総務省トップ > 組織案内 > 研究会等 > 過疎問題懇談会 > 平成20年度第7回過疎問題懇談会議事概要

平成20年度第7回過疎問題懇談会議事概要

日時

平成21年2月25日(水) 15時00分〜17時00分

場所

総務省11階 第3特別会議室

出席者(敬称略)

(座長)        宮口 廸 (早稲田大学教育・総合科学学術院長)
(委員五十音順) 安藤 周治 (NPO法人ひろしまね理事長)
            飯盛 義徳 (慶應義塾大学総合政策部准教授)
            小田切徳美 (明治大学農学部教授)
            上治 堂司 (高知県安芸郡馬路村長)
            菊池 恵美 (株式会社テレビ長崎常務取締役)
            本田 敏秋 (岩手県遠野市長)
            横道 清孝 (政策研究大学院大学教授)
(自治体)      岸川 慎一 (島根県地域振興部地域振興室長)
            渡部 彰夫 (島根県雲南市政策企画部長)
            前田 和彦 (高知県地域づくり支援課チーフ)
(総務省)      椎川 忍  (総務省大臣官房地域力創造審議官)
            市橋 保彦 (総務省自治行政局地域政策課長)
            山ア 重孝 (総務省自治行政局地域自立応援課長)
            奈良 俊哉 (総務省情報流通行政局地域通信振興課長)
            佐藤啓太郎 (総務省自治行政局過疎対策室長)
(農林水産省)   仲家 修一 (農林水産省農村振興局農村政策部中山間地域振興課長)
(国土交通省)   橋本 拓哉 (国土交通省都市・地域整備局地方振興課半島振興室長)

議事概要

(1)自治体ヒアリング
島根県地域振興部地域政策課地域振興室長、雲南市政策企画部長、高知県地域づくり支援課チーフから、新たな過疎対策の柱になると考えられるテーマとして地域交通、ICTの利活用、集落対策等についての取組のヒアリングを行った。
【島根県】
○ 情報通信基盤利活用対策については、情報通信網を使って交通の不便さをケアすることにより、住民の利便性の向上と地域の振興を図る二兎を追うことが可能と考えている。
 現在、モデル的に2カ所で取組を行っている。1つは、CATV網多目的活用研究協議会(島根県・奥出雲町・邑南町、鳥取県・日南町により構成)により、日南町を主なフィールドとして、CATVを使った生活サポート事業の調査研究を行っている。
 具体的には、情報通信網を使って自宅から地元の商店に買い物を注文し、シルバー人材センターを活用して届けるという買い物支援システムの実証実験を行った。
 もう1つは、奥出雲町でFTTH(光ファイバー網)を活用し、テレビ電話とコールセンターを組み合わせて、高齢者に対する生活サポート事業に取り組んでいる。
○ 地域生活交通確保対策については、小規模・高齢化している行き止まりの集落など、交通空白地域等で、よりきめ細かな交通手段を確保するために、自治会会員の相互扶助活動の一環としての輸送活動のモデル事業に21年度から取り組むこととしている。
○ 集落維持活性化対策については、様々な主体が参画し新しい地域運営の仕組みづくりを行う、中山間地域コミュニティ再生重点プロジェクトを、今年度から2カ年のモデル事業として県内10地区で実施している。
 具体的には、幾つかの集落を包含した新しいコミュニティとして活動ができるよう、住民の話合いや組織づくりを促進するとともに、束ね役となる「地域マネージャー」を配置し、課題を抽出し、その地域でどういった取り組みが必要かを考え、実際に取り組んでいただこうという事業を行っている。
【雲南市】
○ 地域の身近な課題に対し住民自らが担い手となって解決することができる組織づくりということで、一定量の人口が確保できる公民館区や小学校区、数集落を単位とした地域自主組織の設立を推進し、平成19年9月末で44組織が設立された。
○ 雲南市の地域マネージャーは、地域活動の企画立案、地域計画の策定や実施の支援に関することなどのコーディネートを行うために、地域自主組織の判断によって設置され、現在16組織に、21名が配置されている。
○ 現在の公民館を改組し、22年4月には「市民活動」「生涯学習」「地域福祉」を担い、その中で地域自主組織が活動を展開する「交流センター」に移行することを目指している。
【高知県】
○ 津野町におけるICT利活用の取組は、ひとり暮らしの高齢者等、社会的弱者をいかに守るかということから始まった。
 「津野町安心・安全ネットワーク会議」で、緊急連絡先、かかりつけ医、日ごろ親しくしている人、寝ている場所など記載した「安心・安全見守り台帳」を作成し、「小地域ふくし座談会」で、ひとり暮らしの高齢者住居、防火水槽、避難場所などを目的別に色分けし、マーキングした独自のマップ「五目マップ」を作成した。
 これらは紙ベースであるため、迅速な情報の更新が難しく、情報共有という点でも不十分で、役場のGISとも連携がなく二重管理が発生していた。それに、災害情報を住民に伝えるという手段もなかった。そこで、「津野町見守り・助け合い支援システム」というシステムを構築し、平成20年2月から運用している。
○ 高知県の取り組みとして、地域に対する人的支援として地域支援企画員を平成15年度に制度化している。この制度は、県職員が地方機関に属さず、独自に市町村と連携し、住民と同じ目線に立って住民と活動する制度である。
 その役割は、地域住民の主体的な活動に対するアドバイス、先進的な事例の情報提供、人と人をつなぐ役割、行政と地域のパイプ役となっており、今では地域や市町村に定着し、不可欠な制度となっている。

