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過疎問題懇談会(平成19年度第1回)議事概要

日時

平成19年9月21日(金) 10時00分〜12時00分

場所

総務省401会議室

出席者(敬称略)

(座長)
宮口 とし廸(早稲田大学教育・総合科学学術院教授)

(委員五十音順)
安藤 周治(NPO法人ひろしまね理事長)
小田切徳美(明治大学農学部教授)
上治 堂司(高知県安芸郡馬路村長)
菊池 恵美(西日本新聞取締役編集局長)
桑野 和泉(由布院温泉観光協会長)
沼尾 波子(日本大学経済学部准教授)
本田 敏秋(岩手県遠野市長)
横道 清孝(政策研究大学院大学教授)

(総務省)
岡崎 浩巳(総務省大臣官房総括審議官)
津曲 俊英(総務省大臣官房審議官)
丹下 甲一(総務省自治行政局自治政策課長)
渡辺 秀樹(総務省自治行政局地域振興課長)
室田 哲男(総務省自治行政局合併推進課長)
安藤 英作(総務省情報通信政策局地域通信振興課長)
佐藤啓太郎(総務省自治行政局過疎対策室長)

(農林水産省)
永嶋 善隆(農林水産省農村振興局企画部農村政策課長)

(国土交通省)
大矢 浩(国土交通省都市・地域整備局地方整備課長)

