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政策評価・独立行政法人評価委員会 政策評価分科会(7月29日開催)議事録

日時

平成21年7月29日(水)10時00分から11時30分

場所

中央合同庁舎第2号館 総務省第3特別会議室

出席者

(政策評価分科会所属委員)
金本良嗣分科会長、森泉陽子委員、青山彰久臨時委員、小峰隆夫臨時委員、齋藤誠臨時委員、佐藤主光臨時委員、清水雄輔臨時委員、高木勇三臨時委員、高橋伸子臨時委員、立花宏臨時委員、田辺国昭臨時委員、谷藤悦史臨時委員、永井良三臨時委員、中泉拓也臨時委員
(独立行政法人評価分科会所属委員)
梅里良正臨時委員、河村小百合臨時委員
(総務省行政評価局)
田中行政評価局長、江澤審議官、讃岐総務課長、松林政策評価官、羽室政策評価審議室長、荒木調査官

議題

  1. 平成20年度重要対象分野(医師確保対策)の評価の進捗状況について
  2. 平成21年度重要対象分野の選定について

資料

会議経過

【金本分科会長】  それでは、時間が参りましたので、ただいまから政策評価分科会を開会させていただきます。
 まず、7月14日付で事務局のほうにたくさん異動がございましたので、紹介をさせていただきます。まず、関前行政評価局長に替わりまして、田中行政評価局長が就任されました。
 田中局長に一言ごあいさつをいただきたいと思います。よろしくお願いします。

【田中行政評価局長】  おはようございます。田中でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。
 早速に選挙も近づいてまいりまして、いろいろ政策論議、あるいは行政の在り方がいろいろと議論され、問われているような環境でございます。政策評価につきまして、当然のことながら政策の質の向上を図って、国民に対する行政の責任を果たしていくということで、重要な取組であると認識をいたしておりますし、また先ほどのような、行政の在り方が問われる中で、政策評価のやり方自体もいろいろと問われる環境ではなかろうかと考えております。
 これまで当分科会の先生方には、政策評価の重要対象分野の選定、各府省の評価についての御審議、各府省の評価の点検活動についての御審議、総務省が行う統一性・総合性確保評価についての御審議をはじめといたしまして、政策評価全般にわたりまして御指導賜り、感謝を申し上げる次第でございます。
 先ほど申し上げましたように、いろいろ騒がしい環境ではございますけれども、これまでお願いしました活動の重要性については、全くいかばかりかも変化なく、しっかりお願いしたいと思っております。先生方には、引き続き専門的あるいは大所高所からの御指導を賜りたいと存じますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。
 以上でございます。

【金本分科会長】  どうもありがとうございました。
 次に、渡会前審議官の後任に、江澤審議官が御着任です。江澤審議官にも一言ごあいさつをお願いします。

【江澤審議官】  江澤でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 先生方には、日ごろから各府省あるいは総務省の評価活動について御指導賜り、感謝申し上げる次第でございます。
 重要対象分野の評価に関しましては、医師確保対策あるいは地震対策の評価や、平成21年度のテーマ選定について、年内答申に向けて今後審議を本格化していただくことになります。各府省の評価の点検活動に関しましては、特に規制の事前評価について、さらに質の向上を図るため、従来の一般的な課題の提起に加えまして、個々の評価書の内容に踏み込んで審査を実施していくということでございます。
 また、現在政府を挙げて行政の無駄の削減や、質の行政改革に取り組んでおりまして、政策評価の立場からも、このような取組に貢献していく所存でございます。これらの諸課題への対応につきまして、これからも先生方の御指導を是非よろしくお願いいたします。
 どうぞよろしくお願いいたします。

【金本分科会長】  どうもありがとうございました。
 それでは次に、新井前総務課長の後任に、讃岐総務課長が御就任です。最後に新井前調査官の後任に、荒木調査官が御就任です。
 それでは、本日の議事に入らせていただきます。会議の前半は、20年度の重要対象分野のうちの医師確保対策に関して、各府省における評価の進捗状況について御審議をお願いいたします。後半は21年度、これからの重要対象分野の候補政策について議論をしていただきたいと思います。
 20年度の重要対象分野の医師確保対策につきましては、21日に行われましたワーキンググループで、関係府省から進捗状況のヒアリングをいたしました。その結果を踏まえて、分科会の意見案を資料1としてお配りしております。
 それでは、参考資料1の基本方針2009、それから参考資料2の今後のスケジュール案、それから資料1の医師確保対策の評価の進捗状況に関する政策評価分科会の意見案について、事務局から御説明をお願いいたします。

