、多面的機能の発揮という理念に即してそれぞれ体系を整理しております。

  一番メインになりますのが食料の安定供給の効果といったところでございまして、作物の生産量の増減を捉える作物生産効果とか安定的な用水の確保によりまして農産物の品質を向上させるといったところの品質向上、また生産コストの低減、労働時間等の低減等にかかわります営農経費、維持管理費、こういったところの効果につきましては、あくまでも地域の実情に応じまして直接的に算定するというやり方でございます。

  一番上に米印で食料の安定供給に関する効果とありますが、これにつきましては、消費者余剰という考え方で整理するということでございますけれども、一つの事業によってどの程度消費者に余剰をもたらすかどうかというのは適切な評価ができないものですから、これにつきましては現在の段階では参考値ということにしております。  同じように考えまして、下のほうの農村の振興に関する効果というところに地域経済波及効果というのもございますが、これは農業とか食料関連産業、川下でいきますと加工とか流通とか販売とかを実施しているところへの波及効果というのもございますが、これにつきましても一つの事業によっての効果としてとらえることはなかなか難しいというところもございまして、マクロ効果は参考値という考え方で整理をしてございます。

  次に6ページに進んでいただきたいのですが、評価手法に関します考え方でございます。

  従来は新しく施設を造りまして農業生産の増加、増大といったところに寄与してきている新規事業、これが基本となる方法としまして投資効率というような形をとってきたわけでございますけれども、この考え方によりますと、すべての施設ができて事業が完了した後にすべての効果が発現するという整理になってございます。

  これらの課題ですけれども、その手法でありますと、工事期間中にも一部の施設が供用を開始すれば、一部のほ場、農地におきまして効果が発現してくるわけでございますけれども、それについて対応できる手法ではなかったということがございまして、そういった工事期間中の効果の発現も考慮していく必要があろうということでございます。

  新しい手法につきましては、3番にございますけれども、費用・効果の発生時期の相違を踏まえ、それぞれ現在価値化した総費用総便益比という方式を導入するということにしてございます。

  そのイメージでございますが、7ページにお進みいただきたいのですが、ここにイメージ図がございます。従来の方法ですと、投資効率方式のイメージとございますが、上の赤いところが事業費とございますけれども、これにつきましては当該事業費、土地改良事業の場合、実際の当該事業と関連する事業を一体的に行うことが一般的でございますので、その場合には関連事業費も含めた事業費ということで赤いところのものでございます。

  効果でございますが、先ほど申しましたとおり工事期間12年ということで、12年の工事期間が完了した時点に効果が発現するという形で評価をしております。  この効果の考え方でございますけれども、まずそれぞれの効果項目ごとに、効果発生要因ごとに年効果額を算定いたしまして、それを利子率、割引率とか耐用年数を用いて還元率によりまして資本還元するという考え方で整理をしております。ですので、下のほうの妥当投資額のところにつきましては、完了時のところになりますけれども、そこから効果が発現し、それを割引しているという考え方でございます。

  一方、新しい総費用総便益比方式ということでございますが、これにつきましては、費用でございますが、それぞれの当該事業の年事業費を年度ごとに計上していくということでございます。また、土地改良事業につきましては、先ほどもありましたけれども、ダムとか取水する頭首工、農業用水路、それから機場とか、それぞれ耐用年数や機能の違う施設を一体的に事業を行っていきますので、ここにございます評価期間、工事期間プラス40年の間に耐用年数の切れるような施設がある場合は、その機能維持分として再整備費をそこに計上するという考え方をとっております。それを評価時点に現在価値化する。

  一方、便益でございますけれども、それぞれの施設ができ上がっていくごとに対応するほ場で効果が発現していきますので、その発現していく効果がだんだん積み上がっていく。事業完了時点ですべての効果が100%発現し、それを年度ごとに評価期間に積まれていくということでございます。こちらにつきましても年効果額をすべての効果について算定いたしまして、それを基に年度ごとに計上して積み上げていくという考え方でやっております。

  下に米印が3つございますけれども、この場合維持管理費につきましては、土地改良事業の場合、農家さんが構成します土地改良区等が管理しているのが一般的でございますので、これにつきましては費用ではなくて便益で整理をするという考え方にしております。ですから、例えば現在の施設を維持するための維持管理につきましてはマイナス効果になるという部分もございます。

