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第29次地方制度調査会第4回総会

日時

平成21年6月16日(火)10時〜12時

場所

グランドアーク半蔵門「華の間」

議事次第

1 開 会
2 議 題
 今後の基礎自治体及び監査・議会制度のあり方に関する答申(案)について
3 閉 会

配付資料

今後の基礎自治体及び監査・議会制度のあり方に関する 答申(案)PDF
※第29次地方制度調査会委員名簿(平成21年6月12日現在)

○片山副会長 おはようございます。
 それでは、時間がまいりましたので、ただいまから地方制度調査会第4回総会を開催したいと思います。
 まず、御報告申し上げますけれども、本日は、中村会長が急な御事情によりまして欠席をされることになりました。したがいまして、副会長の私が法令の定めるところによりまして会長代理を務めさせていただきます。どうかよろしくお願いいたします。
 委員の皆様方には、御多忙の中を御出席いただきまして、ありがとうございます。
 初めに、本日は御多忙の中、倉田総務副大臣に御出席をいただいておりますので、ごあいさつをいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○倉田副大臣 皆さんおはようございます。第29次地方制度調査会第4回総会の開会に当たりまして、一言ごあいさつを申し上げます。
 委員に皆様方におかれましては、一昨年7月の安倍総理からの諮問に応じて本調査会が発足して以来、熱心に御審議をいただき、本日、今後の基礎自治体及び監査・議会制度のあり方に関する答申案をお諮りいただくことに至りましたことに対し、心から敬意を表する次第であります。
 地域の活力を呼び覚まし、それぞれの地域が誇りと活力を持つことが必要であり、そのためにも地方分権改革を推進することが重要であります。そして、地方分権改革を進めるに当たっては、地方自治体は今まで以上に国民から信頼される存在になることが求められているわけでございます。
 このような中、このたび取りまとめていただきました答申において、今後における市町村合併など基礎自治体のあり方や地方自治体のチェック機能の充実・強化に関する方策について、具体的な御提言をいただけるものと考えております。委員の皆様方におかれましては、これらの案の取りまとめに当たりまして、その過程において大変な御苦労をいただいているものと存じております。総務省といたしましても、答申が取りまとめられた際には、この調査会の御議論を十分に踏まえ、その趣旨の実現に向けて全力を尽くしてまいりたいと考えております。
 最後に、委員各位の並々ならぬ御尽力に対しまして、重ねて敬意を表しますとともに、皆様の御健勝と一層の御活躍を祈念いたしまして、私のあいさつとさせていただきます。ありがとうございました。
 平成21年6月16日、総務副大臣、倉田雅年。
 今日は佐藤大臣が皆様にお目見えしたいとおっしゃっておりましたけれども、内閣委員会にごあいさつに上がることになりまして重なりましたため、失礼を申し上げた次第でございます。よろしくとのことでございました。

○片山副会長 ありがとうございました。
 倉田副大臣におかれましては、この後公務がございますので退席をされます。ありがとうございました。

(倉田総務副大臣 退室)

○片山副会長 それでは、議事に先立ちまして御報告をいたします。
 昨年12月5日に開催いたしました第3回総会以降、3名の委員の異動がございましたので御紹介いたします。
 まず、全国市議会議長会ですが、五本幸正委員が就任されました。

○五本委員 五本でございます。よろしくお願いいたします。

○片山副会長 ありがとうございます。
 次に、全国町村議会議長会でございますが、野村弘委員が御就任になりました。

○野村委員 おはようございます。全国町村議会議長会副会長の野村でございます。どうぞよろしくお願いします。

○片山副会長 ありがとうございました。
 なお、全国市長会は本日は御欠席ですが、森民夫委員が御就任になられております。
 それでは、カメラの皆さん方、よろしいですか。
 それでは、早速議事に入らせていただきますが、総会が始まります前に運営委員会が行われましたので、まず、その結果につきまして、私が運営委員会の委員長ですので御報告申し上げます。
 運営委員会においては、本日の総会の運営等について相談いたしました。その結果、本日の総会におきましては「今後の基礎自治体及び監査・議会制度のあり方に関する答申(案)」について御審議いただくことと決定いたしました。
 それではまず、専門小委員会における審議状況につきまして、林委員長から御説明いただきたいと思います。よろしくお願いします。

○林委員長 御報告申し上げます。
 今次の地方制度調査会では、平成19年7月3日に開催されました第1回総会において、内閣総理大臣から市町村合併を含めた基礎自治体のあり方、監査機能の充実・強化等の最近の社会経済情勢の変化に対応した地方行財政制度のあり方について、地方自治の一層の推進を図る観点から調査審議を求めるとの諮問を受けたところでございます。
 その後、第2回総会では、今後の審議事項について御決定をいただき、第3回総会ではチェック機能の充実に関する専門小委員会の調査審議状況及び市町村合併の評価・検証・分析について御報告をし、御審議をいただいたところでございます。
 また、専門小委員会では28回にわたり審議を行ってきたところであり、今般「今後の基礎自治体及び監査・議会制度のあり方に関する答申(案)」を本日の総会にお諮りすることとなった次第でございます。
 それでは、専門小委員会で取りまとめました答申案につきまして、事務局より朗読をさせます。よろしくお願いいたします。

○合併推進課長・市町村課長 (以下、資料朗読)

今後の基礎自治体及び監査・議会制度のあり方に関する答申(案)

前 文
 平成7年に制定された地方分権推進法に基づき進められた改革は、平成12年4月の地方分権一括法の施行として結実し、我が国の地方自治制度の姿を一新するための取組が行われた。残された諸課題に対応するため、平成18年12月に地方分権改革推進法が制定され、現在、新たな改革が進められている。
 この間、市町村合併も急速に進展し、市町村の規模・能力の拡充が図られてきた。その一方で、地域ごとの合併の進捗状況には差異が見られ、また、合併した市町村における課題も指摘されている。
 基礎自治体である市町村は、住民に最も身近な地方公共団体として、さらにその自立性を高めていくことが期待される。これまで進められてきた市町村合併の評価・検証も踏まえ、基礎自治体である市町村の行財政基盤の充実強化を図っていく必要がある。
 本格的な地方分権時代を迎え、地方公共団体は自らの責任と判断でその任務を遂行し、住民の負託に応えていかなければならない。しかしながら、近年、一部の地方公共団体で不適正な財務処理等が指摘されるなど、地方公共団体におけるチェック機能のあり方が問われている。住民自治の根幹をなす地方議会の役割や地方公共団体における監査機能は、一層その重要性を増している。
 当調査会としては、このような基本的な認識に立ち、市町村合併を含めた基礎自治体のあり方、監査機能の充実・強化等の最近の社会経済情勢の変化に対応した地方行財政制度のあり方について検討を行ってきたところである。その結果、「市町村合併を含めた基礎自治体のあり方」、「監査機能の充実・強化」及び「議会制度のあり方」について、以下の結論を得たのでここに答申する。

第1 市町村合併を含めた基礎自治体のあり方

1 市町村合併をはじめとした基礎自治体についての現状認識
(1) 市町村合併の背景と進捗状況
 人口減少・少子高齢化の進行等の社会状況の変化に対応して、地方分権の担い手となる基礎自治体にふさわしい行財政基盤を確立することが強く求められ、平成11年以来、全国的に市町村合併が積極的に推進されてきた。
 その結果、市町村数は3,232(平成11年3月31日現在)が1,760(平成22年3月23日見込み)となり、全体として見た場合には、市町村合併は相当程度進捗したものと考えられる。
(2) 市町村合併の評価・検証
 市町村合併の本来の効果が発現するためには、市町村建設計画等で一般的に定められている10年程度の期間が必要であると考えられるが、多くの合併市町村において、合併後3年から4年の段階で、既に次のような成果が現れている。
  1. 経営中枢部門の強化や保健福祉等の専門職員の配置など、地方分権の受け皿としての行政体制が整備されつつある。
  2. 人口減少・少子高齢社会への備えとして、強化された行財政基盤を活かし、地域の将来を左右する少子化対策・高齢化対策などの取組が行われている。
  3. 広域化が進む行政需要への対応や地域資源を戦略的に活用した広域的な地域活性化の新たな取組が生まれつつある。
  4. 適切な職員配置により住民サービスの水準の確保を図りつつ職員総数を削減するなど、効率的な行政運営の取組が行われている。
 一方で、合併により市町村の規模が大きくなることによって、住民の声が届きにくくなっているのではないか、周辺部が取り残されるのではないか、地域の伝統・文化の継承・発展が危うくなるのではないか等の懸念が現実化している地域もある。
 こうした課題に対応するため、合併市町村においては、地域の実情を踏まえつつ、地域自治組織の活用や支所等の設置などにより、新しいまちづくりの中で、住民の利便性の確保、コミュニティ振興及び地域の伝統・文化の振興に向けた取組を継続的に進めている過程にある。
(3) 基礎自治体に関する残された課題
 以上のように、全体的に見た場合には市町村合併は相当程度進捗したものの、市町村合併の進捗状況には地域ごとに大きな差異が見られ、なお、次のような課題が残されている。
  1. 小規模市町村における行財政基盤の強化
    小規模市町村は依然として多く、例えば人口1万未満の市町村は471団体(平成22年3月23日見込み)存在し、特に市町村合併の進捗率が低い都道府県に数多く所在しており、多様な取組により小規模市町村の行財政基盤を強化することが課題となっている。
  2. 将来的に合併の必要性を認識している市町村の存在
    合併が行われなかった市町村の中には、将来的な合併の必要性を認識しながら、様々な理由や背景によって合併を実現できなかった市町村も多い。また、合併市町村についても、当初とは異なる枠組みで合併が行われたものもあり、飛び地が生じた地域も見られる。
  3. 大都市圏の市町村が抱える課題
    大都市圏においては、市町村合併の進捗率が低く、面積が小さな市町村が数多く存在しており、行政サービスの受益と負担が一致しておらず、公共施設の円滑な利活用や一体性のある広域的なまちづくりの観点から、合併や広域連携などを含めて、行政運営の単位のあり方が問われている。

