【谷藤分科会長】 時間になりましたので、ただいまから政策評価分科会を開会いたします。
本日の政策評価分科会では、議題が三つございます。第1の議題は「目標管理型の政策評価の改善方策に係る実施状況等について」でございます。第2の議題は「「ワーク・ライフ・バランスの推進に関する政策評価」の方向性について」でございます。第3の議題は「「消費者取引に関する政策評価」の進め方について」でございます。
最初に、議題1「目標管理型の政策評価の改善方策に係る実施状況等について」について清水政策評価官より説明をお願いいたします。
【清水政策評価官】 政策評価官の清水でございます。よろしくお願い申し上げます。座って説明させていただきます。
お手元にお配りしております資料1「目標管理型の政策評価の改善方策に係る実施状況等」を御覧いただければと思います。昨年来御審議をいただいてまいりました目標管理型の政策評価の改善方策につきまして、各府省において実際に事前分析表、評価書を作成していただきましたので、その状況についての御報告をさせていただきたいと思います。
事前分析表ですが、総計で約3,000ページとなっております。お配りするのがなかなか困難なため、回覧いたしますのでお手にとって御覧いただければと思います。
なお、後ほど御説明させていただきますが、当省で運営している「政策評価ポータルサイト」というものがございまして、そちらからも見ることができますので、併せて御参照いただければと思います。
それでは、資料に沿って御説明申し上げます。目標管理型の政策評価の改善方策の概要については、重々御承知のこととは存じますが、事前分析表を導入し、施策の実施前に、施策目標とその達成手段を一覧的に書いていただいております。さらに、各行政機関共通の標準的な様式を全政府的に導入することによって、政府全体としての統一性・一覧性を確保しております。評価書についても同様でございまして、重要な情報に焦点を絞って提示することによって、メリハリのある分かりやすい評価を推進し、各行政機関共通の標準的な様式を全政府的に導入することによって、統一性・一覧性を確保しております。
1枚めくっていただきまして、2ページでございます。各府省において事前分析表を作成していただきました。政策評価の対象機関として20機関ございますが、現在施策レベルの評価が行われていない宮内庁、新設されて間もない復興庁、原子力規制委員会を除く17機関で、目標管理型の政策評価を行うとしている約470施策につきまして、事前分析表が作成されている状況でございます。
ほとんどの府省において公表していただいておりますが、事務手続が遅れている消費者庁も間もなく公表していただけると聞いております。作成・公表の時期でございますが、7行政機関が3月から5月、6機関が8月から9月、4機関が10月から11月に総務省へ送付があったということで、各府省それぞれの事情によって、若干時期にばらつきが出たという状況でございます。
標準様式のカスタマイズ等の状況につきましては、既に作成していたという府省も一部ございましたが、おおむね標準様式に沿った様式を使っていただいております。カスタマイズ事例としましては、定性的な目標に対して、それを補完する「参考指標」という欄を追加したもの、「達成手段の概要等」について細分化して、情報量を増やしたというもの、複数年にわたって目標値の設定ができる施策が少ないため、目標値の記載欄が1年度分になっているもの、情報を絞って記載しようということで、「目標・指標の設定根拠」欄を削除したものなどがございました。事情をお聞きしたところ、いずれも試行錯誤の中で、より分かりやすくしようという試みだと御説明を受けております。
3ページの「達成手段の記載状況」につきましては、基本的に行政事業レビューの対象事業に対応する形で整理をされている府省が大半でございます。その中で、予算事業に加えて、租税特別措置や税制規制措置など、予算事業以外の達成手段につきましても整理・記載しているところ、あるいは対象事業を大くくり化して整理・記載しているところなど、若干の書き方の違いが見られました。
また、政策の企画立案・調整、査定、規制といったような、専ら予算事業以外の形で政策目的の達成のための活動を実施しているところにつきましては、必ずしも行政事業レビューや予算にとらわれない、それぞれの整理の仕方がされていたという状況でございました。
4ページでございます。事前分析表の作成に当たりまして、各府省から御意見をお伺いしましたところ、事前分析表を作成することで、事務事業の政策体系上の整理に役立ったという御意見、御工夫された点として、行政事業レビューの事業区分と同様に整理し、整合性を確保したという御意見、一方で、御苦労された点として、行政事業レビューと施策目標の関連づけ作業が膨大であったなどの御意見が寄せられております。
続きまして、「標準様式に基づいた評価書の作成・公表」でございます。評価書につきましては、先ほど事前分析表を作成していただいた17機関のうち、今年度目標管理型の政策評価の実施対象施策がなかった防衛省を除いた16機関で作成をされている状況でございます。作成の時期につきましては、例年どおり大体概算要求の前後の時期である8月から10月ぐらいまでの間に作成・公表して送付されているという状況でございます。
5ページに参りまして、カスタマイズの状況ですが、各府省において、おおむね標準様式に沿った様式が使用されております。カスタマイズの内容としては、目標・指標の達成度合いを分かりやすく示すために、評定のための記号のようなものを追加されているところ、あるいは施策への反映の方向性を評価書に記載されているところなどがございました。
評価書につきまして、各府省からの御意見としては、全体的にコンパクトになり見やすくなったという御意見、御工夫された点として、事前分析表で記載した達成手段を活用して、政策手段の整理をしたという御意見、さらには、測定指標の値の変化について、代表的なものはグラフ化したという御意見がございました。御苦労された点としては、これは標準様式の評価書に限ったことではないかもしれませんが、定性的な部分についての簡潔な記載が難しかったという御意見がございました。
次に、6ページの「事前分析表、評価書の活用状況」でございます。作成していただきました事前分析表、評価書をどのように活用したかについて、各府省にお尋ねして、いただいた回答を整理したものでございます。なお、先ほども申し上げましたとおり、実施初年度ということもあり、公表の時期が若干遅めになっており、必ずしも概算要求や行政事業レビューに使われるまではいっていないところもございますが、実際に使われたというところで、次のような御意見をいただいております。政策評価体系を踏まえて行政事業レビューを実施するとともに、レビュー実施に当たり事前分析表、評価書を参照したという御意見、行政事業レビューの結果を踏まえて政策評価を実施したという御意見がございました。
7ページでございます。今年度の取組の状況でまとめますと、公表時期の遅れ、達成手段の記載内容のばらつきなどはみられますが、全体として各府省が、今回の「目標管理型の政策評価の改善方策」の趣旨に沿った取組を行っていただいているのではないかとみております。また、活用の面では、行政事業レビューと政策評価、相互間の情報活用を図ることなど、両者の連携に向けた取組が行われているとみて良いのではないかと考えているところでございます。
「(5)全体的な事項に係る各行政機関からの意見」は、このような取組につきまして、各府省から様々な御意見をいただいたもので、代表的なものを抜粋しております。具体的なものにつきましては、別紙3「各行政機関からの主な意見等」で各府省からいただいた御意見を整理しておりますので、御参照いただければと思います。代表的なものを御紹介いたしますと、様式の変更が毎年行われると作成者側は混乱をするという御意見、カスタマイズはどうしても必要だという御意見などがありました。また違った方向から見ますと、政策評価制度の検討に当たって、事前分析表の利活用方策を含め、丁寧かつしっかり御検討いただきたいという御意見、評価書の標準様式については作業量に対する効果が感じられないという御意見、業務負担軽減のための見直しを引き続き検討していただきたいという御意見などがございました。
このようなことを踏まえまして、来年度以降の取組の方向性でございますが、施策の目標及び達成手段を事前に公表するという取組は、政策評価の中でも重要な意義があると考えますので、一層の早期化、達成手段の記載方法について検討を進め、さらには評価の重点化、メリハリ付けといったことも検討しながら、今後とも取組を進めていければと考えております。
また、事前分析表、評価書の一層の活用ということで、政策、あるいは行政事業レビュー、概算要求などに反映していただいたり査定側でも使っていただいたりするということはもちろんですが、広く国民の皆様にも見ていただいて御意見をいただくという観点から、私どもで「政策評価の総合窓口」というものをこれまでも作っておりましたが、今回、事前分析表の標準様式の導入ということで、それをリニューアルいたしました。少しだけ御紹介をさせていただきたいと思います。
別紙4「政策評価ポータルサイトについて」にもございますが、今、プロジェクターにも映し出しております。総務省のトップページから政策評価のバナーをクリックしていただくと、「政策評価ポータルサイト」のトップページが出ます。ここで各府省の窓がありまして、農林水産省を例にしますと、政策体系一覧というところをクリックしていただいて、下にずっといっていただきますと、事前分析表をつくっている施策が一番左に出てまいります。これが主要な政策分野になるわけでございます。その一つ一つについて、事前分析表をクリックしていただくと、該当する事前分析表が出てくるということでございます。トップページに戻っていただいて、次は評価書でございます。これは昨年度の評価書になりますが、評価書についても、クリックしていただくとその政策に対応するものが出てくるようになっております。各府省のホームページで公表されているものにリンクを貼るという形で、総務省の「政策評価ポータルサイト」から全て見ていただけるように整理をしたということでございます。このようなものも活用していきながら、今後ともこの取組を進めていければと考えております。簡単でございますが、御説明は以上でございます。
【谷藤分科会長】 政策評価におきまして、「目標管理型の政策評価の改善方策」は本年度の一番重要な課題でございました。それを進めてまいりまして、ようやくここまで来たということでございます。
それでは今の清水政策評価官からの説明につきまして、各委員から御質問を受けたいと思います。御発言願います。田中委員、どうぞ。
【田中(弥)臨時委員】 ありがとうございます。今の御説明で、各府省の評価の取組の見える化について、より効果があったということで、とても感心して拝見していたのですが、他方で、そもそもこのフォーマットを導入したときの課題が何であったのかということを振り返っておりました。そもそもは政策評価のほかに行政事業レビュー、事業仕分け等々、類似の制度が複数できたことによる事務作業上の混乱、あるいは国民から見てもよく分からないという問題を解決するために、一つのフォーマットを横串のような形で入れてみようというのが、本来のこのフォーマットを導入したときの課題であり、それを解決することが目的だったと思いますが、この問題自体はどこまで解消されたのでしょうか。
【谷藤分科会長】 では、清水政策評価官。
【清水政策評価官】 はい。お手元の参考資料1「行政事業レビューと連携した政策評価の改善方策」の7ページが、今回の「目標管理型の政策評価の改善方策」を導入するときの効果のイメージとして、今年の春にも御審議をいただいたものでございます。御指摘のとおり、類似の制度があるので、重点化や役割分担が図れないか、ということに取り組んできたわけでございます。
先ほども申し上げましたが、今年度につきましては、初年度であり作成の時期が遅れた関係もあって、必ずしもそのとおりになったとは言えないところですが、事前分析表に「達成手段」を一通り書いていただき、その「達成手段」の一つ一つについて行政事業レビューでチェックがされる。その際、事前分析表が有効に活用されれば、一つ一つの事務事業の目標そのものだけではなく、それによって実現しようとする施策との関係、そういうことも意識しながら行政事業レビューがより適切に行われ、今度はその結果を踏まえて施策単位という、政策評価でより重点的な評価活動ができるという設計で作られているものでございます。
したがいまして、今年度につきましては、完全に実現できたかどうか、というところはございますが、それぞれ各府省で工夫して資料を作成していただいて、台ができたということでございまして、来年度以降、是非そのような活動がより進めばいいなと思っているところでございます。
【谷藤分科会長】 よろしいでしょうか。
【田中(弥)臨時委員】 はい。
【谷藤分科会長】 そのほかに御意見ございませんか。中泉委員、どうぞ。