  この評価期間につきましては、工事期間プラス40年ですが、40年といいますのは、すべての事業の最近年の平均耐用年数をとってございます。  次に8ページでございます。これはそれぞれの効果につきましては、それではどうやって算定しているのかということでございます。下の絵にございますけれども、例えば今までの施設を更新、改修して行う事業につきましては、これまで旧来の施設が担っていた農業生産、その部分を維持する効果といたしまして更新効果という効果を計上しておりました。この更新効果は、先ほど言いましたように旧施設の下で行われていた農業生産が維持される効果でございますけれども、これについては旧施設の機能に相当する施設を単独で再建設するための最経済的事業費というものをもって効果としてきたという経緯でございます。今回、それらの効果を整理いたしまして、実際に施設の機能に応じてどれだけの、例えば作物生産量をもたらしているかといったところを算定する手法にしたのですけれども、その場合、こういう事業を実施した場合としなかった場合という考え方で整理をしております。

  例えば下の絵でございますが、緑の部分、これは現況の作物生産でいきますと作物の生産額でございますけれども、それが例えば現況の用水施設でもたらされている分について、これが更新分でございますが、右側にいきますと赤いところがございますけれども、現況の施設が有している、担っている、この部分の効果ということでございます。これが事業を実施しなかった場合に失われる農業生産の損失額、この部分を更新的な効果として今回算定していこうということになっております。

  また、現況よりもさらに生産を上げていこうというための整備につきましては、現状より改善されていきますので、その部分は上に積み上がっております機能向上による効果ということで算定するという考え方にしてございます。

  これらの効果につきましては、例えば作物について、単位収量が上がる、農業用水が安定的に供給されて作物生産の収量が上がるというところにつきましては、それぞれの現況の平均的な単位収量に対して農業試験場とか地域での試験結果等を基にした増収率というものを用いまして、農業用水が安定的に供給されると作物の生産量がこれだけ増収すると。その増収分をそれぞれの要因別に算定する。例えば排水であれば、排水の条件が改善されれば、その改善された分の増収分を算定する。

  もう一つは、作物の作付計画といいますか、作付の状況が事業により変化する、それにつきましても、実際に農業用水の供給が安定的になる、それから排水が改善されるといったところで実現できる作付計画を、地域の皆さん、農業者、受益者の皆さんと話し合いをしながら決めまして、それに沿って効果を算定するという考え方にしております。

  そういう意味では、それぞれのほ場の土地条件、そういったものによってそれぞれの対策が打たれるわけでございますけれども、それぞれの効果要因を基に算定をいたしまして積み上げていくというやり方でございます。  次の9ページでございます。これは算定手法の改善ということでございますが、先ほどまでの食料の安定供給に関する効果は直接的な算定の仕方をしているというところでございますけれども、それ以外の災害防止とか景観・環境保全、都市・農村交流、こういった効果につきましては、それぞれの効果の算定の仕方を一部改善しているということでございます。

  災害防止につきましても、これまでは過去の洪水被害額の実績を基に算定していたというところでございますが、それに加えて氾濫シミュレーションによります被害軽減額を推定する、こういうやり方にしております。

  景観・環境保全効果につきましては、施設を景観や親水性、環境に配慮して整備する場合にもたらされる景観・環境の保全機能を評価しようということで、CVMというやり方を導入しております。

  都市・農村交流につきましても、土地改良施設を設置して付随的に生ずる水辺環境、農業用水といいますか、そういう環境が地域のレクリエーションの拠点として活用されるような場合、こういう場合についてはトラベルコストというやり方で算定をしているということでございます。

  次をおめくりいただきたいのですが、新しい効果といたしまして、近年耕作放棄地の関係もいろいろ問題視されておりますけれども、土地改良事業、特にほ場を整形化する、大区画化する区画整理につきましては営農条件がよくなりますので、耕作放棄を防止するというところに非常に寄与しております。そういったところをきっちりとらえていこうと。

  それから、農業労働環境といいますのは、先ほどの営農経費は量的な、いわば労働時間の軽減とかほ場における機械作業の効率化というのがメインでございますが、これにつきましては労働に関しまして、負荷が生じている。例えば傾斜地で防除を行うといったところで農家さんに農薬がかかったり、傾斜農地での機械作業で転倒の危険性があるというようなところを整備することによって精神的負荷の軽減を図るといった部分がございますので、これもCVMという形で算定することとしてございます。

  11ページにいきますと、これら今まで効果が算定されていました項目と今回の新しいマニュアルでの関係を整理しております。一部は統合したり除外するものは削除したりというような形で整理をしてきてございます。

