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政策評価・独立行政法人評価委員会 政策評価分科会委員懇談会
(10月30日開催)議事録
日時 平成20年10月30日(木)10時00分から12時25分
場所 中央合同庁舎第2号館 総務省第1特別会議室
出席者
(分科会所属委員)
金本良嗣政策評価分科会長、藤井眞理子委員、森泉陽子委員、佐藤主光臨時委員、田辺国昭臨時委員、谷藤悦史臨時委員
(総務省行政評価局)
関行政評価局長、渡会審議官、新井総務課長、松林政策評価官、羽室政策評価審議室長
議題
政策評価の重要対象分野について
資料(PDF)
資料1
答申(19年度重要対象分野の評価)の骨子(案)
資料2
答申(20年度重要対象分野の選定)の骨子(案)
会議経過
【金本分科会長】 それでは、政策評価分科会を開会させていただきます。
本日の議題は、「政策評価の重要対象分野について」でございます。19年度と20年度がございますが、19年度の重要対象分野につきましては、最初に事務局から全体を御説明していただいた後に、テーマごとにそれぞれ議論を行っていただきたいと思います。
それでは、よろしくお願いいたします。
【松林政策評価官】 お手元に骨子(案)を2種類、19年度と20年度をお配りしております。それから、19年度と20年度の答申案を事務局にて整理いたしましたので、これに基づき御説明申し上げたいと思います。
それでは、担当から、19年度の重要対象分野の関係府省の評価結果等について御説明させていただきたいと思います。
【柏尾上席評価監視調査官】
基本方針2007に基づき、平成19年11月に経済財政諮問会議から、19年度の政策評価の重要対象分野として3分野5政策、少子化社会対策に関連する諸施策、若年者雇用対策、農地政策が提示されました。このうち、農地政策については、今後適切なタイミングで評価を実施することになります。
関係府省の評価結果では、全体として、政府が提供するサービスは、質量ともに年々充実し、その利用者の満足度もおおむね高いものとなっており、一定の成果を上げていることが明らかにされました。
一方で、サービスの提供を受けていない者の潜在的なニーズの把握が行われていないために、サービスがそれを必要とするすべての国民に届いているのかといった点やサービスが効率的に提供されているのか、効果の高い施策から優先的に実施されているのかといった点については、十分に明らかにされず、今後の課題として残されております。
関係府省においては、これらの課題を今後の評価や政策の推進等に適切に反映させて、国として果たすべき役割を踏まえつつ、費用対効果の高い施策を優先的に実施するなど、施策を体系的に組み立てていくことが必要ではないかと考えられます。
それでは、育児休業制度の評価についての御説明に移りたいと思います。
現在、仕事を持っている女性の約7割が出産を機に退職し、そのうち約3割が継続就業を希望しながら退職を余儀なくされております。また、女性の継続就業率は過去20年間ほとんど変化がございません。さらに、継続就業の環境が必ずしも整っていないとされている非正規雇用者が増加しており、例えば子育て期に当たる25歳から34歳までの女性雇用者の約4割が非正規雇用者という状況でございます。
厚生労働省の評価によると、育児休業制度の普及・定着について、女性の育児休業取得率が上昇している一方で、女性の継続就業率が伸びない原因として、継続就業を希望しながら長時間労働などにより「体力がもたなそう」との理由で退職する者が大半を占めていることが明らかにされているほか、その改善策として、育児休業復帰後の見通しが立てられ、保育所への余裕のある送り迎えや子育て時間が確保できる短時間勤務制度等の義務付けを予定していることがあげられております。
これに対し、ワーキング・グループでは、育児休業取得率は、継続就業の環境が整った女性が育児休業の取得を選択したかどうかを表す指標であり、継続就業の希望の実現度合いを測る指標ではないとの問題意識を持っております。今後は、育児休業の取得を希望している女性全体の把握とその充足状況を測る指標の設定が必要なのではないかということでございます。
次に、期間雇用者の育児休業について御説明いたします。
厚生労働省の評価では、平成17年度の期間雇用者の育休取得率が51.5%である一方で、期間雇用者の育児休業に関する規定を設けている企業が半数に満たないことから、今後の取組方針として、期間雇用者の育児休業取得要件の周知徹底を行うことなどがあげられております。
これに対し、ワーキング・グループでは、そもそも期間雇用者の中には継続就業を前提としない家計補助的な就業を希望している者が多いのか少ないのかなど、その実態は必ずしも明らかにされていないのではないかとの問題意識を持っております。今後は、この実態を把握するとともに、期間雇用者の育児休業の取得を阻害している要因があれば調査分析すべきではないかということでございます。
次に、一般事業主行動計画について御説明いたします。
厚生労働省の評価では、一般事業主行動計画を策定している企業が、300人以下企業の場合1.2万社にとどまることが明らかにされました。また、その改善策として、義務付け範囲101人以上企業への拡大や同計画の公表及び従業員への周知の義務付けを予定していることがあげられております。
これに対し、ワーキング・グループでは、そもそも行動計画の内容と企業の実際の労働条件は必ずしも合っていないのではないか、計画のみの公表では効果は限定的になるのではないかとの問題意識を持っております。今後は、計画の公表と企業の労働条件の実績を公表する仕組みの有効性について検証する必要があるのではないかということでございます。
次に、事業主への助成金による支援について御説明します。
厚生労働省の評価では、事業推進の効果として、中小企業子育て支援助成金などの予算及び決算額の増加があげられております。
これに対し、ワーキング・グループでは、本来、全企業が法律上の義務として従業員に与えなければならない育児休業などについて、助成金という政策手段では、対象となり得る企業数に対するカバー率が小さく、他の企業への波及効果も見込めないのではないかとの問題意識を持っております。別途、効果が広範に及び、意欲の低い企業にもインセンティブが働く代替的な政策手段、例えば、労働時間や育児休業の取得状況などの実績を公表する仕組みなどを検討し、効果の比較検証を行うべきではないかということでございます。
次に、男性の育児休業について御説明いたします。
厚生労働省の評価では、男性の育児休業取得率が平成19年度で1.56%にとどまっていること、その原因として、男女の固定的な役割分担意識の残存や制度に関する理解不足などが考えられ、その改善策として、配偶者が専業主婦の場合の労使協定による育児休業取得除外規定の撤廃などがあげられております。
これに対し、ワーキング・グループでは、男性の育児休業取得率の低い原因は、休業期間中の所得保障の低さ、つまりは、収入の5割である育児休業給付率にあるのではないか、その関係の分析を行うべきではないかとの問題意識を持っております。
最後に、育児休業制度について簡単にまとめますと、今回、厚生労働省が行った評価では、育児休業制度について、不断の見直し・改善策の検討が行われていることが明らかとなりましたが、一方で、育児休業制度についてのロジック・モデルが構築されておらず、育児休業の取得を希望している女性全体の把握とその充足状況を測る指標が設定されていないことなどが課題として残されました。
厚生労働省は、非正規雇用者を含めたすべての女性の継続就業の希望をとらえ、それを実現するために、効果の範囲が広範に及び意欲の低い企業にもインセンティブが働く施策を体系的に組み立てることが必要であるということでございます。
このようなワーキング・グループの問題意識につきまして、厚生労働省と議論を行っておりまして、そのやり取りについて、説明申し上げます。
まず、継続就業を希望しながら退職を余儀なくされている女性の希望を実現することについて、厚生労働省は、指標として女性の継続就業率を用いているから新しい指標を設定する必要はないのではないかとの意見を持っております。これに対しましては、継続就業の希望を実現した度合いを測る指標としては、女性の継続就業率は有効であり、最終目標であることは承知しておりますが、育児休業制度がどの程度活用され、継続就業が進んだのかは、現指標だけでは判断できないのではないかということでございます。女性の継続就業率は全女性を対象としておりまして、必ずしも継続就業を希望しながら退職を余儀なくされている女性の希望の実現を測っているものではないと考えられます。
続きまして、事業主への助成金による支援でございます。厚生労働省は、助成金の場合、育児休業の対象となる労働者がいる企業が対象なので、カバー率が小さいというのが適切ではないとの意見を持っています。これにつきましては、育児休業の対象となる労働者の出現はどの企業にも関係し、企業のカバー率が小さいという認識は変わらないですし、他の企業への波及効果も含めた有効性の検証も必要なのではないかと考えられます。
男性の育児休業につきましては、厚生労働省は、平成13年度に行いました「第1回21世紀出生児縦断調査」の結果、男性が育児休業を取得しなかった理由は経済的なことではなく、男女の固定的な役割分担意識の残存、法制度に関する理解不足というのが最も多かったと、経済的なことをあげた人は3.6%だったので、収入については問題にしなかったと説明しております。これに対しましては、平成13年度の調査というのはかなり古いということがございます。また、平成19年度に人事院が国家公務員に対して行いました調査結果では、66%が収入の確保ができないために育児休業を取らないということを言っておりまして、このような古い調査結果でもって新たな政策を打つというのは必ずしも適切ではないと考えられます。 以上、よろしくお願いします。
【金本分科会長】 ということで、最初の育児休業制度について御説明いただきましたが、御意見、御質問ございましたらお願いいたします。
【森泉委員】 1点だけお聞きしたいんですが、課題に関してこういうことが求められるというのはそれで納得ですが、例えば、助成金による支援の課題のところで代替的な政策手段として、具体例を挙げられていたかと思うのですが、これについてお聞きしたいと思います。
【松林政策評価官】 課題につきましては、基本的に政策評価上の課題、それから政策評価を踏まえて導き出される政策上の課題があります。第一義的には、私どもの任務といいますのは、関係府省が政策評価をしたその評価を踏まえて、評価上どういった課題があるかということを指摘することでございます。その評価を踏まえて、政策転換あるいは現在の政策の見直しが必要といったことが出てまいりましたときに、その評価の過程の中で、例えばこういうふうに転換する、新たな指標を設定する、こういった代替的な政策手段が有力な候補として考えられるのではないかといったものにつきましては、具体例を示すべきではないかということでございます。
【森泉委員】 そうしますと、これは1つのサジェスチョンで十分検討しなさいという意味にとらえてよろしいですね。
【松林政策評価官】 そうですね、こういった代替的な政策手段についても現在の政策と比べて効果が上がるのかどうかということを新たに検証してほしいという趣旨でございます。
【森泉委員】 分かりました。
【金本分科会長】 よろしゅうございますか。では藤井委員、どうぞ。
【藤井委員】 男性の育児休業のところの関係で、現在の育児休業給付率が適当かどうかということが課題にあげられている点に関しての質問ですが、育児休業給付率は、男性の場合と女性の場合で違う点があるのでしょうか。育児休業給付率に男女の違いがないのであれば、育児休業給付率が適当かどうかを問題にするという視点は、男性のときだけの問題なのかどうか。この指摘が出てきた背景がよく分からないのですが。