【中泉臨時委員】 一般論なのですが、標準様式を導入するときの一つの理由として、外部から見やすいからということが理由にあって、こちらでも議論されたかと思います。その議論の中で、ある程度のカスタマイズを許してもいいのではないかと私は発言しました。ただ、標準様式を導入するときのもう一つの重要な理由は、各府省による評価書の改悪を防ぐということでございます。そのような意味で、一番の改悪は情報量が落ちることですが、そういった改悪をしている府省については、改善を是非お願いしたいと思います。以上です。
【谷藤分科会長】 佐藤委員、どうぞ。
【佐藤臨時委員】 今後の見通しについて、もう少し伺いたいのですが、まず今年はやりました。いろいろと言われたけれどもやりましたということで、これである意味、事前と事後の関係、事前の評価と事後の確認、行政事業レビューを含めて、このあたりはうまくリンクが貼れたかなと思います。次は横串といいますか、やはり各府省の政策をもう少し整合的に比較できるようにしていかなければいけないので、移行措置としてカスタマイズするのはある程度あってよいと思います。しかし、これを恒久化すると政策評価のガラパゴス化が生じてしまいます。一般的に考えれば、同じような政策を違う府省がやっている場合、それはしっかりと比較できないと、事業の重複がどこにあるのか、あるいはどちらの事業がより効率的なのか、そのような判断ができなくなってしまいますので、これからの流れとしては、できるだけカスタマイズはやはりスタンダード化した方が良いと思います。どうしようもないものもあると思います。事業と規制関係は違うので、そのような政策の性格によって、評価の仕方がカスタマイズされるのは良いと思うのですが、府省の文化の違いによりカスタマイズするのは、今後はできるだけ収れんの方向に持っていくべきかと思います。
それからもう一つの問題は、いつやるかという問題。これまでは基本的にいつやっても良いということでやってきたと思いますが、予算に反映し、決算を確認し、行政事業レビューの時期に合わせるということを考えると、タイミングもできるだけ統一させていくことになっていくと思います。このあたりの見通しはあるのでしょうか。
【清水政策評価官】 カスタマイズにつきましては、今年はいろいろと各府省にやっていただきましたので、それを踏まえて、さらに分析を進めていきたいと思います。これまでずっと積み重ねてこられた評価も各府省であり、今回の事前分析表、評価書の作成に当たって、各府省に置かれている第三者委員会でそれぞれ御審議をいただいていると、各府省からは聞いておりますので、そのような点も踏まえながら検討していく必要があるのかなと思います。
時期につきましては、御指摘のとおりだと思います。せっかく作るからには役立てていく必要がありますので、ここは各府省とも相談しながら、来年度に向けて早期化に取り組んでいきたいと考えております。
【谷藤分科会長】 よろしいでしょうか。それでは立花委員、どうぞ。
【立花臨時委員】 私も田中委員が言われたように、初年度にしてはいろいろ御努力いただき、試行錯誤があったとはいえ、ここまでよく来たなということで率直に評価したいと思っています。このような制度もやはりboth wayでコミュニケーションを深めながら、より良いものに工夫していくことが必要であり、まずそのような面で取組を評価したいと思っています。その上で、この取組とは直接関係ないかもしれませんが、確か東日本大震災の復興予算の使い道に関連した政策の中で、その目的に関連する度合いが薄いものと濃いものがあり、それを議会の決算行政監視委員会でレビューするという話が、今年の夏場にありました。そのときに、確か野党の先生方は、行政事業レビューの資料があるはずだから、あれを活用しようではないかというような議論もあったと聞いているのですが、そのあたりの実態がどうだったのかという点を、これからの活用ということに関連して教えていただきたい。それから、私は前々から申し上げているのですが、行政評価局の皆様の経験、ノウハウを政治の場でもしっかりと活用するのは非常に大事だと考え、自分で勝手にですが応援団を買って出ているわけです。今回の総選挙がらみでマニフェストの作成とか、あるいは政権公約の作成とか、そのような関係で是非この辺を聞きたいとか、あるいはそれぞれの政党の様々な関係の集まりのときに説明してもらいたいとか、そのような政治レベルでこの取組に注目して、関心を持って勉強しているような事例があるのかないのか。またその辺はこれから政務三役の方々のいろいろな御努力もあるかもしれませんが、せっかくのこのような取組を政治の場でも活用してもらう。あるいは使いにくくて活用できないのであれば、政治サイドからどのような注文があるのかないのか、その辺もboth wayで深めながら議論をして、よりよいものにしていくことが大事ではないかという印象を持ちました。御参考までに申し上げます。
【谷藤分科会長】 評価官、何か意見がございますか。
【清水政策評価官】 御指摘ありがとうございます。この「目標管理型の政策評価の改善方策」の導入に当たりまして、もともと行政事業レビューを恒常的なものにするというところでこの話がありましたので、この制度設計につきましては、与党の民主党の行革本部などとも御相談、御説明をしながら進めてきたところでございます。
あと、「目標管理型の政策評価の改善方策」をどこかで全体の説明を求められたということは特段ございませんが、御指摘はごもっともでございます。せっかく各府省で作っていただいたものですので、今後ともそのような場でも使っていただけるように御説明を進めていく必要があると感じております。
【谷藤分科会長】 加藤委員、どうぞ。
【加藤臨時委員】 私も大変な作業の結果として、すばらしいものができたと高く評価しています。ただし、資料1の7ページに書いてある「評価書の標準様式について、省内・省外からの特段の評価は無く、作業量に対する効果が感じられない点は課題である。」という意見について、担当している府省の職員が作業量に対する効果が感じられないと言っているのは問題だと思います。政策評価は1回だけやるわけではなく、今後も続けていくものですから、持続可能な政策評価となるための工夫が必要なのは当然です。作業が多い割に効果が得られないと担当者が思っていると、担当者のモチベーションが低下しますので、次回評価したときの質が低下することが懸念されます。その意味で、一部の府省、担当部局ではうまく活用されている例があるというお話がありましたので、例えば、うまく活用している事例を、ベストプラクティスとして、まとめられるといいのではないかと思いました。以上です。
【谷藤分科会長】 ベストプラクティスの事例の提示についてはどうですか。
【清水政策評価官】 御指摘ありがとうございます。そのようなことも含めて検討していきたいと思います。ちょうど各府省の担当者向けに毎年研修のようなこともやっておりますので、そのような場で取り上げられるか、考えていきたいと思います。なかなかどれがベストかということを、目標管理型の政策評価の評価書は全府省合計で約3,000ページありますので、これと一つ一つ決めるのも難しいのですが、それでもいろいろ代表的な事例というのがあるかと思いますので、各府省とも共有していきたいと考えております。
【谷藤分科会長】 そのほかに各委員から御意見ございませんか。高橋委員、どうぞ。
【高橋臨時委員】 「政策評価ポータルサイト」について、先ほど御案内がありましたが、私も自宅で見せていただいて、以前と比べると非常に改善されて、分かりやすくなったと思います。行政分野ごとに主要施策が上がっていて、事前分析表、評価書、政策評価調書が見られるという一覧性、検索性というのは非常に高いのですが、やはり中身を見ていったときに、インターネットで見るには、カスタマイズされていると非常に分かりにくくなります。インターネットで見るのであれば、完全に統一したフォーマットで、各府省違うところはそこをクリックするとさらに入っていけるような形にしていただいた方が、国民にとっては見やすいと思っております。
それと、行政事業レビューとの連動などはまだまだ工夫が必要だと思いますので、この「政策評価ポータルサイト」も利用者の声を聞いてさらに進化をさせていただきたいと思います。以上です。
【谷藤分科会長】 ありがとうございます。そのほかに各委員から御意見ございませんでしょうか。
それでは議題1「目標管理型の政策評価の改善方策に係る実施状況」につきましては、今日出ました様々な意見を踏まえてさらにこれを進化、発展させていくことを願っております。
それでは次に、今日の第2の議題に参りたいと思います。本日の第2の議題は、「「ワーク・ライフ・バランスの推進に関する政策評価」の方向性について」でございます。これにつきましては、矢田評価監視官からの御説明をお願い申し上げます。
【矢田評価監視官】 復興、総務、国土交通担当評価監視官の矢田でございます。それでは、私から資料2−1「ワーク・ライフ・バランスの推進に関する政策評価の取りまとめの方向性の概要(案)」、資料2−2「「ワーク・ライフ・バランスの推進に関する政策」の脈絡図」、それから参考資料7「ワーク・ライフ・バランスの推進に関する政策評価」に基づきまして御説明をさせていただきたいと思います。
まず、基本は資料2−1に沿って説明したいと思いますので、そちらを御覧いただければと思います。時間は15分ぐらいと言われておりますが、分量が多いため若干超過してしまうかもしれません。御了承いただければと思います。
初めに、「I 制度概要」でございます。このワーク・ライフ・バランスの推進という政策課題につきましては、内閣府で事務局が音頭をとっておりまして、「憲章・行動指針」の欄に記載をしておりますとおり、仕事と生活の調和、これをワーク・ライフ・バランスと称しているわけでございますが、このワーク・ライフ・バランス憲章、それからワーク・ライフ・バランスの行動指針を策定しております。
この策定主体がこのワーク・ライフ・バランスの官民トップ会議ということになっておりまして、政労使が参加をしております。経済界、労働界が加わった形で策定をしているということでございまして、最初のワーク・ライフ・バランス憲章・行動指針が平成19年、これは安倍政権から福田政権にかけてのときでございますが、それから平成22年6月、政権交代の後、改定という形でされているということでございます。
まず、「政策の目的」でございますが、この憲章及び行動指針で最終的には「仕事と生活の調和が実現した社会」を実現するということになっておりまして、具体的な中身ということで3つの社会から構成されるとしております。1番目が、「就労による経済的自立が可能な社会」、2番目が「健康で豊かな生活のための時間が確保できる社会」、3番目が「多様な働き方・生き方が選択できる社会」ということになっておりまして、その3つの社会を実現するために国や自治体の取組だけではなく、企業や労働者あるいは一般国民それぞれの役割や取組というところを主として行動指針の中で決めているということでございます。
また、今申し上げたそれぞれの取組の結果、社会全体として目指す目標ということで、「指標」というところに書いてございますが、全部で14の指標を設定して2020年等の目標を設定しているということでございまして、具体的に何が指標になっているかというところが右の欄に記載をされております。また、具体的な数値目標につきましては、参考資料7の1ページ、それから最近の推移が3から6ページまでに記載をされておりますので、御覧をいただければと思います。
また、このようなそれぞれの数値目標に加えて、仕事と生活の調和、ワーク・ライフ・バランスの実現に向けたトレンドを分かりやすく把握をしようということで、これは目標という性格ではないと位置付けられておりますが、実現度指標というものを設定しております。これにつきましては欄外に小さな字で(注)という形で書いておりますが、個人の暮らし全般にわたる個人の実現度指標というものを、仕事・働き方以下5つの分野を設定して把握をする、それから先ほど3つの社会が目標だということを申し上げましたが、3つの社会それぞれの達成状況といいますか、動きのトレンドを設定する、それから基盤整備の状況ということで、主として保育所等の基盤整備がどのぐらい進んでいるかというものを指標化するということで、先ほど申し上げた14の指標以外にも様々な統計数値などを合成して、全体のトレンドをみるというようなことをやっております。これにつきましては、参考資料7の7ページ以下にその関係の資料が記載されておりますので、御覧いただければと思います。
続きまして、「II 評価の観点及び手法」でございますが、今回の政策評価につきましては、主に指標の有効性という観点から、指標が政策効果を把握するために有効なものとなっているかという観点、それから政策目標を達成するために、指標に定められた目標を達成するために、施策・事業が有効、効率に行われているかどうかということを主な観点として政策評価を行っております。
