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各府省等において取り交わされた文書

税務行政運営上の協力に関する国税庁と自治庁との了解事項について

昭和二十九年九月二十日
国税庁長官 平田 敬一郎

国税局長 殿

税務行政運営上の協力に関する国税庁と自治庁との了解事項について

 標題について、自治庁と協議のうえ別紙のとおり定めたから、国税局においては、左記事項に留意のうえ、今後の運営に当つて遺憾のないように措置されたい。

  • 一 了解事項に基く具体的措置の細目については、必要に応じ国税庁と自治庁とで協議のうえ、所要事項を通達すること。
  • 二 了解事項の趣旨を税務署まで徹底させるとともに、局署とも各関係地方団体と十分連絡をとり、了解事項の趣旨にそつた円滑な事務運営を図ること。
     なお、この了解事項は、自治庁から都道府県知事及び市町村長へ通達済であること。
  • 三 東京都については、道府県に準ずることとし、従つて了解事項中「道府県」、「道府県知事」、「市町村」又は「市町村長」とあるのは、それぞれ「都」、「都知事」、「特別区」又は「特別区長」と読み替える場合があることに留意すること。(地方税法第一条第二項及び第七百三十六条第六項参照)

別紙

税務行政運営上の協力に関する国税庁と自治庁との了解事項

第一 基本的な考え方
 国税と地方税の課税標準の統一を中心とした本年度の税制改正とデフレ政策の推進に基く最近における経済情勢の推移に即応し、国と地方団体とが税務行政の運営に当つて一層相互緊密に協力する態勢を強化することにより、国税及び地方税を通じて税務行政の簡素化と負担の適正公平を図る。
第二 具体的措置要領
一 課税上の協力に関する事項
  1. 関係書類の閲覧等
    • ㈠ 直接税の課税に関する関係書類の閲覧及び記録(以下これらを「閲覧等」という。)については、税務官署と各地方団体は、相互に相手方の立場を尊重して積極的に協力することとし、おおむね次の要領により実施する。
      1. (1) 地方税の課税上必要な国税関係書類の閲覧等
        • (ア) 閲覧書類
          • (あ) 所得税に関する書類は、原則として所得調査簿、確定申告書、損失申告書、修正確定申告書、修正損失申告書、更正請求書、更正及び決定決議書、再調査決定決議書、審査決定決議書、誤びゆう取消決議書並びに誤びゆう訂正決議書とする。
             なお、控除失格者については、商工庶業所得者にあつては所得権衡カード、農業所得者にあつては農業所得調査票(これに準ずる調査カードを含む。)が作成されている場合において、地方団体からその閲覧等の申出があつたときは、税務署はその便宜を図る。
          • (い) 法人税に関する書類は、法人税事務整理表とするが、特別の場合において、地方団体から当該法人の当該事業年度の法人税更正及び決定決議書の閲覧等の申出があつたときは、税務署はその便宜を図る。
        • (イ) 閲覧等の時期
          書類の閲覧等の時期は、おおむね次のとおりとするが、具体的には税務署と当該地方団体において協議して定める。
          • (あ) 事業税の賦課徴収のための所得税関係書類の閲覧等は毎年七月頃とし、その後の所得金額の異動等については、各月とする。
          • (い) 市町村民税の賦課徴収のための所得税関係書類の閲覧等は、毎年四月頃とし、その後の所得税額等の異動等については、各月とする。
          • (う) 法人税に関する書類の閲覧等は、おおむね各月の二十日以後の月を選定して行う。
        • (ウ) 手続  地方団体の吏員が、所得税及び法人税に関する書類の閲覧等を行う場合においては、地方団体の長が当該書類の閲覧等を行わせるものとして指定する旨を記載した文書を、関係税務署長に提出して行う。
      2. (2) 国税の課税上必要な地方税関係書類の閲覧等
         地方団体が保管する不動産所得税に関する帳簿書類、固定資産課税台帳、固定資産の評価に使用した地籍図等及び都市計画法等に基く土地区画整理にかかる地図等について、税務署から閲覧等の申出があつたときは、地方団体はその便宜を図る。この場合には(1)の(ウ)に準じた手続をとる。