  12ページにその効果項目の除外といったところがございます。

  「事業ありせば・なかりせば」と言っているんですけれども、事業を実施した場合としなかった場合、そういった観点での評価をするようになりましたので、今まで投資費用イコール効果というような形で算定していたものについては改めたといったところでございます。  また、下にございますけれども、その同じ投資イコール効果で算定していたものですけれども、フェンスとかパイプラインで安全性を向上する整備をした場合の効果、それから、文化財に関します調査、発掘、保存費用、こういったものに対して土地改良で負担している場合の効果として算定しておりました効果、こういったものにつきましては除外をしているということでございます。

  次の13ページがその整理をした項目の状況を示してございます。

  14ページは、これは土地改良事業の特性なのですけれども、国民経済的に費用便益比でやっている部分と農家の負担可能性を判断する部分がございますので、その考え方でございます。

  総費用の関係につきましては、17ページに飛んでいただきまして、総費用をどう整理しているかということでございます。これは新しく施設をつくる場合は、Aのところは今回の事業でございますけれども、それで一体的に施設の整備をいたしますので、一部のところで早目に耐用年数が切れたものについては再整備費を計上し、最後の評価期間の終了時点で残存部分が残る場合は資産価額として差し引くという考え方でやっております。

  18ページにつきましては、旧来の施設を改修して更新するような事業でございます。これにつきましては、当初に造りました施設の残存部分がある場合は、当該事業の着工時点にその資産価額という形で費用を計上いたしまして、先ほどの施設と同じようにその評価期間で耐用年数が切れたものは再整備費を計上し、最後、評価期間終了時点の残存部分は資産価額で差し引くという考え方にしてございます。

  19ページ、20ページは実際の対象となる施設のイメージというものを表しております。20ページで見ていただきますと、先ほどありましたけれども、農業用水でありますと、ほ場の受益地に農業用水をもたらしております施設は、上流のダム、頭首工から幹線水路を経まして、支線水路、末端水路でほ場まで来るということでございますので、この一連の施設がもたらす効果ということで評価をしてございます。  次の21ページでございますけれども、総便益についての考え方。冒頭申しましたけれども、それぞれの効果につきましては、効果項目ごとに年効果を年度ごとに算定し、基準年に現在価値化したものを評価期間年数において積み上げて算定するというやり方をとってございます。その効果発生割合のイメージということで、新しい施設を造るときは、一部の施設が供用開始されたところから効果がだんだん発現していきまして、すべてが完成した時点で年効果が100%発現すると。単純に更新する、これまでの農業生産を維持するという事業につきましては、旧施設の効果の分と、それが新施設の効果のほうにだんだんシフトされていきますので、その全体の維持していく効果額を算定していくということにしてございます。

  23ページはそれらを、一般的には一体的に行われますので、それをイメージしたものでございます。

  24ページ、25ページにつきましては、新手法と旧手法の比較ということで示させていただいております。

  ちょっと雑ぱくではございましたけれども、以上で説明を終わらせていただきたいと思います。

【金本分科会長】 どうもありがとうございました。

  それでは、ただいまの御説明につきまして御質問とか御意見を委員の方々からお願いをしたいと思います。どなたからでも結構でございますので、よろしくお願いします。

【森泉委員】 1点だけ、10ページのところの耕作放棄防止効果というものを今回入れていらっしゃるようなのですが、これはちょっと理解が私はできなかったのですが、事業ありせば耕作放棄が防止される農地面積から効果を算定するということは、これは防止で、まだ実際に例えば農作物が得られなくてもその効果を予防ということで参入するのかどうかというのが1点と、もう一つは、逆に耕作放棄地も大分多いと思うのですが、そこに関して機会費用みたいな形で得られる生産物を得られないということは考えていらっしゃるのかどうか、ちょっとお聞きしたいと思います。

【室賀土地改良企画課課長補佐】 この耕作放棄防止効果につきましては、先ほどありましたように区画整理を行いますと、現状では例えば生産がされていたと、未整備の状態でございますけれども。それがそのままなかりせば、現状で起きている耕作放棄の状況をとらえまして、将来におきましては、未整備のところと整備されたところでは明らかに耕作放棄の発生状況が異なりますので、そういったものの差を、実際の作物の生産部分、現状でございますが、その部分が耕作放棄されると失われる生産量というんですか、現状の生産が耕作放棄されるとどんどんゼロになりますので、その分の差をもって算定をしているといったところでございます。