2 これからの基礎自治体のあり方
(1) 今後の基礎自治体像
 第27次地方制度調査会答申においては、「今後の基礎自治体は、住民に最も身近な総合的な行政主体として、これまで以上に自立性の高い行政主体となることが必要であり、これにふさわしい十分な権限と財政基盤を有し、高度化する行政事務に的確に対処できる専門的な職種を含む職員集団を有するものとする必要がある」とされている。
 近年、市町村への権限移譲が進展し、また、法令により市町村に新たな事務が位置付けられるなど、市町村の役割が一層重要なものとなっていることを踏まえれば、上記の答申で示された基礎自治体の姿は、今後も妥当するものと考えられる。
 平成11年以来推進されてきた市町村合併により、多くの合併市町村において行財政基盤が強化されており、我が国の市町村は、全体として見た場合には、このような基礎自治体の姿に近づいたものと考えられる。
 一方で、それぞれの市町村について個別に見た場合には、市町村合併の進捗状況によって人口規模に大きな差が生じるなど、市町村の状況は多様なものとなっており、基礎自治体に求められる十分な組織や職員の配置などの事務処理体制や財政基盤を有していない市町村も見られるところである。
(2) 今後における市町村合併の支援のあり方
 昭和40年に制定された旧合併特例法は、平成11年に財政支援措置が強化されるなどの改正が行われ、市町村合併の推進に大きく舵が切られた。その後、第27次地方制度調査会の答申を踏まえて制定された現行合併特例法においては都道府県の役割が強化される等の措置が講じられ、市町村合併が推進されてきた。
 これまでの市町村合併の進捗状況やその評価・検証については、先に述べたとおりである。今後の人口減少・少子高齢化の進行や厳しい財政状況を踏まえ、基礎自治体としての重要な役割や市町村が抱える課題に対応するためには、今後とも、市町村の行財政基盤を強化していく必要がある。
 しかしながら、平成11年以来、強化された財政支援措置等により全国的に行ってきた合併推進運動も10年が経過し、これまでの経緯や市町村を取り巻く現下の状況を踏まえれば、従来と同様の手法を続けていくことには限界があると考えられる。
 したがって、平成11年以来の全国的な合併推進運動については、現行合併特例法の期限である平成22年3月末までで一区切りとすることが適当であると考えられる。
 その上で、平成22年4月以降は、自主的に合併を選択する市町村に対して必要な支援措置を講ずることが適当である。
 なお、旧合併特例法及び現行合併特例法の下で合併を実現した合併市町村については、その一体的な振興や周辺地域への対応を適切に行えるよう、国及び都道府県は、引き続き、これらの合併市町村に対する積極的な支援を行っていくべきである。
(3) 事務処理方策に関する基本的な考え方
 現在、市町村が置かれている状況や課題は多様であり、今後の市町村における事務処理のあり方を考えるに当たっては、このような市町村の多様性を前提にして、それぞれの市町村が自らの置かれた現状や今後の動向を踏まえた上で、その課題に適切に対処できるようにする必要がある。
 このため、市町村合併による行財政基盤の強化のほか、共同処理方式による周辺市町村間での広域連携や都道府県による補完などの多様な選択肢を用意した上で、それぞれの市町村がこれらの中から最も適した仕組みを自ら選択できるようにすべきである。
 なお、これらの地方自治制度上の仕組みに加え、中心市と周辺市町村が締結する協定に基づく市町村間の新たな連携の取組としての定住自立圏構想をはじめとする地域活性化施策を積極的に活用することで、それぞれの市町村が基礎自治体としての役割を適切に果たすことが求められる。

3 今後の対応方策
(1) 市町村合併に関する方策
 市町村合併は、行財政基盤の強化の手法の一つとして、今後もなお有効であると考えられ、現行合併特例法期限後においても、自らの判断により合併を進めようとする市町村を対象とした合併に係る特例法が必要である。
 この法律においては、具体的には、合併の障害を除去するための措置や住民の意見を反映させるための措置(合併特例区、合併に係る地域自治区等)等を定めることが適当である。
(2) 広域連携の積極的な活用を促すための方策
 市町村間又は市町村と都道府県との間で広域に連携することにより、事務をより適切かつ効率的に処理するため、従来から、地方自治法においては、一部事務組合及び広域連合、協議会、機関等の共同設置並びに事務の委託など、多様な事務の共同処理の仕組みが設けられている。このような事務の共同処理の仕組みが一層活用されるよう、地方公共団体のニーズを踏まえた制度の見直しを行う必要がある。
 すなわち、事務の委託については、基本的には事務権限が委託団体から受託団体に移動する仕組みとなっているため、事務を委託しようとする団体が制度の活用に躊躇するとの指摘もある。このため、委託団体が事務処理の状況を把握し、受託団体に対して意見を提出しやすくなるよう、制度改正を含めた検討を行うことが適当である。
 また、機関等の共同設置については、現行の機関及び職員の共同設置に加え、効率的な行政運営や小規模市町村の事務の補完を可能とするため、内部組織、事務局及び行政機関についても共同設置が進められるよう、制度改正を含めた検討を行うことが適当である。
(3) 小規模市町村における事務執行の確保のための方策
 小規模市町村においても、人口減少・少子高齢化の進行、人口の流出等による家族や地域の相互扶助機能の衰退が見られる中で、住民が期待する行政の役割は大きくなっている。
 市町村に求められる行政サービスを提供するためには、一定の行財政基盤を有している必要があるが、小規模市町村においては、組織や職員の配置などの事務処理体制や財政基盤が必ずしも十分ではなく、特に福祉・保健分野などにおける専門性の高い事務を担う専門職員を配置した事務処理体制の整備が課題となっているとの指摘もある。
 将来にわたってこのような小規模市町村の事務処理体制を整備していくためには、市町村合併による行財政基盤の強化、また、周辺市町村との様々な形態の活用による広域連携の方法に加え、なお、これらによっては必要な行政サービスを安定的に提供することが困難と考えられる小規模市町村があればその選択により、法令上義務付けられた事務の一部を都道府県が代わって処理することも考えられる。
 しかしながら、こうした方策については、様々な論点や是非についての考え方があり、また、地域の実情も多様であること等から、関係者と十分な意見調整を図りつつ、多角的に検討がなされる必要がある。
(4) 大都市圏の課題への対応
 大都市圏においては、今後、地方圏に比べて急速な高齢化が進行し、また、昭和30年代から40年代にかけての人口急増期に集中的に整備した公共施設が一斉に更新時期を迎えるため、これらに伴う財政負担の急増が見込まれている。
 また、大都市圏においては、先に述べたとおり、面積が小さな市町村が数多く存在しており、行政サービスの受益と負担が一致しておらず、行政運営の単位のあり方が課題となっている。
 大都市圏の市町村は、他の地域に比して人口密度が高く市街地も連たんしており、市町村合併や広域連携による高い効率化効果が期待でき、広域連携の推進に加え、自らの判断による合併の可能性も視野に入れて将来の都市像を描いていくことも考えられる。
 大都市圏の市町村は一般的に人口が多く、合併によりさらに人口規模が拡大する場合には、住民自治の充実を図る観点からも、旧市町村単位でのまとまりを維持することができる仕組みについて幅広く検討を行うことが適当である。
(5) 「小さな自治」への対応
 住民自治の強化や住民と行政との協働の推進などを目的として、第27次地方制度調査会の答申を踏まえ、地方自治法上の制度としての地域自治区や合併に際して設置される地域自治区等が制度化されたところである。
 住民自治や住民と行政との協働については、それぞれの地域の自主的かつ多様な取組を基本として展開が図られるべきものであり、今後、地方自治法に基づく地域自治区については、地域の実情に応じて住民自治等を推進する仕組みとして、一層の活用が図られることが期待される。
 現在、地方自治法に基づく地域自治区は、市町村の全域にわたって設置するものとされているが、地域自治区制度の一層の活用を促す観点からは、市町村の判断により当該市町村の一部の区域を単位として地域自治区を設置することもできるようにすることについて検討すべきである。
 また、地域自治区については、地域協議会の構成員について公選の手続による選任を認めるべきではないか、地域協議会に一定の決定権を付与してはどうか、地域協議会の構成員の要件を通勤・通学者や当該区域で一定の活動を行っている者にまで拡大すべきではないかなどの意見があった。
 これらの点については、長の附属機関である地域協議会の構成員と公選された長との関係や公選された議員により構成される市町村の議会との関係をどう考えるか、さらには、地域自治区や地域協議会そのものについてどの程度の代表性と権限を持つものとするかなどの観点から、慎重に検討すべきである。
 さらに、地域においては、コミュニティ組織、NPO等の様々な団体による活動が活発に展開されており、地域における住民サービスを担うのは行政のみではないということが重要な視点であり、地域コミュニティの活性化が図られることが期待される。
 そのための方策としては多様なものが考えられるが、近年特に、地域のコミュニティ組織における経済活動がコミュニティの活性化の重要な要素となってきているとの指摘を踏まえ、その実態等を勘案し、さらに必要な検討を行っていくべきである。

第2 監査機能の充実・強化

 地方行政に対する住民の信頼を確保し、透明性のあるものとしていくためには、地方公共団体自らのチェック機能を高めていくことが重要であり、地方分権が推進されていく中、地方公共団体における監査機能の果たす役割はさらに増している。
 一方、自律的な地域経営や財政状況の健全化が求められている中で、一部の地方公共団体において、不適正な財務処理が行われる等の問題が生じており、現行の監査委員制度や外部監査制度が十分に機能していないのではないかという指摘も見られる。
 このような状況を踏まえ、地方公共団体における監査機能の一層の充実・強化を図るため、監査委員制度及び外部監査制度について、以下のような方向で見直しを行うことが必要と考えられる。

