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会見発言記事

第百九十八回国会(常会)総務委員会における総務大臣所信表明

平成31年2月14日

はじめに

 総務委員会のご審議に先立ち、所信を申し述べます。
 先の臨時国会において、私は、地方の疲弊は限界に達し、東京一極集中の是正が急務であるとの認識を申し上げましたが、直近の調査でも地方から東京圏への転出が続いていることは誠に残念であります。今後、この状況を是正するためには、人々が地域で支え合う「持続可能な社会を構築する」必要があり、こうした社会を目指すに当たっては、働く「場」の確保と「生活支援サービス」の提供、そして「担い手」の確保が不可欠ですが、これを巡る二つの明るい兆しをご紹介します。
  一つは、「生活環境を変えたい」という若者意識の変化です。昨年、NPO法人「ふるさと回帰支援センター」への移住相談件数は過去最高の四万件となり、年代別では二十歳台〜三十歳台が五十%を超え、四十歳台を含めると七十%を超えるそうです。これまで移住意識が高いのは高齢者と考えられてきましたが、まさに働き盛りが移住を考えているのです。また、東京・神奈川・大阪からの地方移住希望者は、その家族を含めると百万人を超えるとの研究報告もあります。これは、担い手の確保にとって朗報です。
  もう一つは、Society5.0を支える技術革新の着実な進展です。例えば多言語音声翻訳システムは、既に4カ国語でTOEIC八百点相当となり、さらに8カ国語が東京オリンピック・パラリンピックまでには追加され、日常会話で簡単に使えるようになります。さらに、AI・IoTや5Gを活用する実装例が数多く創出されています。日本のどこでも世界とつながって仕事ができ、また教育・医療など必要な生活支援サービスを利用できる社会がまさに実現しようとしています。
  これらの変化への対応によっては、都市と地方の格差が取り戻せない程広がる可能性もあるだけに、何としてもこの変化を地方にとってのチャンスにしていかねばなりません。
  そこで昨年末、総務省内に「地域力強化戦略本部」を立ち上げ、一月から「Society5.0時代の地方」をキーワードとして、革新的技術の実装例・導入支援策を全国の首長と共有し、また地方からも優良事例や必要な施策を提案いただくなど、双方向かつ持続的なやり取りを始めました。  Society5.0の進化に伴う「持続可能な地域社会の構築」を目指したいと考えています。
 これらの認識の下、特に力を入れて取り組む政策の方向性について、その一端を申し述べます。

個性と活力ある地域経済と安定的な地方行財政運営の確保

 第一に、持続可能な地域社会を支えるには、個性と活力ある地域経済が必要です。「担い手の確保」を後押しするため、地域おこし協力隊の隊員を六年後に八千名まで増やすとともに、その任期満了後も元隊員が活躍できる環境づくりに努めます。また、就業の「場」の確保のため、地域の資源と資金を活用して雇用を創出する「ローカル一〇,〇〇〇プロジェクト」を引き続き推進します。
  次に、持続可能な地域社会を支える安定的な地方行財政運営の確保も重要です。平成三十一年度地方財政計画については、地方公共団体が安定的に財政運営を行うことができるよう、平成三十年度を上回る一般財源総額を確保するとともに、地方交付税総額を増額確保しつつ、臨時財政対策債を大幅に抑制します。
  また、引き続き「まち・ひと・しごと創生事業費」を一兆円計上するとともに、「防災・減災、国土強靱化のための三か年緊急対策」と連携しつつ、地方単独事業として実施する防災インフラの整備を推進するため、新たに「緊急自然災害防止対策事業費」を計上するなど、所要の経費を適切に計上し、これらの内容を踏まえた「地方交付税法等の改正案」を今国会に提出しています。
  さらに、「成田国際空港周辺整備のための国の財政上の特別措置に関する法律」について、期限延長などを内容とする改正案を今国会に提出しています。
 平成三十一年度の地方税制改正については、現下の社会経済情勢などを踏まえ、経済の好循環をより確かなものとし、地方創生を推進するなどの観点から、地方税の税源の偏在性の是正に資するための特別法人事業税及び特別法人事業譲与税を創設するとともに、自動車税の税率の引下げと特例措置の見直し、自動車重量譲与税の譲与割合の引上げなどの車体課税の見直し、ふるさと納税における指定制度の導入などを行うこととしています。
 また、森林整備などに必要な地方財源を安定的に確保する観点から、森林環境税及び森林環境譲与税を創設することとしています。
 こうした内容の「地方税法等の改正案」などを今国会に提出しています。

Society5.0を支える情報通信インフラと利用環境の整備

 第二に、都市と地方の情報格差のない「Society5.0時代の地方」を実現するため、それを支える情報通信インフラと利用環境の整備に取り組みます。
 まず、第五世代移動通信システム、いわゆる5Gについて、必要な電波を割り当て、二年以内に全都道府県に展開するよう求めるとともに、光ファイバなどの地域展開の予算を盛り込み、全国で早期に利用可能となるよう取り組みます。
 また、電波がより有効に利用されるよう、周波数の割当制度や電波利用料制度の見直しなどを行うとともに、携帯電話の競争環境の整備などを通じ、低廉で分かりやすい料金・サービスを実現するため、今国会に「電波法の改正案」を提出しており、おって「電気通信事業法の改正案」を提出します。
 放送では、昨年十二月から「新4K8K衛星放送」が始まりました。今後、受信方法の周知などに努めます。また、NHKのインターネット活用業務を拡大し、常時同時配信を可能とするとともに、NHKの適正な経営を確保するためのコンプライアンス強化や透明性向上などを盛り込んだ「放送法の改正案」を今国会に提出します。
 一方で、我々の生活により広く、深くICTが浸透するにつれ、サイバー攻撃は社会への脅威となります。脆弱なIoT機器対策など、官民連携したセキュリティ対策に取り組みます。
 郵便局は、郵政事業のユニバーサルサービス提供の拠点です。そのネットワークの維持を支援する交付金・拠出金制度を、本年四月から実施します。また、利用者利便を向上させるゆうちょ銀行の限度額の見直しについて、速やかに制度を整備します。

