(座長)
宮口 廸
(早稲田大学教育・総合科学学術院教授)
(委員五十音順)
安藤 周治
(NPO法人ひろしまね理事長)
飯盛 義徳
(慶應義塾大学総合政策部准教授)
菊池 恵美
(テレビ長崎常務取締役)
白石 真澄
(関西大学政策創造学部教授)
本田 敏秋
(岩手県遠野市長)
(総務省)
岡崎 浩巳
(総務省大臣官房総括審議官)
津曲 俊英
(総務省大臣官房審議官)
市橋 保彦
(総務省自治行政局自治政策課長)
室田 哲男
(総務省自治行政局合併推進課長)
安藤 栄作
(総務省情報通信政策局地域通信振興課長)
佐藤啓太郎
(総務省自治行政局過疎対策室長)
(国土交通省)
大野 淳
(国土交通省大臣官房参事官)
蔵持 京治
(国土交通省自動車交通局旅客課企画調整官)
野田 勝
(国土交通省総合政策局総務課建設副産物企画官)
白石 秀俊
(国土交通省都市・地域整備局半島振興室長)
(農林水産省)
田野井雅彦
(農林水産省農村振興局農村政策課長)
国土形成計画、交通基盤の整備及び利活用、生活排水処理等について、配付資料に基づき事務局・国土交通省から説明を行い、その後、意見交換を行った。
○ 国土形成計画の広域地方計画策定スケジュールについて、今の状況を伺いたい。
(→国土交通省)
○ 全国計画について、2月に国土審議会より答申を受けたところ。当初想定していたスケジュールより遅れているが、現在、閣議決定できるよう調整している 。この閣議決定を踏まえて、正式に広域地方計画協議会が立ち上がることとなる。これをにらんで、各ブロックにおいて計画策定に向けた準備を進めているところ。
○ 現行の過疎法の規定では、条項ごとに、交通基盤の整備、生活排水、保健福祉など事業分野に列挙されている。地域においては様々な問題を抱えており、ハードとソフトを一体として、医療と福祉、あるいは医療と交通といったように総合的に取り組むことで効果が上がると思われる。
(→国土交通省)
○ 市町村の創意工夫・独自性・目的にあわせた形で自由に使える補助金あるいは交付金について、方向性としては検討していかなければならないだろうと思っている。なお、例えば、都市部に対してのまちづくり交付金が存在する。また、道や排水関連の整備に関する省庁をまたがった交付金制度もある。
○ 21世紀生活圏研究会では、「現在の森林や農地などが、将来はさらに日本のかけがいのない資源となる可能性がある。それらを将来適切に活用できる仕組みを、現段階から残していく必要がある」と報告されているが、今後どう進めていかれるか、伺いたい。私としては、土地、田畑などの資源、さらには伝統技術といった地域の資源を次世代にどう伝えていくか問題意識をもっており、かねてから「信託」方式によってこれらの資源を地域において管理していくことができないか議論しているところ。
(→国土交通省)
○ 中間報告を受け、地域の方々や市町村の協力もいただきながら、都市に近いもの、過疎地の圏域を大きく含むものなど、様々な類型で具体的なモデル調査に取り組みたいと考えている。この研究会は現在2年目であるが、3年程度を予定しており、こうしたモデル調査の結果も踏まえながら、最終報告に仕上げていきたい。
○ 大学の研究課題として教員・学生がともに地域に出向き、まちづくりや地域活性化への取り組みに参画することが最近では非常に増えている。私のゼミでも、福岡県東峰村の地域活性化の活動を研究している。大学は、「ヨソ者」として外部からの違った視点を提供できるし、例えば情報技術の知識・技術も提供できる。また、役所や企業と異なり、失敗をおそれず様々な取組みにチャレンジし、試行錯誤ができる風土がある。過疎地域にとっては、大学を重要な「資源」として活用いただけると思う。
(→国土交通省)
○ 国土形成計画案においても、大学の役割・機能などについて、重要なプレーヤーとして位置付けている。平成19年度国土施策創発調査(「維持・存続が危ぶまれる集落の新たな地域運営と資源活用方策検討調査」)においては、地域住民、市町村、NPOなどとともに、大学(島根県立大学)にもプレーヤーとして参画いただいたところ。