1 監査委員制度の充実・強化
 監査委員制度については、これまでも独立性の強化や専門性の確保を図る観点から、識見を有する監査委員のうち当該地方公共団体の常勤職員であったいわゆるOB委員の就任制限や、条例により識見委員の定数を増加することができるものとするなどの改正が行われてきた。
 地方公共団体の自主性・自律性が拡大する中で、住民の信頼の下に地方行政の適正な運営を確保していくためには、さらなる監査委員制度の充実・強化が必要となるものであり、監査委員の独立性の強化や監査の透明性の確保等について、さらに必要な改善を図るべきである。
(1) 監査委員の選任方法と構成
 監査委員の独立性を強化し、適正な監査を確保する観点から、監査委員の選任方法や構成について、以下のような検討を行った。
 現行制度においては、監査委員の選任方法は、長が議会の同意を得て、人格が高潔で、地方公共団体の財務管理、事業の経営管理その他行政運営に関し優れた識見を有する者及び議員のうちから選任することとされており、また、監査委員の構成は、当該地方公共団体の常勤職員であった者は1人以内、議員のうちから選任される者は2人以内とされている。
 この点について、監査を受ける立場である長が監査委員を選任しているため、監査委員の独立性が十分に確保されていないのではないかといった指摘がある。
 また、議員のうちから選任されるいわゆる議選委員については、短期で交代する例が多いことや、当該地方公共団体の内部にある者であり、その監査が形式的になりがちではないかとの指摘がある。
 このため、監査委員の選任方法を議会の選挙によることに改め、長からの監査委員の独立性を確保することが適当であるとの意見があった。さらに、議会の選挙の際の候補者の選考方法についても、地方公共団体の判断で公募ができるようにするなど選択の余地を設けるようにすべきとの意見があった。
 また、その際には、長とともに議会も監査委員の監査の対象となっており、監査委員は、長からだけでなく議会からも独立した存在とする必要があることから、議選委員を廃止し、議会は当該地方公共団体の行政全般にわたって幅広い見地から執行機関をチェックするという本来の機能を果たしていくべきとの意見が多く見られた。
 これに対し、特に議選委員の廃止について、適任者を選任するという観点から議員を含めて監査委員としての適性を判断したうえで選任すべきという意見や、執行機関を監視するという議会の役割にかんがみると議選委員は維持されるべきとの意見、また、監査委員の選任を議会の選挙とすることについては、慎重に検討すべきとの意見もあり、賛否両論があったところである。
 さらに、議選委員を廃止しないのであれば、監査委員の構成について、現在、都道府県及び政令で定める市における議選委員は2人以内とされているが、これを1人以内とすべきという意見や、公選による監査委員の選出を可能とすべきとの意見があったところである。
 現行制度の下においても、議選委員が2人以内とされている団体において議選委員を1人とすることや、条例により識見を有する委員を増やすなどの取組が行われているところであり、制度の範囲内においても、専門性を強化する観点から地域の実情に応じた取組が行われることが期待される。
 また、公選により監査委員を選出することについては、監査委員に対する住民の意識が醸成される必要があるのではないか、監査委員として専門的な能力を有する人材の立候補が期待できるのかどうかなどの課題もある。
 このようなことから、監査委員の選任方法や構成については、各地方公共団体における今後の行政運営や監査機能の強化のための自主的な取組の状況を踏まえつつ、監査委員を公選により選出することも含めて引き続き検討を行う必要がある。
(2) 監査能力の向上と実施体制の強化
 地方分権の進展等に伴い、地方公共団体の処理すべき事務は今後さらに高度化・多様化するものと考えられる。また、地方公共団体の財政の健全化に関する法律の施行に伴い、地方公共団体の財政状況に関する一定の指標の整備及び公表が義務付けられることとなり、この指標の議会報告及び公表に際しては、監査委員の審査に付すこととされている。これらを踏まえ、監査委員及び監査委員事務局の一層の能力向上が求められている。
 監査能力の向上を図るためには、監査委員の専門性を高めるという見地から、弁護士、公認会計士又は税理士の資格を有する者、会計検査や監査の実務に精通している者等の積極的な登用を促進していく必要がある。その際には、行政改革の観点にも配慮しつつ、条例により識見委員の定数を増加させることも考えられる。
 監査委員事務局については、現行制度上、都道府県においては設置が義務付けられており、市町村においては条例の定めるところにより置くことができることとされている。
 監査体制の強化を図る上で、監査委員事務局は重要な要素であり、監査委員事務局を単独で設置することのほか共同設置することも有効であると考えられる。しかしながら、現行制度上は、共同設置を可能とする規定がなく、事務局職員を共同設置することにより対応することとなる。今後、監査委員事務局の共同設置の促進を図るためには、事務局の共同設置を可能とする制度改正が検討されるべきである。
 なお、市町村に対し監査委員事務局の設置を義務付けることについては、地方公共団体の自主組織権に関する新たな制約となることから、地方分権改革推進委員会の議論において地方公共団体に対する義務付けの見直しが進められていることにも配慮し、慎重に考えるべきである。
 また、監査委員事務局の職員の大部分を、長部局からの出向による職員が占めることにより、監査委員事務局の長部局からの独立性の確保が不十分となるのではないか、監査事務に精通した職員の育成が困難となるのではないかといった指摘がある。
 この点については、監査委員事務局と他の執行機関との人事異動を制限するべきではないかといった意見もあったが、逆に優秀な人材の確保が困難となるのではないか、特に小規模団体において人事の硬直化が進むのではないかといった懸念も拭いえない。
 現行制度上、代表監査委員は事務局職員の任免権を有していることから、専門性を有する優秀な人材を確保するため、代表監査委員が外部登用を含め任命権を実質的に行使していくことが重要である。
 さらに、監査委員や事務局職員の資質の向上の観点から、専門性を高めるための研修を充実していくことが必要である。
(3) 監査の実効性・透明性の確保
 監査結果の報告及びこれに添えて提出できる意見についての決定は、監査の慎重な実施を期するとともに監査の社会的信頼を確保するという趣旨から、監査委員の合議によることとされている。
 現行の合議による制度においては、監査結果の報告等の決定に当たっては全監査委員の意見が一致することが必要とされているため、全監査委員の意見が一致しないときには、監査結果の報告等が行われないこととなる。
 監査の実効性を高めるためには、監査結果の報告及びこれに添えて提出できる意見の決定については多数決によることができるものとし、少数意見を付記して公表することとすることが適当である。このことによって、個々の監査委員の視点も明確となり、監査の透明性の確保にも資するものと考えられる。
 また、長等は、監査結果に基づき、又は監査結果を参考として措置を講じたときは、その措置状況を監査委員へ通知し、これを監査委員が公表することとなっているが、措置を講じない場合においては、その旨を通知することとはされていない。
 監査の実効性を高めるため、監査結果の報告等に対し何ら措置を講じなかった場合においても、その旨を監査委員へ理由を添えて通知することとすることが適当である。このことは、長等が、監査結果に対し説明責任を果たすことにもつながるものである。

2 外部監査制度のあり方
 外部監査制度は、第25次地方制度調査会の答申に基づき、平成9年の地方自治法の一部改正により創設されたものである。この制度は、従来の監査委員制度に加えて、地方公共団体に属さない一定の資格等を有する専門家が地方公共団体との契約に基づき監査を行うことによって監査の独立性・専門性を強化することを目的としている。
 制度の創設後10年が経過し、様々な実績が積み重ねられてきたところであるが、一方で、市町村において導入が進んでいないという実態もあり、外部監査の充実・導入促進の観点から、必要な改善を図るべきである。
(1) 包括外部監査の監査方法
 包括外部監査は、監査の独立性・専門性を強化する観点から、監査対象の選定を包括外部監査人のイニシアティブに委ねることとされているが、これに加え、包括外部監査人の専門性にかんがみ、決算の財務書類の監査を必ず包括外部監査人が監査する事項としてはどうかとの指摘がある。
 株式会社の会計監査人は、貸借対照表、損益計算書等の財務諸表を監査することとされているが、地方公共団体においても、特に決算の財務書類の監査について専門性が要求されるところである。したがって、決算の財務書類を包括外部監査人の必要監査事項として義務付けることにより、監査の実効性を高めるということが考えられる。
 この点については、これらの監査を包括外部監査人が行うとした場合には、業務が膨大となることに伴う費用の増加や包括外部監査人となり得る資格者が限定されること等の課題があることから、引き続き検討を行う必要がある。
(2) 外部監査の導入促進
  1. 包括外部監査
     包括外部監査については、都道府県、指定都市及び中核市に義務付けられ、その他の市町村においては、条例により導入することができることとされている。包括外部監査を導入した地方公共団体においては、毎会計年度、包括外部監査契約を締結しなければならないものとされ、契約の期間内に少なくとも1回以上包括外部監査人による監査を受けなければならないものとされている。
     現在、包括外部監査は、義務付け対象団体以外の団体では導入が進んでおらず、義務付け対象団体の範囲を拡大するべきではないかとの指摘がある。
     一方、包括外部監査については、毎会計年度、必ず外部監査を受けなければならないため、財政面等で過大な負担が生じているとの意見が出されているところであり、このことが、包括外部監査の導入の支障となっているのではないかとの指摘もある。
     包括外部監査の導入を促進する観点から、毎会計年度外部監査を受ける方式に加え、条例により複数年度に1回包括外部監査を受ける方式を導入することが適当である。
     指定都市及び中核市以外の市町村への包括外部監査の義務付けの拡大については、今回の監査制度及び包括外部監査制度の見直しによる監査機能の充実・強化の状況や、人材の確保や財政負担等の課題も勘案し、引き続き検討を行うべきである。
  2. 個別外部監査
     個別外部監査については、各地方公共団体の条例により任意に導入することができるとされているが、包括外部監査と同様に導入が進んでおらず、監査機能の充実の観点からは、幅広く活用されていくことが求められる。
     個別外部監査には、事務監査請求、議会の請求、長の要求及び住民監査請求に基づく4種類のものがあるが、現行では、いずれも条例を定めなければ行うことができないこととされているため、住民が個別外部監査を請求しようとする場合、条例が制定されていなければ請求することができない。
     住民による監視機能の充実や個別外部監査の導入を促進する見地からは、いずれの個別外部監査においても導入の前提として必要とされている条例の制定を不要とすることが適当である。
  3. 小規模団体における外部監査の導入促進
     小規模団体における外部監査の導入については、コストや人材の確保の課題が指摘されているが、地方公共団体の共同の外部監査組織の設置や外部監査人の有資格者に関する情報提供など外部監査人となる人材の確保を支援する方策について、今後引き続き検討していく必要がある。
  4. 外部監査の実効性の確保
     外部監査の実効性を確保するためには、地方公共団体の事務の改善につながる有効な外部監査が実施されることが重要であり、外部監査人に対して外部監査の具体的事例の紹介により情報提供を図るなどの方策が必要である。