また、手法の関係でございますが、まずロジック・モデルの作成というところでございます。本来、このような政策目標と様々な施策・事業の関係につきましては、実施省庁、あるいはとりまとめを行っております内閣府におきまして、目標と施策との関係を、ロジック・モデルといいますか、有効性を検証しながら作っていただいて、それに沿って評価をするというのが本来あるべき姿だと思いますが、今回、そこの(注)に書いてございますとおり、各指標とそれにぶら下がっている国の施策・事業というものが必ずしも明確となっていないという状況がみられましたので、後で申し上げます統計分析や事例分析を進めていく上での必要性という観点からも、総務省でロジック・モデルという形で施策の発現に向けた経路を、例という形ではありますが作成をしております。これに基づきまして、施策・事業を選定して、統計分析、事例分析を行うというような検証作業を行っております。
次に統計分析でございますが、今回、この政策評価に当たりまして、事業所に対するアンケート調査、それから就業者に対するアンケート調査を行いまして、作成をいたしましたロジック・モデルに基づいて、指標と様々な施策・事業との相関関係等を把握・分析するという試みをしております。総務省の政策評価で、このような統計分析、あるいはアンケート調査等を行った統計分析というのを行ったというのは初めてのことだと聞いております。
また、統計分析に関する資料といたしましては、ロジック・モデルにつきましては参考資料7の13ページ以下、それから個人及び事業所に対するアンケート調査の関係につきましては30ページ以下、また統計分析である程度有意な結果が得られたものにつきましては43ページ以下にそれぞれ記載をしておりますので御覧をいただければと思います。
資料2−1に戻っていただきまして、「事例分析」ということで、今年の4月以降、局所調査を実施したわけでございますが、各都道府県あるいは事業所等に実際に調査に赴きまして、国の施策・事業と数値目標との関係、あるいは事業の実施状況等について実際に調査を行っております。そのような方法で評価を行ったということでございます。
続きまして、「III 政策効果の発現状況」につきましては、一旦飛ばさせていただきまして、2ページの「IV 政策効果の把握・検証等の状況」のところから御説明をさせていただければと思います。2ページの中程に「IV 政策効果の把握・検証等の状況」という欄がございます。先ほど申し上げましたとおり、内閣府におけるワーク・ライフ・バランスの体制ということで、事務局としては仕事と生活の調和推進室が設けられておりまして、ここでこの全体の事務の調整を行っております。
真ん中の「調査結果」の欄を御覧いただければと思います。先ほどロジック・モデルのところでも申し上げましたとおり、指標と施策・事業との関係が必ずしも明確になっていないということがございまして、今回私どもでそのようなロジック・モデルを作成するということになったわけでございますが、そのような施策・事業と指標との関係、体系化が必ずしも明確となっていないというような状況がみられました。そのため、右側の方、「評価(課題)」に記載をしておりますが、このようなワーク・ライフ・バランスの推進について、施策・事業の体系化を進めていただきたいという方向で整理をしていけたらと思っております。
続きまして、その下の2つ目の丸のところでございますが、「仕事と生活の調和連携推進・評価部会等の運営状況」という欄でございます。先ほど、憲章あるいは行動指針を官民のトップ会議で決定をしたということを申し上げましたが、毎年のフォローという観点で、このワーク・ライフ・バランスの連携推進・評価部会というものが有識者と政労使という形で構成をされており、下部機関的な位置付けになると思いますが、そのようなものが設置、運営をされているということでございます。
この開催状況は、年数回開催しておりまして、ここで指標の動向の把握、先ほどの参考資料7に指標の動向でありますとか、実現度指標を掲載しておりますが、このような動向の把握ですとか、あるいは数値目標の見直しといったようなことを行っているわけでございます。しかしながら、取組の効果の把握・検証あるいは政策への反映といったようなところは、必ずしもここでは行われていないということが分かっております。このようなことを踏まえまして、評価部会、連携推進会議の運営について、そのような点の改善を図っていっていただけたら良いのではないかと考えているところでございます。
続きまして、2ページの下の欄から「V 指標(数値目標)及び国の施策・事業の有効性等」というところでございます。今回、最初の3行に書いてございますが、14指標のうち、指標の有効性、施策・事業の有効性、効率性の観点から、課題が見出されたものを主として記載しているということでございます。なお、「時間当たり労働生産性の伸び率」については、国の施策・事業というものが必ずしも登録をされていないという状況下でございましたので、今回、特に評価は行っていないという状況でございます。
初めに、「就業率及びフリーターの数」の関係でございまして、数値目標としまして参考資料7の1ページにあるとおり、年齢階層ごとの就業率、あるいはフリーターの数の減少といったところを掲げております。ここでは、特に指標の有効性の観点から課題が見出されたというようにしておりまして、(1)、(2)のところは数値の動向でございますが、特に(3)のところで「不本意非正規の現状」という形で紹介をさせていただいております。
内閣府のワーク・ライフ・バランスに関する調査結果でございますが、非正規の女性でワーク・ライフ・バランスが図られていないと考えている層ほど就業形態を変えたいとする者が多いという結果でございましたり、あるいは直近の平成24年6月の雇用戦略対話の合意ということで、「若者雇用戦略」が取りまとめられておりますが、特に不本意非正規を減らすことができるようにフリーターを減らすということであれば、自ら望まずに非正規になっているような労働者を減らすというところに重点を置いて取り組むべきではないかという方針が定められていましたり、それから今回我々が行った就業者アンケート調査の中でも、非正規労働者に占める不本意非正規の割合といたしまして、男性で5割、女性では3割というような状況がみられたりしているということでございます。現在はフリーターの数だけを数値目標として設定しているわけでございますが、実現可能性も含めて非正規雇用に関する現状、あるいはそうした中に占める不本意非正規の状況というようなことも把握・検証するような形で、指標の補足的な追加ということを検討したらどうかというようなことを考えているところでございます。
続きまして、ページをめくっていただきまして3ページでございます。「制度の概要等」のところに記載しておりますが、週労働時間60時間以上の雇用者の割合を減少させる、あるいは年次有給休暇の取得率を改善するという目標についてでございます。ここで取り上げておりますのは、労働時間等設定改善推進助成金という厚生労働省の事業でございまして、これは労働保険特会を財源といたしました、主として中小企業団体等に対して、その傘下の事業者に対し、様々な労働時間等の改善を図るための指導等を行った場合に、その経費を助成するという事業でございます。
真ん中の「調査結果」のところを御覧いただきますと、ロジック・モデルという観点でいうと、科学的な検証という形ではありませんが、一応、発現経路と各指標が論理的につながるということに加えまして、事例分析の結果ということで、私どもの各都道府県にある管区局所で調査をした労働局の管内において、この助成金を受けた事業者団体の状況を調査したところ、ここのiからiiiまでのような調査結果が得られています。労働時間の削減、あるいは有給休暇の取得率ということでは、ほぼ9割近い団体において効果が上がっていたり、その改善状況も全国平均を上回るような改善がみられたりというようなことがございます。なお、この助成金の支給実績は、平成23年度で全国14団体793事業場ということでございますので、全国のそのような事業者に対する割合という意味では、極めて小規模な事業内容だということでございます。
このようなことを踏まえまして、右側の「効果」の欄でございますが、この助成金事業そのものは一定の効果がありと推察をされるということでございます。しかしながら、今申し上げました事業規模との関係で、寄与の度合いは限定的ということを評価内容としております。
また、「その他の事例等」のところに記載をしておりますのは、現地調査の結果、事業の実施状況等をみて改善が必要と考えられるところを記載しておりまして、毎年この助成を受ける受給団体が減少傾向にあるというような状況がみられておりますので、実際に必要としているところがしっかりとこのような助成金を受けられるというようなことで、より効果的な事業となるように見直していく余地があるのではないかと考えているところでございます。
続きまして、「メンタルヘルスケアに関する措置を受けられる職場の割合」の欄でございます。ここで考えられている目標は、メンタルヘルスケアに関する措置を受けられる職場ということで、各事業所において何らかのメンタルヘルスケアに関する取組を進めていただくということでございまして、ここで取り上げております事業といたしましては、メンタルヘルス対策支援センター事業という厚生労働省の事業でございます。このメンタルヘルス対策支援センター事業と申しますのは、各都道府県にこのセンターを委託によって設置をいたしまして、主として事業者からの相談を受け付ける、また必要に応じて専門家を個別事業所に訪問させて、様々な支援を行うということでございます。
まず、真ん中の欄の「指標の有効性」でございますが、(1)のところに記載しておりますとおり、このようなメンタルヘルスケアに関する措置を受けられる職場の割合は増加傾向にございます。一方で、実際の労働者の状況でいいますと、このような仕事のストレスによる精神障害という形で、労災認定をされた件数は毎年増加している状況にございます。また、別の厚生労働省の調査でございますが、過去1年間にメンタルヘルス上の理由で1カ月以上の長期休養をした社員がいる、あるいは退職してしまった労働者がいるというような事業所を把握しております。このようなことを踏まえまして、事業所にそのようなメンタルヘルスケアに関する取組を進めていただくということに加えて、そのような労働者が実際にどのような状況にあるかということも踏まえたようなアウトカムに着目した指標が考えられるのではないかと考えているところでございます。
また、「施策・事業の有効性」というところでございますが、このメンタルヘルスケアの関係でいいますと、メンタルヘルスケアの措置の有無を事業所アンケートの結果の中で把握しておりまして、そのようなメンタルヘルスケアに関する措置の有無と、センター事業の利用の有無についての関係をみますと、有意な正の影響があるということが分かっております。また事例分析の結果を御覧いただきますと、各事業所におきましてセンターの説明会等に参加したことが、このようなメンタルヘルスケアについて取り組むきっかけになったというような例も把握しております。単純にセンターの利用の有無とメンタルヘルスケアの措置に関する有無という、どちらが原因でどちらが結果かというのは、必ずしも統計分析では分かりませんので、少し事例分析等も把握をしながら施策の効果として、そのような取組が進んでいるという側面も把握をしているということでございます。
このようなことも踏まえまして、一応、メンタルヘルスケアに関する措置を受けられる事業場を増やすという上で、この事業は一定の効果がありと推察をしておりますが、真ん中の欄の括弧書きに記載をしておりますとおり、訪問支援の件数も25,715件というのが年間件数でございますので、寄与の度合いは限定的と評価をしております。
「その他の事例等」のところに記載をしておりますのは、実施調査の中で労働局とセンターとの連携が十分図られていない、労働局の様々な取組の中で、このようなメンタルヘルス対策に関する事業上のニーズを把握しながら、その点がメンタルヘルス対策支援センターに十分伝わっていない。その結果として、訪問支援が行えていないというような例が見受けられました。また、中小企業が大企業と比較してどのぐらいメンタルヘルスケアを進めるニーズがあるかというのはいろいろあるかと思いますが、この事業そのものの周知度という意味でいうと、中小企業における認知度が低いということがございますので、少なくとも周知は図った上で、必要なところにサービスが行き届くというような形での改善というのは必要ではないかと考えているところでございます。
続きまして、在宅型テレワーカーの数ということで、多様な働き方・生き方の選択という観点から、在宅型テレワーカーの数を増やしていくというのが目標に設定されております。このための事業といたしまして、厚生労働省や国土交通省においてテレワークの普及推進のためのセミナー等を実施する事業を行っております。