【松林政策評価官】  それでは御説明申し上げます。
 最初に参考資料1といたしまして、経済財政改革の基本方針2009(抄)をお配りしております。これは昨年も重要対象分野でこのような記載が骨太方針にございました。今年も重要対象分野である地震対策及び医師確保対策の政策評価を推進する、政府としてもしっかり取り組んでいくということが記載されております。
 それから参考資料2といたしまして、今後のスケジュール案をお配りしてございます。左の欄が20年度の重要対象分野、右が21年度でございまして、本日両方について御審議いただくことにしております。20年度の重要対象分野のうち、医師確保対策について、本日御意見の検討をしていただき、地震対策につきましては、データの分析等で、まだ進捗が遅れているということで、8月31日にワーキンググループを予定させていただいております。
 本日の御審議を踏まえて、関係各省に評価書の最終的な作成に取り組んでいただく段取りになり、その後評価書の提出を受けて、答申案について、10月に入りましてからワーキンググループで御審議をいただく予定にしております。若干それに遅れて地震対策がついていくというスケジュールになろうかと思います。
 それから、そのワーキンググループの答申案の検討を踏まて分科会を一度開きまして、政独委の答申、それから総務大臣から諮問会議への報告という段取りになっております。これがこのままいくとしますと、11月末ということでございます。
 21年度新テーマにつきましては、本日の御審議を踏まえまして、関係各省のヒアリングのテーマを選定し、ヒアリングをワーキンググループで9月に行うということでございます。そのヒアリングを踏まえた上で、答申案の検討をワーキンググループで10月にやっていただくということになっておりまして、こちらも11月に入りましてから分科会、政独委と開いて答申をいただく。それを踏まえまして、総務大臣から諮問会議に提示を行うという予定になってございます。
 以上がスケジュールでございます。
 それでは医師確保対策の意見案、資料1について御説明を申し上げます。先般ヒアリングを行い、厚生労働省、文部科学省の現在の評価の実施状況について報告をいただいた中でいろいろ御議論が出まして、先生方の御指摘を整理したもの、これまでの御審議等々を踏まえまして気付きの点も加えて整理をさせていただいたものでございます。本日はこれを基に、もう少しこの点をつけ加えてほしいとか、この辺を整理してほしいとか、そういった御指摘をいろいろいただければと思っております。
 この意見を踏まえ、この後厚生労働省及び文部科学省において最終的な評価書が作成されます。もちろん、御指摘に沿えない点、沿える点、あろうかと思います。沿えない点につきましては、最終的に出てきた評価書をもとに、また御審議をいただきますので、そこでまた答申案の中に盛り込むべきだと、あるいはこの点は仕方がないといった御判断もあろうかと思います。
 それでは、資料1につきまして御説明申し上げます。最初、「1 医師数の決定方法」の項目でございます。
 「必要な医師数の基準」、「ア 必要な医師数の基準及び医師の過不足数の推計」ということでございます。ちょっと前後して申し訳ないですけれども、各府省、特に厚生労働省が、評価設計の段階で先生方からいろいろ御指摘いただいた点について、データとしてとりあえず集計してみたという状況でございまして、データを基に細かい分析なりがなされている段階にございません。
 そういうことで、この分科会の意図しているところがまだ出てきていない中で、この点をこういう方向からさらに分析してほしいといったようなトーンになってございます。
 順に申し上げますと、今回の厚生労働省の各データは、あたかも患者数の減少により、医師不足が緩和しているかのようになっており、国民一般、医療関係者の受止め方とは異なっている。必要な医師数を明らかにするために、より掘り下げた分析を行い、深刻な医師不足がどのような部分に現れているのかを明らかにできないか。
 それから、年間の推計入院患者数については、在院日数の短縮化の影響が考えられることから、新規入院患者数や重症度を考慮したデータについても分析する必要があるのではないか。
 年間の推計一日平均外来患者数については、長期処方の影響や平成14年から17年に起きている変化、入院から外来への患者シフトの要因について明らかにすべき。
 地域・医療機関ごとにみた診療科別の医師数の経年変化については、単純集計の段階にあるので、これを加工し、より掘り下げた分析ができないか。
 病床規模別にみた常勤換算医師1人当たり患者数の経年変化については、大規模病院に患者が集中し、医師の過重労働を招いているとの一般のイメージとは逆の結果が示されている。医師の業務量をより反映する指標を用いた分析も必要。
 医療機関別の卒後年数別医師数の経年変化については、「東京都・小児科・男性」といった項目しかございませんでしたので、主な診療科別に都市部と地方部を比較できる典型例についての作成が必要。
 また、医師の勤務先変化の構造的な原因と医療への影響について分析ができないかといった点。
 次の、「医師配置標準と医師不足との関係」につきましては、診療科ごとにみた医師1人当たりの患者数の経年変化、それから病床規模ごとにみた常勤換算医師1人当たりの患者数の経年変化は、いずれも医師の業務量の減少を表している。このような状況は、一般の受止め方とは異なっている。より掘り下げた分析を行い、医師の業務量の面からみた医師不足の状況を明らかにできないか。
 「医師養成数の調整方法」は、これまでの医師の需給見通しについて、推計と実際とが乖離した理由として、医療の高度化、高齢者の増加による医療全体のニーズが見込み以上であったということが挙げられております。しかし、今回の厚生労働省の各種データはこれを裏付けていないことから、裏付けデータが必要ではないか。乖離の要因分析が必要ではないかということでございます。
 「(3)医師の質の確保」は、特定の病院に臨床研修医が集中している理由について、「臨床研修に関するアンケート結果」では、初期研修のプログラムの充実、初期研修後の進路やキャリアの有利性、指導体制の充実が挙げられている。しかし、同アンケート調査結果では、大学病院ではなく研修病院を選択した医学生等については、多くの症例の経験、プライマリ・ケアの修得、様々な診療科・部門でのバランスの良い経験の回答率が高くなっている。後者のニーズについて、施策がきちんと展開されているかどうかというものを検証する必要があるのではないか。
 大学院重点化の影響は平成3年と15年の対比で、医学系大学院入学者が1.6倍という数字が出ておりますが、このことによる診療医の実質的な減少など医療に及ぼす影響を分析できないか。
 医学系大学の入学者選抜における地域枠の設定について、大学による地域定着率の差の原因を分析できないか。
 特定診療科勤務を希望する学生等を対象とした奨学金例及び平成20年度以前から設置されている寄付講座について、貸与対象者数に対する勤務者数が把握できるよう、データを整理できないか。
 次に、大きな項目の2でございます。
 「医師の偏在を是正する施策」といたしまして、「地域間及び診療科間の医師の偏在を是正する施策」。大学病院に在籍する臨床研修医の割合が減少していることへの対策については、目的と手段の説明に終始せず、事後検証のために効果を具体的に予測できないか。
 勤務医の勤務時間の推移については、医師の勤務時間の減少を表しており、この状況は、一般の受止め方とは異なることから、より掘り下げた分析を行い、深刻な長時間勤務がどのような部分に現れているのかといった実態をきちんと表すような資料を出してほしい。
 患者の受診行動の適正化に向けた取組につきましては、平成20年度から始められた事業の説明に終わらず、効果が明確に現れている事業を取り上げて、その成功要因を分析できないか。
 他職種による医師の業務量の軽減については、目的と手段の説明に終始せず、事後検証のために効果を具体的に予測できないか。
 診療科別に医師の業務に占める術後管理の割合と他職種に代替可能な術後管理がないかどうか把握できないか。
 適切な比較のできる複数の時点において、医療事故・医療紛争の頻度と医師数との関係を、診療科、医療機関の種類等のセグメントの軸に分けて分析できないか。
 「医師の偏在を是正するための諸施策の検討」に移りまして「経済的インセンティブの付与による医師の偏在を是正するための諸施策の検討」。医師の勤務状況については、「勤務医の負担軽減の実態調査」を基に、全体として悪化しているというような説明がなされている。しかしながら、政策のターゲットは、全体のうちの「悪化」している35%というところに光を当てなければいけないと、実態調査を改めて分析し、「悪化」しているセグメントを特定できないか。
 産科・産婦人科、救急医に対する手当については、目的と手段の説明に終わらず、事後検証のために効果を具体的に予測できないか。
 経済的インセンティブに対する医師の意識については、アンケート調査を基に「処遇・待遇」を挙げた医師の割合が、研修病院の選択で2割程度、診療科の選定で5%程度と説明されている。しかし、同調査では、医師不足の地域・診療科で従事することの条件やインセンティブとして何が働くかという質問においては「処遇・待遇」という答えをした人が7割前後と他を引き離し1位となっている。
 政策判断の前提となる経済的インセンティブの捉え方については、改めて検証が必要ではないか。
 医師の収入については、個人立開業医の収入が勤務医と比較して低いものとなっている。これは一般に言われていることと結果が違いますから、再整理の必要があるのではないか。
 医師数と医療費の関係については、高齢化の影響を考慮して、65歳以上の人口に対する医師数について示すほか、医療の高度化を反映した指標についても検討できないか。
 それから、「地域間の医師の偏在を是正するための諸施策の検討」。一定期間の地域医療への従事を義務づけることに対する医師の意識については、「臨床研修に関するアンケート調査」結果が記載されているが、未記載の賛成7.5%、これを外してなぜか説明されておりますので、これも含めて分析すべきと。
 一定期間の地域医療への勤務の条件として、キャリアアップの機会を付与している事例については、ニーズ、実施過程における課題や効果、費用等について、より具体的に分析できないか。
 奨学金の有効性を検証するために、貸与条件がどの程度守られているかを把握できないか。
 最後の項目でありますが、「医療機関の役割分担の明確化・機能の集約化による医師不足に対応するための諸施策の検討」。都道府県医療計画の実施状況については、目的と手段の説明に終始せず、事後検証のために効果を具体的に予測できないか。
 医療連携体制推進事業については、平成18年度開始のものについては、効果の把握が可能な段階にあると考えられることから、それを具体的に説明できないか。
 厚生労働省の資料にありました西北五地域における自治体病院機能再編成マスタープランについては、ニーズ、実施過程における課題、効果、費用等について具体的に説明ができないか。特に、医療機関の機能の集約化による医師不足の緩和に関する効果を明らかにできないか。
 最後でありますけれども、診療所の1施設当たり初診・再診患者数の増加と一般病院1病院当たりの外来患者数の減少については、医療機関の役割分担の明確化・機能の集約化との因果関係について説明が必要ではないかといった点。
 以上でございます。

【金本分科会長】  どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまの御説明につきまして、御質問とか御意見ございましたら、お願いいたします。
 永井委員、どうぞ。