【柏尾上席評価監視調査官】 女性の育児休業取得率がもう89%になって、既に目標値を9%達している一方、男性の取得率の目標値が10%なのに 1.56%となっております。そうすると、この10%を達成しなければならないということならば、それに向かって最も効果的な手段は何かということを考える場合、収入について分析する必要があるのではないかと。一方、女性は9割近く達成していることもあり、この点、収入については申し述べなかったということでございます。
【藤井委員】 関係府省の評価で、今の観点に関係するのは、配偶者が専業主婦の場合の育児休業取得除外規定の撤廃のことなのかなという感じもいたしますが、その評価との関係で、ここで育児休業給付の話が出てくるのは、やや背景が読み取りにくいように思います。ワーキング・グループなどの御議論で出てきたということなのでしょうか。
【柏尾上席評価監視調査官】 関係府省の評価ということで、厚生労働省は育児休業取得除外規定を改善策として打ち出しました。それも効果はあろうかと思いますけれども、さらに一歩踏み込んで課題としては収入の面に踏み込んではどうかということでございます。
【藤井委員】 背景が分かりにくい感じがいたしましたので質問させていただきました。分かりました。
【金本分科会長】 若干、給付率5割というだけしか考えていない感じにとれてしまうので、もう少し幅広さがあるといいという気はしますが。給付率5割というのは、ちょっと考えてもそんなに簡単にいじれるものではなさそうで、これだけ何か、本当に特出しをするような課題なのかという気はいたします。
【松林政策評価官】 改善策として予算に直結する話が単独で出てきておりますので、今の御指摘の点を踏まえたいと思っています。
【金本分科会長】 そのほか何かございますか。よろしゅうございますか。
では、とりあえず次に行かせていただきまして、また何か後でお気づきの点があれば、戻って議論させていただきたいと思います。
次は、ワーク・ライフ・バランスの実現に向けた取組について、御説明をお願いいたします。
【柏尾上席評価監視調査官】 仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)の実現に向けた取組の評価について御説明申し上げます。
現在、労働者全体の総実労働時間は減少傾向にあり、週労働時間60時間以上の雇用者の割合も低下してきております。その一方で、パート労働者を除く一般労働者の所定外労働時間が6年連続で上昇し、過労死の労災支給決定件数も増加傾向にある状況でございます。
厚生労働省の評価によりますと、労働時間等の設定改善の促進などの効果として、労働者全体の総実労働時間の減少傾向、週労働時間60時間以上の雇用者の割合の低下があげられている一方、今後10年間で週労働時間60時間以上の雇用者の半減や30歳代男性の週労働時間60時間以上の雇用者の割合の高止まりの是正が課題としてあげられております。
これに対し、ワーキング・グループでは、週労働時間60時間以上の雇用者の割合が減少したことだけをもって、政策の効果があったと評価しても、一般労働者の所定外労働時間や過労死の労災支給決定件数が増加傾向にあり、これら他の指標も勘案して、労働時間に係る課題の全体像を評価すべきではないかとの問題意識を持っております。
また、週労働時間60時間以上の雇用者の割合を減少させるという目標の達成に向けて、事業主に対する助成金や推進会議の開催等がどの程度寄与したのかについての厳格な効果把握を求めるべきではないかとの御議論がございました。
さらに、今後10年間で週労働時間60時間以上の雇用者の割合、平成19年で10%を半減させる目標は、これまでの進ちょく状況から判断して、容易に達成できるのではないか、今後、取組を強化していくにあたり、新たな目標設定の在り方について見直しを行うべきではないかとの御議論がございました。
また、30歳代男性の週労働時間60時間以上の雇用者の割合が高止まりしていることへの対策として、厚生労働省では助成金の上乗せをしておりますが、ワーキング・グループでは、対象となり得る企業数に対するカバー率が小さく、必ずしも他の企業への波及効果を伴うものではないのではないか、助成金という政策手段の有効性が検証されていないのではないかとの問題意識を持っております。別途、効果が広範に及び、意欲の低い企業にもインセンティブが働く代替的な政策手段、例えば、企業の労働時間の実績を公表する仕組みなどが考えられるのではないかということでございます。
次に、内閣府の政策について御説明申し上げます。
内閣府では、少子化対策に関する様々な普及・啓発のためのシンポジウムやフォーラムを全国で開催しております。
内閣府の評価では、シンポジウム等の効果として、参加者数と参加者を対象とするアンケート調査における肯定的な評価の割合が目標値を達成したことがあげられております。
これに対し、ワーキング・グループでは、内閣府が実施した世論調査において、ワーク・ライフ・バランスの認知度が全体の1割にも達していないことが明らかにされているにもかかわらず、それには触れずに、シンポジウム参加者数といった事務改善的な目標を達成したとしても、政策の見直し・改善には結びつかないのではないかとの問題意識を持っております。今後は、ワーク・ライフ・バランスについての国民の認知度を基に評価を行うべきではないかということでございます。
なお、内閣府では、「仕事と生活の調和推進のための行動指針」に基づく新たな施策については、「仕事と生活の調和推進・評価部会」及び「仕事と生活の調和関係省庁連携推進会議」が行う点検・評価において、事後の検証が可能となるよう目標の達成に向けた取組をあらかじめ明らかにした上で、適切なタイミングで効果の発現状況を踏まえ評価を行うこととしております。
最後にワーク・ライフ・バランスについて簡単にまとめますと、今回、厚生労働省が行った評価では、特に改善が求められる週労働時間60時間以上の雇用者の割合が減少しており、状況が以前より好転していることが明らかにされました。一方で、週労働時間60時間以上の労働者の雇用割合という1指標による評価のために、労働時間に係る課題の全体像がとらえられていないことやロジック・モデルが構築されておらず、目標の達成に対する施策の寄与度や事業主に対する助成金の有効性、10年後の目標値の設定についての検討が十分に行われていないことが課題として残されており、今後は、評価を通じ、これらを明らかにすべきであると考えております。
また、内閣府が行った評価については、普及・啓発施策の効果把握において、ワーク・ライフ・バランスについての国民の認知度という重要な指標が用いられていないという課題が残されており、今後は、これらを明らかにすべきであると考えております。
厚生労働省は、労働時間の短縮に係る全体像をとらえ、それを実現するために、効果の範囲が広範に及び意欲の低い企業にもインセンティブが働く施策を体系的に組み立てるべきとではないかということでございます。
また、内閣府は、ワーク・ライフ・バランスの認知度を基に評価を行い、具体的な施策の見直し・改善につなげていくべきではないかということでございます。
以上のようなワーキング・グループの問題意識につきまして、厚生労働省、そして内閣府と議論を行っておりまして、そのやり取りについて、説明申し上げます。
厚生労働省でございますけれども、週労働60時間以上の雇用者の割合は、15年から19年の5年間で見ると1.9%の減少となっており、18年度から 19年度の0.5%の趨勢そのままに容易に減少し続けると結論付けはできないとの意見を持っております。これに対しましては、15年から19年の 1.9%、1年に割り返しますと0.47%の減で大した変わりはないのではないかと感じております。
続きまして、助成金制度につきまして、厚生労働省では、助成金の中には、例えば職場意識改善助成金のように意欲の低い企業にもインセンティブを働かせるために創設しているものもあるということと、助成金がすべての企業をカバーしていないことと助成金の実施の是非とは関係がない、それはそれで直接的な効果があるとの意見を有しております。それから、長時間労働の削減や労働条件の実績の公表制度というものを代替的な政策手段として例示しておりますけれども、これについては効果が不明であるとの意見を持っております。これに対しまして、事務局では、ほとんどの助成金については、ほかの企業への波及効果も含めた有効性の検証は行われておりませんし、また、代替的な政策手段の例示につきましても、今後の評価によって明らかにするべきものであって、今効果がないと決めつけるものではないであろうと考えているところでございます。
以上でございます。
【金本分科会長】 それでは、ただいまの御説明につきまして、何か御質問、御意見がございましたらお願いいたします。
【佐藤臨時委員】 素朴な質問ですけれども、厚生労働省の意見で出てきた職場意識改善助成金は、趣旨は分かるのですが、どうやって意欲の低い企業の意欲を高める仕組みになっているんですか。名前はともかく、これって何なんだろうということです。
【柏尾上席評価監視調査官】 この助成金は、職場内で労働時間等の設定改善の意識を改善するための研修を計画的に実施するなど、効果的な取組を行った中小企業に対し、最高で150万円を支給するものです。
【谷藤臨時委員】 内閣府ですけれども、ワーク・ライフ・バランスが少子化社会対策に対する普及・啓発の中で位置付けられているのですか。
【柏尾上席評価監視調査官】 はい。
【谷藤臨時委員】 そうしますと、少子化対策とワーク・ライフ・バランスがどのような関連性があるかについては、内閣府自体がきちんと評価しているのですか。
つまり、なぜ少子化社会対策の中にこれが組み込まれているのかについて、内閣府自体がきちんと議論しているんですか。
【柏尾上席評価監視調査官】 どちらかと言いますと、少子化社会対策の中にワーク・ライフ・バランスも含まれているという理解でございます。
【谷藤臨時委員】 一つの政策として組み込まれているわけですか。
【柏尾上席評価監視調査官】 はい、政策体系の中の一つの政策としてあります。
【谷藤臨時委員】 では、ワーク・ライフ・バランスの政策がどのようにして少子化対策そのものに、何らかの効果が出ているかということの評価軸はやっていますか。
【柏尾上席評価監視調査官】 それはやってございません。
そこで参加者数が今年は1つのフォーラムで、例えば500人として、来年は550人だろうということで、その達成度評価をやっております。
【谷藤臨時委員】 委員会として、ここで指摘していることは、普及・啓発活動の効果だけで議論していますよね。
【柏尾上席評価監視調査官】 それ以外の施策につきましては、行動指針が昨年度定められまして、それに基づく新たな施策を展開することになっております。これにつきましてはロジック・モデルと目標値の設定ということで、事後検証をお願いすることになっております。これまでやっていた施策が、その普及・啓発しか内閣府にはなかったということでございます。
【谷藤臨時委員】 普及・啓発しかなかったということなんですか。
【松林政策評価官】 それもどれくらい普及・啓発活動として効果を上げているかというのをとらまえるべきなのに、国民の認知度を使って、そもそも測ってございませんので、仮にそれに限定したとしてもきちんと評価をやっていないという指摘でございます。
【金本分科会長】 よろしいですか。
【佐藤臨時委員】 助成金の波及効果についてですけれども、具体的に、例えば中小企業のAという企業に助成金を出すことによって、ライバルである企業Bにも何か影響を及ぼすとか、業界全体の労働時間が減るとか、そういうことを考えていらっしゃるんですか。
【柏尾上席評価監視調査官】 助成金自体は、それが支給される企業にしか効果はございません。直接的な効果はありますが、間接的な効果はまずございません。そうであれば、企業の数は150万社以上になりますので、毎年、1,000社程度は直接的効果があるとはいえ、ちょっと少ないのではないか。それであれば逆に全企業を対象とするような規制的手段の方が効果が高いのではないかと考えられるところでございます。
【金本分科会長】 よろしいですか。