(2)自治体からの報告を踏まえて、委員との意見交換を行った。

(委員)
○ 島根県の集落対策の取組については、コミュニティ対策といった面もあると思うが、エリアとしてはどの程度の単位で行っているのか。
(→島根県)
○ モデル事業を行っている10地区で若干のばらつきがあるが、基本的には、小学校区単位、あるいは公民館単位のエリアとしている。
(→雲南市)
○ 雲南市の場合は、基本的には小学校区、あるいは公民館単位で、そのエリアは、ほぼ昭和の大合併前の町村のエリアである。ただ、エリアが小さいところもあり、人材確保の面も含め、地域の課題に十分に対応できるかという問題がある。
(委員)
○ 現行法制定時と比べて補完性の原理が強く言われるようになっている中での、ポスト過疎法における県の役割の議論に関連するが、高知県における地域支援企画員制度の導入に際し、補完性の原理との考え方はどう整理されたのか
○ そして現在、暫定的な制度であったものを恒久化するという話になっているが、その際の県庁内外の議論はどうだったのか
(→高知県)
○ 地域支援企画員制度は、2002年に高知県で行われた国民体育大会でのボランティア活動の仕組みを残していくために始まったもので、橋本前知事の選挙公約であった。
○ 最初は、冷やかな目の市町村もあったと思うが、県庁内では市町村の現場に入っていくことに議論はなかったように記憶している。
○ 恒久化については、地域支援企画員を置くということは継続するが、その役割は時代に応じて変わっていくということで検討されている。
(委員)
○ 地域支援企画員については、最初は、なぜ県が地域に入ってくるのかという声もあったが、いまでは県の職員と市町村の職員が一緒になってやっていかないと切り抜けられない時代となったと思っている。
○ 島根県の取組がそうであるが、一つの集落、一つの市町村の区域だけでなく広域的に取り組んでいくことは重要である。
○ CATVを使った生活サポート事業について、地元商店の振興・活性化にまでつなげるのはなかなか難しいと思うが、どうお考えか。
(→島根県)
○ 実証実験では、地元商店としては在庫を抱えるのが少し軽減されるということはあったが、地域循環型の経済の構築や地域振興への効果は、この実証実験の規模ではまだまだであった。地元の日南町としては、本格実施に向けては、規模を大きくした第二弾の取組が必要という認識にある。
(委員)
○ 島根県の地域マネージャーは先進的な取組であり、非常に興味深い。二年間となっているが恒久化の可能性はあるのか。
○ 島根県が提言している「新たな自治組織による地域総合支援センター」の対象エリアは、歴史的な経緯もあって簡単に決定できないと思うが、どの程度のエリアで、どのようにして決めるのか。
(→島根県)
○ 平成20・21年度の2年間のモデル事業であり、平成22年度以降の補助事業としての継続については現時点では何とも言えない。ただ、県単独の補助金がなくなったとしても、地元主体で、こうした取組が続くことを期待している。さらに、他の市町村においても、このモデル事業を参考に、主体的に取り組んでほしいと考えている。こうした取組の財源措置が、ポスト過疎法の中で実現されることを期待している。