まず、真ん中の欄の「指標の有効性」の関係でございますが、この目標としております指標の算定方法といたしまして、国土交通省の統計を用いた推計値が使われているわけでございます。(注)のところに書かせていただきましたとおり、この統計におきましては在宅型テレワーカーの定義というものがここに記載のとおりとなっておりまして、この定義どおりの調査ということでありますと、必ずしも在宅型テレワーカーに含まれる可能性がないような方が含まれてしまうのではないかと考えられるところでございまして、そのような点を踏まえまして、把握するための算定方法について見直しが必要なのではないかと考えているところでございます。
また、「施策・事業の有効性・効率性」という観点からいいますと、事例分析の結果といたしまして、同じような地域で、若干観点は違うにしても同じようなセミナーを開催しているということがございましたので、両省による連携を図ることによって、より効果的あるいはより効率的に事業を実施できるのではないかと考えているところでございます。
続きまして、一番下、「短時間勤務を選択できる事業所の割合」を高めていく目標に関してでございます。ここで取り上げております施策・事業といたしましては、均衡待遇・正社員化の推進奨励金あるいは助成金ということで、途中で名称等が変更になっておりますが、基本的には同じ内容の事業でございます。実際に、企業が短時間正社員制度を導入して、その制度の利用者が出た場合に、出た人数に応じて、最大10人だと承知をしておりますが、奨励金を支給するという事業でございます。実際に短時間正社員制度を導入した上で、その制度を利用した社員が出た場合に助成金を支給するという事業でございますので、ある意味、助成金が支払われれば短時間正社員制度の導入が進むという関係がございます。一方でここに記載しておりますとおり、全国での支給実績は極めて少ない状況でございますので、右側に記載をしておりますとおり、一定の効果はありと推察はされますが、施策・事業の寄与の度合いというものは限定的と評価せざるを得ないかなと考えております。
また、「その他の事例等」に記載をしておりますのは、短時間正社員制度を利用したいという就業者は非常に多いということが分かっております。しかしながら、必ずしも制度を導入している事業所は多くないという状況でございまして、本事業も実施率が低く認知度も低いという状況がございますので、いろいろ制度の周知等を図りまして、実際にそのようなものを導入できるような事業所が利用できる形で、運営の改善を図っていくことが必要ではないかと考えているところでございます。
最後の4ページ目を御覧いただきますと、上の方が第1子出産前後の女性の継続就業率を高めていく、あるいは男性の育児休業取得率を高めていくという目標でございます。ここで取り上げております施策・事業でございますが、次世代育成支援対策、あるいは育児・介護休業法の関係、あるいは両立支援について都道府県労働局等が事業主等に対して、様々な制度を周知・啓発、指導等を進める取組を主として取り上げております。
真ん中の「調査結果」を御覧いただきますと、今回の事業所アンケートの中で、年間の出産した女性社員の数を把握した上で、その女性が年度末において継続就業しているかを把握いたします。そして、その当該事業所の女性の継続就業率を把握した上で、その事業所が育児休業制度を設けているか、あるいは労働局からそれらの制度についての周知や指導等の支援を受けたことがあるかどうかについて、統計分析を行っておりまして、これらについては有意な正の影響があるという結果を得ております。
また、それを補足するといいますか、関連する事例分析の結果といたしまして、労働局に対する調査の結果といたしましては、一般事業主行動計画、次世代育成支援対策推進法に基づいて、常時雇用する労働者が101人以上の事業者につきましては、この計画の策定が義務付けられているわけでございますが、ほぼ100%を達成するという状況まで来ている。あるいは育児・介護休業法に基づいて制度の規定の不備等の事案について、いろいろと労働局が指導した場合に是正・改善が図られる割合が約96%あるというようなことが分かっております。
また、事業者に対する調査の中では、法定を上回る育児のための制度を導入したというような事例でありますとか、また、そのようなものの背景といたしまして、一般事業主行動計画を策定する中で、そのような取組をするきっかけになったというような事例でありますとか、あるいはそのような取組の結果として育児休業取得率が100%、離職率の低下等の社員の定着化、あるいは男性の育児休業取得者が増加したといった成果が出ているというような事例を把握しております。
このようなことを踏まえまして、施策全体の評価といたしまして、施策・事業がこれらの指標について一定の効果があると推察をするとともに、その寄与の度合いにつきましては、労働局の指導等の業務でございますので、限定的と推察をしているということでございます。
また、「その他の事例等」のところに記載しておりますのは、一般事業主行動計画が義務付けられたところにつきましては、先ほど申し上げたようにほぼ100%まで来ているわけでございますが、努力義務となっております小規模事業者については、必ずしも進んでいない。これはある意味当然ではありますし、労働局も主として義務付け企業のところから対応してきたということがあると思いますが、今後、努力義務のところにどのように策定等を働きかけていくか、あるいは育児休業制度につきましては、既に全ての事業者において制度が完全に義務付けられているわけでございますが、特に中小事業者においては、その規定整備が進んでいないという状況がございますので、このような改善を進めていく必要があるのではないかと考えているところでございます。
最後に、「保育等の子育てサービスを提供している割合」に関してでございます。ここでは主として2つの指標が設定されておりまして、3歳未満児に対する保育サービスという指標と、小学校低学年における放課後児童クラブという指標でございます。
まず、保育サービスの関係では、指標といたしまして、3歳未満児の人口に対して保育サービスを受けている児童数の割合を目標に設定しております。また、取り上げている事業といたしましては、このサービスとしては認可保育所というのがメインの施策になるわけでございますが、本調査におきましては家庭的保育事業を調査対象として取り上げております。
まず、指標の関係でいいますと、保育サービスで目標としている指標といたしましては、認可保育所に加えまして家庭的保育や事業所保育、あるいは認可外保育といったもの、あらゆる保育サービス全般が向上していく目標になっているわけでございますが、毎年の政策効果の中で把握する指標の算定方法といたしましては、認可保育所の利用児童数のみを計上していることになっておりまして、目標としている指標と実際に把握しているものとの間に若干そごがあるということでございます。
続きまして、「施策・事業の有効性」の関係でいいますと、事例分析の結果といたしまして、家庭的保育事業の利用児童数は増加傾向にあるわけでございますが、認可保育所と比べまして、利用児童数は極めて少ないということでございまして、実際には2,687人という状況でございます。
「評価」といたしましては、一定の効果はありと推察をしておりますが、寄与の度合いは限定的という評価にいたしております。
「その他の事例等」ということで、実際に地方公共団体等を調査した結果といたしまして、サービスを拡大していくネックといたしまして、家庭的保育者の「なり手」の確保が非常に難しいということが寄せられております。これにつきましては、一部の優良な事例等もございますので、そのようなことの周知なども含めて施策・事業の一層の普及に向けた改善の余地があろうかと考えているところでございます。
最後に、「放課後児童クラブ」の関係でございますが、施策・事業といたしましては、放課後児童健全育成事業ということで、基本的に運営費の3分の1を助成する事業を取り上げております。事例分析の結果といたしまして、この補助金を受けて活動している放課後児童健全育成事業は約9割ということでございまして、基本的にはこの運営費助成がないと、この放課後児童クラブの事業が成り立っていかないところがございますので、評価につきましても一定の効果あり、寄与度につきましても相当程度寄与するという評価を行っております。
また、「その他の事例等」に書いてありますのは、指導員の確保等が困難だという、家庭的保育とほぼ共通の課題があることに加えまして、実施場所の確保に苦労しているという事例も多くみられております。特に、学校、教育委員会とこの事業の主担当が福祉部局ということで、分かれているということもございまして、その辺の連携の確保が重要だということでございまして、その辺の改善も求めていく必要があるのではないかと考えております。
以上が個別事業の評価でございますが、先ほど飛ばしました1ページ目の「III 政策効果の発現状況」での、全体評価でございます。真ん中の「調査結果」を御覧いただければと思いますが、今、様々な数値目標についてロジック・モデルの作成結果、あるいは統計分析や事例分析における施策の事業の有効性の評価の結果等を踏まえまして、国の施策・事業の実施によって数値目標の達成に一定の効果があると考えておりまして、政策全体、これは国や地方公共団体、企業、労働者と様々なものの取組を含めた政策全体によっても、一定の効果があると評価できるのではないかと考えているところでございます。
このようなことを前提といたしまして、14指標の動向をみていきますと、14指標のうち、行動指針策定時以降の動向が比較可能なものが13指標ございまして、そのうち数値が多少とも改善しているものは11指標ございます。また、2ページ目を御覧いただきますと、数値の改善がみられないものが2指標、それから最新値が更新されていないことによって、動向が把握困難なものが1指標ございます。このようなことを踏まえまして、全体の評価ということで、比較可能なもの13指標のうち、多少とも改善しているものが11指標みられることから、政策全体、これは国、地方公共団体、企業、労働者、国民全ての取組を含めたものを政策と称しているわけでございますが、これらの取組による一定の効果が反映されたものと推察をするという全体評価にいたしているところでございます。
少し駆け足になりましたが、私からの説明は以上でございます。
【谷藤分科会長】 ありがとうございました。非常に多岐に及びますが、それでは今の矢田評価監視官からの説明につきまして、御質問並びに御意見がございましたら御発言願います。前多委員、どうぞ。
【前多臨時委員】 今回のワーク・ライフ・バランスの政策評価ですが、ロジック・モデルを作成して統計分析、それから事例分析を行ったということで、まず非常に高く評価したいと思います。
少し細かく見ていくと、例えばロジック・モデルですが、これは各指標について、政策の目的があって、それから数値目標があって、それで施策・事業という形で、ロジックを作っていくわけですから、これが明確になっていないというのがそもそも大きな問題だと思います。(注)のところに、必ずしも明確となっていない現状がみられたと書かれていますので、ロジック・モデルに関しては全ての施策・事業について、なければならないものだと認識しています。統計分析については、施策・事業によって性格がありますので、なかなか手間もかかるということだと思います。全ての事業にということではないと思いますが、ただこのような形で統計分析ができると、より客観的な形で評価ができるということで、これもぜひもう少し広く進めていただきたい。事例分析は、多分ほとんどの施策・事業において行うことができるのではないか、つまりロジック・モデルと事例分析はもっと広い範囲で今後進めていっていただきたいと思います。
それで一つ、統計分析について、これは様々な機会がある度に発言していることですが、例えば今回14指標のうち、1指標が比較できない、多分生産性のところだと思いますが、単年度で分析をすると、アンケート調査等で分析した場合、どうしてもクロスセクションのデータですので、大体マクロ的な要因をコントロールできず、ここで生産性に対する影響を出そうと思っても出ないわけですね。
海外の研究事例を若干調べたところ、このようなワーク・ライフ・バランスに関して、生産性に関する分析というのもかなり積み上がっていて、おおむねプラスの影響が出ています、ロバストに。そのデータを見ると、おおむね5年から10年ぐらいの時系列データがないと、やはり外部的なマクロの経済要因をコントロールできないので、ワーク・ライフ・バランス、企業の施策を行っていることと、その生産性に対する影響というのは、それぐらいの時系列的なデータがないとどうしても難しい、統計的に有意に出ないわけですね、ロバストに。
どうしても予算が単年度だと、単年度ごとにクロスセクションのアンケートを行うということになってしまいがちですが、今のお話だと、例えば内閣府の仕事と生活の調和推進室とか、そのようなところで少し長期的な視野も入っているということなので、そのようなところで例えば、最近インターネット等の調査が、手をそれほどかけずにできます。お金がかかりますから、それなりの予算が必要ですし、全てにというわけにはいきませんが、ある程度重点的な施策があれば、そこにある程度長期的な視点でデータを、同じようなアンケートを毎年やって、2年、3年とためていって、より統計的な分析が厳密にできるような形でお願いできればと思っています。以上です。