○ 「新たな『公』によるコミュニティ創生支援モデル事業」の募集がなされているが、どういった状況か。
(→国土交通省)
○ 三百程度の応募があり、相当大きな反響があったと思う。傾向としては、集落対策に関するものが多いようである。
○ 「新たな公による地域づくり」は、どういった形で、どの程度、具体的に予算化していくのか。
(→国土交通省)
○ 国土形成計画案に位置付けた「新たな公」による地域づくりは、指針としての性格を持つものであり、国土交通省の他部局や関係府省に具体的な施策展開を図っていただくことが基本である。しかし、モデルの構築が必要であるため、平成20年度新規事業として「新たな『公』によるコミュニティ創生支援モデル事業」を創設したところ。予算額は3億円、全国で60箇所程度のモデル事業の実施を予定しており、先進的な事例を模索して参りたい。
○ 情報と医療をうまく組み合わせるなど実効性のある支援を過疎地域は切実に望んでいる。遠野市では、インターネットを活用した「ねっと・ゆりかご(助産院)」という遠隔医療のシステムを取り入れた。国としては、全国一律ではなく、地域の実情に対応できるような仕組みを作っていただきたい。
○ 先日の岩手・宮城内陸地震の際に、集落の一人暮らし高齢者の安否確認に戸惑った。災害時に、集落に対して適切なフォローアップができるような仕組みが必要だと感じた。
○ 遠野市では、デマンド交通の実証実験を行っている。運行予約型のデマンドバスは、住民にとっては「電話で呼び出すなんて、もったいない」との意識もあるようだが、今後、もっと利用が伸びていく可能性があると思う。スクールバスと福祉バスの連携も図っていきたい。
○ ふるさと回帰の流れがあり、知恵は絞っているが、なかなかうまくいかない。例えば、年金と蓄えの範囲内で一定のグレードの住宅を、定年後の世代に提供できるような住宅政策が必要と思われる。また、二地域居住者にとっては、往復の交通費負担が大変である。何らかの措置が欲しいところ。
(→国土交通省)
○ UJIターン者向けの住宅建築・改修については、地域住宅交付金の活用が可能である。こういった制度を活用して、ふるさと回帰を側面的に支援できればと考えている。
○ 公共交通については、「人」だけではなく「物」を運びたいというニーズがある。今、制度としては、「人」の運びだけで終わっているが、もう少し拡大していけるような仕組みが必要ではないか。地域の中を走るデマンドバスが「宅配便」を兼務できるような仕組みも必要ではないだろうか。
(→国土交通省)
○ 過疎地域等の交通問題については、貨物も含めた議論が必要であると認識。実態調査を行い、旅客と貨物の境目・営業用と自家用の境目といったところで少し運用を緩くしていくことや、地域公共交通会議でいろいろな判断が出来るような仕組みについて検討して参りたい。
○ 今後、「都市部に住んでいて、地方に親を残した人」の住宅問題は、大きくなる。過疎地には不動産会社等が少なく、空き家となっても、情報が田舎に移り住みたいと考えている人に伝わりにくい。
○ インターネット上で、過疎地の住宅について、築年数・周辺環境・用途地域・交通の便等を総合的に情報提供するポータルサイトを構築するなど、民間の力で、情報提供するシステムを組んでいくのはどうか。過疎地にある住宅は有効活用できるのに、そのためのシステムが不足していると感じる。
○ 地域交通の確保についてだが、地方バスの生活交通路線とは、「複数の市町村にまたがり、キロ程が10km以上」などの定義をされているようだが、合併前の旧市町村単位で判断するのか。
(→国土交通省)
○ 平成13年度3月31日、いわゆる平成の大合併前の市町村の区域をもとに判断することになっている。
