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平成20年度第8回過疎問題懇談会議事概要

日時

平成21年3月26日(木) 10時00分〜12時00分

場所

総務省1階 共用会議室3

出席者(敬称略)

(座長) 宮口 とし廸 (早稲田大学教育・総合科学学術院長)
(委員五十音順) 安藤 周治 (NPO法人ひろしまね理事長)
  飯盛 義徳 (慶應義塾大学総合政策部准教授)
  小田切徳美 (明治大学農学部教授)
  上治 堂司 (高知県安芸郡馬路村長)
  菊池 恵美 (株式会社テレビ長崎常務取締役)
  本田 敏秋 (岩手県遠野市長)
  横道 清孝 (政策研究大学院大学教授)
(総務省) 椎川 忍  (総務省大臣官房地域力創造審議官)
  市橋 保彦 (総務省自治行政局地域政策課長)
  山ア 重孝 (総務省自治行政局地域自立応援課長)
  高田 寛文 (総務省自治財政局財務調査課長)
  奈良 俊哉 (総務省情報流通行政局地域通信振興課長)
  佐藤啓太郎 (総務省自治行政局過疎対策室長)
(国土交通省) 橋本 拓哉 (国土交通省都市・地域整備局地方振興課半島振興室長)

議事概要

(1)説明事項等
 各分野の事例調査の結果及び今年度の過疎問題懇談会の議論について、事務局から配付資料に基づき説明を行い、その後、意見交換を行った。

(2) 意見交換概要

【委員】
 全国の市町村を、集落を含め、この1月から3月まででトータル30箇所以上、廻ってきた。そのなかで感じたのは、利用できる国の各省庁の施策が随分あるのに、なかなかそれが現場まで届いていない。広範な情報を地域へ提供するような役回りの人が、これからは必要ではないかと感じた。
 過疎地域の先人たちが経験し、体験し、あるいは工夫しながら培ってきた匠の技術、わざ、知恵が、日ごとに消えていっているが、継承できるものは継承し、記録に残せるものは残していくような施策が必要だと感じた。なぜなら、大ざっぱな言い方をすれば、これから国のあり方として、農的暮らし方の大切さ、かつてお年寄りが暮らしてきた暮らし方が必要とされる時代がひょっとしたら来るかもしれない。そのときに、これらの技術、わざ、知恵が、お手本となるからである。
【委員】
過疎地域への支援のあり方については、人材確保、人材育成、情報支援と言ったソフト的な支援が非常に重要なポイントになる。
 過疎地域をハードの利活用によって活性化していく際の大切なポイントの一つは、コミュニティで支えていくと言うことではないか。たとえば、コミュニティバスとか、集落支援員など、高齢化や人口減少の流れのなかで、企業でも自治体でも対応ができないようなところを、もう一度コミュニティで支えていくことが必要である。
 もう一つのポイントは、技術で支えていくという視点が大切である。たとえば、成功事例、先進事例として取り上げられている高知のテレワークの取組は、情報技術を使った就業対策であるが、この成功を支えているのは人材育成である。過疎地域での人材育成を支援していくためには、ICTをうまく使った遠隔授業やeラーニングを、もっと積極的に活用していくことが必要である。
 あともう一つのポイントは、地域資源をどうやって発見、再認識をして、それを編集して、発信をしていくか。過疎地の子どもたちは高校を卒業したら進学や就職で地域外に転出する人たちが多く、そのため自分の地域のことをあまり知らないで出ていってしまう。そうなると、働く場がないから帰らないということもあるが、地域のことをよく知らないから帰らないということもあり得る。やはり初等・中等教育において地域をよく知るカリキュラムは、過疎振興上も極めて大切なものではないか。その点で、福岡県東峰村の小学校の子どもたちがテレビカメラを持って、自分たちで村の地域資源を見つけて、それをテレビカメラで撮影をして、自分たちで編集してインターネット上にアップしているような取組は、教育とICTの連動という観点からも重要である。
 また、コミュニティで支えるという点と技術で支えるという点を融合した、地域SNSの取組や、IT技術を活かした農水産業の振興の取組が誘発されるような制度を考えてはどうか。