 また、地域総合支援センターのエリアについては、県が決めるものではなく、地域住民と市町村との話し合いの中で決めていただくものだと認識している。
(委員)
○ 地域マネージャーを配置したことによる成果はどうか。また、なかなかその成果を測ることは難しいと思うが、どのような評価方法を考えているのか。
(→島根県)
○ 地域マネージャーの成果を測ることはなかなか難しいと感じている。今のところ、地域マネージャーを中心に、地域が一歩、二歩と踏み出し始めたところと感じている。
(委員)
○ 島根県における医療確保の取り組みを伺いたい。
(→島根県)
○ 医療圏ごとに病診連携に取り組むのは当然として、たとえばICT利活用事業での隠岐と本土の県立病院の間で遠隔医療の実証実験を行うことを考えている。
(委員)
○ 雲南市における地域自治組織に対する住民の反応を教えていただきたい。
(→雲南市)
○ 交流センター構想について住民説明を行ってきている。その中で、地域自主組織が主体となる一方で行政関与が薄れてくるという心配もあるが、活動の自由度が高まると考える地域も出てきている。
(委員)
○ 高知県における地域支援企画員による活動を、どのようにして地元市町村や地域へバトンタッチしていくのかについて聞きたい。
(→高知県)
○ 地域支援企画員は3年程度の異動で代わってしまうため、活動の継続が困難となるといった問題がある。そのため、最初は、ある程度先導的は役割を果たすが、1年、2年、3年とたつうちに、徐々に引いていって地域支援企画員がいなくても大丈夫にすることが重要と考えている。
(委員)
○ 高知県津野町の安心安全見守り台帳の取り組みについて、まだ調査対象予定者が1、000人残っている。これまでの約450人の調査については人海戦術で取り組まれている。最初にハードありきではなく、最初にソフトから動いている。これはボランティアで行っているとのことだがソーシャルビジネスとしても成り立つと思うがどうか。
(→高知県)
○ 津野町はボランティア意識が大変高いところであるためお金の話をすると、それなら私たちはやらないと言われる。ただ、他の地域でもそれができるとは思わないので、今後は、有償的な仕組づくりは非常に大事だと考えており、福祉サイドでいろいろ取組が始まっているところである。
(委員)
○ 島根県の取り組みの基礎的なベースになる集落が力を失いつつあると感じている。集落に入っても反応がないという状況がある。これまでのような地縁組織に頼った方法ではなく、プラスαの仕組づくりが必要だと考えるがどうか。
(→島根県)
○ 中山間地域コミュニティ再生重点プロジェクトのモデル地域は比較的元気のあるところで実施されていると感じており、今後この仕組みを全県的に広げていく際には、比較的元気のない地域についてどのような対応策をとるかは重要な課題と認識している。
(座長)
○ ソフト対策については、かねてより、集落の維持・活性化に向けた対策など、その重要性が指摘されている。新たな過疎対策において、ソフト対策の位置づけをどうするか、具体的にどのような支援策を仕組むかなど難しい問題である。今後、事務局においてもしっかりと検討していただきたい。

(3)今後の予定等
年度内にもう一度懇談会を開催することとされた。

ページトップへ戻る

平成20年度第7回過疎問題懇談会
サイドナビここから
サイドナビここまで