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ICTビジョン懇談会 基本戦略WG(第4回)議事要旨

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日時

平成21年1月22日(木)10:00〜12:00

場所

総務省 第1特別会議室

出席者(50音順、敬称略)

・構成員:國領二郎(主査)、会津泉、岩浪剛太、太田清久、甲斐隆嗣、北俊一、篠崎彰彦、資宗克行、滝澤光樹、続橋聡、中村伊知哉、新美育文、野原佐和子、平出利彦、藤原まり子、宮部博史、森川博之、弓削哲也、渡辺武経、広池彰(佐藤構成員代理)、今井純(塚田構成員代理)(計21名)

・総務省:小笠原情報通信国際戦略局長、谷情報通信国際戦略局次長、阪本官房審議官、山根情報通信国際戦略局参事官、齋藤情報通信国際戦略局国際戦略企画官、児玉情報通信国際戦略局技術政策課長、田中情報通信国際戦略局通信規格課長、小笠原情報流通行政局コンテンツ振興課長、奈良情報流通行政局地域通信振興課長、淵江総合通信基盤局電気通信事業部事業政策課長、長塩総合通信基盤局電気通信事業部データ通信課長、渡辺総合通信基盤局電波部電波政策課長

・事務局:谷脇情報通信国際戦略局情報通信政策課長、竹村情報通信政策課調査官、柴山情報通信政策課課長補佐

議事

(1)ICTビジョンの策定に向けて
○ 事務局より、資料「検討の方向性(議論の叩き台)」について説明を行った。事務局説明の概要は以下のとおり。 ・完全なユビキタスネット社会、面的な広がりを持ったユビキタスネット社会を実現していくためには、無線タグあるいは携帯端末などを活用して、リアルとサイバーをつなぎ、情報価値の高度化を生み出す世界を目指し、サイバーとリアルの融合を更に進めていくことを考えていくべき。
 ・知識集約型の産業を中心として日本の再生を図っていくためには、従来の枠を越えた、様々な連携を図っていくことが必要。
 ・2015年を目指して何を実現していくのか、どういう環境を実現していくのかという視点について、全体像としてICTを活用した「効率性の向上」という成長の段階から、新しい事業モデルへの転換という発展の段階への移行が求められている。
○ 資料の説明を踏まえた自由討議における、各構成員の発言概要は以下のとおり。
 ・ 技術投資・装備、人材教育投資を高めることで成長率を高めることは可能だが、その上を流れる情報流通を高めることで、成長率を維持すること、さらに加速する余地が生まれるのではないか。
 ・ リアルとバーチャルの連携が明示的にあってもいい。活発な情報流通でバーチャルな活動が広がると、「対面」の活動に希少性が生まれ価値が高まる。例えばコンテンツは、単にネットで売るだけではなくてライブと組み合わせるなどの相乗効果が生まれている。また、医療も様々な情報を共有すると同時に実際の診療や手術、さらには介護などにも活かせる。教育でも、教師達が教育する知識を共有し、子供たちにはICTで得た知識や情報に加えて、現地や現物に接するような連携も重要となるので、一から十まで全てデジタルというわけではないというメッセージがあったほうがいい。
 ・ 国家間連携や国内市場と海外市場連携に関して、環境問題、資源問題、食糧問題など、グローバルな問題に加えて、各国の教育や医療、教育人材支援なども、世代を超えたグローバルなつながりに大きく貢献するのではないか。
 ・ 日本の技術や日本のスタンダードに慣れ親しんだ技術者の育成を含め、様々な意味での重層構造で日本との関係のある人材は将来の成長基盤になり得るため、教育支援を通じ次世代につなげていくという観点もあるといいのではないか。
 ・ この4、5年の変化で一番大きいのは、ユーザー自身の変化。特に日本ではリテラシーが高く、使い倒すユーザーが相当数いることが強み。国際競争力などを強化するという意味でも、利活用をてこ入れすることも必要だが、変化率が一番大きいユーザー像を的確に捉えて政策を考えるといったことがどこかに入っていると、今までの視点とは違った感じに見えると思う。