【金本分科会長】 その部分は、ほかのところに入っているんじゃないですか。作物生産効果とか、そこの計算に入っているような気がしますが。

【室賀土地改良企画課課長補佐】 例えば農業用水でもたらしている分から「なかりせば」

にしたところがございますけれども、ほ場そのものが持っている作物の生産量の部分ですね。その現状からさらに下がる部分といいますか、ですから、作物生産効果で捉えている分は作物生産効果でとらえるんですが、それよりもさらに低いところといいますか、現状のほ場が持っている生産量の部分から放棄されてゼロになる部分、その差の部分を見ているということでございます。ですから、重複するような形の算定はしていないということでございます。

【金本分科会長】 普通ですと、作物生産効果の中にほ場が減る部分とほ場が維持されていて作物が、水が多いからよくできると、2つ入っているはずなのですが、前者をここに持ってきたと、そういう整理ですか。

【室賀土地改良企画課課長補佐】 8ページの絵を見ていただきたいのですが、今、現況の純益額が作物生産量から算定しておりますけれども、そこから農業用水が担っている部分、その部分が失われた状態が「事業なかりせば」になっておりますが、耕作放棄防止効果につきましては、この「事業なかりせば」からさらに耕作放棄によって失われる生産量を算定しているということになります。

【金本分科会長】 多分絵の書き方だけの問題だと思いますが、「事業なかりせば」と書くと、ないことによって耕作放棄地が出るということも入っているはずなので、やり方は特に問題はないと思いますが、そういう言い方をされるとちょっと困ります。だから、この絵を見るとすると、機能向上による効果の部分の中に放棄されるかもしれなかったほ場が維持されるものが入っている、そんな整理じゃないかと思うのですが。

【室賀土地改良企画課課長補佐】 耕作放棄防止効果のところの生産は区画整理によるということで算定しているわけですが、例えば農業用水についての機能の部分は、この絵でいきますと「事業なかりせば」に落ち込むんですけれども、農業用水と一体的に行われています区画整理が、違う工種になるんですけれども、その区画整理が行われない、未整備の状態ですと、発生するであろう耕作放棄を見ておりますので、それぞれ対策工種が異なった状態のところで算定をしているということになります。

【金本分科会長】 ちょっと変な話で、両方合わせた効果を、こちらの事業と、もし区画整理がかなり現実的なものとして可能性があるのならば、合わせたものの効果を見るのが真っ当な姿ですよね。その辺の整理をもう少しきちんと、多分やること自体の問題ではなくて、見せ方の問題だけだと思いますので、今時間もあれですので、細かい議論をするのは避けたいと思いますが、後で御検討いただきたいと思います。

そのほか何かありますか。

【佐藤臨時委員】 2つ質問で1つコメントなんですけれども、さっきからずっと資料3のほうで見ていたのですけれども、便益をどうやってはかるんだろうというときに、3ページで具体的に年効果額の算定というのがありまして、そこで、年の生産増減量というのを、基本的には現状と計画額をベースにして比較しているのですが、実際、例えば米だろうと大豆だろうとアスパラガスだろうと、計画したことが必ずしも実現するとは限らないわけですね。しかも、これは国が計画しているわけで、地元が実際それに従ってやる理由も特にない。したがって、これまでの経緯として、例えば計画と実態が実際に合っているのかどうか。過去においてかい離しているとしたら、本当はこの計画額をベースにしてやるというのはいいのかなというのがコメントと質問なんです。

  それから、純益率というのは何ですか。これは定義の問題なんですけれども、73%とか70%とかあるんですが、これは具体的に何をベースにされているのかというのが1つあります。

  もう一つ、これはコメントなんですが、事業があれば、なければという区別なんですが、本当はもう一つ間があって、それは事業はするけど、ただ単に現状施設を更新するだけならどうか。なぜかというと、ここの「事業ありせば」の事業というのは、機能向上分を含んでいるわけですね。例えばカローラを持っている人が、車が古くなったので、じゃ、新しいカローラに乗りかえようか、ベンツを買おうかという選択なんだと思うんですけれども、ここの比較というのは、車に乗るのをやめるか、ベンツを買うかの比較をしているような気がするので、これでいいのでしょうか。その間にもう一つ選択肢があってしかるべきではないかという気がしたんです。

