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平成20年度第1回過疎問題懇談会議事概要

日時

平成20年4月24日(木)

場所

総務省8階 第1特別会議室

出席者(敬称略)

(座長)
宮口 とし廸 (早稲田大学教育・総合科学学術院教授)

(委員五十音順)
安藤 周治 (NPO法人ひろしまね理事長)
小田切徳美 (明治大学農学部教授)
上治 堂司 (高知県安芸郡馬路村長)
菊池 恵美 (西日本新聞取締役編集局長)
桑野 和泉 (由布院温泉観光協会長)
白石 真澄 (関西大学政策創造学部教授)
沼尾 波子 (日本大学経済学部教授)
本田 敏秋 (岩手県遠野市長)
横道 清孝 (政策研究大学院大学教授)

(総務省)
岡崎 浩巳 (総務省大臣官房総括審議官)
津曲 俊英 (総務省大臣官房審議官)
市橋 保彦 (総務省自治行政局自治政策課長)
渡辺 秀樹 (総務省自治行政局地域振興課長)
室田 哲男 (総務省自治行政局合併推進課長)
青木 信之 (総務省自治財政局財務調査課長)
安藤 栄作 (総務省情報通信政策局地域通信振興課長)
佐藤啓太郎 (総務省自治行政局過疎対策室長)

(国土交通省)
白石 秀俊 (国土交通省都市・地域整備局半島振興室長)

議事概要

(1)説明事項等

1)これまでの議論の中間的整理について
配付資料に基づき事務局から前回素案からの変更点等について説明を行い、中間的整理を決定した。
2)過疎地域等の集落対策についての提言について
配付資料に基づき意見交換を行い、提言として決定した。
3)今年度の懇談会の進め方について
配付資料に基づき事務局から説明を行い、今後おおむね資料4に記載の進め方に沿って検討することとした。
4)都市から地方への移住・交流の推進について
配付資料に基づき事務局から説明を行い、その後、意見交換を行った。

(2)意見交換概要

過疎地域等の集落対策についての提言について(資料3)
○ 集落支援員は何人ぐらい設置されることになるのか。集落支援員を市町村に一人置くのでは足りないが、一方で、各行政区に一人ずつ置くわけにもいかないだろう。
やはり、各市町村の実情に応じて、配置するというイメージなのだろうか。

(→総務省)
○ 過疎地域自立促進特別措置法2条に定める過疎市町村の平均的な姿は、人口1万人、集落・行政区の数は42集落。この集落すべてを週1回2人ペアでかなり密に回るとした場合、集落支援員が8人いれば回れることになる。過疎地域に存在する集落(行政区)が6万2000であるので、単純計算をすれば、8人×(6万2000÷42)=1万2000人。あくまでも机上の計算であり、ここまで多くはならないと考える。

○ 長い間願ってきた制度が一つ動く。現場では、非常に効果があがるのではないかという期待の一方、遅きに失したという思いもある。また、国が制度としてやるからには、成果をしっかり上げるように考える必要がある。

○ 集落対策のフロー図の中で、例えば3年・5年スパンの地域計画を策定することを目標とするよう、位置付けをしても良いのではないか。

○ 点検シートで集落のあり方を見つめ直すという議論は良いと思う。しかし、計画の策定などを集落に一律に求めることはいかがなものかと思う。それぞれの集落に対応して、適宜改善策をアドバイスするなど、柔軟性をもった仕組みとするべき。

○ 今回の集落対策は、千差万別である集落に対して、人間的な関わり合いにより現状を認識させ、どういう精神で生きていくかという事を考えさせるもの。「集落はそれぞれ計画を策定する」といった枠に機械的に当てはめないほうが良いであろう。

○ 単独で維持が可能であり、発展なり活性化の可能性がある集落については、もう少し積極的・前向きな位置づけができないか。

○ 今の指摘に関連するが、地区力点検は、危機感を共有するところで止まってしまいかねないというのが問題であった。その意味で、各集落が計画なりビジョンを打ち出すことは必要であろう。しかしながら、「計画のための計画づくり」となってしまう可能性もあり、今回の提言に集落計画に関する事項を盛り込むことよりも、集落対策を進める上での実践的な課題として市町村等の現場が注意していく事柄と理解すべきだろう。