 ・ グローバル化と同じようなレベルで地域化が大切。海外戦略、競争力向上のためにも、その国々の地域、風土に根差したサービス、システムを提供するといった地域化対応の視点が必要。日本における地域の人材育成と合わせて、海外技術者の育成を進めることも重要。また、国家間連携の前に、まず日本国内の省庁間の連携をうたう電子政府を表に出したほうがいい。
 ・ 現在はICTに対して成長エンジンとしての持続性が期待されている、コンテンツや利活用に重心を置いてきているという点があげられる。日本としてどういう戦略を立てるのかといったときに、ユーザー力や表現力、ものづくり力といった日本の強みを前面に出し、他の国にはまねできない日本型の戦略を論ずるべき。
 ・ 世界最高水準のブロードバンド環境を達成し、世界一安く普及したにもかかわらず、なぜ今こういった議論をしなければならないのか。単にリアクティブに、海外と比較して足りないところを埋めるだけではだめで、次へ進めるエンジンを探すことが重要。政権のリーダー、あるいは次の政権のリーダーになりそうな人たちに対し、新しい日本の重点的な戦略、政策の中にICTを入れるべくアピールできているか。何が今までと違う新しさなのか、一般国民にもアピールできないか。
 ・ 課題先進国としてのサービスや利活用についてグローバルに打って出るといった示し方ができるのではないか。目に見えない情報が個人にとってサービスの効用を上げるという意味で、利活用がどんどん出てくるという部分をどれだけ助長できるかというのが大きなポイント。ICTは時間や場所を超越して、個人が知識や情報の発信を相互に、双方向に受発信できるという部分を強調しながら、次のフェーズで知の創発を自在に行えるような環境をつくり出していく。そこにいる個人に対して、もっとリテラシーを上げるために教育をサポートしてあげたいといったところの教育環境とか、全ての人がもっと使えるように積極的に支援し、そこで開発されたアプリケーションをグローバルに対して提供していくという見せ方がいいのではないか。
 ・ Google、iPhoneの戦略の一番大きなポイントは、だれでも持っている情報をどういうふうに表示するかに注力している。どれだけいい機能を世の中に埋め込んでも使ってもらえない。全て社会にある公共的な情報というのはどこかに蓄えて、それをみんなが非常に易しく見れるようにしていく必要がある。
 ・ 個からの受発信という側面と、グローバル化というものをどういうふうにつなげるのかというのが重要。ローカルを全体でハーモナイズするというのがICTの1つの目的ということになっていいのではないのか。ユーザーインターフェースというより、むしろユーザーオリエンテッドないしはユーザーセンタードというような発想でICTの技術というものを考えていく必要がある。
 ・ これからICTの利活用が進んでいくにつれて、他省庁の法制度がICTの利活用に影響を及ぼすということが出てくる。そういうときに、他省庁がICTの利活用の意味や、ICTビジョンのあり方みたいなことをしっかり共有していれば、他省庁の理解も深めることができる。その為にも、ICTビジョンで他省庁を引っ張っていくというようなものにしていただきたい。1つの言い方として、高度に少子高齢化した日本の特徴を生かして、最先端に、その中でICTを利活用した社会というものを打ち出していくということでもよいのではないか。
 ・ ICT社会に関する産業や日本の強みを考える際は、全ての製造される、生産されるものがつながるということによって、ユーティリティーを高められるという商品設計やサービス設計ということが基本になるのではないのか。空間と時間をつなぐということが基本になっていて、社会の知を、時間を通じてつなぐということになるのではないか。
 ・ とんがるところ、あるいは世界のテストベッドとして最先端のインフラを整備するのは、ICTセクターそのものの成長のために必要だが、日本のICT環境で初めて通用するICT活用セクターのビジネスは、他の国へ輸出できないと思うので、必ずしも最先端の技術を使わずとも、できるようなビジネスやサービスを合わせて考えていかないと、国際競争力は高まらないのではないか。