ロジックのバックグラウンドがあまりきちんと書かれていないですが、ごく少ない割合の企業に助成金を与えても、それが一般的な幅広い層を対象にするという制度の本来の目的に合っていないというのが1つだと思います。もう1つは、どこかに与え、ほかに波及するならば、我々の言う外部性メリットがあるので助成金を与えてもいいんだけれども、もらった人だけに配るものなので、そういう意味から適切な助成制度なのかという論点もあるのかと思います。
【田辺臨時委員】 1点です。ワーク・ライフ・バランスについては、厚生労働省と内閣府と2府省が対象となっていますけれども、簡単に言うと、内閣府というのは結局PRだけなので、そこまで指摘する必要はないんじゃないかというのが1つです。特に、事後の検証を求めている部分については、こちらが説明することではないので、答申では省いても構わないのではないかと思います。
【松林政策評価官】 最初の点につきましては、PR、普及・啓発活動も非常に重要な施策の1つであるし、予算を使ってやっています以上は、やはりそこはきちんとやってくれと言うべきなのではないかと考えております。
それから、農地政策とワーク・ライフ・バランスについては、昨年度の答申の中でも触れられてございますので、ここは忘れていませんよと、これからきちんとやるんですよということを、この答申の機会をとらえまして、きちんと委員会の姿勢として示す必要があるということです。
【金本分科会長】 要するに、いろいろな事情で、始まったばかりで評価はできないと関係府省が言ってきたものについては、忘れてなくて将来やるぞと、そんな雰囲気だと思います。それから、内閣府はいろいろなものの取りまとめ役として本来やらなければいけないことはいっぱいあるはずなのですが、PRの評価だけやったというところがあって、そういったこと自体が本当にいいのかという論点もあるのではないかと思います。よろしいですか。
【佐藤臨時委員】 先ほどのカバー率ですけれども、確かに助成金は本来30代の男性の労働時間を減らすという一般的な目標に対して設定するべきものなのに、対象が狭い、だから効果は小さいと考えられます。でも、もし、対象企業が少ないのにもかかわらず効果が大きいのであれば、それは何らかの波及効果が見込めなければいけない、では、その波及効果をあなたたちは検証しているんですかというロジックのような気がします。何か、唐突にカバー率が低い、でも波及効果を伴うものではないという整理になっている。ワンステップ入れて、もともと助成の目的は究極的にはより一般的なものを対象としているが、その割にはカバー率が低い、カバー率が低くても一般的な目的を達成できるのであれば、何らかの波及効果が期待できなければいけない。でもその波及効果は検証していない、というロジックの方が分かりやすいということなんです。
【松林政策評価官】 御意見を踏まえまして表現を工夫してみます。
【金本分科会長】 そのほかありませんか。
それでは、次の、子育て支援サービスにまいりたいと思います。御説明をお願いいたします。
【柏尾上席評価監視調査官】
子育て支援サービスの評価について御説明申し上げます。
保育所の待機児童数は、平成15年の約2.6万人をピークに4年連続で減少してきましたが、20年に再び増加に転じ、現在約1.9万人となっております。また、待機児童数全体の7割を0歳から2歳の低年齢児が占めるほか、待機児童数全体の7割を74市区町村が占めており、待機児童の多い地域の固定化がみられる状況でございます。また、平成20年2月の「新待機児童ゼロ作戦」では、保育サービスの量的拡充と提供手段の多様化など取組の強化を図ることとされております。
それでは、関係する厚生労働省と文部科学省の評価について御説明申し上げます。
まず、厚生労働省の評価では、待機児童を解消するための施策の効果として、保育所の受入児童数の着実な増加があげられている一方で、待機児童の発生原因として、女性の就業率の伸びに伴う保育需要の増大、保育所整備による潜在需要の顕在化などが明らかにされております。また、今後の取組方針として、保育サービスの量的拡充と提供手段の多様化や中長期的な需要を勘案した絶対量の計画的な拡大などがあげられております。
これに対し、ワーキング・グループでは、潜在需要も含めた保育サービスの需要推計に当たっては、その正確性の確保が重要であり、需要に大きな影響を及ぼす保育料や利用条件を十分に考慮した推計方法を用いるべきであるとの問題意識を持っております。
次に、保育サービスの提供手段の多様化について、厚生労働省の評価では、家庭的保育事業の効果として対象児童数の増加があげられているほか、改善策として、補助単価の引上げや家庭的保育事業の法定化を予定していることなどがあげられております。また、事業所内保育施設については、その効果として、助成件数の増加があげられております。
これに対し、ワーキング・グループでは、これらの施策については、都市部の待機児童の解消に効果が見込めるものの、これまで積極的には取り組まれていなかったことから、制度上・運用上克服すべき点があるのではないかとの問題意識を持っております。今後は、これまでの仕組みや運用の中に支障となるものはないかどうかについて明らかにし、その改善を行うべきではないかということでございます。
次に、多様な保育ニーズへの対応について御説明申し上げます。
厚生労働省の評価では、多様な保育ニーズへの対応の効果として、一時・特定保育などのサービスの実施箇所数の増加があげられております。
これに対し、ワーキング・グループでは、各保育サービスの評価が整備目標に対する整備実績を示すにとどまっており、その利用状況や未実施地域を含めた潜在的な保育ニーズに対するサービスの充足状況も明らかにすべきではないかとの問題意識を持っております。今後は、これらを的確に把握して過不足のないサービス提供が行われているかどうかを明らかにすべきであるということでございます。
次に、文部科学省の政策について御説明申し上げます。
文部科学省の評価では、幼稚園の子育て支援活動や預かり保育の効果として、幼稚園におけるサービス実施率が上昇していることやアンケート調査から利用者の満足度が高いことがあげられております。
これに対し、ワーキング・グループでは、文部科学省のアンケート調査の結果では、預かり保育のニーズが高い一方で、幼稚園が行う子育て支援活動に十分満足しており、これ以上のサービスを望んでいないとする保護者も多く、幼稚園側の供給サービスが保護者側の利用ニーズに的確に対応していない可能性があるのでないかとの問題意識を持っております。今後は、未実施地域を含めた潜在的な保育ニーズに対するサービスの充足状況の把握と併せてその検証を行うべきではないかということでございます。
次に、厚生労働省と文部科学省が連携して行っている政策である認定こども園と放課後子どもプランについて御説明申し上げます。
まず、認定こども園については、両省の評価では、認定こども園の認定件数が想定よりも進んでいないことが明らかにされています。また、アンケート調査結果を基に、保護者の8割近く、施設の9割以上が認定こども園を肯定的にとらえていること、地方自治体や認定こども園が、省庁間連携や財政支援などを課題としてとらえていることが示されております。また、今後の取組として、認定こども園に対する「こども交付金」の創設や会計処理の改善などの運用改善に取り組むとともに、認定こども園の制度改革に向けた検討を行うことがあげられております。
これに対し、ワーキング・グループでは、認定こども園は、期待が大きい一方で、その設置数がなかなか増えていないことについて問題意識を持っております。今後は、「こども交付金」による地方自治体に対する財政支援や運用改善策の有効性の検証を通じて、設置数が増えない原因の掘り下げた分析とそれを基にした見直し・改善を行うべきであるということでございます。
次に、放課後子どもプランについて御説明申し上げます。
放課後子どもプランは、厚生労働省が、主に小学校3年生までの共働きの家庭などの留守家庭の子どもを対象とした放課後児童クラブを実施し、文部科学省が、主に小学生のすべての子どもを対象とした放課後子ども教室推進事業を実施しております。
厚生労働省の評価では、放課後児童クラブ推進の効果として、実施箇所数の増加があげられております。また、文部科学省の評価では、放課後子ども教室推進事業の効果として、アンケート調査を基に保護者等の満足度が高いことがあげられている一方で、課題として、地方自治体における人材、場所、予算確保の困難があげられております。
これに対し、ワーキング・グループでは、放課後子どもプランにおいては、放課後児童クラブと放課後子ども教室の一体的運用・連携により全小学校区での実施が目指されておりますが、それぞれの利用条件やサービス内容が異なることから、継続就業を希望する保護者のニーズに的確に対応していない可能性があるのではないかとの問題意識を持っております。今後は、両施策のサービス供給量とその内容が、保護者のニーズに対応しているかどうかを検証すべきではないかということでございます。
最後に、子育て支援サービスについて、簡単にまとめますと、子育て支援サービスは、子育てをしながら仕事を続けたい女性の希望を実現するために重要な施策であり、その推進が望まれております。今回、関係府省が行った評価では、サービスの量的な拡大が進んでいることに加え、サービス利用者の満足度もおおむね高いことが明らかにされました。
その一方で、潜在的なニーズに対するサービスの充足状況の把握が課題として残されてございます。また、サービスが効率的に提供されているのかといった点については、明らかにならなかったものもございます。
厚生労働省及び文部科学省は、サービスを必要とする利用者のニーズの把握を行い、過不足のないサービスを的確な施策の組み合わせにより提供することが必要なのではないかと考えております。
以上のようなワーキング・グループの問題意識に対する厚生労働省、文部科学省とのやり取りにつきまして、説明申し上げます。
まず厚生労働省でございます。厚生労働省は、保育サービスの需要推計につきまして、保育料や利用条件については、需要に大きな影響を及ぼすとまでは言えず、正確性の確保という指摘は不適切ではないかという意見を持っております。これに対しましては、保育料や利用条件については保育サービスの需要に大きな影響を及ぼすという研究結果もございますので、それを否定することはできないのではないかと考えているところでございます。
次に、文部科学省でございます。子育て支援活動でありますけれども、アンケート調査の結果では、「幼稚園が行う子育て支援活動に十分満足しており、これ以上のサービスは望んでいない」との回答が多くなっており、利用者ニーズに的確に対応していないというのは誤っているというものであります。これに対しましては、子育て支援活動はかなり低額か無料のサービスでありますが、サービスの受け手がこれ以上のサービスを望まないという回答をするのは、相当程度サービスが行き渡っていることを示しており、場合によっては、過剰なサービスが行われている可能性も排除できないのではないか。一方で、預かり保育については、依然、充実を望む声が大きいですので、その事実関係を検証する必要があると考えております。
また、文部科学省は、子育て支援活動につきましては、そもそも地方公共団体の判断でサービスが実施されるもので、国は、申請に対して補助を行っているものであって、ニーズの把握は地方公共団体の役割であって国の役割ではないという考えを持っております。これに対しましては、実際のサービスをどうするかは地方公共団体の判断でよいと思いますけれども、有効性等を検証する上では、全体にどのようなサービスが提供されて、それが十分供給されているのか、あるいは全体として補助金が効率的に使われているかをみるのは国の役割であろうと、考えているところでございます。
また、文部科学省からは、子育て支援活動の「潜在的な保育ニーズ」とは何か、それは顕在化していない隠れたニーズを指しているのかという質問がございましたが、これに対しては、顕在化していない隠れたニーズを意味していると答えております。例えば預かり保育は、公立と私立を合わせると7割の幼稚園が実施していますが、公立に限ってみると46%でありまして、現在預かり保育を実施していない幼稚園に通っている子どもたちにはサービスが届かない状況が考えられます。