【室賀土地改良企画課課長補佐】 計画の関係でございます。作物の作付が変わるという部分でございますが、これは一つ、先ほどの土地改良事業の特性といたしまして、受益者からの申請、それから、同意をとるという観点から、作付計画につきましては、地域の方、受益農家の方と一緒になって話し合いをします。ですから、国だけでつくっているわけではございませんで、地域の方が、例えば現状では農業用水が不足していると。それで、今やろうとしている作付がなかなかうまくいかないといったときに、安定的な農業用水によってこういう作付を実現していこう、そういったものが作付計画になっております。ですから、事業で実現しようとする作付計画をもとにいたしまして算定をしているといったところでございます。それから、純益率でございますが、これにつきましては2つのパターンがございまして、1つは、作付の増減による純益、これは、1つは国民経済的な観点の費用便益比を出すときは純益という考え方をとって、それから先ほど言った受益者の負担の可能性につきましては所得という2つの評価をしているわけでございますが、この純益につきましては、統計的な資料をもとにいたしまして、全体の生産額から生産コスト分、これを差し引いたものを純益といたしまして、その率を算定して純益率としてございます。

  一般的には、このマニュアルの中にも入れておりますけれども、標準的な純益率というのを算定いたしまして、これは統計資料からでございますが、それをもとにしております。また、それに合わない作物がある場合は、地域においてそれに即したものを算定いたしまして、純益率としている。

  もう一点、単位収量が増加する、これにつきましてはその生産コストの部分、単収の増加によって何が変わるかということで、例えば収穫にかかわります作業が増えるとか、収穫にかかわります資材が増える、その部分を考慮した単収増加の純益率を整理いたしまして適用しているということでございます。

  機能の整理の仕方の部分はございますけれども、効果の算定そのものは、おっしゃいましたとおり、まず現状を維持する効果、それと現状から機能が上がる効果というものをそれぞれ算定いたしまして、この表には併せてそれを整理しているといったところでございます。

【齋藤設計課長】 カローラとベンツという比較が適正かどうか分かりませんけれども、私どもは施設が先ほどの農業農村整備事業の概要で見ていただいたとおり、一番後ろに施設の老朽化の状況がございますね。こういう老朽化の状況に応じて地域でどうしたいのかということを話し合っていただいています。ですから、水路とか水が漏れるけれども、漏れたところだけ直してもらえばいいというような場合もありますし、あるいはもうそれは県とか国ではなくて、自分たち土地改良区自らやりますので、そういう補助事業で採択していただければいいというのもあります。

  ここで言っているのは国営でございますから、国営でやるというのは相当大規模なものでございますので、先ほど言ったようにもう少し機能を維持したい、合理的に用水を分配できるようにもっと省力化したいとか、そういったニーズがある場合が多いのですけれども、ですから、どういう選択肢があるのかというのは、実はいろんな選択肢があって、それは我々の土地改良事業というのは地元申請ですから、地域でよく話し合ってもらって、自分たちの負担もあるわけですから、どういった整備を望んでいるのかということは話し合っていただいている。もちろん補修だけという事業をやるときも費用対効果は出しているわけで、それぞれの事業の仕組みの中で事業内容を選択していただいているということでございます。

【金本分科会長】 その点に関してはなかなか実際には難しいことは承知していますけれども、withoutの設定をどうするかというところで、通常は計算が大変なので、現実的なセカンドベストの代替案というのを設定することは、日本では実態上なされないことが多いのですが、本来はそれをすべきで、全くつくらなくて、ぐじゃぐじゃになってしまうのと、ちゃんと改修するのと比較するというのはまずいということでございますので、これについてはマニュアルの問題ではございませんので、あと、いろいろ御検討いただければと思います。

【藤井委員】 先ほど御質問が出た資料3の関係での質問です。2ページを拝見すると、総便益の計算のところで生産効果額を先ほどの年を出して、それがずっと40年続くということで、今から47年後まで一定額でというような試算になっているようなのですけれども、そのこと自体がそもそも現実的なのかどうか、今までも、改良すれば40年ずっと同じような営農が実際に行われているのかということは検証されておられるのでしょうか。もちろん難しい問題もあると思うのですが、40年という年数がどうして設定されたのかということと、ここでは47年後まで出ていますので、その47年間、細かいことは別として、一定水準の営農効果がずっと発揮されるということが過去に照らして妥当なのでしょうか。先ほどの更新が増えてきているという話をうかがいますと、もう少し短い期間で世の中は変わっているような感じもいたしますが、教えていただければと思います。