第3 議会制度のあり方

 議会は、多様な民意を反映しつつ、団体意思の決定を行う機能と、執行機関の監視を行う機能を担っているが、十分にその役割を果たしていないのではないかなどの指摘がなお見られるところである。
 地方分権の進展等に伴い、地方公共団体の処理する事務は今後さらに増大するとともに、事務の処理に当たっても、条例により自主的に定めることのできる範囲が拡大するなど、地方公共団体の責任領域が拡大するものと考えられ、議会機能のさらなる充実・強化が求められている。
 近年、それぞれの議会において、議会の活動理念とともに、審議の活性化や住民参加等を規定した議会基本条例を制定するなど、従来の運用の見直しに向けた動きが見られるところであり、引き続きこのような自主的な取組が進められることが期待される。
 分権型社会における議会の役割が十分に発揮されるようにするためには、自己改革の取組に加え、以下のような方向での見直しを行うことが適当である。

1 議会の団体意思決定機能や監視機能の向上策
 住民自治に根差した地方行政を実現するとともに、その適正な運営を確保するため、以下のような所要の見直しを行うべきである。
(1) 議決事件
  1. 契約の締結及び財産の取得又は処分に係る議決
     契約の締結及び財産の取得又は処分については、本来、執行機関限りで処理するという考え方もあるが、現行制度においては、地方公共団体の財政運営に与える影響等にかんがみ、政令で定める基準に従い条例で定めるものについては、議会の議決を要するものとされている。
     議会の監視機能を充実・強化するためには、議決事件の対象について条例で定めることができる範囲を現行よりも合理的な範囲内で拡大すべきである。
  2. 議決事件の追加
     議会の議決事件については、地方自治法第96条第1項において議決しなければならないとされているもののほか、同条第2項により各地方公共団体の実情に応じ、条例で任意に追加することができることとされている。
     各地方公共団体においては、中長期的な地域の課題を議会で議論するため、総合計画やその他の法定の計画を議決事件として追加するなどの取組が行われており、このような手法によって、一層議会の審議の活性化が図られることが期待される。
     また、現在法定受託事務は議会が条例により追加することができる議決事件から除外されているが、第28次地方制度調査会においても答申されたとおり、法定受託事務も地方公共団体の事務であることからすれば、これを議決事件として追加できるようにすることが適当であるものと考えられる。この点については、法定受託事務のうち議決事件として追加することが適当でないと考えられるものにどのような措置を講じていくべきかなどについて、検討していく必要がある。
(2) 議会の監視機能
  1. 議会に経営状況の報告を要する法人の範囲の拡大
     長の調査権の対象となる法人及び長が議会に経営状況の報告を要する対象となる法人は、現行制度においては、当該地方公共団体が資本金、基本金その他これらに準ずるものの2分の1以上を出資している法人等とされている。
     この点については、現在、監査委員の監査が資本金等の4分の1以上を出資している法人等にまで及んでいることなどを踏まえ、議会の監視機能を高めるという観点から、長の調査権の対象となる法人及び長が議会に経営状況の報告を要する対象となる法人についても、当該地方公共団体が資本金等の4分の1以上を出資している法人等のうち、条例で定めるものにまで拡大することとすべきである。
  2. 住民訴訟と議会の議決による権利放棄
     住民訴訟のうち、地方自治法第242条の2第1項第4号に基づくいわゆる4号訴訟は、住民が、違法な財務会計上の行為等を行った職員又はその相手方に対して損害賠償又は不当利得返還の請求をすることを、当該地方公共団体の執行機関等に求める訴訟とされている。
     近年、議会が、4号訴訟の係属中に当該訴訟で紛争の対象となっている損害賠償請求権を放棄する議決を行い、そのことが訴訟の結果に影響を与えることとなった事例がいくつか見られるようになっている。
     4号訴訟で紛争の対象となっている損害賠償又は不当利得返還の請求権を当該訴訟の係属中に放棄することは、住民に対し裁判所への出訴を認めた住民訴訟制度の趣旨を損なうこととなりかねない。このため、4号訴訟の係属中は、当該訴訟で紛争の対象となっている損害賠償又は不当利得返還の請求権の放棄を制限するような措置を講ずるべきである。
  3. 議会における決算の認定
     地方公共団体の決算は、毎会計年度、議会の認定に付さなければならないこととされているが、仮に議会が決算を認定しない場合には、まずは、議会が、その審議等を通じ、長の予算執行や政策遂行上の問題点等決算を認定しない理由を長や住民に対して明らかにするよう努めるべきである。
     また、長は、議会から指摘された問題点等に関しては、決算の審議において、その原因や善後策等を十分に説明するとともに、決算が認定されなかった場合には、住民に対してもその善後策等を説明するよう努めるべきである。
  4. 議会の実地検査権等の監視機能
     議会の監視機能は、監査委員の監査とは異なり、住民の代表機関といった立場から、当該地方公共団体の行政全般にわたって果たされるべきである。
     このような見地から、議会は執行機関に対する検査権、監査請求権や調査権等を有しているところであるが、今後さらにこれらの権能を活用していくべきである。
     現在、議会は実地検査を行うことができず、そのような必要がある場合には監査委員に対する監査請求により行うこととされている。この点について、仮に議員選出の監査委員を廃止するのであれば、議会に実地検査権を付与すべきではないかとの意見や、監査委員の選任方法や構成についての検討状況にかかわらず、議会に実地検査権を付与すべきとの意見があった。これに対し、議会に実地検査権を付与することについては、議会の有する監査請求権や調査権等との関係をどのように考えるのか等の課題があるとの意見もあったところである。このようなことから、議会の実地検査権については、現在の検査権や調査権の行使の状況等も勘案しつつ、検討していくべきである。
     また、議会の少数者による調査権等の行使を認めるべきであるとの意見があったが、この点については、議会の意思決定がなされるまでの過程において、少数者の意思をどのように汲み上げ実現していくか、それぞれの議会で様々な運用を工夫していくことが適当である。
(3) 議会活動の透明性と議会事務局等
  1. 議会活動の透明性
     制度的な面だけでなく、実質的な面から議会の権能を高めていくためには、議会が、住民の意思を十分に反映し、充実した審議を行うことが重要である。
     そのためには、議員を選出した住民においても、議会における議論の内容や議員の活動の実態等について、積極的に関心を持つことが期待される。
     議会活動については、本会議のみならず、委員会等の活動も含め、住民にわかりやすいような形で情報公開に努めるべきである。この点については、議案に対する議員の賛否等の議論の経過や議案の情報について、インターネット等も活用して公開していくことが求められる。
  2. 議会事務局等
     地方公共団体の自主的な政策立案の範囲が拡大するとともに、その処理する事務も複雑化・高度化してきていることから、議会の政策形成機能や監視機能を補佐する体制が一層重要となる。政策立案や法制的な検討、調査等に優れた能力を有する事務局職員の育成や、議会図書室における文献・資料の充実など議会の担う機能を補佐・支援するための体制の整備・強化が図られるべきである。

2 議会制度の自由度の拡大
 議会制度のあり方については、できる限り選択の余地を認める方向で見直しを行うことも、議会の機能の充実・強化に資するものであることから、以下の点について検討を行った。
(1) 議員定数等
 議会の議員定数については、現在、その上限を人口区分に応じて法定しているところであるが、議会制度の自由度を高めるため、定数の決定は各地方公共団体の自主的な判断に完全に委ねることとし、法定上限を撤廃すべきである。この場合において、各地方議会が議員定数を定めるに当たっては、住民の理解を得られるものとなるよう十分に配慮すべきである。
 なお、議会の議事定足数について緩和又は撤廃すべきであるとの意見があったが、一方で、議会は本来できるだけ多くの議員が出席して十分な議論がなされることが期待されるとの意見もあり、この点については、引き続き議論を重ねていくことが必要である。
(2) 議会の招集と会期
 現行制度において、議会は、定例会と臨時会に分けられ、定例会は、毎年、条例で定める回数これを招集し、臨時会は、必要がある場合において、その事件に限りこれを招集することとされている。現在は、一年間に数回、一定の会期を定めて定例会を開催するとともに、その会期以外においては、必要に応じて、臨時会を開催するという形の議会運営が一般的となっている。
 議会運営の柔軟性を高めるとともに、議会活動の活性化を促す見地からは、議会運営のあり方についても、より弾力的な形態を考えていくことが求められる。
 例えば、諸外国の地方議会においては、毎週定期的に会議を開催するなどの運営も行われている。このような議会運営は、多様な人材が議会の議員として活動することを容易なものとするほか、住民にとっても傍聴の機会が拡大するなど、住民に身近な議会の実現に資するものと考えられる。我が国においても、特に、基礎自治体の議会においては、このような柔軟な議会運営を可能とする要請は高いものと考えられる。
 今後一層住民に身近な議会を実現し、柔軟な議会運営を可能とする観点から、長期間の会期を設定してその中で必要に応じて会議を開く方式を採用することや、現行制度との関係や議会に関する他の諸規定との整合性に留意しつつ会期制を前提としない方式を可能とすることなど、より弾力的な議会の開催のあり方を促進するよう必要な措置を講じていくべきである。この場合、議場への出席を求められる執行機関について、その職務遂行に支障が生じないように配慮すべきである。
 このような方策を活用することを通じて、議会における議員同士の議論を行う機会を拡大させ、議会の審議の充実・活性化につなげていくべきである。
 議会の招集権については、長のみではなく議長にも付与すべきとの意見もあったが、この点については、平成18年の地方自治法の一部改正により、議長の臨時会招集請求権が認められたところであり、この招集請求権の運用状況も見ながら、なお引き続き検討していくべきである。