暮らしやすく働きやすいデジタル社会の実現

 第三に、暮らしやすく働きやすいデジタル社会の実現に取り組みます。
 先日、和歌山県白浜町でサテライトオフィスを置く企業の経営者や、そこで働く方から、お話を伺う機会がありました。ICTにより、ほとんどの仕事は場所にとらわれず可能で、通勤のストレスもなく、通勤時間の短縮により、ゆとりある時間が増えたとのことでした。好きな地域で豊かに暮らせる、そうした時代が到来したことを実感しました。既に十数名が移住され、進出企業も更に増えているとのことでした。
 こうした働き方を当たり前のものとするには、まだ多くの壁があります。テレワークを普及させる「テレワーク・デイズ」などに取り組み、移住を希望する若者の意識の変化に応えられる社会への動きを推進します。総務省内でも、若手の参画を得て働き方改革を進めます。
 また、日本のどこでも働き、生活に必要なサービスを受けられる環境を整備するため、4K8K技術を5Gと組み合わせ、遠隔操作や遠隔医療などへの活用を進めます。
 デジタル社会にとって不可欠な基盤となるマイナンバー制度については、情報提供ネットワークシステムを用いた情報連携の円滑な運用と拡充を図るとともに、マイナンバーカードについて、健康保険証としての活用など、官民での利便性を高めて一層普及させます。
 消費税率引上げに伴う対応として、二〇二〇年度に「マイナンバーカードを活用した消費活性化」を実施することとなりました。来年度は、その実施に向けて、国民の皆様への積極的な広報、マイナンバーカードの取得促進やシステム改修に取り組みます。
 世界的に進む変革の中、望ましいデジタル社会を築くには、海外との連携も必要です。本年六月、私も共同議長を務めるG20茨城つくば貿易・デジタル経済大臣会合が開催されます。AIの開発と利活用、情報の自由な流通の促進など、世界の社会的課題の解決に向けた政策連携を進めます。このため、ICTグローバル戦略を策定し、ICTの研究開発と社会実装、そして海外展開を一体的に進めます。

防災・減災/復旧・復興

 第四に、持続可能な地域社会の実現には、防災・減災も重要です。昨年は、大阪北部地震、七月豪雨、台風第二十一号、北海道胆振東部地震など、大規模な災害が相次ぎました。こうした状況に鑑み、第二次補正予算において、七百億円を特別交付税の総額に加算しました。災害からの復旧・復興に向け、被災地方公共団体の財政運営に支障が生じないよう、適切に対応します。
 また、南海トラフ地震、大規模風水害及び放射性物質、生物剤又は化学剤などによるテロ災害に対応するための緊急消防援助隊の強化、消防団の団員の入団促進や処遇の改善、さらに、災害時における、より効果的な活動を図るための救助用資機材の更なる配備などによる地域防災力の充実強化などを推進し、消防力を強化します。
 加えて、G20大阪サミットや東京オリンピック・パラリンピックなどの開催に向けた安心・安全対策や、聴覚・言語機能障害者が音声によらない一一九番通報を行うことができるシステムの全国展開、災害時の情報伝達手段の強化などを進めます。

国民生活の利便性を高めるための効率的で質の高い行政基盤の確立

 第五に、行政機関自身が、ICTの更なる活用により、その運営を効率化して質の向上を図る必要があります。また、国民・住民が行政手続を申請から行政機関の回答まで一貫してオンラインで行うことができるよう、政府の情報システム環境を整備することなども必要です。国及び地方の業務改革を進め、国民の利便性を高めます。
 また、引き続き行政の評価・監視を的確に実施し、行政運営の改善を推進します。とりわけ、持続可能な地域社会の実現に向け、「産官学連携による地域企業振興施策」、「地域公共交通確保施策」などの調査を行っていきます。
 最後に、公的統計は、国民にとって合理的な意思決定を行うための基盤となる重要な情報にもかかわらず、今般、厚生労働省の毎月勤労統計について問題が判明するなど、国民からの信頼を損なう事態が発生したことは、政府統計全体を担当する立場からも重く受け止めています。統計の信頼回復に向け、新たに統計委員会に設けられた「点検検証部会」において、基幹統計に加えて一般統計についても徹底した検証を行い、再発防止に全力を尽くします。
 なお、新たに問題が指摘された厚生労働省の賃金構造基本統計については、外部の目を入れる観点から、行政評価局において調査しています。

むすび

 以上、所管行政の当面の課題と政策の方向性について申し上げました。副大臣、大臣政務官、職員とともに、総力をあげて取り組んでまいりますので、江田委員長をはじめ、理事、委員の先生方のご指導とご協力を賜りますよう、お願い申し上げます。

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