【永井委員】  大分問題点が出てきていると思うのですが、まず、1ページ目の下のほうに「東京都・小児科・男性」と括弧のことが出ていますけども、要するに、こういうデータ、これは別添資料の7ページです、卒後何年目に医師がどこにいて、どういう勤務をしているかというデータが今まで出ていなかったということが、まず問題だと思います。こういう元のデータを厚生労働省は持っているわけですが、これを今まで出していない。是非これは公開して、研究者がいろいろな角度から分析できるようにすべきではないかと思います。そうでないと、厚生労働省の路線に合ったデータだけ、バイアスがかかって出てくる可能性がある。そこがまず1点かと思います。
 それから2ページ目ですが、医師の質の確保というところで、大学病院がなぜ嫌われているかということも、もう少し分析する必要があるのではないかと思います。要するに、一言でいえば医療行為以外の業務が多いのです。それから、若い医師を囲い込まなければ手術もできないような体制的な、構造的な問題がある。例えば年齢別の医師の数を考えたときに、大学というのは必ずピラミッド型になっています。上へ行くとポストがないということもあるのですが、ピラミッド型の底辺の部分、若い医師に術後管理とか患者さんの世話をさせないと、高度な医療はできないわけです。一般病院はまだ釣鐘型になっているのですが、ずっと釣鐘型でも疲弊してしまうわけです。
 つまり、例が適当かどうかわかりませんが、スペースシャトルを考えていただきたいのですけど、宇宙飛行士を送るためには補助燃料ロケットが必要なのです。それを大学病院では若い医師にさせているわけです。ですから、外科医が足りないといって、外科医の若い医者を増やしても、彼らがずっと宇宙飛行士になれるわけではないのです。40歳を過ぎると外科医ではなくなるわけです。ですから、そういう構造的な問題、それが結局医療行為以外の業務ということで、若い医者から嫌われているわけですから、そこの部分をどうするのかという議論をしないといけない。要するに、術後管理士とか、こういう職種をつくらなければ絶対に解決できない話で、外科医が足りないから増やせといっても、また同じ問題が起こってくる。
 ですから、そういう意味で、公的病院とか大学病院における医療行為以外の業務の改善ということを、かなり明確に打ち出す必要がありますし、それから、ある年齢になると大学病院なんかですと、教授にならないと出て行かないといけないわけですから、もっと大学病院での臨床貢献を評価するシステム。要するにポストをちゃんとつくらないと、若い人たちはみんな出て行かないといけないということで嫌気がさしてくるわけです。それは1つは文部科学省の問題でもあると思うのです。その辺の指摘が必要ではないかと思います。
 それから3ページ目ですが、上から2番目の○です。患者の受診行動の適正化、これは非常に重要なことで、いろいろな地域活動が行われていますが、厚生労働省の資料には必ずしも出ていません。例えば兵庫県の丹波市の柏原病院が、お母さんたちがコンビニ受診を控えましょうという活動をしていて、非常に成功しているのですけれども、そういう活動をどんどん取り上げていくということが、あるいはそれをまだやっていない地域に広めていくということが即効性のある政策ではないかと思います。
 それから、上から4番目の○で、診療科別に医師の業務に占める術後管理の割合、他職種に代替可能な管理がないかどうか。これは現在の職種の中で考えるのも1つですけども、もう新しい職種をつくったらどうなのだと。アメリカですと、十数万人医師でない人たちが医療行為をやっているわけです。そこは医療というシステムの中の非常に重要な歯車で、その歯車を欠いた状態の中で数をやりくりしても、全然解決にならないわけです。ですから、コメディカルの業務の拡大ということと、医療行為が可能な医療職種の創設ということも検討するように打ち出していいのではないかと思います。
 それから一番最後、4ページ目のところですが、自治体病院の機能再編成あるいは医療機関の機能の集約化の問題が出ていますが、病院の統廃合に規制があるということです。例えば日赤と県立病院は一緒にはなれない。設立母体が異なると、簡単には一緒になれないわけです。そこの規制の見直しということをうたってもいいのではないかと思います。
 以上です。

【金本分科会長】  どうもありがとうございました。
 今の点、政策としては非常にもっともなところですが、これを政策評価の中に翻訳しておかないといけない。こういうふうな方向に政策を変えるべきだというのは、評価でやることではなくて、評価で、その方向に向けたいろいろなものがあぶり出されてくるような設定をする必要があるといったところで、基本的には今おっしゃられたような方向に持っていくためには、こういう分析をすべきと言うのか、あるいはこういうデータを出すべきと言うのかと、そういったところが必要かなと思うのですが、何かその点について、もう少しつけ加えていただけるようなことはございますでしょうか。

【永井委員】  まずはデータを出してほしいということです。先ほどの「東京都・男性・小児科医」が卒後どこにいるか、ほかの科はどうなのか、女性はどうなのか、ほかの地域はどうか、都市圏とその他の地域でどうなのかという生データを出して自由に研究させるというのは、1つの手だと思います。
 それから医療職種については、検討会をつくって広く意見を集めたらどうかとか、そういうことを提案することは可能なのではないでしょうか。
 少なくとも構造的な問題の共通認識を図るということは重要なのではないかと思うのです。どこに問題があるかというスキームがわからないままに、細かいところでお互い議論していても、堂々巡りになっていくわけですので、その辺の共通認識を図らせるような誘導は、この政策評価でやってもいいのではないかと思うのですけれど。

【金本分科会長】  共通認識をそのまま、こういうのをつくれというふうには多分言えないと思います。それが出てくるようないろいろな土台をつくるという、そういうところだと思うのですが。

【永井委員】  例えば、先ほどお話しした外科医の問題。外科医が生涯外科医をやっているかというと、やっていないのです。そういうことも知られていないと思うのです。40歳になると内科医になるわけです。あるいは整形外科医になったり、自由標榜制のもとに変わっていくわけで、外科医が足りないといったときに、何がどう足りないのだというデータを出してもらう。つまり、卒後50年たった人、60年、40年でも、何科をやっているのですかという調査をしてもいいと思うのです。そういうデータを出していけば、本当に外科医が足りないのか、若い時代に手術の術後の管理をする外科医が足りないのか、問題点が見えてくると思うのですが、そういうデータを出してもらうというのは非常に重要だと思います。

【金本分科会長】  そうですね。そういったところで、なかなか闇雲に言うと、そんなデータはないとか、手間暇かかって予算がないとか言いますので、その辺をうまく、これなら出るだろうといったふうに設計をしていくといったところをやっていただけると、あとすごく変化が出るのかなという感じがいたします。
 その辺は、事務局のほうで何か。

【松林政策評価官】  例えば、今おっしゃった外科医の問題ですと、1ページ目の6番目の○、永井先生の御発案で厚生労働省が整理して、まだ「東京都・小児科・男性」しかございませんけども、例えばこの中の診療科別に、外科を必ず含めて分析をしてもらうというのも1つの手だと思います。

【永井委員】  これでかなり分かると思います。この調査は2年に1回やっているわけです。この生データを公開せよというだけで十分かと思います。

【金本分科会長】  そのほか、ございますでしょうか。
 小峰委員、どうぞ。

【小峰委員】  私は医療の専門家ではないので、具体的なデータの是非について十分判断できないのですが、この資料1を見ていますと、一般国民の受け止め方と違うとか、一般のイメージと逆だとか、そういう表現がたくさん出てきます。何か、あたかも一般国民のイメージが評価の基準になっているような気がします。しかし経済などの分野では、一般のイメージが全く間違っているということはよくあることです、何かあたかもそういう一般国民はどう思っているかによって、今回のデータを振り分けたというイメージを持たせるのは非常によくないのではないかと思いますので、その辺を工夫していただけないかなと思います。

【松林政策評価官】  これは表現の問題で、ちょっとまずかったかと思うのですけれども、一応受け止め方と書いてありますが、ヒアリング等々あるいは御議論の中で実際の現場の先生から、これは実態を反映していないという御意見を頂いたものについて整理をさせていただいております。ちょっと表現を工夫させていただきます。

【金本分科会長】  では、谷藤先生。

【谷藤委員】  この意見の中にも何度も書かれておりますけれども、やはりワーキンググループの会に出ましても、全体的にトーンが目的と手段の説明と言われるようなものにほとんど終始されている、これまで行われてきた施策の効果測定といわれるようなものをきちんと測るようなことになっていないという印象があります。説明に終始していて、具体的に分析していないとか、あるいは効果が明確に現れているかどうかが明示的になっていないということになっております。厚生労働省に、効果が具体的に出ているか、出ていないのかという、これまでの言わば施策、それをもう少し明示的な表現にしてもらいたいということを要望します。