続きまして、両省が連携して行っている放課後子どもプランについての意見でございます。文部科学省は、放課後児童クラブと放課後子ども教室は、それぞれの利用条件やサービス内容が異なることから、保護者のニーズに対応していない可能性があるというワーキング・グループの指摘はどういうことなのかと疑問を呈しております。これに対しましては、具体的には、放課後児童クラブが小学校3年生まで、放課後子ども教室が小学生すべてという対象年齢が異なること。サービス内容についても違っていること。また、保育所から放課後児童クラブへの切れ目のない移行ができていないこと。つまり、保育所に子どもを預けて仕事に行けたけれども、小学校に上がってからは子どもを預かってもらえないということがあり、仕事を辞めなければならない例があることを委員から御指摘いただいたところでございます。
以上でございます。
【金本分科会長】 どうもありがとうございます。
それでは、ただいまの御説明につきまして御質問、御意見をお願いいたします。
藤井委員、どうぞ。
【藤井委員】 放課後子どもプランというのは、放課後児童クラブと放課後子ども教室推進事業を併せたものという意味でしょうか。
【柏尾上席評価監視調査官】 放課後児童クラブと放課後子ども教室を併せまして、放課後子どもプランと申しております。
【藤井委員】 先ほどの御説明では、具体的な連携施策を評価の対象とするような施策体系になっているかのように思えたのですが、その理解でよろしいでしょうか。それとも放課後の子どもに対応する施策という一般的な意味での話でしょうか。
【柏尾上席評価監視調査官】 一応施策体系ではあるんですけれども、両省が別々の施策を持ち寄って、一緒に併せて全小学校区の設置を目指すということと、教育委員会がコーディネートするということになっているんですけれども、それぞれの省が別個に始めた施策という性格を持っております。
【藤井委員】 連携施策ということでその連携がうまくいっているかということを評価の対象とされているのでしょうか。元々始まった時期や目的などにも違いがあると思いますが、その連携がうまくいっているのかどうかを評価されたいということなのでしょうか。関係府省の評価ではそれぞれの施策の評価をしており、課題になると連携がという説明がありまして、具体的な課題内容は、継続就業を希望する保護者のニーズに対応しているかどうかを検証ということになっているため少し分かりにくいように思います。継続就業を希望する保護者のニーズを満たすために放課後子どもプランという連携施策があるという位置付けの理解でよろしいでしょうか。
【柏尾上席評価監視調査官】 継続就業を希望する保護者のニーズを満たすのも施策目的の1つです。
【藤井委員】 それは放課後子どもプランのですか。
【柏尾上席評価監視調査官】 放課後児童クラブの方の主な目的です。放課後児童クラブは保育所との流れで、放課後子ども教室は学校が終わった後の子どもの安全な場所を整備することなどから始まっております。
【藤井委員】 それぞれは分かりますが、ここで対象とされているのは、その連携部分なのか、それぞれに対してなのか、最終的にその継続就業を希望するというところに課題が対応しているのは、放課後子どもプランの目的の一部が継続就業の希望する保護者ニーズへの対応ということでよろしいのか、ちょっと整理が分かりにくいという感じがいたしました。
【柏尾上席評価監視調査官】 基本的には連携の話でございますけれども、関係府省の評価をみますと、基本的には厚生労働省は整備実績の評価のみであり、文部科学省は満足度の評価を行っているものでございまして、そこで、つながりが悪いですけれども、施策としてもうまく連携が図られているのかを検証すべきではないかということでございます。
【松林政策評価官】 評価から課題に目を転じますと、確かに段差を感じますので、評価から課題に至るところで少し工夫してみたいと思います。
【金本分科会長】 ここだけかなり特徴的に評価上の課題をあげていないですね。両省ばらばらに自分たちでできる範囲内で評価をしているけれども、その評価でとらえられてないものがたくさんあるという指摘をまず1つしておくとつながるのかなという気はいたします。
【松林政策評価官】 今、私が申し上げた課題のところで工夫する中で、おそらくその評価から課題に移っていくブリッジとしまして、うまく表現ができるのではないかと思います。今、金本分科会長が言われたことをちょっと工夫させていただければと存じます。
【金本分科会長】 田辺委員、どうぞ。
【田辺臨時委員】 2点ほどです。認定こども園のところの関係府省の評価なんですけれども、これは、ほかのところの関係府省の評価結果のまとめ方と違っていたようなので、合わせたほうがいい感じがしております。これが1点であります。
それから2点目でありますが、具体的には、子育て支援サービスのところで、子育てをしながら仕事を続けたい女性の希望を実現するために重要な基盤であり、その推進が望まれるという御説明がありましたが、別にこれは女性の希望だけではありませんので、ここはジェンダーバイアスな表現になってしまうので、私も希望していた口ですので、表現を「家庭の希望」とか「男女共ども」と直していただければと思います。以上です。
【松林政策評価官】 重要な点だと思います。直させていただきたいと思います。
【金本分科会長】 谷藤委員、どうぞ。
【谷藤臨時委員】 私も金本分科会長がおっしゃいましたところですが、関係府省の評価についての問題点が指摘されていない感じがいたします。評価軸が非常に一元的で、施設の箇所数の増加とそれからアンケートだけになっておりまして、そういう評価軸が一元的だということも少し指摘しておかなければいけないのではないかと思います。それが、利用条件やサービス内容が異なるということを指摘しているわけですから、評価軸を少し多元化しなければいけないということを、私は評価の課題として提示してその後につなげるべきだろうと考えるんですが、いかがでしょうか。
【松林政策評価官】 ありがとうございます。検討させていただきます。
【金本分科会長】 森泉委員。
【森泉委員】 文部科学省の預かり保育についてですが、課題として、預かり保育のニーズが高い一方、子育て支援活動に十分満足しており、これ以上のサービスを望んでいないとする保護者も多いとの説明があり、それが、ニーズに的確に対応してない可能性があるとつながるのは、ちょっとよく理解しづらいので、むしろ、過剰なサービスが行われている可能性があるということを明確に示した方が理解しやすいのではないかと思います。
【松林政策評価官】 検討させていただきたいと思います。
【金本分科会長】 そのほか、何かございますでしょうか。
では、次にまいりたいと思います。若年者雇用対策について御説明をお願いいたします。
【柏尾上席評価監視調査官】
若年者雇用対策につきましては、フリーター、いわゆる15歳から34歳で勤め先の呼称がアルバイト・パートの者などについては、ピーク時から36万人減少し、平成19年には181万人となっております。その一方で、15歳から34歳までの人口に占めるフリーターの割合の減少幅はわずかで、25歳から34 歳までの年長フリーターについては改善が遅れております。それとともに、就職氷河期にフリーターになった世代が、フリーターの定義から外れる30歳代後半の不安定就労者に移行しつつある状況でございます。
政府が進めている「フリーター常用雇用化プラン」については、これまでに80万人を超えるフリーターの常用雇用化を実現してまいりましたが、大きく減少させるまでには至っておりません。
一方、ニート、いわゆる15歳から34歳までの非労働力人口のうち家事も通学もしていない者については、平成14年から17年まで64万人とされていたものが、18年以降は62万人と減少しているものの、15歳から34歳までの人口に占めるニートの割合は2%前後でほぼ横這いとなっております。また、ニートの定義から外れる30歳代後半の無業者は増加している状況でございます。
このような状況を踏まえ、政府は、フリーター、ニートのいずれについても、その定義から外れる30歳代後半にまで支援の対象を拡大し、その強化を図ることとしております。
それでは、関係する厚生労働省、文部科学省、経済産業省の評価について御説明申し上げます。
まず、厚生労働省の評価では、フリーター支援策の効果として、ジョブカフェやハローワーク、若年者トライアル雇用などの支援サービスの提供を受けたフリーターが高い確率で就職している状況が明らかにされております。
これに対し、ワーキング・グループでは、フリーターの年長化に伴い常用雇用化がより困難となる中で、より多くのフリーターや30歳代後半の不安定就労者を支援策に引き寄せることや職場への定着を図る効果の高い支援策を見極めるべきではないかとの問題意識を持っております。
この課題を解決していくためには、データの整備が不可欠でございますので、例えば、既存の統計調査への項目の追加やサンプル調査の実施などにより、フリーター支援策の認知度やサービスの充足状況を把握することが必要であるということでございます。また、支援サービスを提供した若年者の属性や支援による効果、例えば、就職先の労働条件や定着状況等の把握が有効と考えられますことからその実施を求める必要があると考えております。
次に、低学歴層及び女性のフリーターに対する支援について、厚生労働省の評価では、フリーターのうち低学歴層の割合が64%と高いことやフリーターの男女比が、ハローワークでの求職活動においては逆転していることが明らかにされております。
これに対し、ワーキング・グループでは、フリーターへの固定化が懸念される低学歴層や求職活動に必ずしも積極的でない者の割合が高い女性については、現在、この両者を特に重点的に支援する施策は実施されていないことから、どのような施策が効果的であるのかを明らかにするべきではないかとの問題意識を持っております。
次に、ニート支援策について御説明申し上げます。
厚生労働省の評価では、ニート支援策の効果として、「若者自立塾」に3年間で約1,800人が利用し、修了者の6割程度が就労を実現したことや「地域若者サポートステーション」に2年間で延べ約18万人が利用し、登録者の進路決定率が約25%であることがあげられております。
これに対し、ワーキング・グループでは、ニートの年長化に伴い自立化がより困難となる中で、より多くのニートや30歳代後半の無業者を支援すべきではないかとの問題意識を持っております。そのためには、データの整備が不可欠でございますので、既存の統計調査への調査項目の追加やサンプル調査の実施によって、ニート支援策の認知度やサービスの利用状況などの把握が必要であるということでございます。
次に、文部科学省の政策の評価について御説明申し上げます。
文部科学省では、小中高の各段階におけるキャリア教育や大学におけるキャリア教育プログラムの開発、インターンシップの実施などを推進しておりますが、これらの効果として、実施指定校の自己評価や参加学生に対するアンケート調査から、そのプログラムの内容に高い満足度が与えられていることが評価としてあげられております。一方で、課題として、参加学生に対する教育効果の把握方法の確立があげられております。
これに対し、ワーキング・グループでは、キャリア教育の効果について、参加学生に及ぼす学力の向上や就業への結び付きといった効果も把握すべきではないかとの問題意識を持っております。
また、文部科学省では、一部の学校を指定して行うモデル事業を実施しておりますが、このような対象を限定して実施される事業の場合、事業を実施しない学校をあらかじめ定め、事業の実施前後で比較を行うことが必要ではないかとの御指摘がございました。
さらに、効果が現れるのに長期間を要する教育の場合、その効果を把握するために、長期定点観測型の調査いわゆるパネル調査の実施を検討することも有意義との御指摘もございました。
次に、経済産業省の政策の評価について御説明申し上げます。
経済産業省では、ジョブカフェモデル事業の効果として、3年間で15.8万人の就職が実現したことが評価としてあげられております。
