会議資料・開催案内等



電気通信事業分野におけるプライバシー情報に関する懇談会(第5回会合)
議事要旨



1 日時:平成15年9月29日(月) 18時00分〜20時00分
2 場所:総務省11階1101会議室
3 出席者
(1) 構成員(五十音順)
大谷和子委員、桑子博行委員、佐伯仁志委員、多賀谷一照座長代理、田島正広委員、手塚信夫委員、平野晋委員、別所直哉委員、堀部政男座長、松井茂記委員、三木浩一委員、村上透委員、吉岡初子委員
(2) 総務省
有冨総合通信基盤局長、鈴木電気通信事業部長、奥消費者行政課長、中溝消費者行政課課長補佐、渋谷消費者行政課課長補佐、大川消費者行政課課長補佐
4 議事概要
(1 )開会
(2 )今後の議論の進め方
(3 )電気通信事業分野における個人情報保護法制への対応
(4 )閉会
5 主な議論
(1) 今後の議論の進め方については、「個人情報保護法制への対応」を「電気通信事業分野における不適正行為による被害への対応」に先行させて議論することで、出席委員の意見が一致した。

(2) 「個人情報」「個人データ」「保有個人データ」(個人情報の保護に関する法律(以下「法」という。)第2条第1、4、5項)について、以下のような議論が交わされた。
電気通信事業者が取り扱う契約者情報などは、ほとんどがデータベース化されていることから「個人データ」に当たる。ただし、保存期間が6ヶ月を超えないものもあり、そのようなものは「保有個人データ」に当たらないであろう。
短期間で消去される個人データであっても、印字されて利用者に交付されたものは、消えたとはいえないのではないか。
その場合には、管理権はもはや電気通信事業者にあるとはいえないであろう。
通信履歴は、法第18条第2項にいう、書面に記載された当該本人の個人情報に該当するのか。
通信履歴は本人が作成するものではないから、それには当たらないのではないか。
通信履歴については、通信の相手方に関する個人情報も含まれている点に特殊性がある。
通信履歴については、課金のために利用するということが明らかであるから、利用目的を公表する必要はないのではないか。
そうすると定額制の場合はどうなるのか。
通信履歴については、課金目的以外にも、例えばアクセスポイントがダウンした際にその原因を究明するなど、トラブルに対応するためという目的がある。
電話番号や電子メールアドレスが「個人情報」にあたるかは、何を基準に個人の識別可能性を判断するかという問題である。情報公開法の場合には、一般人を基準に判断しているが、ここでは一般人基準にはならないであろう。一般人には分からなくても、ある記号から特定の個人に結びついていると分かるものは識別可能性があるといえるのではないか。
電子メールについては、個人の氏名がアカウントで、ドメインが特定の会社名等である場合には「個人情報」に該当するが、それ以外は該当しないだろう。電話番号については、それのみでは誰が使用しているかは通常は特定できないから、「個人情報」には該当しないのではないか。ここでは個別の情報が「個人情報」に該当するかを議論する実益はなく、どのようなデータベースの中に入っているか、どのようなデータが組み合わさっているかが重要である。例えば、電話帳は氏名情報と電話番号が結びついているので、「個人情報データベース等」に該当するであろう。
EU指令においては、識別可能性はあまり問題とされていない。
識別可能性については、誰から識別可能であるのかを問題とすべきである。一般人から識別可能かどうかを問題にすると、電子メールアドレスは「個人情報」とはいえないかもしれないが、事業者や行政から識別可能かどうかを問題にすると、電子メールアドレスは「個人情報」といえるのではないか。
電気通信事業分野には、センシティブな情報があるのか。
例えば、医療情報については情報の性質が特殊だが、電気通信分野においては、通信の中身は常にセンシティブということにはならないと思う。
電気通信事業分野における通信の秘密を含む個人情報は、内容的にセンシティブなものではないが、他の情報と掛け合わせると非常にセンシティブなものになることもあるのではないか。

(3) 「個人情報取扱事業者」(法第2条第3項)について、以下のような議論が交わされた。
ISPの中には取り扱う個人情報が5,000件を超えない事業者も、かなり多いと思われる。
内閣府がパブリックコメントにかけている政令案では、利用方法として、編集又は加工することなく、事業の用に供する場合は除外されているが、電気通信事業分野ではどのようなものがこの除外要件に該当するのか。
データベースにリンクが張ってあるような場合はどうか。
検索エンジンについては、検索エンジンを利用することのみならず、運営することも除外されるであろう。検索エンジンは、そもそも「個人情報データベース等」に該当しないであろう。

(4) 「利用目的」(法第15、16条)について、以下のような議論が交わされた。
法第15条が求める利用目的の特定については、「企業の定款に定める目的」とするのでは不十分ではないか。他方で、利用目的を具体的に書きすぎると、法第15条第2項に定める利用目的の変更との関係で、相当な関連性の範囲内での利用目的の変更がしにくくなり、事業者としては困るであろう。
事業者としては、具体例を挙げていってほしい。
「顧客管理」「料金請求」など個別の利用目的ではなく、それらを一体の目的として利用しているのが実態である。
「サービスの提供」としか利用目的を特定できないかもしれない。
利用者の立場からすると、あまりに広いものであっては困る。法第15条第2項で相当の関連性の範囲内での変更を認めていることからすると、第1項の特定は厳しくするべきではないか。
個別のサービスごとに利用目的を特定すべきであって、利用者から見て別のサービスと捉えられるものは目的外と考えるべきではないか。
法第16条との関連では、どのような場合に収集した個人情報を利用できるのか。例えば、固定電話の顧客に高速インターネットサービスの提供のための勧誘をしてもよいのか。
電気通信事業分野における利用目的というのは、あまり詳しく書いても自明である場合がほとんどだと思うが、例えば、携帯電話の場合、不払い者のブラックリスト作成のため情報を収集する場合などは、利用目的が通常と違ったものとなるので、そのような場合には、情報の種類ごとに利用目的を明示するべきではないか。
サービスは進化するものであり、顧客に便利なサービスを提供するために、請求書の中に新しいサービスについてのパンフレットを入れるということは、利用者に特に不利益を与えるものではないのではないか。
電気通信事業分野ではサービスの進展は激しく、利用目的の特定を厳しくするのは、現実的ではないのではないか。
あるサービスから発展して新しいサービスが生まれた場合であって、従来型のサービスも並行して提供され続けている場合には、新たなサービスに従来のサービスで利用していた個人情報を利用することが許されるかどうかは微妙な問題ではないか。
製造物責任法上の警告義務について、細かい警告を書きすぎると消費者はそれを読まず、かえって危険についての情報が伝わらないという議論があったが、その議論が参考になるのではないか。
新たなサービスは便利になっていて利用者本人にとって利益なものであるから、新たなサービスの宣伝に個人情報を利用することについて、本人は黙示の同意を与えているとは構成できないか。
法は黙示の同意を全く想定していないとまでは言い切れないが、やはりある程度明示の同意を想定しているものと思われる。
法第16条第3項第1号の「法令に基づく場合」とは、法律に直接、明示的に書かれているものにかぎるのか、裁判所の判決も含むのか。
法第16条第3項第4号で読んでいくことも考えられるのではないか。
  (了)


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