【金本分科会長】  これは厚生労働省だけではなくて、多分政府全体の課題だと思いますので、多分そう簡単に答えが出るわけではないのだとは思いますが、事務局のほうは。

【松林政策評価官】  引き続き、強く申し上げていきます。

【金本分科会長】  佐藤先生、どうぞ。

【佐藤委員】  ちょっと素朴な疑問なんですが、頂いた参考資料の3−2、この中に幾つか出していただいた資料の中に、その16ページですか、勤務医の給与についてなのですが、年収ベースで比較しているということで、これは前に財務省が出した財政制度等審議会に出てきたデータと病院はほとんど変わらないのですけれど、医療法人、一般診療所はあまりにも違うのです。
 例えば、財政制度等審議会だと、医療法人が2,500万ぐらいなのです。開業医だと2,800万ぐらいという、これはよく見ると6月の収入を12掛けして推定しているということなので、多分ちょっと粗いのだとは思うのですが、それにしても出てきている数字があまりにも違う。言いたいことは、要するに開業医は儲けていないよということを言いたいのだと思うのですけれど、でもそれだと、先ほど永井先生たちから説明があったように、例えば時間が経つにつれて、皆さん勤務医を辞めて開業医になっていく経済的なインセンティブもよくわからないし、おそらくやっぱり開業医はそれなりにもらっているはずだと思うのですけれど、なんでこういうデータに違いがあるのか。出所は同じなのです。医療経済実態調査なので。こういうふうにして、いろいろなミックスしたデータが出てくると、やっぱり混乱するので、もし違いがあるのだとすれば、何が前提として違うのかということをはっきりさせたほうがいいのかなと思うのですが。

【松林政策評価官】  この点については意見の中に入っておりますので、厚生労働省に確認してもらうことになっています。

【永井委員】  診療所に勤務する医師じゃないですか。いわゆる開業している主体者じゃなくて。そうすると、こんなものじゃないですか。

【金本分科会長】  そのほか、ございますでしょうか。よろしいでしょうか。

【梅里委員】  オブザーバーでもいいですか。独法のほうの評価の委員をしております。関心があって、ちょっと参加をさせていただきました。
 資料をたくさん見せていただいて、ワーキングのほうでも適切に評価をされて、注文を出しているように思うのですけれど、データはつくり方で随分いろいろできるじゃないですか。例えば、これを見せていただいて、先ほど国民の一般の感情と違うという御意見がありましたけれど、例えば別添資料6で、病床規模が大きくなるほど医師1人当たりの患者数が少なくなっていくという資料があるのですけれども、各病院ごとに必要な医師数を求める、定める医療法の標準、それで必要な医師数を計算するときも、外来と入院を比べると、外来のほうがはるかに業務量は少ないので、外来患者については2.5で割って計算するように国は定めているのです。
 そういったことを考えると、これはどうなっているか分からないですけれど、単に在院患者と外来を足しています。そうすると、これは外来患者数のウエートがものすごく高く出てしまう。ということは、小規模の病院では外来が多いですから、そうすると正にこういう資料がつくれるのだと思うのですけれど、これが本当に医師1人の業務負荷を現しているのか、大変さを現しているのかということになると、大変疑問が出てくるのではないかと感じます。
 だから資料というのはつくり方によって、データですから、年度変化の患者数についても、平成12年に介護保険が導入されております。そのことによって、いわゆる患者といわれる方は減っていると思うのですけれど、介護保険のほうに、医療費もがくっと減りましたけれど、でも介護のほうの費用も足せば合計として、社会保障という観点からは変わっていないどころか、増えているのです。だからそういう制度の変化というようなものを加味すると、本当に実態としてどうなっているのかというようなことは変わってくるだろうと思うのです。
 だから、こういうデータをつくるときのつくり方で、このようなデータももちろんつくれるけれども、本当にこれが実態を現しているのか、それが医療関係者の方が実態とちょっと合っていないと感じられた大きな原因ではないか。まずこのデータをつくって、これが政策のベースになると思いますので、ここで誤ったデータをつくりますと、その政策そのものも変わってくるので、これは非常に重要なところであるのが、まず1点です。そういう意味では、永井先生が先ほど言われた生データをオープンにして、もっと幅広く実態をいろいろな研究者に分析してもらうというのは、非常に重要なことだろうと思います。
 それから2点目なのですが、政策についてですけれども、ここのところの例えば具体的な政策と呼べるのは2ページ目のところに、地域及び診療科間の医師の偏在を是正する施策というようなことで、初めて政策みたいなものが出てくるのです。それまではデータの分析ですから、具体的にどうするかという政策が出てくるのですけれど、これを見ると、大学病院に在籍している臨床研修医の割合が減少していることへの対策と、これはつまりちょっと長くなって申し訳ないのですけれど、医師の偏在を是正する方法として、誰かが強制的に行きたくないところにドクターを行かせるという強制的な考え方が1つと、それから医師が自発的にそこへ行ってもらうようにするという考え方が、もちろん強制か自発しかないと思うのですけれど、強制的な方法の中には、大学が昔力を持っていたわけです。大学が派遣をするという。それが弱体したから、それが弱まっているだろうということで、では昔の大学のやり方に復権させるのかどうか。その大学の強制配置と言ったらちょっと大げさですけれども、大学による派遣という方法に復権させて、元に戻すというのが厚生労働省、国の考え方の施策としてとるのであれば、この大学病院に在籍する臨床医の割合が減少しているということを問題だととらえて、これが戻るように、大学に派遣能力を戻すような施策をとるべきだし、そうではなくて大学以外、大学が派遣していること自体にも多くの問題があったということは指摘をされているわけですから、これに代わる医師派遣のメカニズムをつくるという政策をとるのであれば、別のものを考えなければいけないということになる。地域ごとにそういう采配という、医師の配置に関するような組織をつくるだとか、そういう考え方もあると思うのですけれど、そういう具体的な施策がここに現れていないので、単に大学の臨床研修医が少なくなっていることが問題だという認識で、それに対してどうするかという施策であると、大きく医師の偏在を是正するための施策という意味では、まだもう少し考える余地があるのではないかなと感じられるところがあります。
 それから配置に関しても、地域の偏在の問題と専門の問題があります。両者を今のような観点から考えていただければなと感じました。ちょっと発言をさせていただきました。

【金本分科会長】  事務局のほうから何か。今の話は背景とかございますでしょうか。

【松林政策評価官】  おっしゃるとおりだと思います。
 臨床研修の話は、おそらく厚生労働省の施策として研修を変えてみたはいいけれど、今騒がれているような問題が起こったので、応急処置を講じたというような感じになっているのではないかと。
 では、方法が間違っていないかという視点から、短期的な効果も併せて見ていこうという趣旨でございます。

【金本分科会長】  そのほか、どうですか。永井委員。

【永井委員】  今の派遣の問題はなかなか難しくて、そう簡単には結論は出ないと思うのです。と言いますのは、アメリカでも大学病院が医師を派遣しているのです。私、この間調査してきたのですが。ですから、ある程度自由に選ばせる魅力をつくって、自ら医師が赴くというのと派遣と、結局コンビネーションでいかざるを得ないと思うので、これはかなり慎重な議論が必要だと思います。
 ただ、どういう改正にせよ、魅力ある病院でないといけないわけで、そういう意味で医療行為以外の業務の多い病院は、いくら強制であれ自主的であれ、嫌われるわけです。だからそこをどうするかという議論をして、しばらく様子を見たほうがいいのではないかと思います。少なくとも大学に関しては、若い人を抱え込まなくても運営できる体制をつくらないといけないということがポイントだと私は思います。

