海外ニュース(2018年5月1日号)

■AI

[1] 英上院AI特別委員会、AIコードの策定など74項目にわたる勧告を盛り込んだAIに関する報告書を公表≪英国≫

 英国上院のAI特別委員会は4月16日、AIに関する報告書「英国における人工知能(AI):英国はAIを活用し、そして活用できる準備ができているか(AI in the UK: ready, willing and able?)」を公表しました。
 同報告書では、AIは英国経済成長の原動力(課題解決や生産性の向上等)として必要であり、AIの倫理的側面を中心にしたアプローチが重要であるとしています。さらに、分野横断的なAIの倫理行動規範(Code of Practice)となる「AIコード」を策定すべきであり、AIの可能性を引出すとともに、脅威やリスクから社会を守るために必要な内容を74項目の勧告として盛り込んでいます。
 「AIコード」の策定に当たっては、(1)人類共通の利益のために開発されるべきである、(2)透明性及び公平性の原則に基づいて運用されるべきである、(3)個人・家族・コミュニティのデータに関する権利やプライバシーを侵害する形で利用されるべきではない、(4)すべての市民はAIとともに精神的・感情的・経済的な繁栄を享受できるような教育を受ける権利を持つべきである、(5)人間を傷つけ、破壊し、欺く自律的な力は埋め込まれるべきではない、という五つの原則を提示しています。
 同報告書のその他の主要な勧告内容は以下のとおりです。
 
*大企業によるデータの独占は避けるべきであり、より大規模の競争が必要となる。英国政府は英国内で活動する大手テクノロジー企業のデータの利用や独占可能性について積極的にレビューを実施するべきである。
*AIを活用する中小企業のための成長基金や、博士人材マッチングスキームの創設、大学の研究成果に基づくAIスタートアップ企業のスピンオフメカニズムの標準化の確立が重要である。
*AIが消費者にとって重要またはセンシティブな問題に関して活用される場合には、AIの透明性を確保するためにも産業界による自主的な通知メカニズムの構築が必要である。
*子どもに対する教育初期の段階において、子どもたちはAIと共に働き、AIを活用できるように備える必要がある。そのため、AIテクノロジーの倫理的な設計や利用方法は教育課程の中でも不可欠のカリキュラムとして位置づけられなければならない。
*AIの研究者や開発者に対して、自らの研究が倫理面で与える示唆や悪用されるリスクについて十分に注意を払うよう要請する。

■自動運転

[2] カリフォルニア州、完全自動運転の試験・運用の認可へ≪アメリカ≫

 米国では州政府が州内の道路行政を管轄しています。そのため、自動運転の公道試験についても、州政府の当局が許認可を担当しています。カリフォルニア州では、自動運転の導入推進の一環として、4月2日、自動運転車のテストには運転手搭乗を義務付けていた規則を改正して、運転手がいない完全な自動運転車のテストと一般利用を認可するとしています。
 カリフォルニア州は、2012年から完全自動運転車の規制案の検討を開始していますが、当時はまだ自動運転という概念は目新しく、本格的な開発に乗り出している企業も多くありませんでした。その後、テクノロジー企業、自動車メーカー各社が自動運転車の開発を進め、公道テストを実施するようになっています。
 なお、2018年3月には、Uber、テスラと自動運転技術を採用する車両の死亡事故が相次いで発生しましたが、カリフォルニア州関係者は、この事故が自動運転車を規制する上での同州の全体的なアプローチを変えることはなかったとしています。4月の新規則では、以下が義務づけられます。
 
*自動運転車の開発者が、車両が制御可能な、現実に近い環境の中でテストしたと証明する。
*州・地方自治体の車両運行関連規則に則って、道路上の状況を検知し、対応できることを証明する。
*自動運転車のテストは、実施する地域の自治体にその計画通知した上で、テスト状況は双方向通信リンクで監視する。
*事故発生時や自動運転モード解除が必要になったケースは州に報告する。
 
 また、カリフォルニア州車両管理局(DMV)は、無人の自動運転車のテスト・運用は、州が定めた安全基準を全て満たさない限り認可しないとしています。
 関連して、カリフォルニア州の公益事業委員会(PUC)も4月6日に運転手が搭乗しない自動運転車が乗客を輸送することを許可することを提案しています。これが実現した場合、ウェイモやゼネラル・モータース(GM)などが無人自動運転車を、移動サービスに投入する道が開かれることになります。同規則案は、上述のDMVの規則を補足し、乗客の保護対策を追加するものと位置付けられています。同規則の案は、2018年5月の会議で採決が実施される予定です。