○ 集落支援員を設置した場合、現場では、支援員が動くための指針が当然作られるであろう。大事なことは、人間的な関わり合いの中で、集落が踏み出すということであり、そういった意味で「支援員のあり方」ということが大きな課題となるのではないか。

○ 住民の息づかいが聞こえるような支援策をお願いしたい。地域に愛着を持ち、その地域で頑張って、地域特有の文化を守りたいという方がいる。そういった方を支援する流れを作ってほしい。また、遠野市は、行政区が90あるが、それぞれの特性がある。地域の実情に応じた支援員の活用が必要ではないか。そういった意味で、柔軟・弾力的な対応が必要ではないかと思う。

(→総務省)
○ いただいた提言は、集落支援員、集落点検、話し合い等をセットにしたものであり、効果があがるのではないかと考えている。今回の提言を踏まえ、財政措置も含めしっかりとした対応を検討していきたい。集落点検や話し合いといった取り組みにより、「集落では何ができるのか」といったような議論が始まっていくと思う。こういった議論を全国に広めるように努めていきたい。

都市から地方への移住・交流の推進について(資料5)
○ 移住・交流は重要な課題である。移り住んでくるパターンとしては2つあり、1)Iターンで仕事を持って帰ってこられる場合、2)団塊の世代で、定年後を地域で過ごしたいという場合。高知県馬路村でも多くの定住・移住希望者がいるが、公営住宅が不足しており、空き家を活用できないかと考えているところである。しかし、子供が帰ってきた時のために必要、といった事情で貸していただけない場合も多いのが現状である。

○ 集落の決まり事など、移住する側と受け入れる側との意見調整が必要である。移住・交流に成果を上げている自治体は、役場が間に入って、説明・調整をきめ細かく行っている。

○ 集落に活力がある段階では「よそ者を入れると、地域の決まりを守らず、困ったことが生じる」と聞くが、人口減少・高齢化が本当に厳しいと自覚している自治体・地域では、移住や交流に積極的になる傾向があると思われる。

○ 人口減少に歯止めがかからないという切羽詰まった状況から、平成18年度に「で・くらす遠野」市民制度を立ち上げた。財源は会費で賄っている。会員は現在163人。会員に提供するメニューを進化させたい。交流人口を増やし、最終的には、定住につなげていきたい。

○ 道普請、ゴミ拾いなど市民協力の取り組みを従来から行っており、地元に住む人にとっては昔からの風習として定着している。しかし、都会から来た人にとっては、「税金を払っているのに、何故、さらに労働を強いられるのか」との受け止めをされる場合もある。物の見方が違うということを実感している。

○ 教育交流については、教育再生会議でも、子供たちにとって学校の外に出て農山漁村に行くことはかけがえのない体験であり、小中学生に7〜10日間の自然体験を義務づけるべき、という強い主張があった。目標として600万人とされているが、もっと強く打ち出していいのではないかと思う。また、1週間では足りない、2週間あればなおよいとの考え方もある。

○ 新潟県の十日町では、観光業者、旅館、農業経営者がうまくまとまって親子連れの受入れを行っている地域がある。一方、取り組みをしていない地域もある。受け入れ体制づくりや事例研究などを積極的にすすめ、普及させるべきである。

○ 子供たちに「ふるさと」を持ってもらうという意味で、教育交流はとても大事な取り組み。受入住民側にも苦労が多く、行政としてしっかりサポートしなければならない。

○ 先進的に都市からの受け入れを行っている地域は、都市からの受入れを行っても「疲れない」だけのノウハウを持っている。それをいかに全国的に普遍化していくかが重要。

(→総務省)
○ 教育交流は、派遣側の学校と受入側の双方の足並みをそろえる必要があり、農林水産省、文部科学省と連携しながら、総務省としても、地方財政措置の拡充、シンポジウム・セミナーの開催等により支援していく考えである。