これに対し、ワーキング・グループでは、国の支援終了後、就職者数の減少が大きかった地域について、国の支援終了の影響が十分に検証されていないことから、その検証とこれらの地域への国の支援が必要かどうかの検討を求めるべきではないかとの問題意識を持っております。
最後に、若年者雇用対策について、簡単にまとめますと、今回、関係府省が行った評価では、フリーター、ニート支援策が量的に拡大していることやサービス利用者の就職率やサービスに対する満足度もおおむね高いことが明らかにされました。その一方で、残されている課題もあり、今後の評価を通じて明らかにすることが求められます。
厚生労働省については、フリーター、ニートの全体像を把握するとともに、効果の高い施策を見極め、支援を必要とするターゲットに的確にサービスを割り当てるべきであると考えております。文部科学省については、モデル事業を実施する場合、あらかじめ収集するデータと比較対象を定め、事業の実施前後で比較検証を行うことなどにより、的確な効果の把握を行うべきと考えております。経済産業省については、ジョブカフェモデル事業について、国の支援終了に伴う影響について検証を行うべきと考えております。
ワーキング・グループの問題意識に対する厚生労働省、文部科学省とのやり取りにつきまして、説明申し上げます。
厚生労働省からは、フリーター支援策の効果について、効果の高い支援策を見極めるために、必要なデータの例として、就職先の労働条件と定着状況があげられておりますが、労働条件を把握することが有効とする根拠が不明であるので、削除すべきではないかという意見がございました。これに対しましては、就職後の実態が募集時の労働条件と異なるため、就職後早々に離職している状況などがないかという把握が必要になるのではないかと考えられます。
また、文部科学省につきましては、モデル事業に対する指摘は、各省の個別の指摘として提示するのは不適切ではないのか、ほかの省にもモデル事業はあるということであります。これに対しましては、モデル事業一般については文部科学省の意見のとおりでありますが、今回の評価では文部科学省の施策のほとんどが典型的なモデル事業であり、多数これを実施しておりますので特に指摘する必要があるのではないかと考えております。
以上でございます。
【金本分科会長】 それでは、御質問、御意見お願いいたします。森泉委員どうぞ。
【森泉委員】 今の若年者雇用対策の課題についてお聞きして、前の子育て支援サービスのところについてちょっとコメントしたいと思います。
ここのところでは、課題として具体的に統計データの調査項目の追加とかサンプル調査の実施とか、あとパネル調査の実施とか具体的に統計のことを指摘されることを考えているようですが、例えば子育て支援サービスに関してもぜひその潜在的ニーズの把握に関してこのような課題として指摘ができるのであれば、やはり加えてほしいと思います。漠然と子育て支援サービスのところは潜在的な需要を把握するように工夫してほしいというちょっと遠回しな御意見だったと思うのですが、厚生労働省ではいわゆるミレニアムベイビーという非常に大きな予算をつけた統計調査、パネル調査をやっているわけですから、例えばそこで項目を1つ2つ加えることによって将来のあるいは現在の子育ての支援サービスはかなり的確に把握できると思うので、できるならば、その辺を御検討いただきたいと思います。
【松林政策評価官】 工夫してみます。
【森泉委員】 よろしくお願いします。
【金本分科会長】 そのほか何か。田辺臨時委員。
【田辺臨時委員】 小さなことかもしれませんけれども、まずフリーターの定義を説明される場合は、「勤め先の呼称がアルバイト・パート」という表現は、ちょっとお考えいただいた方がいいかなと思います。要するに「アルバイト・パート」と勤め先で呼ばれているということなんだろうと思いますけれども、実際上はそのポジションのことなので呼ばれ方の問題ではないと思いますので、というのが1点。
それから、「フリーター常用雇用化プラン」の説明がありましたけれども、これは年度を入れた方が、いつからいつまでやっているということがはっきりします。あまりここのところで情報を増やしたくはないですけれども、いつやったのかというのを加えていただければと思います。
それから、フリーター支援の課題として、「支援による効果」の例示として「就職先の労働条件」をあげるのは違和感がございます。簡単に言うと就職先の労働条件がこの支援サービスによって左右されるわけではありませんので、要するにサービスした、支援した若年者の属性と、結局どこに就職してそこはどういう企業であるのかという話だと思いますので、それをつなぐものがおそらく支援による効果になろうかと思います。具体的な解決案は今、ちょっと頭には浮かびませんけれども、効果の中に「就職先の労働条件」を入れるというのはかなり変というか、言いたいことは分かるのですがミスマッチが生じていると思います。もう少しお考えいただければというのが3点目です。以上。
【松林政策評価官】 最初の2点については対応させていただきます。それから3番目については少し検討させていただきたいと思います。
【金本分科会長】 これは田辺委員の意図としては「支援による効果」という分類の中に「就職先の労働条件」を入れるというのに違和感があるということですか。
【田辺臨時委員】 簡単に言えばそうです。
【金本分科会長】 フリーター支援が効果を持つためには就職先、就職したタイミングだけを取り上げるのではなくて、就職した後にどういう条件でどう続いているかというのを見なきゃいけないということには特に・・・・・・。
【田辺臨時委員】 それはそうだと思います。
【松林政策評価官】 私どもの趣旨もそういうことでございます。少し文章を工夫してみます。
【金本分科会長】 では佐藤臨時委員。
【佐藤臨時委員】 多分今の労働条件は、どっちかというと労働環境というか、つまりせっかく就職したのに労働条件が劣悪で、子育て支援も何もなくとかそういう状況は困りますねという意味だと思うので、ある意味、労働環境かなという気がするんですけど。
あとやっぱり前も一度申し上げたのですけど、こういう今回の若年者雇用の問題って複数の府省にまたがる事業、政策ですので、特にジョブカフェなんていうのは厚生労働省でやっていたり経済産業省でやっていたりします。ですからそれぞれの府省の施策について評価するという視点は分かるんですけれども、それぞれの府省横断的な観点から結局どうだったのか、お互いに連携していたかどうかということも含めて本当はそれも評価の対象、お互いに連携・連帯、何か情報交換とかそういったこともあったのかどうかも含めての政策評価の視点がもうあと1本あってもいいのかなっていう感想です。
【金本分科会長】 はい、ちょっと難しいかと思いますが、実態上各省ばらばらでやっているのがほとんどではあります。
そのほか、何かございますでしょうか。
【谷藤臨時委員】 やや細かいことになりますけれども、経済産業省が対象となったのはこのジョブカフェモデル事業だけですね、評価は。
【松林政策評価官】 そうでございます。
【谷藤臨時委員】 はい。その中でこれは16年度から18年度にやったことに対する評価ですね。
【柏尾上席評価監視調査官】 はい。
【谷藤臨時委員】 それで実現したということで、15.8万人の就職が実現したと評価している。それに対して、その検証とこれからの地域への国の支援が必要かどうかを検討が必要だという指摘を与えたわけですね。
【松林政策評価官】 そうです。
【谷藤臨時委員】 こういう事業といわれるものを18年度までやったけれども、その後も必要かどうかということの検討をしなさいということですか。
【松林政策評価官】 はい、地方に渡した途端、率が非常に減少しているところがあるというのはやはり何らかの検証が必要ではないかという問題意識です。
【谷藤臨時委員】 そうしますとその課題では国の支援が必要かどうかの検討が求められると指摘しておりますけれども、確か、最後のまとめの部分の説明では、モデル事業については国の支援終了に伴う影響について検証しろという指摘だけだったかと思います。
【松林政策評価官】 はい。
【谷藤臨時委員】 それは何のためにするのかが課題としてあげられていますので、政策の継続性をきちっと評価するためにあるのだということを、まとめとしても明示すべきではないでしょうか。
【松林政策評価官】 はい、分かりました。ありがとうございます。
【金本分科会長】 検証を行い、その後があるのだと。
そのほか、ございませんでしょうか。よろしゅうございますか。
あと農地政策とかこの辺はちょっとだけ御説明いただいた方がよろしいですか。
【柏尾上席評価監視調査官】 御説明申し上げます。
平成19年度に重要対象分野として選定された「農地政策」に関しては、昨年11月、「新たな農地政策については、事後の検証が可能となるよう目標の達成に向けた取組をあらかじめ明らかにした上で、適切なタイミングで効果の発現状況を踏まえ評価を行うべきである。」との答申をいただいたところでございます。
農地政策の改革については現在検討中であり、重要対象分野としての農地政策の評価が行われるには至っておりませんが、今後は、19年11月に取りまとめられた「農地政策の展開方向について」に沿った新たな施策に係る所要の措置が講じられた後に適切なタイミングで、具体的な評価の視点を示すことなどにより、評価の実施を推進していくべきではないかと考えております。
【金本分科会長】 というところで、政策が遅れたので評価は今年はできないけども、ということでございます。よろしいですね。
【田辺臨時委員】 先ほどの御説明に関して、具体的な評価の視点を示すのは、委員会の役割だとは思うんですけれども、評価の実施を推進するというのは具体的には農林水産省なので、もうちょっとそこのところの関係っていうのが分かりやすいように整えておいた方がいいと思います。
【松林政策評価官】 評価を実施する主体は農林水産省でありまして、当委員会の役割としてはその後評価を実際に推進していくに当たって、こういう切り口で評価をしてくれといったことを示すと。それによって実際に主体として行う農林水産省の評価を推進していく必要があると考えております。
【山口総括評価監視調査官】 1点付言させていただきますと、先ほどの御説明は、本重要対象分野の取組のベースになっています、「骨太2007」の閣議決定に盛り込まれている文字をそのまま御説明したということでございます。そこでは、総務大臣は当該提示を踏まえた評価の実施を推進するということで、この評価の実施の推進の主体は総務省ということでございます。
【金本分科会長】 そうじゃなくて委員会ではないっていうのが。
【山口総括評価監視調査官】 その委員会を含む総務省ということであるかと思います。
【金本分科会長】 よろしいですか。厳密に考えると、委員会は意見を言うだけで実際の評価を推進するわけではないということはあるんですが。
そのほか何かございますか。
じゃ、これについては今日の御意見を受けまして事務局で答申案を整理していただいて、次回の分科会で最終的な取りまとめをできればいいというところでございますが、よろしくお願いいたします。
続きまして、20年度の重要対象分野について、一括して事務局の方から御説明をお願いいたします。
【松林政策評価官】 20年度の政策評価の重要対象分野の選定等につきまして、担当から、説明申し上げます。これについても、関係府省と議論をしているのですが、データをとるのに予算要求をしていない中で新たな調査をするのは大変だといったいろんな意見が出てきているところでございます。ただ私どもの立場としましては、これまでしっかり評価されていなかった、新たに評価する上ではやはりそういったベースとなるデータを新たにとってもらわないと意味がないと考えているところでございます。
【柏尾上席評価監視調査官】
まず、地震対策のうち建築物の耐震化及び地震保険について御説明申し上げます。
地震対策については、様々な分野で防災のレベルは向上してきているものの、中央防災会議の被害想定では、発生の切迫性の高い東海、東南海・南海、首都直下等の大規模地震について、いずれも建築物の倒壊が、甚大な死者数を発生させるとともに、出火・火炎延焼等による被害拡大の要因になるとされております。また、建築物の倒壊の多さは、生活再建に困難を来す被災者と救急救命、避難所の設置、倒壊家屋の解体撤去、仮設住宅の整備、公営住宅の建設に伴う社会全体のコストの増大をもたらすことになります。