[3] コネクテッド・自動運転の5G交通回廊の構築で欧州各国間が合意≪EU≫

 4月10日、欧州委員会はコネクテッド・自動運転の欧州5G交通回廊の構築に向けた取り組みに関して、複数の国・地域間で新たな合意が締結されたと発表しました。
 新たな合意はブリュッセルで開催された「デジタルデー」の場で締結され、スペインとポルトガルは、ビーゴ(スペイン)とポルト(ポルトガル)、メリダ(スペイン)とエボラ(ポルトガル)の間の交通回廊で国境を越えたコネクテッド・自動運転の試験を実施する基本合意書(LoI)を締結しました。また、ギリシャ、ブルガリア、セルビアは、テッサロニキ(ギリシャ)、ソフィア(ブルガリア)、ベオグラード(セルビア)間の交通回廊で連携していくことで合意しました。
 コネクテッド・自動運転の国境を越えた連携は、すでにルクセンブルク、メッツ(フランス)、ドイツ(メルツィヒ)間の交通回廊、トロムソ(ノルウェー)とオウル(フィンランド)間のE8回廊、ヘルシンキ(フィンランド)、ストックホルム(スウェーデン)、オスロ(ノルウェー)間のE18回廊などで実施されています。
 欧州委員会は5G研究開発プロジェクト基金「5G-PPP」の枠組みでコネクテッド・自動運転の分野に5,000万ユーロを計上しており、複数の国・地域間で実施されるコネクテッド・自動運転の試験にも基金が割り当てられる予定となっています。

[4] 工業・情報化部等、「インテリジェント・コネクテッドカーの道路測定試験管理規範(試行)」を発表≪中国≫

 工業・情報化部、公安部、交通運輸部は4月3日、「インテリジェント・コネクテッドカー(智能網聯車)の道路測定試験管理規範(試行)」を共同で発表しました。5月1日より施行開始予定です。
 規範において、測定試験主体は、インテリジェント・コネクテッドカーの公道測定試験申請を提出し、測定試験の企画及び関連の責任を負い、かつ、一定の条件(中国国内で登記された独立法人単位等)に合致する機関を指します。
測定試験運転手は、測定試験主体に授権された者で、緊急状況が発生した際、測定試験車両に対して緊急措置を実施し、かつ、一定の条件(3年以上の運転経歴、厳重な交通違法記録がない等)に合致する者とされています。
 測定試験車両は、臨時走行ナンバープレートを取得しなければ、公道での走行ができません。その車体に、目立つ色で「自動運転測定」の文字を表示し、周辺の車両に注意喚起しなければなりません。また、測定期間中、交通違法行為が発生した場合には、公安機関交通管理部門は、現行の道路交通安全法令・法規に照らして測定試験運転手に対して処理を行います。
 なお、インテリジェント・コネクテッドカーの定義について、規範第28条では次のように定義しています。先進的な車載センサー、コントローラー、作動装置等の装置を搭載するとともに、通信とネットワーク技術を融合し、車とX(人・車・道路・クラウド側等)との情報の交換と共有をスマートに実現し、複雑な環境におけるセンシング、スマートな意思決定、共同制御等の機能を具備し、安全・効率的・快適・省エネな走行を実現し、最終的に人を代替して操作できる新世代自動車で、通常、スマート自動車や自動運転自動車等とも称されます。

■5G

[5] 5G早期商用化に向けて通信事業者の設備共用制度改善≪韓国≫

 世界的に次世代移動通信サービスの5G商用化計画を前倒しする動きが見られます。中でも韓国は国策として5G商用化一番乗りを目指し、以下の表のスケジュールに沿って準備を進めています。
 
5G商用化に向けたスケジュール
時期 内容
2018年2月 ピョンチャン冬季オリンピック(ピョンチャン五輪)で5G試験サービス提供
4月 5G用途周波数オークション計画、設備共用計画発表
6月 周波数オークション実施、設備共用関連制度改定
2019年3月 5G商用化
  
 
 今年2月のピョンチャン五輪では、臨場感あふれる映像や聖火リレー、開会式等で5Gを活用し、一般の人が直接体験できる形で5G試験サービスが世界に先駆けて提供されました。ピョンチャン五輪で5G試験サービスの運営を担当した総合通信事業者KTは、2019年3月の5G商用化開始を宣言しています。競合事業者も早期の5G商用化を目指しています。
 5G早期商用化に向けて、スムーズにネットワークを構築し、さらに、重複投資の非効率を避ける必要があります。そのため、ICT分野行政を所掌する科学技術情報通信部(部は省に相当)が、主要通信事業者とのトップ会談を重ね、4月10日に「新規設備の共同構築及び既存設備の共同活用制度改善対策」をまとめました。この対策には次の方針が盛り込まれました。
 
*通信事業者間共同構築の活性化で重複投資防止
*地方自治体、施設管理機関(地下鉄公社、道路公社等)の開放義務設備範囲拡大
*通信事業者の設備開放義務拡大
 
 5Gネットワーク構築の際、新規の通信設備については、通信事業者が費用を分担して共同構築を進めます。移動通信用中継器やケーブルを敷設するため、地方自治体等が提供を義務付けられる設備の種類も増えます。さらに、他社の電柱や光ファイバー等の設備を5Gネットワーク構築の際にも活用できるように、通信事業者間での共用を義務付ける設備の範囲も拡大します。
 これらの設備の利用料金は、地域や工事環境に応じて段階を設ける方針です。料金算出方法は今年中に政府系ICT政策研究機関の情報通信政策研究院(KISDI)が設計する予定です。今後は料金算定水準が業界の大きな関心の的になります。今回の制度を実行に移すため、関連の規則改正が6月までに完了する見通しです。

問い合わせ先

連絡先:情報流通行政局
情報通信政策課情報通信経済室
電話:03-5253-5720
FAX:03-5253-6041
Mail:mict-now★soumu.go.jp
(★をアットマークに変換の上、お問い合わせください)

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