      3. (3) その他
         税務署は、道府県民税の配賦額の決定に資するため、その基礎となる毎年三月三十一日現在における道府県内の各市町村の前年所得税の徴収決定済額を、道府県又は市町村が毎年四月二十日までに閲覧等をすることのできるように協力する。
    • ㈡ ㈠による外、税務官署と地方団体とは、それぞれ、課税上参考となるべき関係書類の閲覧等について相互に協力する。
  2. 課税標準等の通知
    • ㈠  法人税の課税標準及び税額等の更正又は決定額の道府県知事に対する通知については、おおむね次の要領により実施する。
      • (1) 通知の時期
         税務署長は、法人税の更正又は決定の処理をしたものについて、各月分ごとに翌月の二十五日までに一括して通知する。但し、時効の完成するもの等については、その時期を考慮して適切に通知を行う。
      • (2) 通知書の内容
         通知の内容は次の項目とし、様式は別に定める。
        • (ア) 法人名
        • (イ) 納税地
        • (ウ) 更正又は決定にかかる事業年度
        • (エ) 更正又は決定の年月日
        • (オ) 更正又は決定した所得金額(清算所得金額を含む。なお、輸出所得のある場合には、その損金算入額又は益金算入額を附記する。)
        • (カ) 更正又は決定後の法人税の本税の合計額(法人税額から控除された所得税額がある場合には、当該控除された所得税額。)
        • (キ) 申告書の提出が申告期限後である場合には、期限後申告の年月日
      • (3) 通知先
         通知書は、納税地の道府県知事に送付し、道府県知事が地方税法第三条の二の規定によりその権限を地方事務所長、税務事務所長等に委任している場合には、その委任を受けた機関に送付する。
      • ㈡ 個人事業税の課税標準額の税務署長に対する通知は、別に定める様式により、道府県知事が決定した分について、各月ごとに翌月二十五日までに一括して当該個人の事務所又は事業所所在地所轄の税務署長に対して行う。
      • ㈢ 市町村民税の課税標準の決定額の税務署長に対する通知は、別に定める様式により当該市町村を管轄する税務署長に対して行う。この場合において、地方税法第三百十五条の規定により算定した所得税額等の通知は、各月において決定した分を翌月の二十五日までに一括して行い、地方税法第三百十六条の規定により算定した所得税額等の通知は、その算定を行つた翌月の二十五日までに一括して行う。
  3. 国税と地方税との調整
    • ㈠ 所得税と個人事業税の調整
      • (1) 個人事業税の課税標準たる所得は、原則として毎年五月三十一日現在において税務署長が当該個人について決定した前年分の課税標準たる所得のうち、事業所得及び不動産所得を基準として決定するが、この場合においては、税務署は再調査の請求等係争中のものを明らかにし、便宜を図る。
      • (2) 毎年五月三十一日現在において無申告であり税務署長も決定しないもの及び所得税の控除失格となつたものについては、道府県知事が自主調査によつて決定する。この場合において、道府県知事は、関係税務署長の意見を参しやくして課税の権衡を図ることに努めることとし、特に雑損控除等の各種控除額については、必要に応じ税務署長と道府県知事の協議によつて実情に即するように調整を図る。
      • (3) 自由職業等に属する者の事業所得と給与所得との区分等については、国税庁と自治庁が協議のうえ、極力統一ある取扱を定めるが、具体的事案の取扱について必要がある場合には、税務署長と道府県知事と協議のうえ実情に即するように調整を行う。
    • ㈡ 法人税と法人事業税との調整
       道府県知事は、地方税法第七十二条の四十一の規定により更正又は決定をする場合においては、税務署長の更正又は決定した法人税額との均衡を維持するように留意するとともに、必要に応じその更正又は決定額を関係税務署長に通知する。
    • ㈡ 相続税と固定資産税との調整