 ・ 現状でもできるサービスがやれていないことがあるのでないか。それは何が足かせになっているのかということを分析し、それを取り除くことで、将来、個のサービス、あるいは全体のサービス性がこんなに変わる、こういうふうにメリットがあるということをうたっていく必要がある。またバーチャルとリアルの世界について、情報というのは、今でもかなり迅速に普及して共有できているが、最後のところは、やはりリアルの社会に戻らないといけない。そのときのいろいろな引き渡しとか、あるいは引き継ぎのようなかなり大きな課題が最後は残るのではないか。
 ・ 全治3年とかいわれているものに対して、どうするのか。それを踏まえた上で、将来のビジョンを、どういうふうにやっていくかということを検討する必要がある。
 ・ インフラに関して言えば、アメリカはインフラと比較してアプリケーションがリッチである。例えばiPhone用のGoogleマップ、Google Earth、ストリートビューやYou Tubeなどは明らかに高度なインフラを前提としている。したがってアプリケーションとユーザーのニーズがインフラを引っ張ることになる。日本はこの逆。e−Taxについて、「なぜそれを使わないかといったらユーザビリティーが悪いからである。」「使い方がわからないからではない。」という話だとしたら、それではユーザビリティーを実現するために何がそれを阻止してるのか、ということを検討しなければならない。
 ・ 日本の強みはやはり最先端技術。それもかゆいところに手が届くような技術をかなり持っている。シリコンバレーでもある分野のビジネスをやり始める方だと日本へ視察に来たいという人もかなり多い。そこから何かいろいろなアイデアを引っ張り出していきたいこともあるので、その意味でソフトパワー、そういう価値は非常に強いものがある。それを使って、世界を牛耳っていくという戦略もあるし、ブランディング価値を高めていくような戦略もある。
 ・ 今後3年間という視点では、国内のプロジェクトを中心にしながら雇用に効くものを明確にすること、一方で将来を考えた場合、2015年、あるいはそれ以降を考えた場合に、国内は少子高齢化もあるので、海外市場を狙っていくという戦略的な視点をより強く出していく。あともう一つ大きいのは人材の育成。これはすぐにはできないので、大学、産業界もいろいろ連携しながら地道に人づくりに努めていくということと幅広く物事を見られるような人材をつくっていくことが必要。
 ・ 社会の基礎的な固めをする、あるいはBPRといった社会変革を行っていく視点が必要。
 ・ 経営者の意識として、まだデジタルアレルギーがあり、やっぱりアナログだとか、やっぱり人間関係が基本でフェース・ツー・フェースが大事だという意見が多く、ICTがメインストリームになっていないのでないか。役所についても同様。必ずしもメインストリームに今なってない。資料に記載してある取組内容についても、かなりの部分において他省庁が取り組み、頑張ってもらう内容ではないのか。
 ・ 超短期の対策として、政治活動におけるネットの全面解禁というのはあってもいいのではないか。ネットの威力を実感した政治家がリーダーシップを発揮するとICTの政策に弾みがつくだろう。また住基カードや住基番号を活用した年金記録問題の全面解決なども当面の対策として本来あっていいのではないか。
 ・ 米国以外の国でも選挙とインターネットの活用というのはかなりつながっており、投票しない人の多くが若者で、その票をもらうほうが政治家にとってもプラスになる。しかし10年以上前のインターネットが出てきたころに国会議員や、自治省の人と随分議論をしたが、前に進んでいない。それがリーダーたちの認識が足りていないことに結びついているのではないか。
 ・ 政府全体の目標として、今のコンテンツ市場を5兆円拡大するという目標が政府として掲げられているが、日本のコンテンツ産業の財源を考えると企業の広告費、家計のエンターテインメントの費用も横ばいの状況。その中で、どうやって市場拡大が実現できるのかということを検討しろというのが、情報流通促進サブワーキングの重要なミッション。そのミッションに対しては2つの方向性があって、1つは既存のコンテンツについて、新しい市場を広げていくということ。海外市場の促進があり、またブロードバンド上でネット配信など、新しいビジネスを拡大していくという道もある。もう1つは、より重要な方向性として今の財源である広告費、それから家計のエンターテインメント費に限らない、それ以外の新しい財源を発掘して、新しい市場をつくっていくことがある。