【金本分科会長】  そのほか、よろしいでしょうか。中泉委員、どうぞ。

【中泉委員】  すみません、別の話なのですが、まずデータをできるだけ出すということで、別添資料27ページに、診療科別の医師数の推移というのがございます。これは総医師数の変化ですが、今回評価したいのは、例えば研修制度の変化ですとか、大学院の重点化の影響など、新たに医者になる人がどれくらい診療科類ごとに変化したかを分析するのも重要なテーマだと思います、つきましては、診療科別医師数の推移を、総医師数だけでなく、新規の医師数についても提供していただきたいと思います。データとしては最低限平成18年と10年の2年をお願いしますが、できればより多くのデータで時系列の推移を見ることができるように出していただければありがたいかと思います。またその際、男女比も問題になっていますので、男女別といったデータもあればありがたいと思います。
 もう1点は、先ほどからの永井先生の御指摘にもありましたような、例えば新しい職種をつくるといった、要するにないものを評価することについてです。政策評価では、このような評価は非常に難しいというのが現状だと思います。似たようなものとして、分科会意見の、医師数の偏在是正のために医学部定員の診療科ごとの設定について検討し、その見込まれる効果について把握できないかという質問を出していますが、それについてもほとんど評価されていません。
 これは基本的に、そもそも現在存在しないものを評価するというのはほとんど不可能だという考えが背景にあるのだと思います。ただ欧米の政策評価が進んでいる国では、そういった全く存在しないケースの評価でも、類似の施策を類推に近い形で分析し、評価の参考とすることも行われています。これは、全くやらないよりはやったほうがましということで、かなり類推に近いもの、連想に近いものでもとりあえず評価をやってみて、実際のあり得る効果と比較してみるということには十分意義があるという考えからきているのだと思います。
 上述のケースですと、医学部の場合、診療科類ごとの診療科枠というのはないので、かなり大ざっぱな類推になってしまいますが、例えば工学部では科ごとの定員がある大学と、ない大学がある。そうすると、例えばそれを比較してどういうことが言えるかどうか、これもあくまで全く違うものですので、参考までにしかならないと思いますが、そういった分析も参考になると思います。
 また、医療行為で新たな職種は現在なかなか見あたらないと思いますが、例えば消防庁の統計で、救急救命士の権限が拡大して、それによって救命率が飛躍的に伸びたというようなデータもありますので、そういった情報も、あくまで参考ということなのですが、分析の方法として、そういった手法の可能性についても御検討をお願いしたいと思います。
 以上です。

【立花委員】  1つ、よろしいですか。資料1に関連して、私も実は6月に入院して手術を受けた経験で、今日初めてこの資料をいただいて、ちょっとお聞きしたい点があったのですが、つまり3ページの「医師の偏在を是正するための諸施策の検討」の中で、確かにマクロでは意味がなくて、ミクロの分析が必要だと思うのですが、私が申し上げたかったのは、医療機関別、例えば国公立の診療機関と民間のプライベートセクターの診療機関との間で、必要な医師の充足率がどうなっているかというデータはあるのでしょうか。
 つまり、経済的インセンティブという場合、公務員の場合ですと何とかセンターとか、いろいろ非常に高機能の病院施設がありますけれど、公務員の場合ですと、いわゆる患者から見ると非常にお世話になった先生にお礼をしたいというケースが当然出てくるわけですが、国立の場合には、その辺は型どおりで、いや、そういうのは受け付けないのですと言うのですが、民間の場合には、私立病院の場合には、むしろ全然そういったことはなくて、受け取っていただけるという面もあるのです。
 ですから、私は公務員の倫理の問題、これはこれでもちろん大事なのですけれども、その辺の、単に表に出た待遇、給与とか、そういうことだけではなくて、いいか悪いかは別にして、面倒を見ていただいた患者のほうから心付けといいましょうか、そういったものの違いも私はあるのではないかなと思うのです。そういう面で、医師の偏在という場合に、地域とか診療科とか、そういったことだけではなくて、経営形態別といいましょうか、医療機関別の充足率がどうなっているかという点も1つあるのではないかなという点で、ちょっと気が付いた点がありましたので、申し上げる次第です。

【松林政策評価官】  経営形態別というのは、また新たな御提議だと思います。充足率につきましては、もともと決まった必要医師数なり基準がございませんので、データとしては現在のところないと思います。

【金本分科会長】  そのほか何かございますでしょうか。よろしゅうございますでしょうか。
 それでは、この医師確保対策については、ここまでにさせていただければと思います。今日の議論を踏まえて、分科会の意見を整理して各省に出さなければいけないということですが、それにつきましては、もう1回分科会を開くという日程もなかなか難しゅうございますので、事務局と私で御相談をしてまとめるということにさせていただければと思いますが、よろしゅうございますでしょうか。
 それでは事務局を通じて各省にお出しするということですが、今日御発言いただいたこと以外に、関係府省の評価について御意見がございましたら、期限が厳しゅうございますが、明日7月30日木曜日の正午までに事務局のほうに御提出をお願いいたしたいと思います。
 あと、事務局のほうには、本日御欠席の委員の方々からも御意見を伺っておくように、お願いいたしたいと思います。
 それでは次の議題に入らせていただきます。次は21年度に重要対象分野として取り上げる候補につきまして、6月29日と7月13日の2回、ワーキンググループで議論を行いまして、候補を選びました。お手元に資料2のワーキング・グループ候補案としてお配りをしてございます。ワーキンググループでは施政方針演説、重要な閣議決定、世論調査結果などの国民の関心の高さ、それから各府省の成果目標などを踏まえながら、中長期に継続して実施されてきた政策の中から、評価が政策の見直しや改善に役立つか、あるいは選択と集中に生かすことができるかといった観点から検討をいたしました。
 その結果、40程度の政策がまな板に乗ったわけですが、その中でも国民の関心が高いと思われるものや、課題を取り巻く現状等から、優先度が比較的高いのではないかと考えられるものを7政策選び出しました。
 本日、委員の皆様の御意見を伺った上で、9月の各府省ヒアリングを行うテーマを選びたいと考えております。
 それでは、資料2のワーキング・グループ候補案につきまして、事務局から御説明をお願いいたします。

【松林政策評価官】  それでは資料2の御説明を申し上げます。
 「海外広報、文化交流」、これは背景事情といたしまして、BBCのアンケート調査では日本の国際的イメージは世界第4位、比較的良好となっている。海外における日本語学習者数が大きく増加している。それから、ポップカルチャー等が引き付けた対日関心層の裾野の広がりに対し、先進国を中心に有識者層の対日関心が相対的に低下する「二極化現象」が生じている。海外広報、文化交流等に係る予算は150億円弱を使っているということでございます。
 評価のねらいといたしましては、インターネットの普及により、外交政策に及ぼす世論の影響力が増大しているとされる中、対象国の国民や世論に直接働きかけるパブリック・ディプロマシーの重要性が指摘されている。国のイメージは、外交政策、経済力、輸出製品、歴史、文化等の様々な要因によって形成されることから、対日理解の促進、良好な対日イメージの維持向上のため、その形成要因について分析をする。これを踏まえて、海外広報や文化交流事業がこれに的確に対応し、期待される効果をあげているかどうか検証する。
 2番目の、「犯罪の質的変化への対応」については、背景といたしまして、刑法犯認知件数は6年連続で減少。他方、暴行犯、知能犯は増加傾向。
 「治安に関する世論調査」では、国民の半数以上が、我が国を「治安がよく、安全で安心して暮らせる国だと思わない」と回答をしている。
 評価のねらいといたしまして、全体の治安状況が改善している中、国民の犯罪に対する不安感は依然として高いものとなっているが、この要因の一つに犯罪の質的な変化があるとの指摘がある。このことから、犯罪の犯行時間帯、発生地域、加害者、被害者、手口等の変化について、その状況及び原因を分析し、関連施策がこれに的確に対応し、期待される効果をあげているかどうかを検証する。
 3番目、「中小企業の生産性の向上及び海外展開支援」については、背景といたしまして、金融危機による世界経済の減速で、中小企業の業況や資金繰りが、急速・大幅に悪化をしている。人口減少社会の下での経済成長に向けて中小企業の生産性の向上が必要である。特にサービス業の低生産性が、経営資源の生産性の高い産業への移動を阻害するなど成長のボトルネックとなっている。人口減少に伴う国内市場の飽和と、アジア等の新興国市場の成長があります。
 評価のねらいといたしまして、中小企業の生産性の向上を目指し、平成19年度から3年間に集中的に施策が実施されていることから、その効果を把握するとともに、期待される効果が発現していない場合にはその原因を究明する。また、企業の規模を問わず、海外展開が成長の鍵を握るとされる中、経営資源に乏しい中小企業について、そのニーズを把握し、関連施策がこれに的確に対応し、期待される効果をあげているかどうかを検証する。
 「介護保険の予防重視型システムへの転換等」については、背景といたしまして、介護給付費は高齢化のスピードを上回って増加を続けている。介護老人福祉施設、特養老人ホームの入所待機者数は38万人と推計されている。
 評価のねらいといたしまして、介護保険制度の持続可能性、自立支援、在宅重視の観点より、平成18年度から「予防重視型システムへの転換」が図られている。これを踏まえ、介護予防事業の効果に関する目標の達成度合いを把握するとともに、達成度合いが低い場合にはその原因を究明する。
 また、介護給付の施設サービスについては、介護保険制度導入に伴う措置入所から入所契約への転換による需給ギャップやサービスの質の変化について検証し、期待される効果が発現していない場合にはその原因を究明する。
 「学力下位層の学力向上への取組及び教員養成」については、背景といたしまして、OECDが実施しているPISA2000と同2003との比較で下位25%層の学力が40ポイント低下をしている。同2006では大きな変化がない。教員採用試験の競争倍率が低下傾向にある中、団塊世代の職員が大量退職をしている。
 評価のねらいといたしまして、学力下位層の一層の学力の低下は、世代を超えた格差の固定化につながりかねないと懸念されており、子どもの学力の底上げが求められている。近年、基本的生活習慣、基礎内容の反復学習と学力との関連性が指摘されるとともに、市町村・学校レベルにおける改善例が報告されていることから、これらを検証し、政策として取り組むことの適否を検討する。
 また、教員養成大学の設置・収容定員への関与の廃止、大学・教育委員会への支援に伴う教員の需給ギャップや教員の質的変化について検証し、期待される効果が発現していない場合にはその原因を究明する。
 「渋滞対策」については、背景といたしまして、道路渋滞による時間損失は31.6億人時間、経済的損失は9.4兆円と推計。このほか、道路渋滞は交通事故や環境問題の要因となっている。
 評価のねらいといたしまして、渋滞対策として講じられている各種施策やその組合せによる実施について、その費用と渋滞の解消度合いについて比較検証し、より効果的で効率的な施策を見極める。また、渋滞対策のほか、道路のネットワーク形成や高速道路の料金設定等の要因が道路渋滞に及ぼす影響について検証をするということでございます。
 最後、「地域資源を活用した地域経済の活性化」については、背景といたしまして、多くの地方において人口が減少し、その結果、暮らしを支える施設の利用が不便になるなど、魅力が薄れ、さらに人口が減るという悪循環が生じている。
 評価のねらいといたしまして、公共投資が減少する中、地域を活性化させるためには、域外から所得を獲得する自立的な産業・企業の形成が求められている。これを踏まえ、様々な地域資源、産地の技術でありますとか、地域の農林水産品、伝統文化等を活用した企業活動への支援が行われていることから、その費用対効果について比較検証し、より効果的で効率的な施策を見極める。また、期待される効果が発現していない場合には、その原因を究明するということでございます。
 以上7つ、取り上げております。よろしくお願いいたします。