3 議会の議員に求められる役割等
 議会の機能の充実・強化に伴い、議会の議員が果たすべき役割はますます重要なものとなっている。
 議会が多様な民意を集約し、団体意思を決定していくためには、地方公共団体の住民の多種多様な層から議員が選出され、議会を構成することが重要である。このことは、今後一層議会に求められる専門性を強化することにもつながるものと考えられる。
(1) 議員の役割等
 議員の主な役割は、住民の意思を把握し、これを議会における審議・討論を通じて適切な形で地方公共団体の運営に反映させることである。個別の利益の実現を図るため、行政に不当に介入し、その公正な執行を歪めるような議員の活動が見られるとすれば、住民の地方議会及び議員に対する信頼を著しく損なうものであって、このような活動を厳に慎むべきことはいうまでもない。
 なお、議員の活動に対しては、諸外国や戦前の地方議会に見られるように実費のみ支給し、原則として無報酬であるべきとの意見がある一方、現在我が国の地方議会が有する権能、求められる役割の大きさ等からすると、一定水準の議員報酬は保障されるべきとの意見もあったところである。
(2) 勤労者等の立候補や議員活動を容易にするための環境整備
 現在、議会の運営としては、会期を一定期間に定め、平日昼間に集中して会議等を開催する例が一般的である。平日の朝から夕方にかけて仕事に従事している勤労者が議員として活動することを容易にするため、例えば、夜間、休日等に議会を開催するなどの運用上の工夫を図ることが考えられる。
 また、勤労者について、立候補を容易にするため、これに伴う休暇を保障する制度や、議員活動を行うための休職制度、議員の任期満了後の復職制度等を導入することなどが考えられる。この点については、我が国における労働法制のあり方やその背景となる勤労者の意識、勤務実態等にも関わる課題であることから、まずは、議会の活動を社会全体で支えるべきであるという意識の醸成に努めつつ検討していくべきである。
 議員の構成については、女性の議員が男性の議員に比べて割合が低く、偏りが見られることから、議会の運営上の工夫を含め、女性の議員をさらに増やすための方策について、諸外国の取組などを参考としつつ検討すべきである。
 公務員については、現行制度において、職務専念義務が課せられ、また、公務の中立性の観点からその政治的行為が制限されているほか、公職への立候補の制限、地方公務員については地方議会の議員との兼職の禁止等の規制がされている。
 公務員が地方議会の議員として活動することは、行政分野に通じた人材が議員として活動することとなり、有益な面があることから、公職への立候補制限の緩和や、地方公務員と当該地方公務員が所属する地方公共団体以外の団体の議会の議員との兼職禁止の緩和などの方策が必要ではないかとの意見がある。
 この点については、公務員が政治的活動と密接不可分である議員活動を行うことについての社会的な理解が得られることが前提となることから、公務員の職務の公正な執行や職務専念義務のあり方等にも配慮しつつ、前記のような休暇制度、休職・復職制度等の導入に関する検討と併せて、引き続き検討の課題としていくべきである。
(3) 議員の位置付け
 議員の活動は、議会における審議・討論にとどまるものではなく、政策形成のための調査研究活動や住民の意思を把握するための諸活動等、広範にわたることから、議員の位置付けやその職責・職務を法制化すべきであるとの意見がある。
 この点については、今後の地方分権の進展や議会機能の充実・強化に伴う議員の活動の実態を踏まえ、政治活動と公務との関係、議員の活動についての住民への説明責任のあり方、職責・職務の法制化に伴う法的効果等を勘案しつつ、引き続き検討することが必要である。

○片山副会長 御苦労様でした。
 それでは、ただいま読み上げられました答申案につきまして、皆様から御意見・御質問を賜りたいと思いますが、先ほど林委員長からお話がありましたように、この地方制度調査会は総会を基本としますが、専門小委員会でかなり綿密に議論してきた結果をまとめて随時総会に諮ることとしております。したがって、専門小委員会に出ておられるメンバーの皆さん方は常日ごろ意見を述べられる機会が多いんですけれども、専門小委員会のメンバーに入られていない方については総会でしか意見を述べられませんので、まず、その方々から優先的に御意見を賜ればと思っております。ということで、最初に、地方公共団体の代表の方々からもし御意見がありましたら、お述べいただければと思います。
 では、大野委員。

○大野委員 御紹介をいただきました、全国都道府県議会議長会会長の大野でございます。
 会長・副会長をはじめ、専門小委員会の委員の皆様には、広範にわたる諸問題について熱心に御協議をいただき、今回答申案としてまとめていただきましたことに対しまして、その御労苦に対し、心から感謝を申し上げる次第でございます。
 今回の審議の中でいただいた地方議会の監視機能に対する厳しい指摘につきましては、真摯に受け止めて、議会活動・議員活動の活性化に一層努めることといたしたいと思っております。
 せっかくの機会でございますので、地方制度調査会の今後の検討に向けて2点ばかり意見を述べさせていただきます。
 まず、議会の招集権についてですが、現在の長が招集する制度から、議会の自立性を高めるため、議長に招集権を付与するよう要請してまいりました。この点について、答申においては引き続き検討することとされておりますが、議会の監視機能、政策立案機能を更に高め、真の二元代表制を実現するため、招集権のあり方について更なる検討が必要であると考えているところでございます。
 次に、議員の位置付けについてですが、私どもが主張してきたとおり、議員活動は本会議・委員会への出席だけではなく、調査研究活動や住民の意見の把握など幅広いものであることについて御理解いただき、答申に明記されたことにつきましては感謝を申し上げる次第でございます。議会の監視機能、政策立案機能の強化のためには、議会を構成する個々の議員の職務・職責を法制化することにより明確にし、それにふさわしい活動基盤を整備する必要がありますので、議員活動と政治活動との関係などを含めて、更なる検討が必要であると考えます。
 なお、議員の位置付けについての検討の前提として、広域自治体と基礎自治体という役割の違いを踏まえて、論点によっては都道府県議会と市町村議会、また、議会を構成する都道府県議会議員と市町村議会議員を分けて議論していただくことも必要であると考えるところでございます。
 以上、よろしくお願い申し上げたいと思います。

○片山副会長 ありがとうございました。
 続きまして、五本委員、お願いします。

○五本委員 全国市議会議長会会長の五本でございます。この5月に就任いたしましたので、これから何とぞ御指導賜りますよう、まずよろしくお願い申し上げたいと思います。
 本日は御欠席でございますが中村会長、片山副会長、そして、林委員長を初め、専門小委員会の皆様方には今日まで精力的に御審議をされ、答申案を取りまとめていただきましたことにつきましては心から敬意を表する次第です。感謝申し上げます。
 私からは答申案につきまして、監査機能の充実・強化、議会制度のあり方について何点か意見を述べさせていただきたいと思います。
 まず、監査機能の充実・強化についてですが、専門小委員会におかれましては監査委員の独立・強化等の観点から、監査委員の選任方法を議会の選挙によることに改め、議選委員を廃止するという方向で御議論されたということは承知致しております。これに対しましては本会では、議会の選挙に変更することについては、監査委員の独立性の強化の観点から賛意を表しておりますが、議選委員の廃止につきましては事務局体制の強化なくして単に議選委員を廃止した場合、かえって監査が形骸化すること、議選委員を法律で一律に禁止するのではなく、議選委員を選任するかどうかについても議会の判断に委ねるべきなどを主張してまいりました。答申案では引き続き検討を行うとされておりますけれども、今後の検討に当たりましては、自治体の実情に即した実効性のある監査機能の充実について、更に御審議いただきますよう、お願い申し上げたいと思います。
 なお、私ども地方行財政の適正な運営を確保していくためには、監査機能の充実・強化は不可欠であると考えております。議会の監視機関としての役割の充実に向け更に努力してまいりたいと考えております。
 次に、議会制度のあり方についてでございますが、本会はこれまで地方分権時代における地方議会の役割は一層重要性を増すことから、今次の議会制度改革においては強い議会の構築と議会活動の自由化が極めて重要あり、そのためには、議会の自主性・自立性を高め、各議会が地域の実情に応じ、自らの判断により権能を行使できるように議会の活動を制約している関係法令上の諸規定を見直すべきであると主張してまいりました。
 答申案においては、契約の締結及び財産の取得、処分にかかわる議決事件の拡大、議会に経営状況の報告を要する法人の範囲の拡大など、私どもが求めてきた事項が少なからず盛り込まれております。これにつきましては評価するものです。これらの事項につきましては、速やかな法令改正をお願いいたしたいと存じております。
 一方、議長の議会招集権の付与については、答申案におきましては議長の臨時会招集請求権の運用状況を見ながら引き続き検討とされておりますが、私どもは二元代表制をとる我が国の地方自治制度のもとで、一方の住民代表機関である議会が自ら議会を開催できるよう、議長への招集権付与をこれまで強く主張してまいりました。これにつきましては、今後なるべく早く実現していただきますよう、改めてお願い申し上げます。
 なお、地方自治法第96条に定める議決事件につきましては、本会は制限列挙主義を改め、議決事件は広く条例で定めることを原則とするよう求めてまいりました。この点に関しまして、昨年6月の第11回専門小委員会におきまして総務省より、これまでの制限列挙主義から第96条第1項は必要的議決事件、第2項は任意的議決事件であるとの考えが示されました。これは本会が主張いたします考え方と相通じるものであり、第96条第1項を必要的議決事件、第2項を任意的議決事件とする考え方を答申に明記するよう申し上げてまいりましたが、答申には盛り込まれておりませんので、総務省の公式な見解として早急にお示しいただきますよう心からお願いを申し上げ、以上で、答申に対する私の意見とさせていただきます。
 ありがとうございました。