議事概要

(1)説明事項等
 過疎対策室から配付資料に基づき説明した後、意見交換会を行った。

(2)意見交換概要
○地域特有の環境資源を生かすために、地域が抱えている田畑や山、有形の寺・お宮や、無形の伝統芸能などを包括して守る制度、新しい仕組みを設けることが必要ではないか。また、その運営の母体として、地域で活動する人たちや住民自治組織を活用することが必要ではないか。
○NPO法人ひろしまねは、まさに集落経営のお手伝いができないかという観点から立ち上げたものである。
○都市と地方の格差是正と、地域の内発的発展の「二兎を追う」ことが大変重要であり、今後の施策はどんな小さな施策であろうとも、この2点について常に考えなければならない。例えば、格差是正のためにハード整備を行う場合に、その設計や運営に当たり、住民参加を徹底的にプロセスに埋め込み住民力を強化する、という仕組みとする必要がある。
○現行法が成立してからの状況の変化としては、市町村合併の進行と過疎地域内における所得形成力の低下があげられ、前者についてはコミュニティづくりが、後者については地域資源活用が必要である。
○みなし過疎や一部過疎など、市町村合併によって過疎関係市町村が多様となっており、現行の過疎法では主たる支援の対象を市町村としてきたが、市町村ではない対象を考える必要があるかもしれない。
○過疎地域は、近隣の地方中小都市との連携が課題となっており、今後の過疎対策においては、過疎地域のみを対象として論ずるだけでなく、圏域で議論をする必要があるのではないか。
○ハード整備のプロセスにおいて住民力を併せて強化する、という指摘があったが、熊本県小国町の「小国ドーム」が事例としてあげられる。建築に向け、住民力が結集され、その後の町づくりにおいて大きなパワーとなった事例である。
○地理的な条件が不利であり、企業の誘致等も非常に難しい中で、定住人口よりもむしろ交流人口を増やす必要があると考えている。観光を足場とした交流人口の確保、地元で生産され、あるいは製品化されたものの活用、大都市にいながら「特別村民」として村のイベントや地域づくり活動などへ参加してもらう取り組みなどを講じている。
○山間地域では、交通の便が悪いといった事情で医療機関までのアクセスが悪く、出産などの際早めの入院が必要になる事情があり、その結果として医療費が割高になる傾向があるのではないか。
○10年ほど前から鳥獣被害が目立ってきており、その対策のために高額なフェンスを設置する必要があるなど、過疎地域の産業を守るためには様々な経費が発生している。
○過疎対策がなぜ必要なのか、しっかりとした価値観・根幹を地方から中央に提示していく必要がある。
○森林の維持が難しくなり、森林の保水力が低下していることから、水害の多発、多数の風倒木の発生という問題が九州において生じていると考えられる。また、中山間地で安心して出産・子育てができない等、様々な課題を抱えている。
○過疎地域は、都市部に対して安心安全な食を提供する役割を果たしている。過疎問題の議論には都市住民を巻き込む議論が必要であり、その入り口として、食や農は大きな位置づけができるのではないか。
○「限界集落」と言われる地域は、悲惨な地域と思われがちだが、住民が自分たちの集落についてしっかりと考え、自分たちの集落の行末まで考えながら、たくましく取り組んでいるところもある。
○観光のみならずイベント、滞在といった様々な仕掛けを取り入れると、Iターン者・Uターン者が増加し、地域の中での新たなビジネスを生むこととなる。
○過疎地域への財源支援・財源確保がなぜ必要であるかについての考え方として、医療・教育・福祉サービスなどナショナルミニマム確保のためという整理のほか、地域が自立していくためには一定の財源確保が必要であるし、森林保全・国土保全のため、さらには都市とは異なる価値ある暮らしが息づいている地域であるため、という整理も考えられる。過疎地域に対する財源支援等を行うことは、その地域のためだけではなく、都市部にとっても意味があるということを実証的に示していくことが大きな課題となると考えられる。
○過疎地域に対する支援としては、従来は財政支援が中心となってきたが、今後はこれに加えて、過疎地域におけるマンパワー・人材確保面での支援や、行財政運営上の情報・ノウハウの共有が図られるよう支援を図る、といったソフト面での支援についての議論が重要となる。
○現在、自治体の施策では森林保全や廃棄物対策のための超過課税や法定外税が大きな目玉となっているなど、森林保全や廃棄物対策については大きな課題となっている。過疎地域に対する支援のあり方を検討する際には、各論として位置づける必要があるのではないか。
○明治時代の「村」では、結いの精神で地域や集落が成り立っていたという事実があり、いわゆる限界集落と言われる厳しい状況にある地域や、地域コミュニティーが生き残るヒントがそこにあるのではないか。
○過疎地域内で既存の施設の活用を考えたときに、個別法等の様々な縛りのためにうまく活用できない、使い勝手が悪いなどの事例もあり、規制緩和に取り組むことも必要ではないか。
○効率性・採算性を求めるあまり、それぞれの地域・地方ならではの価値を失ってしまった面も多々あるのではないだろうか。「心の所得」を増やそうと市民に問いかけたところ多くの共感が得られたが、その地域の宝を大事にする誇りを持つことが必要である。
○かつて人口増加の中で生じた過疎問題・過密問題は、全国的な人口減少の中での過疎問題へと状況が変化した。全国的な人口減少社会となった現在の状況を踏まえた上で、地域の実態やニーズに着目した対策を講じるべきである。
○集落対策については、集落によってそれぞれ現状と住民の意識が異なるので、集落ごとにきめ細かく現状や住民ニーズを把握したうえで、対策を講じていく必要がある。
○「限界集落」という言葉を安易に一人歩きさせたくないと考える。住民が少数であっても、そこに生きる仕組みはあり得るものであり、都市化が進み、都市部の生活はかなり普遍化している我が国にあって、居住者は少数であっても自然を扱う「わざ」が持続的に継承される「豊かな少数社会」が息づいているということが、「美しく風格ある国土」ということなのではないかと考えられる。
○群馬県上野村は、農業や土木を含め、ほとんどの産業を村(第3セクター)が経営している。このように、市場原理が成り立たちにくい地域においては、産業づくりのスタートダッシュとして過疎債が有効に活用されている事例がある。
○人口が減少する社会では、まちづくりのために新たな施設や制度を整えていく「足し算型まちづくり」をしていくのではなく、既存の施設や制度で不要なものを払拭していく「引き算型まちづくり」といった考え方が大切という指摘がある。人口減少社会においては、総人口・総生産額は減少せざるを得ない中で、一人当たりの取り分が増えることがすなわち発展といえるのではないか。こうした考え方を今後の過疎対策に組み込みながら、過疎地域への支援が国民的合意のもとに整理されていくことが望ましいのではないか。

(3)今後の予定等
 今後の予定として11月頃を目途に過疎地域の現地調査を行うこととされた。

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