【室賀土地改良企画課課長補佐】 この効果につきましては、先ほどありましたとおり各農業用施設がもたらしている増収分なり、それから作物の生産量なりの生産部分、これにつきましてその差の部分を測っているというところがございます。そういう意味では、今の評価期間といいますのが、一連の施設の平均的な耐用年数を用いているというのはありますけれども、これは今の増収分をもたらしている、効果をもたらしている施設の機能している期間、それをもって整理をしております。いわば施設がもたらしている効果の発現期間というふうにとらえてございまして、それを一定の年効果としてまず整理をいたしまして総便益として整理しているといったところがございます。

 また、これまでのやってきた事業についての効果ということでございますが、これにつきましては、今この政策評価の中でも事業実施後に評価をいたしまして、その検証をしてございます。その検証の結果も次の事業にいかしていこうということで取り組んでいるところでございます。

【藤井委員】 質問の趣旨は、物的耐用年数と経済的耐用年数が違うのではないかという可能性を御検討されているかどうかということなので、その辺を考えていただけたらと思います。もう一つは、さらに言えば、マクロ的に全体の整合性がとれているかということがあるわけですね。全体の農業、営農規模等の関係で、それぞれのところが全部同じような仮定で伸ばしていくと、いろいろなところで大きい数字になっているような感じがしますので、今お答えいただくという話ではないと思いますが、御検討いただけたらと思います。

【室賀土地改良企画課課長補佐】 1つだけ、ほ場の条件でいきますと、例えばここで測っているのは、ほ場の条件そのものがもたらしている部分しかとらえてないのですが、先ほど申しましたように、実際に営農条件なり、営農されている方たち、例えば最近ですと、担い手とか、生産法人化して規模を拡大したりとか、そういった部分もございます。そこは確かに課題のところがございまして、そこをすべて想定して評価できるという形にはまだ技術的に難しい面がございます。ですから、現状では、整備されたほ場がもたらしている部分、その部分をとらえることによって効果というような形にさせていただいているという部分がございます。

【金本分科会長】 そのほか何かございますか。

【田中臨時委員】  今のことにも関係すると思うのですが、その効果の測定をするときに、例えば作物の生産効果とか、品質の向上効果とかといったものをすべてこの施策が効果をもたらしているという寄与度を100%として考えているような気がするのですが、それについては少し検証の必要があるのではないかというふうに思います。

  同様に、例えば都市・農村交流促進効果も寄与度100%として計上しているのでしょうか。それから、今の耕作放棄防止効果というのも、実際の環境だとか、いろんなことを考えた上で検証する必要もあるのではないかというふうに思うのですが、全体に見て、すべて100%寄与度というようなとらえ方をしているように思うんです。この辺についてはどうでしょうか。

【室賀土地改良企画課課長補佐】 これにつきましては、各効果、例えば作物の生産量の

増加というところには、それぞれの既存のほ場の土地条件、例えばほ場が湿田の状態であるとか、その湿田の状態も程度がございますので、その程度がどの程度であるとか、用水につきましても、不足がどうなっているかということで、例えばそれ以外に干ばつによっての干ばつ被害があるかとか、それから水害があるかとか、そういった各効果の土地条件ごとの要因がございまして、それごとにほ場を整理をいたしまして、その要因が発生しているほ場をですね、それごとに事業をやるとどれだけ改善されるのかといったものも一つずつ整理をいたしまして算定に加えていっている状況でございます。ですから、それによっての改善部分というのは、これまでの農業試験場等の試験結果、それから実際に地域で試験ほ場を設けましてどのくらい改善されるのかといったことを測りまして、その部分をとらえるという考え方にしてございます。

【田中臨時委員】 例えば営農計画を変更する、作物の種類を変えるとかいったようなことの影響は、実際に所得のほうの影響に直結して出ているんだと思うのですけれども、そういったものについては、効果から引いているということなんでしょうか。

【齋藤設計課長】 作物選択だけで効果が決まるわけではないですから、事業により実現する営農計画に基づく中で、その増収効果部分などを見ているということで、作付体系がその時点で変われば、その時点で評価してやっているわけですから、絶えずその基盤を整備した部分の効果しか見てないということです。