○片山副会長 ありがとうございました。
 それでは、山本委員、お願いします。

○山本委員 全国町村会でございます。一言お願いを申し上げておきたいと思います。
 私は、答申の案文についてとやかく言うつもりは全くありません。先ほど説明を受けましたが、入念な検討がされていると思います。したがいまして、委員の皆さんたちが熱心に努力されたことについて敬意を表したいと思いますし、これからも努力していただきたいと思います。
 そこで私が申し上げたいことは、今度の諮問をした内容でございますけれども、私の聞き違えかどうか知りませんが、あの当時総理は、今度諮問するのは、まず1点目が地方の市町村のあり方、いわゆる基礎自治体のあり方と、もう一つはあの当時皆さん御存じのように、小中学校で大変事故が多く出ました。そういう事故が出た場合に、地方に責任を持つように法令で決めてあると。だから、もう少し地方がそういう点についての責任を持つような検討をすべきであるということを言っておられました。第1回目のときに私はそのように聞いたんですけれども、聞き違いかもしれませんが、そのことについては全く話が出ておりません。2年間皆さんたちは大変な御努力をしたのでしょうけれども、まず、ああいう事故が起こったあの制度そのものについて、何の検討をしたのか全くわからないと思っておりますので、どうぞこれからも地方の実態をよく認識されて、こういう審議をすることが大事ではないかと思います。
 もう一つは、地方制度についていろいろと検討していただくわけですから、名前も地方制度調査会になっているわけでして、地方の人たちの意見を十分聞くことが大事です。先ほどから話を聞いておりますと、この委員会は30回以上回数を重ねたということですけれども、地方の人たちの意見を十分聞いたとは私は思いません。現実に地方でいろいろ苦労している人たちがたくさんいるんです。そういう皆さんたちの意見を聞いて、そして、どういうふうにしていったらいいのかということを考えていただくことが大事ではないかと思いますので、今後もし、この地方制度調査会が開かれていく場合は、地方の人たちがたくさん委員の中に入るように御配慮を願いたい。何も市町村長や議会議長にしろと言っているのではありません。地方で実際に実態のわかっている人たち、あるいは地方制度の中でこうしたらいいという意見を持った人が地方にはたくさんいると思います。ですから、そういう人たちを入れていくことが必要ではないかと思います。私はいまだかつて、地方代表としてこの人とこの人が委員になって検討したというのを聞いたことはありません。もし、しているのなら教えてください。確かないと思いますので、是非これから地方の意見をよく聞く、そういう機会を設けるような地方制度調査会になってほしいと思います。
 それから、もう一つは市町村合併でございますけれども、先ほどからも話がありましたが、要するに、合併そのものは今後は自主的にやりたいところがやっていくべきであるというお考えを正確に出すことが必要ではないかと思うんですけれども、先ほどの報告で合併の成果はまだ先のことであるにもかかわらず、合併の成果が高いと聞きました。御承知のように、最後の市町村合併は県が指導力を発揮して合併を促進した、これは事実でございますので、県が合併を促進するならば、なぜ道州制に県は賛成しなのかと思うんです。我々市町村にそういうことをやってきた実績を残した県ですから、なぜ道州制のときに一番先に実施すべきだと言わないのでしょうか。この辺りが私はどうしても納得がいかないところでございます。もう少しこれらを真摯に考え、また、合併の成果というのは5年やそこらでわかるものではありません。少なくとも20年はかかるだろうと皆さんが言っております。だから、20年後に合併の成果はかくあったと言うのであればいいんですけれども、今回の答申案では合併の成果は高いということを言っております。ただし、少し悪いところもありますというような言い方です。文言は別として、そういう意味にとれました。合併の成果が3年や5年でわかるならば、こんな楽なことはありません。その辺りの認識が私にとってはよくわかりません。だから、これからも合併というのは地元の意見をよく聞いた上で、皆さんたちが自主的に合併ができるような手だてを講じていくことが必要ではないかと思いますので、その辺りも是非お考えをいただきたいと思います。
 もう一つは、これから指導する強制的な合併はやめるべきだと思います。あとは自主的に合併をやりたい市町村が合併を進めていくということにした方がいいと思います。なぜ私がそういうことを申し上げるかといいますと、いわゆる道州制を実施する場合には必ず合併が起こってくると思います。道州制がいいのか悪いのか私どもはわかりません。なぜわからないかといいますと、経験がないからです。まだ日本人は誰も道州制を体験した人はおりません。ただ、自分たちの考え方でいろいろなことを言っているだけだと思いますので、こういう点についても是非十分な配慮を、もし今後、地方制度調査会を続けていくならば、そういうことも申し送っていただきたいと思いますので、お願いを申し上げておきます。
 要するに、人々の暮らしが合併によっていろいろな面で阻害されてきているところもたくさんあるんです。その辺りをもう少し掘り起こして検討していただきたいと思いましたが、もう後の祭りでございます。次のときにはそれらについて皆さんたちから御配慮をいただきますよう、お願いを申し上げておきたいと思います。
 以上、私が感じておりましたことを率直に申し上げました。この答申案については、私はとやかく言う気持ちは全くありません。皆さんたちの御労苦に敬意を表するだけです。
 以上です。

○片山副会長 率直で貴重な御意見、ありがとうございました。
 次に、野村委員、お願いします。

○野村委員 先ほどごあいさつを申し上げました、全国町村議会議長会副会長の野村でございます。このたびの調査会の専門委員会、総会も、30回を超える会議を重ねられ、中村会長、また林委員長のもと本日答申案を取りまとめられたことに、各委員の皆様方の御苦労に対し、感謝と敬意を表すところでございます。
 私ども町村議会議長会では、これまでの皆様方の審議について深く関心を持ってきたところであり、前任の原会長からもその都度意見を述べてまいりました。本日はこの答申案に対し、思うところを簡潔に申し上げたいと存じます。
 第1点目は、市町村合併についてであります。合併の評価等については様々な意見があろうと思いますが、おおよそ答申案の表現は少なくとも私どもの実感とはかけ離れておりまして、よい成果が強調され過ぎている感がございます。合併の宿命でありますが、不便な地域には人が住めなくなり、人がいないところには行政は手を出せません。山林や農地は荒れるに任せてしまうことになります。地方自治の原点に立ち返って、国としてあるべき地方の姿を是非とも考えていただきたいと存じます。
 第2点目は、地方自治体のあり方についてですが、答申案では今後の基礎自治体像として第27次地方制度調査会の答申を引用し、このたびの合併により望ましい基礎自治体の姿が実現される一方で、基礎自治体としての能力を有していない市町村もあるとされています。合併は地域の自主性に任せると言っていながら、合併もしない、できないだめな基礎自治体があるという調査会の立場は、地域の多様性を認め、小さくても頑張っているところは生かしていくという地方自治の本旨を見失っているように感じられます。
 申し上げるまでもなく、地域自治組織の提案を行った27次の答申には、住民自治の充実も同時に提言しておりまして、地域における住民サービスを担うには行政のみではないということが重要な視点であるとし、住民や重要なパートナーとして各種民間セクターとも協働し相互に連携して、新しい公共空間の形成を目指すべきとしています。
 私のところでは木曽の山合いの人口6,000人足らずの小さな町で、県庁に出かけるには片道2時間半以上かかる過疎地にあります。そのため、私どもは住民同士、近隣の自治体同士が身を寄せ合い、道普請、用水路の管理、除雪などさまざまな地域の問題に関し助け合って生活してまいりました。そうでなければうまくいかないのです。
 今後の基礎自治体のあり方にとって一番大事なことは、自分たちのことを他人任せにしない、郷土を愛する心の醸成であり、かつ、その実践です。規模・能力で基礎自治体を判断するのではなく、住民の視点に立って過疎・離島の自治体であっても、自立できる夢と希望をもたらす制度を構築すべきだと考えています。
 更に今後、小規模市町村のあり方について検討される場合、大都市のあり方や市町村を包含する都道府県のあり方についても同時に検討し、全体としてバランスをとっていくことこそ我が国の地方自治の発展に必要なことであり、小規模市町村だけを何とかしなければという問題ではないと思われます。
 第3点目は、監査機能の充実・強化についてです。監査委員の選任方法につきましては、私ども長年監査委員の独立性を高める観点から、議会で選任すべき旨、機関決定し主張してまいりました。専門小委員会での論議も二転三転したようですが、今回の検討結果はいささか残念です。また、町村の監査事務局については、平成9年の法改正までは事務局は置けないとされていました。現在ようやく35%程度まで置くようになりましたが、そのうち半数弱は議会事務局と兼務でございます。私どもは監査機能の充実・強化を図るということであれば、しっかりした事務局体制は不可欠だと考えておりますが、現実には行革の中ではなかなか組織を強化する話になりにくいものです。監査委員は都道府県、市町村、すべて必置ですが、何ゆえか事務局は都道府県のみが義務付け、市町村は任意設置です。住民といういわば株主に説明責任を果たすべき自治体が、民間の上場企業に劣る監査体制では恥ずかしい気がしてなりません。是非とも事務局体制の強化が図れるような環境をつくっていただきたいと思います。
 次に、監査結果の報告の決定については多数決によることができるとされていますが、御案内のように、市町村を通じて監査委員が2人のところが全体の約9割と大多数であり、2人では多数決はできないと思います。また、監査は独任制との建前や現在の合議制との混乱が生ずることが懸念されますので、慎重に検討する必要があると思います。
 第4点目は、議会制度のあり方についてです。議会制度の自由度の拡大や議会の監視機能の強化に関しては、私どもの主張が反映されており評価できますが、自治法の第96条第2項の括弧書きについては外すのが本来の姿ですので、答申案にはそのことのみを記述すればよいのではないかと考えております。
 また、議会の招集権につきましては、かねて私ども3議会議長会がこぞって議長に付与すべきと強く主張してまいりましたので、先送りすることなく実現することを重ねてお願いいたします。
 最後になりますが、今般私ども議長会が、今後の町村と町村議会のあり方について研究会を設置し、その報告書がこのたびでき上がりましたので、お手元に提出させていただきました。委員の皆さん方を初め、多くの皆様方に私どもの町村議会について、更なる御理解を賜りますようお願いを申し上げ、私の発言とさせていただきます。どうもありがとうございました。