【谷藤分科会長】 ありがとうございます。今の御意見に関して何かございますか。矢田評価監視官。
【矢田評価監視官】 私どもも今回、ワーク・ライフ・バランスの政策評価ということで、まさに1年がかりのプロジェクトで実施したわけですが、まさにその中で1回限りのアンケート調査をやって、その中でどのように統計分析をやるか。おっしゃられたとおり、特に景気の動向みたいなものを把握できないかということで、御覧いただきますと増収増益か増収減益かというような、一応4つの指標みたいなものをアンケート項目の中に入れて、少し企業の経営状況も把握できればと思って入れたところがあったわけですが、確かに今言ったように、長期のトレンドみたいな話は、まさに1回限りの調査でできなかったところがあります。
また、多分おっしゃられた話というのは、行政評価局の1回限りの評価の中でやるというよりは、むしろ取りまとめ部局である内閣府でできないかということだと思いますので、そのような御意見もあったということは内閣府にも伝えていきたいと思います。ありがとうございます。
【谷藤分科会長】 それでは、田中委員からどうぞ。
【田中(弥)臨時委員】 ありがとうございます。大変お疲れさまでした。
多分、先生方の様々なインプットもあって、ここまで持ってこられたということは敬意を表したいと思います。しかしながら、提言が幾つか書かれていると思いますが、私はもう少し強く言っていただきたい点がございます。それはこの評価部会、連携推進会議の役割であります。ここが14の指標を所与として、givenとして、それを追いかけるだけがこの評価委員会の本当の役割なのかというのは疑問でありまして、そもそもこの政策自体の妥当性というものを審議していただきたいし、そうであれば、この14の指標が本当に、この現状において適当なものであるのかということ自体も問いかけてほしいというのが1点です。
それからもう一つは、これはワーク・ライフ・バランスについては予算の措置がなされていない施策の一つだと聞いているのですが、これが仮に予算措置がされたときには、私はかなり危険性の高い施策だと思います。なぜならば、これは何でも入ってしまいます。復興予算でいろいろと議論をされていましたが、今の政権の予算組み替え制度が入ったことによって、漠然とした重点分野に関しては、このようないわゆる種々雑多な施策が盛り込まれて、予算が膨張しているという現象が起きていますので、ワーク・ライフ・バランスというのはいかにもその餌食になりそうな施策です。そのような意味でも、この評価部会はきっちりと施策の妥当性と、それからガイドラインがしっかりしているのかについてもみていただきたいという提言は、この委員会からぜひしたいということであります。
【谷藤分科会長】 では、森泉委員からどうぞ。
【森泉委員】 私も統計的な政策評価を行ったということは大変大きな前進だと高く評価したいと思います。それを踏まえて、先ほどもお話がありましたが、ロジック・モデルを総務省で作っても良いとは思います。しかし、まず統計的な手法では、これはロジック・モデルという表現をしていますが、仮説検定の話です。何を仮説に立てて、何を検証するかということをみるためには、まず指標を作った人たちが、しっかりと仮説を立てていただきたいということが大前提です。
それから第2点です。もちろん何回も調査する必要はあります。この結果もあらかじめ見せていただきましたが、改良点はたくさんあります。その中でロバストだと思うのと、予期される方向にあるものを取り上げたわけです。政策評価の統計学というのは現在、大変進歩しておりますので、それらをもう少し取り入れて頂きたいです。単純な回帰分析でもよろしいですが、いろいろな方向があるかと思います。
第3点は、このアンケート調査は大変お金がかかり、総務省統計局のアドバイスもいただいたということですが、実は回帰分析をする上でも、後からこの変数があれば良かったということがいろいろな所であります。アンケート調査をするときに、統計的に、あるいは統計学的な処理をするときに、この変数があれば良かったということは多々ありますので、そこももう少しアンケート調査をする前に検討が必要だと、調査項目に関して思いました。
それから、他省庁のデータを使用するのは、ハードルが高いようですが、それはぜひしていただきたい。例えば、厚生労働省はパネルデータを持っているわけですから、それでワーク・ライフ・バランスに関するデータを捉えることができます。それから総務省でも就業率、または失業率などの個票を提供していただければ、5年ごと、あるいは毎年、毎月データがあるわけですから全然違ってきます。省庁間で連携をして、そこで把握できない部分をアンケート調査で把握するということになると思いますが、インターネット調査には賛否両論あり、まだよく分からない段階だと思います。従いまして、厚生労働省や総務省統計局のデータを利用させていただく、個票を活用させていただくという方向に持っていけないものかと思います。以上です。
【谷藤分科会長】 ありがとうございました。
そこのところで、他省庁のデータ利用について、何か厚生労働省からの指摘がございましたら、どうぞ。
【矢田評価監視官】 実は、事前にご相談をさせていただいたときにも同じようなお話をいただいて、厚生労働省の調査結果を借りることができないかという話を実際に交渉した経緯がございます。この回帰分析のためというのが、統計調査の二次利用の目的になっていないということがあって、要するにこのような統計分析をするために必要だということをしっかり説明をした上で借りなければならないのですが、単純に回帰分析ということでは借りられない。したがって、既存の公表されている統計とは別のクロスをかけるとか、そのようなことを目的にした上で借りてくるという非常に手間のかかる話がありました。そこをいいかげんに審査してしまうと、厚生労働省も総務省の統計部門から怒られてしまうというようなことがあって、国同士の機関なので、融通よく貸してくれるということにはなかなかならないという実態が、実際に統計を利用させていただくという過程で若干ございました。
なかなか時間もない中で、十分な調整ができなかった部分もあるとは思いますが、今回の事前の調査の中では、そのようなやりとりがあったということでございまして、何ができるのかというのは今直ちに持ち合わせておりませんが、また次に何かあるときに向けて、そこら辺をどうするのかというようなことは少し検討が必要かなと思っております。
【谷藤分科会長】 それでは藤井委員、どうぞ。
【藤井委員】 今まで出た統計分析の関係で、先生方の御指摘はおっしゃるとおりだと思いますが、追加でお願いできればということを申し上げたいと思います。
一つはアンケートで対象になったものについて、回帰分析はこのような結果だったということは分かりましたが、施策全体を見ることが本来の目的だと思いますので、この統計分析の結果を踏まえたときにどのような仮説が立てられ、また、全体の動向としてはこのようなことが推し測られるのかというところまで持っていけないのかなと思います。全体を拝見しますと、個人を対象、あるいは個人に着目して成果や効果を見ていくタイプのものと、事業所を対象としているものが混在していますので、そのあたりも多少整理していただければと思いますが、特に事業所の場合、規模の影響が共通に出ていますので、そこから推し測られることが全国ベース、あるいは全体ベースでもあるのではないかと思います。
資料を拝見しますと、最初にサンプルを取るときに、業種や規模をいろいろ選んでいるということですので、回帰分析でこのような係数が有意であるということも、もちろん第一歩ではありますが、もう少し上位概念のストーリーとして、どのような政策効果の発現ルート、あるいは因果関係なりメカニズムが考えられるのかということで、全体の施策に対する評価をもう少し抽象度を上げた形で言えないか、それが整理できますと、御指摘があった厚生労働省や他省庁の統計につきましても、この点をこのような視点から検証したいという目的が絞られますし、さらに別の角度からみてもこのような仮説が成立すると考えられる、評価としてはこのようなことが言えるということにつなげていけるのではないかと思います。
例えば、こちらで出ている「短時間勤務を選択できる事業所の割合」など、幾つかの質問については業種や規模による違いが想像されるものもありますが、そのあたりを回帰分析の結果は第一歩として、もう少し抽象度を上げて、あるいは元のサンプルとのクロスをとって少し整理するといったことから、効果をより普遍的な形で整理できないのかなと思いますので、もしこのようなことが明確にできたら、他省庁の統計の使用をお願いしやすいのではないかとも思います。アンケートの範囲ではこうでしたということだけではなく、全体の施策としてみればこうだったということをより明確に指摘できるのではないかなと思います。
一つ質問は、参考資料7の7ページ、8ページに全体の体系ということで一応ありますが、それは元々、各府省が政策実施の時に作っていたものでしょうか。以上です。
【谷藤分科会長】 それでは、お答え願います。
【矢田評価監視官】 一番最後に7ページ、8ページとおっしゃっていましたが、これは実現度指標のところの話ですかね。実現度指標については、内閣府で数値目標とは別に、全体のトレンドを把握するという観点から個人の実現度指標、それから3つの社会の実現度指標、基盤整備の指標というものを3つ出して、いろいろな数値を合成して、進展度合いを公表しているという部分についての図表が、7ページ、8ページに載っているということでございます。
それから、その前のご質問の中でも、今回、我々がアンケートを設計する段階でも、おっしゃるとおり業種別であったり地域別であったりということを委員の先生から、御指摘をいただきましたし、私どももそこは前向きに検討するということで引き取ったと承知をしております。実際に我々はこれを一般統計調査として承認いただいたということで、調査を実施し、またこれを外部の業者に委託をする中で、当初予定していたものを入れていく中で、予算をかなり超えてしまうことが明らかになって、そのような状況で例えば業種別を入れると客体層を増やさなければいけなかったり、あるいは都道府県別にすると客体層を増やさなければいけなかったりする。そうするとやはり相当コストがかかる中で、予算との関係でかなり設問項目を結果として絞らざるを得なかったというようなことがございます。
そのような意味でいうと、より細かいことを言うために、様々な統計分析をアンケートの中でやっていこうと思うと、その部分の制約をどのように乗り越えるかも課題としては私どもも持っております。いろいろな仮説の中で検証するという中では、やはり事前の準備が相当必要ですが、限られた時間の中で作ったということがあって、仮説の立て方、あるいはそれをアンケートの中でどのように把握をするかというところで、もろもろの課題があったというのは実は正直感じているところがございまして、そのあたりをどうするか。また、別の政策評価でそのようなアンケート、あるいは仮説に基づいてというときに、どのように仮説を立てるか、どのようにアンケートを設計するかというようなところは、相当短い期間の中でやらなければならないということがありますので、そこは課題かなと正直思っております。
【藤井委員】 確認ですが、アンケートの概要には事業所を地域別や規模別にしたと書いてありますが、この属性はアンケートの答えでは分からなかったということでしょうか。
【矢田評価監視官】 そうですね。ここで書いてある地域別というのは、特別区、政令市とそれ以外の地域というところで分けて、一応全体が無作為抽出になるように抽出したということです。私が今申し上げたのは、47都道府県ごとのデータがとれないかということについていうと、いろいろ統計局と御相談をさせていただく中で、都道府県別にとる場合には、1県当たり大体このくらいの客体数が必要だという話をしたときに、なかなかそこまでは予算上とれないなという話でありましたり、やはり業種別だとその業種についてこのくらいの客体数が必要というところがあって、調整の方法なども教えていただいたりしながらやっていましたが、そこがかなり制約としてはあったということでございます。
【谷藤分科会長】 門脇委員、どうぞ。
【門脇臨時委員】 ワーク・ライフ・バランスと云えば、まず働き方の多様化ということが思い浮かびます。ただ、日本では働き方の多様化の環境が厳しいことや、特に最近では、正規雇用者を増やすべきであるという考え方が非常に強い。そういう状況下での、このワーク・ライフ・バランス施策は、基本的に正規雇用者に焦点を当てた、まさに日本的なワーク・ライフ・バランスのように感じます。