【金本分科会長】  どうもありがとうございました。
 それでは、御質問や御意見ございましたらお願いいたします。今、7つ出てきましたけども、夏明けにここで残すべきもの、あるいは新しく出てきたものについて各府省ヒアリングをして、その後2つとか1つとか3つとか、最終的に残して評価をしていただくかもしれないと。評価結果を経済財政諮問会議に提出するという立て付けになっておりますが、それがなくなる可能性も。相手がなくなると何をするんだという、そういうこともありますので、ちょっと非常に不安定ですが、とりあえず粛々と我々のほうはやらざるを得ないといったところでございます。
 そういったことを念頭に置いて、御意見をいただきたいと思います。

【青山委員】  1つよろしいですか。
 今、金本先生が言われたので、どうなるかわからないという話に関連するかもしれませんけども、それぞれやってみたらいいのではないかというテーマは、それぞれのウエートの高いとか低いとかありますよね。やればやったで、それぞれの結果が出ると思うのですが、問題は、今の政治状況を考えてみたときに、実は本来このテーマを選定するのは内閣なのです。今、形として経済財政諮問会議に案として上げて、そこでコンファームする形で内閣主導の形をとっていますけども、実質的に本来内閣なのだと思うのです。内閣というか、政府・与党一体の形で政治主導という意味で。
 実は、我々のような審議会と各府省と政治家の関係だと思いますけども、今は各府省と審議会が審議したものを答申として上げて採用する形ですが、多分、特にこの政策評価の性格からいっても、次の予算編成をどうするのか、あるいは限られた財源の中でどういうふうな政府形態を取ればいいのかということになれば、なおさらなのですが、むしろ政治に選定してもらうほうがいいのだと思う。政治が選定すべきなのではないのかと思うのです。
 これは経済財政諮問会議の今の現状でも、経済財政諮問会議の運用の仕方でいくらでも変わることではあるのだと思うのですが、今の経済財政諮問会議の運用をもっと変えるというやり方もあるだろうし、そもそも先生がおっしゃったように、なくなるかもしれない。あるいは今、政権交代をしたら、今度は違う形の仕組みが出てくるかもしれない。
 そういうことをこの政策評価のそもそもの位置付けから考えていって、皆さんもう考えていらっしゃるかもしれませんけれども、そうでないと非常に国民のニーズといったところで、それはいろいろなニーズがあって、それを最終的に政治的に意思統合するのは政治家というか、政府与党なわけですから、彼らに政策評価のテーマを決めさせるのではないかなとやっぱり思うのです。ここで絞っていって、大臣に上げて、大臣が経済財政諮問会議にそれを報告して、これでやってもらうという、本来そういうことではないのではないかと。
 逆に我々のような審議会は、私はアマチュアですけども、皆さん専門家の方がいらっしゃるので、そこで大きな方向が決まったら、その中で何のテーマを特に重点にすればいいのか、その方法が客観的なのか、あるいは漏れがないのか、多様な調査方法があるのではないかという、そういう技術的な視点をしっかり制度設計として埋め込むのがむしろ審議会の役割で、テーマ選定までここでやることなのではないのではないかという、すみません、そもそもの疑問が実はあって、こういう政治状況なので、ますますそういう考えが強まってくるのではないかと思います。

【金本分科会長】  今の制度設計がどうなっているかというところと、この制度設計がいいかどうかというところは、ちょっともう一つ区別をしておいたほうがいいかと思います。事務局から御説明いただくほうが正確かと思いますが、今の制度設計は、多分総務大臣が経済財政諮問会議に提案をして、経済財政諮問会議がこれをやってくれという設計で、我々は総務大臣にアドバイスをする立場で、我々を通していろいろな議論をしたものを総務大臣が持ち込む、そういう感じになっています。
 これが本当にうまく機能するかどうかというのは、おっしゃるとおり、いろいろなことがあるといったところですが、それを我々が議論してもしようがないといった問題。