○片山副会長 ありがとうございました。
 それでは、国会議員から選出されておられます委員の皆さん方、御意見ございますか。
 では、太田先生から。

○太田委員 大変立派なものをまとめていただいたと思っておりますが、前回も取り上げたことですが、監査ということを議論する場合には、組織のガバナンスということをきちんと整理しておかなければいけない。組織のガバナンスは論理の話ですから、一人一人の思いつきであってはならないわけです。株式会社の場合には、はっきりしているのは一番上にあるのが株主であって株主総会、その下に取締役会があって、取締役会から代表取締役が選ばれて執行権を委ねられると。あとは、代表取締役が執行役員を選んで仕事をするということになるわけです。だから、ふだんの仕事は執行権の行使をしているわけであって、それが的確に行われているかどうか、それを超える大きな問題があるかどうかによって取締役会が役割を果たすというのが株式会社の世界です。
 国はどうかといえば、一番上にあるのが国民であって、国民が選んだ次の段階が国会です。国会の中で互選で内閣総理大臣を選んで、内閣総理大臣がそれぞれ閣僚を任命して、行政各部が働くということになっているわけです。国会は取締役会に相当するものでございます。
 では、地方自治体はどうなのかといえば、主権者である住民が一番上にいて、その次に首長がいて、首長と並列して地方議会があるわけです。行政権・執行権は首長に主権者が委ねているわけだから、行政権を除くと何が残るかといえば、議会に本来与えられている一番重要な機能は監査・監視機能ということになるわけです。
 ここにも文章でちょっとおかしなことが書いてあるなと思うのは、議会と執行部は内部の人間だと、お互いに内輪の人間だというようなことが書かれてありますけれども、実態はそうかもしれないけれども、その実態が問題なのであって、本来住民から別々に選ばれていることこそ独立性を最もきちんと担保しているものでございますから、監査の主役は議会が担うべきであると思います。
 もう一つは、「専門性」という言葉がたびたび出てきます。専門性などというのはほとんどの人は持っていないわけでして、国だって例えば、会計検査院に会計の専門家が何人いるか、会計士の資格を持った人はほとんどいないと思います。我が国はほとんど素人ばかりですから、地方でそんなことを求めることは無理。だから、委員にすることよりも、税理士や公認会計士などに委ねることです。専門家に委ねてお金を払うということをやる。そして、専門家の言っていることを十分教えてもらって、監査委員が役割を果たすということになるわけです。
 会計以外の、お金の処理以外の監査というのは大した仕事はないわけでして、大半はお金の処理にかかわることですから、専門家を雇って専門家が効率的に役割を果たすということです。議会の中にあるいは役場の中に、立派な事務局をつくるということが果たして必要かどうかというのは怪しいところです。チェックをされる側の者がまたそこに入るわけですから、そこはどうかなと思います。
 もう一つは、10ページ辺りに「旧市町村単位のまとまりを維持することができる仕組み」ということが出てまいります。これは前から時々出てきて、よいことを考えておられるなと思いますけれども、この場合にはもう一つの問題、国会では衆議院が10年ちょっと前に小選挙区制度になったわけです。参議院は違うけれども、それがいいか悪いかは別です。今から元に戻したいと言う人もたくさんいるんですが、そうなったときに当然、地方議会の方も小選挙区になってもらいたいというメッセージを発していたはずなんですね。一向に変わらない。どこも大選挙区になっているわけですけれども、小選挙区制にしてくれれば、それこそ旧市町村単位から1人ずつ出てくれば、はっきりまとまりが出るわけでございますから、地方自治体においても小選挙区制度になってもらいたい。このことを役所に言ったら、それはここの委員の方々が承知しないと。そこは地方自治体に対する干渉だと言うんです。そんなことを言っていたら、ほとんどの地方議会で同じことを思っていたとしても、誰かが発議をし、問題提起をしなければ、そもそも議論がスタートしないわけですから、それは国が音頭をとっても構わないことです。地方分権の話に反することは決してないということを申し上げておきたいと思います。
 以上です。

○片山副会長 ありがとうございます。
 では、中馬委員、お願いします。

○中馬委員 よく皆様方、熱心に答申案をまとめていただきました。今まで私たちで申し上げるのはなかなかしていなかった問題等も問題提起の形で結論ではございませんけれども、指摘されていることは私はよかったと思っております。
 ここの問題でさっと申し上げさせていただきますが、山本さんもおっしゃいました市町村合併の成果といいますか、それなりの目的を持ってやったことについては、それなりの効果が出ていると思いますが、日本の国を運営する基礎自治体のあり方がどうなのかとい観点から見たときには、これもう少し長い目で見ないとこの評価は出てこないと思います。フランスのような形で数千のコミューンがある、自治体がある、私はこれはこれでいいと思うんです。しかし、それは勿論無報酬でございますから、日本の明治時代と一緒で、すべての自治体は無報酬だったわけですから、それが自立した形で、自分たちのコミューンを維持するなら私はいいと思うんですが、今のような形で役場の数も職員も多くて、高給を取っていて、年金までもらうといったものが今のような形で3,300もあったから、私はけしからんということを言いまして、これを3分の1にすべきだと提唱したのは私が自治省の政務次官のときでしたけれども、ともかくそういう意味では効果があったと思いますが、ここに指摘し始めておりますのが町村合併、これは平成22年3月までで今の促進制度はやめるというのは結構だと思います。そして、小規模自治体でも自立できるところは自立して、小さくてもいいじゃないかと、山本さんのおっしゃるとおりだと私は思っております。ただ、合併しなくて補助金よこせだけでは意に反すると思いますから、それは別の問題でございます。
 それから、小さいところは府県が代行すべしというような文言がありますが、そういう指摘もあるということがありましたけれども、私は府県制度を前提とするならばそれも一つの方法かと思いますが、これから府県をなくしてしまって道州制に持っていこうとするときには、やはり府県に任すというのではなくて、小規模自治体で機能のところを広域行政的な、お互いが連携し合いながら少し広域的なこと、箱物をつくるとか、機能を持たせるといったことは府県に委ねるのではなくて、地域の近隣の自治体でやっていくべきだと思っております。
 それから、地域の自治区は大都市も行政と一般住民との距離が非常に遠くなってしまっております。地域自治区は勿論、町村もそうですけれども、大きな大都市においては逆に必要だと私は思い始めております。それは町内会的なイメージよりももう少し自治的な機能を持たせるとか、あるいはNPOでやるとか、あるいは公益法人制度を変えまして、一般社団という形で町内会でも社団を持てることになりましたから、この形でつくりながら、自分たちで自分たちの地域は守っていこう、自分たちでいろいろなことをやっていこう、公園の掃除その他も含めてそういうことができる制度にしていただきたいと思います。
 それから、監査につきましては、今、太田さんがおっしゃったとおりでございまして、議選委員というのは私は要らないんじゃないかと思います。それは議会が果たせばいい役割ですから、それには前提としまして勿論、監査事務局の機能は向上しなければいけないでしょうし、専門家に外部委託するのは大いに結構だと思っています。ただ、今はかなり監査委員も報酬が高いですよね。名誉職的なことであるとするならば、これは責任をはっきりして、行政に不祥事が起こったときそれを見逃していたとなれば、その監査委員は刑事罰でも受けるようなことでなかったら、報酬をもらっている意味がないと私は思います。
 それから、地方議会でございますが、議会の公開・傍聴、これはどんどんやるべきだと思っておりますが、そういう形で住民の方も参考人として呼んで聞いたりすることも、私は議長招集でやればいいんじゃないかと思っております。
 こうした傍聴につきましては、わざわざ来ていただかなくても、それこそ地デジではないですけれども、各地域でかなり細かいところまで放送している局がありますから、これが可能になってまいりますから、そういう形でテレビで流せばいいことではないかと思っています。
 議会の監視範囲を3セクにつきまして2分の1出資を4分の1以上にした、これは大いに結構だと思います。
 それから、議員定数の上限撤廃も大賛成です。議員を何人にするかは、それぞれの自治体で決めてもらったら結構だと思います。
 何よりも先ほど冒頭で申しましたように、やはり私は基礎自治体の議員は原則無報酬だとはっきり書いていただきたいと思います。勿論、実費は払いますよ。欧米の基礎自治体はほとんどそうですから。大都市的なところは給料を渡しているところもありますが、それもハーフタイムということですからね。例えば、一般の市民の普通の給料が40万円であれば20万円ということです。ということは、ちゃんと自立した生活をしている一般市民が代表として議会に出てくるわけですから、当然ちゃんとした仕事を持っているんですね。ドイツの小さな町に行きまして、そこの議長さんは女性でした。家庭の主婦ですとおっしゃるから、それでは報酬はないんじゃないですかと聞きましたら、私の主人は立派な医者ですと逆になじられましたけれども、そのように自立した市民が代表として議員になるわけですから、生活保護の人やあるいはブラブラしている学生が議員になるなどということは考えられないことですから、ちゃんと自立した生活報酬を持っているはずですから、無報酬でいいわけです。そういう一つの戦前の日本であった、それから、欧米がそうやっているのだったら、余りにも戦後、地方自治法が少しおかしくしてしまった、国会の真似をして地方議員まで全部給料をもらって年金までもらっているというのは見直すべきだと私はかねてから主張しているところでございます。
 いずれにしましても、自治というのはそれぞれ自分たちで自分たちの町をどう運営していくかということを自分たちの代表を出し合ってやっていく。それには、国に頼らずに大いに自立し、また、特色を出しながらやっていくわけですから、今度地方分権を一括法でやりますけれども、思い切って地方に権限を下ろす、財源を下ろし、責任を持ってもらう。その中で自由にやってもらったらいい、今後はそういう形の地方制度にしていただきたいと逆に思う次第でございます。
 以上です。