       国税と地方税との財産評価については、評価方法及び評価額の決定につき相互に十分な連絡調整を図る。
  4. 資料の提供その他による協力
    • ㈠ 地方税法第七十二条の四十第一項又は第七十二条の五十第三項の規定に基く更正又は決定の請求は、別に定める様式によつて行い、当該請求を行つた後において道府県知事が課税上問題となるべき事実を発見した場合においては、そのつどこれを税務署長に連絡して協議する。
    • ㈡ 税務官署の長は、法人税又は所得税に関する再調査又は審査の請求で、地方税法第七十二条の六十五第七項に該当するものについて決定を行つた場合においては、各月の決定分の内容を一括して翌月の二十五日までに通知する。
    • ㈢ 市町村は、農業所得者の所得算定上必要な各種資料(各人別田畑等の種類別、基本反別、各人別の水稲の供出割当量及び基礎生産見込量、各人別副業資料等)の提供及び農業所得調査票(これに準ずる調査カードを含む。)による所得算定の事務等について、税務署に対して必要な協力をする。
    • ㈣ 不動産所有者に関する税務署の台帳の異動関係事務について、市町村は登記済通知書を提示又は回付する等の便宜を図る。
    • ㈤ 市町村長は、相続税法第五十八条の規定により、税務署長に対して死亡通知書を提出する場合には、死亡者の所有にかかる固定資産課税台帳に登録されている土地、家屋及び償却資産等に関する資料を添付して送付する。
    • ㈥ 酒税確保に資するため、地方団体は、農村密造の未然防止対策としての「密造きよう正組合」、「密造酒を飲まぬ会」等の密造自粛団体の結成及び育成について必要な協力をする。
    • ㈦ 入場税の適正課税に資するため、地方団体は、臨時開催の催物について消防法第十五条第二項又は興業場法第二条第一項の規定に基く届出等により開催の事実を知つた場合には、そのつど開催地の所轄税務署に連絡する。
    • ㈧ 狩猟者税の納税者が所得を納付する義務を有するものであるかどうかについては、税務署長は、道府県知事の請求に応じ、これを証明する等必要な協力をする。
二 徴収上の協力に関する事項
  1. 納税貯蓄組合
    • ㈠ 納税貯蓄組合の普及育成
       税務官署及び地方団体は相互に緊密な連絡を取り、国税及び地方税を通ずる納税貯蓄組合の普及育成に努める。
      • (1) 組合の設立、拡充、育成等については、特に滞納の多い地域に重点をおいて、相互に協力する。
      • (2) 組合員に対する貯蓄額の指導にあたつては、各組合員の納付能力に応じ、できるだけ国税又は地方税の現在滞納及び将来発生見込の税額をも対象として考慮し、その際、組合の実情に応じ、指導方法を異にするように配慮する。
    • ㈡ 組合員に対する徴収猶予等を容認する場合の取扱
      • (1) 一方の徴税団体(「税務官署」又は「地方団体」をいう。以下同じ)が徴収猶予、執行猶予、納付誓約(以下これらを「徴収猶予等」という。)を容認する場合においては、当該組合員の納付能力に応じ、でき得る限り国税、地方税の既滞納及び今後発生する見込みの税額をも考慮して、徴収猶予等をする。この場合においては、できるだけ関係徴収団体の担当職員が組合の会合等に同時出席して、その場で相互の協議により猶予条件を定める方法等を考慮する。
      • (2) 一方の徴税団体が徴収猶予を容認するにあたり、他方の徴税団体により短期間の猶予がされており、しかもその猶予税額が確実に履行されている場合には、さきに猶予された従来の納付計画の履行を前提とする猶予計画を定める。
         なおさきに猶予された納付計画が当該組合員の納付能力にもかかわらず長期間にわたつている場合、またさきに猶予された納付計画をそのまま履行させることにより新たに猶予しようとする徴税団体の徴収につき特に著しい支障が認められる場合には、できるだけ他方の徴税団体及び当該組合員と事前に協議のうえ、相互の猶予条件等を適宜調整する。
      • (3) 一方の徴税団体が猶予中の場合において、他方の徴税団体が滞納処分を必要と認めるときは、できるだけ他方の徴税団体に対する円満な納付計画の履行をかく乱するような滞納処分の執行は避ける。
    • ㈢ 組合員に対する差押処分の執行