【委員】
 5点ほどお話をさせていただきたい。一点目は、過疎法の理念について、都市と農山漁村の互恵的関係、共生的関係をもう少し強調するべきだ。その際考えるべきなのは、ポスト過疎法が何年の時限立法になるかわからないが、仮に10年だとすれば2020年3月31日まで通用する発想が必要である。その際には、都市と農山漁村の共生・連携による非常にユニークな国家をつくっていくという発想が必要である。
 二点目は、定住自立圏構想とのかかわりについてで、定住自立圏で網羅できない過疎地域についても、地方中小都市との連携という仕組みを考えていく必要がある。
 三点目は、合併市町村内の周辺地域対策である。これは基礎自治体内の問題であるから、そこに国や県が手を入れて地域振興を促進するということについては難しい問題もあるが、広域合併した市町村内で特に従来の過疎地域はその市町村にとっての宝であるという思いをより一層強めていくような仕組みが必要である。
 四点目は、人材に対する支援についてである。これは、外部人材、内部人材と分けて考える必要がある。そもそも外部人材は前から不足していたが、今、人材が重要だと言われているのは、内部人材、内部のリーダー層が欠け始めているためである。彼らを支え、寄り添っていろいろ相談に乗ることができる集落支援員のような人たちが、集落を見守ることができるような支援を考えていく必要がある。
 次に、外部人材について言えば、今も昔も不足しているが、支援を強化するポイントは外部人材の長期派遣である。一、二週間の派遣はいろんな形で行われるようになっているが、これを二、三年派遣できるような仕組みがまだまだ整っていない。総務省は今年度からチャレンジしているが、もっと大がかりな形でできるような仕組みや派遣されたことがキャリアアップにつながるような仕組みをつくっていくことが重要である。
 五点目は、まだまだ議論されていない論点である都道府県の役割についてである。いわゆる補完性の原理を金科玉条のごとくとらえ、過疎地域における振興は基礎自治体の役割であるとして都道府県が人的支援等に積極的に取り組まないことも起こる可能性がある。しかし、過疎地域には、県が積極的に人的支援等を行う必要があるということをポスト過疎法にビルトインすることが必要ではないかと考えている。
【委員】
 人口1,000人足らずの小さな自治体では、小さな集落を維持するのがいいのかどうかという議論まで踏まえて地域経営を行っている。そのなかで、以前は都市のようにならなければと思ってやってきたが、最近では、食文化のような過疎地のよさをもう一度見直して、過疎地を、田舎を売っていく、それを自信を持ってやっていくことが必要だと思うようになっている。
 小さな自治体は、広域行政でできることは広域行政で処理していく方向が望ましいと考えているが、定住自立圏制度で、ある程度広域行政がうまく機能していけば良いと考えている。
 過疎地の大きな課題は、雇用の場をつくって若い人たちに残ってもらうこと。また、Iターンの人たちには地域の歴史を学ぶ場をつくっていく必要があると考えている。いろいろな人が地域に根づいて地域を支えていくことが必要である。
 これまで過疎法に基づいてさまざまな事業を展開してきたが、過疎市町村にとって過疎法は今後ともなくてはならないものである。
【委員】
 地域の個性を生かして活力を再生していくという視点が非常に重要である。2020年までを見通すと安全・安心な食の提供の点で、可能性は過疎地に広がっている。
 いろいろな成功事例を共有するシステムをつくって他にどのようにつないでいくか、そして、その成功事例をそれぞれの地域が自らの個性、実情に合わせて生かしていくという作業が必要である。
 また、2020年までを見通せば、基礎自治体の職員の能力アップが不可欠となってくる。そして、それぞれの基礎自治体で地域をしっかりと見つめる専門職員、集落支援員などを含めた基礎自治体の能力アップが必要となる。
 合併により広域化した市町村においては、従来の過疎地域への目配りが是非とも必要である。
 都市との連携・共生の理念の実現のため、都市の子供に過疎地の良さを学ばせて、そこで共生という視点を早くから育てていく必要がある。