○片山副会長 ありがとうございました。
 それでは、中川委員、お願いします。

○中川委員 物事の土俵のつくり方というのはいろいろあるのだと思いますが、努力をしていただいたこの答申は、今ある体制というものを前提にしながらどう改革をしていくかという観点で努力をしていただいたのだと思います。そういう意味では、非常に努力を多とするところですが、1つ疑問に思うのは、それで本当にいいのかということだと思うんです。国政が大きな転換期を迎えていますけれども、恐らく分権とか地方自治に関しても大きなビジョンをしっかりした形で、根底から取り直して打ち出していくということをしないと、間に合っていかないんじゃないかという思いがしまして、そこを一つ指摘しておきたいと思います。
 限られた時間ですので、今日は出していただいた漸進的なそういう意味での土俵の上によって余りドラスティックなことは言わずに、2点だけ指摘しておきたいと思います。
 1つは合併なんですが、本音と建て前というのがあって、自主的にそれぞれの基礎市町村が判断をして、住民と相談しながら合併していくというシナリオに戻るというか、国がリーダーシップ、あるいは県がリーダーシップをとってやりましょうよという話と、それから、あめとむちと出してやっていくようなやり方はやめましょうよという形態だと思うんですけれども、中途半端にやめてしまっていいのかなと逆に思うんですよ。
 取り残されたところが、それで生きていくという手はずが仕組みとしてつくられていくんだったらいいけれども、本音のところとしては、このままいってしまって、やはり合併しなければいけないんだ、生きていけないよという話になったときに、十分な支援とかあるいは方向性を国が用意していくということであればいいけれども、結局ここでまた話が中途半端になって、それは終わったことだから勝手にしなさいよという話になってしまったら、とんでもない状況になっていくのだろうと思うんです。だから、やりかけたことはそれが無理な部分があるとしても、あるいは矛盾があるとしても、やはり方向性というのは最後までやりますという話にして、それに基づくいろいろな理想、これは基本的には分権が本気でやられているかということと、住民自治がしっかり入っていくのかどうかという、そこだと思うんです。そこを見て集中して、これは本気でやるんですよという話を一つの国の方向としてリーダーシップとして、コンセンサスをつくっていくという努力を続けていくことが正しいのではないかという思いがしまして、こういう形で答申を書いたときに、そこのところが実際中途半端になるという確率の方が高いんじゃないかということを一つ指摘しておきたいと思います。
 もう一つは条例の制定権、これはそれぞれ今話題になってきていますけれども、市町村とか県に対しての答申というより、国に対してはっきり言うべきだと思うんです。法律の枠組みの中で政省令を前提にした法律を組むのではなくて、条例でそれぞれが考えていけるところは法律の中にここは条例なんですよと、政令・省令ではなくて条例で制定していくんですよと。市町村の独自基準というのをここでつくっていくということが、この法律がもともと求めていることなんですよということまでいかないと、市町村のサイドから決められたものをそれに付加するとか、ゴシゴシと削っていきながら、これは条例ですよという話はなかなか難しいのではないかと思います。
 この答申案で言うべきことは、国に対してあるいは国会に対して条例制定権というものをちゃんと確立させなさい、法律の中にそれを仕組みなさいというところまで是非言うべきだと思っています。
 もう一つ。監査なんですが、誰に対して報告書を出すかということもはっきりさせるべきだと思います。知事あるいは市長に対しての報告ということだと思うんですが、これは議会に対して、我々が想定しているのはアメリカのGAOなんですけれども、そういう監査の報告というのは議会に対してやって、執行部からは独立した形の中身と課題というものをしっかりと組み立てながら、議会に対して報告して、議会がそれを使って調査権をしっかりつくっていくということ、そんなところの整理ももう一つ必要なんじゃないかと思います。

○片山副会長 ありがとうございました。
 国会にもちゃんとものを言うべきではないかという御意見だったと思うんですが、もともと当調査会というのは政府の諮問機関ですから、政府にものを言うというのが使命なんですね。別途国会は自由ですから、法律の立法権があるわけですから、国会は国会で法律のあり方を論じられて、修正なり何なりされたらいいのではないかと思いましたけれども。

○片山副会長 それでは、西川委員。

○西川委員 取りまとめ御苦労様でした。私どももこのテーマにつきまして自民党の中でチームをつくって検討してきました。意見はたくさんあったんですが、今日は1点に絞ってお話し申し上げます。
 住民訴訟と議会の議決による権利の放棄ですが、裁判である程度結論が出るまで放棄を制限するという措置を講ずるという文章になっておりますけれども、地方は地方独自で決めていく話ですから、それこそ地方分権の趣旨からいって、今度のこの形で制限することがない方がいいと考えています。
 大体首長さんが住民訴訟を受けて、勝ったり負けたりを繰り返すということだと思います。数はそうないかもしれませんが、首長が土地を購入する、ほかのものを購入するときも議会の議決をいただいてやるというケースがほとんどだと思うんですね。ところが、訴訟されますと一審で、二審でという話になっていきますが、どの時点まで制限しようとしているかはこの文章ではわかりませんけれども、私は制限しないで議会独自の権利放棄、市に対して市長の損害賠償の問題は放棄するかどうかというのは議会に決めさせるということでして、途中でやるという宣言をするようなことはない方がいいと思っておりますので、御意見を申し上げておきます。
 以上です。

○片山副会長 ありがとうございました。
 それでは、芝委員、お願いします。

○芝委員 まず、私はいろいろな御意見を聞いていまして、先ほど地方5団体の方々からも御意見をいただきました。ただ、この中で地方制度という部分でくくってありますが、県・市・町・村で議会のあり方、監査委員会のあり方というのは、その規模とかいろいろな部分について大きく変わってくると思うんです。同じ部分で論じられている部分がありますから、いろいろな立場の違いが出てくるということは非常に懐疑に思いました。その辺は是非おまとめをいただけるとありがたいなと思います。
 もう一点、ここにも御指摘をいただいていますけれども、今言いましたように、県・市・町・村それぞれの部分の規模やいろいろな条件が違いますから、その中で、それぞれ議会が是非とも議会制度のあり方として、全国で議会の基本条例等を制定する流れを推進していただきたい。これが意見です。
 もう一点、今も言いましたように、県も市も町も村も議会事務局が十分に整備できているかというと、やはり人の問題、お金の問題等でできないと思うのですが、特に、その中で議会事務局を整備していく、充実していかなければならない、これは時代に合わせての部分ですけれども、ややもすると、市職員、県職員、町職員、村職員が議会事務局に来て2〜3年間働いたら、また現場に戻っていくわけですから、議員の皆さん方の意向を聞いた中で十分に力を発揮できるという部分は非常に難しい。すなわち、議会と行政側とのある意味では対立する部分、意見の違う部分がありますから、そこで力を発揮することも難しくなってくると思いますから、是非、議会事務局を整備するためには、議会にも当然ながら専門的な職員を配置すべきではないかと。その職員配置をするには費用がかかりますから、是非、例えば諮問機関であったり、審議会であったり、専門会という議会に、いろいろな分野での専門性を持った人たちが、諮問機関として、市議会委員として議会が使えるような部分を整備していく、その辺を是非これからも検討いただきたいというのが3点目の意見です。
 以上です。

○片山副会長 ありがとうございました。
 このほか、本日御都合で御欠席をされておられます石井委員と森委員からそれぞれ意見が提出されておりますが、もう時間もありませんので、配付しておりますから委員の皆さん方、お読みください。
 それでは、御出席の他の委員の皆さんから御意見ございましたら伺いたいと思います。いかがでしょうか。よろしいですか。
 それでは、本調査会としてお手元にあります先ほど朗読しました本案のとおり答申をまとめることとしてよろしいでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○片山副会長 ありがとうございます。
 それでは、そのように取り計らいたいと思います。また、本日の総会の席でも委員の皆さん方から貴重な御意見を賜りましたので、それは私ども会としても受け止めますし、今日、政府関係者の皆さんもおられますので、よく受け止めていただきたいと思います。
 今、御決定いただきました答申につきましては、本日午後に麻生内閣総理大臣に提出する予定でございます。
 それでは、本日の第4回総会が第29次地方制度調査会の最後の総会になりますので、私から一言お礼を申し上げます。
 委員の皆様方におかれましては、大変御熱心に御審議をいただきまして、ありがとうございました。平成19年7月3日に開催されました第1回総会において、安倍内閣総理大臣から諮問をお受けして以来、2年にわたる審議を進めてまいりましたけれども、皆様の御協力をもちまして総理大臣の諮問に対し答申を取りまとめることができました。第29次地方制度調査会として、地方分権改革の担い手となる地方自治体に対します国民の信頼をより高めるための見地から、一定の方向性を示せたのではないかと考える次第です。
 本日取りまとめました答申は、先ほど申し上げましたように、これから内閣総理大臣にお渡しする予定となっておりますが、政府におかれてはこの答申の趣旨を踏まえ、着実に実行に移されるようお願いを申し上げたいと思います。
 それでは、以上をもちまして、第29次地方制度調査会第4回総会を閉会いたします。熱心に御審議いただきまして、ありがとうございました。(拍手)

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