○ 「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」において、市町村単位での協議会をつくり、立ち上げを支援するとあるが、広域的に市町村を超える取り組みを考える必要はないか。また、支援は計画策定段階と3カ年の事業計画期間となっているが、長期的・恒久的な支援を考える必要はないか。
(→国土交通省)
○ 「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」では、協議会の立ち上げは、複数市町村でも可能である(大規模なバス路線の廃止により広範囲で対策が必要である場合等)。
○ 複数市町村にまたがる広域的な路線については国・県の補助で、それ以外の身近な交通手段は自治体の判断に委ね、地方財政措置で対応するというのが基本的な考え方である。さらに、新たに創設した地域公共交通活性化・再生総合事業では、事業のスタート時には、国としても強力に支援していこうという枠組みとしたところ。
○ 広域ブロック内で、各地域が連携・相互補完し、個々の地域資源を自治体同士が利用し合うことができるような、過疎地域の環境を整える仕組みづくりをお願いしたい。
○ (国土形成計画の広域地方計画では)医療・教育については、県境を越えた発想を盛り込む必要がある。例えば宮崎県の五ヶ瀬では医療・教育については熊本に人が流れている実態もある。県境を越えて医療圏・生活圏・教育圏を作っていく事も必要である。
(→国土交通省)
○ 国土形成計画全国計画案の中で、県境を越えた取り組みが重要であることを指摘しており、これを踏まえ、現在、広域地方計画について各ブロックで協議を進めているところである。特に中国ブロックでは、集落問題について県境を越えた取り組みが必要との認識をもっており、県境を越えた対策のあり方についても検討されていると聞いている。
○ 地域公共交通の確保について、国としても地域の工夫や優良な事例を把握し、普遍化していく時期にあると思う。事例を把握しておられれば、御提供いただきたい。
(→国土交通省)
○ 福祉バス・通院バスをうまく組み合わせた事例などがあり、調整のうえ提出させていただく。地域公共交通活性化・再生総合事業においては、スクールバス・福祉バスの活用も含めた支援を行うこととしている。個々の地域の事情にあった仕組みを作っていくために、運輸局・運輸支局が市町村の相談に乗るように指示している。
(→総務省)
○ 過疎対策室としても、調査のうえ報告したい。
○ コミュニティ、NPO、事業者など、行政と一体的に取り組みを行う地域ネットワークを作ることや、これらの合意形成を図ることはなかなか難しい。コーディネーターの確保、プラットホームの構築について、国や県として、どのように支援すべきかが課題。特に人的支援のあり方について検討することが必要である。
○ 合意形成の場をつくることについては、費用対効果を定量的に測定することが困難。数々の失敗を通じて事態が進展することもあるなど、効率性を前提とした予算配分の考え方では評価が難しい領域である。したがって、人件費・予算等の確保が必要であろう。
○ 過疎地域における道路、下水道、地域交通については、B/C(費用対効果)による経済評価が難しい面がある。水源涵養や森林保全、食料生産といった役割を担う地域に人々が定住することの意義や、それぞれの風土に根ざした地域の多様な文化や生活が並存することを通じた「豊かさ」は短期的な経済価値で測れるものではない。資源配分・財源配分の決定に際して、こうした価値を適切に評価する手段・手法の検討などが必要である。
○ 公共下水道の整備が既に進んだ過疎地域では、その安定的な経営に向けた支援が必要である。
○ 整備してから相当の年数が経過した社会資本についての維持修理費、更新投資の財源確保についても検討しておく必要がある。
次回の懇談会は7月下旬に開催することとされた。
i この会議ののち、国土形成計画(全国計画)として平成20年7月4日(金)に閣議決定された。