建築物の倒壊の防止と被災者の生活再建を円滑に行うための政策としては、建築物の耐震化と地震保険がありますが、これらが基本的に国民の自助努力によるものであることから、なかなか普及していないのが状況でございます。
建築物の耐震化は、災害直後の死傷者と建築物の被害を減少させるとともに、その後の社会全体のコストを最小限に抑える根幹的な政策でありますが、住宅総数の25%に相当する約1,150万戸の耐震化が不十分と推計されております。
また、阪神・淡路大震災では、住宅再建の難しさが浮き彫りとなり、公的支援の在り方が公平性の観点から議論される中で巨額の費用を用いて公営住宅が建設されましたが、被災者の住宅再建の足がかりとなる地震保険の加入世帯数は、全世帯の21%に相当する約1,000万世帯にとどまっております。
このことから、被災者の生活再建を円滑に行うとともに、地震による被害と社会全体のコストを最小限に抑える観点から、家庭や企業における地震対策に関するインセンティブ構造の究明を軸に、建築物の耐震化及び地震保険の普及に資する評価を行うべきであるというのが評価のねらいでございます。
それでは、ワーキング・グループの御議論を踏まえた評価の視点について、御説明申し上げます。
まず、建築物の耐震化の効果についてですが、建築物の耐震化が、死傷者数の軽減や出火・火炎延焼等による被害拡大の防止に及ぼす効果のほか、救急救命や避難所の設置、倒壊家屋の解体撤去、仮設住宅の整備、公営住宅の建設、各種支援金の給付、家賃補助、税制上の優遇措置などの一連の災害応急対策や復旧・復興対策に伴う社会全体のコストを軽減する効果についても明らかすべきではないかと考えております。
次に、建築物の耐震化促進のための施策の効果として、建築物の耐震化の進ちょく状況について、地域別、建築物の種類別、建築物の構造別、建築物所有者の階層別に分析し、耐震化の進んでいない建築物の属性とその原因を明らかにすべきではないか。また、建築物の耐震化を促進するための施策である、補助制度、融資制度、税制上の優遇措置などの各種施策が、耐震化の進んでいない建築物の属性とその原因に的確に割り当てられているかどうかを把握するとともに、その費用と効果の関係を明らかにし、併せて、効果の発現状況から、建築物の所有者である家庭及び企業の耐震化に関するインセンティブ構造を明らかにすべきではないかと考えております。
次に、建築物の耐震化に関するインセンティブ構造の究明として、倒壊家屋の解体撤去、仮設住宅の整備、公営住宅の建設、各種支援金の給付、家賃補助、税制上の優遇措置などの被災者支援策について、自助努力により建築物の耐震化を行い家屋が倒壊しなかった者と自助努力を行わず家屋が倒壊した者が得る便益を比較し、その差がどの程度あるのかを明らかにすべきではないかと考えております。
また、その関連として、政府の被災者支援に対する期待の大きさが、家庭及び企業の建築物の耐震化に関するインセンティブをどの程度弱めているかについても明らかにすべきではないかと考えております。
耐震化促進のための代替案の検討については、家庭や企業の建築物の耐震化に関するインセンティブに強く働きかけるためには、現在の耐震化促進策と代替案との比較検証を行い、その費用と効果、メリットとデメリットを明らかにすべきではないかと考えております。
代替案としては、例えば、不特定多数の者の利用する建築物を対象とした耐震性に関する表示制度などが考えられます。
耐震技術の開発及び普及等については、低価格で信頼性の高い耐震技術、生活面での煩わしさの少ない工法などの開発や普及に関する施策の効果を明らかにすべきではないかと考えております。
また、その関連として、耐震技術の種類及び価格のばらつき、悪質な業者によるリフォーム詐欺の発生状況、家庭及び企業の耐震技術や業者に対する信頼度を把握し、その状況が、建築物の耐震化の普及に及ぼす影響について明らかにすべきではないかと考えております。
さらに、その関連として、悪質な業者を排除するための施策の効果について明らかにすべきではないかと考えております。
防災への関心の低い者に対する効果的なアプローチについては、防災への関心の低い家庭や企業に働きかけて耐震化を促進している例などを把握して効果的なアプローチを明らかにすべきとではないかと考えております。
次に、財務省の地震保険の評価の視点について御説明申し上げます。
まず、地震保険の効果についてですが、地震保険が、被災者の生活再建に及ぼす効果のほか、仮設住宅の整備、公営住宅の建設、各種支援金の給付、家賃補助、税制上の優遇措置などの一連の災害応急対策や復旧・復興対策に伴う社会全体のコストを軽減する効果についても明らかにすべきではないかと考えております。
また、その関連として、地震保険の加入率の低いことが、大規模地震のリスクを吸収できる保険キャパシティーに及ぼす影響についても明らかにすべきではないかと考えております。
次に、地震保険の加入促進のための施策の効果として、地震保険の加入率について、地域別、建築物の種類別、建築物の構造別、居住者の階層別に分析して地震保険の加入が進んでいない建築物の属性とその原因を明らかにすべきではないか。特に、火災保険契約者の6割が、原則自動付帯とされている地震保険をあえて除外している原因を明らかにすべきではないかと考えております。
また、その関連として、地震保険の加入を促進するための税制上の優遇措置、広報などの施策の費用と効果を検証するとともに、効果の発現状況から、居住者の地震保険に関するインセンティブ構造を明らかにすべきではないかと考えております。
次に、地震保険に関するインセンティブ構造の究明について御説明申し上げます。
まず、被災者支援策が地震保険加入に及ぼす影響としては、倒壊家屋の解体撤去、仮設住宅の整備、公営住宅の建設、各種支援金の給付、家賃補助、税制上の優遇措置などの被災者支援策について、自助努力により地震保険に加入した者と自助努力を行わず地震保険に加入していない者が得る便益を比較し、その差がどの程度あるのかを明らかにすべきではないかと考えております。
また、政府の被災者支援策に対する期待の大きさが、居住者の地震保険に関するインセンティブをどの程度弱めているかについて明らかにすべきではないかと考えております。
次に、保険内容が地震保険加入に及ぼす影響としては、保険金のリターンの大きさや地震の地域的な発生確率の保険料への反映、建築物の耐震性能の保険料への反映などの保険内容が、居住者の地震保険に関するインセンティブに及ぼす影響について明らかにすべきではないかと考えております。
損害保険会社の販売インセンティブについては、損害保険会社が非営利ベースで保険を販売していることが、販売インセンティブを弱め、地震保険の普及を思うように進ちょくさせていない要因となっていないかどうかを明らかにすべきではないかと考えております。
次に、地震保険についての代替案の検討について御説明申し上げます。
地震保険の加入促進のための代替案の検討については、居住者の地震保険に関するインセンティブに強く働きかける代替案を検討して現在の加入促進策との比較検証を行い、その費用と効果、メリットとデメリットを明らかにすべきではないかと考えております。
代替案としては、例えば、火災保険への地震保険の強制付帯などが考えられます。その他、この評価では、防災に関する施策の推進を行う内閣府において、評価に必要なデータの提供と助言を行うべきではないかと考えてございます。
また、データの収集等について他の府省の協力が欠かせないことから、総務省は、評価の円滑な実施に必要な協力を行うべきであろうと考えてございます。
続きまして、医師確保対策について御説明申し上げます。
医師数については、これまで、国民医療費の伸びを国民所得の伸びの範囲内にするとの基本方針の下、医学部定員の削減等の措置がとられてきました。
しかし、近年、医師が不足している地域や診療科が顕在化したことから、政府は、平成19年度以降、本格的な医師確保対策を講じておりまして、医学部定員についても、早急に過去最大程度にまで増員するとの方針が示されてございます。
医師の総数については、政府が主に医学部定員を決定することにより制御する一方で、開業・勤務については、医師の自由意思が反映されるものとなっていることから、地域間・診療科間に偏在が生じております。
このことから、平等な医療サービスを低い水準の国民医療費で達成してきた医療供給体制を維持・発展させる観点から、医学部定員の決定方法、地域間・診療科間の医師の偏在を是正する施策の検証を中心に、今後の医師確保対策の在り方の検討に資する評価を行うべきであるというのが評価のねらいでございます。
次に、ワーキング・グループにおける議論を踏まえました評価の視点について御説明申し上げます。
まず、医師数の決定方法等として、必要な医師数の基準と医師の過不足数の推計については、医師不足が解消されたかどうかを検証するためには、あらかじめ医師が充足されている状態が明確にされている必要があることから、医師全体、地域別、診療科別にこれを明らかにし、その上で、医師不足の状況を明らかにすべきではないかと考えております。
具体的には、性別・年齢階層別の有病率等を基に、地域別・診療科別の患者数を推計し、さらに推計患者数から必要な医師数や医師の過不足数を推計する方法が考えられます。また、その関連として、医師配置基準と医師不足との関係についても、治療方法の高度化や入院日数の短縮化等に伴う医師の業務量の変化から、医療法による医師配置基準がこの実態に対応しているかどうかを検証するとともに、医師配置基準と医師不足との関係を明らかにすべきではないかと考えております。
次に、医学部定員の決定方法については、その基礎となっている医師の需給見通しについて、これまでの見通しと実際の需給状況を検証することにより、医師不足に必ずしも対応できなかった医師の需給見通しの推計方法に改善すべき点がないかどうかを明らかにすべきではないかと考えております。
医師数の増加が及ぼす影響については、これまでは、医師が過剰になるとの見通しの下に、国民医療費の増大や医療の質の確保という面からも、医学部定員の削減等の措置がとられてきたことから、今回の方針転換によって、これらにどのような影響が見込まれるのかについて明らかにすべきではないかと考えております。
具体的には、国民医療費の増加について、高齢化、医療技術の高度化、医療費適正化についての取組等の要因も併せて多角的に分析し、医師数の増加による寄与分がどの程度見込まれるのかを明らかにしたり、医師数の増加による医療の質の低下がどの程度見込まれるのかを検証し、それを防止するための施策やその効果についても明らかにすることが考えられます。
次に、医師の偏在を是正する政策についての評価の視点を御説明申し上げます。
まず、地域間の医師の偏在を是正する政策についてですが、大学医学部、いわゆる医局の医師派遣機能の低下が、地域間の医師の偏在に及ぼしている影響を検証し、それへの対策が、地域別の医師の不足状況に照らし的確に割り当てられているかどうかを把握するとともに、その効果を明らかにすべきではないかと考えております。
また、診療科間の医師の偏在を是正するための政策については、病院勤務医の過重労働、女性医師の増加、医療に係る紛争の増加が、診療科間の医師の偏在に及ぼしている影響を検証し、それらへの対策が、診療科別の医師の不足状況に照らして的確に割り当てられているかどうかを把握するとともに、その効果を明らかにすべきではないかと考えております。
医師の偏在を是正するための代替案の検討については、まず、地域間の医師の偏在を是正するためには、国民皆保険制度の下での保険医の適切な配置の観点から、医師に、特定の地域における一定期間の勤務の義務付けを可能とする制度を代替案として検討し、現在の施策との比較検証を行い、そのメリット・デメリットについて明らかにすべきではないかと考えております。