 ・ まだまだインフラの整備というのは力を入れていかなければいけない。面的だけではなく、さらにいろいろなレイヤーにもっと立体的に使う等。そういったことも進めるためにはどうすればいいかということは、著作権に限らずいろいろな制度の問題等もある。我々としてもいろいろなインターフェースで使いやすくするとか、そういったことを含めて考えていく必要があり、そういう意味ではインフラをもっと整備しなければならない。
 ・ ICTの国際競争力でハードウエアの競争力が強くなっても、ここに出てくる情報通信産業の付加価値誘発額で、国内の統計でそれが表面的に出てくるかどうかということには少し疑問を感じる。そういった意味では、コンテンツの定義を広げる。例えば医療であるとか、あるいは最近では物流の代引きであるとか、ネットとつながることによる受発注と、それのプレースメントを含めたところまで、このICTを使うことによって新しいタイプの新時代の三河屋になってきた部分で、一体、どれだけの付加価値がクリエートされているのか。そういった形で、ここの部分の定義を少し変えないといけない。
 ・ 日本のインターネットプロバイダー業界というのは、世界と比べて特異な形をとってると言われている。確かに日本の場合、数百のプロバイダーが活動している。これが多すぎるという議論もいろいろあるが、逆に見ると、そういうプロバイダーを運営している人たちが全国津々浦々に散らばっていて、インターネットをよく知った人が本当の田舎にいて、ユーザーをサポートしているということである。これは逆に強みである。
 ・グローバル化といったときの視点として、ビジネスだとか、政府間、国を超えたいろいろな課題を解決していくというアクティビティーがあると思うが、もう一つ、文化交流的な視点というのが現実の国民の側面ではあるのではないか。例えば海外でフィルハーモニーが分散して一緒にやりましょうといっても、今のインターネットのレベルではまだできない。そういった、もっと根本的に解決しなきゃいけない技術的な課題を超えて、文化交流をもっと活性化したい。
 ・ICTで、これから2015年を見ようというときに、全てグローバル、グローバリゼーションの話になりがちであるが、国というユニット、あるいは個人というユニットでもよいが、どこをどうがっちりブロックして、それから先はできるだけ自由にしましょうという議論がないといけない。大前提として金融なら金融の監視機能みたいなものをきちっとしないと、本当の意味のグローバリゼーションはできないというところの書き方、表現の仕方は非常に工夫がいる、そこをきちっとすることは非常にリアリティーを持たせることができるのはないか。 我々が議論しているICTの社会、カルチャー、産業、行政等いろいろあるが、そこの根っこのところを、どういうふうに表現して、一番いいのはこういうところでキャッチフレーズ、キーワード等、何かうまい物の言い方を、いかに我々が提出できるかというところが一番ポイントになるのではないか。
 ・ 非常に多くの本物の知識、あるいは見識、社会に埋もれているいろいろなものを、情報の流通に乗せるということは、今でも大変な努力をしてやっているが、これは必ずしも技術的な制約があって乗らない、あるいは経済的な動機づけがないから乗らないというわけではない。やはりなかなか儲けられないということもあるかもしれないが、それだけではなくて、尊敬されなければなかなか本物の知識は出てこない。人材育成は非常に重要で、その際にもやはり本物の知識への尊敬の念や、バーチャルとリアルが一体化してくればくるほど、おそらくは個人の世界観とか、生活価値観なんかと正面からぶつかってくる。そのようなときに多様な文化を受容するような考え方や知識の尊敬の念があれば、メディアリテラシーとしてはあったほうが、成果が如実に出るのではないか。

以上

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