このような施策には、労働生産性の向上が期待されていなければ、雇用側に自立的なインセンティブが働かないのではないか。当初は助成金をつけたとしても、生産性が上がるのだということになれば、自立的に社会に広がっていくはずである。しかし、これによって生産性が非常に落ちるというようなことがあれば、助成金が出ていって、負担だけが残る。これはすばらしいアンケート調査ですが、雇用側のロジックも考え合わせていかなければ、コストだけ費やして、現実には受け入れられないことになってしまわないか危惧します。
第二に、この施策の中身を見ると、例えば、メンタルヘルスの問題や、保育サービス、待機児童のように、いろいろな省庁で、重複している仕事がかなりあるように思います。その意味で、もう少し絞り込んで、整理をする必要があるのではないか。これはある意味では施策を精一杯盛り切ったという感じがします。本当に我々の社会が考えるワーク・ライフ・バランスというのは何であるのか、それが日本の社会の将来をどのように導いていくのか、そのようなことをもう少し整理した方が良いのではないかと思います。
【谷藤分科会長】 別に回答は要りませんか。
【門脇臨時委員】 要りません。
【谷藤分科会長】 それでは、城所委員、どうぞ。
【城所臨時委員】 基本的に皆さんのおっしゃるとおりだと思います。ワーク・ライフ・バランスの政策評価は何が難しいかというと、もう何人かの方が指摘されましたが、ワーク・ライフ・バランスの定義がないままに議論しているということがあると思います。そのような中で門脇委員のおっしゃることは本当にもっともだと思いますが、ここで総務省が政策評価をなさるとすると、定義がない現状でやらなければならないという御苦労もあるというところも分かっておかなければいけないのかなと思います。ただ、私自身、先ほどから出ているこの14の指標が本当にワーク・ライフ・バランスを表しているかどうかかなり疑問ですので、そのようなところまで踏み込むということであれば、やはりこれでワーク・ライフ・バランスが測れるのかということを言わないといけない。どうもここの資料2−1をみさせていただくと、そうではなくて、この14の指標にはとりあえず手をつけずに、これが合っていると仮定して、どのように発現されているかを見ているのがこの政策評価なのではないかと思います。
それで、先ほどのお話で2ページに、実は「「時間当たり労働生産性の伸び率」については、数値目標に与える国の施策・事業がみられず、評価が困難であることから、評価対象から除外」と書いてありますが、これからすると、基本的にこのワーク・ライフ・バランスに関連する政策は、全体としては意味がなかったと、これで終わってしまいます。それを言うというのも一つだと思いますが、労働生産性に影響を与えない政策を実施して、一体何をしているのかということは一つの論点としてありますが、それは言わないのでしょうか。
あと全体をみさせていただいて、やはり国民にアピールするのであれば、幾ら資源がかかって、何が得られたかというのを示すと、もう少し分かりやすいのではないでしょうか。予算をこれだけ使ったが、全体としては労働生産性の伸び率はゼロでした。効率の意味からは改善されなかったが、各指標からみて何が起こったかというのをみなければいけません。しかし、そうすると結局景気の動向とか全てそのようなものを除かなければならないので、かなり難しくなると思います。
もう一つは、私はロジック・モデルに関してかなり批判的ですが、森泉先生がおっしゃったようにロジック・モデルというのは仮説検定の仮説に当たるというところで、3ページのところに「ロジック・モデルの作成結果、本施策・事業は、本指標に対し影響あり」と書いてあります。しかし、それはあり得なくて、仮説を立てたから影響があるというわけではなくて、それを検定して認められたら影響があるということです。今の考え方は自分の頭をこのように整理したから正しいというのにすぎないので、ロジックとしてはあり得ないと思います。
結局、この委員会でどこまで言うかという話だと思いますが、ワーク・ライフ・バランスというのがしっかり定義されていない中で、どのように考えていったらいいのか。私自身、今子供が2人いて子育て中ですが、一番望む政策というのはここに書いた政策ではなくて、世帯の収入を合算して子供を入れた数で割る、つまり1人当たりの収入に税金にかけてくれれば、ほかは全部必要ないのではないかと私は最近思っていて、例えば保育所でも、結局それは官が提供するのは無駄ということです。それならば、税制の面でもう少し調整して、民間が供給するサービスを自由に買った方が、経済学者の発想かもしれませんが、私としてはそれでいいのではないかと思っています。
このワーク・ライフ・バランスというのは、先ほども田中委員がおっしゃったように、ものすごく筋が悪い政策だと思います。この曖昧な傘の下に全部の政策を突っ込んで、予算が膨張していく政策だと思うので、踏み込むのであれば、労働生産性の伸び率に影響を与えない政策は意味がないのではないかというような議論でいくとか、何をこの評価でされたいのか、されるときにはやはりロジック・モデルではなくて、客観的に何が言えるかということをもう少し念頭に置いて組んでいただければと思います。
【谷藤分科会長】 ありがとうございます。大変根本的な問題にかかわってきますけれども。
藤井委員、どうぞ。
【藤井委員】 今の労働生産性が上がらなければ何の意味もないというところに多少違和感があります。政策目標が曖昧であるなどの議論に反対するものではございませんが、一応その政策は与えられているということを前提にした場合でも、多様な働き方・生き方が選択できるということは単年度の労働生産性が伸びる、伸びないということを目指しているタイプの話ではないと思います。みんなが生活の形や選び方を変えることによって、中長期の労働生産性などのパスが変わってくるという話をしているのだと思いますので、数字を見て、労働生産性が今年上がっていなければ、一切の政策がこれに関して無駄というようなことは言いすぎではないかと思います。
【城所臨時委員】 いや、長期にですよ。
【藤井委員】 元の政策の趣旨からいって、やや異なる議論ではないかということを一言だけ申し上げたいと思います。
【谷藤分科会長】 立花委員、どうぞ。
【立花臨時委員】 ありがとうございます。私も最初の田中弥生委員が、下手すると予算の要求の餌食になりかねないのではないかということをおっしゃって、私も同感の念がありまして、つまりこの政策評価は非常に聞けば聞くほど、より難しいなという感じがしております。そこで質問と意見を参考までに申し上げたいと思います。一つは今の御議論にありましたが、影響があるとかないとか、それは世の中ですから全て諸法無我ということで、大小様々な影響があり得るわけで、それが影響あるからといって、やるべしということにはなりません。特に各府省は、予算の調査票から様々な施策を引っ張り出したということをおっしゃっていましたが、内閣が掲げた大政策に我が省のこの施策はこのような面で関係あるということで、みんなそれに登録しがちです。したがって、下手すると単に各府省の予算要求の応援団になりかねません。別の形で応援することになりかねないということで、つまりこれの一部は特別会計ですから、一般会計から出ている金もあるかもしれませんが、何とか補助金みたいに特会から出ている、労働保険特会から出ているとか、あるいは何とか促進センターとか、まさによく言われる天下りの何とかではありませんが、そのようなものになりかねない。そのような意味では、総務省にとって本家本元の行革にぶつかる要素があるわけで、そのような面で私は非常に影響があるということから、よってやるべしといった効果の流れがあると思います。私はこのロジックを非常に単純に考えています。
具体的なことを申し上げると、具体的な評価の中で、例えばテレワークの問題とか、あるいは短時間勤務を選択できる短期正社員の問題とか、これは単にお金の問題というよりも働き方の問題といいましょうか。特に、例えばテレワークの問題には、いわゆるみなし労働時間規制が適用されなくて、使用者側に労務管理が義務付けられていて、自宅で仕事をやったとしても何時から何時まで働いていたということを確認しなければならない。しかしながら、自宅でパソコンに電源入れたからといって働いているわけではなく、また切ったからといってその後働いていないわけではなく、なかなか確認しようがないわけです。各企業もそのような非常に難しい問題を抱えています。テレワークの導入に関連して、雇用管理の義務との、いわゆるそのような規制との絡みももちろんある。
それから、短期間の正社員の問題ですね。日本の労働規制の場合には、いわゆる学校の先生や看護師みたいに、例えば女性が出産で一時的に休んでいるという場合のそのような短期の働き方がありますが、最初から短期で、やめるまでずっと正規で扱うということになると、非常に雇用管理の面からも、果たしてそのような人たちにしっかりとフルタイムで働く正社員と同じような仕事を分けることができるのか、なかなか雇用管理の面から難しい。そのような雇用の、働く現場の問題もあるわけで、なぜ進まないのかということについて、単にお金が少ないからだという短絡的な話ではなくて、やはり皆様は行政評価のプロですから、そのような面で、低いのであれば、成果が上がらないのであれば、単純にお金が投じられないからだというのではなくて、やはり現場で問題の質、規制の問題があったり、あるいは国と地方との関係の問題などがあったりするわけで、そのあたりのところをぜひもう少し眼光紙背に徹していただけないかなというお願いです。
それから地方でも概要版のペーパーを見ていますと、例えば東京都みたいに認証保育所みたいな仕組みを持っているところはあります。ところが、ここでは認可保育所とか家庭の保育ママ的なものとか、そのような地方の取組というのは入っていないわけで、それはなぜなのか。単純にそれは入っているが、書かなかっただけなのかどうかそれは分かりませんが。
それからもう一つは、数値目標のところに、最後、評価監視官は総括的な評価を言われて、総じて14の指標のうち11ぐらいが改善していると言われましたが、私から言わせれば、誤差の範囲内なのではないかという言い方もできます。無理やり改善したからといって、多少0.1%上がったからといって、改善したとはとらないで、もう少しそのあたりは謙虚に見ていただいた方がいいと思います。
そのようなことで、私が評価は難しいと申し上げたのは、この評価委員の方々おそらく共通の考えだと思いますが、このようなお金を通じることももちろん大事かもしれませんが、マクロの経済政策、特にこの5年間GDPが530兆円から480兆円に減ってしまった、50兆円も減ってしまった。そうした中で働く現場でも様々な問題を抱えているわけで、そのような目標を実現するに当たって、新成長戦略を踏まえると、新成長戦略は、確か実質が3%で名目2%だとかという、それが前提になっているわけです。このような成長率もこの数値の前提にあるわけで、やはりそのあたりの新成長戦略を踏まえたものであるということをしっかり書いておいていただきたい。一番心配していることは、数字だけが一人歩きしかねないという点がございますので、そのあたりを御配慮いただければと思います。
【谷藤分科会長】 質問が1点か2点ありましたので、それだけお答え願えますか。
【矢田評価監視官】 ご質問にありました、確かに指標の中にいろいろありまして、私ども14の指標をみていて、特に就業率の話は、その個別の労働生産性の話のように、極めてマクロ経済みたいな話がワーク・ライフ・バランスの中に入っていて、ここは若干違和感があるところがあります。どうもいろいろと調べてみますと、ワーク・ライフ・バランスをいろいろ議論する中でも、単にワーク・ライフ・バランスということで労働者の処遇を改善していくという一つの話に加えて、やはり全体の経済をしっかりと持続可能なものとする中で、そのようなワーク・ライフ・バランスを進めていくという、特に政労使の合意という中で議論しておりましたので、多分そのような観点があったのだと思います。しかし、そのような観点の中で、例えば新成長戦略等に掲げられている就業率の目標だとか、1人当たりの労働生産性等をしっかりと高めながら、そのようなところでできたパイを労働者に回していくという中で全体が組み上がっているということなので、若干この2つの指標が就労による経済的自立が可能な社会、あるいは2番目、3番目にも若干重なるという中で、少し違和感があるような指標が入っています。政策効果の目標というところでは、若干そのような意味では違和感はありますが、そのようなことを両立しながらやっていくというメッセージなのかなと私どもも受け止めております。
確かに内閣府が作った資料等を見ますと、(注)のところに成長戦略と整合性をとって、これが入っているということが書いてありまして、今回我々が作ったときに、そこは確かに省いてしまったところがあります。注意したいと思いますが、元々の発想としてはそのようなことがあったということだろうと思います。