また、経済的インセンティブの付与による医師の偏在を是正するための代替案の検討として、診療報酬の加算や医師への直接支払いなどの経済的インセンティブが、医師の勤務地、診療科、病院医・開業医の選択に及ぼす影響を検証し、医師偏在を是正するためにどの程度のコストを要するかを明らかにした上で、経済的なインセンティブを付与する代替案と現在の施策との比較検証を行い、その費用と効果の関係について明らかにすべきではないかと考えております。
医療機関の役割分担の明確化・機能の集約化による医師不足に対応するための代替案の検討については、オーバーラップしている医療機関の役割分担の明確化及び地域の病院の集約化による医師不足の弊害を是正する効果を検証し、そのメリット・デメリットについて明らかにすべきではないかと考えております。
以上の「評価のねらい」と「評価の視点」につきましては、事務局の方で、関係府省と議論をしておりますので、続きまして、関係府省の意見について説明申し上げます。
まず、建築物の耐震化でございますが、国土交通省は、建築物の耐震化が社会全体のコストの軽減に及ぼす影響というものは直接他府省の施策そのものを評価することにもなり、責任を持って対応できない。これは総務省か内閣府が評価を実施すべきではないかとしております。これに対しましては、他府省所管の施策の効果把握を求めているのではなく、あくまでも建築物の耐震化が及ぼす効果の把握を求めているものでありますが、総務省としましても、評価の円滑な実施に向け必要な協力を行うべきと考えているところでございます。
次に、建築物の耐震化促進のための施策の効果でありますが、建築物の所有者の階層を調べることは個人情報であるので把握が極めて困難である。建築物は種類別には調べているものの、構造別には調べていないため、これらをやるためにはアンケート、サンプル調査をする必要があるが、予算の確保が難しいとしております。これに対しましては、すべての評価の視点について言えることですが、既存の調査分析結果などを最大限活用し、なお不可欠なデータがある場合には収集していただくしかないのではないかと考えてございます。評価に要するコストについては可能な限りの対応をお願いするほかございません。なお、個人情報のうち所得階層の調査というのは確かに難しい面もあるのではないかと考えております。
ワーキング・グループの議論にありました違法建築物についてでございますが、ワーキング・グループの議論の中では、耐震化を阻害する要因になっているのではないかというお話がございましたが、国土交通省は、この点は明確でありまして、このような違法状態を絶対容認しない、そういうことを検証すること自体に大きな問題があるということでございます。
次に、耐震化のレベルというのは、あくまでも人命の安全確保を第一に考えておりますので、耐震化をしても損傷することはあり、被災者支援策を受けざるを得ないということもありますので、自助努力を行った者と行わない者の便益を比較することはかなり容易ではないとしております。やるのであれば、そのやり方を示されたいということであります。これにつきましては、便益も特定するということになりますと相当難しい話ではありますけれども、被災者を全壊・半壊・被害なしに区分しまして、それぞれに行われる支援とそれを金額換算して積み上げて1人当たりに割り返すなどといった把握の方法もあるのではないのかと考えているところであります。
もう1点、災害公営住宅制度というものが、そのインセンティブを弱めているのではないかということに対しましては、公営住宅はあくまでも低額所得者のための住宅セーフティーネットなので、入居資格が低額所得者に限定しており初めから自助努力によって自ら耐震改修を行う者は対象外なのでこのような調査を行うことは、貴重な公的資金の浪費となるとしております。これに対しましては、例えば阪神・淡路大震災のときには3.7万戸、1兆円で公営住宅が建設されたという話が、私どもが下調べをした文献の中にもございまして、低所得者の自助努力を促しこれらの人たちの耐震改修を行うようにする施策がこれらの方々の命を守る、ひいては社会全体のコストも軽減する。こういうもののための検証にはこの調査分析が無意味という指摘は当たらないのではないかと考えております。
耐震化促進のための代替案の検討についてでございます。耐震化に関する表示制度の話、耐震化を行った者への手厚い支援、あと倒壊するおそれのある建築物を放置している者への税制上のペナルティーの3点がワーキング・グループで出たのですけれども、手厚い支援の部分につきましては、これは内閣府が提案すべき施策であるとしております。国土交通省が他府省の領域にわたる施策を事実上提案するということには難しい面もあり、これを国土交通省に評価をしてもらうのは難しいのではないかと考えております。 もう1点、税制上のペナルティーでございますけれども、国土交通省の意見では、社会通念上難しいということと、耐震性能は一見して判断できるものではないということでございます。もし税制上のペナルティーをかけるとなりますと納税義務者を確定するときに一見判断できないので、すべてに耐震診断を行ってもらわなきゃいけない話になりますと公平性ですとか複雑になりまして、これを検討するのはいささか無理ではないかと考えております。
また、全体的な意見として、まずデータがないものがあること、他府省の政策に関係するような部分には責任を持てないということ、評価を実施するための予算がないということであります。それと政策評価・独立行政法人評価委員会から答申をもらってもすべての事項について十分な評価を実施することができないことから、その点については委員会にも十分に認識を持ってもらいたい、この点はくれぐれも委員の皆様に御理解をいただきたいということでございました。
続きましては、財務省の意見を御紹介申し上げます。
財務省の基本的な考え方でございますが、地震保険制度は、受益者負担の原則の下、保険契約者の支払う保険料をベースとして保険契約者の自助努力を支援するものであって、他の公的機関の支援とは性格が異なりますと述べています。また、各施策というのはそれぞれ異なる政策目的によって実施されており、地震再保険制度の対象となるのは地震保険のほかに民間独自の地震保険もあるということで、地震保険制度があることによって、他の制度の必要性が減じるという関係にはありませんということであります。それと大規模地震への対応や仮設住宅の整備、公営住宅の建設、各種支援金の給付、家賃補助、被災者に係る税制上の優遇措置等の各種施策は財務省の所管外でありますので、これらの施策の社会全体のコストの軽減効果ですとか被災者がこれらの施策から得る便益ということについて責任を持って答えられないということであります。
続きまして、地震保険制度につきましては、財務省ではこれまでもかなり見直しを行ってきました。具体的には、1996年の契約限度額の引上げ、1981 年、2001年、2007年には、耐震等級割引などの割引制度の導入や拡大を行っております。また、2007年には、基準料率の引上げと地震保険料控除制度の創設が行われました。これは事実でございまして、頻繁に制度の見直しが行われております。
さらに、今回の当委員会の評価の視点については、非常に広範囲で他の制度との関係に及ぶものであり、調査が必要なものについては、損保会社の協力、被災者の協力、調査費用がどの程度かかるかといった課題があるとしております。
また、評価の視点に対する具体的な意見でございますが、地震保険の効果につきましては、まず地震保険制度は社会全体のコストを軽減するという関係にはないのでむしろ他の省でそれぞれ評価をすべきとしております。これにつきましては、当方では、制度自体は社会全体のコストを軽減する目的は有していないとしても、地震保険の及ぼす効果が社会全体のコストを軽減するという原因と結果の関係は成り立つという前提に立って評価の視点を設定していますので、もともと考え方が違います。また他府省が評価をすべきという意見に対しては、それは地震保険を担当している財務省が一貫性のある評価手法で把握した方が合理的であり、各省ばらばらに把握するとかなり非効率で有効なデータが得られない可能性が高いと考えられます。
続きまして、地震保険の加入率や火災保険への付帯率につきましては、建築物の構造別は損保会社が把握しているので分かりますが、種類別なり階層別というのはデータがないため、アンケートをやりますと費用がかかりますということです。
次に、例えば強制付帯にしてはどうかという代替案の検討につきましては、昭和55年の衆・参議院の大蔵委員会で強制にわたることのないよう万全を期するということで従来の強制付帯が強制付帯でなくなったとしております。これにつきましては、阪神・淡路大震災以前の昭和55年当時と今を比べると、地震保険を巡る状況にも変化が生じており、代替案の検討自体が付帯決議に反することにはならないと考えております。
こちらが地震保険の意見でございます。
【金本分科会長】 どうもありがとうございました。
それでは、御質問、御意見をお願いいたします。
では森泉委員どうぞ。
【森泉委員】 1点、お聞きします。国土交通省のデータのことなのですが、建築物の耐震化促進のための施策の効果のところで、所得階層についてアンケートを実施することが難しいということ、要するにデータを得るのは難しいということがありまして、一方で、公営住宅の建設のところでは、低所得者の自助努力を促すためにこの調査を行うべきとの御説明があったかと思いますが、これは、同じデータを使うのでしょうか。要するに低所得者の自助努力を促すためには、低所得者という所得階層を把握しないとできないと思います。ですからこれはちょっと齟齬があるのではないかということです。低所得者の自助努力を促すということは、低所得者を把握しないといけないのではないでしょうか。
【柏尾上席評価監視調査官】 それは、把握する必要があろうかと思います。
【森泉委員】 そうですね。しかしながら、所得階層の調査は個人情報であるので把握が困難であるとの御説明がありました。よって、そこで齟齬があるのではないでしょうか。
【柏尾上席評価監視調査官】 あります。齟齬があるので、直に「あなた、年収何万ですか」と聞くのはちょっと厳しいので、そういうふうに聞かない方法は何かないか、工夫の余地はないかということでございます。
【森泉委員】 既存の調査は所得も階層別に調べていると思いますが。
【柏尾上席評価監視調査官】 国土交通省では、既存の調査では調べていないとしております。
【森泉委員】 住宅・土地統計調査だったら調べております。
【金本分科会長】 住宅・土地統計調査については、家計のアンケート調査が必要かどうかという問題でもあります。この低所得者の自助努力という話は、住宅・土地統計調査とかを調べても実は出てこないので、大きな災害のときに公営住宅を阪神・淡路のときは何万戸つくったのでしたっけ。
【柏尾上席評価監視調査官】 私どもの読みました本には、3.7万戸と書かれていました。
【金本分科会長】 そういったことが自助努力を阻害しているのかどうかといった設問です。それで、低所得者層のアンケート調査をしなければいけないという感じはしなくて、いろんな工夫の余地はあるといった考えだと思っています。
【森泉委員】 具体的に、国土交通省はどの既存のデータを使うつもりなのでしょうか。それとも新たに調査を行うということなのでしょうか。
【柏尾上席評価監視調査官】 既存の調査に加え、新たな調査は、予算の制約や統計報告調整法等の法的制約から、21年度の実施は難しく、特定行政庁に対して多大な負担をかけることになるというのが、国土交通省の説明でございます。
【金本分科会長】 では、藤井委員、どうぞ。
【藤井委員】 地震対策の建物の耐震化、地震保険ですけれども、全体として、すべての人が持ち家で、持ち家の家主さんが自分できちんと対応するという想定になっているようにも感じるのですが、どうなのでしょうか。例えば、公共部門について優先的に対応し、建物、構造物の種類によって耐震化を切り口にしながらその効果を整理していくことにしたいというようなことなのかどうなのでしょうか。世帯数では持ち家比率は6割ぐらいでしょうか。インセンティブ構造と言っているのはすべて消費者のことを言っているようにも思えるのですが、マクロ的にそのような把握になるのでしょうか。全消費者であれば、先ほどの低所得者の点にも関連するかと思います。構造物として優良なものを供給するという政策はここでいう耐震化には入るのでしょうか。
