テレワークの動向と課題について

 テレワークとは、ICTを活用した、場所や時間を有効に活用できる働き方のことです。テレワークというと、会社のオフィスに出社せず自宅で仕事をする在宅勤務を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、外出先で空き時間に仕事をするなどのモバイルワークや、本来勤務しているオフィスとは別のオフィスで仕事を行うサテライトオフィス勤務などもテレワークに含まれています。
 
 7/23(月)から27(金)までの期間のうち、24日(火)とその他の日の計2日間以上を「テレワーク・デイズ」として、テレワークの実施を呼びかけています。今回のメールマガジンでは、テレワーク・デイズの前に、テレワークの基本的な動向などについて、『平成30年版情報通信白書[1]』の記述を元に見ていきます。
 
[1] 総務省『平成30年版情報通信白書」の4章4節「ICTによる多様な人材の労働参加促進」を参照。 https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h30/pdf/n4400000.pdf

■テレワークの利用動向

 総務省の「平成29年通信利用動向調査」によると、2017年の企業におけるテレワークの導入率は13.9%でした。企業の従業者規模別にテレワークの導入率を比較すると、従業員数300人以上の企業では23.0%、300人未満の企業では10.2%と、従業員数の多い企業ほど導入が進んでいることが分かります。
 
 テレワーク導入済みの企業のうち、在宅勤務を導入している企業は29.9%、モバイルワークを導入している企業は56.4%、サテライトオフィスの導入率は12.1%と、モバイルワークの導入率が最も高く、在宅勤務やサテライトオフィスはテレワークを導入している企業の中で見ても半数以下の導入率となっています。
 
図1 テレワークの分類
分類 内容 テレワーク導入企業における導入率(%)
在宅勤務 自宅でのテレワーク 29.9%
モバイルワーク 営業活動など、外出先で業務を行うテレワーク 56.4%
サテライトオフィス勤務 本来の勤務先以外のオフィスで行うテレワーク 12.1%
(出典)総務省「平成30年版情報通信白書」
 

■テレワーク利用のメリットと課題

 以下に示す表の通り、テレワーク導入により企業と従業員双方にとって様々なメリットが期待されます。
 
図2 テレワークのメリット
企業にとってのメリット 従業員にとってのメリット
• 人材の確保・育成
• 業務プロセスの革新
• 事業運営コストの削減
• 非常時の事業継続性(BCP)の確保
• 企業内外の連携強化による事業競争力の向上
• 人材の離職抑制・就労継続支援
• 企業ブランド・企業イメージの向上
• ワーク・ライフ・バランスの向上
• 生産性の向上
• 自律・自己管理的な働き方
• 職場との連携強化
• 仕事全体の満足度向上と労働意欲の向上
 
(出典)厚生労働省「テレワークではじめる働き方改革 テレワークの導入・運用ガイドブック」(2016)
 
 企業で働く従業員にとって、テレワークは自分のライフスタイルに合わせた働き方を実践するのに役立ちます。通勤時間が短縮されることによる自由時間の増加や、育児や介護をする必要のある従業員が仕事を継続しやすくするなど、私生活と仕事を両立しやくなります。厚生労働省が公表している「テレワークではじめる働き方改革 テレワークの導入・運用ガイドブック」によると、テレワークを利用することで約半数の人が家族と過ごす時間や育児の時間が1時間以上増加したと回答しており、テレワークの導入はワーク・ライフ・バランスの維持に役立てることができると期待されます。
 
 また、テレワーク導入は企業にとってもメリットがあります。「平成29年通信利用動向調査」によれば、企業のテレワーク導入目的のうち、最も回答率が高かった項目は「勤務者の移動時間の短縮」で、次に高かった項目は「定型的業務の生産性の向上」でした。また、テレワークの導入により期待していた効果が得られたかどうかの設問に対しては、8割以上の企業が効果があったと回答していました。
 