それから若干のコメントの中の認証保育所等の扱いについてです。保育サービス全体の中では「等」の中でくくられていて、明確にはなっていませんが、認可保育所、家庭保育、それから事業所保育や認証保育所も含めたいろいろな認可保育所以外の保育サービスというものは全て対象にはなっておりますので、目標としてそこは入っております。ただし、先ほど申し上げたように、厚生労働省が毎年把握をしている数字としては、認可保育所の動きだけを追っているというところがあったので、そこは指標と把握しているものが若干食い違っているということを申し上げたということで、これは施策の中には入っているということを申し上げたいと思います。
あと確かに14分の11のところはなかなか難しいところがあって、評価できませんとは着手した以上なかなか言えないところもあって、そこはなかなか苦労しているところではあります。どのように評価できるのか、するのかというところの表現については、いろいろ考えていきたいと思います。
【谷藤分科会長】 それでは、田中委員どうぞ。
【田中(常)臨時委員】 先生方から出た意見は、そのままフィードバックしていただきたいと思います。政策評価はそれがないと意味がないように思います。特に内閣府は、次のステージでは今のワーク・ライフ・バランスの指標についての議論をするはずですが、ここでやった政策評価が意見にならないのであれば、やる意味もないと思います。特に先ほどお話があったこの指標に関する仮説について、妥当性がなくて全く分かりません。特に全体のモデルというのは、私が思うには、雇用や給与が十分に確保できる一部の大企業のモデルでしかないですね。それはここで社会全体の目標と言っているのに、2割か3割の議論しかないと思います。特に、いろいろな働き方を考えると言っているが、そのような限られたところの議論しかしていないということは誰が見ても明らかなのに、そのようなことについてなぜ言わないのかなと思います。そのようなことをしっかり言うことが政策評価につながることだと思います。特に中小企業は、労働負担率が9割以上であり、平均給与が200万円とか300万とかといった現状があるわけです。その人たちにこの質問状やこの指標を突きつけてどのような意味があるのかお聞きしたいと思います。そのようなことに対してしっかりとした答えを出す、しっかりとした評価をすることが少なくとも大事なことだと思うので、時間を使ってやるならばしっかりそのような意見を出してほしいと思います。
【谷藤分科会長】 田中委員、それについてお返事はいただきますか。
【田中(常)臨時委員】 ええ、返事は結構です。
【谷藤分科会長】 このような強い意見が出されておりますので、御配慮お願いしたいと思います。
中泉委員、どうぞ。
【中泉臨時委員】 反映していただきたいということで、最後に1点だけ申し上げます。
基本的に社会全体のグランドデザインとして、指標を作るという意義はあると思います。それをどのように扱うかは、私は個人的に経済学者なので城所さんにかなり近い考えですが、意義はあると思います。しかし、これは政策評価なので、それに対して政策がどれだけ費用対効果があるか、また必要性があるかを議論する必要があると思います。そのような意味で、百歩譲って社会の目標に対して何かモデルを作って寄与度を計算したことは、一応百それは有効性とか効率性の分析になっていると解釈しました。きついことを言わせて頂きますと、代替案と比較して、例えばこれを民間でやった方が効率的な場合があるという可能性はあり得ますが。
しかし、ここで根本的に欠けているのは、必要性とか妥当性の議論です。先ほど、田中弥生委員がおっしゃった話にも関係しますが、社会の目標とは離れて、それに対して、行政関与が必要かどうかというのは最低限チェックしないと、幾らでも無駄なことができる可能性が残ります。つきましては、施策の必要性というのもぜひここで議論していただきたいということだけ、最後によろしくお願いいたします。
【谷藤分科会長】 どうもありがとうございます。時間配分がうまくいきませんので、まだこの部分につきましては、委員から様々な御意見があると思いますが、次の議題もございますので、様々に出された意見を一応取りまとめていただきまして、なるべく最終的な政策評価の報告書の中に盛り込んでいただきたいというのがお願いでございます。よろしいでしょうか。
それでは第3の議題に参りたいと思います。第3の議題、「「消費者取引に関する政策評価」の進め方について」でございます。大変時間が迫っておりますけれども、吉田評価監視官から御説明をお願いいたします。
【吉田評価監視官】 それでは第3の議題、消費者取引について御説明させていただきます。資料は資料3−1「平成24年度第3期 政策評価計画(案)」からクリップでとめております資料3−2「「消費者取引に関する政策評価(総合性確保評価)」のスケジュール(案)」、資料3−3「消費者政策の全体像(消費者基本法)」、資料3−4「消費者取引の適正化に関する政策の脈絡図(未定稿)」、資料3−5「消費者取引に関する政策評価の実施方針について(未定稿)」と参考資料8「消費者取引に関する政策評価」、これらで説明したいと思います。時間が相当押していますので、ポイントをかいつまんで御説明させていただきます。
まず資料3−1でございます。この調査はこれから着手するものでございまして、4月の分科会でこのテーマをこの委員会としてもオーソライズしていただきました。その背景なり目的をこの紙で整理しております。まず、平成16年にそれまで「消費者保護基本法」という法律がありましたが、「保護」の字が取れて、消費者の権利の尊重と自立支援のための「消費者基本法」に改正されています。それから御案内のとおり、平成21年には消費者庁という役所ができて、それまで縦割りだった消費者行政の一部をこの役所の仕事とするとともに、司令塔として依然縦割りで残っている部分についても横断的にコーディネートしていくような役割が期待されています。そのような取組の経緯がある一方で、今回ターゲットといたします消費者取引につきましては、依然トラブルが後を絶ちません。ここに書いてあるようなデータは、後ほど参考資料8の方にもグラフなどで整理をしておりますので、御覧いただければと思いますが、新たな商品や販売形態をめぐって、特に高齢者などがその被害に遭うというトラブルが増加しております。
一方で、消費者基本法に基づいて政府として消費者基本計画を策定することになっていまして、この計画に基づいて消費者行政全般の取組の中の一部として、取引の適正化に関する施策も展開されております。したがいまして、この評価はこのような背景を踏まえまして、取引の適正化に関する施策の効果について検証して、関係施策の改善に資するものでございます。
次に1枚おめくりいただきまして、資料3−2でございますが、段取りのようなことを御説明させていただきますと、今日の分科会を経まして、12月に各府省に正式に実施通知を打ちまして評価作業に入ります。12月から3月までの4カ月間は本省中心で、4月以降に我々の出先機関を動員する実地調査に向けて、評価計画の詳細設計に入ります。各省といろいろ政策の中身について確認しながら、どのような見方をしていけばいいのかというようなことも整理をして、実地調査に入っていくということでございます。それで最終的な出力は平成26年3月、今からですと1年4カ月かかるスケジュールになっておりますが、これは行政評価局が政策評価に取り組む際の標準スケジュールでございます。このタイミングで取りまとめて公表ができれば、実はこの基本計画が5年間の計画になっておりまして、今の計画が平成26年度までの計画で、平成27年度から新しい計画に改定されると思われますので、その計画策定に生かしていただけるというような関係で、このタイミングを考えております。
次のページの資料3−3で概要を御説明しますが、この資料は全体の消費者政策の体系を、我々の責任において消費者基本法を読み解いて構造化したものでございます。左側が究極のアウトカム、目的のところに「消費生活の安定及び向上の確保」とあります。このうち、今回ターゲットにする消費者取引の適正化に係るものとして、2つ目の箱の基本理念2条に書かれているものの中の太括弧の(2)という「自主的かつ合理的選択の機会の確保」、これが中間アウトカムであり、今回の取引の適正化が目指すべきものと認識しております。ここに向けて、この消費者基本法は真ん中のところに太括弧で書いてあります「消費者契約の適正化等」というのが12条で決められていまして、事業者による情報提供、勧誘の適正化、公正な契約条項の確保ということが規定されております。先ほどの「自主的かつ合理的選択の機会の確保」というのは、いわば売り主である事業者と消費者との情報の非対称性とか交渉力の格差、このようなものによって適正であるべき消費者の合理的選択の機会が欠けるがゆえに、少しゆがんだ形で取引が行われる、それを是正しようという目的のものと認識しております。
1枚おめくりいただきまして、資料3−4でございます。これは先ほどの「自主的・合理的選択の機会の確保」というアウトカムが右側に書いてございまして、ここに向けてどのように施策展開があり、それを我々がどのようにみていくのかといったターゲットを整理したものでございます。右側の「自主的かつ合理的選択の機会の確保」がなされるためには、「消費者取引の適正化」が図られている必要がある。もっともそのための外部要因というものもいろいろ認識は一応したわけでございまして、この表の中でも、右の上と右の下のところに一応整理してございます。
その取引の適正化を図るためのフェーズとして、未然防止の段階と被害が起きてきた後の拡大防止というフェーズに分けておりますが、いずれにしろ先ほど申し上げたように消費者と事業者間の情報の質、量、それから交渉力の格差をいかに是正するのか、これが政策のターゲットになるかと思っております。
今度は左側から説明をさせていただきますが、これは基本法に基づく基本計画の全体の体系構造でございまして、左側の太括弧の「ア」のところが今回の取引の適正化を図るための施策を着実に推進しますということで、基本計画に掲げられた柱立てでございます。この柱立てに沿って左半分のところの「評価対象(主なもの)」というところに列挙してありますが、実際にはいろいろ各府省が持っている施策ツールの中で、それらをバックグラウンドにして講ずべき措置というものが列挙されております。中には、これからこのような法律を検討していくというような具体の政策手段がまだないようなものも、この講ずべき措置には入っておりますので、それらを一旦我々が評価の対象とすべき道具、政策に持ちかえたときに、この世界は結構規制行政によって目的を達成しようとする方法論が多くて、関係法律を書いてあるところのかなりのものは、これは全てと言っていいほど事業者に対する行為規制をかけている、その規制のための法律でございます。
もとよりそのような法律を執行していく段階では、法律の啓発、普及など、それを使ってもらうというところでの相談や、そのような行政活動が出てまいります。それがこの中ほど右側のところに書いてある「事業者向け施策」、「消費者向け施策」、「関係団体向け施策」ということで、現場でいろいろ展開していっているのかなとみております。
1枚おめくりいただきまして、そのような施策の展開全体を我々が評価をしていくときにどのように対応していくのかということを整理してございます。左側のところで、そのような自主的・合理的選択の機会の確保を図るための施策が、総体としてどのような効果を上げているのかという我々の目標のもと、有効性という視点でここの白い4つの丸で書いてあるようなことをみていきたいと思いますし、効率性という視点で、より財政負担の少ないもので効果が得られないのかというようなこともみていきたいと思っています。
そして、この表はマトリックスになっておりまして、先ほど申し上げました被害を未然に防止するというフェーズと、被害が起きてからの拡大を防止するという2つのフェーズを、今度は事業者向け、消費者向け、関係団体向けということで6つのマトリックスでいわばターゲットゾーンを整理しております。それぞれについて、国が行っているものもあれば、地方公共団体が担っているものもあれば、国民生活センターという、現在は独立行政法人でありますが、平成25年度の予算編成の中で消費者庁に組み入れるという要求が出ております、そのようなセンターの活動の中身、そうようなものも評価の調査の対象にして取り組んでまいりたいと思っております。
時間が迫っておる関係で、どのようなアプローチをするかの具体の中身についての説明は省略させていただきますが、一番下の段のところで、破線で少し性質の違うものとして整理をしておりますが、司令塔としての機能が期待されている消費者庁について、活動状況であるとか今後どのような取組が期待されるのかといったようなことについてもみていければと思っていますし、この消費者政策全体について、これまでの資料でも説明したように、一応政策の体系構造化はできているようであり、実はオフィシャルにこういう脈絡のもとで、このようなものをなし遂げていくという構造化とその説明が完璧にされているわけでもございませんので、そのようなものの構築に向けて、後押しができるような評価ができればと思っております。
大変早口で申しわけございませんでしたが、説明は以上にさせていただきます。