【青山委員】  そうなんです。だから、このテーマを選ばなければいけないかと思ったときに、今の制度を私は分かっているつもりでいますけど、本来のサイクルからいけば、これは予算編成に直結する問題でなければいけないはずです。そういうことから考えると、形の上での政治主導ではなくて、実質的な政治主導をしなければいけない、根幹のテーマではないかなと思うわけです。
 特に、総選挙まであと1カ月ですけども、その大きな論点にもなりつつあるところを考えると、という感じが実はしたということです。
 だから、確かにこれを見ると、それぞれやったほうがいいなと思うのと、それから実は特に教育だとか介護だとかのところは、多分非常に関心が高いだろうなと想定されるのです。しかし、それは想定されるのですけれど、一方で経済力、成長力を強めなければいけないという事案でも、当然大事なテーマなのですけれども、限られた評価の資源というか、人員と時間のことを考えると、どこに絞るかということから考えると、それはやっぱり大きな政治意思。
 1つの考え方は、数年前まで成長力を強める政府活動に重きを置いてきたけど、多分時代とすれば、むしろ暮らし、教育だとか雇用だとか、そちらのほうに重点が、全体の国民よりも動いてきているのではないかということは想定されますけども、それはやはり何とでも言える話で、そこは実質的に政治主導というか、政治家主導ではなくて、一人一人の政治家が口を挟むような政治主導ではなくて、政府・与党と一体となった内閣主導で、このテーマで特に政策評価をしてほしいのだと。
 介護の休業補償がどうたらこうたらと細かい話ではないところで、もっと大きなテーマで。介護保険が本当に十分に機能しているのかどうなのか、それを重点的に政策評価してみてくれと。例えばそういうやり方があるのではないかと思ったわけです。
 すみません、ついでにもうちょっと言うと、私は個人的には介護と学力のことにとても興味があります。私自身の興味だけの話なので、どうでもいいといえばどうでもいいのですが、どちらにしてもやっぱり間口が狭過ぎるのではないかなというのは、少し思うわけです。介護保険は予防重視型システムにするというのは、財政の要請からそういうふうに転換したのですけれど、これは多分ほとんど現場では機能していなかった、うまくいっていなかったのだけど、想定はされるのですが、実はこういうもっと間口が狭いやり方ではなくて、2年か3年ぐらいをかけて、本当に介護保険が人々の安心を支えているのかどうなのかという、中期的な計画を立ててやったほうがいいのではないかと思われること。
 それから教育では、学力下位層云々というこのテーマですが、実はこれは学校教育だけの問題ではなくて、ある種の社会政策というか家族政策というか、家庭が崩壊している率が非常に高くなってきて、その子たちの学力が低下していることと非常に関係がある。
 となると、実は厚生労働省のやろうとしている、やっているのか、やっていないのかはっきりしませんが、ある種の家族政策を本当にちゃんとしているのかどうか。カウンセリングとか云々の問題もあるだろうし、それから生活保護家庭の支援の問題もあると思いますが、そういうふうにいろいろ広がってくるわけです。
 省庁とすれば文部科学省ですが、学力低下といわれている主人公の子どもたちは、そういう中で多様に生きているわけですから、それが総合的にどういうふうになっているのか。それから、特に学校教育の問題は、非常に初中教育の問題は難しくて、基本的に地方の教育委員会が一義的責任を負っているわけです。もしこれを文部科学省の政策をもっとしっかりやれというようなことだけでやった場合には、実は義務教育の集権化がどんどん進んでしまうという問題も出てくるわけです。
 そういうことからいって、このテーマは非常に大事なテーマなのですが、間口が非常に狭過ぎるという印象はどうしても受けるし、やるならば、もっと多様に現場の状態から見た制度設計をすべきだし、特に地方の教育委員会と文部科学省の関係が非常に制度的にも微妙な関係にあるので、必要ならば地方の自治体と共同で評価をするような、新しい方法を考えるというふうにしたほうがいいのではないかなと思いました。

【金本分科会長】  いろいろな御提案があって、今の枠組みの中でできることとできないこと、いろいろあるかと思いますが、多分間口を広げるとか、テーマをそれぞれどういうスコープでやるかといったところは、今のやり方の中でも当然検討できることかと思いますが、仮に介護保険を取り上げるとした場合、認定方法や介護人材も含めた大きな構えで評価を行うことも考えられます。しかし、認定方法の見直しが今年の4月に行われており、また10月にも見直されるといった報道もある。さらに介護人材については、今後3年間で30万人を確保するということにもなっていることを踏まえると、評価を行うタイミングとしてはいかがなものかと思います。事務局から何かございますか。

【松林政策評価官】  いろいろな御指摘ありがとうございました。
 介護の問題とか学力の問題、おっしゃるとおり幅広い問題で、御指摘については、事務局としても検討させていただきたいと思います。
 予防重視型でいいのかどうかということも含めて、予防重視型が、介護という一定のテーマの中で、目的とすべき方向にベクトルがちゃんと動いているのかという点も含めての評価になると思いますので、そこは評価設計の仕方で、ある程度工夫ができるのではないかと考えておりますし、学力の問題も、確かに家庭崩壊の問題もございます。ただ、今の厚生労働省の施策の中で、家庭崩壊をどういうふうにしていくかを、正面から扱っている部局はなかなかなくて、児童虐待に関する相談所などの施策は行われておりますけれども、これも総合的にどう対処していくかという問題と、どのように評価設計して、その評価においてどういうふうに効果的に対策をあぶり出せるかという問題も、また技術的な課題としてございますので、その辺も、あまり広げ過ぎて評価のポイントがぼやけないような形にしながら、かといってそこだけやっても意味がないというふうにならないような設計を、具体的な評価設計の中で工夫させていただければと思います。
 最初に御指摘いただいた経済財政諮問会議との関係でございますけれど、これは政権のスタイルの問題もあるかと思います。発足したときの経緯をここでいろいろ申し上げますと時間も過ぎてしまいますので、省きますけれども、重要対象分野の仕組みについて1つ考えなければいけないのは、政策評価は政策決定そのものではなく、その評価結果を、ある重要な政策に聴診器を当ててみて、こういう評価結果が出ましたと、したがってこの分野については、もう少し効果を上げていくためにはこういった方向にスポットを当てないといけないねといった、そういう判断材料を提供するものだと思います。
 経済財政諮問会議においては、予算の重要事項について審議をする。内閣総理大臣が議長を務めて、国の重要な政策の方向について議論をして、それをベースに内閣の方針を検討し決めていこうという中で、その審議に政策評価を活用してもらおうというところから始まっているものと存じますので、そこは青山先生はどういったスタイルが一番政策決定にとっていいのか、あるいは政策評価を活用するに当たっても、どういうテーマの決め方をすればいいのかというのは一つの御意見だと思いますけども、この重要対象分野、現在の方式に関して申し上げますと、政策評価を制度として担当する総務大臣が、こういった分野についての政策評価を審議に活用してみてはどうかという報告をいたしまして、その場で経済財政諮問会議として、ではそれでやってもらおうと、あるいは、諮問会議の今の議論からすると、もっとこっちのほうが重要だから、こっちを急いでやってくれというような意見もあり得るわけでございます。

【青山委員】  今の後段の問題はとても深くて広いテーマだし、総務省に限らず、どの省庁の審議会政治も、これからどういうふうになるか私も想像もつかないので。しかし、原理、官僚制と政治の関係の原理というのは、やっぱりあるかなと思っているので、これ以上お聞きしないと思います。
 前段の話で、私が一番気にしているのは、どのところにも一般的に言えることなのですが、例えば介護予防のための数値目標をつくるとか、あるいは学力だったら平均点数が10点上がるようにという、こういう数値目標をつくるのは最も危険なのです。例えば、それは官僚組織の中だけで通用する課題になりかねない。
 例えば、社会保険庁が徴収率を10%上げましょうとやって、それが手段だったはずなのが目的になると改ざんが起こるという問題があります。だから、特にこういう政策の掲げた目標に、これがちゃんと到達したのかという議論をするのだと思いますけど、その目標の設定の仕方を間違える場合があって、それが非常に官僚組織の内向きの政策目標になりかねない、大変な落とし穴があるのだと思っているのです。
 だから間口が狭過ぎるということと同時に、人々が本当にそれが目標としていることなのかどうか。誰だって介護は受けたくないような、死ぬまで介護を受けないようにしたいという、ぼんやりとした希望がありますけれども、介護予防だといって筋力トレーニングを一生懸命やれば、誰もがそうなるわけではないわけです。だから介護予防が進んだことがいいことなのかどうなのかなんていうのは、そんなのは結果の話ではないかという議論が当然人々からは出てくるわけです。
 しかし財政当局から考えれば、フリーライダーも含めてどんどん歯止めなくいってしまう、これは何か1つのくさびを打ち込まなければいけないと、この議論ももちろん当然あるのだと思いますが、やっぱり個々の政策評価をするなら、介護予防ができたかできないかというのは、私は単なる結果ではないのかなと実は思っているところがあるので、特にこの手の問題で制度設計するときに、社会保険庁でやった10%、何%徴収率を上げましょうみたいな、ああいう数値目標がいかに、官僚制のある種の病理みたいなものでしょうけども、それが組織内の目標になってしまって、人々から遊離するということになることを十分気をつけてほしいなと思っています。
 これ以上、もう言いません。

【金本分科会長】  どうもありがとうございました。そういう問題があるということはございまして、特に今、各府省、結構目標管理型で目標を設定しているということはわりと積極的にやるというのですが、そういうことの背景はいろいろなことがあって、それがうまく機能しているかどうかというのは、今、青山委員の言われたような問題はいろいろあるということでございます。
 ただ、ここでの重点領域については、それよりもう少し踏み込んだ評価を各府省にお願いをするということだと思いますので、予防重視型については、目標達成率がどうこうということではなくて、そのことによる効果がトータルとしてどれぐらいあったかといったことまで踏み込んでやっていただくといった設計にしようとしているといったことだと思いますので、その点について、もっとやるべきことはたくさんあると思います。御意見をいただければと思います。
 森泉委員。