【田中臨時委員】 作付増もありますよね。

【齋藤設計課長】 まあ作付増もありますが、今言っているのは、例えばつくっている品目が変わるじゃないかという御議論ですね。

【田中臨時委員】 そうですね。

【齋藤設計課長】 品目を変えたことによる効果というのは、例えば桑畑みたいなところで水が来ないから桑以外の作物が作れなかったところにかんがい用水が来て、ほかのいろんな野菜とかスイカとか、そういう作物を作れるようになったという、そういう部分、その純増の部分をとらえて我々はやっているんですね。あと、例えば稲作であれば、今までもちろん稲作をやっていたわけですけれども、そこは品目は変わらないのですけれども、先ほど言ったような基盤を整備することによって生産量は増収率の部分があるわけで、ですから、そういうネットの部分だけ効果として出しているんです。

【田中臨時委員】 ですから、今の効果については、すべて100%寄与度と考えているということですね。

【金本分科会長】 いや、多分そうじゃないとおっしゃっているんだけれども、本当にどこまでちゃんとやっているのという疑問なんだろうと思います。

  ちょっと時間もありませんので、そういう細かいのがちゃんとしているという話はまた後ほど資料等を出していただくということにしていただければと思いますが、そのほか何かありますか。

【上田臨時委員】 今日聞かせていただいて、以前の土地改良のいろんな費用便益マニュアルを見せていただいたときには、正直言ってよく分からないところがあったし、疑問が多かったのですが、今日お話を聞いた範囲では、割合スタンダードな、ほかの公共事業での考え方とそんなにずれてなくて、同じようなやり方をされているなと、以前より大分わかりやすくなったというのが正直なところです。

  それから、私も学部の講義で費用便益分析を教えているのですが、そのときに事業あり・なしとか、withwithoutという言い方で身もふたもない言い方をするのを「ありせば・なかりせば」というやわらかい言い方をされているので、ここを大事にされているなという意味でも、この言い方のほうが私は好きだし、授業でもそういう言い方を使いたいなと、勉強させていただきました。

  それで、気になるのは、先ほど金本先生も言われましたけれども、やっぱりwithoutケースの設定だと思うんです。これはほかの公共事業でもそうなのですが、やっぱりwithoutの設定の仕方で随分変わってくる。そのときに特にこういう農業の問題は、非常にマクロな経済環境、国際的ないろんな経済環境の影響を受けやすいので、そこのいわゆる感度分析、シナリオがどれぐらいずれたとしたらこの事業の妥当性がどうかというチェック、その部分がかなり難しい。それから、交通の場合ですと、実際に需要1万台交通がありますというようなことを言ったときに、後から検証したら5,000台しか走ってなかったら、それは過大推定ではないかとすぐに言われてしまう。ところが、農業の場合に、各農家の方々がどれだけ作付したいかということを積み上げてとおっしゃったけれども、実はこれは予想というよりはみんなの意思なので、これはずれてしまう可能性が非常に高いし、これを農家の方々がどうだという積み上げではなくて、客観的にこういう条件のところではこれぐらいまでは最大生産可能だし、一番落ち込んだとしてもこれぐらいだと、ある幅を持った需要予測といいますか、この場合は供給予測なのかもしれませんが、そういった方法を導入されるべきであろう。それが第三者が客観的に検証可能で、そこのところで検証可能であれば、この事前にやられた評価がちゃんと正しくやられていたかどうかの事後チェックの一番大事なところなので、やっぱりそれを導入される、もうされているのかも分かりませんが、そういうものをやっぱり明示的に出されるべきだろう。

  2点目は、先ほどの残存価値と我々が言っている、そういう言い方をされているのかどうか分かりませんが、要するに、施設の耐用年数を設定したときに、物理的にはまだまだもつ。その後の残りの財産価値、資産価値をどう設定するか。ここでいわゆる定額法の減価償却法を使われているのですが、これが本当にあと20年使えるのであれば、その20年の間の価値は、やっぱりここでやられてきた発現する便益のほう、これの現在価値法で出すのが原則であって、例えば財産価値としてはまだまだ大きく残っているけれども、もうそのエリアでの農業の生産性が落ちていれば、当然その施設はあと10年、20年使ったらという想定をしたところで、正味の便益というのはそれより小さくなるはずなんですね。その辺は多分設定法で、今のこういう便益の計算法があれば、それを残存価値の推定にも援用することで、ある程度は改善できるのではないかという気がします。