○ 武蔵野市は、実際にモデル的に事業を実施し、現場の先生方からも子供・親・先生の反応を聞いて「よかった」という声が出てきた。これにより、武蔵野市全校にセカンドスクールを広げることができたとのことである。また、子供の感想文をみると、「田舎のお母さん、お父さんにまた会いたい」というものがみられ、親を連れてもう度泊まりに行く、というケースもある。大いに効果が出ているものと考えられる。

○ Uターン、Iターン促進政策は、この10年で、質的に非常に大きな変化を遂げた。二地域居住や交流移住など、定住との間の「ステップ」をつくったことは大きな変化であり評価できる。ただ、「ステップ」を間に設けることに加えて、もう一つの考え方として、ボランティアホリデーなど入り口を広げるという考え方もあると思う。

○ 過疎地域に本格的に居住する場合の最大のネックは、子供に高等教育を受けさせるだけの所得を得られないところにある。私立大学の場合、年間200万円が必要。そういった意味で、学費の負担の構造を変えるような大きな枠組みで考えることも必要である。

○ 空き家の問題については、従来は空き家を手放さず、取引がされない状況であったが、最近変化が生じており、投げ売り状態が続いているという話も聞く。各地域の状況をウォッチする時期が来ているのではないか。

○ UJIターン者対策については、村から転出していった人を「ふるさと会員」などとして組織化したり、「声がけ」をすることも重要である。

○ 過疎地域のお年寄りには、年金に加え1万円、2万円でも現金収入があれば有りがたいという切実な声がある。農家の客間を活用して教育交流に活用していただくことでこの現金収入を得られるようにする、ということも考えられる。そこで、現在、地元で積極的な受入れプログラム作りなどを検討しているところである。

○ 教育交流の受地側の課題として、エージェント機能を誰がどのように担うか、ということが挙げられる。(小口の商品になるため)大手旅行会社もあまり目を向けてくれない分野なのではないか。こうした中、自治体・NPO・地元住民などが連携して、教育交流の受地側のエージェント機能を担うことが必要であり、地元ではそうした議論も行っているところ。

○ 農山漁村交流プロジェクトは、学校単位ではなく、グループ単位で行うことも検討してはどうか。「初対面の人間同士で」という、新しい要素を加えてみるのもいいと思う。

○ 教育交流等の推進に当たり、野外活動の基地にするなど、廃校をうまく活用することが重要である。

○ 都市住民や外部の人間と「丁寧に向かい合っている」地域への交流や定住は、相当進んでいると思われる。そういった意味で、成功事例と言われる自治体の情報がもっと他の市町村に伝わる必要があるのではないか。ネット上に限らず、セミナー等の機会を通じ、生の声で伝えるべき。

○ 都市で一段落した人が田舎でゆっくりというイメージがあるが、田舎の側としては、都市で働いてた人に田舎で(もっと)活躍していただきたいという気持ちである。地元の住民とともに新たなビジネスを起こし、展開して欲しい。過疎対策においては、移住・交流を進めることにより新たな活力を生み出す、という観点が必要である。

○ 学校の教育交流について、農作業体験はさせるけれども実際に地元の住民と交流を持つ機会をもてないまま終わってしまうこともあるのではないか。

○ 交流のエージェント機能という点では、地元の人々のやる気を喚起するまでの仕掛けとそれに関する費用や組織、その体制をどうつくるかが一番大事。そのノウハウを、情報交換したりできる仕組みを、どう行政がサポートできるかも重要。

○ 「都市と過疎地域の交流」の意義としては、過疎地域の人が東京に出て行くことも重要である。自分たちが作ったものが東京でどう売られているか、どう評価されているか、過疎地域の人が東京の声に触れ、やる気を生じることもあるであろう。

(3)今後の予定等

今後おおむね資料4「今後の懇談会の進め方について」に基づき、検討を進めていくこととされた。

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