OECD(Organisation for Economic Co-operation and Development:経済協力開発機構)は、経済問題全般について欧米等の先進38か国で協議する国際機関であり、我が国のOECD加盟60周年となる本年は、我が国が10年ぶりに閣僚理事会の議長国を務めました。
フランス(パリ)で開催された本会合では、「変化の流れの共創: 持続可能で包摂的な成長に向けた客観的で高い信頼性に裏づけられたグローバルな議論の先導」をテーマに、「持続可能で包摂的な経済社会の実現」、「自由で公正な貿易と投資促進を通じた健全な経済成長の加速」、「経済的強靱性に関するファクト・ベースの課題抽出と議論」、「信頼性のある政策提言とグローバルアウトリーチ」「複合的危機の下での持続可能で包摂的な成長に向けた信頼できる道筋」「新興課題に対する解決志向型アプローチ」の6つの議題について議論し、本会合の成果として、閣僚声明が発表されました。
(1)生成AIに関するサイドイベントについて
冒頭、広島AIプロセスの設立の経緯や議論の経過、成果について紹介する映像が投影され、続く岸田総理からのスピーチでは、安全、安心で信頼できるAI実現のための国際ガバナンスの形成が急務であり、その観点から広島AIプロセスを立ち上げ、国際指針や行動規範を策定し、生成AIを巡る具体的なリスクの低減に取り組んだこと、OECDにおいてもAI原則の改定という具体的な成果が生み出されることを歓迎する旨を発信しました。
また、49か国・地域の参加を得て、広島AIプロセスの精神に賛同する国々の自発的な枠組みである「広島AIプロセス フレンズグループ」を立ち上げ、国際指針等の実践に取り組み、世界中の人々が安全、安心で、信頼できるAIを利用できるよう協力を進めていく旨発言しました。
さらに、AIによるリスク低減のための技術的措置も重要であり、日本はGPAI東京センターを新設して専門家による技術実証等のプロジェクトを支援するとともに、生成AIがもたらす偽情報等のリスクに対応するため、発信者情報を確認するための技術の社会実装に向けた取組も支援していく旨発信しました。
これを受けて、コーマンOECD事務総長から、国際的なAIガバナンスに関する日本のこれまでの取組を評価するとともに、安全、安心で信頼できるAIの実現のためには、広島AIプロセスと今般改定されるOECDのAI原則の実施が重要であり、OECDとして引き続き貢献していく旨の発言がありました。また、フレンズグループの参加国を代表して、アレハンドロ・エンシナス・ナヘラ・メキシコ経済省通商担当次官及びグレース・フー・シンガポール持続可能性・環境大臣(兼)貿易関係担当大臣 から、広島AIプロセスの取組を評価しつつ、フレンズグループの取組に積極的に参加していく旨の発言がありました。
民間企業から、サム・アルトマンOpenAI社CEOがオンラインで出席し、グローバルなAIガバナンスに関する様々な取組が進展する中で広島AIプロセスの成果である国際指針及び行動規範が重要な役割を果たすことを述べた上で、広島AIプロセスを主導してきた岸田総理のリーダーシップへの謝意と、グローバルサウスも含む形でフレンズグループの取組を今後更に進めることへの期待を表明しました。
※岸田総理大臣の生成AIに関するOECD閣僚理事会サイドイベント出席(結果概要)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/ecm/ec/pageit_000001_00601.html
(2)議題6「新興課題に対する解決志向型アプローチ」AIパートについて
我が国は、2016年のG7情報通信大臣会合において、AIの研究開発等に関する国際的なガイドラインの必要性を提唱しました。OECDにおいては、G7の議論を受けてAIに関する調査や分析に着手し、2019年5月、他の国際機関に先駆け、国際的な政策のスタンダードとなる「AI原則」の10原則を策定・公表しました。
今回の閣僚理事会議題6「新興課題に対する解決志向型アプローチ」のAIパートにおいて松本大臣が議長を務め、OECD AI原則の改定について議論が行われました。
松本大臣からは、これまでの広島AIプロセスの議論に対するOECDの協力について感謝を述べるとともに、OECD AI原則が採択された2019年以降に急速に発展した生成AIのガバナンスの在り方について、今般の見直しにおいて、我が国が議長国としてG7で主導した「広島AIプロセス」の議論を反映する方向であることを歓迎する旨発言しました。
また、世界中の人々がAIの恩恵を受け、よりよい生活を営んでいくためには、AIのガバナンスに関する国際的な相互運用性が重要であり、OECDにおいては、国際的なAI政策の先駆者として、外部の政策的な議論の場においても、エビデンスベースの分析や政策提言に関する専門性など、その強みをいかんなく発揮していただくことを期待する旨発信しました。
その後の閉会式においては、本会合の成果として、OECD AI原則改定版及び閣僚声明等が採択されました。
(添付資料) 2024年OECD閣僚理事会 閣僚声明
【原文】
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【仮訳】
OECD「人工知能(AI)に関する勧告」改定版
【原文】
<参考>
・OECD閣僚理事会公式ウェブサイト
https://www.oecd-events.org/meeting-of-the-council-at-ministerial-level-2024/en/
・広島AIプロセスウェブサイト
https://www.soumu.go.jp/hiroshimaaiprocess/