  これはほかの公共事業でも残存価値といいますか、事業期間が終わったのに耐用年数が残っているときにどう設定するか。これは実はスタンダードがあるようで、まだちゃんとスタンダードがないので、多分こういうふうな更新ということに直面されている事業であれば幾つかのタイプを出して、まだ確定していないというか、どれが一番いいというのがないのであれば、こういった今までの減価償却法と、ほかの再調達価格とか、いろんな資産価値の評価法はほかにも幾つか代替的な方法はあると思いますので、幾つかをやってみて、3つなら3つ、4つなら4つの方法でやってみて、それでもこの事業はオーケーであった、結果は頑健である、ベストであるというようなことをなるべく幅広くいろんな感度分析、それから手法の入替えをやって多重にチェックするというシステムにやるべきだろうなという気がします。

  最後のは感想です。以上です。

【齋藤設計課長】 私は農家の申請主義ということを強調したので、先ほど作目のことでそんな議論になったのかもしれませんけれども、実はこれは非常に丁寧にやっておりまして、例えば県の営農の普及員の皆さんと一緒になって、水が来たら農家がこういうことをやりたいというような話も聞いて、それが現実的なのかどうか、試験ほ場までつくって実際に水でかん水してみて、この土壌でそういった作物転換ができるのか、それによってどれだけ収量が上がるのかというような試験ほ場を作ってデータを取ったり、まさにその事業をやろうとしている地域でそういった形で相当丁寧にやらせていただいているということだけ、すみませんが、最後につけ加えさせていただきます。

【金本分科会長】 もう細かい議論をする時間は全然ございませんが、拝見させていただいた限り、外部経済効果をかなり大胆にいろいろ入れられておられるというのは、ほかの公共事業に見られない傾向だと思いますが、それ自体は別に悪いこともないのですが、計算の方法で、氾濫シミュレーションとかシミュレーションがかなりある。これはシミュレーションの中身がちゃんとしているかということの疑問を皆さんお持ちになるはずで、そのシミュレーションの中身に関する情報開示が必要だというのが1つ。

  あと、CVM法でというのが、私の感じよりかなり広い範囲で使われていて、危ない使い方をされている感じがございます。CVM法というのは一般的にいいものについて聞くと、どういうケースでも3,000円とか5,000円とか答えが返ってきて、それに掛けると非常に過大になるといったことがございます。こういったことについて気を付けていただくと同時に、それをもっともっとやっているということを示していただく必要があるんだろうということがございます。それについてよろしくお願いをしたいと思います。

【室賀土地改良企画課課長補佐】 今の件につきまして1点でございますが、災害防止の防止効果につきまして、今回氾濫シミュレーションと、これは一部治水経済調査マニュアルとか、国土交通省でやっているものを少し参考にいたしまして導入している部分がございますが、これは整備する内容によって発生するものとしないものがありますので、そういう意味では適用しているのは、そういう防災的な事業とか、そういったものに限られてくる部分がございます。

  それから、CVMですが、これはおっしゃるとおり適用に当たってはかなり慎重に、つまり、最初のシナリオの部分をかなり慎重に適用するようにしております。実際に新しくした後、それほどまだ例はないのですけれども、最初にCVMで算定する場合には、シナリオの部分を学識経験者の先生方と一緒にどのように対応していこうかと、まずそこを検討した上で適用できるものについて適用していくというような形をとっております。

【金本分科会長】 それは大変重要なことなんですけれども、外からいろいろ調べてみて、ちゃんとやっているかどうかを調べたいんだけれども、どこにも情報がないといった状況が多くて、それはきちんと出しておいていただきたいというふうに思います。

【室賀土地改良企画課課長補佐】 そういう意味では、これから算定例が出てくるという

ことになろうかと思いますけれども。

【金本分科会長】 そのほか何かございますか。よろしゅうございますか。

  それでは、時間超過して大変申し訳ございませんでした。農林水産省の方々におきましては、貴重なお時間をいただきまして大変ありがとうございました。御礼申し上げます。

  時間が超過して恐縮でございます。議題はこれで終わりなのですが、あとは事務局のほうから今後のスケジュール等についてお願いします。

【松林政策評価官】 次回の政策評価分科会でございますけれども、1125日(火)10時から、またこの虎ノ門パストラルにおきまして、バイオマスの利活用に関する政策評価と世界最先端の「低公害車社会」の構築に関する政策評価、この2つのテーマを予定しております。

  それから、本日御審議いただきました重要対象分野の答申案でございますけれども、1126日(水)、1440分から政策評価・独立行政法人評価委員会で答申をいただく予定にしております。

  以上でございます。

【金本分科会長】 それでは、以上をもちまして本日の政策評価分科会を終了させていただきます。どうもありがとうございました。

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