       組合員に対しやむを得ず差押処分を執行する場合においては、当該組合員の組合預金の差押をさける等、特に差押財産の選択に配意する。
    • ㈣ その他の組合及び組合員に対する徴収上の措置
       その他組合及び組合員に対する徴収上の措置につき調整を図る必要がある場合には、できる限り事前又は事後に各徴税団体間において十分な協議了解を遂げるように配意する。
  2. 同一納税者に対する徴収上の協調
     同一納税者に対する徴収については、相互に十分に連絡して計画的徴収に努める。
    • ㈠ 所在財産又は執行停止にかかる調査内容の連絡
       滞納者の所在財産調査又は執行停止の監査について、他方の徴税団体から当該滞納者の課税状況、収納状況、財産の内容等につき照会があつた場合には、できるだけ調査簿、徴収簿、滞納処分票等を相手方に開示し、要すれば軽易なものについては、文書回答をする。
    • ㈡ 差押財産の相互の要請に基く可及的すみやかな公売処分の実行 一方の徴税団体の差押中にかかる財産以外に差し押えるべき財産がない場合又は差押財産から剰余を得る見込がある場合等において、交付要求にかかる他方の徴税団体から当該財産の公売方につき要請があつたときは、当該財産を裏付けにして徴収猶予等に付しているような特別の事情のない限りにおいては、可及的すみやかに差押財産を公売して他方の徴税団体の整理促進に資する。この場合において、当該差押中の財産が徴収猶予等の担保となつており、かつ、その財産の価額がやむを得ない事情により差押にかかる税額に比し過大となつているときは、交付要求にかかる徴税団体の要請により当該財産を担保として1の㈡の要領に準じ、当該徴税団体の滞納税額をも織り込んだ資金繰り計画にもとづいてその滞納税額についても徴収猶予等に付することにつき協議し、又はその超過部分の財産の差押解除を考慮する。
    • ㈢ 大口滞納者及び納税に誠意のない滞納者等に対する滞納整理方針の調整
       大口滞納者及び納税に誠意のない滞納者に対する滞納整理の方針につき特に調整を必要と認めるときは、各徴税団体間において連絡協議を行う。
       なお大口滞納者につき徴収猶予等を容認する場合には、できるだけ1の㈡の趣旨に準じた処理をする。
  3. 利子税額等附帯金の完全徴収
     本税に附帯して、徴収される附帯金については、国税及び地方税ともに完全徴収を図ることとし、特に大口滞納、納税につき誠意のない者の滞納及び新年度滞納にかかる附帯金については、本税完結の際に必ず完全徴収を励行するように協議する。
  4. 納税表彰
     各徴収団体が納税表彰を実施する場合には、できるだけ他の徴税団体の所掌にかかる租税の収納状況等も参しやくする。
  5. 納税貯蓄組合に対する補助金
     地方団体は、納税貯蓄組合又は完納者等に対する不法又は不当な補助金若しくは報奨金の支出又は行き過ぎた報奨等により、正しい納税道義の確立に支障をきさないように配慮する。
  6. 公売公告の掲載、滞納処分の立会、集合徴収の場所の提供、集合期日の徹底方法等について、各徴税団体は相互に便宜を図る。
三 その他
  • 1 納税に関する啓もう宣伝運動
     納税に関する啓もう宣伝運動については、税務官署と地方団体は常に共同の歩調をとり、納税思想の普及のための催し、納税完納運動、納税表彰等については、毎年一定の期間を定めてできるだけ税務官署と地方団体が共催して行う。
  • 2 連絡協議会の設置
    • ㈠ 国税及び地方税の事務運営につき相互に連絡協調を図るため、地方協議会及び地区協議会を設ける。但し、既に同趣旨の連絡協議組織が設けられている場合には、それを活用する。
    • ㈡ 地方協議会は国税局、当該国税局管内の地方団体の代表者をもつて、地区協議会は税務署、当該税務署管内の道府県地方事務所又は税務事務所及び市町村の代表者をもつてそれぞれ構成し、必要に応じ随時開催して、具体的問題の処理に当る。
  • 3 以上の了解事項に基く具体的措置の細目及びその他今後の税務運営上の協力について、国税庁及び自治庁は、相互に十分連絡協議することとし、それぞれ国税局、税務署及び各地方団体に対して所要の通達をする。

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