 テレワークの導入により従業員と企業の両方にメリットがあるものの、導入や運用にあたっては課題もあります。『平成30年版情報通信白書』で示されている、テレワークを利用したいが利用していない人にとっての課題を見てみると、「会社のルールが整備されていない」、「テレワークの環境が社会的に整備されていない」のような、ルールの整備に関する課題を挙げる人の割合が高いことが分かりました。会社の就業規則などによってテレワークの利用ができないことなどが、テレワークを実施したい人が利用できない原因となっていると考えられます。
 
 では、企業がテレワークを導入しない理由にはどのようなものがあるのでしょうか。「平成29年通信利用動向調査」によれば、企業においてテレワークを導入しない理由として最も多かった回答は「テレワークに適した仕事が無いから」が最も多く7割以上を占めています。それ以外の回答としては、「情報漏えいが心配だから」のようにセキュリティの担保を心配する回答や、「業務の進行が難しいから」、「社内のコミュニケーションに支障があるから」などのテレワーク導入による業務への影響を心配する回答、「導入するメリットがよくわからない」のような、テレワーク導入の効果が不明確であることによる回答も挙げられています。 

■テレワークの課題に対するICTによる解決策

 テレワークは、「ICTを活用した場所や時間を有効に活用できる働き方」であると説明されるように、ICTとは切っても切り離せない関係にあるといえます。
 
 テレワーク導入後の課題の1つに、テレワークで働く社員が孤立したり、テレワークをしている社員とそうでない社員との間に情報格差が生じたりしてしまうなどの問題があります。『平成30年版情報通信白書』によると、テレワークをしている人とのコミュニケーション確保のために企業が講じている対策には、「ビデオ会議システムの導入(49.0%)」、「チャット[1]の導入(39.6%)」の回答率が高く、企業がビジネスICTツールによる対策を念頭に置いている事が分かります。テレワークによって離れた場所で仕事をすることによるコミュニケーション不足の問題への対応策として、ビジネスICTツールによりコミュニケーションの手段を確保することが期待されます。
 
図3 テレワーカーのコミュニケーション確保のための対策
ビジネスICTツールによる対策 回答率(%)
ビデオ会議システムの導入 49.0
チャットの導入 39.6
パソコン稼働状況とリンクした勤務管理システムの導入 29.2
バーチャルオフィス(互いの仕事風景がリアルタイム等で確認できる環境)の導入 27.1
画面モニタリングシステムの導入 17.7
ビジネスICTツール以外の対策  
自社によるサテライトオフィスの整備 24.0
テレワーカーに対する相談・フォローアップ制度 19.8
別会社が提供するコワーキングスペースの利用補助 3.1
その他 0.0
特に導入していない 12.5
(出典)総務省「平成30年版情報通信白書」
 
 また、『平成30年版情報通信白書』では、社内でのコミュニケーションに用いられるICTツール(ビジネスICTツール)の導入・利用状況と、職場の働きやすさについてアンケート調査を行っています。その結果から、職場においてビジネスICTツールを利用している方が利用していない人に比べて職場が働きやすいと感じている人の割合が多いことが分かりました。また、ビジネスICTツールの導入の有無と働きやすさとの間には関係が無いことも分かりました。この事から、ビジネスICTツールは導入するだけでは十分でなく、それが利用されていることが働きやすい職場の実現につながる可能性が示唆されます。
 
 テレワークは「働き方改革」の切り札としても注目されており、「テレワーク・デイズ」をはじめとする国民運動を通じて、テレワークを導入する企業や、テレワークに取り組む人々の数は今後増えていくものと思われます。「テレワーク・デイズ」は2020年の東京オリンピック時の交通混雑緩和を念頭に置いて進められている取り組みですが、「テレワーク・デイズ」をきっかけとして、2020年以降も引き続きテレワークが日本社会全体に浸透することが期待されています。
 
[1] ビジネスチャットについては、ICTトピック「働き方改革×チャットツールのビジネス活用」(4月16日配信 M-ICTナウ vol.19)もご参照ください。(https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/02tsushin02_04000041.html

問い合わせ先

連絡先:情報流通行政局
情報通信政策課情報通信経済室
電話:03-5253-5720
FAX:03-5253-6041
Mail:mict-now★soumu.go.jp
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