【森泉委員】  全般を通して二、三質問とコメントをしたいと思います。
 まず、全般的なことなのですが、政策評価というからには、やっぱり各府省にテーマごとの政策がもう少し表に出ているといいと思うのです。例えば渋滞対策に関しては、具体的な政策が幾つか上がっていますので、分かるのですが、それ以外については、これらのテーマに対する具体的政策が見えていないのです。このような書きぶりでよろしいのかというのが1つです。
 もう1つは、学力の問題です。これは質問なのですが、学力低下の取組及び教員養成となっていますが、これは別々なのでしょうか、それとも教員養成の問題があるので学力が低下したという、1つの原因として並べて見るのかということをお聞きしたい。なぜならば、もしも教員養成というのが学力向上の取組が落ちてきたことに対する原因であるならば、こちらが理由ないし原因を示唆しているように思えるので、あまり好ましくないということです。あるいは2つのテーマを文部科学省に提示するのか。そこをお聞きしたいのです。
 最後は、7ページの「地域資源を活用した地域経済の活性化」というところで典型的に現れていますが、6省にまたがるような政策評価の場合は、何かある程度工夫をもってしないと、非常にぼやけたものしか出てこないような気がいたします。
 今後このように、省に2つ、3つまたがるのならよいですが、これだけ多くの省にまたがるものの政策評価に関しては、何かここで工夫をしたほうがよいと思います。
 以上です。

【金本分科会長】  ワーキンググループでは多くの対策について検討してきた経緯があり、今の段階で具体的な施策や事務事業といったものを特定することは困難なことと思います。今後、9月に予定するヒアリングを通じて答申までに具体化していくということになるのではないでしょうか。事務局から何かございますでしょうか。

【松林政策評価官】  御質問がございました学力下位層へのところでございますが、教員と別々にテーマとして御議論していただいていたものがここに入っておりますので、ちょっと奇異な感じをお受けになったかと思いますが、学力下位層の学力向上への取組を考えます際に、事務局としてここで教員の問題まで入れましたのは、生徒の学力をどうやって上げていくかという際に、教員の質とか教員の数の問題をやはり度外視しては議論できないのではないかと。
 したがって、教員の質が低下していることをもって学力も低下しているというふうには、必ずしも決めつけてはおりませんが、やはり子供の学力を議論する際には、併せて教員の問題も検証していく必要があるのではないかという問題意識でございます。

【森泉委員】  趣旨は理解しましたが、誤解を呼ぶと思うのです。文部科学省としては、教員養成が原因であるような誤解を与えないような、さきほど青山委員がおっしゃっていましたが、間口がもうちょっと広いかもしれないし、文部科学省だけの場合でも、教員養成との因果関係を、一方的に決めないような印象にしていただきたい。

【松林政策評価官】  分かりました。検討させていただきます。

【金本分科会長】  その点について、教員の質ということもありますけども、最近よく言われているのは、教員に雑務が増えて、子供と向き合う時間が少ないといったことはよく言われていて、そういったことも含めておかないと、ちょっとフォーカスが狭過ぎるのかなといった感じがいたします。

【青山委員】  私もそれは同感で、学力が落ちてきているという問題は、確かに教員の質が悪いというのは、まずすぐ言い出しかねないことですけど、先生が言った、雑務が多過ぎる、しかしそれと今度は学校内部の問題です。それからもう1つ言えば、例えば今、都内で小中学生は塾に行っているのを、電車に乗ってもすぐわかりますが、月6万とか7万とか8万します。塾に行かなければいけないくらいの部分で、親の経済力格差がそのまま子供の学力の格差につながりかねないくらいに、義務教育が、特に東京などはかなり苦しい状況にあるのだと思うのです。
 そういう親の側の経済力の格差の問題。それからさっき私が言ったようなネグレクトみたいな問題、貧困層の問題。ものすごくたくさん要素があるはずなのです。それを評価の設計を非常に狭く考えると、やっぱり教員は質を高めなければいけない。だからもっとたくさん研修をしなければいけない。1年に何度も何度も研修を教室の中で教師の研修をさせなければいけないのだとか、ただ外から民間人をどんどん入れて、活性させればいいのだというような、非常に薄っぺらいことになりかねないので、ものすごく原因を多様に見ることを、是非やってほしいなと思うのです。

【金本分科会長】  続き、何か。

【松林政策評価官】  1点だけ。最後のテーマの地域資源でございますけれども、これは確かに森泉先生がおっしゃるとおり、工夫をしていかなければいけない問題だと思います。ただ、今、経済産業省を中心にこの6省が連携して進めておりますので、6省ありますけれども比較的まとまりとしては捉えやすいのかなと思っております。
 いずれにしても、工夫させていただきます。

【金本分科会長】  そのほか、何かございますか。
 谷藤委員、どうぞ。

【谷藤委員】  中小企業の生産性の向上と海外展開支援も、同じようなところが言えまして、海外展開支援ということの施策の効果だけを測るということだけでも、1つの大きなテーマでありますし、中小企業の生産性向上ということについても、これだけでも1つのテーマになっているのです。これが並列的に並んでいる。そうすると、全体としての、いわばどのような政策評価をしていくのかということで、やや焦点がぼやけてしまう可能性がないのかどうかというふうなこと。
 例えば、生産性向上はここのところでもう議論されておりますけれども、業種によっても全然生産性のあり方が違います。そういうものを全部細かくやっていきますと、中小企業の生産性向上だけでも大変大きなテーマに、私は逆になるのだろうと思います。

【金本分科会長】  これは2つ重ねた何か理由があったのでしたっけ。

【松林政策評価官】  重ねた理由というわけではございませんが、中小企業というのも、谷藤先生がおっしゃるとおり非常に幅広くて、昨年もテーマとして上がりましたけど、ややもすると中小企業全体を評価してしまうようなことになりかねない。その中でトピックとしてよく取り上げられている海外展開の問題でありますとか、あるいはサービス産業の低生産性の問題でありますとか、そういったところに焦点を絞らないと、評価としてはうまくいかないだろうなということから、この2点を挙げさせていただきました。もちろんほかにももっと重要な視点があるということであれば、そちらを個別に取り上げるのもよろしいかと思います。

【金本分科会長】  いずれにせよ、各府省にヒアリングをいたしますので、そのプロセスでもう少しフォーカスはできてくるのではないかとは思います。
 そのほかに。高木委員、どうぞ。

【高木委員】  今回一応7テーマが残っているわけですけども、7テーマを見ますと、3つが経済に関する問題という話、残りの4つが違う、社会保障等の話ということなのですけれども、経済の施策について取り上げるということを検討する際の提案なのですけれども、予算規模を出してみるということが必要なのではないかなと思うのです。
 要は、大して予算もかけていないようなところに、経済的な効果というのはあまり期待できないというのが一般的ということもいい得るようなことが多いと言えますので、定性的な話だけ、字面だけ追って、予算が大してかかっていないところに大きな期待を寄せても、これはせんないことだと思いますので、一応そのような見方ということで、提案させていただきます。

【金本分科会長】  これは実は各府省に渡すもので、彼らは予算規模を十分知っているので、あまり彼らにそれを示す意味はないのですが、ちょっと外向けにはそういった情報は重要かなと思います。整理の仕方を。

【高木委員】  特にここで議論するときに、そういうような数字というのがあってもよかったかなと思うのです。

【金本分科会長】  それはそうですね。
 そのほか、ございますでしょうか。何か特にということがございましたら、お願いいたします。よろしゅうございますでしょうか。
 それでは、今日の御議論を踏まえまして、9月に各府省ヒアリングを予定しておりますが、政権の次第でどうなるか、これも若干先の見えない部分でございますが、これから事務局と一緒にテーマの整理をしていきたいと思いますが、これについて、私に御一任をいただきたいと思いますが、よろしゅうございますでしょうか。
 それでは今後、事務局でヒアリングの日程を調整していただくとともに、これまでの委員の御意見を踏まえたヒアリング事項の案を作成していただくようにお願いをいたします。
 それでは、これで本日の政策評価分科会を終了させていただきます。
 どうも、大変ありがとうございました。

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政策評価・独立行政法人評価委員会
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