地震保険につきましては、消費者が社会全体のコストを考えると地震保険に入るという流れの下にインセンティブ構造とされていますが、一部では保険会社のインセンティブも議論されるようです。インセンティブ構造という言葉は分かりますが、関係府省の意見では、そういうことで社会全体が動いているわけではないとしています。その辺、どういうことを期待して整理するのかという意味では、もう少し地震保険の役割をはっきりさせた方がよろしいのではないでしょうか。例えば、地震保険について議論したいのか、地震保険についての代替案の説明がありましたが、では、地震保険に代替案があるのかというと、そういうことを議論しているわけではないようです。
地震保険については多少評価の視点が細かい感じがしますのと、構造物の方はもう少し政策評価がしやすいような形で問題の整理ができたらよろしいのではないかと思います。ちょっと抽象的な意見で恐縮ですけれども、御検討いただければと思います。
【柏尾上席評価監視調査官】 新たな耐震基準の適用されている56年度以降の建物であれば、まず耐震性能は高い、大丈夫だろうということになりまして、既存不適格建築物をどうするかが最大のポイントになっているので、そこに焦点を合わせることになろうかと思います。
【藤井委員】 それは、住宅のことでしょうか。公共物は全部解決されているということでしょうか。
【柏尾上席評価監視調査官】 基本的には住宅になります。
【藤井委員】 住宅、マンションの関係だけですか。
【柏尾上席評価監視調査官】 ええ。学校なども耐震化を進めていますけど、どちらかというと予算をつければ進むという話になるかと思います。
住宅はやっぱり国民の皆さんの協力、自助努力になりますので、そこに難しさがあると考えております。インセンティブと申し上げましたのも、どちらかというと自助努力を促すためにはどうしたらいいか。そこが中心的な課題になるのかなという考えでございます。
【藤井委員】 インセンティブを高める政策が既にあって、その評価をなさるということではないのですよね。
【柏尾上席評価監視調査官】 逆に、政策がインセンティブについて十分な考慮を払ってこなかったのではないかという問題意識です。
【藤井委員】 インセンティブを高めたら仮設住宅とか公営住宅はいらなくなるかというと、被害の状況などいろいろな要素があると思います。具体的に対象とされている政策はどれかというのは、どこかに示されているのでしょうか。例えば、先ほど議論していた19年度の方は、対象政策が具体的にあります。 20年度の場合ですと、様々な政策を含むということでしょうか。それとも、この政策という特定はあるのでしょうか。
【柏尾上席評価監視調査官】 そういう意味では、建築物の耐震化と地震保険が対象政策になります。昨年度の若年者雇用対策ですと、非常に大きなくくりになっており、取りまとめの段階でかなり苦慮するというか、かなり幅広くやって焦点がぼやけたという反省点もございまして、今年度はどちらかというと施策を絞り込もうということで、建築物の耐震化及び地震保険と医師確保対策、これぐらいのくくりを対象にしたということでございます。
【藤井委員】 耐震化ということに絞れば、施策の実施官庁と総務省が対象とお考えになっておられる想定政策は、基本的には認識は一致しているという理解でよろしいのでしょうか。
【柏尾上席評価監視調査官】 耐震化という政策については一致していても、評価の視点については一致はしていないと思います。ワーキング・グループの示した評価の視点は、あくまでも第三者的な立場からみた建築物の耐震化、地震保険の効果・影響を把握してくださいというものですが、国土交通省と財務省は、それをやると他府省の政策の効果を把握することになってしまうのではないか、他府省の持っているデータを使うことになると、そこはなかなか難しい面があるのではないかということを心配しているということだと思います。
【松林政策評価官】 申し訳ありません。次に、医師確保対策について、簡単に御紹介させていただきたいと思います。
【柏尾上席評価監視調査官】 医師確保対策につきましては、厚生労働省は、例えば医師数の基準を作成する場合に、医師全体、地域別、診療科別に分けて推計することはできません、医師配置基準と医師不足との関係の効果の把握はできませんとしております。
次に、医師数の増加が国民医療費に与える影響については、医師数は増加しているけれども、受診延日数は減少しており、医師1人当たりの患者数は減っているので、医師誘発需要はみられない。医師誘発需要はみられないから、それを前提とした分析は困難ということであります。これにつきましては、医師誘発需要は、医療サービスの需要と供給とは独立に存在せず、医師が需要を誘発するという理論でありますので、受診延日数の減少というのは、そこの原因と結果の関係を説明しておりませんで、需要量が減少したというデータでありますので、掘り下げた分析を行っていただく必要があるのではないかと考えております。
【金本分科会長】 というところですが、また、地震対策に戻っても結構でございますが。
【森泉委員】 建築物の耐震化のデータのことですが、国土交通省で直近のデータを使うのが困難ということで所得階層の調査をしないというのは、まだ理解できません。新しいアンケートを行うのか、あるいは既存のデータを使うかによって大分違います。いずれにしても、所得階層が非常に難しいということであれば、さっき藤井委員がおっしゃっていたように、少なくともインセンティブを把握するためには、持ち家と借家というのはインセンティブに大きく違いがあるので、そこを調べてはいかがでしょうか。これはそんなに難しくないと思います。
ただ、アンケートを建物にまくのか、世帯にまくのかによって若干違いますので、それは工夫していただいて、持ち家は自分世帯の話ですけど、借家となると今度はビジネスとしての話になるので、その辺のインセンティブ構造の違いは出てくのではないかと思います。
【金本分科会長】 そのほかございますか。
【佐藤臨時委員】 ちょっと細かいですけど、さっきから、借家か持ち家か住宅か公共物が入るのかという議論が、若干錯綜しがちなので、何をターゲットにしているかというのも必要だと思います。もちろんアパートの耐震化もあり得ますけど、基本的には持ち家の人たちの生活再建をスムーズに行う。あるいは被災の度合い、リスクを小さくすることをポイント、評価のねらい、政策の主眼に置く。ターゲットをどこに絞っているかということを明確にして、それについての政策評価ですと言わないと、話がすごく広がるような気がしています。
それから、地震保険の効果ですけど、地震保険はもともと生活再建用の資金を与えるためのものなので、生活再建に及ぼす効果はそれはそうだと思います。ただ、仮設住宅は、災害救助法の関係で、災害救助にかかわる話なので、多分関係ないかなと思いました。公営住宅とか各種支援金の話まで入ってくると、これは復旧・復興段階の議論になりますから、そうすれば生活再建をスムーズに行った被災者はこれからは外れていくわけで、したがってこちらの方は事後的にかかってくる被災者に対する公的支援のコストが軽減できるでしょう、それはあり得ると思います。そのあたり、何をターゲットにしているのかということを明確にしていないと、話がすごく広がって、結果的にできないという議論になってしまう気がするので、それだけ1つ申し上げます。
【森泉委員】 今の御発言もそうですけれども、やはり、評価のねらいとして、人命を述べている限りは、私は持ち家だけを対象にするのではないと思います。資産とかを対象とするのであれば、持ち家だけにターゲットを絞ればいいですけれども、やっぱり全世帯、全国民の人命に関して言うのであれば、借家に関しても調べなければいけないと思います。
【金本分科会長】 何をどういうふうに調べるかというのは、向こう側に情報がありますので、向こう側で考えてもらうということだろうと思います。
藤井委員の話もありましたけれども、明確にこの政策がどうか検討しろということならば、やることが簡単かどうかは別として、関係府省もどういうものかというアイデアがとりやすいとは思います。ざっくりとしたものならこちら側で評価してほしいものはあるんですが、それが具体にどんな感じになるかについては、今の段階で全部詰めるというのはちょっと難しそうですので、今後、具体的なスキームを決める段階で、この分科会の場で、関係府省の考えも聞きながら、いろいろ議論をさせていただくということではないかと思います。
答申に書かれるとやらなくてはいけなくて、やらないと怒るぞと言われると困るというのが、関係府省の感じだと思います。
【柏尾上席評価監視調査官】 昨年度は、評価の視点については、諮問会議に示した段階ではごく簡単なもので、翌年2月に、こういうふうに調査をしてくださいというものを出しましたところ、関係府省にとっては準備期間が短くなってしまうので、早くして答申に盛り込もうという考えでございました。
【藤井委員】 例えば地震保険ですと、まず、初めに地震保険の効果を検証しなさいということがあって、その後の話は流れとしてはそれにも左右される感じも多少します。ある程度、構造付けをしないと、最初から並列で、地震保険についての代替案というのも、どういう観点での代替案なのかがよく分からない点もございます。多少柔軟に設定できる余地を残すように整理したらいかがかなという感じがいたします。細かい話と大きい話が並列に並んでいるような印象を少し受けましたので、御検討いただければと思います。
【金本分科会長】 この代替案は地震保険以外の政策ということではなくて、今の地震保険というのは、都道府県単位で決まっていたりします。多分、実際の住宅所有者にとってはあまり大きなメリットがない。負担のメリットがない地域、あるいは人が多い感じになっていると思います。そういったものを考えて、これからもうちょっと、どういうスキームで実施していくかを考えてほしいということだったと思います。
地震保険についてはもともと何のためにやっているのかを考えていかないと、評価が進まない。単に保険をビジネスとして提供すればいいだけならば、特に国の政策としてやる意味はあまりないのですが、国としてやる意味とはどこなのか。リスクが大きくてプールできないからプールしているだけというスタンスなのか、評価側は、地震保険によってほかにいろんなメリットもあるからそれをどうするかというトーンですけれども、その辺、もうちょっと明確にしておく必要があるかなという感じがあります。
【松林政策評価官】 まだ、20年度については、関係府省と引き続き議論を重ねていかなければならないところがありますので、その中でなるべくターゲットを絞って、観点も絞り込んでいきたいと思いますので、また、御相談させていただければと思います。
【金本分科会長】 そのほか、何かございますでしょうか。
課題がかなり残っておりますが、20年度についても次回に答申案を取りまとめたいと思います。後ほど事務局からスケジュールの御説明があると思いますが、かなり厳しい状況です。いろいろ個別に御意見をお伺いするようなこともあるかと思いますが、よろしくお願いをいたします。
そういったところで、今日はこれまでにさせていただきたいと思います。次回以降の日程について御説明をお願いいたします。
【松林政策評価官】 今日、時間の関係で御紹介する時間がございませんでしたけれども、本日御欠席の高木委員の御意見をお配りさせていただいております。御参照いただければと思います。
次回の日程でございますけれども、11月12日10時半から、場所は虎ノ門パストラルでございます。この場で、分科会として答申案文の確定をしていただければと思います。今、分科会長からもございましたとおり、今日出ました御議論を踏まえまして、かつ、関係府省とも議論をして、案文を整えまして、12日までに御相談をさせていただければと思っております。
以上でございます。今日はありがとうございました。
【金本分科会長】 それでは、これで閉会させていただきます。どうもありがとうございました。
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