 医療の問題については、医師の確保、ネットワークづくりを省庁連携して行うべきである。
【委員】
 過疎地域にはしたたかな知恵もあるし、豊富な資源もある。ほんの少し後押しをすれば、地域住民も過疎の市町村も元気を出せる大きな可能性を持っている。そのためにはソフト事業・ソフト施策が非常に必要で、連携や交流といったことが大きなキーワードになってくる。足らざるものを補い合いながら、また誇れるものを活かしながら情報通信技術を利活用して、連携交流のネットワークをうまく使うことで地域の元気が引き出せる。これからの10年、20年で大事になってくる一つの取組であると考えている。
 各省庁の過疎対策に関連する施策については、ぜひ総務省がイニシアチブをとってコーディネートする形をつくっていただきたい。
【委員】
 一つ目は、2020年を見越した理念・意義付けであるが、従来のものを残しながら、新しい要素が加わってきて変化している。これまでは人口減少対策で格差是正対策であったし、これからもその要素はあるが、それに加えて、過疎地域は、少ない人口で広大な美しい国土を維持し管理している。その地域に対して行政として国として支援をしていかないと過疎地域は維持できない、良好な状態で保てないということをより強調する必要がある。
 二つ目は、従来の過疎対策は、ハード中心で画一的あるいは一般的な対策が行われてきた。これは今後も必要ではあるが、これからは、それに加えてソフト施策を重視し、かつ画一的・一般的ではない、より各市町村や集落の実情に応じたきめの細かい対策を打っていく必要がある。
 三つ目は、これからは市町村に加えて集落なりコミュニティに焦点を当てて、どういう対策を打っていくかを考えていく必要がある。その場合、地域によって事情は様々であるので、従来の財政措置とかいろんな支援措置の中身を変えて、よりきめの細かい地域の実情に合った使い勝手のよいものにしていく必要がある。
 四つ目は、合併前に過疎市町村であった地域は、少なくともポスト過疎法においては対象地域として、つまり合併しているかいないかに関わらず従来過疎地域であったところは対象地域になるような対応を考えていく必要がある。
 五つ目は、国民の価値観が少しずつ変化していて、やっぱり地方で生活したいと、都会の人工的なシステム化された世界に住むよりはいいという人が、若い人の中でもある程度出てきているのではないか。そこら辺をうまくつかむ対策をとっていく必要がある。そのためには、過疎地で生活することが格好いいという、そういう意識が少数の人間の間でも出てくるとかなり違ってくるのではないか。
【座長】
 過疎地域は少ない人口で広大な国土空間を管理している。
 やはり、過疎地域には厳しい生活がある。必要な道路の維持、橋の維持などハード整備を忘れてはならない。
 地域に応じた発展、活性化を実現していくために、過疎対策としてしかるべきアドバイザーの派遣を積極的に展開すべきではないか。例えば過疎地域であれば、必要な間、特定のアドバイザーを年間数回地域に派遣して地域格差も含めた方策を議論するといったことが必要である。地域おこし協力隊員等々の一連の派遣事業も過疎対策としてうまくくくることができればよい。
 集落が厳しいから支援するということと同時に、都市に対して過疎地域の農山村の集落は、こんなに住みよいすばらしい場であり、子育てにもいいところなんだと発信し、そこが、より魅力を発揮できるような支援もあり得る。
 地域のわざを発揮してつくられた産物を、消費者に、よりダイレクトに近い形で、売れる仕組みを考えていく必要がある。
 子どもの見守りシステム、地域によってはリタイアした人が面倒を見る仕組みをつくっているようなケースもあり、これを制度的にもう少し普遍化できればと考えている。
【委員】
 2020年まで命が保てるような理念を考えていくといった大きな目的を、という議論になれば、来年までにできるとは思わないが、最終的には条件不利地域振興5法についての議論が巻き起こってしかるべきと思う。

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