【谷藤分科会長】 ありがとうございます。時間的な関係上から、中身につきましては随分深く申し上げることができなかったと思いますが、全体的な評価のフレームについては、このようなマトリックスで実施したいという方向性だけを提示されておりました。それにつきまして、各委員から何か御意見がございますでしょうか。
田中委員、どうぞ。
【田中(弥)臨時委員】 きれいに整理をしていただきましてありがとうございます。
一点、これはお願いというか要望ですが、規制が中心の施策であるということであれば、ぜひRIAの資料等々、あれがどのように使われて機能していたのかということをこの資料をレビューされる際にぜひチェックをしていただけないかという点であります。
【谷藤分科会長】 ありがとうございます。それにつきまして、吉田評価監視官からありますか。
【吉田評価監視官】 RIAにつきましては、平成19年度に制度化されたと思いますが、実は法律と政令によるものに限定されています。それで、実は我々もそのようなものを事後検証的にチェックできればと思っていたのですが、ターゲットとして使えるところ、使えないところがあります。お手元の参考資料8の23ページの中で、規制のインパクト分析のような実例があります。これは宅地建物取引業法の施行規則の改正によって、マンションの悪質勧誘に手を打ったという実際の例ですが、このようにマンションの悪質勧誘に関する相談件数をいわば一つの指標としてみたときに、様々な外部要因はもちろん除いた上でも、この件数がかなり減っているのは規制の改正の効果だろうと思います。このようことが現に国土交通省と消費者庁の整理で白書にも載っています。このような目論見が最初のRIAの段階で、このようなことをやればこういう変化をするだろうということが出ていれば、それが本当にその目論見どおりになったのかをチェックできるという関係になるかと思いますが、これは宅建業法の施行規則ということなので、RIAの作業の中では我々もみつけられませんでした。任意の取組としてやられているのかもしれません。いずれにしろ、そのようなRIAが行われたものについては、その材料を踏まえて、また事後検証をやっていくということについては努力していきたいと思います。
【田中(弥)臨時委員】 少し追加してよろしいですか。
【谷藤分科会長】 はい、どうぞ。
【田中(弥)臨時委員】 実はRIAということをあえてここで出させていただいたのは、それ自体が目的ではないにはせよ、RIAがなかなか機能しないということは指摘し続けられていますので、このようなとてもいい事例でありますから、これでどこまで何が使われていて、どのあたりが課題になっているのかということも副次的な問題でもありますが、ぜひ明らかにしていただけたらと思います。
【谷藤分科会長】 立花委員、どうぞ。
【立花臨時委員】 この問題で非常に頭が痛いのは、この消費者行政の基本は規制行政で対応せざるを得ないのだという御指摘があった。私も基本的にはそのようなことだろうと思います。その場合に何が問題かというと、結局いわゆる健全な事業者、中小企業だろうと大企業だろうと健全な事業者と、そうではないいわゆる悪意を持った悪質な事業者といいますか、そこのところが規制行政のもとでは結局差別できないものですから、同じ網をかぶってしまっている。
その結果どのようなことになるかというと、経済社会の、格好よく言えばイノベーションが阻害されかねないという点がかねてから指摘されているわけで、このあたりアメリカは、例えば独禁法のコンプライアンスでも、企業として独禁法のコンプライアンスをしっかりと社内的なルールをつくって、なおかつしっかりと社内で年1回教育をしたり勉強したりしているような企業がやった独禁法違反と、社内的にコンプライアンスもない、かつ社員教育もやっていないところがやった独禁法違反とでは、そのようなプログラムを持っているところに対しては適用を少し緩和するなど、そうようなことで企業の自主的な取組をいかにしてエンカレッジさせるかということで、規制行政のデメリットを克服しようとしています。日本の場合には、なかなかそのあたりが同じ法律のもとで、悪意を持った事業者も善意の事業者も同じ規制のもとで縛られて、結局がんじがらめになってしまって身動きがとれないということになりかねないので、やはりそのあたりをどのように考えていくかという点が実は大きな課題だということをしっかりと頭に入れておいていただけないかという感じがいたします。
【谷藤分科会長】 ありがとうございます。高橋委員、どうぞ。
【高橋臨時委員】 消費者取引の適正化に関する政策、脈絡図などをきれいに整理していただいておりますが、この消費者取引の適正化というのを規制の部分だけからみるということには、私は少し抵抗感がございます。この脈絡図でいきますと、評価対象が基本計画の中から「取引」というキーワードに匹敵するところのものを34本でしょうか、引っ張っておられますが、消費者取引が適正化したかどうかという効果をみるには何が必要かというと、その後の実施方針に入っているところの、例えば消費者への啓発・教育の実施、相談の受け付け・処理などがありまして、その前の脈絡図でいうと、めくって2つ前の基本計画に戻りまして、今対象にするのは「2 消費者契約の適正化等」ということになりますね。しかし、この効果を測定するためには、基本計画の中にある「7 啓発活動及び教育の推進」、これは消費者教育推進法もできましたし、ここが非常に大きな力を果たすでありましょうし、「9 苦情処理及び紛争解決の促進」、ここも相談窓口の整備からADRのところまで、非常に大きく動いています。規制ということだけでは消費者取引は適正化しないし、良い消費者市民社会はできないので、まさに未然防止とか拡大防止のための消費者教育・啓発活動、あるいは消費者が相談できて被害が救済され、できれば被害額が戻ってくるような仕組みが、どのように構築されたかというところまでみていかないと、適正化したかどうかは測れないと思います。また、それぞれの施策に対する評価ですと部分最適でありまして、消費者問題というのは次から次に新しい問題が発生してくるので、基本計画も改定の度にたくさん本数が加えられているので、これが解決したから次の基本計画ができますというようには単純にいかないと思っています。むしろこの実施方針の下にあります「国」のところの「消費者庁の司令塔としての機能」、それから「政策全体のマネジメント」、ここにスポットを当てた政策評価が必要だと思います。個々の施策より全体最適がなされたかどうかを中心にした政策評価が進むことを希望します。
【谷藤分科会長】 これにつきまして、吉田評価監視官、どうでしょう。
【吉田評価監視官】 時間が押していることもあり、大変乱暴な説明をしましたが、この規制だけを見ていくということではなく、先生御指摘の教育とか普及活動、それから最後は救済に至るまで、いわば全体の法律の体系の中で、そのような救済のようなものが後押しすることによって、取引の場面で牽制球として効いてくるような事柄、そのようなものも全体をカバーするつもりでございます。そのあたりのところは資料3−4の下の(注)のところに記述してございまして、そのことをしっかり押さえて説明するところを飛ばしてしまいまして大変失礼いたしました。
【谷藤分科会長】 ありがとうございました。城所委員、どうぞ。
【城所臨時委員】 今の質問にも関係し、ワーク・ライフ・バランスのところとも似ている意見を述べさせていただきます。一番私が望んでいることは、この「消費者取引の適正化に関する各種施策が効果を上げているかなどの観点から評価を行い」と書いてありますが、何がどのような状態になったら効果を上げていると判断するのかを最初に論じていただいて、それからやっていただいた方が良いと思います。そのようにしないと、一体何を評価しているのかという話になるので、どのような状態になったら、それは効果が上がっていると判断しているのかというようなことに気を配っていただいて、評価をしていただきたいと思います。以上です。
【谷藤分科会長】 それにつきまして、どうでしょうか。
【吉田評価監視官】 12月から各府省に調査に入っていく段階で、そのようなフレームを確定していきたいと思います。
【谷藤分科会長】 そのほかにありますか。
【高橋臨時委員】 もう一回よろしいでしょうか。
【谷藤分科会長】 はい。高橋委員、どうぞ。
【高橋臨時委員】 先ほど国の役割ということで申し上げましたが、地方の調査に入る際には、やはり地方行政にスポットを当てていただきたいと思っています。消費者庁ができて、消費者行政をしっかりとしていくためには地方消費者行政の活性化が必要だということで、4年間それのための活性化基金が予算どりされたわけですが、来年度からそれがなくなって、予算要求で交付金になるようです。その変化の部分もぜひ捉えていただきたいと思います。先ほど申し上げた相談等々のところでいえば、資料の中でも誰にも相談しなかった人が約4割いると書いてありましたが、そもそも存在を知らないという人たちもたくさんいるので、一般の方には認知度調査をしていただきたいと思います。また、消費者庁が既に調査をしているところでは、そのような活性化基金を使ってセンターがかなり立ち上がりましたが、センターが立ち上がったところの被害を回復できない相談件数は、既に立ち上がっていたところと比べると、6倍の差があるという結果が出ていて、相談にそもそも来ていないということがあります。そのため、例えば活性化基金ができてから立ち上がった新しいセンターが、その後しっかりと消費者相談を拾えているかとか、被害回復の努力ができているかということも調査していただきたいと思います。また先ほどから、費用対効果みたいな政策効果のお話が出ていますが、例えば最近、先進自治体ではどのような効果が上がったか、例えば振り込め詐欺の被害額の回収額であるとか、それまで生活保護を受けたり、税金が滞納になっていたりしていた人が、多重債務者政策によって、良い市民としてしっかりと納税者になって復帰していったとか、様々な視点で公表されつつあります。これについては、本当は全国のデータをとりたいですが、今はしっかりしているところだけが報告してきている状況だと思います。そのような動きが促進されるような調査、つまり調査に名を借りたというと変ですが、調査をすることによって消費者行政が良い方向に進んでいくことを期待したいと思います。
【谷藤分科会長】 よろしいでしょうか。今の御意見を伺って、何か御返事ありますか。
【吉田評価監視官】 今、先生から御指摘いただいた点は、参考資料8に載っている資料で申し上げますと、22ページのことだと思います。参考資料8の22ページは、疲弊してきた消費者行政予算の推移、それに先生が今おっしゃられた地方の消費者行政活性化のためにてこ入れのお金を入れてきた経緯があります。この金額が、1枚戻っていただいた21ページで、右上に消費生活相談員の配置というデータがございます。5年間で555名増えたとありますが、これは活性化基金がこのような人件費に充当して良いということになっていたがために、このようなものが現場で増強できたと我々も承知しておりますので、まさにこのようなことが現場のそのような相談対応や処理ということに、どのような効果が上がっていたのかということの検証、あるいはそれらがさらに地域的にみて何か差がないのか、そのようなことをみてみろという御示唆だと思いましたので、そのような方向でやってみたいと思います。
【谷藤分科会長】 ありがとうございます。時間が大分延びておりますが、これだけはぜひ述べておきたいというような意見はございませんでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、時間の関係もありますので、これで終わりたいと思います。その他連絡事項につきまして、事務局から御説明があるかと思います。よろしくお願いいたします。
【清水政策評価官】 一点、配付資料についての御説明をさせていただきます。参考資料2「各府省における政策評価の実施体制等(平成24年9月末現在)」、参考資料3「政策評価の方法に関する調査、研究及び開発の取組状況等(平成23年度)」は、各府省の実施体制等につきましての最新の資料でございます。参考資料4「平成24年度予算編成等における政策評価の活用状況」、参考資料5「平成24年度機構・定員審査に当たっての政策評価結果活用状況」、参考資料6「平成24年度税制改正(地方税)における政策評価の活用について」につきましては、評価結果を予算編成等にどのように使ったかということで、財務省で予算編成の関係を、総務省で機構・定員、地方税の関係をそれぞれまとめていただいたものでございます。前回の分科会開催から間隔があきましたので、今日になりましたが、御報告させていただきます。
なお、次回については、改めて個別に御連絡をさせていただきますのでよろしくお願いをいたします。以上でございます。
【谷藤分科会長】 どうもありがとうございます。それでは以上をもちまして政策評価・独立行政法人評価委員会をこれで終了したいと思います。本日は御多忙の中お集まりいただきましてありがとうございました。
(以上)